• 刑事事件
  • 所属弁護士
  • 用語集
  • よくある質問
  • コラム
  • リンク集

HOME > 旧コラム > アーカイブ > 借金問題: 2019年6月

旧コラム 借金問題: 2019年6月

現在のコラムはこちらから

破産、個人再生と保険の契約者貸付 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

債務整理と保険の契約者貸付のお話です。
 
債務整理のうち、自己破産、個人再生のお話になると、保険契約があるかどうかを必ず確認します。
保険の解約返戻金が財産と評価されますからね。

自己破産の場合であると、管財事件か同時廃止事件かの振り分けに直接かかわります。

個人再生の場合であると、最低弁済額を決める清算価値の問題にかかわりますね。

保険がある場合には、保険証券と解約返戻金証明書(証券上、解約返戻金の額あるいは解約返戻金がないことが明確な場合には保険証券のみで大丈夫です。)が必要書類になっております。
なお、県民共済あるいは月払いの自動車保険等は解約返戻金証明書が要求されません。
 
ところで、保険を長年かけているけど、契約者貸付を受けているというケースもあります。
今回は、保険の契約者貸付と自己破産、個人再生手続との関係をお話いたします。
 
まず、契約者貸付をうけている保険会社は債権者なのでしょうか?
 
実は、契約者貸付を行っている保険会社は破産債権者、再生債権者とは見られません。
借入れではなく返戻金の一部払い戻しを受けているとみられるからです。
 
定期預金担保の貸越と同じ扱いですね。その場合も銀行を債権者としてみません。
まあ、通常は定期預金を解約して清算してもらうことが多いですが。
 
そのため、弁護士が保険会社に対して受任通知を送る必要はありません。
裁判所に提出する債権者一覧表にも保険会社の記載は必要ありません。
債権者として扱わないので、必ず保険を解約しないといけないということにはなりません。
 
次は、財産評価の方法です。
 
本来の解約返戻金から契約者貸付分を控除した金額が財産評価額となります。
保険会社から解約返戻金証明書を取得すれば、そのような金額が出てくると思います。
解約返戻金が50万円あっても契約者貸付が40万円あったら、財産評価額は10万円ですね。
 
自己破産の場合、広島本庁では、保険解約返戻金が20万円を超えると管財事件の扱いとなります。
上の例であると、何もしていなければ解約返戻金が50万円なので同時廃止基準を満たさず管財事件になります。手間暇費用が余分にかかりますね。
契約者貸付を受けていると、保険の評価額は10万円です。
同時廃止基準だけで管財事件になるということは防ぐことができます。
勿論、契約者貸付金をどう使うかは慎重に扱わないといけません。
 
ただし、中には契約者貸付ができない保険もあります。
また、契約者貸付は解約返戻金の全額について受けることはできませんね。
 
そういうことで、解約をしないと管財事件になってしまうケースはどうしても残ります。
どうしても残したい保険であれば、管財事件で破産手続を進めて、自由財産拡張手続の中で当該保険を拡張対象として認められるように働きかけることになります。
 
個人再生の場合には、清算価値(財産評価額)に契約者貸付額を控除した金額を記載するだけです。
自己破産の場合と異なり神経質に考える必要はありません。
 
理屈上は、契約者貸付を受けて現金化すれば、自己破産における自由財産拡張対象として清算価値から控除しやすくなるということはあるでしょうか(個人再生では自己破産との均衡上、自由財産拡張対象相当財産分は清算価値から控除することができます)。もっとも、保険の形のままであっても、通常は自由財産拡張対象相当財産と認めてくれると思います。
 
債務整理(自己破産、民事再生、任意整理等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
https://www.nakata-law.com/
 
https://www.nakata-law.com/smart/


破産直前の財産の現金化 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

債務整理のうち自己破産と直前の現金化のお話をさせていただきます。

 

自己破産で現金化というと、クレジット枠の現金化も頭に浮かんできます。
クレジット枠の現金化は免責不許可事由と扱われています。違法な行為ですが、宣伝されていることもあって、よく目にする行為です。

程度が軽いと同時廃止で済んでいる傾向にありますが、金額・回数によっては管財事件になります。

追い詰められてクレジット枠の現金化に走るぐらいなら、弁護士に債務整理を相談してくださいね。

 

今回お話しする現金化は、自己破産申立直前に、保険の解約、定期預金の解約、車の売却、不動産の売却等、資産を売却・解約して現金化したケースのお話です。

 

なぜ現金化が問題となるのでしょう。

財産を隠匿・費消しやすくなるからですね。

場合によっては、不当な財団価値減少行為として免責不許可事由となり得ます。

 

広島本庁では、自己破産申立ての際、2年以内の財産処分について報告を求められています。
処分の内容と処分代金の使途の報告ですね。
直前の現金化はあまりお勧めできない行為であることは確かです。

 

当該処分の妥当性はよくよく吟味されます。申立時にはきちんと説明をします。

説明が不十分あるいは合理的な説明ができない場合には、管財事件になり、破産管財人がその当否を判断することになります。

特に不動産の任意売却が絡むケースでは管財事件になるケースが多いですね。
勿論、何年か前に住宅ローン債権者に促されて自宅を売却して残債が残っているというようなケースでは同時廃止で済んでおります。

 

一方、有用の資として利用するための現金化は相当の範囲内で許容されます。

有用の資とは、破産申立費用(弁護士費用含む)、必要な生活費、医療費、転居費用、葬儀費用、学費、公租公課の支払いなどですね。

どうしても必要な費用、あるいは債権者共同の利益になる費用です。

 

特に、申立費用、転居費用、明渡し費用を捻出するために資産を処分するということはよくします。
勿論、弁護士に関与してもらい、お金も管理してもらった方がベターです。

当職の場合は、後に裁判所にきちんと説明するために、売買なら値段設定や契約書作成から関与し、換金額が大きければお金を当職が管理し、有用な資と確認できる限りで依頼者にお金をお渡しして領収書等をもらう、ということまでやっております。
処分の結果として、後述の同時廃止基準の適用により同時廃止事件での処理が可能になるケースもあります。

 

不動産、車など日常生活に必要な物は、親族間での売買をすることも多いですね。

その場合には裁判所への説明により神経を使うことになります。資産隠し、低廉譲渡ではないかと疑いの目で見られますからね。

適正価格であることを説明できる資料を用意して、お金の管理も必ず弁護士が行うようにしています。
弁護士が関与する以上、きちんと説明できるようにしていただきます。
弁護士と裁判所との信頼関係にも繋がります。弁護士があまり無茶なことをすると破産裁判所の信頼を失ってしまうのですね。
弁護士の信頼は依頼者のために維持しないといけません。

 

なお、同時廃止基準(同時廃止事件と管財事件の振り分け基準)には、財産評価額の基準があります。

広島本庁では現金・預貯金は50万円、個別の財産は20万円の評価額を各超えると、管財事件になります。
ちょっと前までは財産全体で60万円を超えるかの基準だったのですが、全国的に基準を合わせてきているようです。

例えば、保険ぐらいしか財産がない場合、保険の解約返戻金が30万円だと、解約して預金化すれば基準上は同時廃止、保険のままだと管財事件となってしまいます。
資産を換価して預金の形にして(かつ有用の資に充てて)、同時廃止事件として申し立てることを考えないわけにはいきません。

 

保険の解約や契約者貸付を受けて同時廃止事件として自己破産を申し立てることは許容される傾向にあります(あくまでも広島本庁です)。
他の財産はどこまで許容されるかどうかはケースバイケースでしょう。

なお、あくまでも現金化前の財産として評価する裁判所もあるようです(その場合でも前述のとおり弁護士費用等有用の資に充てれば評価額は下がります)。

破産法上財産の基準時は開始決定ですから、開始決定時の財産の形で取り扱うべきだとは思っておりますが。

 

自己破産も法的手続ですから、法的な申立て方によって、選択される手続や問題視される行為が変わってくることは致し方ないことです。
当職のスタンスとしては、あくまでも破産法で許容される範囲内ですが、依頼者に有利な行為が可能である限りはその実現をサポートしたいと考えています。

 

イレギュラーなことをする場合、余計な説明や手間がかかることは仕方がありません。
破産裁判所が
OKを出しやすいようにきちんと資料を添付して説明をすることが大事ですね。
「〇〇弁護士は変なことはしない。」と評価されつつチャレンジすることを心掛けています。

 

債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

https://www.nakata-law.com/

 

https://www.nakata-law.com/smart/


破産と否認 [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

債務整理のうちの自己破産における否認についてお話をします。

 

否認とは破産管財人が否認対象行為の効力を否定して財産を取り戻すこととイメージしてください。

 

否認権は破産管財人が行使するものですが、自己破産申立て準備の際には、否認対象行為と見られる行為があるかどうか、あるいは否認対象行為と見られないようにはどのような説明・準備をするべきか、よくよく吟味しなければいけません。

当職も、破産管財人として否認権を行使することはありますし、申立代理人としては否認対象行為と見られないように財産処理や説明を工夫することはよくしていることです。

 

否認の要件は細かいので、機会があればまた説明しますが、弁護士に自己破産や個人再生を相談する場合には、資産を譲渡、贈与等移転している事実があれば必ず報告してくださいね。
また、親御さんが既にお亡くなりになって遺産分割が済んでいない場合、離婚をしたい場合、資産の整理をしようと思う場合などにも、必ず弁護士の意見を聞いて進めるようにしてください。
否認対象行為になるかどうか判断してもらわないといけません。

 

個人破産の場合、否認対象行為が疑われる場合には、それ自体で管財事件の扱いになることがある点にも注意してください。
なお、法人破産あるいは経営者の個人破産は管財事件になります。

 

否認には、狭義の詐害行為の否認と、偏頗行為の否認とがあります。

 

狭義の詐害行為否認は、その行為による破産財団の減少分取り戻す趣旨の否認です。

破産法160条、161条に規定されています。

①破産者、受益者とも債権者が害することを知ってした行為、②支払停止または破産手続開始の申立て後にした債権者を害する行為(受益者が当該事実を知っていたときに限ります)、③過大な代物弁済、④無償行為、⑤破産法161条規定の要件のもとでの相当な対価を得てした財産の処分行為、です。

 

偏頗行為の否認は、債権者間の平等を図る趣旨の否認です。

破産法162条に規定されています。

 

問題となることが多い点をかいつまんでお話していきます。

 

【経済的危機状態での資産処分行為】

破産直前の財産処分が問題となるのが破産法162条です。

勿論相当対価を得ているということが前提となっています。

財産の隠匿、無償の供与その他債権者を害する処分に該当しないか吟味されます。
破産者の特定関係人が取引相手である場合には、要件の推定規定があり否認しやすくなっています。

 

不動産、車、機械、事業譲渡、保険名義変更など、法人破産の会社整理の過程でよく出てくる話です。
勿論、個人破産の場合も例外ではありません。様々な相談を受けます。
破産法上問題なしと判断される見込みが相応にある限りで(そういう形で行えるのであれば)協力もさせていただいております。

 

後の破産手続を考えると、破産直前の財産処分は、弁護士に関与をしてもらって、相当な価格であること、有用の資に充てる目的等合理的な行為であることを弁護士が説明できるように行うべきです。

かつ、処分代金は散逸しないように弁護士が管理し、有用の資(破産申立費用、生活費、医療費、転居費用、学費、公租公課の支払、資産整理費用等)に充てるだけとするのが基本となります。

 

離婚に伴う財産分与慰謝料もこの点に絡んでくるでしょうか。

抽象的には、相当な財産分与慰謝料は否認の対象とはならないと言えるでしょう。
相当な範囲を超えると否認され得ます。
しかし、具体的な進め方も大事です、必ず弁護士に相談して進めてください。

なお、偽装離婚ではないかと必ず疑われます。個人的には経済的破綻を機に離婚をするということは決して不自然ではないと思っていますが。

 

【贈与等無償行為】

無償行為の否認もよく出てきます。

無償行為は、基本的に債権者を害する行為ですから、

破産者の詐害性を要件としない、

支払停止等の前6か月まで否認の対象が拡大されている、

受益者の悪意を要件としない、
など
軽減された要件で認められます。

 

親族への贈与行為、無償の営業譲渡などが問題となります。

仮にどうしても行う必要がある場合にはそれなりの理由があるはずです。

法的に問題がないと説明できるかどうか弁護士と事前に打ち合わせをして実行しなければなりませんね。

 

この点では遺産分割協議も問題となりますね。
遺産分割は財産行為ですから、否認の対象となります。
遺産分割が終わらないまま放っておいた事例を何件も扱っております。問題視は確実にされますが、説明の仕方によってはセーフの場合もあります。
必ず弁護士に相談して進めてください。

これに対し、相続放棄は否認の対象とはなりません。

 

【偏頗行為】

偏頗行為の否認は破産法162条です。

偏頗行為は、不公平な弁済、担保提供行為等です。典型的なものは一部の債権者だけに弁済をする偏頗弁済行為です。

支払不能状態または自己破産申立後の弁済行為等は、否認の対象となります。

支払停止後行為があった場合には要件が緩和され(受任通知が出された後はこれに該当します)、支払不能であったと推定されます(申立前1年以内のものに限ります)。

また、受益者が支払不能等について悪意あることが要件ですが、受益者が一定の関係者である場合には悪意が推定されます。

 

なお、所有権留保自動車の場合、所有者名義登録の仕方によって債権者に返すと否認対象行為として問題になることがあります。
かといって、財産として計上すると管財事件になるケースもあり、悩ましい問題です。

 

一方、個人再生では否認というものがありません。

ただし、否認対象行為がある場合、典型的には偏頗弁済がある場合には、その金額を清算価値に計上することになっております。
最低弁済額が大きくなることがありますね。
個人再生委員が選任されてその辺を吟味することもあります。

 

破産には細かいルールがあります。できるだけ早めに、破産に詳しい弁護士に相談をして準備を進めてください。

 

債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

https://www.nakata-law.com/

 

https://www.nakata-law.com/smart/


1

« 借金問題: 2019年5月 | メインページ | アーカイブ | 借金問題: 2019年7月 »

このページのトップへ