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旧コラム 企業法務: 2010年12月

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従業員は転勤を拒めない?  【企業法務】

弁護士の仲田誠一です。catface
 
 
 
これから4月をピークに転勤が増えていくのではないでしょうか。

みなさんの会社では,転勤の内示を受けるのはどれぐらい前でしょう?

今 は知りませんが,私が勤めていた頃の銀行は,転勤の直前に突然に転勤を知らされていました。もともと銀行は,癒着や不正を防ぐために定期的に転勤があるも のなのですが,直前に知らせることで不祥事を隠せないようにする配慮もあったようです。もちろん,家族持ちにはもう少し早く話が来ていたようですが。



さて,企業は自由に転勤を命じることができるのでしょうか?逆に言うと,従業員は転勤命令には絶対に従わないといけないのでしょうか?

転勤は,ケースによっては,企業側の業務上の必要性が,従業員の家族生活やキャリア形成の利益と衝突してしまう場面です。

最近読んだ法律雑誌に面白い記事が載っていたため,今回は,転勤命令のテーマをお話します。



◆ 企業に転勤命令権はある?
従業員に対する転勤命令権(法律的には「配転命令権」ということが多いです。)が企業にあるのでしょうか?

もちろん,勤務地・職種の限定がある労働契約を結んでいる場合には,従業員の合意がない限り配転はできません。一般的な契約の場合の話です。

少なくとも,就業規則上に転勤命令条項(転勤に関する条項)があり,勤務地限定の合意がない限りでは,企業側に転勤命令権が認められています。
就業規則の定めを確認しておいてくださいね。



◆ 企業は自由に転勤を命令できる?
結論を先に言うと,企業側に広い裁量が認められますが,完全に自由ではありません。

判例では,
① 企業側は業務上の必要に応じて,その裁量により広く転勤を命令できる,
② しかしそれは無制約ではなく,不当な動機・目的がある場合や従業員に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を追わせる場合など,特段の事情がある場合には,企業の配転命令権が権利の濫用として許されない。
としています(表現は噛み砕いています)。

つまり,企業に業務上の必要性がある限りで,「原則」的に従業員に転勤を命令できるが,従業員にあまりにも不利益を与えてしまうようなひどい場合には,「例外」的にそれは許されないということです。

上に要約したのは,昭和61年の最高裁判決です。事例は,母の扶養や妻の仕事の都合から従業員が単身赴任を強いられるケースでした。
裁判所は,業務上の必要性を幅広く認めた上で,単身赴任を強いられるような不利益は従業員が普通に我慢すべきだから企業側の配転命令拒否を理由とする懲戒処分は有効だと判断しました。



◆ 最近の裁判所の判断の傾向は?
最近読んだ法律雑誌で次のような記事を読みました。

大企業では転勤命令に際して従業員の意向を確認する例が増えてきた。
また,最近の裁判例で,転勤に伴う従業員の新幹線通勤や単身赴任の不利益などを認め,企業側が敗訴する例が増えてきた,という趣旨の記事です。

時代は変わりつつあるようです。
従業員の健康,育児・介護を重視する法律ができ,家庭生活を重視する風潮も定着しましたね。
裁判所もそれを構成する裁判官は世代が交代していくわけです。それに伴い,時代にあった判断がされるようになるのです(かなりのタイムラグがあるのが通常ですが・・・)。



◆ 最後に
その当否は別として,会社に滅私奉公するという時代は既に過去のものとなっているようです。
企業の転勤命令も慎重に行使しないといけなくなったわけでして,それに限らず,企業のコンプライアンスも,その時代に合わせた対応をすることが必要なようです。

整理解雇って? 【企業法務1】

弁護士の仲田誠一です。

 

先日、新聞で日航の整理解雇の記事を読みました、みなさんは読まれましたか?

「一部労組が提訴も辞さない構え」とも書いてましたね。

 

そもそも「整理解雇」って何でしょうか?

また,労組が提訴し訴訟になったらどのような点が審理されるのでしょうか?

 
そこで、今回は、「整理解雇」とはどういうものか、また訴訟で争われるとどのような判断をされるのかなどについてお話させていただこうと思います。またまた理屈っぽい話になるのですが・・・

 

 
◆ 「整理解雇」って何でしょう?

「整理解雇」とは、使用者(雇い主)が経営不振の打開や経営合理化を進めるために、余剰人員削減を目的として行う解雇です。

 
◇ 解雇は使用者の都合で認められる?
当然、解雇は簡単には認められません。
実は、民法上では、期間の定めのない労働契 約(通常の雇用契約のことです)について、当事者は「いつでも」解約を申し入れることができると規定されています。これは、「使用者の解雇の自由」と「労 働者の退職の自由」の保障を意味します。近代自由主義のたまもののような規定です。

しかし、解雇も自由に任せると労働者がたまりませんね。労働は生計維持の手段であるばかりでなく、人格発展の機会でもあるからです。もし解雇されたら、労働者は、大きな経済的不利益および人格的不利益を被りますね。

そこで、労働法は,「使用者の解雇の自由」の原則に修正を加えて、労働者の雇用保障と不利益回避を図っています。
すなわち、解雇は、「客観的に合理的な理由」を欠き、「社会通念上相当」であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とされます。
こ こで、「客観的な合理的理由」は就業規則上の解雇事由に当たるか等によって、「社会的相当性」は、労働者の事情・過去の行状・他の労働者の処分との均衡・ 解雇手続が適正か等の事情によって、判断されます。難しくなってきましたが、要は、解雇には、従業員から職を奪ってもしかたがないと客観的に認められる事 情が必要です。

その際、就業規則の定めが重要になりますから、経営者の方は、就業規則をちゃんと整備しているか確認してくださいね(就業規則にはきちんと整備しないといけない決まりが他にもあります、機会があればお話します)。

 

◇ 整理解雇の特殊性は?
「整理解雇」も、もちろん「解雇」の一類型です。そのため、上のような理屈が当てはまります。
ただ、整理解雇には、普通の解雇と違い、労働者側に責任がなくもっぱら使用者側の事情によること、解雇される従業員が通常多数に及ぶ、といった特殊性もあります。
そのため、整理解雇の有効性は厳しく判断されそうですよね。

 

 

◆ 裁判ではどのような点が審理される?

上のような「整理解雇」の特殊性から、現在、「整理解雇の4要件」(「要素」とされる場合もあります)という「厳しい」判例法理が構築されています。昭和50年代に採られた大企業の雇用調整をモデルにしたと言われています。
その4つの「要件」(「要素」)とは、
①人員削減の必要性があること

②使用者が整理解雇回避のための努力を尽くしたこと(解雇回避努力義務)

③被解雇者の選定基準および選定が公正であること

④労働組合や労働者に対して必要な説明・協議を行ったこと

です。

整理解雇の有効性が裁判で争われると、上記の4要件(要素)に沿った審理がなされることになります。つまり、経営上本当に必要なのか、解雇以外の道を十分探ったのか、不公平な人選になっていないか、労働者側とちゃんと話をしたか、等についてチェックされるのです。

冒頭に書いた日航の場合,訴訟に発展するとどういう判断が下されるかについてはもちろんわかりません。ただ、裁判所の判断は、以前より、やや解雇を 認める方向に柔軟化されているように感じます。会社が自己破産等破綻してしまうと「元もこうもないではないか」という考えが事実上判断に投影されているか もしれません。

 

 

ずいぶん難しい、ややこしい話になってしまいました。
弊事務所の事務員さんからも、内容が堅苦しくておもしろくない、と突き上げを食らっています。もっとやさしい、おもしろいテーマを選んで書こうと努力いたします。

 


「近況報告:法人関係 特に内部統制」

弁護士の仲田です法人関係の近況を報告します。 法人関係の仕事といえば、法人の自己破産ですね。不況が続き、一部の元気な会社を除いて中小企業はすでに限界に来ています(二極化しているのでしょうか)。 また、法人に破産申立をするお金すら残っていないため、法人の破産を諦め、 代表者個人のみ破産を申し立てるケースが多いです。できれば代表者だけではなく法人も自己破産した方か債権者のために少しでもなるのですが。 さらに、従業員の不祥事関連の訴訟等も意外に多いです。 さて、仕事からは少しそれますが、現在、中小企業の内部統制全般を研究しております。 前職の銀行員時代、私が内部監査や内部統制を所管する部署におり、その関係でCIA(公認内部監査人)という資格をとっています。 ところが、現在の内部統制 論、コンプライアンス、内部監査論は大企業向けのものに止まっております。中小企業に当てはめるには、かなりの工夫が必要だと感じております。 今のところ、中小企業の経営者の方々は、それらに対する興味があまりなく、残念ながらニーズが高いとはいえません。 しかし、それらのリスク管理をおろそかにしてしまうと企業の存続自体を危機に陥らせる危険があり、非常に大切なものです。 少しでも経営者のみなさんの意識を変えてもらえればと思い、現在、某大学等と連携して、来年度から経営者(及びその後継者)向け講座を開くよう準備しているところです。 「リスク管理は、損失を防ぐあるいは極小化させるためにだけあるのではなく、 利益を極大化させるためにも必要だ。」ということをお伝えできればと準備を進めて います。 また、私が力を入れている消費者問題も裏を返せば消費者を相手とする企業のリスク管理の問題ですので、それらの知識も経営者には必須のものである ことも伝えていきたいです。 今後、これらのこともみなさんにお話させていただこうと思っております。

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