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旧コラム 借金問題: 2011年1月

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「債務整理をしたいけど・・・」 4 【借金問題】

弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。catface

今回は,破産について補足をさせていただきます。
以前にも破産の話をさせていただいているところですが,そこでお話できなかったことを書かせていただこうと思います。

◆ 免責不許可事由とは?
破産制度は,多重債務によって支払不能状態(返済を続けられない状態)にある方の,経済的更生を図るために法律が認めた制度です。

他方,債権者には多大な損失を負わせることになってしまう制度です。

そこで,法律は,誠実な債務者に対してのみ,「免責」(借金をちゃらにすること)を許可するということになっています。

何が誠実な債務者なのか?というと,具体的には,「このような場合には免責をすることはできないですよ」というように「免責不許可事由」が法律で定められています。

そのような免責不許可事由がない破産者は,「権利として」免責を受けることができます。免責不許可事由がある破産者については,裁判所が事情を考慮した上で仕方がないと判断したに限って「裁量で」免責を与えてくれることになります(裁量免責)。

免責不許可事由で,よく問題になる行為を簡単に説明します。
次のような行為に注意してください。
○ 債権者を害する目的で財産の隠匿など財産を不当に減少させるような行為
破産申立に近い時期の財産処分行為などが問題となります。
○ 特定の債権者に対する不公平な返済などの行為
親族など特定の債権者だけに返済する行為がよく問題となります。
○ 浪費や賭博行為により借金を作る行為
ギャンブル,遊興費,高額な商品の購入,投機行為で作った借金がよく問題となります。
○ 詐欺的な債務負担行為
名義貸しやショッピング枠の現金化などがよく問題となります。

上記のような行為があっても,上に書いた「裁量免責」を受けられる途がありますので,弁護士とよく相談してください。

また,免責不許可になるような行為を続けるとだんだん免責を受けられる可能性が小さくなってしまいます。泥沼にはまってしまう前に,早くご相談ください。

万が一,免責が不許可になった場合には(私の経験ではまだ不許可になった例はありませんが),免責不許可事由がない民事再生などを検討することとなります。

◆ 破産の手続って?
管財事件になるか,同時廃止事件になるか,の違いが重要です。

管財事件とは,簡単に言うと,裁判所が弁護士から破産管財人を選任し,その管財人が,破産者の財産の整理や免責をしていいかの調査をする破産手続です。

同時廃止事件とは,裁判所が管財人を選任しないで手続を進める破産事件です。

両者の違いで何が一番大きいかというと,裁判所に納める予納金が,管財事件になると多額になるという点です。

債務者の財産が少なく破産手続費用も出ないような場合には,原則として同時廃止手続になります。

管財事件になるケースは,一定額以上の財産がある場合(広島地裁では60万円が一応の目安のようです),個人事業者や会社代表者の場合,免責不許可事由が存在し免責していいか調査が必要な場合,負債額が大きい場合,価値のある不動産を所有している場合,などです。

同時廃止事件になるか,管財事件になるかは,最終的には裁判所が決定するのですが,微妙なケースもあり,弁護士とよく相談して見込みを把握し,管財事件になる見込みがあれば費用の準備をしていく必要があります。

なお,財産がないとおっしゃる方も,調べてみれば財産があったということは稀ではありません。退職金見込額の一定割合が財産と見られますし,保険の 解約返戻金があったり(実際に解約はしなくてもいいのですが),過払金が返ってきたりするケースもあります。よく相談してください。

◆ 自己破産をするにもお金がかかる?
残念ながらお金はかかります。
自己破産にかかる費用は,弁護士費用と裁判所に納める印紙代・切手代・予納金です。

弁護士費用は,事務所によって異なります。ただ,見かけにはだまされないでください。重要なのはトータルでいくらかかるかです。

裁判所に納める費用は,個人の破産で管財人が入らない手続であれば15,000円程度あれば足りると思います。管財人が入る手続になってしまうと,15万から40万はかかります。

お金がないから破産をするのにお金なんか用意できない!と思われるかもしれません。

どのようにお金を用意するのでしょうか。

まず,換金できる財産がある場合には,換金して裁判費用等に当てることはある程度許されています。また,どこかの債権者から過払金が回収できる場合も回収した過払金を費用に充てればいいのです。

次に,月々の収入がある方には,費用が貯まるまで,月々積み立ててもらうことになります。良心的な法律事務所では,一括で支払えとは言わないでしょう。
一定の条件の下では,法律扶助制度を利用して弁護士費用を立て替えてもらうこともできます。

さらに,全く収入がない方については,生活保護を受けられている場合であれば,法律扶助制度を利用した上で,弁護士費用等の立替金の返還を猶予・免除される制度もあります。

このように,費用のことが心配でも解決方法はあります。とにかく相談してください。

◆ 法人の破産について
会社などの法人の破産の特徴は,個人の破産に比べてお金がかかることと(必ず管財人が入ります),破産にとりかかるタイミングが重要なことです。

弁護士費用を相当額支払う必要があるだけではなく,裁判所費用がかなりかかります。ケースによって裁判所に納める必要がある予納金(費用に当てられる)の額は異なりますが,最低100万円は確保したいところです。

また,法人の破産はタイミングが重要になります。まず,申立書類の準備は大変です(経理の知識ある従業員さんなどの協力を得られる方がベターで す)。また,取引先などの債権者に対する対応や従業員さんに対する手当ても慎重に準備する必要があります。さらに,法人の破産には一定の現預金が必要とな るため,資金繰り上,タイミングを図る必要がありますし,裁判所へ納める予納金を少なくするためには事務所の退去の手当てなど事前の準備も欠かせなくな ります。

もちろん,法人を破産させる場合には,保証債務などを負っている代表者なども自己破産を検討する必要があります。

法人の資金繰りにお悩みの方は,個人の破産よりもより早い段階で,弁護士への相談を検討する必要があるのです。

◆ 最後に
自己破産に負のイメージを持たれている方は多いと思います。

それは,ある意味,健全なことだと思います。債権者に多大な迷惑をかけてしまうからです。

しかし,反面,自己破産は,負債に苦しむ方に経済的に立ち直ってもらう,前向きな制度でもあります。破産者の経済的更生を目的にわざわざ法律が認めている制度ですから,自己破産は「悪」ではありません。「自己破産は悪いことだから」と諦める必要はないのです。

もっとも,破産は,それが債権者に多大な迷惑をかける以上,先ほど説明した免責不許可事由を始め,手続上あるいは法律上,様々なことを考えて行う必要がある制度です。

借金に苦しまれている方は,自己破産も選択肢の一つとして,信頼できる専門家に早めに相談してみてください。

債務整理のお話は,今回で一旦お休みにさせていただきます。債務整理に関する個別の問題点など,もっと細かいお話は,これからも機会を見つけてさせていただきます。

 


「債務整理をしたいけど・・・」 3 【借金問題】

弁護士の仲田誠一ですcatface(広島弁護士会所属)。

今年は,干支の組み合わせでは「申卯」の年だそうです。「申卯」は,「かのと・う」とか「しんぼう」とかと読むみたいです。

日本証券新聞のHPを見ると,「申」「卯」の年は,株の世界では縁起の良い年とされているようです。「卯」は跳ねる,「申」は新生,革新,を表すそうで,過去の株式相場の成績もおおむね良好なようです。
期待したいですねup
前回の「申卯」の年は,1951年,サンフランシスコ講和条約締結により日本が国際社会に復帰した年だそうです。

一方,地元の神社へ初詣に言った際には,神主さんから,今年は「しんぼう」の年だから,新しいことには挑戦せずに力を蓄えるよう言われて帰りました。
日々の研鑽を頑張って力を蓄えようと思います。scissors

さて,前回,前々回と,債務整理についてざっと眺めてきました。
今回には任意整理,次回には自己破産について,もう少し詳しいお話をして,一旦,債務整理のお話はお休みにしたいと思っています。

◆ 法定金利を超える借入期間があれば残高は減る
以前にも書きましたが,法定金利を超える金利での取引期間があった以上は,過払金が出ないケースでも,法定金利で引き直して計算した結果として残った残債務を返済していくことになります。

過払金を回収するには,諸般の事情から,こちらで計算した過払金の100%を任意で回収するのは難しいところなのですが,残債務が残るケースでは100%差し引けるので,逆に効率的とも言えます。

◆ 時効にかかった過払金返還請求権の扱い
10年以上前に完済し,数年経って同じところから借り始めたケースでは,以前に書かせていただいたとおり,前の取引によって生じた過払金返還請求権は消滅時効にかかっています。

しかし,諦めてはいけません。
時効が完成した過払金返還請求権でも,今残っている残債務との相殺に使える場合があります。その場合は,新しい取引で残った残債務と時効にかかった過払金の差額を返すことになります。

◆ 遅延損害金,将来の利息はどうなるのか?
以前は,弁護士が入れば,ほぼ例外なく遅延損害金や将来利息をカットした形で和解ができました。

現在では少し状況が変わってきています。そのような形では和解をしてくれない業者も出てきています。業者の経営が悪化したり,身売りが続いて債権回収会社ばりの経営をする会社が出てきたためです。

もともと多重債務に苦しむ方の経済的更生を図るために先輩弁護士が築き上げてきたルールなのですが,それに応じない業者が出てきているため,現在,弁護士がそのような業者と戦っている状況です。

◆ 過払金が回収できた場合の扱い
当事務所では,過払金が回収できたら,よほどの事情がない限りには,他の残った債務の返済に回してもらっています。
任意整理は借金問題を解消するため,経済的に更生を図ってもらうためにやるものです。
回収できた過払金を返済に回して借金総額を減らすことがその目的に適うのです。

おそらく,一般的な法律事務所の扱いなのではないでしょうか。

◆ 弁護士費用
費用が恐いから債務整理をするのを躊躇した,お金がないから依頼するのを躊躇した,などのお話を聞くことが多いです。

心配しないで下さい。
良心的な弁護士であれば費用は柔軟に対応してくれます。
弁護士が受任すると一旦返済をストップさせるので,分割で弁護士費用を払うことが可能なケースが多いです。
また,一定の条件の下,弁護士費用を立て替えてくれる民事法律扶助制度を利用することもできます。
さらに,過払金が返る見込みが高い場合には後払い的な支払方法もできます。
まずは,相談してみることです。

◆ 最後に
今回は,任意整理について補足をさせていただきました。

債務整理を文章で説明すると,簡単なようでなかなか難しいところがあります。個々のケースに応じた対応が必要だからです。
債務整理を機械的な仕事だと考えて弁護士がろくに対応しない事務所も残念ながら存在するのですが,それは依頼者さんにとって不幸なことだと思います。

結局は,信頼できる弁護士選びが大事です。confident


「債務整理をしたいけど・・・」 2 【借金問題】

弁護士の仲田誠一です。catface

前回は過払金返還請求の話で終わってしまいました。
過払金返還請求は,どの債務整理の方法をとってもついて来る話なので,始めにお話させていただきました。

今回は,ざっと債務整理の方法を眺めた上で(もう少し細かい話は次回にします),じゃあどの方法を選択すればいいのか,ということをお話したいと思います。

◆ 任意整理とは?
任意整理とは,裁判所を通さずに,債権者と弁護士などが直接交渉し,前回お話した引き直し計算をした上で,返済すべき金額を一括あるいは分割で返済していくものです。
もちろん,過払金が発生する先があるのであれば,それを回収して全体の借金を減らしていきます。

◆ 特定調停とは?
厳密に言うと違いはあるのですが,簡単に言うと,裁判所を通じて行う任意整理だと考えればいいと思います。
調停委員が債権者と話をしてくれます。
過払金の回収まではやってくれません。

◆ 自己破産とは?
個人の自己破産とは,裁判所に破産と免責(借金が棒引きになること)を申し立てるものです。財産や事情によって破産手続の詳細は異なりますが,裁判所から免責決定を受けると,借金が棒引きになります。
以前に書かせていただきましたが,個人が破産しても,一定の財産を残すことはできますし,破産手続自体によって生活ができなくなるということはありません。

なお,法人の場合の自己破産は,まさに清算手続であり,破産手続が終了するとその法人の法人格が消滅します。

◆ 民事再生とは?
民事再生も裁判所を通じた法的整理です。簡単に言うと,可処分所得を3年なり5年なり債権者に返済していき,残額をカットしてもらうものです。
住宅ローンを支払い続けながら他の債務を整理することもできます。

◆ あなたにとってどの債務整理の方法が最適か?
考えることは,大まかには,①借金総額,②毎月の返済可能額,③手放したくない財産があるか,④財産総額,でしょう。

まず,借金の総額がどれだけなのかを考える必要があります。そのためには,金利が高かった借入れがある場合には,取引履歴に基づいて引き直し計算をする必要があります。

そして,「毎月の返済可能額がどれだけ出るか」を,家計収支を作ってもらうなどして考えます。3年ないし5年で引き直し計算後の借金総額が返済できるようならば任意整理の方法をとることになると思います。
ただ,その際には,お子さんの学費など,ライフプランを考えた計画を立てる必要があります。

3年から5年で返済できない場合にはどうでしょうか?
その場合には法的整理を検討することになります。

ただ,どうしても手放したくない財産がある場合には,破産など法的整理の選択は難しいことになります。住宅ローン付の自宅の場合には,民事再生により自宅を残す方法があります。

もっとも,依頼者さんとじっくり話し合った結果,今後の生活を考えると住宅など財産を手放した方がいいという結論になるケースも実際に多いです。お悩みであれば,弁護士などの専門家と話し合ってください。いい解決方法があることも多いですよ。confident

また,財産が多い場合には,破産や民事再生が難しいケースもあります。その場合には,財産を処分して任意整理することになります。

簡単に書いてきましたが,考えることはまだまだあります。債務整理といっても,生活状況や財産状況は千差万別です。個々の依頼者さんとじっくり話さないと最適な解決方法は見つかりません。
上に書いたのは,本当の触りだけです。
実際には,弁護士費用,裁判所費用,ご職業(破産手続き中に就けない職業もあります)なども含めて,ご相談者の今後の生き方にまで入り込んでじっくり話合いをしなければいけません。

◆ ブラックリストとは?
債務整理のご相談の中でよくある質問として,ブラックリストの話があります。

ブラックリストとは俗称で,正確には,各金融機関が加盟している信用情報機関に登録される「債務整理」「弁護士介入」「自己破産」などのネガティブ情報のことを表しています。

債務整理をすると,加盟金融機関が信用情報機関に上のような情報を登録します。
その後に,新たに借入の申し込みなどをすると,申し込まれた 金融機関が情報を調べ(申込書の裏面などに小さく同意条項が入っています),借入やカードの作成を拒否します。要するに,上のような情報が登録されてし まうと,新たに借りたり,新たにカードを作成したりすることができなくなるのです。

でも,情報が登録されているのは5年から7年という一定期間です。一生借りられなくなるわけではありません。

ブラックリストに載りたくないというご相談者も確かにいらっしゃいます。
でも,多少の不便はあっても,苦しめられた借金とは一旦手を切っ て,一定期間は返済に集中するべきです。私は,債務整理がうまくいった依頼者さんのほっとしたお顔をいつも拝見しています。一度しかない人生です。借金や カードがない生活が今は想像できなくても,それは感覚が麻痺してしまっているからなのです。
ブラックリストを恐がる必要はありません。

なお,過払金請求の形になる場合には,信用情報にネガティブ情報を登録しないというのが,情報機関のルールとなっています。

◆ 最後に
債務整理は,事情をよくおうかがいした上で,どうすれば生活が再建できるのか,一緒に悩み,解決策を見出す必要があるものです。「一緒に解決策を見出す」というのは,話合いの中で依頼者さんにも決意をしてもらうということです。

巷では,簡単に債務整理ができるかのような宣伝も多いですが,あまり感心はできないところです。債務整理を商売としてしか考えない一部の弁護士などによるトラブルも聞こえてきます。

良心的な専門家であれば,きっと,あなたと一緒に悩んで,考えてくれると思います。お悩みの方は,是非一度相談してみてください。

 


債務整理をしたいけど・・・」 1 【借金問題】

弁護士の仲田ですhappy01

 

「債務整理」という言葉が巷に溢れるようになって数年でしょうか。
最近は法律事務所などのTVコマーシャルなんかが登場していますが,その中でも「多重債務問題」「過払金返還請求」など叫ばれていますね。やりすぎ感は否めないですが。

「債務整理」という言葉自体はもう食傷気味かなと思います。しかし,「債務整理」がどのようなものか,どのような場合にどの手段を選択すればいいのか,をきちんと理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。

今回から数回にわたって,「債務整理をしたいけど・・・」ということで,債務整理はどのような方法があって,どのようなときにどれを選択すればよいのか,をざっとお話していきたいと思いますpencil

 

◆ 「債務整理」とは
「債務整理」とは,文字どおり債務を整理することですが,方法としては,「任意整理」,「特定調停」,「民事再生」,「自己破産」があります。
そして,それらのどの方法をとっても,過払い金があるケースでは「過払金返還請求」を伴うことになります。

それらの制度などをざっと眺めてから,じゃあ結局,どのような場合にどのような方法を選択したらよいのか,を考えていきたいと思います。

◆ 「過払金返還請求」とは?
まず始めに,どのような債務整理の方法をとったとしても,検討しなければならない過払金の返還請求について説明します。

消費者金融や信販系のキャッシングなどは,ここ最近まで利息制限法上の法定金利を超える金利で貸付をしていました。
ちなみに,利息制限法の所定利率は,元本10万未満の場合が年利20%,元本10万以上100万未満の場合が年利18%,元本100万以上が年利15%です。

そのような取引をしていた場合,最高裁の判例で,払いすぎた金利を元金に充当して計算することが認められています(「引き直し計算」と呼ばれます)。

 

それでは,引き直し計算の説明をしましょうpen


たとえば,年利28%で50万円を借りていたとしましょう。法定金利は年利18%です。


毎月返済額が2万円だったとすると,業者の取引明細では,支払った2万円の内訳は,元金返済8,333円,利息支払約11,667円(年利28%での1ケ月分の利息)になると思います。


一方,法定金利で引き直し計算をすると,利息支払いは,約7,500円(年利18%での1ヶ月分の利息)になるはずです。


払い過ぎの利息が4,167円(業者の明細の利息11,667円-引直し計算の利息7,500円)ほど出ます。


それを元金に充当するというのは,簡単に言えば,元金を,8,333円(業者の明細上の元金返済額)+4,167円(払い過ぎの利息)=12,500円,返済したと計算し直すのです。

それを毎月の取引ごとに計算しなおします。借金の残高がどんどん減っていくはずです。契約した金利年利28%と法定金利年利18%の差額だけが減る のではありません,翌月の計算はもともとの業者の計算よりも元金が減っているので,どんどん計算していけば,単純な金利差よりも大きい差が出てきます。

再計算をしていくと,だんだん借金の元金が減っていき,そのうちゼロに,さらに計算上マイナスになっていきます。


そして、マイナスになった場合には,本来は借金がないにもかかわらずお金だけ払ったことになっています。法律的には,貸金業者が法律上の原因なくして利得(「不当利得」と言います)を得ている状態になり,借主は,その不当利得の返還を業者に対して請求することができます。


これが,過払金返還請求です。

 

◆ どのくらいの期間借りていたら過払金が出るの?
一概には言えません。

一般的には,例えば一定の金額を年利28%から29%の金利でずっと借り入れていた場合,7年から8年で,過払金が出始めるとは言われています。

ただ,人によって借り方,返し方にはむらがあります。貸金業者から取引履歴を開示してもらい,実際に計算してみないと,正確なことはわかりません。


一般的には,借入残高が右肩上がりの方は,多く払いすぎている金利が残高が少ない頃のもののため,取引期間がより長くないと過払金が発生しにくいとは言えます。

逆に,借入残高が右肩下がりの方は,取引期間がより短くても過払金が発生します。

 

◆ 過払金が出なかった場合は払いすぎた金利は無駄になるの?
過払金が出なくても,借入元金は減るのですから,無駄ではありません。
引き直し計算の結果残った借入金残高を,法律上支払うべき借金残高として,返済していけばいいのです。
これは,後でお話しする任意整理の形になります。

残高が減るのですから,毎月の返済額もぐっと減ることになります。
したがって,過払金が出なくても,債務整理をするメリットはあるのです。

 

◆ すでに返済し終わっている場合に過払金を請求できるか?
消滅時効にかかっていない限り請求ができます。
消滅時効は,最終取引日から10年です。
したがって,完済してから10年以内であれば請求できます。

 

◆ 取引の分断とは?
ここで気をつけて欲しいのは,一度その貸金業者からの借金を完済し解約をして,(多くの場合は勧誘があるのですが)再度同じ業者から借入をした場合,業者は2つの取引が別だと主張してきます(取引の分断の主張と呼ばれます)。

どうしてか

例えば,完済時に30万円の過払金が出ていたとしましょう。そして今日,50万円を借り入れます。

取引が続いているなら,次の返済日の引き直し計算は,50万円から過払金30万円を差し引いた20万円を元金として計算します。

一方,取引が別だとすると,過払金30万は別に置いといて(これはこれで請求できますが),次の返済日の引き直し計算は,借りた金額そのままの50万円の残高スタートで計算をすることになります。

両者を比べると,(上に書いた引き直し計算の理屈を思い出して欲しいのですが,)元金が減っていくスピードが大きく変わることになり,結局,過払金の金額に差が出てしまうのです。

業者としては,過払金が小さい方がいいに決まっているので,取引の分断を主張するのです。

さらに,完済したのが10年以上前であれば,取引が別だとされてしまうと,完済時の過払金が時効にかかって請求できなくなることになります(その場合でも,相殺には使えますので諦めないでください)。
ますます業者としては主張したいわけです。

この点は,過払金返還請求訴訟でもよく争いになる点です。

 

◆ 今でも過払金を請求すると返ってくるの?
武富士の会社更生法適用申請でもおわかりのとおり,大手の貸金業者も日々資金繰りが厳しくなっています。中小業者では,事実上取れないところもあります。

また,業者からの支払い率や支払い時期も,日々悪化しています。

いつまで回収できるかは貸金業者の体力次第です。悩んでいる暇はありませんrun

 

◆ 最後に
結局,過払金返還請求の説明だけで長くなってしまい,それしかお話できませんでした。
まだまだ過払金返還請求の細かい話はあるのですが,また別の機会にします。

とにかく法定金利よりも高い金利で借りている人,借りていた人は,できるだけ早く(貸金業者が倒産しないうちに)弁護士などの専門家に相談,依頼してください。

続きはまた次回にお話しさせていただきますgood


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