• 刑事事件
  • 所属弁護士
  • 用語集
  • よくある質問
  • コラム
  • リンク集

HOME > 旧コラム > アーカイブ > 離婚問題: 2010年12月

旧コラム 離婚問題: 2010年12月

現在のコラムはこちらから

裁判離婚の話 3  【離婚問題】

弁護士の仲田誠一です。catface

 

 

離婚をするかどうかまだ悩まれている方の法律相談を受けることもよくあります。
その場合,離婚を決意された場合の法的な説明はもちろんするのですが,どうしても人生相談の様相を呈することになります。

特にお子さんが小さい場合には悩みますね。
相談者と一緒に,
「離婚後の生活はどうするのか?」
「苦しい生活を我慢して続けることがお子さんの幸せに繋がるのか?」
「やはりお子さんにとっては両親が揃っていた方が幸せなのか?」
「あなたにとって一度しかない人生を我慢して費やしていいのか?」
「我慢し続けてあなたの心が耐えられるのか?」
などと悩むことになります。

考えは人それぞれです。そのため,自分の考えを押し付けないよう気をつけています。
ただ,私は,「あなたが幸せになることが,周りの幸せに繋がるはずだ。」と必ず伝えるようにしています。clover

私に相談に来られるのも縁です,どういう形であれ幸せになって欲しいと願うのみです。

と言っておいてなんですが,今回も離婚の話をさせていただきます。
前々回が協議離婚の話,前回が調停離婚の話でしたので,今回は裁判離婚の話を簡単にさせていただきます。



◆ 裁判離婚とは?
離婚について同意が成立しない以上,いよいよ裁判で離婚を求めるしかなくなります。

裁判離婚とは,離婚請求を認容する判決によってする離婚です(もちろん裁判の中で,和解・認諾がされると判決によらずに離婚することができます)。

日本の法制度上,裁判離婚は,法定の「離婚原因」がないと認められません。
裁判所によって相手方の婚姻継続の意思を否定して強制的に離婚を成立させるわけですから,この場合なら強制的に離婚させてやろうという「離婚原因」が法律で決まっているのです。



◆ 法定の「離婚原因」って何?
民法770条1項に次の5つが定められています。
① 配偶者の不貞行為
② 悪意の遺棄
③ 3年以上の生死不明
④ 回復の見込みがない強度の精神病
⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由



◆ 「配偶者の不貞行為」とは?
自由な意思で行った配偶者以外の者との性的交渉です。
一般的には浮気のことですが,ずいぶん前の判例で,夫から生活費をもらえない妻が生活のために行った売春行為を不貞行為であるとした例があります。

結婚すると,貞操義務が発生します。その貞操義務に違反すると,離婚原因になるだけでなく,慰謝料の支払い義務も負います。

「どこまでが貞操義務に反する行為なのか?」はまた面白い問題なのですが,機会があればご紹介します。



◆ 悪意の遺棄とは?
夫婦は,お互いに同居・協力・扶助義務を負います。正当な理由もないのに,夫婦のそれらの義務を果たさないことが「悪意の遺棄」です。
多い例が,相手を捨てて家出することでしょう。単に別居しただけでは当たりません。



◆ 3年以上の生死不明とは?
生存を示す最後の事実があった時点から3年間,生きているか死んでいるかもわからない状態が続いたことです。
生死不明の原因や責任は問われません。
失踪宣告でも婚姻関係を解消できますが,7年かかりますので,早く婚姻関係を解消したいときは,この離婚原因が意味を持ちます。



◆ 回復の見込みがない強度の精神病とは?
これは一見するとひどい法律だと感じられるかもしれません。
そもそも夫婦には,協力・扶助義務があるはずです。「配偶者が強度の精神病にかかって回復しないなら捨てていいのか?」と思われますよね。

ただ,一方で,相手と精神的な交流が全くできない中で,婚姻生活を続けることを強制するのも酷だとも言えます。法律はこの点を重視したものです。

この点,判例では,さすがに配偶者が強度な精神病であることだけでは離婚を認めていません。
病気の配偶者の今後の療養や生活について具体的な方途を講じ,ある程度前途に見通しがついた上でないと,離婚は認めない(後で触れる裁量棄却をする)としています。「具体的方途論」と呼ばれるこの考え方には,賛否両論あるでしょう。



◆ その他婚姻を継続し難い重大な事由とは
こ れまで書いた4つの離婚原因を具体的離婚原因と言いますが,最後の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」は,抽象的離婚原因と呼ばれます。先の4つの離婚 原因がなくても,婚姻が破綻して回復の見込みがない場合には離婚を認める,それは具体的なケースにより総合的に判断する,という意味の定めだからです。
離婚請求訴訟をする場合には,通常,4つの具体的離婚原因の主張と併せて,この抽象的離婚原因を主張して争うことになります(具体的離婚原因の立証に失敗しても,抽象的離婚原因の立証が認められれば訴訟に勝てるからです)。

どのような場合にそうと認められるかを説明するのは難しいです。度重なる犯罪行為による服役や,性的異常・性的不能,DV,著しい浪費癖,過度の宗教活動等のケースがあるようですが,あくまでも具体的な事情によって判断されます。

も ちろん,自分が不貞行為をしておいて,「婚姻関係が破綻したから別れたい」,と言っても,簡単に認められるわけではありません。そのような婚姻関係破綻に 責任ある配偶者からの離婚請求を,「有責配偶者の離婚請求」と呼びます。これを説明すると長くなるので,別の機会にお話します。



◆ 法定の具体的離婚原因があると認められれば必ず離婚できるのか?
そうではありません。
法律では,裁判所は,具体的離婚原因となる事実があったとしても,一切の事情を考慮して離婚を認めないことができるとされています。
「裁量棄却」と呼ばれるものです。先ほどの強度の精神病の所で挙げた例がこれです。



◆ 裁判離婚の場合,養育費や親権者はどうなるの?
離婚と一緒に裁判所に請求すれば,裁判所が決めてくれます。別途,調停・審判を経る必要はありません。



◆ 最後に
離婚のご相談は,簡単なようで難しいです。
感情の問題がおおきい点はもちろんですし,今後の長期間にわたる生活にも関わってくる問題だからです。
離婚問題は,弁護士にとって,デリケートに扱わないといけない事件の1つであることは確かです。

3回にわたって,離婚についてざっとお話しました。
離婚にまつわる細かい話は,機会を見つけてまたお話したいと思います。think


調停離婚の話 2  【離婚問題】

弁護士の仲田誠一です。catface

 

みなさんは忘年会をいくつやりましたか?年末までまだまだ続きますね。
ちなみに,今日は事務所の忘年会です。弁護士3人,事務員3人の総勢6名の忘年会ですが,ずいぶんうちの事務所も人が増えてきたなあと思っています。
広島のいわゆる「町弁」(東京大阪の大企業向けの大規模事務所ではなく,町医者のような弁護士のことです。ドラマもありましたね。)としての適正な人員はわかりません。
ただ,私自身は,責任がある以上,受任している事件や事務所で働く仲間を常に把握したいと考えているので,これくらいがちょうどいいかなと思っています。

さて,前回は協議離婚の話を簡単にしました。
当事者で協議が整わない場合,どういう流れになるのでしょう?
今回は,調停離婚について簡単にお話したいと思います。


◆ 協議が整わなければ調停を申し立てるべき?
実は,難しい問題です。
ここで考えることは,2つあると思います。
その2点とは,①相手が協議に応じるか?,②調停が成立しない場合裁判に打って出られるかです。

調停に相手が出てこなければ調停は成立しません,今度は訴訟をするしかなくなります。
また,調停に相手が出てきても,相手方に全く譲歩する余地がなく調停の中で合意ができなかった場合も,訴訟に出るしかありません(細かく言えば「審判離婚」というものもあるのですが,あまり有用ではなくお話はしません)。

そして,訴訟をするしかなくなった場合には,法律上離婚ができる理由があるのか(離婚訴訟に勝てるのか)が問題となります。
実は,裁判上の離婚が認められる理由は法律で決まっています(次回にお話します。)そのため,そのような理由がない場合には,困ります。
「調停が駄目だった,でも訴訟に出ても勝つ見込みがないから訴訟もできません,もう少し時間をおきましょう。」,といったことになるケースもありえるのです。

ご 自分で調停をする場合には,それでよいと思うのです。しかし,弁護士が入る以上は弁護士費用が発生するわけで,相談の際には,私が受任した場合に依頼者に 本当にメリットがあるか悩む場合があります。良心的な弁護士であればそのような場合に安請け合いはしてはいけないと思っています。
そこで,じっくり話し合い,納得してもらった上で受任するようにしています。

もっとも,当事者同士では全く折り合いがつかなくても,調停委員あるいは弁護士を介して話し合うことで折り合いがつくようになるケースもあります(良心的な弁護士なら自分の依頼者に法的に落ち着くところで折り合いをつけるよう説得することでしょう)。

したがって,上のような場合でも調停を申し立てる意味はないとは一概には言えません。


◆ 調停は自分だけでできる?
調停はご自分でもできます。

た だ,ご自分で調停を行ったために,法律上請求できることをきちんと主張しないで,不利な調停を成立させてしまった例を,何件か実際に耳にしました。もちろ ん,調停委員がわからないことを教えてくれるかもしれません。しかし,調停委員はあくまでも中立的な立場であり,また当たり外れもありまして,ご自分で やって失敗するケースも残念ながら皆無とは言えないようです(もちろん調停委員のご苦労は大変なものだと聞いておりますし,ほとんどの調停委員は親切かつ 公正だと思います)。

また,強制執行の必要が出てくるケースでは,弁護士がついていた方がいいでしょう。

というわけで,個人的には弁護士についてもらった方が公正な解決が図られると思います。
ご心配,ご不安なら,是非弁護士にご依頼ください。


◆ 調停の進め方は?
調停は,1ヶ月に1回程度の頻度で期日が開かれ,調停委員が双方の言い分を交互に聞いて(相手方に遭わないでもすむよう配慮してくれます),解決を図ります。
反面,交互に話を聞かれるので,待ち時間が辛いです。
2,3回の期日で終わるようだとかなり早い解決だといえるでしょう。

合意が整ったら,いよいよ裁判官が出てきて,調停を成立させます。調停調書は判決と同様な効力があります。

ここで一点注意しておく必要があります。それは,調停の管轄(どこの家庭裁判所に申し立てればいいか)です。
原則として,相手方の住所地ということになるんです。
例えば,あなたが広島市に居て,相手方が高松市にいる場合,あなたが申し立てるべき家庭裁判所は,原則として高松です(相手方が申し立てるなら広島ということになります。)。不便ですね。ここも調停の難しいところです。


◆ 調停が整わなければ?
調停が整わなければ,またそもそも相手が出てこなければ,調停は不成立になります。
それでも離婚をしたい場合には,裁判に打って出るしかありません(審判離婚は別に置いておきます)。

次回に,裁判離婚の話を簡単にさせていただこうと思います。


協議離婚の話 1  【離婚問題】

弁護士の仲田誠一です。catface
 
 
先週,私の尊敬する先輩弁護士と忘年会をやりました。

その先輩弁護士が「上海帰りのリル」って曲を歌われていたのですが,カラオケの映像に出てくる上海が今の上海とまったく違う風景でした。karaoke
 
今年,仕事も兼ねて上海に行ったのですが(万博も見てきました),本当に大都会ですね。東京に住んでいた期間が長い私ですが,その都会振りには驚きました,日本の比ではないです。
車も高級車ばかり走っていました,上海ではナンバーを取るだけでかなりお金がかかるらしく,お金持ちしか車に乗れないという話を現地ガイドから聞きました。でも,その「お金持ち」が大渋滞するほど多いんです。
なお,残念ながらドイツ車が多いような気がしました。上海ではVW社がいち早く入っていたようですね。

ところで,まだ離婚について何もお話していないなと気づきました。もっと上海の話をしたいのですがまたの機会にします。

離婚には,ポピュラーなところで,協議離婚,調停離婚,裁判離婚があります。
今回は,協議離婚について簡単にお話しましょう。


◆協議離婚をするにはどうしたらいい?
 
「そんなの知っているよ」と言われるかもしれませんが、協議離婚とは、その名のとおり当事者の協議による離婚です。

協議離婚には、①離婚意思の合致と、②届出、が必要です。つまり、当事者が離婚について合意し、その合意に基づいて離婚を届けます。
日本人には当たり前のような制度ですが、世界的に見るとそうではないんですよ。

実は,西欧ではキリスト教の関係で長らく離婚が認められなかった国もあるようです。神の許しで結婚したから別れちゃ駄目って理屈ですかね。

一方,日本では,近時の研究で,江戸時代に既に,離婚がわりと簡単に認められていたとわかってきたようです。いわゆる「三行半」って言っても,男性からの一方的なものだけではなく,今で言う協議離婚がポピュラーだったようです。日本は離婚に寛容な国のようです。


◆ 離婚届を作成したらもう覆すことはできない?
そうではないんです。
これは意外にご存じない方がいらっしゃるのですが,協議離婚に必要な離婚意思は,届出書作成のときだけでなく,届出時にも必要です。

したがって,一旦,離婚届書を作成しても,その後,一方が届出前に翻意すれば,その届けは法律上無効となります。
もっとも,相手に届出をされてしまうと後が面倒になります。そのような場合には,役所に離婚届を受理しないようにお願いできる「不受理申出制度」があります。それを利用してください。


◆ 協議離婚をする際に決めておくことは?
財産分与,養育費,子の面接交渉等々いろいろあります。簡単には説明できませんし,ケースによって決めることは違います(長くなるので,またの機会の個別にお話ししますね)。

別れたい一心で不利な約束をする方もいらっしゃるのが現実です。できれば,当人同士では決めず,弁護士等の専門家に相談してください。
また,必ず,離婚届を出す前にすべてきちんと決めてください。後でもめることになりかねませんし,「その条件なら離婚しない」っていう交渉のカードを失ってしまいます。


◆ 離婚協議書は公正証書で作成した方がいい?
公正証書で作成する意味は,証拠をより確実なものにする目的と,養育費等が支払われない場合に簡単に強制執行ができるよう手当てする目的にあります。
もちろん公正証書で作成した方がいいでしょう。


◆ 別居期間中の生活費はもらえる?
離婚協議をする段になると既に別居している方も多いでしょう。収入が相手よりも低い,あるいは子供を養っているという場合には,別居中の生活費を請求できます。
別居期間中の生活費を請求することを「婚姻費用分担請求」と言います。

夫婦双方の収入の差によって,子供の年令及び人数によって,ある程度相場が決まっています。婚姻費用は,一般的な感覚からすると十分ではないと感じてしまう金額なのですが,請求はできますので忘れずに。

支払ってもらえないときは,調停を申立て,それでも合意できない場合には審判に移ります。調停あるいは審判で決まれば,払ってもらえない場合に強制執行をすることができます。

ここで気をつけて欲しいのは,婚姻費用は別居時に遡って請求することが原則としてできないということです。それが認められるケースもあるのですが,なかなか難しいことです。
ですから,弁護士に早めに相談してください。



◆ 最後に
当事者の協議が整わない場合には,調停に進むこととなるでしょう。
法制度上,いきなり離婚訴訟をするのではなく,その前に調停を申立てることが原則となっています。
もっとも,そもそも調停を申し立てるのが意味があるか判断に迷うケースもあります。

次回以降に,調停離婚と裁判離婚について簡単にお話しようと思います。
 

1

メインページ | アーカイブ | 離婚問題: 2011年1月 »

このページのトップへ