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旧コラム 企業法務: 2019年2月

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退職・退任後の競業避止義務 [企業法務]

広島県広島市の弁護士仲田誠一の企業法務コラムです。

今回は、企業法務関係でよく相談される退職後の競業避止義務のことについてお話します。
関係が悪くなった中で従業員が退職する、取締役が退任するが、ライバル企業に就職されたら困る、競合会社を設立されたら困るなどのご相談ですね。
 
競業行為とは、会社法的に説明すると、自己または第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をすることです。
従業員も含めて言うと、競業会社への就職まで含むもう少し広い意味で使われていますね。
 
在職中の従業員、取締役の競業避止義務は勿論認められます。

 
従業員の場合、就業規則に定めがある場合は当然ですが、それがない場合でも労働契約上の義務として認められています。
就職という意味では、通常、就業規則で職務専念義務や兼業禁止なども定められていますね。

取締役の場合は、法律で競業避止義務が定められています。
会社法356条1項1号で、競業行為を行う場合には取締役会(取締役会非設置会社では株主総会になります、会社法365条)の承認が必要とされています。
従業員と異なり取締役の兼任自体は制限されていないのでしょうが、競業行為をする場合には承認が必要なのですね。
 
実際に問題となるのが従業員の退職後、取締役の退任後の競業避止義務です。
 
まず、憲法で職業選択の自由(憲法22条1項)が定められています。
退職した従業員、退任した取締役が、その後にどのような職業を選んでもそれは個人の自由です。

そのため、なにもなければ退職後、退任後の競業避止義務はありません。

もっとも、不法行為に該当するような行為(従業員の大量引き抜き等)、不正競争防止法違反になる行為は、退職後、退任後であっても損害賠償や差し止めの対象になり得ます。

従業員あるいは取締役が退職後・退任後の競業避止義務を負うのは、契約上(従業員の場合は労働契約、取締役の場合は委任契約)、競業避止義務が成立している場合に限ります。

 就業規則等で明確に定められている場合あるいは誓約書等の合意書がある場合でしょうか。

ただし、職業選択の自由との関係からそのような取り決めの有効性は制限されます。
憲法は国と私人の関係を規律するもので私人間の法律関係には直接適用されないのですが、民法の解釈において憲法の趣旨が及ぼされます。
職業選択の自由を過度に制限するような合理性のない競業避止義務は、公序良俗(民法90条)に反して無効とされます。

具体的には、競業避止義務合意の効力は、従業員の場合の裁判例の言いまわしを借りると、使用者の利益、労働者の不利益、制限期間、場所的範囲、代償の有無を検討し、合理的な範囲で認められます。

どんな従業員、取締役に対しても競業避止義務がかけられるわけではありません。
企業に機密情報、営業秘密を守るべき利益がなければなりません。


その関連で、従業員の地位、取締役の担当職務などがメルクマールになります。
従業員、取締役が会社の機密情報、営業秘密に接している場合には競業避止義務合意が有効の方向に傾きます。

地域的な限定の有無もメルクマールです。さすがに地域的な限定がないと有効とは認められないでしょう。

存続期間は、ケースバイケースなのですが2年間ぐらいから危なくなると言われているようです。

禁止される競業行為の範囲の制限も必要です。
競業企業への転職を一般的・抽象的に制限する場合には無効の方向に、業務内容・職種等が特定される場合には有効の方向に判断されます。

代償措置も必要です。
退職後、退任後の競業避止義務を課しても著しく従業員、取締役の不利益はないと言える場合ですね。
対価自体の支払いだけではなく、退職金の加算、在職中の高額な賃金や特別な奨励金等も勘案されます。

総合的に判断されるので、これがあったら有効あるいは無効というわけではないのですが、このような点に気を付けて競業避止合意をする必要があります。

なお、会社を辞めた人を雇う方も気を付けないといけません。
前職の地位や職種によっては、競業避止義務の有無は確認した方がいいでしょう。
場合によっては共同不法行為などの責任を追及されることもあり得ます。


顧問契約、契約トラブル、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。
 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602


中小企業の債権回収対策のエッセンス2 [企業法務]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

前回、債権回収トラブルの要因の大きな2つのうちの1つは契約内容の意識にズレがある場合である、契約内容の疑義をなくすことが実は債権回収対策の1つの柱である、ということをお話いたしました。

 

契約内容に疑義がなくても発生する債権回収のトラブルの要因(債権回収トラブル発生のもう一つの要因)は、勿論、相手に支払能力がないという場合ですね。
弁護士では手元不如意の抗弁なんて言ったりします。

 

中小企業の場合、取引先の財産や業況の把握が不十分である例、あるいは取引先事に与信枠(売掛金の枠)を設定しないで、あるいは意識もしないで、ご商売をされている例があります。
なかなか手が回らないところかもしれません。

 

しかし、売掛金があるということは取引先と債権債務関係に立っているということです。
お金を貸しているということと理屈上は同じです。

 

したがって、御社も取引先に対して「貸している意識」を持たないといけません。

 

取引先へは頻繁に訪問しないといけませんね。情報収集を欠かしてはいけません。

会社の雰囲気だけでも順調な会社と危ない会社は全く違います。取引先の情報が一番の保全だと思ってください。

在庫の管理状況や、荷物の搬出入状況も、日ごろから何気なくかつ意識して見ておかないといけません。

取引先が説明している状況と合っているでしょうか?在庫が不自然に溜まっているあるいは在庫がない、ないし荷物の搬出がほとんどないということはないでしょうか。
従業員の士気など会社を見ていてわかることもありますね。


特別なことをする必要はありませんが、日ごろの意識が大切です。
情報察知能力ですね。

 

売掛金の限度額(与信枠)も設定し、急激な取引増加はリスクの増大の兆候であることにも気を付けないといけません。
もしかしたら、他の取引先から断られて御社の取引量が増えているかもしれません。

 

実際に取引先の危険を察知した、トラブルの兆候が出てきたらどうしたらいいでしょうか。

 

残念ながら、契約内容にズレがあるケースではそれを解消するしかありません。
訴訟での解決等が必要な場合も多く、その解決は長期化します。
契約トラブル防止のお話でも説明しましたが、契約トラブルは怖いのです。

 

支払い能力に問題がある場合には、初動対応が大事です。

 

支払いが滞るまで至らない場合は、速やかにその取引先の与信枠を引き下げないといけません。
同業他社よりも先に逃げるということです。

 

支払いが滞りそうである場合には、まずは、契約書類等のチェックをし、不備があれば補完してもらいます。
契約に不備があると後で困りますので。
残高確認書などを貰うこともいいでしょう。

 

同時に、訪問・督促を頻繁に行い、「うるさい取引先」になることです。

うるさい先の順に頑張って支払うというのはよくあることです。

 

残念ながら取引先が手を挙げる(弁護士に依頼する、破産申立を考える)段階になるとどうしようもありません。

まだ、取引先が協力的なうちに、保証、相殺、商品引き揚げ、代物弁済、債権譲渡等の合意を取り付けて債権保全・回収を図らなければなりません。

同意なく商品の引き揚げや備品等の持ち出し等の取付行為がなされることがあります。
後に破産管財人に追及されることもありますし、刑事の問題にもなり得ますのでご注意を。

 

勿論、取引先の協力が取り付けられない場合には、法的措置をとるしかありませんね。

ただ、法的措置は、支払能力がない相手に対しては、時間がかかり実効性にも問題が生じます(弁護士が入って自己破産の準備をされてしまうと、基本的には何もできないと思ってください)。

 

債権回収対策は、トラブル発生を防止するためのルール・仕組みづくりが大切、日ごろはアンテナを張って情報察知能力を高める、一旦トラブルが発生したら初動対応に尽きる、ということだと思います。

 

顧問契約、契約トラブル、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

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https://www.nakata-law.com/

 

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中小企業の債権回収対策のエッセンス1 [企業法務]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

企業法務コラムとして、中小企業の債権回収対策のエッセンスその1をお話しします。

法律的な側面だけではなく、元銀行員の経験からのお話も含みます。

 

皆さん、債権回収を本当に考えてご商売をされているでしょうか?

 

債権回収トラブルの要因の大きな2つのうちのまず1つは、契約内容の意識にズレがある場合です。

 

契約内容どおりのことをしてもらっていない、要求される金額を約束していない、瑕疵があるからお金を払いたくない等の理由で、相手が御社に支払う必要がないと思っている場合ですね。
これがけっこう多いです。
弁護士として接するメインの案件はこのような場合です。

 
原因は契約内容(約束事)の全てを何らかの書面、FAX、メールなどできちんと確認をしていないことです。
 

中小企業では、基本的な契約書類すら不備があり、口約束でいいと思っている場合も珍しくありません。
しかし、契約書類に不備があり、両者の意識にずれがあると、取引相手の支払い拒否につながります。

この点は、前に契約トラブルの防止のエッセンスとして詳しくお話ししました。

 

「言った言わない。」の争いでは話が前に進みません。
契約内容の意識のズレが原因のトラブルは訴訟での解決によらなければならないことも多く、解決は長期化します。

また、契約内容への意識のズレは、御社が契約どおりの物を納めたつもりでも、先方は契約と違う物が納められたと認識して、債務不履行や瑕疵の損害賠償の主張にもつながってしまいます。

 

まずは、取引交渉過程及び取引履行過程の記録化・見える化で、契約内容に疑義がないようにしておくことが債権回収対策の1つの柱です。
手間がかかりそうかと思われることがありますが、そんなことはありません。
できるだけ省力化した形でルール化、ルーティン化すれば、対策にさほどコストはかからないはずです。

これをしているかしていないかは、トラブルの発生防止に大事なことはもちろん、仮に裁判になったときには有力な証拠になります。「この点さえ証拠があれば勝てるのに・・・。」と思うことは珍しくありません。

 

最初の契約内容はもちろんですが、追加や変更があった際のトラブルも非常に多いです。
追加や変更があったら、必ず確認結果を残し、最終的な契約内容に疑義が生じないようにしないといけません。

契約内容に疑義がない限り、かつ御社が疑義のない契約内容を履行している限り、債権回収トラブルは基本的に発生しません。

 

契約内容に疑義がなくても発生する債権回収のトラブルの要因(債権回収トラブル発生のもう一つの要因)は、勿論、相手に支払能力がないという場合ですね。
弁護士では手元不如意の抗弁なんて言ったりします。

 

この点に関しては、またお話させていただきます。

 

今回は、契約内容の疑義をなくすことが実は債権回収対策の1つの柱であることをお話いたしました。
当たり前のようなことですが、実はできていないケースが多いのです。
日頃の意識が大切です。

 

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契約トラブル防止のエッセンス2 [企業法務]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

今回の企業法務コラムは、前回の続きです。契約トラブル防止のエッセンス2のお話しです。

前回、
経営活動は契約行為の積み重ねでありほとんどのトラブルは契約内容の解釈に帰趨するということ、
トラブルが発生しないように防止をすることが大事であるというようなこと、
をお話ししましたと思います。

では、具体的にはどうすればいいのでしょうか。
先日顧問先企業様の役職員様の集まりで当職がお話しする機会がありました。

その内容をかいつまんでご指摘すると、

1企業のリスク管理は分離とチェック、そのための見える化、記録化が基本です。
ただし、大仰な仕組みを作り必要はありません。身の丈に合ったコストがかからないルーティン化できる仕組みを作るのです。

2売掛の信用リスク管理の仕組み(枠設定、信用調査)を作る。

といったことが全般的なお話です。

契約については、

契約過程のやりとりをすべて記録に残す、

契約書類だけで見て、受注から債権回収までのあらゆる場面をきちんと想定できるかチェックする(解釈が必要な合意は意味がない)、

トラブルが多い追加や変更の場面では、特に追加・変更内容及びそれに応じた代金額等の変更の有無等と記録に残す、

記録方法は、何でもいいが、FAX・メールで相手の確認を取ることが重要です、

といったところがポイントでしょうか。

文章にすると抽象的になります。

気の利いた顧問弁護士さんなどがいらっしゃったら、一度社内で話をしてもらったらどうでしょうか。

一度、契約過程を弁護士にチェックしてもらえばより安心です。
最終的にはトラブルは法的に解決されます。それを担うのは弁護士です。
法的な観点から、仕組みやルールを作ってもらうことが大事です。
費用をかけて専門家に考えてもらうのもいいでしょう。

大事なのは、このようなことを現場で皆が気を付け、担当者が1人で決めないということですね。
そんなに面倒なことではないはずです。

誰かが気付く体制さえ作れば、契約トラブルはある程度防止できます。
トラブルは、契約内容の意識のずれから生じることがほとんどですから。

裁判をしていると、ここの記録さえ残っていれば勝てるのに!と残念なケースが多くあります。

皆が気付くことができる、当たり前のようにできる仕組み、ルールが必要です。

なお、売掛の信用リスクの管理にも契約書、契約~竣工過程の記録の整備が大事です。
明確に合意内容を説明できるケースでは、不払いはなかなか生じません。

勿論、個別顧客に対する信用枠の設定、定期的な見直しも必須です。

信用枠を増額するにはそれ相応のチェックが必要ですね。ババを掴まないように気を付けないといけません。

加えて、できるだけ担当者が企業を訪問して日頃のチェックを行うことも大切です。
社長が景気のいいこと言っていても、商品搬入のトラックがあまり来ない、在庫が積み重なっている、従業員の士気が低い等気付くことがあります。
会社の様子を見ると調子がいいか悪いかはわかりますね。

 

顧問契約、契約トラブル、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。

 

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