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コラム

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民法改正講座8【身近な法律知識】

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。
 
多数当事者の債権債務関係の話です。
多数当事者とは、債権者あるいは債務者が複数いる場合です。
不可分債権、連帯債権、不可分債務、連帯債務、保証債務ですね。
不可分債権、不可分債務はイメージ的には債権債務の目的が数量的に分割できないもの、
連帯債権、連来債務は、同じ内容の債権・債務を持っている・負っているもの、
保証債務は主債務者と同じ債務を負っているもの、
と考えてください。
実務上は、連帯債務と保証債務が圧倒的に多いですね。
 
【不可分債権(民法428条)】
結果はそこまで変わらないのですが、従来まとめて不可分債権とされていたものを、性質上不可分な債権と、性質上は可分であるが当事者の意思表示によって不可分にした債権とに分け、前者を不可分債権、後者を連帯債権の扱いとしています。
不可分債権についても、連帯債権に関する規律が、更改(新債務を成立させて旧債務を消滅させること)・免除の絶対効、混合(債権者と債務者が同一人に帰して債権が消滅すること)の絶対効を除く多くの規定が準用されています。
絶対効というのは他の債権者あるいは債務者にも効力が及ぶということで、その逆が相対効といいます。
なお、不可分債権は、例えば特定の車の引渡請求権を複数の人が共同で持っている場合です。車を分割することはできませんからね。
 
本条の整理に伴い、他の条文も整備されています。
連帯債権者による履行請求・履行の絶対効(民法432条)
連帯債権者の一人との間の更改又は免除の絶対効(民法433条)
連帯債権者の一人との間の相殺の絶対効(民法434条)
連帯債権者の一人との間の混合の絶対効(民法435条)
これら以外の連帯債権者の一人との間で生じた事由の相対効の原則(民法435条の2)
 
【不可分債務(民法430条)】
428条の不可分債権の反対の不可分債務についても、性質上不可分な債務の不可分債務、当事者の意思表示によるものは連帯債務と整理しています。
不可分債務には、混合以外、連帯債務の規定が多く準用されます。
 
本条の整理に伴い、他の条文も整備されています。
連帯債務者の一人との間の更改の絶対効(民法438条)
連帯債務者の一人による相殺等の絶対効(民法439条)
連帯債務者の一人との間の混同の絶対効(民法440条)
これら以外の連帯債務者の一人に生じた事由の相対効の原則(民法441条)
なお、連帯債務者の一人に対する履行請求、免除及び時効の絶対効の規定が削除され、相対効の範囲が拡がりました。
ただし、当事者間の合意により絶対効を定めることは許されています。
 
連帯債務における免除、時効の完成が相対効とされたことに伴い、免除を受けあるいは時効が完成した連帯債務者に対しても弁済等を行った連帯債務者が求償できる旨の規定が新設されています(民法445条)。
免除、時効完成により利益を得たとしても、他の連帯債務者が弁済等をすれば一定の負担を強いられることになります。
 
【連帯債務者間の求償権(民法442条)】
連帯債務者が共同の免責を得た場合には、他の連帯債務者に対して求償できます。
求償権の発生要件及び内容について改正がなされました。
自己の負担部分を超えない額の弁済をした場合、不真正連帯債務(合意による連帯債務ではなく共同不法行為の場合の共同不法行為者のように法律上同じ給付義務を負う場合)にも、一部求償が認められるようになりました。判例の規律とは異なる改正です。
また、求償権の内容として、代物弁済等で連帯債務の額を超えて財産を支出した場合には、実際に免責を得た額を限度として求償をなしうるに留まることが明記されました。
 
【連帯保証人について生じた事由の効力(民法458条)】
連帯債務者の一人との間の更改の絶対効(民法438条)
連帯債務者の一人による相殺等の絶対効(民法439条)
連帯債務者の一人との間の混同の絶対効(民法440条)
これら以外の連帯債務者の一人に生じた事由の相対効の原則(民法441条)
の各規定が主たる債務者と連帯保証人との関係で準用されます。
連帯保証人に対する履行請求、免除及び時効の完成が、特約がない限り、相対効になるということです。
連帯保証人に対して訴訟を提起しても、主債務者の時効の完成猶予事由にはなりません。これに対して、主たる債務者に対する請求等の時効の完成猶予及び更新事由は、保証人に対しても効力を生じることは変わりありません(民法457条)。
 
【主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務(民法458条の2)】
新設規定です。
主たる債務者の委託を受けて保証をした保証人は、債権者に対し、主たる債務及びその債務に従たる全てのものについて、①不履行の有無、②残額、③そのうち弁済期が到来しているものの額の情報提供を請求することができます。
請求を受けた債権者は、遅滞なく、情報を提供しなければなりません。
 
保証人には主たる債務者の状況がわからない場合が多いです。そのため、情報提供の権利が認められました。これまで保証人が要求をしても銀行等が個人情報保護を理由に断るケースも多かったです。大きな改正ですね。
 
【主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務(民法458条の3)】
新設規定です。
こちらも保証人の保護ですね。
保証人は、遅延損害金についてもその責任を負います。
期限の利益が喪失されていつから遅延損害金が発生するのか知らないと保証人は困りますね。
そのため、期限の利益を喪失したことを知った債権者は保証人に対し2か月以内に通知をしないといけなくなりました。
債権者がその通知を怠った場合には、期限の利益喪失時から通知をするまでに生じた遅延損害金の支払いを請求することができないという効果が付されています。
ただし、これは保証人が個人の場合です。法人の場合は適用を排除されています。
 
多数当事者のお話はもう少し続きます。
 
お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
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民法改正講座7 [身近な法律知識]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。
 
詐害行為取消請求の条文が続きます。
かなりの条文が新設されるなど、旧法では簡単だった詐害行為取消請求の条文が判例法理の明文化を中心に整理されています。
 
【詐害行為取消請求(民法424条)】
従来の詐害行為取消権が整理されました。
債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができます。ただし、その行為によって利益を受けた受益者が行為の時に債権者を害することを知っていた時に限ります。
財産隠しや執行逃れ的な行為に対する債権者の対抗措置です。
最近は会社分割や事業譲渡などが対象とされることを見ますね。
破産手続における否認と同じ考え方です。
まず、詐害行為取消請求という名称になっていますね。
また、取消請求の対象が、法律行為から行為に変わっています。法律行為以外の債務承認や法定追認行為などの事実行為も取消しの対象となると考えられるからと説明されています。
さらに、3項で、判例法理に従い、債権者の有する債権(被保全債権)は詐害行為の前の原因に基づいて生じたものでなければならないことを明文化しています。
 
【相当の対価を得てした財産の処分行為の特則(民法424条の2)】
新設規定です。
詐害行為取消請求における要件の「債権者を害する」(詐害性)の判断は難しいです。
相当の対価を得てした財産尾処分行為であれば財産がプラスマイナスゼロだから問題がないかというとそうではありません。
不動産をお金に換えると費消・隠匿しやすくなりますよね。
改正法では、判例などに沿って、相当の対価を得てした処分行為が詐害行為取消請求の対象となる要件を定めています。
①財産の種類の変更により隠匿、無償供与その他の詐害行為となる処分をするおそれを現に生じさせること。
②債務者が行為当時隠匿など詐害行為となる処分をする意思を有していたこと。
③受益者が、行為の当時、債務者がそのような意思を有していることを知っていたこと。
の3要件です。
破産法の否認権と同様に詐害行為取消請求の要件を明確化したと説明されています。
倒産危機にある会社のM&Aなど実務に影響がありますかね。
 
【特定の債権者に対する担保の供与等の特則(民法424条の3)】
新設規定です。
こちらも詐害行為取消請求の要件の明確化ですね。
不公平な弁済行為等を偏頗行為といいます。破産法における否認権の対象にもなりますが、同じように詐害行為になるのですね。
担保供与または債務の消滅行為(弁済など)は、
①債務者の支払不能状態の時に行われたこと
②債務者と受益者が通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたこと
が要件となり、詐害行為取消請求の対象となります。

それらの行為が、債務者の義務に属さず、または時期が債務者の義務に属しない場合には(繰り上げ返済などですね)、
①支払不能前30日以内に行われたこと
②債務者と受益者の通謀
という緩和された要件で認められます。

経済的危機状態においては、債権者平等という観点も考慮しないといけません。特定の債権者(仲間内や親族など)に優先的に有利な行為をすると、詐害行為取消請求や否認権の対象となりうるのです。
 
【過大な代物弁済等の特則(民法424条の4)】
新設規定です。
こちらも詐害行為取消請求の要件の明確化ですね。
代物弁済という言葉をご存知でしょうか。
典型的なものは、金銭債務の弁済として金銭を弁済する代わりに不動産や物を譲渡する行為です。
弁護士も和解の際などで使うことがあります。
債務の額と物の価値がぴったり一致することはなかなかないですね。代物弁済はそれでも有効です。
ただ、過大な代物弁済をすると他の債権者が害しますね。
そこで、詐害行為取消請求の要件に該当する場合は、消滅した債務額を超える部分については詐害行為取消権を請求できると規定しています。
破産法と同様の考え方です。
 
【転得者に対する詐害行為取消請求(民法424条の5)】
新設規定です。
詐害行為により処分された不動産が転々流通することはありますね。
不動産などはあまり動かないように思いますが、詐害行為のようなケースでは、様々な登場人物が出てきて所有権が転々することも珍しくありません。
転得者に対する詐害行為取消請求の要件を整理しています。

①受益者に対して詐害行為取消請求をすることができること。
②各転得時に転得者(その前に転得したすべての転得者)が債権者を害すべき事実を知っていたこと。
を要件としています。

判例の考え方が一部変更されていますのでご注意を。
要件が厳しくなりました。
 
ほかにも詐害行為取消請求の条文が続きますが、ごく簡単に済まします。
 
【財産の返還又は価額の償還の請求(民法424条の6)】
新設規定です。
判例法理に従って詐害行為取消請求の効果が整理されています。
取消しだけではなく財産の返還も請求することができ、返還が困難である場合には価額償還を請求することができます。
 
【被告及び訴訟告知(民法427条の7)】
新設規定です。
詐害行為取消請求の被告は、受益者または詐害行為取消請求の相手方たる転得者です。
債権者は、訴訟提起したときは、遅滞なく、債務者に対し訴訟告知をしないといけないと規定されました。債権者代位訴訟と同じ趣旨で、債務者の手続き関与の機会を与えるためです。
 
【詐害行為の取消の範囲(民法424条の8)】
新設規定です。
判例法理を明文化しています。
詐害行為取消請求の対象詐害行為の目的物は可分であるときは自己の債権(被保全債権)の額の限度においてのみ取消しが可能ということですね。
 
【債権者への支払又は引渡し(民法424条の9)】
新設規定です。
判例法理上、債権者は、受益者または転得者に対し、目的物の返還ないし価格償還請求に際し、自己に対する支払あるいは引渡しを請求することができました。それが明文化された形です。
債務者に対する返還を求められるだけではないのですね。
取消権なのに自己に対する支払い等請求ができる点が債権者取消請求権が債権回収の強力な武器である所以です。
 
【認容判決の効力が及び者の範囲(民法425条)】
詐害行為取消請求を認容する判決の確定判決の効力は債務者にも及ぶことが明記されました。
 
【債務者の受けた反対給付に関する受益者の権利(民法425条の2)】
新設規定です。
詐害行為たる処分行為が取り消された場合、受益者は、債務者に対して反対給付返還請求権があることを明記しています。
民法425条の4にて転得者の場合も同様に規定されています。
 
【受益者の債権の回復(民法425条の3)】
新設規定です。
詐害行為たる債務消滅行為が取り消された場合、受益者の債権者に対する債権は原状回復する旨が明記されました。
民法425条の4にて転得者の場合も同様に規定されています。
 
【詐害行為取消権の期間の制限(民法426条)】
詐害行為取消請求は、詐害行為を知った時から2年以内に、かつ詐害行為の時から10年以内に、訴訟提起しなければいけません。
除斥期間・出訴期間とされており、時効と異なり中断事由がありません。
 
以上が、詐害行為取消請求のお話でした。
 
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広島の弁護士 仲田 誠一
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民法改正講座6 [身近な法律知識]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。
 
まずは、損害賠償の範囲の話です。

損害賠償の範囲(民法416条)】
債務不履行に基づく損害賠償の範囲の規定です。
損害賠償は通常損害と特別損害に分かれます。
債務不履行によって一般的に生ずる損害を通常損害、特別の事情によって生じた損害は特別損害ですね。
例えば、債務の履行がされないことによって、債権者の転売利益も失った場合、転売利益は特別の事情によって生じた特別損害と言えるでしょう。
旧法では、特別損害は、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときに損害賠償の対象となる旨規定されていました.
新法では、「当事者がその事情を予見すべきであったとき」という表現に改められました。
具体的な当事者の現実の予見あるいは予見可能性という事実問題ではなく、べき論として予見すべきであったかという規範的評価の問題である旨が明記されたと説明されています。
訴訟で争うときは、微妙な問題なのですが、形式上は、新しい条文に沿った主張をすることになります。
 
【中間利息の控除(民法417条の2)】
新設規定です。
損害賠償額の算定に当たり、将来において取得すべき利益についての損害賠償(逸失利益)、将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定めるにあたっては、中間利息の控除がなされます。
将来の利益を現在に賠償してもらうのですから、あるいは将来の費用を現在に賠償してもらうのですから、将来の利息分は控除するという考え方です。
お金は置いているだけで利息相当額の利益が生まれるという考え方ですね。先に貰うなら利息相当部は控除しないということです。
それが条文上明記されました。
損害賠償請求権が生じた時点の法定利率により中間利息を控除するとされています。
実務上、ライプニッツ係数などを使って計算していた分野です。
なお、法定利率が5%から3%に引き下げになります。
単純に考えて、控除される利息額が減り、その分現在の損害賠償額が高額化します。
 
 
【賠償額の予定(民法420条)】
契約により当事者は債務の不履行について損害賠償の額を予定することができます。
所謂、違約金条項ですね。
旧法では第1項に、裁判所はその額を増減することはできない旨、誤解を招く文言がありましたが、改正により削除されました。
違約金条項は公序良俗違反等で無効になり得ますし、一部無効も考えられ実質減額ということもあり得ますからね。
 
【代償請求権(民法422条の2)】
新設規定です。
債務の履行が不能となったのと同一の原因により債務者がその債務の目的物の代償である権利または利益を取得した場合には、債権者が当該権利の移転または利益の償還を求めることができるという代償請求権を判例が認めていました。
明文規定がなかったため新設されました。
目的物が滅失した場合の損害保険金が典型例でしょうか。
 
ここからは債権者代位権の条文の紹介が続きます。
 
【債権者代位権の要件(民法423条)】
債権者代位権をご存知でしょうか。
債権者が債務者の資力がない等により債務者の財産保全が必要と認められる場合に、債権(被保全債権)を保全するため、債務者に代わって(代位して)、債務者の権利(被代位債権)を行使する制度です。
実務上そんなに使うことはないですが、よく使う代位登記は似たような考え方に基づきます。
改正により次のとおり要件が整理されました。
 
差押えを禁じられた権利は代位行使できないことが明記されました。債権者があてにする責任財産ではないから当然ですね。
例えば年金受給権です。
 
強制執行により実現できない債権を被保全債権として債務者の権利を代位行使できないと明記されました。
債権者代位権は強制執行の準備として責任財産を保全する制度という建前なので。
 
なお、被保全債権が期限未到来の場合の裁判上の代位の制度は廃止されました。
 
【代位行使の範囲(民法423条の2)】
新設規定です。
判例法理に従い、債権者は被保全債権の範囲でのみ被代位債権を行使できること、すなわち金銭のように被代位権利の目的が可分であるときは、代位債権者は自己の債権の額の限度においてのみ権利を行使できることが明文化されています。
当然ですね。
 
【債権者への支払又は引渡し(民法423条の3)】
新設規定です。
債権者代位権は、債権回収の観点からは、非常に強い効力のある権利です。
金銭請求権、動産引渡請求権を代位行使した場合、相手方(第三債務者)に対し、自分に対する支払い、引き渡しを請求することができるのです。
確実に債権回収が図れますね。しかも、差押えと異なり他の債権者の介入もありません。
このことは判例で認められていましたが、それを明文化しています。
 
【相手方の抗弁権(民法423条の4)】
新設規定です。
債権者が被代位権利を行使したときは、相手方は、債務者に対して主張することができる抗弁をもって、債権者に対抗することができる、と規定されました。
これも判例法理の明文化です。
抗弁とは、権利の実現を阻む相殺や同時履行などの主張ですね。
非代位権利の債務者は、債権者代位権の行使によって不利な立場に置かれる謂れはありませんから、当然ですね。
 
【債務者の取立てその他処分の権限等】
新設規定です。
判例法理と異なる規定という点で珍しいですね。
判例法理では、債権者が債権者代位権を行使し債務者がそれを知った時には債務者は被代位権利の処分権限を失うとしていました。
これに対しては、債権者代位権は債務者が権利を行使しないときに限って認められるべき、債権者は仮差押えや差押等の保全・執行手続により債務者の処分権限を奪うべき等の反対がありました。
新法は、債権者代位権が行使されても債務者は被代位権利について自ら取立てその他の処分をすることができる。相手方も債務者に対して履行することができると規定しています。
これにより債権者代位権の効力が弱まったと思います。
訴訟をしてもその間に債務者が権利を処分すれば無駄になりますね・・・
 
【被代位権利の行使に係る訴えを提起した場合の訴訟告知(民法423条の6)】
新設規定です。
債権者が被代位権利の行使に係る訴えを提起した時は、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない、とされました。
債権者代位訴訟の判決の効力は債務者にも及びます。
難しい言葉で、法定訴訟担当という概念があります。
そうであれば、債務者に債権者代位訴訟手続きに関与する機会を与える必要があります。
そのため、このような規定が新設されました。
 
【登記又は登録の請求権を保全するための債権者代位権(民法423条の7)】
新設規定です。
弁護士がよく接する場面ですね。
解釈上認められていた登記または登録請求権を保全するための債権者代位権が明文化されました。
 
今回はここまでです。

お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
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民法改正講座5 [身近な法律知識]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。

まず、法定利率が変わります。 
【民法404条(法定利率)】
利息を生ずべき債権について利率に関する合意がない場合には、その利息が生じた最初の時点における法定利率が適用されます。
勿論、無利息貸付等、無償での債権も存在します。
個人間の貸付について「これまでの利息は請求できないのか。」と、質問を受けることがあります。
しかし、利息が生ずべき債権ではない限り、法定利率で利息を請求することができません。
遅延損害金は約束がなくとも請求できますが、利息は約束がないと請求できないのです。
貸付であれば、利息が発生することが契約書に明記される等が必要です。
 
法定利率が、5%⇒3%となりました。
近時の低金利に合わせた形です。それでも高いような気もするかもしれません。
 
かつ、法定利率が、3年毎の見直しにより変更されることになりました。
過去5年間の短期貸し付けの平均利率として法務大臣が告示する基準割合を基準にして調整する形です。条文を見てもイメージが湧き難いところです。慣れないといけませんね。
ただ、1%未満の端数は切り捨てる調整ですので、簡単に変動するわけではありません。
 
あわせて商事法定利率6%の商法規定が削除されました。商人が貸すのと個人が貸すのとでは異なった利率だったのですが、統一されます。
施行後は、弁護士が訴状を書く際に、商事利率が適用されるか民事法定利率が適用されるか悩まなくてもよくなります。
 
金銭消費貸借契約(お金の貸し借り)では、利息の支払合意があるのであれば利率に関する合意も当然ありますよね。
利息の支払い合意がなければそもそも利息は発生しないことは上述したとおりです。
法定利率はあまり関係がないじゃないかと思われるかもしれません。
 
実は、法定利率は実はいろいろなところで出てきます。
遅延損害金の利率や、不当利得の悪意の受益者に対する利息、損害賠償請求権の行使の際の中間利息の控除にも影響を及ぼします。
弁護士も訴状にて法定利率を請求することが多いのです。
特に中間利息の控除の考え方は損害賠償以外でも利用されます。要するに現在価値の計算ですからね。影響が大きいのではないでしょうか。

次に履行不能のお話です。履行ができない債務を内容とする契約をした場合ですね。
 
【履行不能(民法412条の2)】
1項 債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない。
2項 契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、第415条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない。
 
履行不能に関する新設規定です。
1項では、履行不能の効果として、債権者が履行請求権を失うことが明文化されました。
考え方は変わっていません。履行が不可能で会ったら履行を請求しても意味がないですからね。勿論、履行を不能にした責任のある当事者は損害賠償義務を負います。
 
2項では、契約のはじめから不能であった場合(「原始的不能」といいます。)でも、契約は有効に成立したとの前提で、債務不履行による損害賠償請求が可能であることが明文化されました。
従来は原始的不能の場合には契約が無効である、そのため給付すべき者に過失がある場合には契約締結上の過失責任として損害賠償責任が生じうるとされていました。
しかし、契約締結上の過失責任は、債務不履行責任と異なって、履行利益の賠償が含まれていない信頼利益のみとされています(儲けがなくなった損とイメージすればわかりやすいでしょうか)。
履行利益、信頼利益は、弁護士泣かせの概念で、具体的事案に当て嵌めると非常に判断が難しい場合もあります。
原始的不能か後発的不能かの違いは偶然の事情によるのに損害賠償の範囲が違うとおかしいということで、効果を同じにしたようです。
 
続いて受領遅滞のお話です。債務の目的物の受取を拒んだ場合等ですね。

【受領遅滞(民法413条)】
受領遅滞という言葉をご存知でしょうか。
履行の提供をする側が怠った場合は履行遅滞ですね。わかりやすいです。
その反対に履行の提供を受ける側が受けなかった場合が受領遅滞です。
受領遅滞の効果が整理されています。
そんなことあるのか、と思われる方がいらっしゃると思います。
契約内容に争いがあるなどの思惑があって履行の提供を受けないことは珍しくありません、弁護士はけっこう出逢う事態です。
 
まず1項で、受領遅滞の効果として、債務の目的物が特定物の引渡しであるときは、履行の提供後は「自己の財産に対するのと同一の注意」をもってその物を保存すればいいとされています。
特定物ではなく種類物が目的の場合(例えば缶ジュース)には、保存ということ自体考えられないですね。
ただ、実務上は、いつの時点で特定物になるかは難しいところです。汎用性がある物も(これは種類物といいます。)、どこかの過程で特定されることになりますね。
「自己の財産に対するのと同一の注意」は善良な管理者の注意(善管注意義務)を軽減する際に使われる言葉です。保存義務の程度を軽減する意味です。少し乱暴かもしれませんが、軽過失があっても責任が生じるのが善管注意義務、そうではないので自己の財産に対するのと同一の注意というイメージでしょうか。
 
次に2項では、履行に要する費用が増えた場合には、増加額は債権者の負担とすることが明文化されました。
 
【履行遅滞中又は受領遅滞中の履行不能と帰責事由(民法413条の2)】
新設規定です。
当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務の履行が不能となった場合、履行遅滞の間であれば債務者の責めに帰すべき事由によるもの、受領遅滞の間であれば債権者の責めに帰すべき事由によるもの、と各みなすとされています。
従来の考え方を明文化したものです。

今回のお話した内容は実務にも影響がある改正点かと思います。
 
お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。
 
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民法改正講座4 [身近な法律知識]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。

大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが説明させていただいております。

 

今回は時効の話ですね。時効は馴染みがある言葉だと思います。

 

刑事で言われる場合は公訴提起時効のことですが、民事で言われる時効は、取得時効と消滅時効です。

 

時効の援用(145条)】

時効の援用とは消滅時効、取得時効を主張することですね。援用により権利が消滅あるいは権利を取得します。

改正前では、「当事者」が時効を援用できると規定されていましたが、改正法は、「当事者」のほかに「消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有するものも含む。」と判例法理に従って明確にされました。

 

【裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新(147条)】

時効の完成猶予について旧条文を整備したものです。

時効の完成猶予は時効の停止と言われていた概念です。時効期間の進行が止まることですね。

裁判上の請求(訴訟等です)、支払督促、和解・調停手続、破産手続・再生手続・会社更生手続参加があれば、それが終了するまで時効期間は経過しません。

 

確定判決等によって時効期間が延びることなく手続が終わった場合には手続が終わってから6カ月は時効が完成しません。

時効が完成しそうなときは、時効完成を阻むにはとりあえず訴訟を提起する等をしないといけません。

 

確定判決等によって権利が確定したときは、上記手続が終了した時から新たに時効の進行が始まります。

消滅時効を援用して債務整理する際には、確定判決等の債務名義があるかどうか確認をしないといけませんね。

 

【強制執行等による時効の完成猶予及び更新(148条)】

こちらも強制執行等と時効の完成猶予の関係を整理した条文ですね。

強制執行、担保権の実行、競売、財産開示手続中は時効の完成が猶予されます。手続が取り消されて終了した場合には終了から6か月は時効が完成しません。

同手続が終わった時は、その時から新たに時効が進行します。ただし、取消しによって終了した場合にはその効果はありません。

 

なお、強制執行が空振り、あるいは費用を支弁するほどの物がなく、取下げられたため手続が取り消された場合の時効の進行については争いがあります。

ケースバイケースの判断にならざるを得ないですね。

 

【強制執行等による時効の完成猶予及び更新(149条)】

仮差押え、仮処分は改正前では時効中断事由(時効がリセットされる事由)とされていたましたが、終了から6か月間時効が完成しない時効の完成猶予事由に変更となりました。

 

【催告による時効の完成猶予(150条)】

催告は、裁判外での請求行為、請求書の送付等だとイメージしてください。

規定が整理されました。

催告があった場合には、その時から6ケ月を経過するまで時効は完成しません。

催告によって時効の完成が有訴されている間に再度の催告をしても時効の完成猶予の効力がないという判例法理も明文化されました。

 

催告を繰り返して時効の完成を延ばすことはできません。完成猶予中に訴訟等をしなければなりませんね。

 

【協議を行う旨の合意による時効完成猶予(151条)】

新しい制度ですね。

権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、時効完成が猶予されます。

合意があった時から1年を経過した時

当事者間で定めた協議期間

協議続行拒絶通知の時から6か月

のいずれか早い時までです。

 

再度の合意もできます。時効完成が生ずるべき時から通算5年までです。

催告による時効完成猶予との併用はできないとされています。

上記合意は電磁的記録によってすることもできます。

 

このような合意ができる場合には時効が完成しそうだからといって急いで訴訟を提起する必要はないということですね。

 

【承認による時効の更新(152条)】

規定の整備だけですね。

承認は時効の中断事由でしたが、更新事由と改められました。

承認があったかどうか争われる例も珍しくありません。一部弁済をすれば原則承認になりますが、例外的には承認と見られないケースもあります。

 

時効の完成猶予または更新の効力が及ぶ者の範囲(153条)】

改正前148条は時効中断事由は当事者及び承継人の間にのみ効力を有するとしていましたが、時効の更新(中断が更新と変わりました)及び完成猶予にについて同様の規定が整備されました。

 

【債権等の消滅時効(166条)】

割合大きな改正ですね。

改正前は、消滅時効は権利行使ができるときから10年間、所有権以外の財産権は20年間が時効期間でした。

改正により、債権は、

債権者が権利を行使できることを知った時から5年間行使しないとき

または

権利を行使することができるときから10年間行使しないとき

に消滅します。

 

後者は客観的な権利行使可能時点です。

前者は主観的な権利行使可能時点です。

通常は両者が一致しますね。結局、債権は5年が原則と考えておいた方がいいでしょう。

 

あわせて、商事消滅時効5年(旧商法522条)が削除され、商事、民事とも統一的な判断がなされることになります。

 

さらに、改正前170条から174条の短期消滅時効が削除されました。債権の種類によっては、1年から3年という短期消滅時効が定められていたのです。

統一的な規定にしたため、短期消滅時効に該当する債権に該当するか、商事債権に該当するかどうかを考えなくても済みます。

 

【人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効(167条)】

実質的に債権の消滅時効は短くなりました。

そこで、人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効の特則が設けられています。

債権者が権利を行使できることを知った時から10年間行使しないとき

または

権利を行使することができるときから20年間行使しないとき

に消滅します。

 

お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

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民法改正講座3 [身近な法律知識]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。

大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが説明させていただいております。

 

表見代理、無権代理の話が続きます。

 

【代理権授与の表示による表見代理(109条)】

代理権授与表示をした本人は、表見代理人がしたその表示範囲内での行為について善意無過失の相手方に対して責任を負います。
代理権授与を表示した以上、有効な代理行為と同じく法律効果を甘受しなさいということですね。そこは変わりません。

2項では、さらに、その表見代理人がその表示された代理権の範囲外の行為をした場合について、判例法理を明文化しました。
相手方が、その行為の代理権があると信ずべき正当な理由がある限り本人が責任を負うとされています。

109条と110条の重畳適用の場面として司法試験の勉強でならった例です。

 

【代理権消滅後の表見代理(112条)】

代理権を与えた本人は、代理権消滅後、表見代理人が消滅代理権の範囲内でした行為について、代理権消滅の事実について善意・無過失の相手方に対して、責任を負います。
代理権を消滅させる場合にはきちんと相手方に通知をしなさいということですね。弁護士の場合には、弁護士の方で辞任通知を送るのが通例ですが。

改正民法112条1項は、表現を整えただけで改正前民法と同じです。

2項では、代理権が消滅し、かつ表見代理人がその消滅代理権の範囲外の行為をした場合について、判例法理を明文化しました。
相手方が、代理権があると信ずべき正当な理由がある限り本人が責任を負うとされています。

これも110条と112条の重畳適用の場面として勉強した懐かしい記憶があります。

 

正直言って、表見代理についてはあまり実務上問題となるケースを目にしません。

個人間の取引で問題となることがあるのでしょうか。

会社間の取引関係では、それぞれの会社の人の行為は、支社長、部長、課長、担当者等の権限の範囲など細かいことは問題とせずに、会社の行為と見られる感があります。

 

【無権代理人の責任(117条)】

マイナーな分野が続きます。極力簡単にお話しします。

無権代理人は、代理権の証明または本人の追認がない限り、相手方に対して履行または損害賠償の責任を負います。当然ですね。誰でも履行できる債務でない限り、損害賠償での解決なのでしょう。1項は表現を整えただけの改正です。

2項では、相手方が悪意または善意有過失、もしくは無権代理人が行為能力のない場合には無権代理人は責任を負わないとされていた点について、相手方が善意有過失でも無権代理人が悪意である場合には保護しないという改正をしました。その場合にまで無権代理人を保護する必要はないですからね。

 

これで代理権関係から抜け出せました。

 

【原状回復の義務(121条の2)】

新設規定です。

債務の履行として給付を受けたがそれが無効な行為である場合、給付された方はその給付を保持する法律上の原因がありませんね。
無効だから返さないといけません、これを原状回復義務と言います。

法律的に言えば不当利得の話とされていました。改正により、無効な行為による原状回復義務が明文で整備されました。

 

無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う(1項)。これが原状回復義務ですね。

 

2項では、無効な行為が無償行為であるケースについて、無効あるいは取り消すことができることを知らなかった(善意の)相手方の返還義務の範囲を、「現に利益を受けている限度において」(現存利益)に限定しています。有償行為については、双方とも全部返還しあいましょうということになります。

 

3項では、行為の時に意思能力あるいは制限行為能力者であった場合の返還義務を、やはり現存利益の範囲に限定しています。

なお、善意の消費者が消費者取消権を行使した場合の返還義務も現存利益に限定されるという特則があります(消費者契約法)。消費者の保護の為です。

 

現存利益というのがわかりにくいです。現存利益は、受けた利益がそのままの形あるいは形を変えて残っている場合です。

お金を借金弁済や生活費に充てた場合には財産減少を免れて形を変えた利益が残っている、浪費すれば利益が残っていない、という話になるようです。

実務ではあまり出てこない話ですが、少し変な感じがしますね。

 

【条件の成就の妨害等(130条)】

1項はそのままです。

条件が成就することにより不利益を受ける当事者が故意に条件成就を妨げたときは、相手方はその条件が成就したものとみなすことができます。

例えば、成功報酬を決めていたところ依頼者が成果実現の直前に梯子を外して自分で成果を実現して成功報酬を支払わないようにしたケースです。

2項が新設されました。

条件成就で利益を得る当事者が不正に条件を成就させた場合には、相手方が条件成就をしなかったものとみなすことができるとしています。1項と逆のケースですね。

判例法理の明文化です。

 

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