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自己破産か、個人再生か、任意整理か [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
弁護士会で若手会員相手に個人再生委員研修の講師をすることとなりました。
個人再生委員の話だけではなく個人再生を申し立てたことがない会員向けに個人再生手続のポイントも講義する予定です。
そういうわけで、改めて債務整理の手続選択について考えてみました。
個人でいうと、自己破産か、個人再生か、任意整理かの選択ですね。
以前のコラムでも何度か書いた気もしますが、あらためて整理いたします。
 
債務整理の手続選択は、借金の額、借金の内容、収入(弁済原資)、保有財産、職業等をいろいろ考えて行います。
オーダーメイドで考えないといけません。
 
まずは、借金の額と収入の関係ですね。
借金総額(住宅ローンは除きます)を36回(3年)で支払うと仮定して、収入からその金額を毎月支払うことができるかどうかを考えます。
それが支払えない状態でしたら、借入元本をカットできる個人再生、自己破産という法的整理手続を考えます。
逆に支払えるのであれば任意整理で十分ということです。資金繰りの問題だけ解決すればいいケースです。
 
勿論、支払えない状態であっても、法的整理をすることに躊躇するケースもありますね。
親戚が保証人になっていて迷惑がどうしてもかけられない、ローン付の車を維持しないと生活できない、勤務先から借入れがある等々色々な事情があります。
 
任意整理でも、債権者にきちんと説明して納得してもらえたら5年間あるいはそれ以上の弁済期間での和解も不可能ではありません。
5年ぐらいであると割合簡単にOKがもらえるでしょうか。
そこで、法的整理を避けたいケースでは、和解できそうな弁済期間での弁済が可能な限りで、任意整理を選択することはあります。
 
ただ、長期間にわたってギリギリの弁済を続けていくことは危険ですし非常に苦しいですね。
また、弁済途中で頓挫してしまえばその際には自己破産等を選択せざるを得ず、それまでの苦労が無駄になることもあります。
初めに自己破産していれば弁済分は貯蓄で残ったかもしれません。
さらに、長年にわたって借金返済のために働くよりも今後の生活のために少しでも貯蓄をしてくことが望ましいのは言うまでもありません。
ギリギリの弁済計画だと、支払い完了時には財産がゼロということになります。
無理をして任意整理を選択しようとされる方には、ここら辺をお話して、その上で決断してもらいます。
 
勿論、条件が揃えばですが、法的整理を選び難い原因をクリアしつつ自己破産、個人再生を選択することがあります。
敢えて偏頗弁済をする、車を親族が買い取るなどですね。
自己破産手続、個人再生手続においてそれらの行為が問題になるとしても、結果的にはベストな選択になることも正直あります。
弁護士の腕の見せ所でしょうか。
当然のことですが、弁護士の助言の下で進めてください。
 
法的整理を選択する場合、個人再生か自己破産かの選択が残りますね。
 
財産もない、他の問題もないということであれば、自己破産を勧めます。
 
個人再生ができる借金額の場合はたいてい自己破産もできると思います。
破産は支払不能、個人再生は支払不能のおそれが要件ですが、弁護士は受任通知を出すと期限の利益は喪失されるので、たいてい支払不能と説明がつきます。
債務整理を決断されたのであれば、できればすべてリセットして、経済的に立ち直ってもらいたいです。
 
一方、自己破産ではなく個人再生を選択しないといけないケースもありますね。
 
自宅不動産を維持しないといけない場合には、個人再生しかありません。
住宅資金特別条項を利用した個人再生ですね。ただし、利用できる要件があって、借入の仕方、担保の付き方によっては利用できない場合もありますのでご注意を。
住宅ローンを控除しても不動産価値が数百万円残るような場合には手続を進めることは難しいです。その場合には別の方策を考えるしかありません。
なお、自己破産申立て前に親族に不動産を売却して自宅を維持して自己破産をしたというケースもあります。売却にあたっては弁護士がきちんと関与しました。
 
職業の関係で個人再生を選択するケースもありますね。
自己破産では一部の職業について制限があります。よく見ることがあるのは、保険外交員、警備員でしょうか。
個人再生では職業制限がないので、そのような職業の方は個人再生を利用するということです。
 
数は多くないですが、自己破産を申し立てた場合の免責不許可事由の程度がかなり重くて(これは破産管財人をやっている弁護士に判断してもらってください。)、とても免責許可が得られそうにない場合も、個人再生を選択しますね。
免責不許可事由の程度がある程度という場合であれば自己破産でもかまわないです。
よほどでないと免責不許可にはなりません。
ただ、ある程度の免責不許可事由が存在する場合、管財事件になる可能性を見越して、無難に個人再生を選択することも珍しくはありません。
 
後は、大きな保険など、特に維持したい財産がある場合も個人再生を選択するでしょうか。
自己破産では、自由財産あるいは自由財産拡張対象の範囲を超える財産は処分をされてしまいかねません(超える分のお金を別途用意する方法もありますが)。
個人再生であれば、清算価値が上がって最低弁済額が大きくなるだけで済みます。
 
特殊な例であると、自己破産の免責決定確定後7年以内の場合には、自己破産を申し立てても原則免責を受けることができません。個人再生を選択しないといけませんね。
その場合、個人再生でも給与所得者等再生は利用できません。小規模個人再生のみになります。
なお、過去の個人再生においてハードシップ免責確定後7年以内、給与所得者等再生の再生計画認可確定後7年以内の場合も小規模個人再生しか選択できません。
 
一方、個人再生での計画弁済額も支払い続けることはできないケースでは、自己破産を選択しますね。
 
上述のいずれにも該当しない場合には、基本的には自己破産でも個人再生でもいいということになります。
 
経済的更生の観点からは自己破産ができるのであれば自己破産の方をお勧めしたいところですが、依頼者の中には、自己破産は潔しとせず、個人再生を望まれる方もいらっしゃいます。少しでも返済をしたいという思いから個人再生を利用するケースがあります。
 
以上、五月雨式ですが、自己破産、個人再生、任意整理の選択についての考え方をお話ししました。

これまでお話したほかにも、債務整理の手続選択には様々なことを考慮する必要があるのは当然です。ケースバイケースの判断になりますからね。

皆さんご事情は異なります。生活状況等も含めて、じっくりお話をしないと決断できないケースも珍しくありません。

債務整理をして経済的更生を図ると決断していただいた以上、できるだけ良い方向で進めたいです。手続選択を誤ると非常にもったいないですね。
 
債務整理の際には、是非、信頼できる弁護士と話し合って、納得できる手続選択をしてください。
 
債務整理(任意整理、個人再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
https://www.nakata-law.com/
 
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