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コラム

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相続税法の概観 [税法のお話10]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

相続税法のお話を簡単にします。

 

相続税とは、相続財産という資産に担税力を認める資産課税であり、日露戦争中の戦費調達のために創設されたようです。
現在の相続税法は、英米系と大陸系の双方を加味した制度になっています。税金の計算方法がやや複雑です。

 

◆ 相続税課税対象財産

相続税の課税物件は、相続または遺贈によって取得した相続財産です。

 

相続財産には、財産権の対象となる一切の物及び権利が含まれます。
民法上の相続財産(民896)ですね。経営者であると会社への貸付金も相続財産ですので気を付けて下さい。

 

相続税法は、相続財産のほかに、相続財産と実質を同じくする財産及び権利も相続税の対象としています。みなし相続財産(相続税法3)ですね。

生命保険金、退職手当金などですね(各基礎控除が定められています)。遺産分割の際の相続財産と申告すべき遺産総額は異なるのです。

 

相続財産の評価は取得の時における時価によります(相続税法22)。
時価は、課税時期における当該財産の客観的交換価値(市場価格)ですが、実務上は、財産評価基本通達その他の通達による財産評価がなされます。
画一的、公平な課税処理のため一応の合理性が認められています。

 

なお、他の相続税課税対象財産もあります。
相続開始前3年以内の受贈(相続税法19)、相続時精算課税(21の9)の適用を受けた財産などです。

 

◆債務控除

相続財産から相続債務を控除できることは当然ですね。
ただし、控除できるものは、現存(相続税法13Ⅰ)+確実(同14Ⅰ)の債務だけです。
会社のオーナーの保証債務は、会社に支払能力がなく顕在化していない限り控除できないことになります。

相続財産に関する費用(遺産の管理保存費用、弁護士費用等)は控除できません。

葬儀費用については税法上債務控除が認められています(相続税法13Ⅰ)。民法とずれるところです。

 

◆基礎控除(相続税法15)

各人の課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いて課税遺産総額が算出されます。

現在の基礎控除は、3000万円+600万円×相続人の数、ですね。

先年大幅な増税がありました。基礎控除が従前の6割に下がりました。基礎控除を超える相続が増えたわけです。

養子による節税の件ですが、実子ありの場合は1、実子なしの場合は2まで相続人の数のプラスできます(相続税法15Ⅱ)。
なお、相続人の数は、代襲相続人も各1名と数えますし、相続放棄者も
1人に数えます。ややこしいですね。


基礎控除内の相続は相続税申告義務があるでしょうか?

答えはNOです。そのため申告をしないケースもたくさんあります。

 

法定相続分にかかる相続税の総額(相続税法16)

相続人法定相続分に応じて取得したと仮定し相続税率を適用して合計したものが相続税総額です。
実際の分割方法は相続税の総額には関係がないことになります。

 

◆各相続人等の相続税額(相続税法17)

相続税総額を各相続人の取得割合に応じて割り振った各相続人の相続税額に、2割加算(相続税法18)、あるいは税額控除をすれば、各相続人が納める税額になります。

 

イメージ的には、遺産総額がある、法定相続分に応じて相続した形で税額を計算して相続税の総額を算出する、それを実際に相続した相続人の取り分に応じて割り付ける、という流れです。

 

各種控除には、贈与税額控除(19)、配偶者の税額軽減(19の2)、未成年者控除、障害者控除(19の3、4)、相次相続控除(20)、相続時精算課税適用者にかかる贈与税額控除、外国税額控除(20の2)等様々な制度があります。

小規模宅地特例、配偶者軽減特例は、遺産分割ができていることが要件ですので注意してください。
揉めていて申告時期までに遺産分割が完了できない場合は、暫定的に相続税を支払って3年延期することも可能です(相19の2)。後で更正することになります。

 

◆その他

相続税、贈与税は連帯納付責任です(相続税法34)。
贈与をして受贈者が贈与税を払わない場合に贈与者に課税が来るという怖い話もあります。

 

遺留分減殺請求を後に受けた場合は、後発的事由による更正(国税通則法23)により還付をしてもらうということになります。

 

遺産分割協議の錯誤無効(想定していない税金がかかった!など)の場合も、民事訴訟を経て後発的事由による更正請求という方法が考えられます(なお、遺産分割の債務不履行解除はできないとされています)。簡単に錯誤無効が認められるわけではありませんが。

 

遺産の再分割、遺産分割協議の合意解除については、新たな契約と見られますのでご注意を(贈与等の課税リスクがあります)。

 

贈与税は、相続税の補完税として相続税回避の防止を立法趣旨としますから、贈与税法に規定があります。
贈与税は相続を前提とするため、個人からの贈与のみ課税対象です。個人が法人から贈与を受けたら所得税(一時所得など)です。

相続財産の評価と贈与財産の評価とは同一評価基準です。

基礎控除110万円内(21の5、措置法70の2)の贈与は申告が必要ありません。
ただ、暦年贈与は少しリスクがあります。確定日付を取っておく等の方法で明確にしなければいけません。

なお、贈与税には、婚姻期間20年以上の居住用不動産等の配偶者控除(21の6)や事業承継税制など特則がたくさんあり、要件も細かく決まっています。
よく見ておかないといけませんね。

租税法のお話が続きました。ここで一休みして、再開の際には法人税法のお話をしようとかと思います。

 

お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

http://www.nakata-law.com/

 

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民法改正講座10【身近な法律知識】

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。
 
今回は、債務の消滅に関する規定です。
 
【第三者の弁済(民法474条)】
債務の弁済は第三者からもすることができますが、債権者保護の規定が整備されました。
 
弁済をするについて正当な利益を有しない第三者は、債務者の意思に反して有効な弁済はできません。正当な利益とは法律上の利益です。
ただし、債務者の意思に反することを知らなかった債権者については第三者弁済が有効になります。
また、債権者は、第三者が債務者の委託を受けていたことを知らない限り、弁済を拒絶することもできます。
 
債務の性質上第三者の弁済を許さないとき(債務者本人が履行しないと意味がない債務は金銭債務以外ではよくありますね。)は第三者弁済ができず、また、当事者の意思表示により第三者弁済を禁止することもできます。
 
【預金又は貯金の口座に対する払い込みによる弁済(民法477条)】
一般的に利用されている振り込みによる弁済の効果について規定が新設されました。
弁済の効力が発生するのは、債権者が預貯金の払戻しを請求する権利を取得した時です。
銀行等に対する預貯金債権発生の時ですね。
 
【弁済の場所及び時間(民法484条)】
弁済の時間移管する規定が追加されました。
法令又は慣習により取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、弁済をし、又は弁済の請求をすることができる、という規定です。
 
【受取証書の交付請求(民法486条)】
弁済と受取証書の交付が同時履行の関係にあることが明示されました。
債務者は、債権者が受取証書の交付をしないときは、弁済の提供に留めて債務不履行責任を免れ、債務の履行を拒絶することができます。
 
【供託(民法494条)】
弁済供託の要件が整理されました。
債権者の受領拒絶を原因とする弁済供託の要件として、債務者による弁済の提供が必要であることが明記されました。これまでも実務上はそういう扱いでしたが。
債権者不確知を原因とする弁済供託は弁済者の無過失が要件となりますが、債権者に弁済者の過失の主張・立証責任を負わせるように規定が整備されました。
 
なお、供託に適しない金銭や有価証券以外の物品を目的物とする供託(物品供託)において、売却代金の供託に関する規定も整備されています(民法497条)。
 
【弁済による代位の要件(民法499条)】
債務者のために弁済をした者は、債権者に代位します。
債権者から弁済者へ権利が移転するのですね。
今回、弁済について正当な利益を有しない場合でも、債権者の承諾が不要とされました。
 
もっとも、弁済について正当な利益を有しない場合では、代位の対抗要件として、債権譲渡と同様の債権者からの通知または債務者の承諾が必要です(民法500条)。
 
なお、金融機関との取引では、特約により、代位には債権者の承諾が要求されていることと思います。
 
【債権者による担保の喪失等(民法504条)】
弁済をするについて正当な利益を有する者がいる場合には、債権者は担保保存義務を負います。
債権者が担保保存義務に違反した場合には、義務違反の影響に応じて免責を受けることができます。
物上保証人から担保の目的物を譲り受けた第三者及び特定承継人にも担保保存義務違反による免責の効果が承継されることが明記されました。
また、取引上の社会通念に照らして合理的な理由があると認められるときは、免責の効果が生じないこととされました。
元々、担保の差し替えや一部解除等をすることがある金融機関では特約により担保保存義務の免除を定めていましたが、法律上手当がなされたということです。
 
他にも代位関係の規定が整備されていますが、マニアックすぎるので割愛します。
 
【不法行為等により債権受働債権とする相殺の禁止(民法509条)】
旧法では、債務が不法行為によって生じたときは、債務者がそれを受働債権(相殺の相手の債権)として相殺をすることができませんでした。
債務者が加害者、債権者が被害者に当たり、加害者が被害者に対して債権をもっている場合の相殺の問題ですね。
規律の合理化のための改正がなされています。

相殺禁止の受働債権の範囲が次の2つに限定されています。
1 悪意による不法行為に基づく損害賠償債務
悪意とは、積極的な害意が必要とされています。
不法行為の誘発防止には悪意による損害賠償債務だけを対象としたら済むと考えられたようです。
2 人の生命または身体を侵害する不法行為に基づく損害賠償債務
損害賠償債務は不法行為に限らず、債務不履行責任も含むことになっています。
過失によるものも含まれます。被害者に現実の賠償を受けさせる必要が高いからです。

なお、それら損害賠償債権であっても、他人が譲り受けた債権であるときは、相殺ができるとされました。被害者保護の必要性がありませんからね。
 
【更改に関する規定の整備(民法513条から518条)】
更改は実務上あまり見ることがありませんので簡単に。
更改は、従前の債務に代えて、新たに給付の内容について重要な変更をする、債務者あるいは債権者を交替するもので、従前の債務が消滅します。
更改の意思(従前の債務を消滅させて同一性のない債務を発生させる意思)が必要と明記されました。
通常は、従前の債務を消滅する意思はなく、代物弁済契約、免責的債務引受契約、債権譲渡のケースが多いのではないでしょうか。
なお、債務者の交代は免責的債務引受に近いので、免責的債務引受に関する規律が準用されています。
 
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民法改正講座9【身近な法律知識】

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。
 
今回は、債権譲渡と債務引受のお話です。
 
債権は、原則、譲渡することができます。
債権譲渡の対抗要件(効力を主張する要件)は、譲渡人から債務者に対する通知か債務者の承諾です。
従来、「指名債権」の譲渡という言葉が使われていましたが改正法では「債権」譲渡に変更になりました(改正民法467条)。
 
【譲渡制限に関するもの(民法466条~466条の6)】
譲渡禁止特約に反する債権譲渡の効力も有効であると定められました。
ただし、債務者は、債権譲渡特約について悪意または重過失の譲受人等に対しては、債務の履行を拒み、譲渡人に対する債権消滅事由を対抗できる規律です。
この場合、譲受人は、債務者に対して、譲渡人への履行の催告ができ、相当期間内に履行しない債務者に対しては譲受人も直接請求することができます(以上民法466条)。

それらの規律に合わせて、
譲渡制限特約に反する債権譲渡があった場合の債務者の供託(民法466条の2)
譲渡制限特約に反する債権譲渡の譲渡人に破産開始決定があったときの譲受人の債務者に対する供託請求権(民法466条の3)
譲渡制限禁止特約が強制執行には対抗できないことの明文化(民法466条の4)
が整備されています。

将来債権(これから発生する債権)の譲渡も従来から認められていますが(債権譲渡担保によく利用されます。)、そのことも明文化されました(民法466条の6)。

なお、預貯金債権(約款で譲渡禁止特約が付されています)は、その特殊性から、譲渡禁止特約について譲受人が悪意・重過失の場合の債権譲渡の効力は無効とされています。
ただし、従来どおり、強制執行の差押債権者に対しては対抗できません(民法466条の5)。
預貯金債権の譲渡については、譲渡禁止特約が例外なしに付いており、かつ譲受人の悪意または重過失が容易に認められますので、無効と考えてけっこうです。
 
【債権の譲渡における債務者の抗弁(民法468条)】
異議をとどめない承諾による抗弁の切断制度が廃止されました。
債務者が異議をとどめない承諾をした場合に、譲渡人に対抗することができた事由(抗弁)が主張できなくなるという制度が、債務者にとって酷だからという理由で廃止されたわけです。
債務者は、債権譲渡の対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲渡人に対抗することができます。
 
【債権の譲渡における相殺権(民法469条)】
債権譲渡がなされた場合に債務者が譲受人に対して相殺の抗弁を主張することができる範囲が拡張されました。
反対債権の取得が債権譲渡の対抗要件具備時(譲渡人からの通知または債務者の承諾)より前であれば、反対債権をもって相殺することができます。これは当然ですね。
対抗要件具備時より後に取得した債権であっても、
1対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権
2債権譲渡の対象となった債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権
の場合は相殺に使えます。
前者の例として、委託を受けた保証人が対抗要件具備後に保証債務を履行した場、後者の例として、売買契約の目的物の契約不適合を理由とする買主の損害賠償請求権が、各挙げられています。
 
次は債務引受関係です。

債務引受という言葉をご存知でしょうか。
債務者の交代(免責的債務引受)あるいは追加(併存的債務引受)のことです。
免責的債務引受は、会社の代表者の連帯保証債務の相続処理の際、後継者が他の相続にから引き受ける形で連帯保証債務を引き継ぐケースでよく見ますね。
元々認められていたものですが、条文が追加され整備されました。
 
【債務引受に関する規定の整備(民法470条から472条の3)】
併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、同一の内容の債務を負担します。
引受人は、債務者が引受けの効力が発生した時点で有する抗弁権を主張することができ、債務者が取消権・解除権を有するときは履行拒絶権も有します。
 
免責的債務引受の引受人は、債務者と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れることになります。
債務者が代わるわけですから、勿論、債権者の同意が必要です。
引受人の抗弁権・履行拒絶権に関しては、併存的債務引受と同様です。
引受人は、別途合意がなければ、債務者に対して求償権を取得しません。自分の債務として引き受けるわけですからね。
債権者は、それまで債務者が負担していた債務のために設定されていた担保権または保証を、担保設定者あるいは保証人の承諾を得ることにより、引受人が負担する債務に移転することができます。
 
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民法改正講座8-2【身近な法律知識】

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。
 
多数当事者の債権債務関係の続きです。
多数当事者というのは債権者あるいは債務者が複数いる場合ですね。
 
【委託を受けた保証人の求償権関係(民法459条から460条)】
委託を受けた保証人(普通は委託を受けています。勝手に保証人になることはあまりないですね)の求償権関係の条文が整理されました。
委託を受けた保証人は、弁済等債務消滅行為をした場合に主債務者に求償できます、主債務の期限前の行為と期限後の行為とで求償権の効果が異なります。
一定の場合には事前求償権も認められます(あまり利用するケースはないでしょうが)。
併せて改正民法462条では、委託を受けない保証人の求償権の規定が整備されています。
 
【通知を怠った保証人の求償の制限等(民法463条)】
保証人がいる場合に弁済等債務消滅行為をする場合には、主債務者あるいは保証人に対し通知をしないと一定の法律効果が付されます。事前の通知義務ですね。
正直言ってそのような通知をするということはあまり目にしないのですが、気を付けないといけないですね。
 
保証人が債務消滅行為を行う際の主債務者に対する事前の通知義務が委託を受けた保証人に限定されました。
委託を受けていない保証人の求償権はそもそも主債務者の利益を受けたあるいは受ける限度に限定されているから必要ないというテクニカルな理由です。
委託を受けた保証人が事前通知を怠って債務消滅行為をすると、主債務者が債権者に対抗することができた事由(相殺権など)を保証人の求償権に対し行使できます。
 
逆に、主たる債務者が委託を受けた保証人に対して債務消滅行為をしたことの通知(事後の通知)を怠った場合には、善意の保証人がさらに債務消滅行為をしてしまうと、保証人が自己の債務消滅行為が有効であるとみなすことができます。
 
また、保証人が事後の通知を主債務者に対して怠った場合には、善意の主たる債務者がさらに債務消滅行為をすると、主債務者は自己の債務消滅行為が有効であるとみなすことができます。
 
【根保証の規律の整備(民法465条の2~465条の5)】
根保証とは、被担保債務の限定のない保証ですね。
 
一部規律の対象が、「貸金等根保証契約」から「個人根保証契約」に変更になりました。
貸金等債務が含まれない根保証一般を意味します。
賃貸借契約における根保証契約も対象となることになります。

従来の貸金等の根保証に限定された規律も残っており(元本確定等)、その場合は従来の貸金等根保証契約が「個人貸金等根保証契約」と呼ばれています。
 
個人根保証契約は、極度額を定めなければ無効となることにご注意ください。
所謂、金額の限定がない包括根保証の禁止ですね。
 
【公正証書の作成と保証の効力(民法465条の6)】
これは大きな改正ですね。
会社や個人が融資を受ける際の第三者の保証契約について(事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約または主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約について)、公証人による保証人(個人に限る)の意思確認手続が新設されました。
保証意思宣明公正証書を作成しなければ保証契約が無効となります。
 
ただし、主債務者の事業と関係の深い方が保証人となる多くの保証契約にはルールが適用されないことになります。
主たる債務者が法人である場合の、
理事・取締役・執行役またはこれらに準ずる者、議決権の過半数を有する株主等、
主たる債務者が個人である場合の、
共同事業者、事業に従事している配偶者、
にはこのルールは適用ありません(民法465条の9)。
 
公正証書を作成するというのはけっこう手間ですよね。
第三者個人保証はなくした方がいいというのが世の中の流れなので、その方向に進んでいくことが前提なのかもしれません。
 
また、会社の借入れはわかりやすいですが、個人事業の借入れは「事業のため」と言えるか問題となります。賃貸マンション・アパートの建設資金借入の場合などですね。
金融機関としては広めに解釈するのでしょうね。
 
なお、主たる債務者が、事業のために負担する債務について保証を委託するとき、または主債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証を委託する時は、保証を委託する個人に対し、①財産及び収支の状況、②主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況、③主たる債務の担保に関する情報、を提供するというルール(情報提供義務)も新設されています(民法465条の10)。

仮に主債務者が情報提供義務を懈怠した場合には、保証人が①から③について誤認し保証を契約し、かつ債権者が主債務者の情報提供義務懈怠について知っていたまたは知ることができたなら(知らないことに過失がある場合ですね)、保証人が保証契約を取り消すことができます。
 
保証契約は非常に危険です。
借りたわけでもないのに主債務者と同じ責任を負います。
自分が借りる感覚でないといけません。
主債務者と利害関係が一致していない場合はできないですね。
第三者の保証を要求されるケースでは、主債務者の信用があまりないということを意味します。危険ですね。
 
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民法改正講座8【身近な法律知識】

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。
 
多数当事者の債権債務関係の話です。
多数当事者とは、債権者あるいは債務者が複数いる場合です。
不可分債権、連帯債権、不可分債務、連帯債務、保証債務ですね。
不可分債権、不可分債務はイメージ的には債権債務の目的が数量的に分割できないもの、
連帯債権、連来債務は、同じ内容の債権・債務を持っている・負っているもの、
保証債務は主債務者と同じ債務を負っているもの、
と考えてください。
実務上は、連帯債務と保証債務が圧倒的に多いですね。
 
【不可分債権(民法428条)】
結果はそこまで変わらないのですが、従来まとめて不可分債権とされていたものを、性質上不可分な債権と、性質上は可分であるが当事者の意思表示によって不可分にした債権とに分け、前者を不可分債権、後者を連帯債権の扱いとしています。
不可分債権についても、連帯債権に関する規律が、更改(新債務を成立させて旧債務を消滅させること)・免除の絶対効、混合(債権者と債務者が同一人に帰して債権が消滅すること)の絶対効を除く多くの規定が準用されています。
絶対効というのは他の債権者あるいは債務者にも効力が及ぶということで、その逆が相対効といいます。
なお、不可分債権は、例えば特定の車の引渡請求権を複数の人が共同で持っている場合です。車を分割することはできませんからね。
 
本条の整理に伴い、他の条文も整備されています。
連帯債権者による履行請求・履行の絶対効(民法432条)
連帯債権者の一人との間の更改又は免除の絶対効(民法433条)
連帯債権者の一人との間の相殺の絶対効(民法434条)
連帯債権者の一人との間の混合の絶対効(民法435条)
これら以外の連帯債権者の一人との間で生じた事由の相対効の原則(民法435条の2)
 
【不可分債務(民法430条)】
428条の不可分債権の反対の不可分債務についても、性質上不可分な債務の不可分債務、当事者の意思表示によるものは連帯債務と整理しています。
不可分債務には、混合以外、連帯債務の規定が多く準用されます。
 
本条の整理に伴い、他の条文も整備されています。
連帯債務者の一人との間の更改の絶対効(民法438条)
連帯債務者の一人による相殺等の絶対効(民法439条)
連帯債務者の一人との間の混同の絶対効(民法440条)
これら以外の連帯債務者の一人に生じた事由の相対効の原則(民法441条)
なお、連帯債務者の一人に対する履行請求、免除及び時効の絶対効の規定が削除され、相対効の範囲が拡がりました。
ただし、当事者間の合意により絶対効を定めることは許されています。
 
連帯債務における免除、時効の完成が相対効とされたことに伴い、免除を受けあるいは時効が完成した連帯債務者に対しても弁済等を行った連帯債務者が求償できる旨の規定が新設されています(民法445条)。
免除、時効完成により利益を得たとしても、他の連帯債務者が弁済等をすれば一定の負担を強いられることになります。
 
【連帯債務者間の求償権(民法442条)】
連帯債務者が共同の免責を得た場合には、他の連帯債務者に対して求償できます。
求償権の発生要件及び内容について改正がなされました。
自己の負担部分を超えない額の弁済をした場合、不真正連帯債務(合意による連帯債務ではなく共同不法行為の場合の共同不法行為者のように法律上同じ給付義務を負う場合)にも、一部求償が認められるようになりました。判例の規律とは異なる改正です。
また、求償権の内容として、代物弁済等で連帯債務の額を超えて財産を支出した場合には、実際に免責を得た額を限度として求償をなしうるに留まることが明記されました。
 
【連帯保証人について生じた事由の効力(民法458条)】
連帯債務者の一人との間の更改の絶対効(民法438条)
連帯債務者の一人による相殺等の絶対効(民法439条)
連帯債務者の一人との間の混同の絶対効(民法440条)
これら以外の連帯債務者の一人に生じた事由の相対効の原則(民法441条)
の各規定が主たる債務者と連帯保証人との関係で準用されます。
連帯保証人に対する履行請求、免除及び時効の完成が、特約がない限り、相対効になるということです。
連帯保証人に対して訴訟を提起しても、主債務者の時効の完成猶予事由にはなりません。これに対して、主たる債務者に対する請求等の時効の完成猶予及び更新事由は、保証人に対しても効力を生じることは変わりありません(民法457条)。
 
【主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務(民法458条の2)】
新設規定です。
主たる債務者の委託を受けて保証をした保証人は、債権者に対し、主たる債務及びその債務に従たる全てのものについて、①不履行の有無、②残額、③そのうち弁済期が到来しているものの額の情報提供を請求することができます。
請求を受けた債権者は、遅滞なく、情報を提供しなければなりません。
 
保証人には主たる債務者の状況がわからない場合が多いです。そのため、情報提供の権利が認められました。これまで保証人が要求をしても銀行等が個人情報保護を理由に断るケースも多かったです。大きな改正ですね。
 
【主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務(民法458条の3)】
新設規定です。
こちらも保証人の保護ですね。
保証人は、遅延損害金についてもその責任を負います。
期限の利益が喪失されていつから遅延損害金が発生するのか知らないと保証人は困りますね。
そのため、期限の利益を喪失したことを知った債権者は保証人に対し2か月以内に通知をしないといけなくなりました。
債権者がその通知を怠った場合には、期限の利益喪失時から通知をするまでに生じた遅延損害金の支払いを請求することができないという効果が付されています。
ただし、これは保証人が個人の場合です。法人の場合は適用を排除されています。
 
多数当事者のお話はもう少し続きます。
 
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広島の弁護士 仲田 誠一
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民法改正講座7 [身近な法律知識]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。
 
詐害行為取消請求の条文が続きます。
かなりの条文が新設されるなど、旧法では簡単だった詐害行為取消請求の条文が判例法理の明文化を中心に整理されています。
 
【詐害行為取消請求(民法424条)】
従来の詐害行為取消権が整理されました。
債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができます。ただし、その行為によって利益を受けた受益者が行為の時に債権者を害することを知っていた時に限ります。
財産隠しや執行逃れ的な行為に対する債権者の対抗措置です。
最近は会社分割や事業譲渡などが対象とされることを見ますね。
破産手続における否認と同じ考え方です。
まず、詐害行為取消請求という名称になっていますね。
また、取消請求の対象が、法律行為から行為に変わっています。法律行為以外の債務承認や法定追認行為などの事実行為も取消しの対象となると考えられるからと説明されています。
さらに、3項で、判例法理に従い、債権者の有する債権(被保全債権)は詐害行為の前の原因に基づいて生じたものでなければならないことを明文化しています。
 
【相当の対価を得てした財産の処分行為の特則(民法424条の2)】
新設規定です。
詐害行為取消請求における要件の「債権者を害する」(詐害性)の判断は難しいです。
相当の対価を得てした財産尾処分行為であれば財産がプラスマイナスゼロだから問題がないかというとそうではありません。
不動産をお金に換えると費消・隠匿しやすくなりますよね。
改正法では、判例などに沿って、相当の対価を得てした処分行為が詐害行為取消請求の対象となる要件を定めています。
①財産の種類の変更により隠匿、無償供与その他の詐害行為となる処分をするおそれを現に生じさせること。
②債務者が行為当時隠匿など詐害行為となる処分をする意思を有していたこと。
③受益者が、行為の当時、債務者がそのような意思を有していることを知っていたこと。
の3要件です。
破産法の否認権と同様に詐害行為取消請求の要件を明確化したと説明されています。
倒産危機にある会社のM&Aなど実務に影響がありますかね。
 
【特定の債権者に対する担保の供与等の特則(民法424条の3)】
新設規定です。
こちらも詐害行為取消請求の要件の明確化ですね。
不公平な弁済行為等を偏頗行為といいます。破産法における否認権の対象にもなりますが、同じように詐害行為になるのですね。
担保供与または債務の消滅行為(弁済など)は、
①債務者の支払不能状態の時に行われたこと
②債務者と受益者が通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたこと
が要件となり、詐害行為取消請求の対象となります。

それらの行為が、債務者の義務に属さず、または時期が債務者の義務に属しない場合には(繰り上げ返済などですね)、
①支払不能前30日以内に行われたこと
②債務者と受益者の通謀
という緩和された要件で認められます。

経済的危機状態においては、債権者平等という観点も考慮しないといけません。特定の債権者(仲間内や親族など)に優先的に有利な行為をすると、詐害行為取消請求や否認権の対象となりうるのです。
 
【過大な代物弁済等の特則(民法424条の4)】
新設規定です。
こちらも詐害行為取消請求の要件の明確化ですね。
代物弁済という言葉をご存知でしょうか。
典型的なものは、金銭債務の弁済として金銭を弁済する代わりに不動産や物を譲渡する行為です。
弁護士も和解の際などで使うことがあります。
債務の額と物の価値がぴったり一致することはなかなかないですね。代物弁済はそれでも有効です。
ただ、過大な代物弁済をすると他の債権者が害しますね。
そこで、詐害行為取消請求の要件に該当する場合は、消滅した債務額を超える部分については詐害行為取消権を請求できると規定しています。
破産法と同様の考え方です。
 
【転得者に対する詐害行為取消請求(民法424条の5)】
新設規定です。
詐害行為により処分された不動産が転々流通することはありますね。
不動産などはあまり動かないように思いますが、詐害行為のようなケースでは、様々な登場人物が出てきて所有権が転々することも珍しくありません。
転得者に対する詐害行為取消請求の要件を整理しています。

①受益者に対して詐害行為取消請求をすることができること。
②各転得時に転得者(その前に転得したすべての転得者)が債権者を害すべき事実を知っていたこと。
を要件としています。

判例の考え方が一部変更されていますのでご注意を。
要件が厳しくなりました。
 
ほかにも詐害行為取消請求の条文が続きますが、ごく簡単に済まします。
 
【財産の返還又は価額の償還の請求(民法424条の6)】
新設規定です。
判例法理に従って詐害行為取消請求の効果が整理されています。
取消しだけではなく財産の返還も請求することができ、返還が困難である場合には価額償還を請求することができます。
 
【被告及び訴訟告知(民法427条の7)】
新設規定です。
詐害行為取消請求の被告は、受益者または詐害行為取消請求の相手方たる転得者です。
債権者は、訴訟提起したときは、遅滞なく、債務者に対し訴訟告知をしないといけないと規定されました。債権者代位訴訟と同じ趣旨で、債務者の手続き関与の機会を与えるためです。
 
【詐害行為の取消の範囲(民法424条の8)】
新設規定です。
判例法理を明文化しています。
詐害行為取消請求の対象詐害行為の目的物は可分であるときは自己の債権(被保全債権)の額の限度においてのみ取消しが可能ということですね。
 
【債権者への支払又は引渡し(民法424条の9)】
新設規定です。
判例法理上、債権者は、受益者または転得者に対し、目的物の返還ないし価格償還請求に際し、自己に対する支払あるいは引渡しを請求することができました。それが明文化された形です。
債務者に対する返還を求められるだけではないのですね。
取消権なのに自己に対する支払い等請求ができる点が債権者取消請求権が債権回収の強力な武器である所以です。
 
【認容判決の効力が及び者の範囲(民法425条)】
詐害行為取消請求を認容する判決の確定判決の効力は債務者にも及ぶことが明記されました。
 
【債務者の受けた反対給付に関する受益者の権利(民法425条の2)】
新設規定です。
詐害行為たる処分行為が取り消された場合、受益者は、債務者に対して反対給付返還請求権があることを明記しています。
民法425条の4にて転得者の場合も同様に規定されています。
 
【受益者の債権の回復(民法425条の3)】
新設規定です。
詐害行為たる債務消滅行為が取り消された場合、受益者の債権者に対する債権は原状回復する旨が明記されました。
民法425条の4にて転得者の場合も同様に規定されています。
 
【詐害行為取消権の期間の制限(民法426条)】
詐害行為取消請求は、詐害行為を知った時から2年以内に、かつ詐害行為の時から10年以内に、訴訟提起しなければいけません。
除斥期間・出訴期間とされており、時効と異なり中断事由がありません。
 
以上が、詐害行為取消請求のお話でした。
 
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