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旧コラム 2015年10月

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代表者の行方不明、判断能力喪失のリスク1 【企業法務】

広島市の弁護士仲田誠一です。

前回は、相続問題の話のうち相続預金の取り扱いについてお話しました。
今回は企業法務の話です。


事業承継問題は近時喧伝されていますね。同族中小企業では必ず対策をしないといけない問題です。


ところで、事業承継問題は、代表者=株主の死去、すなわち相続を念頭に置いて議論がされることがほとんどだと思います。


でも、考えてみてください。代表者=株主が何らかの理由で行方不明になったり、あるいは不慮の事故等で判断能力を失うこともありますね。
その場合も、事業承継問題における相続リスクに似たリスクがあるのです。


今回は、行方不明のケースをお話ししましょう。


代表者=株主が行方不明になるなんて考えられないと思われるでしょうが、実際に何回か相談を受けたことがあります。
その際は、速やかかつ事後的な対処は難しいとお答えしたと思います。


代表者=行方不明だと株主権を行使できないですね。場合によりますが、多くの場合、定足数が足りずに株主総会等を開いて新しい取締役を選ぶこともできません。
法律的には経営がストップし、事実上の経営権を巡り争いや混乱が生じることも容易に想定できます。
おまけに、取締役が1人だと取締役会も開けません。


法律上、行方不明の方の財産(自社株含む)を管理する方法として、不在者財産管理人という制度があります。
失踪宣告により相続の効果を発生させる制度もあります。
また裁判所に職務代行者を選任してもらうことも可能かもしれません。
しかし、それらには時間がかかり、また不在者財産管理人や職務執行代行者の権限にも制約があります。日々動かないといけない経営の継続性の点からは、非現実的な手段だと思います。


ここで検討するべきは、株主の行方不明に備え、予め属人株式、具体的には俗に言う「(逆)ヒーロー株」を設定し、行方不明等の事態が発生した場合には代表者の株式議決権を極限まで下げ、他の後継者等の株式議決権を極限まで上げるようにしておくことではないでしょうか。
もし代表者=筆頭株主が行方不明でも、議決権の問題が解消し、経営の継続性は保たれるでしょう。


もちろん、属人株式の設定は特別な手続要件があり、また悪用されないように慎重に設定することは言うまでもありませんのでご注意を。


会社のリスク管理の一環として、行方不明になったときの備えをしておくことも必要だと思います。


今回は企業法務のうち、事業承継問題類似の代表者の行方不明の場合への対処についてお話しました。


顧問弁護士、企業法務サポートのご用命はなかた法律事務所に。


広島市中区上八丁堀5-27-602
なかた法律事務所
広島の弁護士 仲田 誠一
 

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準共有株式の議決権行使2 [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。

前回に続いて、企業法務の話のうち、事業承継にかかわりのある準共有株式の問題です。
 

会社法の106条本文によって、相続等によって生じた準共有株式は、会社に権利行使者を定めて通知しなければ権利行使自体ができないため、困った事態に陥る危険がある。
そして、事業承継対策等のためには、遺言書が必須であること、定款に分割行使の許諾文言を入れておくことが望まれる。といったお話しをしました。
ところで、会社法106条の但し書には、「ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合には、この限りではない。」と定められています。

なんだ、会社が同意すれば権利行使者を定めて通知する必要はないじゃないか、と思うかもしれません。

実際、その解釈で、一部の相続人に権利行使を認め、取締役選任等の株主総会を開催し、経営を承継したケースで、他の相続人から株主総会決議が取り消されるべき等と争われた事例がありました。
相続人は2人で2分の1ずつの相続分だったようです。


平成27年の2月に最高裁判所の判断が出ました。結果は、株主総会決議取り消しです。
私は現在、広島大学大学院法務研究科、いわゆるロースクールで税法講習を担当していますが、授業の際、学生に話を振ったら、すでに勉強をしている判例でした。重要判例ですね。


前回お話ししたとおり、共有関係における民法の原則は管理行為は共有者の過半数で決めるというものです(民法252条本文)。
会社が会社法106条但し書に基づいて権利行使を許しても、過半数で決定した議決権行使ではないから、会社が同意しても不適法である、といった判断がなされました。


106条但し書で会社が任意に権利行使を認めることができれば不公平な結果が生じることも考えられ、仕方がないですね。


最高裁の判断が出ましたから、やはり、前回お話したとおり、事業承継対策としては、自社株式に関しては必ず遺言書を書く、定款の定めを整備しておくといったことが必要です。

正直言いまして、前回お話しした定款の規定が上記判例に沿って有効とみなされるかリスクが高まりました。
一応あった方がいいとは思いますが。
 

もちろん、事前に株式を後継者に移転することができれば良いに越したことはありません。
少なくとも遺言は作成してください。

また、種類株式、属人株式の活用により柔軟な事業承継対策もできるわけです。

事業承継対策を考えたことはない、考えているがまだ始めていない、という企業さんは、早めに専門家に相談してください。


今回は、最高裁の裁判例をネタに、事業承継問題に関わる準共有株式の権利行使方法についてお話しました。


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準共有株式の議決権行使1 [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。

今回は企業法務の話です。事業承継にかかわりのある準共有株式の問題です。
 

株式の準共有と言えばおわかりでしょうか。

相続により株式は共有となります。
正確には、株式は物ではなく権利あるいは地位であるため、共有ではなく準共有と言われます。
 

1000株の株主の相続人が子2人である場合、法定相続分の2分の1の500株ずつを承継すると考えては誤りです。
遺産分割完了までは1000株を2人で準共有するのです。
 

会社法106条本文では、株式が共有状態である場合、会社に対して権利行使者を定めて通知をしなければ株主権の行使ができない旨定められています。
上の2人は、遺産分割が解決しない限り、500株ずつを権利行使することはできず、権利行使者を1名定めなければならないのです。

株主権の行使は、株式の処分あるいはその類似の行為ではない限り、管理行為とされているようです。
民法上、共有者の管理行為はその過半数、多数決ですね、で決めることになっています。
2分の1対2分の1だと経営権に争いがあると権利行使者が決められませんね。
そうすると1000株全体が権利行使できず、場合によっては定足数が足りずに株主総会が開催できなくなったり、あるいは少数株主等によってクーデターが起こされたりする危険があるのです。
 

そこで、事業承継対策として、株式について必ず遺言書を作成しろと言われるのです。
ただし、遺留分を侵害する遺言書であれば遺留分減殺請求により準共有状態が発生してしまいますのでご注意を。

その後、民法改正により遺留分減殺制度がなくなり、遺留分侵害の場合には金銭請求しかできなくなりました。
後継者の資金手当ては必要ですが、遺言を作成していれば株式の準共有状態の発生を防ぐことができます。
 

もう1点、アドバイスをすることがあります。
定款に、相続による準共有株式について相続分に応じて分割行使を認める旨の規定を置いておくのです。
そしたら、上の例では500株ずつの権利行使が可能となります(ただし、法的に突き詰めればそれが有効かどうかというリスクは包含します)。
少なくとも株主総会は開けるでしょう。
 

次回は、最近出た最高裁の裁判例をネタにこの問題をもう少し見ていきましょう。
 

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相続預金の取り扱い 【相続問題】

前回、離婚の話のうち、子の面接交渉、面会交流についてお話しました。
今回は相続の話です。

相続預貯金は、相続人全員のハンコ、遺産分割調停調書、あるいは遺産分割審判書がないと引き出せないか?

少し前までは、YESとの回答でした。「どうしてもと言うなら銀行相手の裁判をしてもいいけど、遺産分割調停の方が早く終わるかも。」というアドバイスをしていたでしょう。

従前は、約款を盾にして、あるいは相続争いに銀行が巻き込まれるのを防止するために、ゆうちょ銀行、市中銀行とも払い戻しを拒絶していたはずです。ところが、最近は変わってきたようなんです。

通常貯金は自己の相続分の払い戻し請求ができる、あるいは普通預金は通帳がなくても払い戻し請求により銀行が履行遅滞(損害金が発生する)に陥る、定期預金も満期到来によって履行遅滞に陥る、といった裁判例が出ているから金融機関の態度が変わってきたのかもしれません。

現在では、払い戻し請求をすると他の相続人へ照会をして問題がなかったら払い戻しに応じる、あるいは問題があっても払い戻しに応じてくれる金融機関が出てきました。定額貯金、定期預金はそれでも満期到来まで待たされるのでしょうが。

確かに、法律上、預金債権は分割債権であり相続によって相続人が法定相続分に応じて分割取得するということになるのでしょう。ただ、実務では、払い戻しができたら確定的に解決したと考えるのは早計です。特別受益、寄与分、分与方法の判断によっては、すでに払い戻しを受けた金銭の返還を求められることでしょう。

そこで、現在のアドバイスは次のようになります。「払い戻しに応じる金融機関がでてきたから早く現実を手にしたければ払戻手続をしてみてもいいのではないですか、でも他の相続人に照会が行くから争いが激化するかもしれませんし、後に調停・審判で取り分が法定相続分から減ってしまうと他の相続人に返還しないといけませんよ、あくまでも最終的な解決は遺産分割調停、審判の結果を待たなければなりません。」という感じでしょうか。相続預金が遺産分割の対象となるかどうかの問題は「相続預金の取り扱い2」を参照してください。

相続預金を払い戻すことができるようになりつつあるのはいいことかもしれません。ただ、「遺産分割合意を早くしないと預金を分割できないからお互い譲って早く合意しましょう」というインセンティブが世の中からなくなると、相続争いが長期化する危険もあるのかなぁと危惧もします。

今回は相続問題に付きものの相続預金の取り扱いについてお話ししました。
動いている話なので、専門家に相談して慎重に対処してください。

コラム投稿後に、最高裁の判例で相続預金に関する従来の取り扱いを変更する判断が出ました。
本コラムは内容が古くなっております。
相続預貯金は、遺産分割の対象となりました。逆に、金融機関としては相続分に応じた払い戻しに対応できないということになるでしょう。
そこで、民法改正により、相続預金の一部払い戻し制度が創設されます。
なお、可分債権(貸付金など)は、判例変更がありませんので、従来どおり、相続と同時に各相続人が相続分に応じて取得することになります。

ぜひ相続問題は「なかた法律事務所」にご用命を。

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子の面接交渉、面接交流2 【離婚問題】

広島市の弁護士仲田誠一です。


前回子の面接交渉、面会交流についてお話しました。
今回は補足です。


面接交渉、面会交流に対する裁判所の態度が厳しいというお話をしましたが、具体的には別居中あるいは離婚した相手方から子の面会交渉、面会交流に関する調停を申し立てられて争われます。
こちらが家を離れている場合にはこちらが申し立てることになります。そこで、裁判所は早期の面会交流をかなり強く促してくるのです。


裁判所が厳しいと言っても、こちらがなかなか応じられないという態度を示し説明を尽くすと、家裁調査官の調査や試験的面接を入れてくれるという配慮は見せてくれます。
ただ、調査の結果や試験的面接でよっぽど会わせるのが子の福祉に適合しないと判断されない限りは、継続的な面会交流を離婚が成立する前でも要求され、促されます。


話し合いが成立せずに調停が成立しなければ審判という手続に移行し、裁判所が面会交流の有無及びその方法を定めることになります。
審判になるとある程度面会が認められるということを念頭に置く必要があるでしょう。
そのことを念頭に、柔軟な調停解決の方向で進めることも多いです。
審判と異なり、調停ではきめ細やかな取り決めも可能ですから。


ところで、面会交流が調停、審判で定められて実行されなかった場合はどうなるのでしょうか。
離婚できたからもう会わせなくてもいいやと相手が腹をくくった場合です。


子は物ではありません。財産給付を求める権利と違って、子を差し押さえたり、強制執行で持って来たりはできないのはおわかりでしょう。
これも近時、統一的に裁判所が運用を始めたようなのですが、間接強制が認められるようになったようです(そこまでする事例には幸いに出会ったことはないですが)。


間接強制とは、子に会わせろ、会わせなければ1月当たり○万円を支払え、という形で間接的に(財産的、心理的に)強制する方法です。
相手が払わなかったらどうするのか?金銭請求は強制執行できますが、執行できる対象物がなければ・・・・です。


では会わせて貰えない親はこれと引きかえに養育費の支払いを拒否することができるのか。
事実上はバーターで争う道を選択してもよいのでしょうが(その選択を進める場合もあります)、法的には難しいでしょう。
養育費は子の権利だからです。


離婚にまつわる問題は、理論割り切れる事柄ばかりではなく、なかなか難しいです。


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子の面接交渉、面接交流1 【離婚問題】

広島市の弁護士仲田誠一です。
 

久しぶりのコラム投稿です。


子の面接交渉、面会交流というと何のことかわかりますでしょうか。


別居後あるいは離婚後に、子と離れて暮らしている親と子には会う権利があります。
お子さんがいらっしゃる場合の離婚問題に付きものの問題です。
子の権利なのか親の権利なのか議論はありますが、建前は別として、実務上は親の権利として争われているような感覚です。


離婚の相談の際、「何も要らない、ただ子供は相手に会わせたくない。」、とおっしゃる依頼者がよくいらっしゃいます。
お気持ちは非常にわかります。いいかげんなことあるいは無関心なことをして家庭を壊した相手に子供を会わせて子供を混乱させたくないということでしょう。


現在の裁判所の実務は、DV等よっぽどのことがない限り、子を親に会わせるという運用です。
ハーグ条約なり子どもの権利条約なりが影響しているかはわかりませんが、この1,2年はとくに強く押し進められている気がします。
そこで、上のような相談をされてしまうと、「残念ながら相手方が望めば拒むのは難しいです、ただ方法は工夫しましょう。」とお答えせざるをえません。


弁護士は裁判所(相手方)と依頼者の間に挟まれて、試験的な面会を事務所で開いたり等苦労をするのですが、裁判所はわかってくれません。第三者機関が介入して面会交流を設定してくれる制度もあるようですが、費用と合意が必要です。


一方、子供に会いたい親の気持ちも十分わかることです。


難しい問題ですが、やや裁判所は早急に面会を実現しようとする態度にあるなと感じてはいます。
離婚を争って、いがみ合っている中で、相手と時間を約束して子供を預ける、って簡単にはできませんよね。

離婚が実現すれば安心して子供とあわせることができるという方もけっこういらっしゃるのですが。


もちろん、別居している側の親の代理人となれば、早急な面会実現を求めるのが弁護士としての務めです。
ただし、きちんとけじめをつけた会い方をするよう依頼者には説明します。


子の面接交渉の問題は、子が成年に達するまで続く問題で、偶に会う親の方はかわいがっていいことしか言わない、育ててる親は厳しくせざるを得ないため、子供が混乱してしまうっていう事例があり、一方では育てている親が子に一方の親の悪口を吹き込んで会いたくないと言わせる事例もあったり、法律的に結論が出る問題ではないため、弁護士も悩むところです。


「親が親としての自覚をもって子供に接する。」、これさえできればいいのですが。
まあ、自分も子供に甘いといつも怒られるので難しいのでしょう。


今回は離婚問題には付きものの、面会交流についてお話しました。



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弁護士 仲田 誠一

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