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旧コラム 企業法務: 2015年11月

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会社運営と定款自治1 [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。

今回は広島大学で開催していた経営者向けの勉強会でお話ししたことを基にしてコラムを書きます。

企業法務の話です。

会社法の改正が以前にあり、機関設計の自由化、定款自治の拡充がなされたことをご存じでしょうか。
その背景は、外圧あるいは性善説による事後規制への移行(結局、トラブル発生は民事の問題として裁判で解決しろ、自己責任だよということです)にあるようです。
我が国の会社法が大会社から社長1人の零細企業までを幅広く対象としているため、改めて会社の規模に応じた規制を行わなければならなかったということもあるのでしょう。

会社の機関設計や定款(会社のルール)がより自由になったという事態に接した中小企業は、何を考えればいいのでしょうか。

それは、
①機関設計、定款を戦略的な経営の武器にすること、
かつ、
②生じるリスクに対処をする、
ということです。

経営の武器とするという意味は、自由になった会社の設計により、中小企業の強みである機動力強化(ヒトの力)をより発揮できるようにするということですね。
一方、自由は責任を伴います。自己責任ですね。リスクの管理はよりしていかないといけません。

また、会社運営・定款自治は、事業承継対策にも直結します。
中小企業は、人が大事です。「和」に基づく身の丈に合った自治を行うことになるでしょう。
引き継ぎやすい会社にするため、あるいは事業承継対策そのものとして、考えないといけない事柄です。

そこでまず、機関設計のお話しをします(株式会社を念頭にお話しします)。

譲渡制限会社の制度設計は原則として定款自治に委ねられます。
身の丈に合った機関設計、すなわち、スリム化、機動力確保を狙って戦略的な設計が必要でしょう。

必須なのは株主総会と取締役です。
そのほかは、いろいろなバリエーションが認められます。
単語だけ並べると、
取締役会、監査役(会計参与)、監査役の監査範囲の制限、監査役会、会計監査人、
委員会設置会社(取締役会+指名委員会、監査委員会、報酬委員会+会計監査人)、
監査役会設置会社委員会設置会社制度
等です。

会社の規模により取締役会、監査役は被設置の会社にした方がいいでしょう。複雑にしてもいいことはありません。

取締役会を設置しなければ、各取締役が代表権を有し、株主総会の権限が拡大しますので、旧有限会社型の会社となるでしょう。

もちろん、機関設計は組織運営とは違います。機関設計とは別に組織運営も考えないといけません。

スピード、機動力、経営方針の一貫性が強みである中小企業では、できるだけフラットな組織がよいでしょう。

リスク管理に必要なのは
保険で対応できるリスクは保険をかける、
あとは、分離とチェック(ルーティン化できるプロセス)と記録化の仕組みづくりです。

実際の訴訟等を経験している弁護士等の専門家の助言に従って、一度簡単な仕組みづくりさえしておけばいいのです。
中小企業はリスク管理にコストはかけられません。ただ、やっていないと、大変なことになります。
中小企業は大きな契約1つでもトラブルが生じたら、資金繰りがひっぱくし、あるいは経営継続にも支障を来します。
中小企業こそリスク管理を考えないといけません。

ピラミッド型組織は必要ありません(従業員に肩書きだけを与えるのは別の話です)。
社員のやる気は、賃金体系の整備で対処するのが得策でしょう。

次回、次々回は続きの話をします。

顧問弁護士のご用命は是非なかた法律事務所に。

広島市中区上八丁堀5-27-602
なかた法律事務所
弁護士 仲田 誠一

https://www.nakata-law.com/

 

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同族中小企業株式の遺産分割方法 [相続問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

今回は相続問題のうち、同族中小企業の株式が遺産分割審判においてどのように分割されるのかをお話ししたいと思います。
企業法務、特に事業承継とも関わりが深い問題です。


遺言がない場合、原則として法定相続分に応じて各相続人が遺産を共同相続します。
当事者間で遺産分割協議が整わない場合は、家庭裁判所へ調停を申立て、それでも合意できない場合には、家庭裁判所で審判を出してもらい、具体的な分割方法を決めてもらいます。
審判に不服があれば抗告です。


審判の場合、特別受益、寄与分がなければ法定相続分に応じて、それらがある場合には法定相続分を修正して、遺産が割り振られます。
ここで注意してほしいのは、財産毎に割り振られるのではなく、株式も不動産も何分の1といったように割合で割振られるのが基本というところです。
株式も事業用不動産も共有(株式の場合には準共有と呼ばれます)になってしまうということですね。

それでは事業に支障をきたす可能性があります。相続共有株式の権利行使者を決めることができなければ株主総会も開催できない、したがって取締役の選任もできないということになりまねません。
だから事業者や経営者は遺言を始めとする事業承継対策が必要なわけです。


ここで、抗告審の事例を目にしたのでご紹介します。
審判で株式が共有とされた、それに不服の会社後継者である子が抗告をしました。
民法906条には遺産の分割の基準を定めています。
裁判所は、株式について、典型的な同族会社で、経営規模も小さく、経営の安定のためには株主の分散を避けることが望ましいという事情が、同条の「遺産に属する物又は権利の種類及び性質」「その他一切の事情」に当たるとして、後継者に株式を単独取得させて、他の相続人らには代償金を支払せる形に審判を変更しました。


事業承継問題の社会問題化、事業承継法制の整備といった事情を考慮した判断です。
同族中小企業の実情に合った判断だと思います。


ただし、ここで注意。裁判所の判断理由として、後継者に代償金の支払能力があることが示されています。
後継者に資力がないとこのような判断はできないのですね。
自己資本が厚い(内部留保をきちんとしている)会社ほど、株式評価額は高くなります。


代償金の支払能力は、事業承継対策における後継者の資産形成が必要な理由の1つですね(他に、相続税、株買取資金、遺留分対策などもその理由です)。
後継者を受取人に指定した生命保険が有効かもしれませんね。
相続財産とはみなされず、原則として遺産分割に影響しません(例外はあります)。
将来を見越した役員報酬戦略も有用でしょう。


ここでご紹介した裁判所の判断は、もちろん一般的なものとは言えません。
経営者、事業者の方は、このような裁判所の判断に頼ることなく、後継者が会社をスムーズに承継できるよう、株式の移転、遺言等の相続対策といった事前の対策を行うのが本筋です。


相続問題、顧問弁護士のご用命は是非なかた法律事務所に。

 

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代表者の行方不明、判断能力喪失のリスク2 【企業法務】

広島の弁護士仲田誠一です。

前回は、企業法務のうち、代表者=株主の行方不明のリスクについて事業承継問題類似のお話をしました。

今回は、前回の続きで、代表者=株主の判断能力喪失のリスクの話です。


事業承継問題は、代表者=株主の死去、すなわち相続を念頭に置いて議論がされることがほとんどだということは前回お話しました。
そうではなくて、不慮の事故等で社長=オーナー株主が判断能力を喪失してしまった場合はどうでしょうか。

絶対に事故に遭わないとは誰も言うことが出来ません。
突然の話で準備ができないため、相続問題よりもリスクが高いと言えるでしょう。


人はその判断能力を喪失すると、法的に有効に財産管理ができなくなります。
もし代わりに誰かが財産管理を行うと後で法的に覆されるリスクが生じるのです。
自社株についての議決権も同様です。本人は有効に株主権を行使することができませんね。


起きうる事態は行方不明のケースと同様です。
オーナー株主は過半数の株式を保有しているでしょうから、多くの場合、定足数が足りず株主総会等を開いて新しい取締役を選ぶこともできません。
法律的には経営がストップし、事実上の経営権を巡り争いや混乱が生じることも容易に想定できます。
おまけに、取締役が1人だと取締役会も開けません。
予め株主総会の定足数を下げておくことも考えられますが、法的に限界もあり、かつリスクが生じます。


法律上、判断能力を喪失した方の財産(自社株含む)を管理する方法として、成年後見制度があります。
また、裁判所に職務代行者を選任してもらうことも可能かもしれません。
しかし、それらには時間がかかり、また成年後見人や職務執行代行者の権限にも制約があります。
日々動かないといけない経営の継続性の点からは、非現実的な手段だと思います。


その対処方法としては、まず、任意後見契約を行うことが考えられます。
自身の判断能力が失われた場合に備えて、予め自身で後見人を選んでおき、その事態が発生したら速やかに財産管理をしてもらう制度です。
特別な方式を要求される契約ですが、その際には代理権目録に株主権の行使を記載しなければいけません。そうしないと意味がありません。


株主の行方不明のケースと同様の対策も考えられます(こちらの方がお勧めですかね)。
予め属人株式、具体的には俗にいう「(逆)ヒーロー株」を設定します。
代表者=株主が判断能力を失っても、他の方の議決権により問題なく株主総会を開催できるようにし、経営の継続性を保つのです。

勿論、後を託すに足りる人物がいないといけません。

属人株式の設定は特別な手続要件があり、また悪用されないように慎重に設定することは言うまでもありませんのでご注意を、というお話も前回同様です。


会社のリスク管理の一環として、代表者の判断能力喪失に備えをしておくことも必要だと思います。
不慮の事故、不慮の病気は完全には避けられませんからね。

 

今回は、前回の行方不明の場合への対処に続いて、判断能力喪失への対処についてお話しました。
事業承継対策はもちろん必須ですが、相続に至らないままに株主=代表者が有効に株主権を行使できなくなるリスクにも対処をしなければなりません。
あまり意識されていない点なのでぜひご検討してみてください。


顧問弁護士、企業法務サポートのご用命はなかた法律事務所に。


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