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旧コラム 借金問題: 2019年7月

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訴訟を提起された場合と自己破産 [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
債権者に訴訟を提起されたこと(支払督促が申し立てられたこと)をきっかけに債務整理のご相談に来られる方がいらっしゃいます。

また、自己破産を選択して受任通知を出した後に、債権者から訴訟を提起されるケースもあります。

今回は、そういった自己破産と訴訟との関係をお話しようと思います。
 
まず、債権者に訴訟を提起されたこと(支払督促が申し立てられたこと)をきっかけに債務整理、特に自己破産を決意される場合です。
 
基本は、急いで受任通知を送ります。
また、訴訟の場合には裁判所には委任状と答弁書、支払督促の場合は異議申立書と委任状を送ります。
いずれも期限があるので気を付けてください。支払督促の場合は特に短いです。

そうすれば、債権者が訴訟(支払督促の場合は異議申し立てによって訴訟手続に移行します)を取り下げてくることが多いです。

取り下げない場合には、急いで自己破産申立を行います。
通常は債権調査を行うのですが、それを省いてでも早く申立てることが多いです。
また、家計収支表は、広島本庁では2ケ月分必要ですが、申立てを急ぐ場合には1か月分でいいこととされています。
 
どうして急ぐかというと、強制執行が怖いからですね。
特に給与等差押えです。
理屈上、破産開始決定を得ると債権者は判決を取っても強制執行ができません。
債権者が破産申立の事実を知ると、通常は訴訟を取り下げます。
訴訟をできるだけ時間稼ぎしておいて、その間に自己破産申立てを急ぎ、早期に破産開始決定を取ることを考えるのです。
 
勤務先を債権者が知らない場合には、通常調べることはできないですし、調べる手間もかけません。
その場合には、預貯金の差押えが怖いぐらいでしょうか。動産執行などは原則してきません。不動産がある場合には差し押さえられても直ちに換価されるわけではないので、自己破産を考えている限りでは、あまり怖くありません。

預貯金で困るのは、給与口座、年金口座、生活保護受給口座の差押えですね。
年金、生活保護を受ける権利自体は差押え禁止財産ですが、入ってくる口座自体は差押えが可能です。それが有効かどうかはまた別の議論があり争うことができますが、お金が一時的にでも引き出せなくなることには変わりがありません。
債権者が債務者の預金口座の所在を調べられるわけではありません。債権者に振り込んだ銀行・支店名、融資金を振り込んだ口座ぐらいしかわかりません。
ただ、ゆうちょ銀行口座と自宅近辺の代表的な金融機関の支店へ差押えをかけてくることがあります。
遠方の銀行あるいは支店であれば債権者の差押えがヒットしないでしょう。
年金受取口座等を念のため変更してもらうことがあります。

やはり、訴訟提起、支払督促申立てがなされている場合には、申立てを急いだ方が無難でしょう。
 
これに対し、弁護士が受任通知を出した後に、訴訟提起をしてくる債権者もいます。
 
典型的なケースは、自己破産申立て準備が遅れ、債権者が待ちきれずに訴訟提起をしてくる場合です。

受任通知から数か月経つと、債権者から進捗確認の連絡が弁護士宛に来ます。
それでも申立てがなされずに半年を優に超えるような状態になると、債権者から法的手続を進めるとの連絡が来ます。
当然、弁護士も依頼者様に準備を促すのですが、中にはなかなか連絡が取れなくなる方もいらっしゃいます。

急かされて準備を頑張ってくれる方は急いで申立てをするのですが、準備を進めてくれないあるいは連絡が取れなくなる方については、弁護士も辞任をすることになります。

弁護士が辞任をすると、期限の利益が喪失された(一括請求されて遅延損害金も発生している)状態で、代理人がいないことになります。督促もされますし、訴訟提起もされます。
自己破産の申立て準備を遅らせることは百害あって一利なしなので、お気を付けください。

勿論、敢えて申立てを遅らせる必要があるケースでは、きちんと債権者に弁護士が説明をします。たいていの債権者は待ってくれます。
 
ところが、中には、受任通知後間もないのに訴訟提起をしてくる債権者もいます。
2,3社の名前が挙がりますが、具体名はここで挙げません。

債権者がそのような対応を取った場合には、できるだけ訴訟の進行を遅らせ、その間に自己破産申立て、破産開始決定を取るほかありません。
受任通知後1~2か月で訴訟提起をされたことが2回あります。
債権者にとっても自己破産されてしまうと訴訟費用と手間が無駄になるだけだと思うのですが、特定の債権者はそのような対応をすることがあります。
 
債権者から訴訟が提起された、あるいは支払督促の申立てがなされたときは、他の督促状や訴訟予告と異なり、裁判所から書類が来ます。
裁判所から書類が届いたら、すぐに、弁護士に相談する、あるいは依頼している弁護士に渡す必要がありますね。
 
債務整理(任意整理、個人再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
https://www.nakata-law.com/
 
https://www.nakata-law.com/smart/


自己破産か、個人再生か、任意整理か [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
弁護士会で若手会員相手に個人再生委員研修の講師をすることとなりました。
個人再生委員の話だけではなく個人再生を申し立てたことがない会員向けに個人再生手続のポイントも講義する予定です。
そういうわけで、改めて債務整理の手続選択について考えてみました。
個人でいうと、自己破産か、個人再生か、任意整理かの選択ですね。
以前のコラムでも何度か書いた気もしますが、あらためて整理いたします。
 
債務整理の手続選択は、借金の額、借金の内容、収入(弁済原資)、保有財産、職業等をいろいろ考えて行います。
オーダーメイドで考えないといけません。
 
まずは、借金の額と収入の関係ですね。
借金総額(住宅ローンは除きます)を36回(3年)で支払うと仮定して、収入からその金額を毎月支払うことができるかどうかを考えます。
それが支払えない状態でしたら、借入元本をカットできる個人再生、自己破産という法的整理手続を考えます。
逆に支払えるのであれば任意整理で十分ということです。資金繰りの問題だけ解決すればいいケースです。
 
勿論、支払えない状態であっても、法的整理をすることに躊躇するケースもありますね。
親戚が保証人になっていて迷惑がどうしてもかけられない、ローン付の車を維持しないと生活できない、勤務先から借入れがある等々色々な事情があります。
 
任意整理でも、債権者にきちんと説明して納得してもらえたら5年間あるいはそれ以上の弁済期間での和解も不可能ではありません。
5年ぐらいであると割合簡単にOKがもらえるでしょうか。
そこで、法的整理を避けたいケースでは、和解できそうな弁済期間での弁済が可能な限りで、任意整理を選択することはあります。
 
ただ、長期間にわたってギリギリの弁済を続けていくことは危険ですし非常に苦しいですね。
また、弁済途中で頓挫してしまえばその際には自己破産等を選択せざるを得ず、それまでの苦労が無駄になることもあります。
初めに自己破産していれば弁済分は貯蓄で残ったかもしれません。
さらに、長年にわたって借金返済のために働くよりも今後の生活のために少しでも貯蓄をしてくことが望ましいのは言うまでもありません。
ギリギリの弁済計画だと、支払い完了時には財産がゼロということになります。
無理をして任意整理を選択しようとされる方には、ここら辺をお話して、その上で決断してもらいます。
 
勿論、条件が揃えばですが、法的整理を選び難い原因をクリアしつつ自己破産、個人再生を選択することがあります。
敢えて偏頗弁済をする、車を親族が買い取るなどですね。
自己破産手続、個人再生手続においてそれらの行為が問題になるとしても、結果的にはベストな選択になることも正直あります。
弁護士の腕の見せ所でしょうか。
当然のことですが、弁護士の助言の下で進めてください。
 
法的整理を選択する場合、個人再生か自己破産かの選択が残りますね。
 
財産もない、他の問題もないということであれば、自己破産を勧めます。
 
個人再生ができる借金額の場合はたいてい自己破産もできると思います。
破産は支払不能、個人再生は支払不能のおそれが要件ですが、弁護士は受任通知を出すと期限の利益は喪失されるので、たいてい支払不能と説明がつきます。
債務整理を決断されたのであれば、できればすべてリセットして、経済的に立ち直ってもらいたいです。
 
一方、自己破産ではなく個人再生を選択しないといけないケースもありますね。
 
自宅不動産を維持しないといけない場合には、個人再生しかありません。
住宅資金特別条項を利用した個人再生ですね。ただし、利用できる要件があって、借入の仕方、担保の付き方によっては利用できない場合もありますのでご注意を。
住宅ローンを控除しても不動産価値が数百万円残るような場合には手続を進めることは難しいです。その場合には別の方策を考えるしかありません。
なお、自己破産申立て前に親族に不動産を売却して自宅を維持して自己破産をしたというケースもあります。売却にあたっては弁護士がきちんと関与しました。
 
職業の関係で個人再生を選択するケースもありますね。
自己破産では一部の職業について制限があります。よく見ることがあるのは、保険外交員、警備員でしょうか。
個人再生では職業制限がないので、そのような職業の方は個人再生を利用するということです。
 
数は多くないですが、自己破産を申し立てた場合の免責不許可事由の程度がかなり重くて(これは破産管財人をやっている弁護士に判断してもらってください。)、とても免責許可が得られそうにない場合も、個人再生を選択しますね。
免責不許可事由の程度がある程度という場合であれば自己破産でもかまわないです。
よほどでないと免責不許可にはなりません。
ただ、ある程度の免責不許可事由が存在する場合、管財事件になる可能性を見越して、無難に個人再生を選択することも珍しくはありません。
 
後は、大きな保険など、特に維持したい財産がある場合も個人再生を選択するでしょうか。
自己破産では、自由財産あるいは自由財産拡張対象の範囲を超える財産は処分をされてしまいかねません(超える分のお金を別途用意する方法もありますが)。
個人再生であれば、清算価値が上がって最低弁済額が大きくなるだけで済みます。
 
特殊な例であると、自己破産の免責決定確定後7年以内の場合には、自己破産を申し立てても原則免責を受けることができません。個人再生を選択しないといけませんね。
その場合、個人再生でも給与所得者等再生は利用できません。小規模個人再生のみになります。
なお、過去の個人再生においてハードシップ免責確定後7年以内、給与所得者等再生の再生計画認可確定後7年以内の場合も小規模個人再生しか選択できません。
 
一方、個人再生での計画弁済額も支払い続けることはできないケースでは、自己破産を選択しますね。
 
上述のいずれにも該当しない場合には、基本的には自己破産でも個人再生でもいいということになります。
 
経済的更生の観点からは自己破産ができるのであれば自己破産の方をお勧めしたいところですが、依頼者の中には、自己破産は潔しとせず、個人再生を望まれる方もいらっしゃいます。少しでも返済をしたいという思いから個人再生を利用するケースがあります。
 
以上、五月雨式ですが、自己破産、個人再生、任意整理の選択についての考え方をお話ししました。

これまでお話したほかにも、債務整理の手続選択には様々なことを考慮する必要があるのは当然です。ケースバイケースの判断になりますからね。

皆さんご事情は異なります。生活状況等も含めて、じっくりお話をしないと決断できないケースも珍しくありません。

債務整理をして経済的更生を図ると決断していただいた以上、できるだけ良い方向で進めたいです。手続選択を誤ると非常にもったいないですね。
 
債務整理の際には、是非、信頼できる弁護士と話し合って、納得できる手続選択をしてください。
 
債務整理(任意整理、個人再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
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相殺の担保的機能と破産 [企業法務、借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
相殺の担保的機能と破産の相殺禁止との関係のお話をします。
企業法務の観点からは、相殺は債権保全の方策として重視されます。
ただ、破産手続との関係で無限定に相殺の効力が認められるわけではない。
というお話です。
 
【相殺の担保的機能】
相殺は、担保権と同じような機能を有します。
売掛先から別途仕入債務がある場合には、売掛先が債務不履行をした場合に少なくも仕入債務については売掛金債権を自働債権として相殺すれば実質的に回収ができることになります。
他の担保権よりも手続が簡単であり、強力な担保ですね。
業績が芳しくない売り先に対しては、仕入を立てることで一部債権保全をしておくということもお勧めをすることがあります。
 
銀行も貸付先に預金を積んでもらうことがありますが、相殺の担保的機能を意識しているのですね。弁護士から受任通知が銀行に届くと期限の利益喪失事由になりますので、即相殺をしてきます。
主債務者の預金だけではなく、保証人の預金も相殺してきますので、ご注意ください。
 
取引先が破産をした場合でも相殺権は有効です。
当職が法人の自己破産の代理をした際にも、売掛先から相殺の主張をされることが珍しくありません。
 
ただ、破産法を貫く債権者平等原則から、一定の場合には相殺が禁止されます。相殺禁止に該当すると、相殺は無効です。
破産管財人は相殺の無効を前提に債務の履行を請求することができます。
 
相殺禁止が定められている場面を説明していきますね。
 
【破産手続開始後に債務を負担したとき】
当然ですね。相殺を許すと、破産手続開始後に債務を負担することによって特別の担保権を付与することになってしまいます。
破産手続開始というのは、自己破産であれば、申立て後、予納金を納めて破産管財人が就任した時点です。
破産管財人との契約によって債務を負担した場合や破産管財人が否認権を行使して返還債務を負担する場合等ですね。
通常の取引関係では出てきません。
 
【危機時期に債務を負担したとき】
破産債権者が破産者に対する債務を負担したときは、相殺の担保的機能から、担保が供与されたと等しいことになりますね。
危機時期の担保供与は否認の対象になります。それと平仄を合わせて相殺を禁止しているものです。
 
1 支払不能を知った後の債務負担
債務者の支払不能状態を知って債権者が債権者に対して債務を負った場合には相殺が禁止されます。
支払不能とは期限の利益が到来した債務を一般的・継続的に支払うことができない状態です。
専らその契約によって負担する債務を破産債権と相殺に供する目的で破産者の財産を処分する契約を締結したときか、破産者に対する他人の既存の債務を引き受けた場合です。
前者のケースでは、少し要件が厳しくなっています。
 
2 支払停止があったことを知った後の債務負担
支払停止があったことを知った後の債務負担をした場合にも相殺が禁止されます。
ただし、破産者が当時支払不能ではなかった場合には相殺は禁止されません。ただし支払停止があった場合には支払不能が推定されます。
弁護士から自己破産を前提とする受任通知が届いたとします、受任通知は支払停止の通知です。その後は債務を負担しても相殺ができないということになりますね。
 
銀行が弁護士から受任通知後に口座に入金になった預金を相殺できない、相殺すると後に破産管財人から否認されると返還しないといけないというのはこの理屈からです。
 
3 破産手続開始申立てがあったことを知った後の債務負担
破産手続開始申立てがあったことを知った後の債務負担にも相殺禁止が及びます。
まあ、そうですよね。
 
例外が3点あります。
1 債務の負担が法定の原因に基づく場合
相続、合併、事務管理、不当利得にように当然に債務が発生しまたは帰属する場合です。
破産債権者が殊更に債権債務の対立状態を作出した場面ではないからです。
まあ、めったにないことでしょうが。
 
2 債務の負担が危機状態またはその兆表を知る前に生じた原因に基づく場合
危機状態またはその兆表を知る前に生じた原因に基づいて債務を負担する場合には、破産債権者の相殺への合理的期待を保護する趣旨です。
具体的な判断は難しい条文です。個々の事例における相殺の期待度の程度を検討するとされています。
 
3 債務の負担が破産手続開始申立ての時より1年前に生じた原因に基づく場合
破産債権者の予測可能性を害することのないようにしたという規定ですが、あまり想定できる場面がありませんね。
 
このように見ていくと、相殺の担保的機能は強いのですが、弁護士から破産申立てを前提とする受任通知が届いた後は債務を負担しても駄目なのが基本ですね。
相殺に限らず、債務者の状況をよく把握し、弁護士が受任するまでに債権保全を図らないといけないということですね。
 
企業法務サポート、顧問弁護士、債務整理(民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
https://www.nakata-law.com/
 
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