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旧コラム 2019年3月 3ページ目

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相続不動産を独占されている場合 [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 
今回の相続問題コラムは、相続財産を一人の共同相続人に独占して使用されているケースの解説です。

 

相続が発生し遺産分割協議は終わっていない状態で、1人の相続人により相続不動産を勝手に使われているという相談をよく承ります。

 

相続が発生すると、遺産に属する不動産は、相続人間の遺産共有状態になります。遺産分割協議、遺産分割調停、遺産分割審判で確定的に遺産分割が決まるまでその状態が続きます。

遺言がある場合は別ですが、それでも遺留分減殺請求を行った場合にも共有状態が作出されることがありますね。

他の相続人からしてみると、単独で遺産である不動産を使用収益していることが納得できないことになります。

 

典型的な事例は、

賃貸不動産の管理を相続人の1人が独占し賃料も受け取って独占している場合、

あるいは

被相続人の相続不動産に1人の相続人が住み続けている場合、

ですね

 

この2点についてお話ししようと思います。

 

【賃貸不動産の管理を相続人の1人が独占し賃料も受け取って独占している場合】

 

遺産から生じる賃料は、法律上、遺産の果実との扱いを受けます。遺産の管理や利用等によって生じる収益ですね。

 

遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得することになっています(最判H17.9.8)。

 

確定的に取得するのですから、後に遺産分割がなされても影響がありません。相続分というのは遺言がない限りは法定相続分と思っていただいて構わないでしょう。

 

賃料を独占している相続人に対しては、(賃料額-経費)×相続分を請求できることになります。経費は遺産管理費用と呼ばれますが、どこまでが算入されるか自体争いになることが多いでしょう(経験上、その相続人が払った所得税が難しいですね。他の所得もあるわけですから)。

 

遺産の果実の分配は、理屈上、遺産分割ではありません。

相手方が請求に応じなければ訴訟で解決することになるのが基本です(ただし、調停を先に起こすという調停前置主義の対象にはなります)。訴訟する理屈は、不当利得返還請求あるいは不法行為に基づく損害賠償請求になります。

 

ただし、それでは面倒ですね。遺産分割協議においては勿論、相続人全員の同意があれば調停等の遺産分割手続で解決することもできます。

 

遺産分割の段階では、預かり敷金・保証金の扱いも忘れてはいけません。物件を引き継ぐ=賃貸借契約を引き継ぐ=敷金返還債務を引き継ぐ、相続人との調整が必要ですね。

 

【被相続人の相続不動産に1人の相続人が住み続けている場合】

 

明渡請求ができるかどうかが気になるでしょう。

 

まず、使用貸借(無償での貸借)契約の成立が問題となります。成立したと認められるケースであれば、当然、使用貸借の期間満了まで明け渡しを請求することはできません。

 

判例(最判H8.12.17で、相続前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と同居の相続人間で、被相続人が死亡した後も遺産分割により上記建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き同居相続人に無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるとされています。

 

判例のようなケースだと原則遺産分割までには明渡請求が認められないことになります。
使用貸借が認められるかどうかはケースバイケースの判断なのでしょう。当然認められるわけではありません。

 

使用貸借契約の成立が認められない場合でも、理屈上、無条件に明渡請求は認められません。

 

居住している相続人にも共有持分がありますね。民法上、共有者はその持ち分に応じて共有物の全部を使用することができます。
共有物の管理行為は持ち分の過半数で決定されるので、過半数持分の相続人による明渡請求は認められそうだとは思いますが、裁判例では認められていません。
共同相続人の間の占有の変更は管理行為ではなく給油者全員の同意が必要な変更行為(民法251条)と考えられているようです。

 

そうであれば、明渡請求ができないので(勿論遺産分割等で所有関係が確定する前のことです)、他の相続人ができることは金銭請求の途しかないということになります。

 

使用貸借が認められるケースでなければ居住相続人は他の相続人の持ち分について無権原占有者です。
共有不動産を使用=居住することはできるが、無権原で使用する部分についてはその利益を賠償・返還するべきとういうことになります。


具体的には、不動産を単独で占有する共有者に対しては、不当利得返還請求権あるいは不法行為に基づく損害賠償請求権として、賃料相当額×相続分を請求することができます。
勿論、賃料相当額がいくらかということはなかなか難しいのですが・・・。


なお、居住相続人が遺産の管理費用(固定資産税等)を支払っている場合には、賃料料相当額からそれを控除して請求する、あるいは控除するよう反論されることになります。

 

先にも書きましたが、遺産収益に関する訴訟は、調停前置です。まずは家事調停を申し立てることが原則です。
ただ、既に揉めているケースがほとんどでしょうから(遺産分割の話がまとまらないから単独占有の問題が顕在化します)、話し合いの余地がないとしていきなり訴訟をすることも認められるケースもありますし、実際に裁判所から何も言われなかったこともあります。

 

遺産分割協議、調停・審判は出来るだけ早く進めるべきです。それと並行して、遺産の果実の問題等が出てくるというお話でした。

 

遺言、相続、遺留分減殺、相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

 

https://www.nakata-law.com/

 

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自己破産、個人再生と給与明細 [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

債務整理のうち、自己破産や個人再生の場合にはご相談時に給与明細をお持ちいただいた方がいいかもしれません。

 

自己破産や民事再生の申立準備のためには給与明細をお持ちいただくのですが(給与明細は必要書類になります)、その際に、依頼者様がご認識されていない事実が判明してしまうことが時々あります。給与明細には自己破産や個人再生の準備にあたって重要な情報が載っている場合があるのです。

 

特に、給与明細の控除(給与天引き)の欄の問題です。裁判所もかならずチェックをしているところです。

 

まず、債務、債権者の面です。

 

自己破産、個人再生では、債権者を一部外して手続をすることはできない原則です。
債権者はすべからく債権者として扱わないといけません。

 

給与明細の控除欄を見ると、稀ではありますが、勤務先からの借入金や労働組合・共済組合からの借入金があることが漏れていたことが判明する場合があります。

 勿論、勤務先からの借入れや組合からの借入金があると、勤務先等を債権者として扱わないといけません。

 

そうすると、自己破産、個人再生を申し立てるということが勤務先等に判明してしまいますし、何よりも弁護士からの受任通知や裁判所からの通知が届いてしまいます。

理屈上、そのことにより勤務先が従業員を解雇することは難しいですし、その事実をもって解雇された例も経験がありません。ただ、困ってしまうのは当然ですね。

場合によっては、後々偏頗弁済として問題になる行為であることを承知の上で、勤務先に対する返済を手続に先行して行うケースもあるでしょう(勿論、弁護士が推奨できる行為ではありませんが)。

 

なお、共済組合等からの借入金など保証会社が付いているケースでは、割とすんなり受け入れられる傾向があります。
ただし、通常、破産開始決定あるいは個人再生開始決定まで給与天引きは継続されてしまいます、開始決定時に保証会社による代位弁済がなされ給与天引きがなくなります。
これを偏頗弁済として突っ込まれるケースもなくはありません。管財事件だと否認の対象になり得ますから(当職も破産管財人として否認し勤務先に返還してもらったことがあります)。

 

問題は勤務先等に「債務」があるかどうかです。
勤務先での事故や何かの手当の返戻があるなどの事情で、「弁償金」、「返納金」、あるいはただ単に「その他」などの名目で天引きされていることがあります。
運送会社などだと事故負担金が天引きされていることもあります。
勤務先からの借入金は忘れなくても、それら支払債務を「債務」だと認識されていないケースもあります。
借入金でなくとも勤務先に対して債務を負っていれば勤務先を債権者として扱わないといけないことにご注意ください。

 

次に財産の面です。

 

控除の欄に、団体保険や共済保険の給与天引きの記載があることがあります。けっこう、忘れてしまうケースがあります。
自己破産、個人再生では、保険契約がある場合、保険証券と解約返戻金証明書(あるいは解約返戻金がない、ある場合は金額がわかる資料)が必要書類の中にあります。
団体保険は書類が残っていないことが多く、慌てて問い合わせや再発行をしてもらうことがあります。事前に確認しておきたいところです。

 

また、〇〇金、〇〇積立、〇〇会等の項目で給与天引きがある場合もありますね。

資産性の有無(解約したらお金が返ってくるのか)、資産性がある場合には残高がわかる資料の報告を求められます。

 

組合費や親睦会であれば資産性はないという説明ですんなり通るのですが、旅行積立等「積立」は説明に困りますね。
旅行積立は会費みたいなものでお金は帰って来ないということも多いのではないかと思いますが年金等他の積立は通常資産性があるのだろうと思いますから資料あるいは説明が必要になりますね。

 

財形預金、社内預金の天引きがある場合には、それらは勿論資産性があるものでしょう。残高がわかる資料が必要ですね。

 

なお、給与天引きの控除欄ではないですが、保険料の所得控除の欄も要チェックです。
控除があるのに保険契約の資料がないこと、あるいは金額的に保険契約が一部漏れていることがわかるケースもあります。勿論、被扶養者契約の保険料もあるかもしれませんが。

 

このように、自己破産や個人再生の検討・準備をする際には、給与明細は、その控除欄(給与天引きの欄)を中心に早めにチェックをしておかないといけない書類です。

 

債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

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租税法とは [税法の話1]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

広島大学大学院法務研究科にて平成27年から租税法の講義を担当しております。
客員准教授と固い肩書ですが、司法試験を目指す生徒さん相手にざっくばらんなお話をさせていただいております。

 

租税法は本当にわかりにくいです。

 

租税法は、申告納税制度を採用しています(制度上は確定申告をしないでいい給与所得者は例外扱いです。)。
したがって、租税法は国民の申告マニュアルの機能を有しているはずです。

本来は誰が見てもわかるようにわかりやすくないといけないのですね。

租税法は国民の予想可能性、法的安定性を保障しないといけないのです。

 

しかし、わが国の租税法は特にわかりにくいと言われています。

所得税法、法人税法、祖相続税法等の法律自体、専門家が読まないとわからないものですし、租税特別措置法等の特別法が絡んでくるともう厳しいですね。
正直、私も把握しきれません。

 

なお、租税法がわかりにくいこともあって、通達というものがあります。租税の世界は通達行政の代表選手です。

でも、よく誤解があるのですが、通達は行政機関内部の連絡等文書であって租税法ではありません(税理士さんとよくお会いしますが、税理士試験は通達を勉強するもので法律を勉強するものではないと自嘲気味におっしゃいます)。

 

わかりにくい租税法ですが、経営や生活に直結する世界です。少しでもご紹介していこうと思います。
どれだけ書けるかわかりませんが、授業の進行に合わせて投稿しようかなと思っています。

 

今回は、租税法の世界の大きな特徴2つをお話しします。

 

まず1つ目は租税憲法です。

 

租税法の解釈は、憲法が強く反映されます。
法律なので憲法に則らないといけないのは当然ですが、ボストン茶会事件の「代表なくして課税なし」に代表されるように、近代憲法制定の大きな動機の1つが国王の徴税権を制限するということだったのです。市民が闘争を経て勝ち取ったのが徴税権の制限なのです。

その流れを汲む日本国憲法も、租税には気合が入っており、少ない条文の中で2条も租税関係に費やしています。憲法84条と30条ですね。
国民の財産権を直接侵害する租税については気を遣っているのです。

そのため、租税法は常に憲法に立ち返って解釈されることになります。租税憲法と言われるゆえんです。

 

その憲法も、時には相反する要請を内在します。

 

まず、租税法律主義です。「代表なくして課税なし」です。

国民の代表である議会が制定した法律でなければ租税を課すことはできないということですね。

なんでも法律で明確に決めるということが要請されます。

 一方、法の下の平等を定める憲法14条からは、租税公平主義が導かれます。

法律を柔軟に解釈して公平な課税をすることを要請されます。

 この2つの要請は相剋することがあるのです。租税法の解釈の争いは、この2つの要請が対立する場面でよく起こります。

勿論、基本は、租税法律主義が優先します。憲法にはっきり書かれていますからね。

 

2つ目は、租税法のスタンスです。視点といってもいいかもしれません。

 

民法、商法等、いわゆる私法は、私人-私人間の法律関係を規定しています。

 

一方、刑法、行政法等、いわゆる公法は、国-私人間の法律関係を規定しています。

 

租税法はどうでしょうか。少し特殊です。

税金を賦課する場面では国-私人間の法律関係を規律するものであることは勿論です(租税法律関係)。

しかし、物が人から人へ動いただけでは、税金はかけられません。

例えば、売買には所得税、贈与には贈与税(贈与税は相続税法に規定されています)と、私人間の法律関係でどのような契約が原因で物が動いたかによって税金が違います。
売買なのに贈与税を課税してはいけませんよね。

このように、私人-私人間の法律関係を規定する私法上の法律関係を前提に、国-私人の租税法律関係が構築されるのです。

従って、租税法の解釈(課税関係の分析)についても、第1次的には私法の解釈が必要です。
経済取引事実の発生があり(モノとカネが動いた)、それを私法上の要件事実(モノの所有権移転約束と代金支払約束)に当てはめて法律構成し(売買契約)、当てはめるべき租税法(所得税法)を解釈運用する、ということです。

 

結局、租税法は、(私人-私人)-国の関係が上から見ているイメージでしょうか。

 

租税法のお話にニーズがあるのかどうか不安ですが、これからも投稿していこうと思います。

 

お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。

 

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債権者に給与口座、年金口座の銀行がある場合の注意点 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一による借金問題コラムです。

 

債務整理をしないといけない場合に、給与口座がある、年金受取口座がある銀行が債権者である場合があります。

その場合は注意をしないといけません。
軽々に弁護士に受任通知を送ってもらってはいけません。

 

銀行に債務整理の受任通知を送ると、届いた時点で借り入れについて期限の利益が喪失され(直ちに一括請求されるという意味です)、預金口座は凍結され、口座の預金債権は借入債務と相殺されてしまいます。
 

なお、任意整理のケースでは銀行ローンは手を付けないことが多いです。
自己破産、個人再生の場合はそうはいきませんから、銀行に受任通知を送らないといけません。

 

給与口座、年金受取口座を凍結されてしまうと、勿論、預金を引き出すことができません。

一方、給与口座指定を変更しない限り、給与が入金されます(口座凍結がなされても振込入金は入ってしまいます)。年金も同様です。

給与、年金が引き出せないと困りますね。

 

そのため、給与口座、年金受取口座のある銀行が債権者であるときは、受任通知を出す前に、給与口座あるいは年金受取口座を借り入れのない銀行の口座に変更してもらいます。

 

年金口座の変更には時間がかかります。また、給与口座の変更にも大きな企業だと時間がかかることがあります。

 

そのため、相談を受けた時点ですぐに変更をするようアドバイスしております。
銀行が債権者であるかどうかは相談時にわかっていることがほとんどです。
しかし、預金口座とセットのカードローン契約やクレジット契約がある場合に銀行が債権者であることを認識されていないケースがありますのでご注意ください。

 

ただ、中にはメイン銀行の口座しか給与振込口座に指定できない勤務先もあり、その場合は困ります。
その場合はなんとか勤務先に掛け合ってもらいます。

 

残念ながら口座凍結がされた後にその口座に給与、年金が入ってしまった場合にはどうしたらいいのでしょうか。

 

まず、キャッシュカードが使えませんから窓口で引き出しをしないといけません。

かつ、口座凍結されている以上、簡単には引き出せません。

銀行に予め連絡して承諾を得ておく必要があるでしょうし、債務者の方が窓口に行った後に弁護士に確認の連絡が来ることもあります。

 

ただ、給与、年金の場合には、最終的には銀行が引き出しに応じるのが通常です。
広島の地場の金融機関、都市銀行には断られたことがありません。ただし、ネット銀行は経験がありません。

 

勿論、銀行の判断によりますが、受任通知後の入金による預金債権と借入金を相殺することは破産法でいう否認対象行為になるということと、債務者の生活のために必要なお金だということかた応じてくれているものだと思います。

中には、受任通知が届いたら「給与口座が指定されていますが大丈夫ですか。」と確認の電話をしてくれる銀行もあります。

 

なお、口座凍結絡みですと、借入のある銀行に対し保証人となっている方の口座が当該銀行にあるケースも怖いです。

主債務者の受任通知により、同じように保証人の口座が口座凍結されて相殺される恐れがあります。
契約書を探して保証人がいるかどうか確認した上で、正確に弁護士にご報告いただかなければなりません。

 

個人の給料、年金と異なって、法人の売掛金が口座凍結後に入金されたケースだと、引き出しを拒む金融機関があります(基本的には断られるイメージです)。

自己破産開始決定後の破産管財人による引き出しには応じるが、債務者の要請には応じないといった対応です。

債務整理を考える場合に銀行が債権者であるときはこのような注意をしてください。

 

債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

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自己破産における自由財産拡張 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

今回の借金問題コラムは、自己破産における自由財産拡張手続の説明です。
個人再生においても清算価値算出の過程で自己破産の自由財産拡張相当の財産を控除することができるので、個人再生にも関係がありますね。

債務整理を考えている方の中には、自己破産をすれば生活ができないと思っていらっしゃる方もいらっしゃいます。
しかし、自己破産は経済的更生のために法律で用意された制度ですから、経済的な更生を図ることができる制度になっております。
特別な場合を除いて、自己破産をしたら生活ができないということはありません。

 

生活面でよく質問される点の中に、財産は全部取られてしまうのかというお話があります。自由財産拡張の制度のお話になります。

 

自由財産拡張というと難しい名前ですが、破産者の経済的更生のために必要な財産を破産者の手元に残す手続です。
自己破産をしても身ぐるみを剥がされるわけではないのです。

 

自由財産拡張は、管財事件の時に出てくる手続です。

これに対し、同時廃止事件では財産の換価処分が問題になりません。
同時廃止では、破産手続(債権債務の整理だと思ってください)は手続開始と同時に手続廃止となり、後は免責手続(債務の弁済責任を免れさせる手続だと思ってください)だけになります。
当然、破産者の保有財産はそのまま残ります。

 

「自由財産」とは何でしょうか。

自由財産は、破産財産に組み入れられることなく(破産財団に組み入れられたら換価・処分されることになります)、破産者が自由に管理処分できる財産です。

これまたややこしいのですが、自由財産には、「本来的自由財産」とそれ以外のものがあります。自由財産拡張制度は、本来的自由財産以外の財産まで自由財産の範囲を拡げる手続だから、「拡張」なのです。

 

本来的自由財産は、破産法で定めた自由財産です。

本来的自由財産は原則として金額の制限なしに全額について破産者の保有が認められます。
99万円以下の現金及び差押禁止財産だと考えておけば十分です。

 

差押禁止財産は、
生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用品、畳及び建具(そのため家の中の通所の生活用品等は取られることはありません)、
退職金の4分の3(実際は退職間近でない限り財産評価されるのは退職金支給見込額の8分の1だけの運用です)、

小規模企業共済、中小企業退職金共済、建設業退職金共済(退職金の性質を有するものですね。実務上よく出てきます)、
生活保護、年金・各種手当の受給権
などですね。

勿論ほかにもあります。民事執行法やその他法律に差押禁止財産だと定められている場合です。
差押えが禁止されているから債権者はその財産から回収を図ることが期待できないはずだ、だから破産の場合も差押えができない財産は残す、という理屈です。

 

本来的自由財産は、元々自由財産なのですから、自由財産拡張手続は必要ありません(現金は手続に乗せますが)。

自由財産拡張の制度は、本来的自由財産ではないけれども、破産者の生活の再建に必要な限りで財産を残してあげようという制度です。

 

破産開始決定後、一定の期間内に(通常1カ月以内)、破産管財人の意見を聴いて、裁判所により決定されます。
通常は申立人側からの申立てをしますが、必ずしもその必要はありません。管財人主導で行うこともあります。

 

拡張判断にあたっては、まずはその財産が自由財産拡張の対象としていい財産かということが問題となります。
経済的更生に必要な財産かどうかで判断されています。

 

不動産は拡張対象とならない扱いです。投資金(株、債権、投資信託)も対象とならないと考えてください。
生活再建に必要相当な財産とは見てくれません。

 

車や生命保険にも気を付けないといけません。車についても趣味のための車は対象外でしょう。
保険は投資性の強い保険でない限り対象となると考えていいですが、相当性についての意見を求められることがあります。

 

申立時に報告しておらず破産管財人の調査で判明した財産も拡張の対象とならない可能性が大きいです。
財産の報告が漏れていたことに気付いたらすぐに追加報告しないといけませんね。

 

財産が自由財産の拡張対象となるとして、次に問題となるのはその範囲です。

 

金額にして99万円の範囲内です。本来的自由財産である現金も含めて99万円ですので気を付けてください。

 

勿論、無条件で99万円まで残せるわけではありません。経済的更生に必要かつ相当と見られる範囲です。
一般的には99万円まで認められるのですが、財産によっては破産管財人に突っ込まれます。
なお、ここで本来的自由財産(小規模共済等)の金額の多寡も関係してきます。

 

また、制度上は、それ以上に拡張することが不可欠だと考えられる場合に99万円を超えて拡張を認めることも可能です。
しかし、実際は99万円を超えて自由財産の拡張が認められるのは難しいと思ってください。

 

自由財産拡張対象外の財産(99万円まで認められた場合はそれを超える財産)は、財団に組み入れられ、管財人により換価処分されます。管財人に引き渡すわけです。

 

ただし、例えば現金が100万円・保険解約返戻金合計額が30万円ある場合、99万円を超えるから保険は解約しないといけないかというとそうではないです。
この場合には、99万円を超える分を現金で財団に組み入れる(破産管財人に引き渡す)ことで保険契約を残すことが認められるでしょう。

 

なかなかややこしい話で失礼いたしました。自己破産をしても一定の財産を残すことができる、財産の種類によって扱いが異なるということです。

 

債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

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