• 刑事事件
  • 所属弁護士
  • 用語集
  • よくある質問
  • コラム
  • リンク集

HOME > 旧コラム > 離婚問題 > 裁判離婚の話 3  【離婚問題】

旧コラム

現在のコラムはこちらから

< 調停離婚の話 2  【離婚問題】  |  一覧へ戻る  |  「リフォームには集会決議が必要?」  【消費者問題】 >

裁判離婚の話 3  【離婚問題】

弁護士の仲田誠一です。catface

 

 

離婚をするかどうかまだ悩まれている方の法律相談を受けることもよくあります。
その場合,離婚を決意された場合の法的な説明はもちろんするのですが,どうしても人生相談の様相を呈することになります。

特にお子さんが小さい場合には悩みますね。
相談者と一緒に,
離婚後の生活はどうするのか?」
「苦しい生活を我慢して続けることがお子さんの幸せに繋がるのか?」
「やはりお子さんにとっては両親が揃っていた方が幸せなのか?」
「あなたにとって一度しかない人生を我慢して費やしていいのか?」
「我慢し続けてあなたの心が耐えられるのか?」
などと悩むことになります。

考えは人それぞれです。そのため,自分の考えを押し付けないよう気をつけています。
ただ,私は,「あなたが幸せになることが,周りの幸せに繋がるはずだ。」と必ず伝えるようにしています。clover

私に相談に来られるのも縁です,どういう形であれ幸せになって欲しいと願うのみです。

と言っておいてなんですが,今回も離婚の話をさせていただきます。
前々回が協議離婚の話,前回が調停離婚の話でしたので,今回は裁判離婚の話を簡単にさせていただきます。



◆ 裁判離婚とは?
離婚について同意が成立しない以上,いよいよ裁判で離婚を求めるしかなくなります。

裁判離婚とは,離婚請求を認容する判決によってする離婚です(もちろん裁判の中で,和解・認諾がされると判決によらずに離婚することができます)。

日本の法制度上,裁判離婚は,法定の「離婚原因」がないと認められません。
裁判所によって相手方の婚姻継続の意思を否定して強制的に離婚を成立させるわけですから,この場合なら強制的に離婚させてやろうという「離婚原因」が法律で決まっているのです。



◆ 法定の「離婚原因」って何?
民法770条1項に次の5つが定められています。
① 配偶者の不貞行為
② 悪意の遺棄
③ 3年以上の生死不明
④ 回復の見込みがない強度の精神病
⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由



◆ 「配偶者の不貞行為」とは?
自由な意思で行った配偶者以外の者との性的交渉です。
一般的には浮気のことですが,ずいぶん前の判例で,夫から生活費をもらえない妻が生活のために行った売春行為を不貞行為であるとした例があります。

結婚すると,貞操義務が発生します。その貞操義務に違反すると,離婚原因になるだけでなく,慰謝料の支払い義務も負います。

「どこまでが貞操義務に反する行為なのか?」はまた面白い問題なのですが,機会があればご紹介します。



◆ 悪意の遺棄とは?
夫婦は,お互いに同居・協力・扶助義務を負います。正当な理由もないのに,夫婦のそれらの義務を果たさないことが「悪意の遺棄」です。
多い例が,相手を捨てて家出することでしょう。単に別居しただけでは当たりません。



◆ 3年以上の生死不明とは?
生存を示す最後の事実があった時点から3年間,生きているか死んでいるかもわからない状態が続いたことです。
生死不明の原因や責任は問われません。
失踪宣告でも婚姻関係を解消できますが,7年かかりますので,早く婚姻関係を解消したいときは,この離婚原因が意味を持ちます。



◆ 回復の見込みがない強度の精神病とは?
これは一見するとひどい法律だと感じられるかもしれません。
そもそも夫婦には,協力・扶助義務があるはずです。「配偶者が強度の精神病にかかって回復しないなら捨てていいのか?」と思われますよね。

ただ,一方で,相手と精神的な交流が全くできない中で,婚姻生活を続けることを強制するのも酷だとも言えます。法律はこの点を重視したものです。

この点,判例では,さすがに配偶者が強度な精神病であることだけでは離婚を認めていません。
病気の配偶者の今後の療養や生活について具体的な方途を講じ,ある程度前途に見通しがついた上でないと,離婚は認めない(後で触れる裁量棄却をする)としています。「具体的方途論」と呼ばれるこの考え方には,賛否両論あるでしょう。



◆ その他婚姻を継続し難い重大な事由とは
こ れまで書いた4つの離婚原因を具体的離婚原因と言いますが,最後の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」は,抽象的離婚原因と呼ばれます。先の4つの離婚 原因がなくても,婚姻が破綻して回復の見込みがない場合には離婚を認める,それは具体的なケースにより総合的に判断する,という意味の定めだからです。
離婚請求訴訟をする場合には,通常,4つの具体的離婚原因の主張と併せて,この抽象的離婚原因を主張して争うことになります(具体的離婚原因の立証に失敗しても,抽象的離婚原因の立証が認められれば訴訟に勝てるからです)。

どのような場合にそうと認められるかを説明するのは難しいです。度重なる犯罪行為による服役や,性的異常・性的不能,DV,著しい浪費癖,過度の宗教活動等のケースがあるようですが,あくまでも具体的な事情によって判断されます。

も ちろん,自分が不貞行為をしておいて,「婚姻関係が破綻したから別れたい」,と言っても,簡単に認められるわけではありません。そのような婚姻関係破綻に 責任ある配偶者からの離婚請求を,「有責配偶者の離婚請求」と呼びます。これを説明すると長くなるので,別の機会にお話します。



◆ 法定の具体的離婚原因があると認められれば必ず離婚できるのか?
そうではありません。
法律では,裁判所は,具体的離婚原因となる事実があったとしても,一切の事情を考慮して離婚を認めないことができるとされています。
「裁量棄却」と呼ばれるものです。先ほどの強度の精神病の所で挙げた例がこれです。



◆ 裁判離婚の場合,養育費や親権者はどうなるの?
離婚と一緒に裁判所に請求すれば,裁判所が決めてくれます。別途,調停・審判を経る必要はありません。



◆ 最後に
離婚のご相談は,簡単なようで難しいです。
感情の問題がおおきい点はもちろんですし,今後の長期間にわたる生活にも関わってくる問題だからです。
離婚問題は,弁護士にとって,デリケートに扱わないといけない事件の1つであることは確かです。

3回にわたって,離婚についてざっとお話しました。
離婚にまつわる細かい話は,機会を見つけてまたお話したいと思います。think


カテゴリ:

< 調停離婚の話 2  【離婚問題】  |  一覧へ戻る  |  「リフォームには集会決議が必要?」  【消費者問題】 >

同じカテゴリの記事

婚姻費用・養育費算定の際の「収入」とは [離婚問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一による離婚問題コラムです。
 
今回は、婚姻費用養育費算定における「収入」についての説明をさせていただきます。
 
実務上、婚姻費用養育費を定める場合には、婚姻費用養育費標準算定表あるいはその基になっている標準算定式が利用されます。
まだ新方式が採用されたものは見たことがありません。
 
算定表あるいは算定式では、お互いの「収入」と未成熟子の年齢および数によって数字が出てきます。
 
その「収入」が何かというお話です。
 
給与所得者については、前年度源泉徴収票の総支給額です。
市県民税課税台帳記載事項証明書では、給与収入の金額ですね。
 
自営業者ですと、確定申告の所得金額から社会保険料を控除し、現実に支払われていない専従者給与や青色申告特別控除額を加えるということなります。
減価償却額も加えるということもあります。
 
給与所得と事業収入が両方ある場合には、どちらかを他方に換算して合算した金額を年収と見て計算することになります。
この点は、以前の離婚問題コラムにおいて細かく説明したように思います。
 
これらが婚姻費用養育費算定の「収入」に関する基本ですが、絶対ではありません。
 
前年度収入が現在の収入状況と合っていない場合も多いですね。
その場合には、絶対に前年度源泉徴収等の収入を基に算定されるわけではありません。
 
例えば、前年度は無収入であったが今年度に就職した、あるいは転職したという場合がありますね。
そのような場合であれば、今年度の見込み収入で養育費婚姻費用が算出されることになるでしょう。
前年度収入で判断するのは不合理ですからね。
 
養育費婚姻費用を下げるために敢えて退職した、あるいは敢えて給料を下げたという事情があるケースには、それまでの収入状況を加味して収入が認定されることもあります。
 
理由がない無収入の場合、あるいは理由がない低収入の場合もあります。
そのようなケースでは、稼働能力が認められる限りにおいて、賃金センサスを用いて収入認定がなされることもあります。
賃金センサスとは、賃金構造基本統計調査の結果を性別・学歴・年齢等によってまとめたものです。
 
収入を擬制するのですね。
稼働能力が制限され得る事情によって賃金センサス上の年収の何割かを収入とするなど、ケース応じた判断がされているようです。
 
実務上は、交通事故でよく見る、所謂「赤い本」に記載されている賃金センサスによる年収を参考にすることが多いです。
ただ、賃金センサスは、毎年出ており、インターネットでも取得できます。
 
将来の減収が予定されているケースもあります。
増収・減収がほぼ確実で、見込額についても明確に予測できると客観的な証拠に基づいて説明できる場合には、それらの事情が加味されて収入とみなされることになるでしょう。
 
婚姻費用養育費の算定に当たって、標準算定表あるいはその基になっている算定式が一般に使用されているのは事実ですが、算定表ないし算定式に当てはめる収入をどう見るか自体に議論の余地があるということですね。
 
これに加えて、算定式あるいは算定表で考慮されていない事情(多くは特別費用ですね。)などの話が出てくることは珍しくありません。
 
今回は、婚姻費用養育費を考えるときには、単純に算定表を見れば済むわけではないのですよということをお話ししました。

養育費婚姻費用は算定表に当てはめればすぐ決まるという単純な話ではないことをご理解いただけたでしょうか。
 
離婚婚姻費用養育費財産分与等、離婚問題のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
https://www.nakata-law.com/
 
https://www.nakata-law.com/smart/


別居、離婚にともなう自宅不動産の退去・明渡し請求 [離婚問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一による離婚問題コラムです。
 
別居あるいは離婚しても自宅不動産の所有者が自宅を出て他方配偶者が自宅に居住し続けるということは珍しくありません。
 
今回は、そのような場合、不動産を所有する夫または妻は、他方配偶者に対して「家から出て行け。」と法的に請求することができるのか、
逆に、他方配偶者は不動産を所有する夫または妻からのそのような退去請求に応じなければならないか、のお話しです。
 
離婚の前と後で分けます。
その後、第三者名義の不動産の場合を補足します。


【別居中のケース】
別居中ということは婚姻中ということになります。

民法は、夫婦の同居、協力、扶助の義務を定めています。
同居義務などから、所有者ではない配偶者にも住居の使用権原、居住権が認められています。
 
婚姻関係が破綻していても基本的には同様です。
 
不動産を所有する配偶者からの所有権に基づく退去・明渡し請求は、請求を正当とすべき特段の事情がない限り、認められません。
 
また、使用貸借関係(無償での貸借関係)があるという理由で退去・明渡しが認められなかった例もあります。
別居開始時点において居住目的の使用貸借契約の黙示の成立を認め、別居時点では使用貸借の目的が消滅していない、あるいは解約は権利濫用だとするわけです。
 
実質的な夫婦共有財産だという主張もあり得ますね。
 
ということで、離婚が成立するまでは退去・明渡し請求は認められないと思った方がよろしいでしょう。
 
ただし、他方配偶者が居住権を主張することがDV等により許されるべきではないケースでは、居住権の主張が権利濫用に当たる、あるいは婚姻関係が破綻した同居義務による使用権原は認めないなどとして、例外的に請求が認められているようです。
 
なお、他方配偶者の使用権原が認められた場合、不動産を所有する夫または妻は、賃料相当損害金の請求も認められません。
婚姻費用の算定に考慮されるだけとなります。
 

離婚後のケース】
離婚が成立すると夫婦の同居・協力・扶助義務はなくなります。

離婚後までも居住を許す使用貸借の成立も認められないのではないでしょうか。
 
原則として、退去・明渡し請求が認められるでしょう。
 
ただし、離婚に至った事情等から、場合によっては退去請求、明渡し請求が権利濫用として排斥されることはあるでしょう。
 
勿論、財産分与で、他方配偶者が少しでも不動産持ち分を取得したのであれば退去・明渡し請求は認められません。
共有者には、使用権原が認められますから当然です。
 
その場合は、共有物分割請求による共有関係の解消あるいは賃料相当損害金の請求のみできることとなります。
 

【第三者名義の場合】
自宅不動査が夫あるいは妻の会社、親などの第三者の所有であった場合には、夫婦の同居・協力・扶助義務は表に出てきません。
 
使用貸借関係の趣旨・目的から貸借関係の終了あるいは解約が認められるかの問題となります。
事情により権利濫用として第三者からの請求が排斥された例もあります。
 
なお、配偶者名義であった不動産が別居中に売却されてしまうこともありますね。
勿論、通常は、人が住んでいたら売却できませんね。
 
仮に、売却されると第三者所有の物件となってしまいます。
 
売買の事情によっては、第三者からの明渡請求が権利濫用として排斥されるでしょう。
 
また、そうなる危険がある場合には、処分禁止の審判前の保全処分を申し立てることも検討してもいいでしょう。
 
離婚婚姻費用養育費財産分与等、離婚問題のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
https://www.nakata-law.com/
 
https://www.nakata-law.com/smart/


婚姻費用と特有財産、年金収入 [離婚問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
久しぶりの離婚問題のコラムの投稿かもしれません。

刊行物にて婚姻費用分担審判の抗告審例を見ましたので紹介をいたします。
 
別居中の夫が会社を経営し、役員報酬のほかに、年金収入がある、同社から役員報酬のほかに配当をもらっている、また不動産所得もあるケースで、婚姻費用が争われた事例です。
 
論点は2つあったとされています。

一つは、特有財産から生ずる法定果実(賃料収入と配当)が婚姻費用算定の基礎となる収入になるかです。

もう一つは、年金収入を算定表ないし算定式に組み込む(給与収入に換算する)場合の方法です。
 
まず、夫の収入が役員報酬に限られるか、配当、不動産所得も含まれるか、の問題です。
 
夫が経営する会社の株式及び不動産は夫が婚姻前から取得していたあるいは相続・贈与で得た特有財産であるということを前提として、
配当金や不動産所得は特有財産から生じた法定果実であり、婚姻費用分担算定の基礎となる収入に入らないと言えるかです。
                                      
大阪高裁は、特有財産からの収入であっても、これが双方の婚姻中の生活費の原資となっているのであれば、婚姻費用分担額の算定に当たって基礎とすべき収入とみるべきとしました。
 
勿論、特有財産は、原則として財産分与の対象になりません。
共有財産か特有財産かの区別は財産分与の場面で出てくるものですね。
これに対して、婚姻費用の分担義務は、自分と同じ程度の生活を保持される義務(生活保持義務)の場面だと言われています。
今までの生活を維持する義務ですね。
そうであれば、その収入が特有財産から生まれたかどうかは基本的には関係ないですね
 
裁判所は、その上で、配当金、不動産収入を含めた収入を基に裁判所が算定した婚姻費用金額と、従前に妻に支払われたとされる生活費とが、近い金額であることから、同居中の生活費の原資には配当金、不動産収入も含まれていたと判断したようです。
結果として、婚姻費用分担額算定の基礎となる収入に配当金、不動産収入も含めました。
理屈としては少しわかりにくいなあとは思います。
 
ただ、実際にこの点が争われることはあまりない印象ですね。
偶発的、一時的な収入(例えば一過性の株式譲渡益や不動産売却益)は別として、現に収入がある以上は、婚姻費用分担額算定に当たって考慮されるという感覚の方が多いのではないでしょうか。
 
続いて、年金収入を算定表の給与収入に換算する場合の計算方法についての判断もありました。
 
標準的算定表というのをご存知でしょうか。離婚成立前の婚姻費用離婚成立後の養育費の相場が出されている表です。
実務上はこの算定表(ないしその基礎となっている算定式)が金額決定の基準となっています。
勿論、必ずしも算定表どおり決められるわけではありません。個々の事情を勘案して金額は決定されます。
ただ、ベースはこの算定表ないし算定式であることは確かです。
 
標準的算定表ないし算定式は、お互いの収入とこの年齢・数により金額を算定する仕組みです。
基礎となる収入については、給与収入と自営収入(所得)の2本立てとなっています。
複数の収入がある、あるいはそれと違った収入がある場合には、給与収入あるいは自営収入に換算して収入金額を一本化して計算する必要があります。
例えば、給与収入と自営収入がある場合、自営収入を給与収入に換算する際、算定表のだいたい同じところを参考に給与収入に換算するということが基本です。
もっとも、自営の経費をどこまで認めるかなど実際の当てはめは単純ではありません。
 
標準的算定表ないし算定式上、給与収入には職業費(経費だと思ってください)が収入の20%程度考慮されています。
一方、年金はただ貰うだけですから職業費がかかりません。
そこで、年金収入を給与収入に換算する場合のルールが問題になるのですね。
 
裁判所は、年金収入は職業費を必要としておらず、職業費の割合は給与収入の2割程度であるから、年金収入を給与収入に換算した額は、年金収入を0.8で除した金額とすると判示しています。
これが唯一の方法でないのですが、高裁の判断は割合重いものですね。
 
裁判例を見て他の点も気になりました。
 
まず、審判も抗告審も、算定表をそのまま引用して金額を決定しています。
調停では、算定表でだいたいこの辺だから〇〇万円ですね、という話がよく出ます。
一方、審判、訴訟になると、算定表の下になっている算定式を使って金額を算出するイメージがあります。
この事件では、裁判所は、算定表の〇万円から〇万円の帯の中辺りだから〇〇万円というような判断をしていました。
このようなパターンもあるのですねと再認識した次第です。
 
また、原審から、夫の婚姻費用算定の基礎となる給与収入の金額について経営会社から妻に対して支払われていた給与も夫の報酬と同視されて合計額が夫の給与収入とされているようでした。
一人会社であるという特殊性もあるのだろうと思います。
 
婚姻費用養育費の算定は、一見簡単なようですが、突き詰めると論点がたくさんあり、奥が深い問題です。
 
離婚婚姻費用養育費財産分与等、離婚問題のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
https://www.nakata-law.com/
 
https://www.nakata-law.com/smart/


別居時に一方配偶者が持ち出した財産 [離婚問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

離婚に伴う財産分与のお話です。
別居時に一方配偶者が持ち出した財産のお話をします。
よくあることです。

 

財産分与の基準時は別居時が基本です。
別居時に存在した財産をベースに財産分与額が算定されます(別居時の財産を半分にするというイメージです)。

夫婦共同生活により形成された財産を清算するという清算的財産分与の要素が財産分与の基本だからです。

 

例えば車を持ち出したという場合は簡単です。
当然財産分与の対象となります(勿論、どうやって整理をするのか、車検の問題、保険の問題も絡んで面倒ですが)。

 

よく相談を受けるのは、別居前に預金から多額のお金が引き出されているという例です。

 

勿論、引き出されたお金が別居時に残っていたということであれば財産分与の対象となることは当然です。

 

よくわからないときが困りますね。

別居時に本当に近い時期の引き出しであれば、引き出した配偶者が何に費消したのか合理的な説明ができない限り、そのまま残っていたとみられる可能性が相応にあるでしょう。
また、多額の金銭が生活費に必要とは思われませんから金額が大きければお金が残っていると判断される方向になるでしょう。

ケースバイケースの判断になりますね。

 

別居直前の預金の引き出しは相続直前の預金の引き出しと考え方が近いですね。

 

相続直前の預金の引き出しの場合には、合理的な説明が引き出した相続人から出て来ない限り、遺産として残っていた、あるいは被相続人に無断でなされた不法行為として損害賠償請求権が遺産である、といった扱いになります。

 

ただ、離婚の際には、他方配偶者の預金の無断引き出し行為は直ちには不法行為になりません。実質的な共有財産と見られるからです。
実質的な共有財産なので名義人に無断で引き出しても直ちに違法ではないということですね。勿論限度はあります。

 

また、離婚の際には、他方配偶者の預金の無断引き出しは、婚姻費用との関係で処理される余地もあります。
そういう経験もありました。婚姻費用を支払ってもらえなかったので引き出して使ったのであるから婚姻費用の支払いと同視して財産に戻さないという扱いです。
調停段階のことですが。

 

さらに、相続の場合には被相続人の認知症がある場合などある程度期間を遡って預金の引き出し行為を問題とできますが、離婚の場合にはなかなか期間を遡るのは難しいです。
かなり前の引き出しであると突っ込み難い、あるいは突っ込まれ難いでしょう。財産調査の問題になるのだろうと思います。

 

他方配偶者名義口座からの多額の預金の引き出し行為は、褒められた行為ではないのは勿論ですし、トラブルの元になる行為ですのでお勧めはしません。勿論、やむを得ない場合もあることは承知しております。そういう場合には、あとで文句を言われることを承知で説明の準備をしてください。

 

また、婚姻費用をもらう立場からすれば、いつでも通帳、カードの紛失届をして持ち出した通帳、カードを利用できなくされてしまうことを念頭に置かなければなりません。

やはり、婚姻費用はできるだけ早くかつ正式に請求するべきでしょう。

 

子供名義の通帳、カードを持っていくという例もありますね。

少なくとも、子供名義の預金の原資が夫婦の収入であり、口座の管理も親がしているという典型的な例では、夫婦共有財産として清算的財産分与の対象となりますね。

逆の典型的なケースは、子供のお年玉、小遣いを貯めている通帳ですね。

微妙なケースもあり、その場合にはケースバイケースの判断になります。

学資のために積み立てていた等の預金の目的な財産分与とは直接の関係はありません。

財産分与は財産の整理の問題、学資は離婚後の養育費の問題と、別の問題となります。勿論、協議離婚、調停離婚であれば、養育費の問題と絡めて、自由に合意により解決ができます。

 

離婚問題は、判決による解決になると柔軟な解決ができない、かつケースバイケースの判断がなされて読みがたいという点が否めません。
できれば相応が譲り合って円満な解決を図れればいいとは思います。
そういうこともあり、離婚につきましては、調停段階では勿論、訴訟になっても一般の訴訟よりも和解的解決が図れるかどうか促されます。

 

個人的には、離婚の問題は、(最後までは)すべからく争うのではなく、主張に優先順位をつけて話し合いに臨む方がベターだと思います。
勿論、判決で片を付けないといけない相手というのも珍しくはないのですが・・・

 

離婚婚姻費用養育費財産分与慰謝料請求等、離婚問題のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

https://www.nakata-law.com/

 

https://www.nakata-law.com/smart/

 


財産分与における特有財産 [離婚問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

離婚に伴う財産分与のお話です。

 

離婚のご相談の際、「これは特有財産ではないか。」と質問される方が増えてきた印象です。

今は難しい本を読まなくても検索すれば情報が出てくるので、皆さんの法律の知識が増えていますね。

 

特有財産とは、

夫婦の一方が婚姻前から所有していた財産

婚姻中に相続・贈与等他方配偶者とは無関係に取得した財産

がメインですね(民法762条1項)。
 

衣服等明らかに一方配偶者の専用品として使用されている物も含むとも説明されますが、こちらは物によるのでしょうね。財産的価値がある物は特有財産と言い難いことも多いでしょう。車などは仮に専用品でも財産分与の対象となるのが一般的でしょう。

 

離婚の際の財産分与は、夫婦共同関係の基で形成された財産を精算することが主要目的です。これを清算的財産分与と言います。

清算的財産分与の対象は婚姻期間中に形成した財産ではなく、婚姻(内縁関係含む)から別居時までに形成した財産になります。
 

だから財産分与の基準時は別居時と言われます。それ以降は夫婦共同関係が基本的に存在しませんから。ただし、家庭内別居の際には基準が難しいのです(財産分与の基準時は離婚時とされるかもしれません)。

 

清算的財産分与の理屈から考えると、夫婦共同関係に基づかずに形成された特有財産は、原則、財産分与の対象とはなりません。

典型例は、婚姻前から貯めていた預貯金、自宅不動産購入の際に一方配偶者がその親から受けた贈与でしょうか。

 

特有財産は清算的財産分与の対象とならないとの理論自体は明確ですが、実務上の扱いは、そう簡単ではありません。

 

まず、特有財産かどうかということ自体が争われます。

 

例えば金銭の場合、独身前のお金、贈与を受けたお金がそのままの形で他のお金と混ざり合うことなく残っているのは稀でしょう。お金に色はついていませんから混同すると特有財産の特定が難しいことになります。
 

親からの贈与も一方への贈与なのか双方への贈与なのか判別が難しいことがあるでしょう。お金がいろんな物に変わっている場合も多いですね。


特有財産の主張をする場合には、どうしても証拠が必要です。
夫婦のいずれに属するか明らかではない財産はその共有に属するものと推定される(民法762条2項)とされているからです。推定を破る昔の通帳や贈与・相続時の通帳、それが現在の形になっている証拠ですね。

特有財産かどうかがゼロサムで判定されるのではなく、特有財産が原資になっていると思われる割合とそうでない割合を寄与度として調整して折り合いが付けられるケースもあります。

 

特有財産が他の財産と明確に区別できる場合も、他方配偶者がその価値の減少を防止し、その維持に寄与した場合には、例外的に財産分与の対象となり得ます。
分与割合は0.5とはいかないですが。具体的ケースにより寄与度は変わります。

親から贈与されたあるいは相続で引き継いだ不動産の維持管理の他方配偶者による寄与が分かりやすいですね。
預金も他のお金を遣ったために残っているという理屈で他方配偶者の一定の寄与があったとみられることもありました。

 

具体的なケースごとの判断になるので、特有財産の定義に当たるから財産分与の対象とはならないと機械的に考えることはできないのです。
勿論、特有財産は清算的財産分与の対象とならないという原則がスタートです。

 

次に、離婚に伴う財産分与には、清算的財産分与の要素だけではなく、扶養的財産分与慰謝料財産分与という要素も考慮されます。

扶養的財産分与というのは他方配偶者が生活基盤に乏しい場合などに考慮される要素です。

慰謝料財産分与というのは文字どおりです(慰謝料を別途支払う場合には考慮されませんね)。

そのため、特有財産も扶養的財産分与慰謝料財産分与の観点から財産分与の対象となることはあり得ます。勿論、分与割合は0.5とはいかないでしょうが。

 

特有財産と言えば、住宅を購入する際に、親からの贈与や独身時代のお金を頭金にしたという主張がよくされます。
自宅の財産分与に当たっては当然考慮されるべきことです。

その場合、購入費に占める特有財産が原資の頭金の割合が当該配偶者の寄与度にプラスされて財産分与割合が算定されるのがスタンダードでしょうか。

 

今回は、離婚に伴う財産分与でよく問題となる特有財産についてお話をいたしました。

 

離婚問題は杓子定規には進めることができません。他の問題でも多くは、原則はありながら、個別具体的な判断がなされます。

 

離婚婚姻費用養育費財産分与慰謝料請求等、離婚問題のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

https://www.nakata-law.com/

 

https://www.nakata-law.com/smart/


このページのトップへ