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コラム

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契約書類の解釈 [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
現在控訴審で契約解釈の争いとなる裁判を1年以上続いています。
B TO Bの訴訟はほぼ契約内容の解釈で決着が付きます。
 
一審では当方の主張した点があまり細かく吟味されずに全面敗訴してしまいました。
 
控訴したところ、控訴審では、さすがに簡単すぎる判決だと感じてくれたのでしょう。
何も整理されていないじゃないかと指摘され(それは一審の裁判官の判断なのですが)、なかなかないことですが細かい審理を続けてくれています。
先日、控訴人である当方に有利な和解案が出されました。
和解は整わなかったのですが、逆転勝訴の可能性が十分に出てきたところです。
勿論、結果は最後までわからないところですが。
 
事案は、
注文書発行・預り金預託 ⇒ キャンセル ⇒ 預り金没収の念書作成 の流れで、預り金の違約金充当合意が無効であり預託金を返還しろと請求した訴訟です。
高級外車だったので没収された預託金が大きかったのですね。
 
注文書上、申込の撤回(キャンセル)ができるのか、契約が成立していて一方的解約ができないのか、が第1の争点でした。
原審ではきちんと当方の主張を汲み取ってもらえずに、あっさりと契約は成立しているから申込の撤回はできないと判断され、敗訴判決を貰いました。
 
一方、控訴審では、注文書の記載を細かく吟味して、契約は成立しておらず、キャンセルは可能であった、という方向で話を進めてもらっています。
 
確かに、注文書裏面の約款条項には注文書を発行したらキャンセルができないという条項はあったのです。
しかし、注文書の他の約款条項とは矛盾する内容でした。
条項全体を吟味していくと、やはり契約は成立しておらずキャンセルを許容する趣旨の合意だと見られるべき書類だったのです。
控訴審では、そこが理解されたということです。
書面の解釈で前提問題ががらりと変わるのが訴訟です。
訴訟では、いくら経緯や実態を説明しても、契約書類に「こう書いてありますよ。」とあっさり切られることも珍しくはありません。
勿論、契約書類の記載は、大きな武器にもなります。 

契約あるいは合意書面は大事であるということをことある毎にお話ししています。
FAXでもなんでもいいので書面を残しておくのです。
裁判になると想像以上に、条項や取り決めを吟味されて契約内容が解釈されます。契約条項が独り歩きする感もあるぐらいです。
処分証書の法理という考え方があります。
法律行為(契約など)を直接表す書面(契約書など)が真正に成立していれば、特段の事情がない限り、その記載どおりの法律行為の存在を認定するという考え方です。
実務では、契約書等があれば必ず勝てるというほどは厳格に適用されていない感がありますが、それでも処分証書となる契約書類は非常に重要なのですね。
理屈上は、反証が成功しなければ、処分証書の記載内容どおりの事実が認定されるのです。
その観点からいけば、個々の契約条項がよく吟味されるのは当然だと言えます。
 
企業の事前のリスク対策としては、契約書、少なくとも合意内容がわかる書類を残すことは勿論、個々の条項や取り決めが相互に矛盾しないようにそれらを作成することが必要です。
誰が見ても一義的に理解できる内容、このケースではこう解決されるとイメージができる内容にしなければなりません。
そのような契約書類があれば、相手方も争ってくることはあまりありません、トラブルが防止できますね。
トラブルが発生したら、当然、強力な武器として契約条項が使えます。

B TO Bのトラブルの相談に限りませんが、契約書、あるいは契約関係書類、合意書面がしっかりしているご相談は、ほっとします。
逆に、取り決め内容がきちんと残っていない案件は、どうやってそのことを立証すればいいのか、立証が可能なのかと悩むところです。
直接の証拠がないので、間接事実で立証することになりますが、実際そのような訴訟は多いです。
 
御社が使っている注文書や契約書のひな型を1度チェックしてみてはどうでしょうか。
取引の流れ(注文あるいは受注から代金支払いあるいは納品・代金受領)を、注文書や契約書等の取引関係書類に沿っていろいろなケースを想定しながらトレースしていけるかを見るのです。
こういう場合はこうなると明確に理解できるのであればいいのですが、そうでなかった場合には契約書類に不備があることになります。
契約条項1つの内容で、トラブルの発生の可能性、トラブルが発生したときの解決にかかるコストが変わってきます。
 
必要なコストだと考えて、一度専門家に契約関係書類を吟味してもらうことをお勧めします。
ひな型や、大口取引先関係を1回見てもらえば何度もチェックを受ける必要もないと思います。
 
本当は、書類関係だけではく、取引プロセス自体の監査をして、トラブル防止の仕組みを整備することもお勧めしたいです。
裁判をしてみると、依頼企業の主張を裏付ける記録が何もないという例も珍しくありません。
ルーティン化できる簡単な仕組みでそういうことは防げます。
 
なお、上記案件ですが、キャンセルはどうやらできそうという第1関門は突破しましたが、しかしキャンセル条項の中にキャンセルの場合には通常生ずる損害は賠償請求できる旨もありました。
そこで、現在は、通常生ずる損害とは何かを議論しているところです。

一審でやってくれていればよかったのですが・・・

なお、消費者契約法9条の話では通常生ずべき損害の立証は消費者側に負わされる傾向ですが、こちらはB TO Bの争いで条項自体に通常生ずべき損害と記載されているので、立証責任は損害を主張する側です。
 
顧問契約、契約トラブル、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
http://www.nakata-law.com/
 
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労働契約法20条 [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
最近、労働契約法20条絡みの裁判例をよく目にします。
企業法務のうち労務管理に関する問題ですね。
 
労働契約法第20条をご存知でしょうか。
次のような条文です。
第20条
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
 
分かりにくいですが、有期雇用契約労働者と無期雇用契約労働者(正社員)との間で職務内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定です。
 
「労働条件」には、労働者に対する一切の待遇が含まれます。
賃金、手当に限りません。
「期間の定めがあることにより・・・相違」とは、有期契約労働者と無期契約労働者(正社員)との労働条件の相違が、期間の定めの有無に関連して生じたものであることを意味します。
 
「不合理」の判断は、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理であるかを、
1 職務の内容(業務の内容および当該業務に伴う責任の程度)
2 当該職務の内容および配置の変更の範囲
3 その他の事情
を考慮して評価されます(総合判断)。
その他の事情の代表例は、定年再雇用の事実です。
 
気を付けないといけないのは、不合理かどうかの評価は、各賃金項目・各手当等個別の労働条件の相違毎に判断されます。
待遇の差異が総合的に判断されるわけではありません。
職務の内容等に照らして格差があることの理由が立たない手当が不合理な労働条件の相違と評価されています。
使用者には、個々の手当等毎に不合理ではないことの説明が求められますね。
 
不合理とされた労働条件の定めは無効となります。
無効となっても、有期契約労働者が無期契約労働者の労働条件と同一になるわけではありません。
しかし、不法行為に基づく損害賠償の対象となります。
 
実は、この労働契約法第20条は削除されることが決まっています。
規律がなくなるかというと、勿論、そうではありません。
パートタイム労働法に移管されることになります。
労働契約法第20条が、行政指導の根拠となるパートタイム労働法に移管されるという説明がありました。
改正後は、有期雇用労働者と無期雇用労働者との待遇の差が行政による指導・勧告の対象となるということですね。
 
なお、パートタイム労働法は、正式名称は「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」です。
改正に伴い、同法の名称が「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関す法律」に改められます。
 
施行日は来年の4月1日です(中小企業は再来年の4月1日)。
 
有期雇用労働者と無期雇用労働者の待遇の違いが不合理であってはいけません。
ただ、企業は様々な要素を考慮して人事施策を決定します。
有期雇用労働者と無期雇用労働者との間の合理的な待遇の差異も存在することは否定できませんね。
企業としては、合理的な待遇の差をつける場合にも、その方法はよくよく吟味しなければならないということです。
前述したように、個々の労働条件毎に不合理ではない待遇の差であることを説明できなければなりません。
結果として職務内容等の相違から合理的に説明できない手当等の名目により待遇の差が生じていれば、仮に総体的には合理的な相違だとしても、効力が否定されることになります。
 
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固定残業代・定額残業代 [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
企業法務のうち労務管理のお話です。
 
時間外労働等の割増賃金を固定・定額で支払うことは直ちに違法ではありません。
固定残業代あるいは定額残業代と呼ばれます。
 
既に最高裁の判例もあるところです。
固定残業代あるいは定額残業代の有効性判断の枠組みを見ていきましょう。
 
まず、時間外労働等に対する対価としての性質を有するものであるか否かが問題となります。
対価性の要件などと呼ばれます。
業務手当等残業代と違う名目で支払われている場合などに問題になります。
時間外労働等に対する対価として支払われていたかどうかは、雇用契約書等の記載内容のほか、具体的事案に応じ、使用者の説明内容や就労実態等の事情を総合的に勘案して判断されます。
合意内容の認定として一般的に採られる方法ですね。
 
次に、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とに判別できるかという問題があります。
判別要件あるいは明確区分性などと呼ばれます。
そして、判別ができる場合に、割増賃金として支払われた金額が、通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として、労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを踏まえて判断されることとなっています。
 
これら基準自体が総合的判断を前提とするものですので、基準を基にして具体的事情に応じて総合的に有効性が判断されます。
 
固定残業制・定額残業制を導入・維持するのであれば、有効だと認められるような仕組みを用意しておかなければリスクがありますね。
 
仮に固定残業代・定額残業代の支払いが有効ではないとされると、時間外等割増賃金が未払いとされ(一種のペナルティーである付加金も請求されるでしょう)、しかも割増賃金の計算の基礎に定額支給された手当も入ってしまうということになりますね。
 
そうすると、次のようなことに気を付けないといけません。
 
雇用契約書、労働条件通知書、賃金規程等就業規則にて、定額支給手当が時間外等手当として支払われている旨が明記されていた方がいいでしょう。
明記されていなければ、運用上しっかり時間外等手当として支払われていることが明確になっていないと厳しい判断が予想されます。
また、募集要項も含めて、曖昧な記載も避けなければなりません。
 
勿論、賃金体系上、所定内労働の対価の部分と時間外等割増賃金の部分を明確に区分できるものであることも必要です。
精勤手当の性質等の他要素を組み合せた形の定額支給手当は避けた方が無難です。
労働者が判別できるような計算指標、計算根拠となる時間数を超えた場合の精算方法も明示されることが望ましいです。
 
定額手当の金額は、法令上許される時間外手当等の範囲内の金額であること(法令の趣旨に反する金額であると有効性が否定されかねません)、時間外労働等の対価としての合理的な支給根拠が説明できる金額であること(それ以外に合理的な支給根拠がないこと、実際の勤務実態とほぼ合致していること等)も必要でしょう。
全従業員一律の額であると合理的な説明ができないかもしれませんね。
 
運用上も、支給時に支給対象の時間労働等の時間数と残業手当の額が明示されていること、
固定残業代によってまかなわれる時間数を超えた場合の精算をする取り扱いが確立していることも要請されます。
 
残業代等の固定支払いは、支払方法について法定されていないため、一概に無効とはされない傾向ですが、事案によっては無効と判断されかねません。
リスクを排除するためには、上述のような手当をしなければなりません。
 
固定残業制のメリットの1つは労務管理の簡便化でしょうか。
上述のように見ていくと、リスクを排除するには結局手間がかかるような気がします。
一定の無駄なコストも生じるわけですし、その分を賞与あるいは成果的報酬に反映する方が労働者のモチベーションの向上につながる経営戦略上のメリットがあるような気がしています。
 
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債務免除益の課税区分 [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
経営者などの個人が会社に対する債権について会社に債務免除を行うことはよくあります。
決算書の見栄えをよくするため、あるいはM&Aの下準備として、個人の会社に対する貸付を放棄することはよく見ますね。
 
債務免除益も原則として課税の対象となることは争いがありません。
数千万もの会社に対する貸付金を免除すると同額の益金が会社に発生します。
繰越欠損が潤沢にあり課税がなされない、あるいは高額な税金がかからない場面に限って考えることでしょう。
 
その逆、会社から個人に債務免除を行うことはあまりないかもしれません。
ただ、法人から経営者の離婚、相続対策の前提で行うことなど、いろいろな場面で考えることができると思います。
 
その場合に債務免除益を受けた個人の税金は所得税ですね。
所得税には、法人税と異なり、所得区分という問題があります。
所得税課税がありますよという注意だけではなく、所得の種類を考える必要があるのです。
法人から個人が受けた贈与は、一般的には、一時所得か、個人が役員・従業員の場合には給与所得になる、というイメージなのではないでしょうか。
私も、広島大学のロースクールにて(租税法を教えています)、法人からの贈与は一時所得か給与所得だよ、と教えています。
 
ちなみに贈与税は、個人から個人への贈与の場面での課税です。
 
法人から個人に対する債務免除について、債務免除益の所得区分が争われた地裁の裁判例を目にしましたので投稿します。
 
金融機関が、賃貸用の建物の建築資金とするための借り入れの返済に充てられた借入金の債務免除、農業用機械の購入資金とするための借入金の借り換え等にかかる債務の返済に充てられた借入金の債務免除、をおこなった事案です。
事案自体は特殊かもしれません。
 
納税者たる個人は、債務免除益を一時所等として申告したんですね。まあ、無茶な申告ではないと思います。
しかし、課税庁は、借入れ目的に応じて、事業所得、不動産所得、一時所得に該当するとして更正したのです。
 
所得税は所得区分に応じて税金のかけ方が違います。
一時所得は所謂2分の1課税の所得区分ですので税金が安いのですね。
更正により、当然税金が上がります。過少申告加算税賦課決定も合わせてされています。
裁判の事件名は、所得税更正処分等取消請求事件です。「等」の中に過少申告加算税賦課決定も入っています。
 
裁判所は、
所得区分の判断にあたっては、当該所得の内容及び性質、当該利益が生み出される具体的態様を考慮して実質的に判断される、
借入金の債務免除益の所得区分の判断においては、当該借入金の目的や債務免除に至った経緯等を総合的に考慮して判断することが相当である、
とします。

そして、
不動産貸付業務に充てるため、あるいは農業用機械の購入資金に充てるための借入金の債務免除益は、不動産所得あるいは事業所得に該当するとしました。
それぞれ、不動産貸付業務あるいは事業遂行による収入ということができるからということのようです。

また、不動産貸付業務、事業の運転資金的性質を持つ借入れの返済に充てられた部分の借入金、借換資金、及びその債務免除益も同様の性質を有するとしています。

勿論、不動産所得あるいは事業所得に該当する以外の債務免除益は一時所得とされました。
 
借入金の債務免除益の所得区分の判断においては、借入金発生原因をよく吟味しないといけないということですね。
債務免除益は、単なる法人から個人への贈与とは場面が異なるのかもしれません。
こういう裁判例がある以上、債務免除益は法人からの受贈益として一時所得でいいのではないか、と簡単にお話することはできませんね。
 
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相殺の担保的機能と破産 [企業法務、借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
相殺の担保的機能と破産の相殺禁止との関係のお話をします。
企業法務の観点からは、相殺は債権保全の方策として重視されます。
ただ、破産手続との関係で無限定に相殺の効力が認められるわけではない。
というお話です。
 
【相殺の担保的機能】
相殺は、担保権と同じような機能を有します。
売掛先から別途仕入債務がある場合には、売掛先が債務不履行をした場合に少なくも仕入債務については売掛金債権を自働債権として相殺すれば実質的に回収ができることになります。
他の担保権よりも手続が簡単であり、強力な担保ですね。
業績が芳しくない売り先に対しては、仕入を立てることで一部債権保全をしておくということもお勧めをすることがあります。
 
銀行も貸付先に預金を積んでもらうことがありますが、相殺の担保的機能を意識しているのですね。弁護士から受任通知が銀行に届くと期限の利益喪失事由になりますので、即相殺をしてきます。
主債務者の預金だけではなく、保証人の預金も相殺してきますので、ご注意ください。
 
取引先が破産をした場合でも相殺権は有効です。
当職が法人の自己破産の代理をした際にも、売掛先から相殺の主張をされることが珍しくありません。
 
ただ、破産法を貫く債権者平等原則から、一定の場合には相殺が禁止されます。相殺禁止に該当すると、相殺は無効です。
破産管財人は相殺の無効を前提に債務の履行を請求することができます。
 
相殺禁止が定められている場面を説明していきますね。
 
【破産手続開始後に債務を負担したとき】
当然ですね。相殺を許すと、破産手続開始後に債務を負担することによって特別の担保権を付与することになってしまいます。
破産手続開始というのは、自己破産であれば、申立て後、予納金を納めて破産管財人が就任した時点です。
破産管財人との契約によって債務を負担した場合や破産管財人否認権を行使して返還債務を負担する場合等ですね。
通常の取引関係では出てきません。
 
【危機時期に債務を負担したとき】
破産債権者が破産者に対する債務を負担したときは、相殺の担保的機能から、担保が供与されたと等しいことになりますね。
危機時期の担保供与は否認の対象になります。それと平仄を合わせて相殺を禁止しているものです。
 
1 支払不能を知った後の債務負担
債務者の支払不能状態を知って債権者が債権者に対して債務を負った場合には相殺が禁止されます。
支払不能とは期限の利益が到来した債務を一般的・継続的に支払うことができない状態です。
専らその契約によって負担する債務を破産債権と相殺に供する目的で破産者の財産を処分する契約を締結したときか、破産者に対する他人の既存の債務を引き受けた場合です。
前者のケースでは、少し要件が厳しくなっています。
 
2 支払停止があったことを知った後の債務負担
支払停止があったことを知った後の債務負担をした場合にも相殺が禁止されます。
ただし、破産者が当時支払不能ではなかった場合には相殺は禁止されません。ただし支払停止があった場合には支払不能が推定されます。
弁護士から自己破産を前提とする受任通知が届いたとします、受任通知は支払停止の通知です。その後は債務を負担しても相殺ができないということになりますね。
 
銀行が弁護士から受任通知後に口座に入金になった預金を相殺できない、相殺すると後に破産管財人から否認されると返還しないといけないというのはこの理屈からです。
 
3 破産手続開始申立てがあったことを知った後の債務負担
破産手続開始申立てがあったことを知った後の債務負担にも相殺禁止が及びます。
まあ、そうですよね。
 
例外が3点あります。
1 債務の負担が法定の原因に基づく場合
相続、合併、事務管理、不当利得にように当然に債務が発生しまたは帰属する場合です。
破産債権者が殊更に債権債務の対立状態を作出した場面ではないからです。
まあ、めったにないことでしょうが。
 
2 債務の負担が危機状態またはその兆表を知る前に生じた原因に基づく場合
危機状態またはその兆表を知る前に生じた原因に基づいて債務を負担する場合には、破産債権者の相殺への合理的期待を保護する趣旨です。
具体的な判断は難しい条文です。個々の事例における相殺の期待度の程度を検討するとされています。
 
3 債務の負担が破産手続開始申立ての時より1年前に生じた原因に基づく場合
破産債権者の予測可能性を害することのないようにしたという規定ですが、あまり想定できる場面がありませんね。
 
このように見ていくと、相殺の担保的機能は強いのですが、弁護士から破産申立てを前提とする受任通知が届いた後は債務を負担しても駄目なのが基本ですね。
相殺に限らず、債務者の状況をよく把握し、弁護士が受任するまでに債権保全を図らないといけないということですね。
 
企業法務サポート、顧問弁護士、債務整理(民事再生自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
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株式会社の取締役の任期等 [企業法務]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 
企業法務のお話です。

 

株式会社の取締役の任期は、原則2年です(正確には選任後2年以内に終了する事業年度の最終の定時株主総会終結の時です。会社法332条第1項)。

閉鎖会社(株式譲渡制限が付いている株式会社)では取締役の任期を定款変更により10年まで延ばせますね。

会社法332条第2項のお話です。

 

任期があるということは選任決議、選任登記をする必要があります。

たいていは税理士さんが定時株主総会の議事録に忘れないように役員選解任の議題を入れてくれているとは思います。

なお、登記を懈怠すると代表者に過料も課されることになります。懈怠期間により過料は高額化していくようです。

 

なお、特例有限会社の取締役は、原則任期なしです。

 

役員の選解任は面倒ですし、登記に費用もかかるということで、税理士さんや司法書士さんのアドバイスにより任期を延ばしている株式会社も珍しくないですね。

 

無駄な手間と費用を省くということは合理的ですし、たいていはそれで何も支障はありません。

 

ただ、会社のトラブルを多く扱う弁護士の目線で見ると、あまりお勧めできないケースもあります。

 

取締役は、いつでも株主総会の決議によって解任することができます(会社法339条第1項)。

しかし、解任について正当な理由がある場合を除き、解任された取締役は解任によって生じた損害の賠償を請求することができます(会社法339条第2項)。

実際に会社側の代理人として、損害賠償請求をされた例も経験しております。

 

解任の正当な理由は簡単には認めてくれません。不正行為が立証できる場合には勿論大丈夫ですが、業績不振という理由では難しいです。
特に、経営権の争いや経営方針の違いなどから戦略的に解任をする場合には、正当な理由が認められないケースが多いのではないでしょうか。

 

そして、改正前の判例、実務ですが、解任された取締役の会社に対する損害賠償請求額は、残り任期の役員報酬金額が一応の基準となっています。

 

仮に取締役を解任する場合には、解任の正当な理由が立証できるかという点と合わせて、残り任期期間も考えておかなければいけません。

 

10年間の任期の1年目で解任した場合、残り9年間の役員報酬の金額が認められるかは判例がありませんので何とも言えません。
相当な期間分に制限される可能性もあります。ただ、リスクがあるのは事実です。

 

本当に10年まで任期を延ばしていいかは慎重に考えないといけません。

選任時には、関係が良好であっても、将来はわかりません。10年というと長いですよね。何が起こるかわかりません。
2年毎(3年、4年でもいいのでしょうが)に見直しをするということも合理的なことだと思います。

 

役員は家族だけだという場合も大丈夫とは言い切れませんよ。

配偶者が取締役というケースは多いですね。ただ、夫婦の関係が10年間持続するかは誰も保障してくれることではありません。
実際に、会社経営者の離婚に絡む取締役解任により妻から損害賠償請求をされた経験があります。勿論請求されることは予め想定していましたが。

親子なら問題になるケースはあまりないのかもしれません。しかし、親子間での経営権の争いは世の中にありますね。

取締役が、兄弟、親戚になってくると、よりリスクはあるでしょう。兄弟間の経営権の争いはよく聞く話です。

 

取締役の任期を10年にすることは必ずしもいいことばかりではないということはおわかりいただけましたでしょうか。

 

一度、自社の定款をチェックしてみてはどうでしょうか。取締役の任期を延ばせるように改正されたタイミングで、税理士さんなどが気を利かして定款変更をしているかもしれません。

 

定款は、会社の基本法です。上手く活用すれば会社経営をより戦略的なものにすることができますし、思わぬ落とし穴が潜んでいるかもしれません。

 

なお、定款を見ていて、役員選任決議をはじめ、株主総会の定足数は法律上可能な限り下げていた方がいいと思いました。
相続の際、遺産分割協議が整わない、かつ権利行使者の届出ができない状態であると、例えば定足数が議決権の過半数の株主の出席(会社法309条1項で定める原則です)まで要求していると、株式の2分の1が相続対象株式になっていれば有効に株主総会が開催できず、諸々の支障を来します。
その場合でも、議決権の3分の1の株主の出席と定款で定足数を定めておけば、有効に株主総会が開催できるのです。

勿論、限度はあります。定足数が小さすぎると逆にトラブルを招きかねません。

 

顧問契約、契約トラブル、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。

 

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