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コラム 仲田 誠一 11ページ目

相続不動産を独占されている場合 [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 
今回の相続問題コラムは、相続財産を一人の共同相続人に独占して使用されているケースの解説です。

 

相続が発生し遺産分割協議は終わっていない状態で、1人の相続人により相続不動産を勝手に使われているという相談をよく承ります。

 

相続が発生すると、遺産に属する不動産は、相続人間の遺産共有状態になります。遺産分割協議、遺産分割調停、遺産分割審判で確定的に遺産分割が決まるまでその状態が続きます。

遺言がある場合は別ですが、それでも遺留分減殺請求を行った場合にも共有状態が作出されることがありますね。

他の相続人からしてみると、単独で遺産である不動産を使用収益していることが納得できないことになります。

 

典型的な事例は、

賃貸不動産の管理を相続人の1人が独占し賃料も受け取って独占している場合、

あるいは

相続人の相続不動産に1人の相続人が住み続けている場合、

ですね

 

この2点についてお話ししようと思います。

 

【賃貸不動産の管理を相続人の1人が独占し賃料も受け取って独占している場合】

 

遺産から生じる賃料は、法律上、遺産の果実との扱いを受けます。遺産の管理や利用等によって生じる収益ですね。

 

遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得することになっています(最判H17.9.8)。

 

確定的に取得するのですから、後に遺産分割がなされても影響がありません。相続分というのは遺言がない限りは法定相続分と思っていただいて構わないでしょう。

 

賃料を独占している相続人に対しては、(賃料額-経費)×相続分を請求できることになります。経費は遺産管理費用と呼ばれますが、どこまでが算入されるか自体争いになることが多いでしょう(経験上、その相続人が払った所得税が難しいですね。他の所得もあるわけですから)。

 

遺産の果実の分配は、理屈上、遺産分割ではありません。

相手方が請求に応じなければ訴訟で解決することになるのが基本です(ただし、調停を先に起こすという調停前置主義の対象にはなります)。訴訟する理屈は、不当利得返還請求あるいは不法行為に基づく損害賠償請求になります。

 

ただし、それでは面倒ですね。遺産分割協議においては勿論、相続人全員の同意があれば調停等の遺産分割手続で解決することもできます。

 

遺産分割の段階では、預かり敷金・保証金の扱いも忘れてはいけません。物件を引き継ぐ=賃貸借契約を引き継ぐ=敷金返還債務を引き継ぐ、相続人との調整が必要ですね。

 

【被相続人の相続不動産に1人の相続人が住み続けている場合】

 

明渡請求ができるかどうかが気になるでしょう。

 

まず、使用貸借(無償での貸借)契約の成立が問題となります。成立したと認められるケースであれば、当然、使用貸借の期間満了まで明け渡しを請求することはできません。

 

判例(最判H8.12.17で、相続前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と同居の相続人間で、被相続人が死亡した後も遺産分割により上記建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き同居相続人に無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるとされています。

 

判例のようなケースだと原則遺産分割までには明渡請求が認められないことになります。
使用貸借が認められるかどうかはケースバイケースの判断なのでしょう。当然認められるわけではありません。

 

使用貸借契約の成立が認められない場合でも、理屈上、無条件に明渡請求は認められません。

 

居住している相続人にも共有持分がありますね。民法上、共有者はその持ち分に応じて共有物の全部を使用することができます。
共有物の管理行為は持ち分の過半数で決定されるので、過半数持分の相続人による明渡請求は認められそうだとは思いますが、裁判例では認められていません。
共同相続人の間の占有の変更は管理行為ではなく給油者全員の同意が必要な変更行為(民法251条)と考えられているようです。

 

そうであれば、明渡請求ができないので(勿論遺産分割等で所有関係が確定する前のことです)、他の相続人ができることは金銭請求の途しかないということになります。

 

使用貸借が認められるケースでなければ居住相続人は他の相続人の持ち分について無権原占有者です。
共有不動産を使用=居住することはできるが、無権原で使用する部分についてはその利益を賠償・返還するべきとういうことになります。


具体的には、不動産を単独で占有する共有者に対しては、不当利得返還請求権あるいは不法行為に基づく損害賠償請求権として、賃料相当額×相続分を請求することができます。
勿論、賃料相当額がいくらかということはなかなか難しいのですが・・・。


なお、居住相続人が遺産の管理費用(固定資産税等)を支払っている場合には、賃料料相当額からそれを控除して請求する、あるいは控除するよう反論されることになります。

 

先にも書きましたが、遺産収益に関する訴訟は、調停前置です。まずは家事調停を申し立てることが原則です。
ただ、既に揉めているケースがほとんどでしょうから(遺産分割の話がまとまらないから単独占有の問題が顕在化します)、話し合いの余地がないとしていきなり訴訟をすることも認められるケースもありますし、実際に裁判所から何も言われなかったこともあります。

 

遺産分割協議、調停・審判は出来るだけ早く進めるべきです。それと並行して、遺産の果実の問題等が出てくるというお話でした。

 

遺言、相続、遺留分減殺、相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

 

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自己破産、個人再生と給与明細 [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

債務整理のうち、自己破産や個人再生の場合にはご相談時に給与明細をお持ちいただいた方がいいかもしれません。

 

自己破産や民事再生の申立準備のためには給与明細をお持ちいただくのですが(給与明細は必要書類になります)、その際に、依頼者様がご認識されていない事実が判明してしまうことが時々あります。給与明細には自己破産や個人再生の準備にあたって重要な情報が載っている場合があるのです。

 

特に、給与明細の控除(給与天引き)の欄の問題です。裁判所もかならずチェックをしているところです。

 

まず、債務、債権者の面です。

 

自己破産、個人再生では、債権者を一部外して手続をすることはできない原則です。
債権者はすべからく債権者として扱わないといけません。

 

給与明細の控除欄を見ると、稀ではありますが、勤務先からの借入金や労働組合・共済組合からの借入金があることが漏れていたことが判明する場合があります。

 勿論、勤務先からの借入れや組合からの借入金があると、勤務先等を債権者として扱わないといけません。

 

そうすると、自己破産、個人再生を申し立てるということが勤務先等に判明してしまいますし、何よりも弁護士からの受任通知や裁判所からの通知が届いてしまいます。

理屈上、そのことにより勤務先が従業員を解雇することは難しいですし、その事実をもって解雇された例も経験がありません。ただ、困ってしまうのは当然ですね。

場合によっては、後々偏頗弁済として問題になる行為であることを承知の上で、勤務先に対する返済を手続に先行して行うケースもあるでしょう(勿論、弁護士が推奨できる行為ではありませんが)。

 

なお、共済組合等からの借入金など保証会社が付いているケースでは、割とすんなり受け入れられる傾向があります。
ただし、通常、破産開始決定あるいは個人再生開始決定まで給与天引きは継続されてしまいます、開始決定時に保証会社による代位弁済がなされ給与天引きがなくなります。
これを偏頗弁済として突っ込まれるケースもなくはありません。管財事件だと否認の対象になり得ますから(当職も破産管財人として否認し勤務先に返還してもらったことがあります)。

 

問題は勤務先等に「債務」があるかどうかです。
勤務先での事故や何かの手当の返戻があるなどの事情で、「弁償金」、「返納金」、あるいはただ単に「その他」などの名目で天引きされていることがあります。
運送会社などだと事故負担金が天引きされていることもあります。
勤務先からの借入金は忘れなくても、それら支払債務を「債務」だと認識されていないケースもあります。
借入金でなくとも勤務先に対して債務を負っていれば勤務先を債権者として扱わないといけないことにご注意ください。

 

次に財産の面です。

 

控除の欄に、団体保険や共済保険の給与天引きの記載があることがあります。けっこう、忘れてしまうケースがあります。
自己破産、個人再生では、保険契約がある場合、保険証券と解約返戻金証明書(あるいは解約返戻金がない、ある場合は金額がわかる資料)が必要書類の中にあります。
団体保険は書類が残っていないことが多く、慌てて問い合わせや再発行をしてもらうことがあります。事前に確認しておきたいところです。

 

また、〇〇金、〇〇積立、〇〇会等の項目で給与天引きがある場合もありますね。

資産性の有無(解約したらお金が返ってくるのか)、資産性がある場合には残高がわかる資料の報告を求められます。

 

組合費や親睦会であれば資産性はないという説明ですんなり通るのですが、旅行積立等「積立」は説明に困りますね。
旅行積立は会費みたいなものでお金は帰って来ないということも多いのではないかと思いますが年金等他の積立は通常資産性があるのだろうと思いますから資料あるいは説明が必要になりますね。

 

財形預金、社内預金の天引きがある場合には、それらは勿論資産性があるものでしょう。残高がわかる資料が必要ですね。

 

なお、給与天引きの控除欄ではないですが、保険料の所得控除の欄も要チェックです。
控除があるのに保険契約の資料がないこと、あるいは金額的に保険契約が一部漏れていることがわかるケースもあります。勿論、被扶養者契約の保険料もあるかもしれませんが。

 

このように、自己破産や個人再生の検討・準備をする際には、給与明細は、その控除欄(給与天引きの欄)を中心に早めにチェックをしておかないといけない書類です。

 

債務整理(任意整理民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

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租税法とは [税法の話1]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

広島大学大学院法務研究科にて平成27年から租税法の講義を担当しております。
客員准教授と固い肩書ですが、司法試験を目指す生徒さん相手にざっくばらんなお話をさせていただいております。

 

租税法は本当にわかりにくいです。

 

租税法は、申告納税制度を採用しています(制度上は確定申告をしないでいい給与所得者は例外扱いです。)。
したがって、租税法は国民の申告マニュアルの機能を有しているはずです。

本来は誰が見てもわかるようにわかりやすくないといけないのですね。

租税法は国民の予想可能性、法的安定性を保障しないといけないのです。

 

しかし、わが国の租税法は特にわかりにくいと言われています。

所得税法、法人税法、祖相続税法等の法律自体、専門家が読まないとわからないものですし、租税特別措置法等の特別法が絡んでくるともう厳しいですね。
正直、私も把握しきれません。

 

なお、租税法がわかりにくいこともあって、通達というものがあります。租税の世界は通達行政の代表選手です。

でも、よく誤解があるのですが、通達は行政機関内部の連絡等文書であって租税法ではありません(税理士さんとよくお会いしますが、税理士試験は通達を勉強するもので法律を勉強するものではないと自嘲気味におっしゃいます)。

 

わかりにくい租税法ですが、経営や生活に直結する世界です。少しでもご紹介していこうと思います。
どれだけ書けるかわかりませんが、授業の進行に合わせて投稿しようかなと思っています。

 

今回は、租税法の世界の大きな特徴2つをお話しします。

 

まず1つ目は租税憲法です。

 

租税法の解釈は、憲法が強く反映されます。
法律なので憲法に則らないといけないのは当然ですが、ボストン茶会事件の「代表なくして課税なし」に代表されるように、近代憲法制定の大きな動機の1つが国王の徴税権を制限するということだったのです。市民が闘争を経て勝ち取ったのが徴税権の制限なのです。

その流れを汲む日本国憲法も、租税には気合が入っており、少ない条文の中で2条も租税関係に費やしています。憲法84条と30条ですね。
国民の財産権を直接侵害する租税については気を遣っているのです。

そのため、租税法は常に憲法に立ち返って解釈されることになります。租税憲法と言われるゆえんです。

 

その憲法も、時には相反する要請を内在します。

 

まず、租税法律主義です。「代表なくして課税なし」です。

国民の代表である議会が制定した法律でなければ租税を課すことはできないということですね。

なんでも法律で明確に決めるということが要請されます。

 一方、法の下の平等を定める憲法14条からは、租税公平主義が導かれます。

法律を柔軟に解釈して公平な課税をすることを要請されます。

 この2つの要請は相剋することがあるのです。租税法の解釈の争いは、この2つの要請が対立する場面でよく起こります。

勿論、基本は、租税法律主義が優先します。憲法にはっきり書かれていますからね。

 

2つ目は、租税法のスタンスです。視点といってもいいかもしれません。

 

民法、商法等、いわゆる私法は、私人-私人間の法律関係を規定しています。

 

一方、刑法、行政法等、いわゆる公法は、国-私人間の法律関係を規定しています。

 

租税法はどうでしょうか。少し特殊です。

税金を賦課する場面では国-私人間の法律関係を規律するものであることは勿論です(租税法律関係)。

しかし、物が人から人へ動いただけでは、税金はかけられません。

例えば、売買には所得税、贈与には贈与税(贈与税は相続税法に規定されています)と、私人間の法律関係でどのような契約が原因で物が動いたかによって税金が違います。
売買なのに贈与税を課税してはいけませんよね。

このように、私人-私人間の法律関係を規定する私法上の法律関係を前提に、国-私人の租税法律関係が構築されるのです。

従って、租税法の解釈(課税関係の分析)についても、第1次的には私法の解釈が必要です。
経済取引事実の発生があり(モノとカネが動いた)、それを私法上の要件事実(モノの所有権移転約束と代金支払約束)に当てはめて法律構成し(売買契約)、当てはめるべき租税法(所得税法)を解釈運用する、ということです。

 

結局、租税法は、(私人-私人)-国の関係が上から見ているイメージでしょうか。

 

租税法のお話にニーズがあるのかどうか不安ですが、これからも投稿していこうと思います。

 

お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。

 

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債権者に給与口座、年金口座の銀行がある場合の注意点 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一による借金問題コラムです。

 

債務整理をしないといけない場合に、給与口座がある、年金受取口座がある銀行が債権者である場合があります。

その場合は注意をしないといけません。
軽々に弁護士に受任通知を送ってもらってはいけません。

 

銀行に債務整理の受任通知を送ると、届いた時点で借り入れについて期限の利益が喪失され(直ちに一括請求されるという意味です)、預金口座は凍結され、口座の預金債権は借入債務と相殺されてしまいます。
 

なお、任意整理のケースでは銀行ローンは手を付けないことが多いです。
自己破産、個人再生の場合はそうはいきませんから、銀行に受任通知を送らないといけません。

 

給与口座、年金受取口座を凍結されてしまうと、勿論、預金を引き出すことができません。

一方、給与口座指定を変更しない限り、給与が入金されます(口座凍結がなされても振込入金は入ってしまいます)。年金も同様です。

給与、年金が引き出せないと困りますね。

 

そのため、給与口座、年金受取口座のある銀行が債権者であるときは、受任通知を出す前に、給与口座あるいは年金受取口座を借り入れのない銀行の口座に変更してもらいます。

 

年金口座の変更には時間がかかります。また、給与口座の変更にも大きな企業だと時間がかかることがあります。

 

そのため、相談を受けた時点ですぐに変更をするようアドバイスしております。
銀行が債権者であるかどうかは相談時にわかっていることがほとんどです。
しかし、預金口座とセットのカードローン契約やクレジット契約がある場合に銀行が債権者であることを認識されていないケースがありますのでご注意ください。

 

ただ、中にはメイン銀行の口座しか給与振込口座に指定できない勤務先もあり、その場合は困ります。
その場合はなんとか勤務先に掛け合ってもらいます。

 

残念ながら口座凍結がされた後にその口座に給与、年金が入ってしまった場合にはどうしたらいいのでしょうか。

 

まず、キャッシュカードが使えませんから窓口で引き出しをしないといけません。

かつ、口座凍結されている以上、簡単には引き出せません。

銀行に予め連絡して承諾を得ておく必要があるでしょうし、債務者の方が窓口に行った後に弁護士に確認の連絡が来ることもあります。

 

ただ、給与、年金の場合には、最終的には銀行が引き出しに応じるのが通常です。
広島の地場の金融機関、都市銀行には断られたことがありません。ただし、ネット銀行は経験がありません。

 

勿論、銀行の判断によりますが、受任通知後の入金による預金債権と借入金を相殺することは破産法でいう否認対象行為になるということと、債務者の生活のために必要なお金だということかた応じてくれているものだと思います。

中には、受任通知が届いたら「給与口座が指定されていますが大丈夫ですか。」と確認の電話をしてくれる銀行もあります。

 

なお、口座凍結絡みですと、借入のある銀行に対し保証人となっている方の口座が当該銀行にあるケースも怖いです。

主債務者の受任通知により、同じように保証人の口座が口座凍結されて相殺される恐れがあります。
契約書を探して保証人がいるかどうか確認した上で、正確に弁護士にご報告いただかなければなりません。

 

個人の給料、年金と異なって、法人の売掛金が口座凍結後に入金されたケースだと、引き出しを拒む金融機関があります(基本的には断られるイメージです)。

自己破産開始決定後の破産管財人による引き出しには応じるが、債務者の要請には応じないといった対応です。

債務整理を考える場合に銀行が債権者であるときはこのような注意をしてください。

 

債務整理(任意整理民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

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自己破産における自由財産拡張 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

今回の借金問題コラムは、自己破産における自由財産拡張手続の説明です。
個人再生においても清算価値算出の過程で自己破産の自由財産拡張相当の財産を控除することができるので、個人再生にも関係がありますね。

債務整理を考えている方の中には、自己破産をすれば生活ができないと思っていらっしゃる方もいらっしゃいます。
しかし、自己破産は経済的更生のために法律で用意された制度ですから、経済的な更生を図ることができる制度になっております。
特別な場合を除いて、自己破産をしたら生活ができないということはありません。

 

生活面でよく質問される点の中に、財産は全部取られてしまうのかというお話があります。自由財産拡張の制度のお話になります。

 

自由財産拡張というと難しい名前ですが、破産者の経済的更生のために必要な財産を破産者の手元に残す手続です。
自己破産をしても身ぐるみを剥がされるわけではないのです。

 

自由財産拡張は、管財事件の時に出てくる手続です。

これに対し、同時廃止事件では財産の換価処分が問題になりません。
同時廃止では、破産手続(債権債務の整理だと思ってください)は手続開始と同時に手続廃止となり、後は免責手続(債務の弁済責任を免れさせる手続だと思ってください)だけになります。
当然、破産者の保有財産はそのまま残ります。

 

「自由財産」とは何でしょうか。

自由財産は、破産財産に組み入れられることなく(破産財団に組み入れられたら換価・処分されることになります)、破産者が自由に管理処分できる財産です。

これまたややこしいのですが、自由財産には、「本来的自由財産」とそれ以外のものがあります。自由財産拡張制度は、本来的自由財産以外の財産まで自由財産の範囲を拡げる手続だから、「拡張」なのです。

 

本来的自由財産は、破産法で定めた自由財産です。

本来的自由財産は原則として金額の制限なしに全額について破産者の保有が認められます。
99万円以下の現金及び差押禁止財産だと考えておけば十分です。

 

差押禁止財産は、
生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用品、畳及び建具(そのため家の中の通所の生活用品等は取られることはありません)、
退職金の4分の3(実際は退職間近でない限り財産評価されるのは退職金支給見込額の8分の1だけの運用です)、

小規模企業共済、中小企業退職金共済、建設業退職金共済(退職金の性質を有するものですね。実務上よく出てきます)、
生活保護、年金・各種手当の受給権
などですね。

勿論ほかにもあります。民事執行法やその他法律に差押禁止財産だと定められている場合です。
差押えが禁止されているから債権者はその財産から回収を図ることが期待できないはずだ、だから破産の場合も差押えができない財産は残す、という理屈です。

 

本来的自由財産は、元々自由財産なのですから、自由財産拡張手続は必要ありません(現金は手続に乗せますが)。

自由財産拡張の制度は、本来的自由財産ではないけれども、破産者の生活の再建に必要な限りで財産を残してあげようという制度です。

 

破産開始決定後、一定の期間内に(通常1カ月以内)、破産管財人の意見を聴いて、裁判所により決定されます。
通常は申立人側からの申立てをしますが、必ずしもその必要はありません。管財人主導で行うこともあります。

 

拡張判断にあたっては、まずはその財産が自由財産拡張の対象としていい財産かということが問題となります。
経済的更生に必要な財産かどうかで判断されています。

 

不動産は拡張対象とならない扱いです。投資金(株、債権、投資信託)も対象とならないと考えてください。
生活再建に必要相当な財産とは見てくれません。

 

車や生命保険にも気を付けないといけません。車についても趣味のための車は対象外でしょう。
保険は投資性の強い保険でない限り対象となると考えていいですが、相当性についての意見を求められることがあります。

 

申立時に報告しておらず破産管財人の調査で判明した財産も拡張の対象とならない可能性が大きいです。
財産の報告が漏れていたことに気付いたらすぐに追加報告しないといけませんね。

 

財産が自由財産の拡張対象となるとして、次に問題となるのはその範囲です。

 

金額にして99万円の範囲内です。本来的自由財産である現金も含めて99万円ですので気を付けてください。

 

勿論、無条件で99万円まで残せるわけではありません。経済的更生に必要かつ相当と見られる範囲です。
一般的には99万円まで認められるのですが、財産によっては破産管財人に突っ込まれます。
なお、ここで本来的自由財産(小規模共済等)の金額の多寡も関係してきます。

 

また、制度上は、それ以上に拡張することが不可欠だと考えられる場合に99万円を超えて拡張を認めることも可能です。
しかし、実際は99万円を超えて自由財産の拡張が認められるのは難しいと思ってください。

 

自由財産拡張対象外の財産(99万円まで認められた場合はそれを超える財産)は、財団に組み入れられ、管財人により換価処分されます。管財人に引き渡すわけです。

 

ただし、例えば現金が100万円・保険解約返戻金合計額が30万円ある場合、99万円を超えるから保険は解約しないといけないかというとそうではないです。
この場合には、99万円を超える分を現金で財団に組み入れる(破産管財人に引き渡す)ことで保険契約を残すことが認められるでしょう。

 

なかなかややこしい話で失礼いたしました。自己破産をしても一定の財産を残すことができる、財産の種類によって扱いが異なるということです。

 

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親族間での不動産売買の注意点 [不動産]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

今回の不動産問題コラムは、親族間での不動産売買の注意点の説明です。

 

親族間の不動産の売買をお手伝いすることがあります。
相続絡み
自己破産をしなければならいがどうしても自宅不動産を残したい場合
事業承継対策
などですね。

 

そこで、親族間での不動産売買の注意点をお話しようと思います。

 

親族間の売買でも第三者間の売買でも流れは基本的に同じです。

売買契約を締結し、
代金の支払いと所有権(あるいは持分権)移転登記
をするということになります。

 

代金ですが、勿論、法律上は自由に決められます。双方が合意した金額でいいのです。

 

ただ、親族間の不動産売買では、時価よりも価格を安くすることがよくあります。
親族間の売買にはいろいろな事情が絡みますからね。

 

ところで、不動産の時価とはなんでしょうか。

 

時価とは、流通価格、交換価値というべきでしょうか。

 

不動産の価値を示すものとしては、固定資産評価、路線価、公示価格がありますね。

一般的にはその並びで金額が上がっていきます。

固定資産評価は固定資産税等のための評価額です。
時価とイコールではありません。
昔は時価の7割と言われていましたが、ケースバイケースです。中には時価よりも高いケースもあります。

 

路線価とは相続税、贈与税のための評価額です。
これも時価とイコールではありません。昔は時価の8割と言われていました。こちらもケースバイケースです。
路線価評価は国税庁のホームページで簡単に調べることができます。
設置道路毎に価格が出ているのです。
ただし、路線価が出ていない地域もあります。
その場合は、倍率表というものがあって、固定資産評価×〇倍の評価をすることになっています。

 

公示価格は時価に最も近いものです。ただ、基準点の価格しか出ていないので、個々の不動産の評価には役にたつことは稀です。
たまたま基準値と近似した不動産だったりする場合には参考するという程度です。

 

結局、時価は簡単に調べられるものではありません。不動産業者に売買事例等を基にした評価をしてもらう、鑑定士に鑑定をしてもらう必要があります。
鑑定費用はかなりかかるので、査定書をとることが多いでしょう。

 

自己破産に絡んで自宅不動産を残すために売買をすることもあります。
自己破産絡みの売買であれば、時価相当額でなければ後に破産管財人否認されるおそれがあります。
時価相当額での売買でなければなりません。弁護士が介入して売買をし、かつ査定を取っておいた方がいいでしょう。

持分権の売買の評価は難しいです。
時価を基本として、一定程度減価することも許されるのではないでしょうか。
事実上、持分だけを売ることはできないですからね。

 

 

自己破産絡みでない場合でも、時価は気にしなければいけません。
廉価売買は贈与税の課税対象となり得るのです。購入者に対して贈与をしたとみなされるのです。

 

基準は、時価の2分の1だと思ってください。ただ、時価がいくらかを考えるのは難しいのは上述のとおりです。
税務調査がなされた場合にきちんと説明ができるように、価格算定の根拠は残しておかなければいけません。
時価の2分の1ぎりぎりでの売買は、税務署が考える時価がいくらか分からない以上、危険です。
事情があって安くする場合でもある程度余裕を持った金額、説明がきちんとできる金額で売買をした方が無難です。
後から税務署が高い時価評価をして課税してくることもあり得ます。

 

この点で、親族間の売買であっても不動産仲介業者を介入させることや、弁護士や税理士の価格算定に関する意見書を作成することもあります。

親族間の不動産売買は、このような税金面で慎重に検討しなければなりません。

 

なお、不動産を売買で取得すると、後から不動産取得税を支払わなければいけません。
不動産業者が絡む売買(新築戸建ての購入等)だと、不動産取得税の申告(そんなに難しいものではありません)の申告を代行してくれたりすることもあり、申告が必要なことをご存じないケースがあります。購入者は不動産取得税の申告が必要である点にもご注意ください。

 

親族間だからといって、簡単に売買をしてしまうと、足元をすくわれることがありますのでご注意を。

 

不動産に関するご相談はなかた法律事務所にご用命を。

 

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退職・退任後の競業避止義務 [企業法務]

広島県広島市の弁護士仲田誠一の企業法務コラムです。

今回は、企業法務関係でよく相談される退職後の競業避止義務のことについてお話します。
関係が悪くなった中で従業員が退職する、取締役が退任するが、ライバル企業に就職されたら困る、競合会社を設立されたら困るなどのご相談ですね。
 
競業行為とは、会社法的に説明すると、自己または第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をすることです。
従業員も含めて言うと、競業会社への就職まで含むもう少し広い意味で使われていますね。
 
在職中の従業員、取締役の競業避止義務は勿論認められます。

 
従業員の場合、就業規則に定めがある場合は当然ですが、それがない場合でも労働契約上の義務として認められています。
就職という意味では、通常、就業規則で職務専念義務や兼業禁止なども定められていますね。

取締役の場合は、法律で競業避止義務が定められています。
会社法356条1項1号で、競業行為を行う場合には取締役会(取締役会非設置会社では株主総会になります、会社法365条)の承認が必要とされています。
従業員と異なり取締役の兼任自体は制限されていないのでしょうが、競業行為をする場合には承認が必要なのですね。
 
実際に問題となるのが従業員の退職後、取締役の退任後の競業避止義務です。
 
まず、憲法で職業選択の自由(憲法22条1項)が定められています。
退職した従業員、退任した取締役が、その後にどのような職業を選んでもそれは個人の自由です。

そのため、なにもなければ退職後、退任後の競業避止義務はありません。

もっとも、不法行為に該当するような行為(従業員の大量引き抜き等)、不正競争防止法違反になる行為は、退職後、退任後であっても損害賠償や差し止めの対象になり得ます。

従業員あるいは取締役が退職後・退任後の競業避止義務を負うのは、契約上(従業員の場合は労働契約、取締役の場合は委任契約)、競業避止義務が成立している場合に限ります。

 就業規則等で明確に定められている場合あるいは誓約書等の合意書がある場合でしょうか。

ただし、職業選択の自由との関係からそのような取り決めの有効性は制限されます。
憲法は国と私人の関係を規律するもので私人間の法律関係には直接適用されないのですが、民法の解釈において憲法の趣旨が及ぼされます。
職業選択の自由を過度に制限するような合理性のない競業避止義務は、公序良俗(民法90条)に反して無効とされます。

具体的には、競業避止義務合意の効力は、従業員の場合の裁判例の言いまわしを借りると、使用者の利益、労働者の不利益、制限期間、場所的範囲、代償の有無を検討し、合理的な範囲で認められます。

どんな従業員、取締役に対しても競業避止義務がかけられるわけではありません。
企業に機密情報、営業秘密を守るべき利益がなければなりません。


その関連で、従業員の地位、取締役の担当職務などがメルクマールになります。
従業員、取締役が会社の機密情報、営業秘密に接している場合には競業避止義務合意が有効の方向に傾きます。

地域的な限定の有無もメルクマールです。さすがに地域的な限定がないと有効とは認められないでしょう。

存続期間は、ケースバイケースなのですが2年間ぐらいから危なくなると言われているようです。

禁止される競業行為の範囲の制限も必要です。
競業企業への転職を一般的・抽象的に制限する場合には無効の方向に、業務内容・職種等が特定される場合には有効の方向に判断されます。

代償措置も必要です。
退職後、退任後の競業避止義務を課しても著しく従業員、取締役の不利益はないと言える場合ですね。
対価自体の支払いだけではなく、退職金の加算、在職中の高額な賃金や特別な奨励金等も勘案されます。

総合的に判断されるので、これがあったら有効あるいは無効というわけではないのですが、このような点に気を付けて競業避止合意をする必要があります。

なお、会社を辞めた人を雇う方も気を付けないといけません。
前職の地位や職種によっては、競業避止義務の有無は確認した方がいいでしょう。
場合によっては共同不法行為などの責任を追及されることもあり得ます。


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広島の弁護士 仲田 誠一

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相続から長期間経った相続放棄 [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。


今回の相続問題コラムは、相続から長期間経てからの相続放棄のお話です。


最近被相続人が亡くなってから長期間(20年以上)経った相続放棄申述をお手伝いしました。

 

相続放棄の申述は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(「熟慮期間」といいます。)におこなわないといけません、事前に申請をすれば3か月の期間を伸長してくれます(民法915条)。

 

「自己のために相続の開始があったことを知った時」というのは、判例上、相続人が相続開始の原因たる事実の発生、かつそのために自己が相続人となったことを覚知した時を指します(死亡かあるいは先順位相続人相続放棄ですね)。

相続人が何人かいるときは、各人がそれぞれ相続人となったことを覚知した時になります。誰かが知っていたとしてもその人が知らなければ関係ありません。

 

かつ、判例で、さらに緩和されています。

3か月の熟慮期間は、相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識した時、または通常これを認識しうべき時から起算されるとされているのです。
相続人となったことを知った時から3か月を経ていても相続放棄ができるケースが認められているのです。

 

亡くなったことは知っていたけど、遺産も債務もわからないし放っておいたところ、急に債権者から相続人に対する督促状が来た場合が典型例です。
実務上も、珍しくありません。その場合には、督促状が来てから3か月以内に相続放棄をすれば家庭裁判所が相続放棄申述を受理してくれます。
勿論、その辺の事情を説明しないといけませんし、督促状などの資料も提出します。イレギュラーな事例なので弁護士に代理してもらった方がいいかもしれません。

 

相続人が被相続人の事情をどの程度知っていれば相続放棄申述が制限されるかは、ケースバイケースかつ微妙な問題です。
典型的な、同居もしておらず、何も相続手続をしていない例では、これまで問題なく相続放棄申述が受理されています。

 

ただし、理屈上は、相続放棄申述受理証明を貰えれば解決するということではありません。実は、相続放棄の法的効果は相続放棄申述受理によっては決まらないのです。

放棄の法的効果は、債権者が放棄した相続人に対して、貸金返還請求訴訟などの訴訟を提起した際に、その中で判断されることになります。

 

だからリスクは残るのですね。
ただし、相続放棄申述が受理した旨を債権者に通知すると、通常はそれ以上突っ込んでくることはありません。
そのため、実務上、あまり細かい所が問題になることはありませんし、ひっくり返されるリスクが大きいとも言えません(なお、当職は今まで1度も債権者から突っ込まれたことはありません)。

 

勿論、相続財産の処分行為など、これは相続放棄ができないなという事例もあります。そうでない限りは、とりあえず相続放棄申述受理をしてもらえればいいという意味です。

 

冒頭の事例は、被相続人が死去されて20年以上とめったにお目にかかれない期間経ていた事例でした。

 

実家とは疎遠で、被相続人が亡くなったことも御存じなく、他の相続人相続放棄をしていて、今になって突然役所から被相続人の固定資産税の滞納金の請求が来た例でした。

 

何が困ったかというと全く資料、記憶もない点でした。役所からの通知内容を基に、何とか最低限の提出資料を揃えることができました。

 

また、理屈上は、相続放棄申述が許される事例ですが、事実上あまりにも相続発生から長期間経ているため、手続がスムーズに進むのか危惧がありました(かつ、遠方の家庭裁判所でしたので来てくれと言われると大変だなと思っていました)。

 

この点は、事情をきちんと裁判所に説明する書面を作成し、スムーズに相続放棄申述受理証明書をもらうことができました。

 

少し変わった事例でしたのでお話をさせていただいた次第です。

 

遺言、遺産分割、遺留分減殺請求、相続放棄、等相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

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交通事故の被害者と自己破産 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

債務整理をしないといけない方が交通事故に遭った場合、特に自己破産を選択されている場合のお話をします。

 

交通事故の被害者には不法行為に基づく損害賠償請求権を取得しますね。それが自己破産手続においてどのように扱われるかというお話です。

 

自己破産においては、財産は破産手続開始決定時が基準となり整理されます。同時廃止事件になれば財産はそのまま残せる、管財事件になった場合には最終的に自由財産拡張手続によって認められた範囲で財産を残せるということになります。

 

交通事故による損害賠償請求権は自己破産手続の中でどういう扱いになるのでしょうか。

破産開始後に交通事後に遭われた場合は難しいことを考える必要がありません。
損害賠償請求権は新得財産として無視されます。
なお、個人再生の場合には、清算価値の計算の基準時が開始決定時ではないため、理論上、開始決定後でも早くとも再生計画提出までの交通事故による損害賠償請求権が清算価値に影響を及ぼしうるということになります。

 

破産手続開始決定時において損害賠償金が既に入金されている場合はどうでしょうか。
損害賠償金は開始決定時点では既に預金、現金等の形の財産となっているので、開始決定当時の財産として評価されます。

財産全体として自由財産拡張の範囲(原則99万円が限度)を超える部分は財産に組み入れることになります。

財産に組み入れるとは、管財人に引き渡すという意味です。
財団に組み入れられたお金は、手続費用、管財人報酬、配当等に回されます。

 

破産手続開始決定時点においてまだ損害賠償金が入金になっていない場合はどうでしょうか。

やや複雑です。

 

物損など純粋な財産的損害に基づく損害賠償請求権は、財団に帰属します。
自由財産拡張の対象にもならない傾向のようです。財産が残っているか損害賠償の形かの違いだからでしょうか。厳しいなあと感じますが、ケースによっては拡張対象となることもありうるのではないでしょうか。

 

財産的損害に基づく損害賠償であっても、給与の代わりの性質を持っている休業補償や逸失利益、あるいは治療に直接関係する介護費用や入院雑費は、自由財産の拡張対象となり得ると考えられているようです。
ただ、拡張対象範囲を超えるものは取られてしまうことになりますね。

 

精神的損害に基づく損害賠償(慰謝料請求権)については、また違う扱いになります。

慰謝料金額が確定するまでは破産財団に属しません。財産とみなされません。慰謝料請求権は、それを行使するかどうかはその人にまかされているからです(行使上の一身専属権)。

しかし、破産手続中に金額が確定した場合には、破産財産に属します。自由財産の拡張対象とはなります。拡張対象範囲を超えるものは取られてしまうことになります。

 

破産準備中に事故に遭う、交通事故に遭ったため債務の返済の継続が難しくなるというケースも時々接します。そういう場合には上述のようなことが問題となるため考えて対応しなければなりません。

   

債務整理(任意整理民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

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一方的な別居と離婚 [離婚問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一による離婚問題コラムです。

 

離婚の前に一方的に別居されるということは珍しくありません。

 

一方的な別居が「悪意の遺棄」になるでしょうか?

「悪意の遺棄」とは、裁判離婚が認められる法定離婚原因の1つです。

 

法定離婚原因としての「悪意の遺棄」に該当するかは難しい問題です。
よく主張されることですが、一方的な別居=悪意の遺棄とはなかなか認めてくれません。
夫婦は同居義務がありますが、強制はできない義務だとされています。
同居義務違反=「悪意の遺棄」とはいいずらいことになります。

微妙なところですが、連絡を不通にして生活費を全く負担してくれない等の事情も必要なのではないかと考えます。

 

家を一方的に出た配偶者が有責配偶者だから、他方配偶者は離婚を拒否できるのではないか、慰謝料が請求できるのではないか、という問題もあります。

 

こちらも、事情によってはそのような判断がなされ得ます。

残された配偶者に十分な収入がある、あるいは生活費の負担を続けているような通常のケースだと、有責配偶者とはなかなか認められないというのが実感です。
離婚原因としての「悪意の遺棄」に該当するかどうかの問題よりもハードルは高いでしょう。
別居により生活を困窮させるような事情が必要なのではないでしょうか。

 

実際、収入のない、あるいは低い奥さんが一方的に別居をして離婚を求めるケースはよく接します。
しかし、裁判所から離婚請求は有責配偶者の請求だから認められないと言われたことはありません。
勿論、一方的な別居が不法行為として慰謝料が認められたこともありません。
一緒に住むのがつらい配偶者が一方的に家を出てもそれが直ちに不法行為になるということはないのでしょう。

 

勿論、一方的な別居した配偶者からの婚姻費用分担請求も認められています。

 

通常の一方的な別居は、別居後2~3年その状態を続けると法定離婚原因のその他婚姻を継続し難い事由に該当し、裁判所に離婚が認められるのがスタンダードでしょう。

 

他方配偶者からは納得いかないのでしょうが、法が同居を強制できるものではないので、仕方がないのだろうと思います。

 

男女の仲が戻ることはなかなかありません。弁護士にご相談される時点では既にそのような可能性はなくなっているのでしょう。

 

法律も、一方が婚姻継続の意思を失っているのに敢えて婚姻関係の維持を強制する制度とはなっていません。婚姻関係破たんによる離婚を認めていますから(破綻主義)。

ただ、婚姻関係破たんの認定はやや厳しく、簡単に離婚ができるわけではないというところで調整しているようです。

 

一方配偶者の離婚の意思が強ければ、敢えて離婚を争うのではなく、今後のこと、特にお子さんのことに折り合いをつけて円満に離婚する方がいいケースは多いです。

 

離婚案件は法律上の主張、手続を粛々として進めればいいのかというと、そうでもない案件が多いです。多大な時間と労力がかかりますし、大きなしこりが残ります。円満解決あるいは折り合いが付く解決を図るのは骨が折れる仕事だなあというのが実感です。

 

離婚婚姻費用養育費財産分与慰謝料請求等、離婚問題のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

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