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旧コラム 企業法務: 2018年12月

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従業員の債務整理への対応  [企業法務]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

今回の企業法務コラムは、企業のリスク管理の観点からの、従業員の債務整理のお話をします。

自己破産や個人再生を検討されている方は、会社に事情が知れたら困るという方がほとんどです。
勿論、プライベートなことなので言いたくないですよね。

 

今回は、会社としては従業員の自己破産や個人再生にどういう対応をとるべきなのかをお話ししたいと思います。
企業法務、リスク管理にも大事なことです。

 

従業員の自己破産は(個人再生も)、たとえ就業規則に解雇事由であると書いてあったとしても、解雇事由にはならないとお考えください。
従業員の自己破産と会社の業務はは基本的には関係がありませんから、従業員の自己破産、個人再生は解雇の合理的理由に該当しないのが原則です。

 

勿論、自己破産の場合では、警備員や保険外交員など特定の職業や資格が制限されるため(個人再生にはない)、そういった場合は解雇の理由になる可能性がないとは言えません。
ただ、配置転換等の他の処分・方策もあり得るため簡単には認めてくれないでしょう。
会社が従業員へ貸付をしている場合には、会社が損害を被ることになりますので、解雇は別としても、何等かの懲戒処分はできる可能性があります。

 

企業法務、リスク管理の観点からは、会社として、従業員の自己破産、個人再生には寛容に接すべきです。
むしろ、積極的にサポートをしてもいいぐらいだと考えます。

 

まず、仮に債権者から従業員の給与等の差押えがなされると会社としては非常に手間です。
債務整理してもらった方がコストが発生しません。
債権者からの督促電話などが会社に来るもの面倒ですね。

 

また、従業員が自己破産等で経済的更生を図ってもらうことにより、従業員のパフォーマンスが上がってくるでしょう。
多重債務で苦しまれている方は、疲れ切ってしまいます。
どんどん疲弊して会社も辞めてしまう人が珍しくありません。
会社としては早く債務整理をしてフル充電で頑張ってもらいたいですね。

さらに、不祥事防止などのリスク管理の観点から考えても、従業員に自己破産等で経済的に立ち直ってもらう方が得策です。
不祥事の原因は、経営者への恨み、遊興費の捻出など様々ですが、借金苦が原因ということも多いと思います。

 

会社へ妙な電話がかかってくるなど従業員が借金で悩んでいる兆候が見られた場合には、自己破産等の手続を薦める、あるいはサポートをするべきだと考えます。

当職の顧問先企業様からも従業員さんの債務整理を頼まれることがあります。
従業員さんから借金の整理の相談も来るような会社が望ましいかもしれませんね。

 

顧問弁護士、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

https://www.nakata-law.com/

 

https://www.nakata-law.com/smart/


株式会社の歴史など [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。

企業法務のお話です。
 

 

株式会社って誰のものでしょうか?
答えは簡単です。株主のものです。

 
日本的な感覚では、従業員も会社の一員のようなイメージですね。
現在の株式会社制度は輸入物なのです。そのため、江戸時代までの日本的な感覚とは違うのですね。
あくまでも制度の問題ですが。

株式会社制度の原型は、大航海時代まで遡ります。

アジアとの交易は非常に儲かるが、航海の沈没や海賊などに襲われる危険も非常に高かった。無事に帰港できるかどうかギャンブルですね。

 

単独で出資して船を出すのは危険です。そのため、教会や貴族が出資し合い(株主)、船長を選んで(取締役)、奴隷を使って(従業員)、交易し、沈没等したら教会・貴族が諦める(株主有限責任)、帰還できれば利益を教会・貴族に分配する(配当、残余財産の分配)という仕組みができたのですね。
同時に出資者への会計報告のために複式簿記が開発されました。

 

そのためなのでしょうか、法律上、株式会社は株主のもので、従業員は法律上の構成員ですらありません。
合同会社など会社法でも「社員」は存在しますが、それは出資者を指します。

 

従業員は、労働者保護法制による修正により大航海時代の奴隷的立場ではなくなりましたが、法的には構成員ではないのです。

 

従業員は、特に中小企業にとって生命線と言っていいほど大切なのは事実です。
日本の社会通念でしょう。
経営者の中には、社会のため、従業員のためにと、経営をされている方も多くいらっしゃいます。
法律は西洋から来たため日本人の意識とはギャップがありますね。

 

なお、従業員に自社株を持たせると従業員の会社の構成員になりますが、経営戦略上、あるいは事業承継上、お薦めできません。
従業員の士気向上は他の人事施策に任せましょう。

 

顧問弁護士、企業法務はなかた法律事務所にご相談を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

 

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株式の分散はいいことか 【企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。

企業法務のお話です。

株式会社(特例有限会社も)の所有者は株主です。代表取締役社長ではありません。

上場会社であれば株式が分散している、すなわち株主がたくさんいるのは当然ですね。株式は資金調達手段ですから。
株主が経営することは不可能ですから、経営は専門家たる取締役が行います。

これを所有と経営の分離といい、会社法の想定する典型的な姿です。
株主からリスクを株式に限定された形で広く資金を集め、経営者が運用し、株主に配当する形ですね。
効率的な制度設計とも言えます。

 

同族中小企業で株式の分散をする意味はあるのでしょうか?
意味はないとは言いませんが、弊害の方が大きいと思います。
株式の分散はお勧めしません。

同族中小企業は、大企業の小さい版ではありません。別物です。
会社法が本来想定した株式会社ではありません。

同族中小企業の資金調達は銀行借入です。
経営者が連帯保証により無限に責任を負い経営しております。株式により資金調達をするわけではありません。
責任を負う経営者が、全株式を所有し、機動的にスピード感ある経営を行うことが中小企業の強みです。
会社法もそのような中小企業のために法定手続を簡素化できる制度を用意しています。
事業承継の観点からも株式の分散は問題です。後継者が会社をスムーズに引き継げるように(将来あるかもしれないM&Aのために)株式は集中するべきでしょう。

 

実際に、株式を分散すると面倒なこともあります。
株主は会社の所有者ですから、少数株主であっても株主権というものが認められています。ひとたび揉めると、対応が非常に面倒なのです。
弁護士をしていると実際にそのような揉め事に接することになります。
勿論、それにより経営が立ち行かなくなるということはないでしょうが、いちいち法定の手続をきちんと踏まないといけないコストがあります。

 

一方、株主側から見ると、同族中小企業では、少数株式を保有していてもあまり意味がありません。
市場で売却してお金に変えることもできません。それなのに相続税の課税対象となるだけです。
配当を貰えばまだいいのですが、会社の経営戦略として中小企業が配当をすることは税務上メリットがなく、かえって弊害があると言えます。

 

従業員の士気向上のためなどの従業員持株制度も、上場企業では安定株主の確保というメリットがあるでしょうが、中小企業には関係ありません。
しかも、株式の付与(譲渡)、退職時の株式の買取りの際、額面や低廉な金額で取引をしていることが通常のようです。
それは、税務上のリスクがありますので気をつけてください。
従業員の士気向上は別の方法で行うのがよろしいのではないでしょうか。

 

もし株式が分散している中小企業があれば、早期に株式を集中させることをお薦めします。

 

顧問弁護士、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。


広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602
 

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