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個人再生の流れ [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

前回、債務整理のうち、個人の自己破産の流れ、スケジュール感をお話しました。

今回は、個人の民事再生(個人再生)のお話をさせていただきます。

自己破産のお話と同じく、広島本庁での申立てを前提としていると思ってください。

 

自己破産にならって、1契約、2受任通知、3申立準備、4申立後開始決定まで、5開始決定後支払開始まで、の流れでお話しします。

 

1 契約

2 受任通知
 

契約、受任通知の流れは、自己破産でお話したところとほぼ同じですね。

そちらをご覧いただければ幸いです。

 

法テラスの民事法律扶助をご利用される場合には、弁護士費用が自己破産よりも設定金額が高めになっています。手続が煩雑なためでしょうか。

個人的には、自己破産の方が弁護士の負担が大きいのではないかとは思っておりますが。

 

給与天引きで共済借入等が控除されて返済になっている場合がありますよね。受任通知を出しても通常止まりません。

自己破産の場合はあまり言われないのですが、理屈上は偏頗弁済となります。個人再生の場合には、清算価値(個人再生には清算価値保障原則というルールがあり財産=清算価値以上の金額は弁済しなさいということになっています。)に弁済分を計上するルールです。受任通知後はできるだけ早く申し立てないといけない場合がありますね。

 

なお、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用する場合には、住宅ローンは従前どおりお支払い続けていただきます。

 

3 申立準備
 

個人再生の準備期間は、通常、自己破産よりも1カ月ほど延びます。家計収支表を3か月分提出しないといけないからです。

また、個人再生を選択する場合には、収入がある程度あり、自己破産のケースよりも法テラスを利用できない方が多いですね。
分割で弁護士費用をお支払いいただくために準備期間が長くなる傾向もあります。

 

申立準備期間は、本当に個人再生ができるか見極める期間でもあります。

数か月いくらお金が残るか試してみて、やはり一定の弁済原資が確保できそうもないという場合には、自己破産に方針を変更せざるを得ないことになります。
個人再生認可決定を得ても、途中で弁済を継続できなければ債権者の申立てにより取り消されてしまいます。
もし確実に支払いを継続できる自信がない場合には最初から自己破産を選択する方がベターです。申立てまで方針は変更できますから。

 

個人再生申立ての場合、滞納租税公課があるのであれば、役所と弁済方法について協議をしていただかなければなりません。その結果と履行状況は報告します。

税金を払った上で、再生計画どおりの弁済を継続できるか見られるわけです。

 

他の必要書類などは、自己破産とほぼ同じになります。

 

4 申立後開始決定まで
 

こちらも自己破産とほぼ同じですね。

宿題のような補正連絡が来て(来ないこともありますが)、補正報告に答えて予納金を納めれば開始決定です。

予納金等申立費用は3万円以内で収まるかという感じで、自己破産よりも高くなっています

自己破産でいう管財事件と似たようなものとして、個人再生では、個人再生委員という弁護士が選任されることがあります。

その場合、予納金が別に20万前後(最近は21万6000円でしょうか)かかります。

個人再生委員のお仕事は以前のコラムでも書かせていただきました。簡単に言えば、個人再生開始要件のチェック、及び再生計画案等に対する助言とチェックをする役割でしょうか。

個人再生委員が選任されるのは、書類上さらりと流して手続を進めることに躊躇がある場合ですね。

破産でいう否認対象行為が顕著で清算価値に計上すべき金額の判断が必要なケース、財産の評価が正しいか吟味する必要があるケース、本人申立や弁護士が代理人となっていない場合にきちんとした報告が裁判所いなされないあるいは本人が手続を理解できていないケース、などでしょうか。

個人再生委員が選任される場合には、開始決定に際して意見を貰う等のために開始決定が遅くなります。

 

5 開始決定後支払開始まで
 

開始決定が出ると手続進行予定表がもらえます。

大まかにいうと 開始決定 ~ 再生計画提出 ~再計計画認可 ~支払開始の流れです。

 

再生計画案提出期限は、開始決定から2か月ちょっと先のイメージです。

それに合わせて、家計収支表の作成継続(必ずしも指示されるわけではないですが)と試験積立(計画案どおり弁済できるかテストするための毎月の積立)を行ってもらいます。
再生計画提出時に家計収支表や積立通帳の写しを裁判所に提出します。

 

試験積立というのは、将来の再生計画案どおりの弁済ができるかどうか(履行可能性)のテストのため、通帳に毎月一定額を入金し貯めてもらうものです。
試験積立のタイミングですが、申立前、申立後、開始決定後のいずれでも大丈夫です。

わたしは、開始決定後にお願いすることが多いでしょうか。開始決定後の試験積立は清算価値に計上が必要ないからです。

 

再生計画を提出してから認可決定までは1カ月ちょっとのイメージです。

 

小規模個人再生の場合、債権額の過半数、あるいは債権者の頭数の半分以上が反対してきたら、不認可決定が出ます。
債権者数が少ないとき、あるいは一部の債権者の債権額が突出しているときには注意ですね。

その際には、改めて自己破産あるいは給与所得者等再生を申立てします(勿論私はそこまで付き合います)。
債権者も経済的には反対しない方がいいような気がするのですが(自己破産されるよりは回収できるという意味です)、少数ながら反対をしてくる債権者がいます。

 

再生計画の認可決定がでたとして、実際の支払開始は、認可決定の1か月後から2か月後です。
官報掲載のタイミングによります。

 

弁済方法は、通常、3か月ごとの返済にしています。毎月弁済だと手間と振込手数料が大変ですからね。

試験積立をしているはずですので、第1回の返済(3か月分)は問題なくできるはずです。

 

まとめ

個人再生は自己破産よりも手続がいくらか煩雑ですが、それは主に弁護士事務所にとってです。依頼者さんにとってはそうでもありません。

ただ、同時廃止の自己破産と比べれば長丁場でしょうか。申立てから再生計画認可まで5カ月前後、受任からだと8カ月程度かかるのがスタンダードでしょう。

 

債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

http://www.nakata-law.com/

 

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自己破産の流れ [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

しばらく租税法のお話ばかりしていました。久しぶりに債務整理関連のお話をします。

 

自己破産の相談の際、どれだけ時間がかかるのかといったスケジュール感を聞かれることが多いです。

そこで、今回は個人の自己破産の流れをお話します(広島本庁のお話だと思ってください)。

 

1契約、2受任通知、3申立準備、4自己破産申立後開始決定まで、5開始決定後免責決定まで、の流れでお話しします。

 

1 契約

まずは弁護士と契約をしていただきます。

ただ、法テラスの法律扶助を利用する場合にはすぐには契約ができません。
まずは法テラスの必要書類を持って来ていただき、法テラスに申請書類を出します。平均で2週間前後に弁護士の元に契約書類が届きます。

 

2 受任通知

契約をすれば、原則として、すぐに弁護士受任の通知を出します。

金融機関である債権者が弁護士受任の事実を認識すると本人宛の督促が止まります。

事情によっては受任通知を遅らせるケースもあります。

また、法テラス利用の場合は契約まで時間がかかります。その間に督促電話に出られた際には「弁護士に依頼しているが法テラス利用のため時間がかかる。」旨と弁護士名・連絡先を伝えてもらいます。金融機関はそれで待ってくれます。金融機関からは私のところに確認の電話がかかってくることもありますね。


なお、受任通知を出すと他に次のようなことが生じます。

・ 債権者である銀行の口座凍結、相殺

・ 保証会社への代位弁済

・ 所有権留保物件である車などの引き揚げ要請

などです。

 

3 申立準備

契約時に申立て予定日を決めます。通常2か月~3か月後でしょうか。

その間に、自己破産申立てに書類などを用意していただくことになります。広島本庁では自己破産の場合、2か月分の家計収支表が必要です。

弁護士はその間に債権調査等をすることになります。

2か月分の家計収支表の作成が完了し、かつ債権調査も終わった、というタイミングが申立てのスタンダードですね。

 

勿論、それよりも早く自己破産申立てをしないといけない場合もありますね。給与等差押えがなされている場合などです。
申立てを急ぐ事情がある場合には、家計収支表も1カ月分でいいとされています。

 

逆に、自己破産申立てを遅らせなければならない事情がある場合もあります。

弁護士費用の準備、予納金の準備、あるいは申立て前にすしなければならない整理のため時間が必要なケースです。

金融機関は受任通知後少なくとも半年ぐらいは訴訟をせずに待ってくれるのが通常です。半年ほど経ると進捗確認の連絡が来ます。
あまりにも申立てが遅いと訴訟提起などがされることになります。ただし、一部の債権者は動きが早いのでご注意を。

必要がない限り、自己破産申立てを遅らせることは避けたいです。

 

ご本人の準備がなかなか進まない場合もあります。稀に連絡が取れなくなることもあります。
申立てが遅れると訴訟提起のリスクが高まりますし、弁護士も一定期間を経た後は辞任をせざるを得ません。
弁護士から辞任されると百害あって一利なしなので、打ち合わせたスケジュールに沿って準備をしてください。

 

4 自己破産申立後開始決定まで

自己破産を申し立てると、裁判所から1~3週間後に補正連絡が弁護士に来ます。

宿題ですね。事情の報告や追加書類の提出を求めるものです。

 

同時廃止の場合、補正連絡に対応して報告書を出すと自己破産手続の開始決定が出ます。

補正連絡がないケースもあります。その場合には草々に開始決定が出ることになります。

 

管財事件の場合には、予納金を納めないと開始決定が出ません。
開始決定のタイミングは、債務者審尋(裁判所で破産管財人候補者と会います)を開くときはその日、開かないときには裁判所が予納金の納入確認をしたタイミングになります。

なお、予納金を一度に納められない場合でも分納は認められていません。申立時に用意をしておくことが基本です(事実上、一定期間待ってくれることはあります)。

 

5 開始決定後免責決定

同時廃止事件の場合には、開始決定時に免責審尋期日が指定されます。

だいたい3か月後前後でしょうか。複数の日程が提示され、選択できます。

その後は、免責審尋期日をひたすら待つだけです。

ただし、集団免責審尋ではなく個別免責審尋を指定された場合には、宿題が出されることがあります。
免責審尋のため裁判所に行った日に免責決定がでるのが通常です。
 

 

管財事件の場合には、単純な免責調査型では、第1回債権者集会が3か月後ほどに開かれ、その日に免責決定が出るということになります。
資産の処分に時間がかかる、配当がある等で時間がかかるときは、免責決定が出るのもその分遅れてしまいます。1年を超えるときもあります。

なお、法人破産と同時に申立てた場合には、通常、法人破産手続の進捗に合わせて事件が進行します。
法人破産手続きが廃止になるまで個人の破産手続きも続きます。

 

以上が簡単な自己破産の流れです。

同時廃止事件では、スタンダードなスケジュールとしては、受任から6か月~7カ月かかるイメージですね。
管財事件の場合は、ケースバイケースです、早くて受任から6~7カ月、遅い場合には1年以上ということもあります。

                   

債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

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法人破産のための準備など1 [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

現在複数の法人破産申立て準備を並行して行っていることもあり、法人破産についてご質問が多い点などを五月雨式に説明させていただこうと思います。

 

法人の自己破産時の準備は多岐にわかります。かつ、ケースバイケースの判断が必要になります。

やるべきこと、やっていいこと、やってはいけないことの判断をしながら進めることになります。弁護士もスキル・経験が必要な分野ですね。

 

法人破産を決断される経営者の方々は非常に苦労をされてきています。
簡単に自己破産をしたいとおっしゃる方はいらっしゃいません。万策尽きて弁護士に駆け込まれる方が多いです。

 とはいえ、法人破産の準備は多岐にわたり大変です。経営者の方々にはもう一踏ん張りしていただくことになり恐縮です。

弁護士に早期に相談され、弁護士のサポートを受けながら頑張ってください。

 

2回に分けてお話ししますね(それでも話は尽きませんが・・・)。

 

◇ 従業員関係

(解雇・退職)

事業廃止日が決まれば、従業員の方々を解雇する、あるいは従業員の方に退職していただかなければなりません。
規模が割合小さい会社であると自主的に退職していただけるケースも多くあります。

 

従業員さんの生活のことを考えるとできるだけ早くお話をした方がいいでしょう。解雇をする場合には30日間の解雇予告をするのが通常です。

一方で、あまり早く事業廃止のことを伝えると業務に支障を来すことも予想されます。
給与あるいは解雇予告手当を支払って最後まで働いていただくことが理想ではありますが、悩ましいです。
法人破産はある程度資金が必要であり、資金繰りとの関係でケースバイケースの判断になりますね。

 

なお、破産準備のため「この人がいないと困る。」という経理担当の方などがいらっしゃる場合もあります。
その場合には、引き続きお手伝いをいただき、ある程度の報酬を支払う、あるいは退職時期をずらしてもらうこともあります。

 

賃金等の未払いが残った場合にはどうなるのでしょうか。
破産財団からの支払いができるか、労働福祉事業団立替制度(約6か月分の未払い給与と退職金の80%かつ限度額以内を受けられる制度)の問題になります。
手続に時間はかかりますが、破産管財人に引き継ぐことになります。

なお、賃金台帳、対三カード、就業規則はきちんと弁護士に引き継いでください。

 

(その他)

社会保険の異動手続、住民税の異動手続、ハローワークの手続をしていただかないといけません。

 

◇ 税金関係

税金の支払いをどうすればいいかも悩みます。

差押えをされても困るところですが(破産をするといっても差し押さえてきます!)、資金繰りを睨んでの対応となりますね。

仮に資金手当てができるのであれば、税金の支払いは基本的にはOKです(一般の破産債権よりも優先される財団債権であればという意味です)。
弁護士と相談ですね。資金捻出状況との兼ね合いで決めています。

 

◇ お金の管理

法人破産の場合は、事業を廃止する以上、事業廃止のタイミングあるいはその直前かけて、弁護士が管理をすることが通常です。

もちろん、ある程度のお金は保管していただき、必要な支出に対応していただきます。

その場合、収支を明確にするため、現金出納帳を作成していただき、ごみ処理などの領収書なども保管していただきます。

資産を換価したお金も含めて、弁護士費用、申立費用、どうしても支払う必要がある費用に支出していきます。

 

◇ 売掛金の回収

売掛金台帳、納品書・請求書綴り、注文伝票綴りは整備・保管することを求められます。
ただ、そこまでできない場合も多いのです。

事業廃止時点での売掛金リストを作成してもらい、それで管理をしていくことが多いでしょう。
 

借り入れのある銀行の法人口座は受任通知により凍結されます。
法人破産の場合の凍結後の入金は金融機関が引き出しを拒むでしょう(破産法上相殺は許されませんし、破産管財人からの引き出しの要求は拒めないはずなのですが)。
振込先を借り入れのない銀行口座に変更してもらう、現金で集金する、あるいは弁護士口座に直接振り込んでもらうなどの対処をしなければなりません。
金融機関への受任通知のタイミングも弁護士とよくよく相談しないといけません。

 

◇ 買掛先への対応

買掛先リストを作成してもらい弁護士が受任通知を出します。

それでも仕入先からの返品要請などが来ることがあると思います。弁護士に回してもらい対応します。基本的には返品には応じられません。

取り付け騒ぎの可能性もあります(窃盗行為なのですが・・・)。営業所等のセキュリティーはきちんとしてもらいます。
弁護士名での張り紙をすることもありますね。

 

なお、買掛先に限らず、債権者はすべて弁護士に報告してください。
請求書などが来る都度報告してもらえれば受任通知を出します。

 

◇在庫の処理

事業廃止に向けて在庫は圧縮してもらいます。

棚卸台帳、納品書・請求書綴り、注文伝票綴りは整備保管することを求められます。
こちらもきちんとできない場合は珍しくなく、最終的には簡単な在庫リストを作成してもらうことが多いです。

 

破産申立て前に、弁護士関与の下、適正価格(もちろん通常の販売価格では処分できませんが)で在庫処分をすることもあります。
保管場所の明渡しのため、今すぐになら売却できる、といった事情がある場合などです。勿論、生鮮食品等、劣化するものは早期の処分が必要ですね。
破産管財人が最終的判断した方がよさそうなものはそのまま引き継ぎます。

処分をしたものについては、勿論記録を残さないといけません。

 ごみとして処分するべきものも記録を残した上で廃棄になります。

 

◇ その他各種契約

法人の営業をしていると様々な契約を伴います。
法人破産の場合は、申立て前にすべて契約関係を解消してもらうのが原則です(簡単に解約できるものはという意味です)。
契約書と解約関係書類は保管して弁護士に引継ぎます。

それにより違約金等が発生する場合には債権者に追加します。逆にお金が返ってくる場合にはそのお金はきちんと管理しないといけません。

 

◇ 公共料金

営業所の水道、ガス、電気、電話などですね。

ガスや電話は事業廃止に伴いすぐに止めていいことがほとんどでしょう。勿論、自宅兼事務所の場合は別です。
 

水道、電気はタイミングを図って止めます。
事業廃止後も整理などで立入りが必要です(倉庫のシャッターやクレーンが電動で整理するためには通電が必要というケースもありました)。

そのため、水道・電気は止めないままで破産管財人に引き継ぐことも多いです。

次回も続きをお話しします。

  

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債務整理と給与差押え [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

債務整理と給与差押えの関係について改めてまとめておきたいと思います。

 

◇ 金融債務延滞と給与差押え

金融債務を延滞すると、まず督促状が来て、その後約款に基づいて期限の利益が喪失されます。

期限の利益の喪失とは、支払期限の約束(債務者の利益ですから期限の利益です)がなくなり、一括請求されることです。


保証会社がある場合には代位弁済をされた上で、支払督促あるいは訴状が届き、判決等の債務名義(強制執行ができる文書のこと)が取られ、給与等に強制執行がなされます(なお、執行認諾文書のある公正証書を作成されている場合には法的手続なしに差押え可能です)。


強制執行が申し立てられると、裁判所から勤務先に通知が届き、給与が差し押さえられます。その後は、給与から税金・社会保険を控除した額の4分の1(ただし、33万円を超える部分は全額)の支払いを受けられなくなります。通常、給与明細上控除されます。


なお、理屈上は、支払督促あるいは訴状提出の前に仮差押えという手続きを採ることも考えられますが、あまり見受けられません。


勤務先が知られている債権者に対して延滞が発生した場合には、できるだけ早く債務整理を行った方が得策です。給与差押えの危険が伴います。

 

◇ 任意整理と給与差押え

任意整理で解決することは困難です。

既に債務名義を取られているので、債務全額に加え執行費用の支払いをするしかないのが基本です。

分割払いの交渉に応じてくれる例はほとんどないと考えていいです。

 

◇ 自己破産と給与差押え

(相談時に既に差押えがなされている場合)

できるだけ急いで自己破産を申し立てることになります。そして、裁判所からの宿題に答える等して破産開始決定を得ます。裁判所にできるだけ早い開始決定をお願いすることもあります。
 

破産開始決定が出て、それが管財事件の場合は、強制執行手続が失効することになります。
給与を全額貰えるようになるわけです(もちろん新得財産となり裁判所に取られることはありません)。


同時廃止事件の場合は、申立人側から強制執行の中止の申立てをすることになります。
ただし、強制執行が中止されても、差押え自体がなくなるわけではありません。免責許可が確定したときに強制執行が失効します。
勤務先はその間は、差押え額をプールして(債権者への支払いを留保して)、免責許可が確定したときにプール金を破産者に渡すことになります。複数の債権者から差押えがある場合には勤務先は供託をしないといけないので大変ですね。

 

もっとも、強制執行中止の申立てをすると(中には、受任通知時、あるいは破産申立て時のこともあります)、債権者は強制執行を取り下げることが多いです。弁護士からも取下げを促します。


(相談時にまだ差押えがなされていない場合)

弁護士が受任して自己破産の準備をしている間は、債権者は法的手続を取ることを待つのが通常です。

最近は、あまり待たずに法的措置をとるようになった債権者もいますので注意してください。そうでない債権者でも受任後半年経てくると問い合わせが弁護士のところに来ます。申立予定が決まっていないと、たいてい法的手続を進める旨伝えられます。
 

弁護士に依頼する場合には弁護士からスケジュールを示されるはずです。弁護士に自己破産申立てを依頼して受任通知を出してもらって安心してはいけません。きちんとスケジュールに従って準備をしてください!遅くなると給与差押えのリスクが高まります。


訴訟等がなされると弁護士が時間稼ぎをしてくれることもありますが、限界があります。
また、差押えは受任通知後の偏頗弁済となり(破産管財人が否認することもできる行為になり)、金額によっては管財事件になる可能性が高まります。


なお、訴訟等がなされる段階になってまだ準備が進んでいないとなると、弁護士から辞任をさせることも多いでしょう。弁護士も依頼者さんが準備をしてくれないと困りますから。

 

◇ 個人再生と給与差押え

(相談時に既に差押えがなされている場合)

個人再生の場合、再生手続開始決定により強制執行は中止されます。

そして、最終的に再生計画の認可決定が確定した場合に失効します。
 

なお、申立て後に強制執行の中止命令を裁判所が出せる制度、差押えの取消しにより留保分を受け取れる制度もあります。裁判所に認められる必要がありますが。


個人再生の場合には、差押え分を偏頗弁済として清算価値(清算価値保障原則により最低弁済額を画するものです)に計上されて、他の財産状況によってですが最低弁済額が大きくなるリスクがあります。。
 

給与差押えとは違いますが、給与天引きでの共済借入金弁済などは天引きが開始決定まで止まらないことがほとんどです。この場合も清算価値に計上するということがあります。

 

(相談時にまだ差押えがなされていない場合)

自己破産の場合と同じです。弁護士に示されたスケジュールに従ってきちんと準備をしてください。遅くなると給与差押えのリスクが高まります。
 

なお、差押えをされている場合、弁護士費用に困ってしまう場合があります。よく弁護士と相談してください。法テラスの基準を満たしていればいいのですが、収入基準を超えていて法テラスは利用できない、しかし給与差押えにより弁護士費用を捻出することが難しい、という事態もあり得ます。その場合は弁護士費用の支払い方法も柔軟に考えないといけません。

 

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自己破産等と自動車 [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

債務整理(個人の任意整理、自己破産、個人再生)における自動車の扱いを改めてまとめておこうと思います。
バイクも同じような扱いです。

 

【任意整理】

任意整理の場合には自動車を残せるのが基本ですね。

車のローンを任意整理の対象としなければ関係がありません。

なお、車のローンを任意整理の対象とした場合でも、残せた例もあります。債権者の対応次第かと思います。

 

【自己破産】

自己破産の場合は複雑になります。

まずは自動車が所有権留保物件かどうかですね。

 

◆ 所有権留保物件ではない場合

自動車が所有権留保物件ではない場合には単なる財産としての扱いを考えればいいだけです。

同時廃止と管財事件によって分けて説明しないといけません。
(同時廃止の場合)

初年度登録から(購入時からではありません)6年を経ている自動車では、少なくとも広島では(全国的に基本的に同じような扱いですが)、価値がないとして扱うことが許されています。そのため申立時に自動車の価値を報告する必要もありません。
したがって、自動車は残ることになります。
例外は、外国車や高級車ですね。その場合には、価値の報告を求められます。

初年度登録から6年を経ていない自動車の場合には、査定書(最近はなかなか取れないですが)あるいはレッドブックなどで車の価値を報告します。
その価値によっては(20万円を超える場合など)、次の管財事件の扱いとなります。

(管財事件の場合)

初年度登録から(購入時からではありません)6年を経ている自動車の場合に価値がない物として扱うのが多いと思いますが、古い車の査定を取り財産額に計上する破産管財人もいます。

自動車を残す方法は、自由財産拡張手続(裁判所の許可を条件に最大99万円の財産を手元に残す手続)あるいは金銭での財団組み入れです。

自動車が自動的に自由財産拡張対象となるわけではありません。自動車が生活あるいは仕事に必要で残すことが相当であることは説明しないといけません。
自由財産拡張対象と認められないあるいは自由財産拡張限度を超える財産がある場合には、車両価値に相当する金銭あるいは自由財産拡張対象外財産分の金銭を財団に組み入れる(破産管財人に引き渡す)ことで自動車自体を残すことも可能です。

なお、イレギュラーですが、合理的な理由が説明できる限りで、親族などに相当額で売却するケースもあります。所有者を変えて利用を続けるということですね。例外的な扱いなので、弁護士と相談しながら進めないといけません。

 

◆ 所有権留保物件の場合

自動車が所有権留保物件(典型は所有者登録がローン会社名義になっている普通自動車)の場合には、理屈上、返却が必要です。自己破産の場合は(正確に言えばその前段階の弁護士が受任通知を出したとき)は、債権者から引き揚げ要請(返却要請)が来ます。借り入れの担保なので返却しないといけないのですね。

なお、銀行・信金などのマイカーローンの場合には所有権留保物件ではないことが多いようです(銀行が所有権留保を主張してきたことは経験ありません)。

 

ここで気を付けないといけないのが、所有者登録名義です。
所有者登録しているのがローン会社であれば問題がないのですが、販売店名義の場合はそのまま返却することが理屈上はできません。所有権留保の対抗要件(主張できる要件)が登録なので、きちんと登録されていない車を返すと後で問題視されます。弁護士に確認してもらう方がいいですね。価値によってはそれだけで管財事件になる可能性があります。

 

軽自動車の場合は、対抗要件が登録とはなっていません。登録如何に関わらず、難しい言葉ですが、占有改訂が対抗要件となり所有権留保が認められます。そのため、軽自動車については引き揚げ要請が来ると返却をしても問題がありません。当職は一応契約書を確認して引き揚げ要請に応じることにしておりますが。

 

自己破産をしても所有権留保物件の自動車をどうしても残したいケースはあります。

保証人あるいは親族等にローン残債額で売却してローンを返済するなどの方法が考えられます。自己破産手続の前に債権者との関係を整理しないといけないわけです。イレギュラーなことで後で問題視されることもありますので、弁護士の関与の下進めることをお勧めします。

 

なお、稀に価値が明らかにない車の場合には、債権者が所有権放棄をしてくれて残ることもあります。

 

【個人再生】

◆ 所有権留保物件ではない場合

個人再生の場合には、財産は処分されません。

所有権留保が付いていない車は、その価値が、清算価値に計上されるだけです。

個人再生には清算価値保障原則があり、清算価値が最低弁済額を決める基準の1つになります(自己破産した場合よりも多い返済をしなさいという理屈です)。
車の価値が大きい場合には、それだけ返済額も大きくなる可能性があるということになります。

なお、個人再生における清算価値の計上の際には、自己破産における自由財産拡張対象相当の金額を控除することが認められています。最大99万円まで清算価値を落とせるということですね。自己破産で述べたような注意的も同じく当てはまります。
 

◆ 所有権留保物件の場合

所有権留保物件である場合には、自己破産の場合と同様です。担保になっていますから引き揚げに応じなければなりません。その際の問題点も自己破産と同様です。

なお、自己破産と同様、自動車を残すには、所有権留保債権者との関係を決着しないといけません。

 

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倒産手続とM&A  [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

自己破産などの倒産処理をする前に、事業譲渡MAの出口を探ることがあります。

 

ただ、債務を引き継いでしまうMAは(株式譲渡、合併が典型ですね)、破産を考えるほどの負債を抱えている場合には難しいでしょう。
そこで、考える
MAは、事業譲渡が基本になるのでしょうか。


売り手が借金を整理できるだけの譲渡代金が確保できるMAを目指すことになりますが、債務が残るケースでは、自己破産などの出口が必要になります。
勿論、役員からの借入れだけが残るといいうケースでは問題はそれほど大きくありません。役員さんが会社清算手続の中でタイミングよく債権を放棄すると無駄な法人税がかからないで消すことができます。あるいは、清算手続をしない場合でも、会社の休眠状態が続くと役員さんの相続時に会社に対する債権の価値がないものとみなされ無駄な相続税もかかりません。
会社の破産を考えなくて済みますね。

 

自己破産を申し立てることを前提として(債務は残すことを前提に)、その前に、事業譲渡、会社分割などのMAを図る場合は、勿論、買収者は債務を引き継がない形を取ります。

契約をきちんと整えることは勿論、商号の続用と見られないように気を付けないといけません(例えば事業譲渡において債務を引き継がない旨定めていても、商号続用と見られる場合には名板貸責任を追及されて債務を引き継ぎかねません)。

 

倒産手続前のMAは、事業の引継ぎや従業員の引継ぎを図ることが目的ですね。
何もしないで自己破産をすると基本的に事業はなくなり(破産管財人が譲渡することをあり得ますが)、また従業員も困りますからね。

勿論、代金により申立費用を捻出する効果もある場合もあります。

  

ただ、経済的危機状態でのMAは、倒産手続等との関係で問題になることがあります。慎重に進めないといけません。売り手だけではなく、買い手も気を付けないといけません。

 

資産隠し、債務飛ばしと見られる行為はやはり対抗策が存在するのです。一時期、新設分割により優良な事業を新設会社に承継し、新設会社の株式を採算者に譲渡するという濫用的な会社分割が流行ったことがあります。会社分割により債務を飛ばすわけですね。これは、民法上の債権者取消権(詐害行為取消権)に該当しうる行為ですし、破産法上の否認の対象にもなり得ます。

 

経済的危機状態においてMAをする場合には、債権者取消権や破産法上の否認等のリスクがあるのです。MA自体は事業の廃止に伴う社会的損失を回避し、従業員等関係者の利益を守れる行為なのですが、対債権者との関係で詐害的な行為と見られる場合には効力を否定される可能性があるのです。

 

経済的危機状況に限られませんが、MAは弁護士の関与の下で行うべきでしょう。対価の相当性と対価の使いみちがよくよく吟味されます。単に会計上の財産額の変動の有無を基に判断するものではなく、会社の状況、換価の困難性等も考慮されます。
弁護士が関与する場合には、そこら辺をチェックして後で説明がきちんとできるようにします。自己破産を前提とする場合には、対価は弁護士が管理し、後で問題にならない使途にのみ使用します。

 

任意整理の場合は(リスケですね)、銀行の了承を取り付け、対価については事業継続に必要な事業資金を除き債務額に応じて債権者にプロラタ返済をすることになるでしょう(担保を外してもらう債権者は別途考慮しないといけませんね)。事業計画とセットで銀行の理解を得られるかという話です。

 

スポンサー企業を見つけて民事再生で事実上MAを行うという方法もあります。
そもそも民事再生手続をして事業を継続できるケース、スポンサー企業を見つけるのが難しく、なかなかお目にかかれません。

 

なお、事業そのものではなく事業用資産の売却の話もあります。規模の大小は別としてよくやりますね。
申立費用捻出のための売却や廃業に伴う事業の整理のための売却ですね。

こちらも当然、リスクがある行為ですので、後できちんと説明できるように計画し、資料を残して、進めなければいけません。

 

顧問弁護士、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

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