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コラム

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中小企業のリスク管理とは3 [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。

中小企業がとるべきリスク管理についてお話しし、今回が3回目で最後です。

前回は、リスクを洗い出し、分類し、保険を掛ける、では残ったリスクの対応はどうするのか、というところまでお話しました。

中小企業にはリスクの予防・リスクの排除が必要です。ひとつでも顕在化してしまうと経営継続自体が危険にさらされることが珍しくありません。

保険で対応できずに残るリスクは、弁護士(あるいは税務に関しては税理士)に、リスクを予防する仕組みを考えてもらってください。
中小企業にリスク管理を担う部署、人材を割く余裕はないかもしれませんし、かつそれは必要ありません。
また、リスクは法律を通じて損害賠償その他の責任の形で顕在化します。
法律的な観点からの対処は必須なはずです。

専門家によるリスク診断、その後の対応にはコストはかかります。しかし、多少費用がかかっても、仕組みづくりに一度手を付ければ何年かは通用するでしょう。
万が一リスクが顕在化した時の多大なコストを考えると、保険料と同じ感覚で費用をかけて欲しいと思います。
 
卑近な例で言うと、従業員のマイカー通勤を許している会社で、従業員の自動車保険の管理をしていない会社があります(無制限の自動車保険の加入、使用目的を「通勤・通学」にしているか定期的に確認します)。
通勤事後が起きると、会社も責任追及され大変なことになります。管理をしなければならないのです。その手間はそうかかりません。

この程度の気付きの積み重ねが必要なのです。同じような例は幾例もあります。
 
リスク対応は、中小企業の身の丈に合った、シンプルかつルーティン化できるものでなければなりません。
そこが肝です。
大上段に構えた対策は管理コストを発生させてしまいますし、どうせ定着することはありません。
最低限の分離とチェック、そして記録化ですね。
当たり前にできるような仕組みです。
それには各会社に合ったやり方を検討しないといけません。
当職は、内部監査の知識・経験もあることから、中小企業に適合したリスク対応を研究・実践しているところです。
 
リスクへの対応は、決して後ろ向きの仕事ではありません。
会社の継続、あるいは収益に直結する経営戦略です。

最後に、簡単に申しますと、保険で対応できるものは保険へ、そうでないものは専門家によるオーダーメイドの仕組み作りということで、中小企業のリスク対応は完成します。
中小企業はそれ以上のコストをリスク管理にかけられませんしかけるべきでもありません。
かつ、リスク対応は中小企業にとっても経営戦略として必須事項です。
 
少なくとも10年に1度は、会社のチェック、リスク診断をされることを強くお勧めします。
人間ドックは年に1回行かれるのでしょう。会社も本当は数年に一度は点検した方がいいのでしょうね。
 
顧問弁護士、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602

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株式会社の取締役の任期等 [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 
企業法務のお話です。

 

株式会社の取締役の任期は、原則2年です(正確には選任後2年以内に終了する事業年度の最終の定時株主総会終結の時です。会社法332条第1項)。

閉鎖会社(株式譲渡制限が付いている株式会社)では取締役の任期を定款変更により10年まで延ばせますね。

会社法332条第2項のお話です。

 

任期があるということは選任決議、選任登記をする必要があります。

たいていは税理士さんが定時株主総会の議事録に忘れないように役員選解任の議題を入れてくれているとは思います。

なお、登記を懈怠すると代表者に過料も課されることになります。懈怠期間により過料は高額化していくようです。

 

なお、特例有限会社の取締役は、原則任期なしです。

 

役員の選解任は面倒ですし、登記に費用もかかるということで、税理士さんや司法書士さんのアドバイスにより任期を延ばしている株式会社も珍しくないですね。

 

無駄な手間と費用を省くということは合理的ですし、たいていはそれで何も支障はありません。

 

ただ、会社のトラブルを多く扱う弁護士の目線で見ると、あまりお勧めできないケースもあります。

 

取締役は、いつでも株主総会の決議によって解任することができます(会社法339条第1項)。

しかし、解任について正当な理由がある場合を除き、解任された取締役は解任によって生じた損害の賠償を請求することができます(会社法339条第2項)。

実際に会社側の代理人として、損害賠償請求をされた例も経験しております。

 

解任の正当な理由は簡単には認めてくれません。不正行為が立証できる場合には勿論大丈夫ですが、業績不振という理由では難しいです。
特に、経営権の争いや経営方針の違いなどから戦略的に解任をする場合には、正当な理由が認められないケースが多いのではないでしょうか。

 

そして、改正前の判例、実務ですが、解任された取締役の会社に対する損害賠償請求額は、残り任期の役員報酬金額が一応の基準となっています。

 

仮に取締役を解任する場合には、解任の正当な理由が立証できるかという点と合わせて、残り任期期間も考えておかなければいけません。

 

10年間の任期の1年目で解任した場合、残り9年間の役員報酬の金額が認められるかは判例がありませんので何とも言えません。
相当な期間分に制限される可能性もあります。ただ、リスクがあるのは事実です。

 

本当に10年まで任期を延ばしていいかは慎重に考えないといけません。

選任時には、関係が良好であっても、将来はわかりません。10年というと長いですよね。何が起こるかわかりません。
2年毎(3年、4年でもいいのでしょうが)に見直しをするということも合理的なことだと思います。

 

役員は家族だけだという場合も大丈夫とは言い切れませんよ。

配偶者が取締役というケースは多いですね。ただ、夫婦の関係が10年間持続するかは誰も保障してくれることではありません。
実際に、会社経営者の離婚に絡む取締役解任により妻から損害賠償請求をされた経験があります。勿論請求されることは予め想定していましたが。

親子なら問題になるケースはあまりないのかもしれません。しかし、親子間での経営権の争いは世の中にありますね。

取締役が、兄弟、親戚になってくると、よりリスクはあるでしょう。兄弟間の経営権の争いはよく聞く話です。

 

取締役の任期を10年にすることは必ずしもいいことばかりではないということはおわかりいただけましたでしょうか。

 

一度、自社の定款をチェックしてみてはどうでしょうか。取締役の任期を延ばせるように改正されたタイミングで、税理士さんなどが気を利かして定款変更をしているかもしれません。

 

定款は、会社の基本法です。上手く活用すれば会社経営をより戦略的なものにすることができますし、思わぬ落とし穴が潜んでいるかもしれません。

 

なお、定款を見ていて、役員選任決議をはじめ、株主総会の定足数は法律上可能な限り下げていた方がいいと思いました。
相続の際、遺産分割協議が整わない、かつ権利行使者の届出ができない状態であると、例えば定足数が議決権の過半数の株主の出席(会社法309条1項で定める原則です)まで要求していると、株式の2分の1が相続対象株式になっていれば有効に株主総会が開催できず、諸々の支障を来します。
その場合でも、議決権の3分の1の株主の出席と定款で定足数を定めておけば、有効に株主総会が開催できるのです。

勿論、限度はあります。定足数が小さすぎると逆にトラブルを招きかねません。

 

顧問契約、契約トラブル、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。

 

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同族中小企業の特殊性 [税法のお話15]

広島市の弁護士仲田誠一です。

法人税法のお話の最後です。

 

同族中小企業は、私法上、会社法等が想定する本来の法人の姿とは異なった実態であるという特殊性があります。
事業承継問題、オーナーの相続、オーナーの離婚が経営継続に影響を及ぼします。会社法ではなく民法の世界ですね。

 

同族中小企業は税法上も特殊な扱いを受けております。
個人事業とあまり異ならない実態から来る扱いです。

 

今回は、そのような同族中小企業の特殊性についてお話ししようと思います。

 

【私法上の特殊性】

まず、前提として私法上の同族中小企業の特殊性です。

 

会社法の建前は、株式会社は大規模公開会社を想定しています。

所有と経営の分離された会社です。株主がプロの経営者を雇う形ですね。

株主の有限責任(直接金融)が定められています。

また、株主保護の規定、厳格なルールを定めた規定が用意されています。

 

同族中小企業の実態は、所有と経営の一致です。

経営者である社長が会社の所有者である株主ですね。

有限責任は形骸化されています。社長が連帯保証人となっていますよね。

組織の形骸化し、会社法所定の手続の不履行も多いところです。

同族中小企業は、個人(民法)と会社(会社法)が未分離の状態なので、会社法だけではなく民法でも規律されます。

株主の相続が事業承継問題に直結しますし、離婚も関係してきます。持ち株、事業用財産は、相続の対象ですし、場合によっては財産分与の対象となります。

社長の責任は民法の連帯保証債務で無限化されていますしね。

 

【税法上の特殊性】

次に、同族中小企業は、税法においても、特殊な扱いがなされています。

税法は、同族中小企業に、

① 家族構成員(役員あるいは従業員として)に所得を分割する傾向

② 利益を内部に留保して法人税より高い所得税率の適用を回避する傾向

③ 所有と経営が結合しているためお手盛りによる取引や経理がされる傾向

があるとみているのです。

経営者が株主のチェックなしに何でも決められますからね。

 

そのため、租税負担の減少を図る行為に対応するための創設規定が用意されています。

 

ちなみに、
同族会社には、
同族会社(法人税法2条10号等)と特定同族会社(法人税法67条)の2種類があります。

簡単に説明しますと、前者は株主3人及び同族関係者で過半数以上の株式を保有、後者は1人の株主及び同族関係者で過半数を保有とイメージしておいてください。

 

典型的な同族中小企業は、たいてい両者に当てはまります。逆に、それに当てはまらなければ経営権が盤石ではなく、事業承継にも支障を来すなど、問題が大きいです。

同族中小企業である以上、株式の集中は経営のスピード維持、事業承継対策に必須です。

 

□ 留保金課税

特定同族会社には、特別税率(留保金課税)があります。利益を会社に貯めると税金がかかるのですね。

どうしてこんな税金がかかるのか不思議な方もいらっしゃるかと思います。

同族会社は利益を内部に留保して株主の所得税を回避する傾向があるため、個人企業と同族会社との間の負担の公平を図るべく、利益の内部留保に対して特別の法人税を課す趣旨です。

 

□ 同族会社等の行為・計算否認規定

包括的な否認規定があります。
法人税(所得税、相続税、地方税)の負担を「不当に減少させる」結果になると認められる場合に、税負担の公平を維持するため、正常な行為や計算に引き直して更正または決定を行う権限を税務署長に認めるものです。

これが怖いですね。

 

その適用は、当該行為計算が、純経済人の行為として不合理・不自然な行為・計算と認められるか否を基準として判定されます(経済合理性説)。

・ 当該行為・計算が異常ないし変則的であるか否か

・ その行為・計算を行ったことにつき正当な理由ないし事業目的があったか(租税回避の意図)

ですね。
 

所得税法157条の例としては、

     会社への無利息融資に利息相当額を所得加算

     同族会社への不動産管理料過大部分の必要経費否認

     同族会社への過少賃貸料部分の差額加算

があります。

例えば、同族会社に対する又貸し方式で過少な賃借料を設定した例で、同族関係ではない不動産管理会社に託した場合の管理料の賃料収入の金額に対する割合と比準する方法によって適正賃貸得額に引き直して課税することが許容されました(最高裁H6.6.21判決)。

 

法人税法132条の例としては、

     役員報酬・退職給与の過大な部分の損金算入を否認

     役員出張に同行した家族に支給した旅費を役員賞与

     役員への無利息融資につき利息を認定

     債務の無償引受けを寄付金ではなく利益処分

     資産の高価買入につき時価超部分を贈与

があります。

 

相続税法64条の例としては、
駐車場経営を目的として法人を設立し、被相続人との間で存続期間60年の地上権を設定したような例で、通常の経済人であれば到底採らない不自然、不合理な取引であるとして、地上権前提の90%控除の評価を認めなかった課税庁の行為が是認された例があります(大阪地裁H
12.5.12判決)。

 

その他同族会社に限られないものとして、法人税法22条、法人税法34条から36条等の規定も同族会社にありがちな行為の実質的な否認規定として利用されます。

 

このように、同族中小企業は、私法上特殊な存在であるだけではなく(勿論そのため生じる同族中小企業特有のリスクはケアしなければなりません)、税法上も特殊な存在になります。
特に、身内間で取引をする場合には、よくよく税務リスクを考えないといけません。

 

今回で法人税法のお話を終わりにさせていただきます。

 

お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。

 

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法人税法その4 [税法のお話14]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

同族中小企業にとって、役員報酬は、それを抑えて法人で利益を出して法人税を支払うのか、相応の支払いをして個人の所得を上げて所得税を支払うのか、ということが大事な経営戦略になります。

所謂、報酬戦略ですね。

 

法人で利益をたくさん出してたくさん法人税を支払う方針も否定はしません。また、所得税は超過累進課税ですので、所得税の方が法人税よりも税率が高くなるということもあるでしょう。

 

しかし、法人の自己資本をどんどん積み上げる結果何が起きるでしょうか。自社株の価値が上がり、事業承継の問題を複雑化させてしまいます。株式の価値だけ上がって、オーナー家族の資産があまりないというケースでは、相続等に苦労をすることになりかねません。その点で、必ずしも正しいとは思えません。

勿論、留保金課税もありますね。単純に税率で見てはいけません。

 

また、所得税を多く払ってでも、役員報酬額を戦略的に定めるべき場合も多いです。

事業承継対策として、あるいは連帯保証制度の下での信用力の問題として、オーナーあるいは後継者の個人資産の形成は重要です。

 

それでは、法人税法の「損金」のお話の続きをお話します。

 

法人税法上の「損金」に関する別段の定め(例外的な扱い)のお話の途中でした。

 

□ 寄附金(法人税法37条)の損金不算入

少しわかりづらい制度です。

寄付金とは、その名義の如何を問わず、金銭その他の資産または経済的利益の贈与または無償の供与をいいます。贈与よりも広い概念です。

寄付金は、直接対応した反対給付がないため、法人の事業活動に必要な費用であるかどうか(費用性の有無)を判断することが困難です(ない場合には利益処分の性質になります)。

そのため、行政的便宜と公平性の維持を目的に、統一的な損金算入限度額が定められ、超過部分を損金不算入としています(法人税法37条)。

 

「無償」とは対価またはそれに相当する金銭等の流入を伴わないことであり、その例としては、

子会社に対する内実を伴わない業務委託費名目の支出

売主に正常な対価を超過する支払をなした超過額

債務の免除をした債務相当額

使用権付建物譲渡の使用権の時価相当額 

などがあります。

 

名義を問わず、贈与等時点の時価で評価され益金に算入されます(法人税法37条7項)

ただし、広告宣伝費・接待費等の場合には寄付金になりません(同項括弧内)。

 

資産の譲渡または経済的利益の供与が時価相当額より低い対価を行われた場合の実質的な贈与または無償供与部分も寄付金とされます(37条8項)。低額譲渡の場面ですね。

 

□ 交際費

企業会計は交際費を費用計上することを認めています。損益計算書の販管費に計上されていると思います。

しかし、税法上は、特措法(同61の4、68の88)により交際費課税制度が定められています。基本的に資本金一定額以下の中小会社のみ一定額が損金算入可能ですが、その内容は特措法の度重なる改正で紆余曲折があります。

 

個人事業では交際費は悪とされていませんが、法人では悪者扱いだと言っていいのでしょう。個人事業は営業上交際費が必要である、法人は純経済的に合理的な営業しかしないから交際費は必要ない、と思われているのでしょうか。

 

企業の規模によっては、交際費にあたるのか(損金算入されない)、寄付金にあたるのか(限度額内の損金算入がなされる)、広告宣伝費・販売促進費にあたるのか(全額損金に算入される)が問題となります。

 

なお、東京高裁H15.9.9判決(萬有製薬事件)では、

交際費を定める特措法61の4Ⅰ③「接待、供応・・その他これに類する行為」に当たるためには、

① 支出の相手方が事業関係者等である

② 支出目的が取引関係の円滑化を図るものである

③ 行為の形態が「接待・・・類する行為」である

と3要件が必要とされています。

 

□ 使途不明金

使途不明金は、目的や内容、特に相手方が明らかではない支出です。通達では費途不明金」を損金不算入とされています(対役員の支出は役員報酬ないし役員賞与)。

法人税法上明文の規定はありませんが、当然のこととして判例も肯定しています。

 

※ 使途秘匿金課税(特措62)

ゼネコン汚職が契機となって制定された懲罰的規定です。

通常の法人税+40%課税されます。相当の理由がなく、かつ帳簿に相手方の記載なしという場合に使途秘匿金として課税されます。

 

□ その他損金不算入等

法人税額等の損金不算入(法人税法38条)。当然ですね。

 

課税繰り延べのための圧縮記帳(42、45、46、47、50)もあります。補助金等の額の範囲内で損金処理し取得価額を圧縮して課税繰り延べをする制度です。

 

引当金(法人税法52条)は、改正により法人税法上は貸倒引当金だけになったようです。所得税法では退職給与引当金もありますね。一定の要件の下で他にも認められるのではないかという見解もあります。

 

不正行為等に係る費用等の損金不算入(55条)。

 

等々、様々な損金不算入制度があります。損金不算入は税金を取る方向ですので・・・

 

今回は損金に関するお話の残りをお話いたしました。

 

次回は同族中小企業の税法上の特殊な扱いについてお話をします。

 

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法人税法その3 [税法のお話13]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

法人税法のお話の続きです。

 

私は個人事業主ですが法人税の税務申告をしたこともあります。
法人の破産管財人として申告をするケースがあるのですね。

ちなみに、他人の所得税申告も、成年後見人としてしたことがあります。

 

元銀行員なので会計の知識はあり、決算書も読めます。簡単な決算書であれば作成も可能です。

ただ、税務申告は難しいですね。付表等とにらめっこしながら申告を行いました。

 

前回は、法人税法上の「損金」のことをお話しましたが途中で終わっていました。

今回はその続きです。

 

損金の通則を定める法人税法22条3項の特則(別段の定め)の続きをお話します。

 

□ 減価償却費(法人税法31条)

固定資産の取得費用を当期の損金として計上することは特例を除いて許されません。

減価償却資産は長期間にわたって収益に貢献します。

費用収益対応の原則からは、固定資産の取得費を使用または時の経過によって減価するのに応じて各事業年度の必要経費に配分することになっています。

減価償却費は、経済的には、投下資本の回収、更新資金準備の機能、要するにCFを生む機能を有する制度です。

キャッシュフロー表を見ると、減価償却費はプラスされる項目になっています。会計上は費用なのですが、実際にお金が出ていかないので、キャッシュフローにはプラスして戻すのです。

 

固定資産であっても、事業の用に供していない資産は減価償却資産から除外されます(施行令13条)。

節税スキームの金融取引で問題となる点です。フィルムリース事件とう有名な判例がありました。

 

減価償却資産には、有形固定資産だけではなく無形の償却資産(営業権等)もありますね。営業権というとMAで見るものです。赤字会社の事業譲受から営業権は把握できないとする裁判例もあり注意です。

 

耐用年数は、耐用年数省令(法定耐用年数)で定められています。

 

※ 少額減価償却資産

取得費の損金算入(施行令133等)等の特例があります。政策的に特措法で度々改正されるところです。

 

※ 償却の方法

棚卸資産の評価方法と同様、減価償却の方法の税務署長への届出、変更の際の税務署長の承認が必要となっています(施行令)。

耐用期間内に毎期均等額で償却する定額法と

耐用期間内の毎期期首未償却残高に耐用年数に応じた一定の償却率を乗じて償却する定率法がメインですね。

ほかに、生産高比例法、リース期間定額法もあります。

減価償却はCF政策にも関わりますので、資金計画に沿ってその方法を採用するのでしょう。

なお、建物付属設備及び構築物は定額法のみ採用可能です(施行令)。

 

□ 役員給与等(法人税法34)の損金不算入

使用人に対して支給する給与は原則としてすべて損金に算入されます(ただし、特殊関係使用人に対する過大な給与の損金不算入、法人税法36条)。

ところが、役員給与については、法人税法は、以下の3種類の役員給与について損金算入を認めます。

利益の処分にあたるものを損金不算入にする趣旨です。

・ 定期同額給与

・ 事前確定届出給与(役員賞与)

・ 利益連動給与 ×同族会社

 

※ 勿論、役員給与等には、債務の免除益その他の経済的利益も含まれます(法人税法34条4項)。

 

※ 不当に高額な部分は損金に算入されません(法人税法34条2項)

不当に高額かの判断基準は次のとおりです。

職務の内容、法人の収益および使用人に対する給与の支給状況、同種事業・類似規模(「倍半基準」-売上高が0.5~2倍の範囲内の同業者)の法人の役員給与の支給の状況等に照らし相当であると認められる金額を超える部分(実質基準)、または定款の規定、株主総会の決議等により定められている役員給与の限度額等を超える部分の金額(形式基準)、のいずれか多い金額(施行令70条1号)。

ただし、裁判例で、当該役員のその法人に対する貢献度等も合わせて考慮しなければならないとされています。ここが問題ですね。

 

※ 役員退職給与

役員退職給与についても、不相当に高額な部分の金額は損金に算入されません(法人税法34条2項)。

その判断基準は次のとおりです。

法人の業務に従事した期間、退職の事情、同種事業・類似規模の法人の役員退職給与の支給の状況等を総合的に勘案して判断する(施行令70条2号)。

ただし、こちらも、当該役員のその法人に対する貢献度等も合わせて考慮しなければならないとされています(裁判例)。

弁護士の立場からすれば、中小企業のオーナー社長については、貢献度が非常に高いのであり、かつ、役員報酬等を決める権限は法律上株主総会にあるはずです。

株主総会がきちんと決定した退職金は損金と認められるべきものだと考えますが。

 

思ったよりも長くなってしまいました。次回に、法人税法上の「損金」のお話をもう1回だけさせていただきます。

 

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法人税法その2 [税法のお話12]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

法人税法の続きです。

 

法人税と所得税の大きな違いをまずお話します。
 

まず、所得税は所得の種類によって税金のかけ方が違います。

所得税法は、担税力に応じて所得を10種類に分け、異なる税金のかけ方をしています。

これに対し、法人の所得は1つです。
一律課税ですね。

個人の場合は、所得の分類によって税金が変わりますので、どの所得で申告するべきかが問題となりますが、法人はそのようなことは考える必要はありません。
 

また、所得税は超過累進課税ですね。
これに対して法人は基本的に一律税率です。

個人の場合は所得の分散ができればそれだけ節税になります。法人の場合はそうではないですね。
個人の節税のために法人と個人との所得分散を図ることはよく考えられることになります。

 

ちなみに、事業承継対策のスキームを考える際には、上述のような法人と個人とでの税金の違いを意識してスキームを組み立てる必要があります。
事業承継対策は、オーナー・会社・後継者の間のスムーズな資産移転を考えることになるからです。

  

さて、前回は、法人税法の所得計算の柱の1つである「益金」について簡単にお話ししました。
今回は、もう1つの柱である「損金」について簡単にお話しします。
簡単と言っても2回に分けざるを得ません。

 

まず、「損金」を定める法人税法22条3項では、

1 売上原価、完成工事原価その他の原価

2 販売費、一般管理費その他の費用

3 損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

を損金に計上すると定められています。

 

【売上原価について】 

□ 費用収益対応の原則       

法人税法は「当該事業年度の収益に係る・・・原価の額」と定めています。

個別に収益と対応する費用ですね。

収益をある事業年度に計上する場合には、当該収益に係る売上原価も当該事業年度に計上し、適正な期間損益計算を確保する原則です。

 

□ 棚卸資産の評価方法(法人税法29条、同施行令28)

売上原価計算の基本は、期首棚卸資産+当期仕入額‐期末棚卸資産ですね。

期首棚卸資産と登記仕入額の2つは確定しているはずですから、決算内容そして所得内容は、期末棚卸資産の評価により左右されるわけです。

棚卸資産の評価方法として、法人税法は例外規定(63条、64条)のみおき、明文規定がありません。
そこで、基本的には企業会計原則(法人税法22条4項)に従います。

自由に評価していいわけではありません。
棚卸資産の評価は粉飾・脱税の方法によく使われるため、施行令により、棚卸資産の評価方法の税務署長への届出、変更する場合の税務署長の承認が必要となっています。
注意してください。

認められている評価方法はいくつもあります。

個別法、先入先出法、平均原価法、売価還元原価法、総平均法、最終仕入原価法(これが一応の法定評価方法です)、売価還元法ですね。

業種・業態によって向き不向きがあります。

 

【販管費、営業外費用について】

□ 債務確定主義
債務が確定したもののみ損金に計上できます。条文で「債務の確定しないもの」を費用から除外しています(法人税法22条3項2号)。
期間対応費用ですので、計上の恣意性を排除し会計報告の客観性確保する趣旨です。債務確定基準といいます。
したがって、資産の評価損(法人税法33条)は、例外を除いて、原則として損金計上できません。
また、費用見越・引当金の損金算入も原則として禁止されます。


なお、最高裁H16.10.29判決では、売上原価の例ですが、費用の見積り計上が、支出の相当程度の確実性、金額の適正な見積りの可能性が認められる事実関係の下では、当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が確定していないときであっても売上原価として損金の額に算入することができると、認められています。

 

【損失の額で資本等取引以外の取引に係るものについて】

□ 貸倒損失
例として貸倒損失をお話しします。
金銭債権の評価減は原則認められません(法人税法33条)。
したがって、金銭債権の貸倒損失を損金の額に算入するには、その全額が回収不能であることが必要です(一部貸倒処理は認められていないのです)。

かつ、回収不能であることが客観的かつ確実であることが必要とされています

この点で、有名な興銀事件最高裁H16.12.24判決では、住専処理計画に沿った母体行による債権放棄の例で、「当該事業年度の損失の額」として損金に計上できる基準について「債権者側の事情」「経済的環境」等も考慮するべきとしています。

 

長くなりましたので、今回はここで終わりとさせていただきます。

次回に損金の続きをお話します。

 

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広島の弁護士 仲田 誠一

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