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旧コラム 仲田 誠一: 2018年12月

現在のコラムはこちらから

相続放棄の流れ【相続問題】

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

今回の相続問題コラムは、弁護士に依頼した場合の相続放棄の流れの説明をします。
 

1 弁護士受任後の準備作業
 

まずは、戸籍、住民票除票等必要書類の準備をします。


弁護士が取ってもいいですが、依頼者の方がすぐにとれるものは取得に協力していただいた方が早く済みます。

同時に、この段階で、
相続放棄を前提として、今後の後始末の仕方について確認をしておきます。
やってはいけないこと、やってもいいこと、やらざるを得ないことをどういう処理で済ませるか段取りをしておくのですね。
これが大事です。

また、
相続放棄申述手続と並行して債権者に対する対応をしなければなりません。
対応の仕方は債権者からの督促の有無、度合いによってケースバイケースで判断します。
督促等が来ていない場合には、相続放棄手続が終わってから債権者に通知する(通常は戸籍等の資料の写しも添付して)ケースもあります。

債権者から督促の連絡などが来るような状況でしたら、相続放棄をする前に弁護士から通知をしておいて、手続が終わったら改めて通知をするケースもあります。
最初からすべての債権者が判明していないケースも多く、その場合には判明するごとに弁護士から債権者に対して通知をしていきます。

 

2 相続放棄申述書の提出


準備が終わりましたら、相続放棄申述書を委任状及び必要書類と共に家庭裁判所に提出します。
後述しますが、委任状に押印していただいた印鑑は忘れないようにしてください。

管轄裁判所は被相続人の最終住所地を管轄する家庭裁判所になります。
遠方の場合には郵送にて提出します(最近依頼を受けた例では熊本や秋田がありました)。

 

3 家庭裁判所からの照会(確認)の依頼が届く


家庭裁判所が必要書類等の確認をした後、放棄をする方宛に、照会(確認)の手紙が届きます。
家庭裁判所によって、届かない場合もありますし、書式も異なるようです。

申立書に記載した「相続を知った日」などの質問事項に回答等を記入し、弁護士への委任状に押印した印鑑にて押印して、家庭裁判所に送り返していただきます。
これで相続放棄申述受理が終了します。

 

4 相続放棄申述処理証明書の取得、債権者への通知

相続放棄申述手続が終わると(裁判所から弁護士宛に書類が来ます)、相続放棄申述受理証明書を取得し、債権者に相続放棄をした旨を伝えます。


5 次順位の相続放棄申述書提出

次順位(子→直系尊属→兄弟姉妹の順番)の相続放棄申述を依頼されているときは、先順位の相続人の相続放棄が終わり次第、速やかに次順位の方の相続放棄申述書を提出し、最後の相続人まで相続放棄を順次進めていきます。

実際には先に皆様から必要書類をもらっておいて、弁護士が管理しつつ順次書類を提出していくことが通常ですね。

最後まで終わった際には、改めて債権者に通知をします。

   

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

https://www.nakata-law.com/

 

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破産と不動産賃貸の審査 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一の借金問題コラムです。

 

債務整理(自己破産、個人再生、任意整理等)を行うと、個人信用情報機関にその旨の情報が登録され(所謂ブラック情報)、個人信用情報を基にして審査をする金融機関からお金を借りたり、保証人になったりはできません。

 

法律上の制度ではないので、はっきりわかりませんが、外部から窺う限りでは、自己破産、個人再生の情報の保存期間は5年か10年です。
7年説もあったのですが。
自己破産等の債権者であった金融機関は一生貸付をしないようです。
独自の信用情報を保管していますからね。

5年経過で借りられるようになったケースもありますが、できれば10年とお考えになって、自己破産後は緊急の事態に備えて貯蓄に励まれることをお薦めします。
5年経ったら借りられたという話も、2度目の自己破産のご相談で聞く話です。


再度の借入れのタイミングは、経験上、スーパーなどでポイントカード兼用のクレジットカードの申し込みに勧誘されて申し込んだら審査に通ったという場合が多いようです。
 
仮にもう一度借りてしまって返せなくなると、前回自己破産の免責確定後7年間はもう一度免責を受けることは原則できません。
その間、小規模個人再生だけは可能です。


その期間を過ぎていても、2度目の自己破産は厳しく見られ、場合によっては管財事件になります。
ただし、2度目の自己破産でも同時廃止で終わるケースはたくさん経験しています。
諦めなくていいです。

 

自己破産後の不動産賃貸の審査はどうでしょうか。
 

通常のケース(大家さんとの間で親族等の連帯保証人を立てて物件を借りる場合)では、自己破産は審査に関係ありません。
大家さんや不動産仲介業者は、加盟金融機関でないでしょうから個人信用情報を照会できません。

 

最近増えてきた、保証会社を入れる賃貸借契約の場合は様相が異なります。
保証会社によっては、個人信用情報機関の加盟会社であって信用情報を照会することができるようです。
審査に引っかかる可能性があるということです。

 

賃貸の申込みに際してクレジットカードの作成を条件とされるケースもあったようです。
カード会社の審査を通じて信用情報を間接的に確認するためですね。

 

自己破産をしたという事実からは、もう借金がないと推認できるわけで、自己破産の事実から家賃滞納の可能性が高いとは一概に言えないはずなのですが。

 

債務整理(任意整理、個人再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

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孤独死と相続放棄、連帯保証債務 [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

今回の相続問題コラムでは、相続問題と債務整理にまたがる、孤独死にまつわるお話をします。


孤独死が社会問題化して久しいですね。そのような相談を受けることがあります。
その多くは、相続放棄あるいは不動産賃貸借契約の連帯保証債務に関する債務整理の相談です。

 

孤独死の場合、運悪く一定期間見つからなかった場合、腐敗等が進み原状回復費用が膨大な金額になります。

場合によっては、床、壁、水回り、電気設備すべてを取り換える必要があるケースもあります。
一旦スケルトンにして原状回復するのですね。


それらの損傷は、貸主負担となるべき経年劣化、通常損耗による損傷ではありません。
補修の必要性が認められる限りですが、それらの修繕費用も原状回復義務の範囲になります。

自殺の場合はある程度仕方がないとは思いますが、自然死でも原状回復義務が莫大な金額になり得るということは非常に怖いです。

 

最近、やや借主側に厳しい裁判例が出ています。
数百万円を超える原状回復義務が認められました。
ますます怖いことになっています。

 

ご相談者が単なる相続人である場合は、相続放棄を勧めれば済むことです。
相続放棄をすれば亡くなった方の原状回復義務を引き継ぐことはありません。

 

しかし、ご相談者が不動産賃貸借契約の連帯保証人である場合は困ります。
相続放棄をしても連帯保証債務は残るからです。

自己破産をして連帯保証債務を免れるか、保証人の責任の範囲を正面から争うかになります。
ただ、裁判で争うとなると、場合によっては上述のとおり厳しい判断が出る可能性があります。

自己破産ができない方については、ある程度の金額で折り合いが付くのであれば示談をして解決するのも妥当かもしれません。

不動産賃貸借契約の連帯保証人になる際には、数百万円を超える責任を負う可能性があるなんて想像していませんよね。
上述の裁判例の判断は妥当なのかと疑問です。
そのような議論もされているようです。

 

不動産賃貸借の連帯保証人になっている方は、極論を言えば、1~2週間隔で生存確認をしないと怖いことになります。
非現実的ですよね。


一方、家主側も修繕義務を負担することは納得いかないのが当然でしょう。

また、家主が負担すべきとなると、単身高齢者に賃貸住宅が供給されなくなるかもしれません。

本来は、だれが負担するかの問題ではなく、そういう場合に適用できる保険を用意して対応すべき事柄ではないかと思います。
そのような保険もあると聞きます。

勿論、孤独死が発生しないような世の中になることが理想ではございますが、今後増えることはあっても減ることはなさそうです。
身近な問題となっていくかもしれません。

 

自己破産などの債務整理、遺言、相続、遺留分、相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

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ショッピング枠の現金化と破産 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一の借金問題コラムです。

 

債務整理、特に自己破産において問題となる行為にショッピング枠の現金化というものがあります。

 

ショッピング枠の現金化は違法な行為です。詐欺行為とも評価できます。

 

業者が貸付の目的で、利用者にクレジットカードを利用させ(ビー玉等価値のない物を高い価格で購入させる例が典型です)、利用者には高額の手数料を差し引いたお金を振り込むような行為です。違法な業者が広告を出しておりますね。


クレジットカードで、換金目的で新幹線のチケットやアマゾンギフトなどを購入して業者に売却して現金を得る行為もクレジット枠の現金化と言えるでしょう。

 

自転車操業に陥っている債務者の方が、お金が借りられないがクレジットのショッピング枠が残っているということで、返済や生活費のために手を出してしまうことが時々あります。

そのような目的でクレジットカードを利用することは契約上許されていません。
そのため、通常の借入れではなく、詐欺行為とも評価しうる行為となるのです。

 

自己破産においては、実務上、これらの行為は免責不許可事由に該当すると扱われています。

自己破産申立ての際には、それらの行為を報告する必要がありますし、場合によっては免責を与えていいか調べるために管財事件になることがあります。

そのため、ショッピング枠の現金化の回数、金額が多いときは、管財事件となるあるいは免責不許可になるリスクを回避するために個人再生を選択することもあります。

 
勿論、回数や金額が債務総額に比して大きくなく、かつやむを得ない事情があったことなどを説明すれば、同時廃止で自己破産手続が終了する例も珍しくありません。
諦める必要はありません!

また、債権者からも免責不許可意見が出ることはほとんどありません。

 

ショッピング枠の現金化に手を出すくらいでしたら、いち早く自己破産や個人再生を決断してください。
ショッピング枠の現金化は、債務の解決には全くならず、さらに資金繰りを悪化させるだけです。
自己破産の支障にもなる行為です。

 

既にショッピング枠の現金化に手を出した方は、弁護士に自己破産を相談する際にはきちんと説明をしてくださいね。
後でわかると困ることがあります。
弁護士に、正確に、かつ影響が小さいように、説明をしてもらってください。
なんとかなるケースが多いですから。

なお、クレジットカードで本当に購入した物品を購入と近い時期に売却することも問題視され得ます。
契約上、クレジット債務を支払うまでは、所有権が留保されており、横領行為とも見られ得るのです。
気を付けてくださいね。

 

債務整理(任意整理、個人再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

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相続放棄ができる熟慮期間はいつまでか [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

相続問題コラムです。今回は、相続放棄の期間制限のお話です。

 

民法915条1項は、相続放棄は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月内になされなければならないと定めています。
この3カ月間を熟慮期間と言い、相続放棄をせずにどの期間を徒過すると単純承認をしたものとみなされます(民法921条
)。

 

熟慮期間の起算点、すなわち「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、自己が「相続人」となったことを覚知したときとされます。


例えば子が相続放棄をした場合の次順位の相続人である直系尊属は、子が相続放棄をしたことを知った時から起算されるということになります。
何段階かの相続人が順次相続放棄する場合には、全体で3か月を超えても何ら問題ありません。
そもそも、次順位の相続人が相続放棄できるのは先順位の相続人が相続放棄をした後になります。

弁護士が入っている場合には、弁護士が一括管理し、順次手続を進めていきます。

 

熟慮期間の起算点の例外として、
相続人が、相続の事実は知っていても、相続財産が全く存在しないと信じ、そのことに相当の理由がある場合には、熟慮期間の起算時点を「相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識したとき、または通常認識し得べきとき」まで繰り下げてよいとの判例があります。

 

この判例に基づいて、か月を経ている場合でも相続放棄申述は可能な場合があります。
典型的には、被相続人の資産・負債があるかも知らなかったが突然相続債権の債権者から通知が来たケースですね。

珍しい相談ではありません。行き来がなくなった親族が亡くなくなったことも知らなかった、あるいは亡くなったことは知っていたが放っておいたところ、債権者が相続人を調べて請求をしてくるという例は多いです。

数年後、十数年後での相続放棄もできますし、お手伝いをしたことがあります。

 

その場合には、弁護士に代理人して手続を行ってもらう方が無難でしょうし、少なくとも相談はなされた方がいいでしょう。


一部の財産でも相続手続をしてしまっていたら、後で大きな借金があることを知ったとしても、相続放棄は厳しいことになります。

余り様子を知らない方の相続をうけるのは慎重にしなければなりません。

なお、相続財産、相続債務の調査に時間がかかる場合には、家庭裁判所での熟慮期間の伸長の手続により、熟慮期間を延ばせます。
ご心配な時は同制度を活用して債務がないかじっくり確認してください。

 

遺言、相続、遺留分、相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

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夫婦が債務整理するときの住宅資金特別条項 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

今回の謝金問題コラムは、個人再生における住宅資金特別条項(いわゆる住宅ローン特則)のお話です。


住宅ローンを支払い続けて住宅の維持をされたい場合の債務整理は、個人再生を選択して住宅資金特別条項を利用するのがスタンダードです。

ただし、夫婦共に債務整理をする際には、各夫婦がケースバイケースで各手続の選択を考えないといけません。
ご夫婦とも債務過多になっており同時に債務整理をすることが必要なケースは多いです。
パターンによっては住宅資金特別条項が利用できないケースもあります。

配偶者が他方配偶者の住宅ローンの保証人や連帯債務者にもなっていない、かつ不動産の所有権持分も持っていないというケースでは、単純に住宅ローン債務者の配偶者が住宅資金特別条項を利用して個人再生を進めればいいだけです。
そのような例も多いですね。
住宅ローンには保証会社が付いていますので、配偶者を保証人等にするのは、借入金額が大きく収入を合算しないと審査に通らなかった場合や不動産が共有である場合に限られている傾向があります。

配偶者が連帯保証人や連帯保証人になっているケースではよくよく吟味しなければいけません。
細かいですが、場合分けをして説明します。

 

1 夫名義の住宅の場合(妻の場合もありますが逆に読んでください)
 

【妻が連帯保証人の場合】

住宅ローン抵当権の債務者が夫だけの場合は(通常そうなっています)、妻が個人民事再生を選択しても住宅ローン特則が使えません(勿論夫は利用できます)。

妻の債務整理は、任意整理をするか、自己破産あるいは個人民事再生を選択した上で住宅ローン債権者と交渉することになります。
妻の自己破産あるいは個人再生により、夫の住宅ローンの期限の利益を喪失されないようにしなければなりませんから。
連帯保証人の自己破産、民事再生申立てが期限の利益喪失条項に挙げられているのが一般的です。

この場合、交渉により期限の利益を喪失しない扱いにしてくれることも多いです。

 

【妻が連帯債務者である場合】

住宅ローン抵当権に夫妻両名が債務者とされている場合でも、所有者である夫しか住宅ローン特則の利用ができません。
 

妻は、住宅資金特別条項付きの個人再生を利用できませんから、上述の連帯保証人となっているケースと同様のことをしなければなりません。

 

2 夫婦共有の住宅の場合
 

【妻が連帯保証人の場合】

理屈は難しいところですが、夫婦が同時に個人再生を申し立てる場合は、夫婦ともに住宅資金特別条項が使えるとされています。
そうでないと、住宅資金特別条項の制度趣旨に反するからです。

 

【夫婦が連帯債務者である場合】

住宅ローン抵当権に夫妻両名が債務者とされている場合には、夫婦とも住宅ローン特則が利用できます。

 

【夫婦がそれぞれ個別に住宅ローンを負担している場合】

ペアローンと呼ばれますね。
それぞれの住宅ローン抵当権に夫、妻が債務者と登記されているのであれば双方とも住宅ローン特則が利用できます。
ただし、この場合も夫婦が同時に個人再生申立てをしなければいけません。

 

整理をすると上述のような感じになります。

一般的に、夫婦の連帯債務の場合は住宅資金特別条項を利用できる可能性は高いでしょう。

片方が連帯保証人である場合や、夫婦が同時に申し立てられない事情がある場合には、住宅資金特別条項が使えないケースが出てきます。

 

個々に挙げたほかにも、ペアローンの場合の保証関係など、住宅資金特別条項の利用にあたっては細かい議論があるところです。
 

住宅資金特別条項が使えるかどうかは他の要件にも関わりますので、必ず弁護士に相談の上で検討してください。
住宅ローン特則が使えない場合には、別の方法を早めに検討しなければなりません。

その際は、ローンの契約書と登記簿謄本を忘れずに持って行ってください。
そうでないと弁護士も判断ができません。

 

債務整理(任意整理、個人再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

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不動産を共有することの注意点 [不動産]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。
 

今回の不動産問題コラムは不動産の共有のお話です。

 

様々な理由で不動産が共有になっているということがあります。
相続の際の遺産分割、遺留分減殺請求の結果共有状態となるケースや夫婦が共同で住宅ローンを組んでいるケースが多いでしょうか。

 

不動産の共有は、専有部分のある区分所有の場合と異なります。
部分的な所有ではなく、不動産「全体」の〇分の〇の持ち分があるという状態です。
理屈上は、共有者各人が共有物の全体を持分の割合で使用収益する権利があるのです。

 

不動産が共有状態である場合、どのようなことが起きうるでしょうか。

 

収益費用関係の清算関係が出てきます。
 

共有状態の場合、その不動産の利用による収益(果実)も費用も持分に応じて配分されるのが原則です。
利用していない側から利用している側に対し賃料相当額の不当利得返還請求あるいは損害賠償請求がなされる可能性があります。
固定資産税等の費用負担をしている側から、負担していない側に対して、費用負担分を不当利得返還請求、場合によっては費用償還請求の形で請求されることも考えられます。

本来は共同事業として共有者各人が申告をしなければなりません。
 

利用している側に対する利用していない側からの明け渡し請求もあります。


不動産の利用は持ち分の過半数で決定されるため、過半数持分者から明け渡し請求がなされることはあります。
原則認められそうですが、そう単純ではありません。
利用している共有者が占有するに至った事情によっては、使用貸借など利用権の設定が認められたり、明渡し請求が権利濫用であるとされて、明渡し請求が認められないこともあります。
なお民法(相続法)改正で配偶者居住権が創設されることにもなっています。

 

共有物分割の話もあります。


不動産に限らず、民法では、共有状態は異例の状態と見て、共有関係を解消する方向の手段が設けられています。
共有物分割請求です。
基本的には調停、訴訟と進めるのですが、最終的に折り合いが付かない、お金で清算もできないということになると、競売に至ってしまいます(勿論、分割できる不動産であれば現物分割もあります)。

通常は、金銭で折り合いをつけるか、あるいは共同で売却をする形の和解で解決します。
そうでないとお互い困りますからね。
勿論、利用権の設定や権利濫用なども絡んでくる話ですが。

なお、稀なケースですが、取得時効の援用により解決をする場合があります。
遺産分割がなされずに所有者名義が何代か前の方のままであるが、長年自分の物として占有し費用も負担していたというケースが典型例です。
今更合意を全員から取り付けるのが難しいとして、訴訟により解決をすることになります。

このように見ていくと、共有状態はややこしいですね。
不動産の共有は避けた方がいいかもしれません。

 

不動産に関するご相談はなかた法律事務所にご用命を。

 

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とても怖い贈与税 [身近な法律知識]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

今回は贈与税のお話をします。

贈与税というものをご存知でしょうか。言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。


私は、広島大学大学院法務研究科(ロースクール)で租税法の講義をしています。

税金の法律を教えているのですが、税金は、所得税なら所得税法、法人税なら法人税法という法律に基づいて課税されています。
主に所得税法、法人税法について講義していますが、相続税法の講義もします。

贈与税には贈与税法という法律はありません。ご存知でしたか。

実は、相続税法の中に贈与税の規定があるのです。

 

誤解を招くことを恐れずにわかり易く説明すると、贈与税とは相続税を確実に徴収するために、生前に財産を移動することを制限するための税金と言えます。
相続税の補完税です、だから相続税法に贈与税が規定されていると理解することができます。

講義のメインは所得税法と法人税法なので、あまり相続税法は触れられないのですが、弁護士実務上は、贈与税のリスクに至る所で接します。

そのため、意識して贈与税のことは講義に入れることにしています。

 

贈与税の目的は相続税を確実に取るためです。
だから、贈与税はべらぼうに高い税率です(一番と言ってもいいです)。
生前贈与することを躊躇するような税金がかかるのですね。


そのため、一般に、税金がかからない分だけ(基礎控除分だけ)毎年贈与をする暦年贈与というものが行われたりします。

また、事業承継のように生前贈与が社会的に要請される分野や、住宅建築促進・世代間の資産移転等の政策目的が絡む住宅資金や教育資金などの分野で、贈与税がかからない特例制度が設けられています。
特例を作り贈与をし易くしているのですね。
そうでないと誰も生前贈与しませんから。

 

名目がはっきりしない経済的価値の移転は贈与とみなされる危険があります。
また、時価と乖離した取引をする場合も同じような危険があります。


何かイレギュラーなことをする際、例えば親族間で安く株や不動産を売買(低廉売買)するときは、贈与課税がなされる可能性を検討する必要があります。
離婚の財産分与も均衡がとれていない場合は、贈与税課税のリスクがあります。

弁護士として示談をする際も例外ではありません。
その名目・解決方法によって贈与税課税のリスクも生じます。
気を付けないといけませんね。


課税庁に否認され贈与税を課されると無申告加算税あるいは過少申告加算税も加わりますね。

また、贈与税は、相続税もそうですが、連帯納付義務が定められています。贈与された方だけではなく、贈与した側も贈与税の納付義務が課されるのです。
怖いですよね。
そのため、贈与する場合には、きちんと相手方が申告をして納税をするのか確認した方がいいのです。

贈与税に限らず、物が動く、お金が動く場合には何かしら税金がかかる可能性があります。常に課税関係を意識しないといけません。

 

お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。

 

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遺言と異なる内容の遺産分割協議 [相続問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

相続問題のうち、遺言と遺産分割協議との関係をお話します。

 

遺言がない場合には、遺産分割は、相続人全員の合意により行います。遺産分割合意ですね。
 

遺産分割協議がまとまらなければ、遺産分割調停・審判手続を行うことになります。

相続人の範囲や相続財産の範囲といった遺産分割の前提問題あるいは使途不明金の問題などは訴訟手続で解決しなければなりません。

 

一方、遺言があった場合には、遺言に基づいて相続手続、遺贈がなされます。

勿論、その有効性に疑義があれば、遺言無効確認訴訟等が提起されることになりますが、それでも手続は進んでいきます。

 

遺言があっても、相続人(遺贈がある場合には受遺者も)全員が違う方法で話をまとめたいと希望するケースもあります。

 

この場合、遺言執行者がいなければ、相続人全員(受遺者がいる場合は受遺者も)の合意により、遺言の内容と異なる遺産分割協議を有効に成立させることに問題はありません。

 

しかし、遺言執行者がいる場合には、簡単にはできません。公正証書遺言の場合には、遺言執行者が指定されていることが多いでしょうか。

その場合には、
少なくとも、遺言執行者の同意を取り付けなければなりません。

遺言執行者がいる場合には、相続人は相続財産に対する管理処分権を喪失し、遺言執行者が管理処分権を有するからです(民法1013、1012条)。

 

実際に、遺言執行者が同意した上で合意が利害関係人全員でなされた相続財産の処分を有効とした裁判例もあります。

勿論、遺言執行者は、遺言と異なる相続財産の処分に同意をしたとしても必ずしもその職務に反するものではないと解釈されております。
 

遺言、相続、遺留分、相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

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従業員の債務整理への対応  [企業法務]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

今回の企業法務コラムは、企業のリスク管理の観点からの、従業員の債務整理のお話をします。

自己破産や個人再生を検討されている方は、会社に事情が知れたら困るという方がほとんどです。
勿論、プライベートなことなので言いたくないですよね。

 

今回は、会社としては従業員の自己破産や個人再生にどういう対応をとるべきなのかをお話ししたいと思います。
企業法務、リスク管理にも大事なことです。

 

従業員の自己破産は(個人再生も)、たとえ就業規則に解雇事由であると書いてあったとしても、解雇事由にはならないとお考えください。
従業員の自己破産と会社の業務はは基本的には関係がありませんから、従業員の自己破産、個人再生は解雇の合理的理由に該当しないのが原則です。

 

勿論、自己破産の場合では、警備員や保険外交員など特定の職業や資格が制限されるため(個人再生にはない)、そういった場合は解雇の理由になる可能性がないとは言えません。
ただ、配置転換等の他の処分・方策もあり得るため簡単には認めてくれないでしょう。
会社が従業員へ貸付をしている場合には、会社が損害を被ることになりますので、解雇は別としても、何等かの懲戒処分はできる可能性があります。

 

企業法務、リスク管理の観点からは、会社として、従業員の自己破産、個人再生には寛容に接すべきです。
むしろ、積極的にサポートをしてもいいぐらいだと考えます。

 

まず、仮に債権者から従業員の給与等の差押えがなされると会社としては非常に手間です。
債務整理してもらった方がコストが発生しません。
債権者からの督促電話などが会社に来るもの面倒ですね。

 

また、従業員が自己破産等で経済的更生を図ってもらうことにより、従業員のパフォーマンスが上がってくるでしょう。
多重債務で苦しまれている方は、疲れ切ってしまいます。
どんどん疲弊して会社も辞めてしまう人が珍しくありません。
会社としては早く債務整理をしてフル充電で頑張ってもらいたいですね。

さらに、不祥事防止などのリスク管理の観点から考えても、従業員に自己破産等で経済的に立ち直ってもらう方が得策です。
不祥事の原因は、経営者への恨み、遊興費の捻出など様々ですが、借金苦が原因ということも多いと思います。

 

会社へ妙な電話がかかってくるなど従業員が借金で悩んでいる兆候が見られた場合には、自己破産等の手続を薦める、あるいはサポートをするべきだと考えます。

当職の顧問先企業様からも従業員さんの債務整理を頼まれることがあります。
従業員さんから借金の整理の相談も来るような会社が望ましいかもしれませんね。

 

顧問弁護士、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。

 

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