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旧コラム 離婚問題: 2019年10月

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婚姻費用・養育費算定の際の「収入」とは [離婚問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一による離婚問題コラムです。
 
今回は、婚姻費用養育費算定における「収入」についての説明をさせていただきます。
 
実務上、婚姻費用養育費を定める場合には、婚姻費用養育費標準算定表あるいはその基になっている標準算定式が利用されます。
まだ新方式が採用されたものは見たことがありません。
 
算定表あるいは算定式では、お互いの「収入」と未成熟子の年齢および数によって数字が出てきます。
 
その「収入」が何かというお話です。
 
給与所得者については、前年度源泉徴収票の総支給額です。
市県民税課税台帳記載事項証明書では、給与収入の金額ですね。
 
自営業者ですと、確定申告の所得金額から社会保険料を控除し、現実に支払われていない専従者給与や青色申告特別控除額を加えるということなります。
減価償却額も加えるということもあります。
 
給与所得と事業収入が両方ある場合には、どちらかを他方に換算して合算した金額を年収と見て計算することになります。
この点は、以前の離婚問題コラムにおいて細かく説明したように思います。
 
これらが婚姻費用養育費算定の「収入」に関する基本ですが、絶対ではありません。
 
前年度収入が現在の収入状況と合っていない場合も多いですね。
その場合には、絶対に前年度源泉徴収等の収入を基に算定されるわけではありません。
 
例えば、前年度は無収入であったが今年度に就職した、あるいは転職したという場合がありますね。
そのような場合であれば、今年度の見込み収入で養育費婚姻費用が算出されることになるでしょう。
前年度収入で判断するのは不合理ですからね。
 
養育費婚姻費用を下げるために敢えて退職した、あるいは敢えて給料を下げたという事情があるケースには、それまでの収入状況を加味して収入が認定されることもあります。
 
理由がない無収入の場合、あるいは理由がない低収入の場合もあります。
そのようなケースでは、稼働能力が認められる限りにおいて、賃金センサスを用いて収入認定がなされることもあります。
賃金センサスとは、賃金構造基本統計調査の結果を性別・学歴・年齢等によってまとめたものです。
 
収入を擬制するのですね。
稼働能力が制限され得る事情によって賃金センサス上の年収の何割かを収入とするなど、ケース応じた判断がされているようです。
 
実務上は、交通事故でよく見る、所謂「赤い本」に記載されている賃金センサスによる年収を参考にすることが多いです。
ただ、賃金センサスは、毎年出ており、インターネットでも取得できます。
 
将来の減収が予定されているケースもあります。
増収・減収がほぼ確実で、見込額についても明確に予測できると客観的な証拠に基づいて説明できる場合には、それらの事情が加味されて収入とみなされることになるでしょう。
 
婚姻費用養育費の算定に当たって、標準算定表あるいはその基になっている算定式が一般に使用されているのは事実ですが、算定表ないし算定式に当てはめる収入をどう見るか自体に議論の余地があるということですね。
 
これに加えて、算定式あるいは算定表で考慮されていない事情(多くは特別費用ですね。)などの話が出てくることは珍しくありません。
 
今回は、婚姻費用養育費を考えるときには、単純に算定表を見れば済むわけではないのですよということをお話ししました。

養育費婚姻費用は算定表に当てはめればすぐ決まるという単純な話ではないことをご理解いただけたでしょうか。
 
離婚婚姻費用養育費財産分与等、離婚問題のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
https://www.nakata-law.com/
 
https://www.nakata-law.com/smart/


別居、離婚にともなう自宅不動産の退去・明渡し請求 [離婚問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一による離婚問題コラムです。
 
別居あるいは離婚しても自宅不動産の所有者が自宅を出て他方配偶者が自宅に居住し続けるということは珍しくありません。
 
今回は、そのような場合、不動産を所有する夫または妻は、他方配偶者に対して「家から出て行け。」と法的に請求することができるのか、
逆に、他方配偶者は不動産を所有する夫または妻からのそのような退去請求に応じなければならないか、のお話しです。
 
離婚の前と後で分けます。
その後、第三者名義の不動産の場合を補足します。


【別居中のケース】
別居中ということは婚姻中ということになります。

民法は、夫婦の同居、協力、扶助の義務を定めています。
同居義務などから、所有者ではない配偶者にも住居の使用権原、居住権が認められています。
 
婚姻関係が破綻していても基本的には同様です。
 
不動産を所有する配偶者からの所有権に基づく退去・明渡し請求は、請求を正当とすべき特段の事情がない限り、認められません。
 
また、使用貸借関係(無償での貸借関係)があるという理由で退去・明渡しが認められなかった例もあります。
別居開始時点において居住目的の使用貸借契約の黙示の成立を認め、別居時点では使用貸借の目的が消滅していない、あるいは解約は権利濫用だとするわけです。
 
実質的な夫婦共有財産だという主張もあり得ますね。
 
ということで、離婚が成立するまでは退去・明渡し請求は認められないと思った方がよろしいでしょう。
 
ただし、他方配偶者が居住権を主張することがDV等により許されるべきではないケースでは、居住権の主張が権利濫用に当たる、あるいは婚姻関係が破綻した同居義務による使用権原は認めないなどとして、例外的に請求が認められているようです。
 
なお、他方配偶者の使用権原が認められた場合、不動産を所有する夫または妻は、賃料相当損害金の請求も認められません。
婚姻費用の算定に考慮されるだけとなります。
 

離婚後のケース】
離婚が成立すると夫婦の同居・協力・扶助義務はなくなります。

離婚後までも居住を許す使用貸借の成立も認められないのではないでしょうか。
 
原則として、退去・明渡し請求が認められるでしょう。
 
ただし、離婚に至った事情等から、場合によっては退去請求、明渡し請求が権利濫用として排斥されることはあるでしょう。
 
勿論、財産分与で、他方配偶者が少しでも不動産持ち分を取得したのであれば退去・明渡し請求は認められません。
共有者には、使用権原が認められますから当然です。
 
その場合は、共有物分割請求による共有関係の解消あるいは賃料相当損害金の請求のみできることとなります。
 

【第三者名義の場合】
自宅不動査が夫あるいは妻の会社、親などの第三者の所有であった場合には、夫婦の同居・協力・扶助義務は表に出てきません。
 
使用貸借関係の趣旨・目的から貸借関係の終了あるいは解約が認められるかの問題となります。
事情により権利濫用として第三者からの請求が排斥された例もあります。
 
なお、配偶者名義であった不動産が別居中に売却されてしまうこともありますね。
勿論、通常は、人が住んでいたら売却できませんね。
 
仮に、売却されると第三者所有の物件となってしまいます。
 
売買の事情によっては、第三者からの明渡請求が権利濫用として排斥されるでしょう。
 
また、そうなる危険がある場合には、処分禁止の審判前の保全処分を申し立てることも検討してもいいでしょう。
 
離婚婚姻費用養育費財産分与等、離婚問題のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
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