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収益物件の相続 [相続問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

相続問題の投稿です。

 

今回は、収益物件の相続をまとめてお話しようと思います。

収益物件とは賃貸している物件ですね。

 

相続が起きたとして今後の賃貸料の扱いが気になりますね。

賃料は遺産の果実です。遺産の果実は遺産そのものではないので遺産分割の対象外です。

賃料債権は可分債権なので、相続発生後の賃料は相続分に応じて各相続人に帰属します。

 

固定資産税等の管理費用はどうでしょうか。

民法上、相続財産に関する費用は相続財産から支弁することになっています(885条)。

それでは相続財産ではない家賃と精算できないですね。

しかも、マンションやアパートだと保守管理費用や清掃費用も出てくるところ、相続財産の管理費用か相続発生後の賃貸行為の費用なのか微妙な感じもします。

 

勿論、合意で解決する場合には、賃貸にまつわる費用は家賃から精算する(相続開始後の賃料から管理費用を控除した残額を分配する。)のが通常でしょう

 

相続物件たる不動産は、遺産分割前では、遺産共有状態です。
保存行為は各共同相続人単独で、管理行為は過半数持分で決めることになります。

固定資産税、火災保険の支払、不法占有者に対する明渡し請求あるいは破損部分の修繕などは保存行為として各相続人単独でできます。

その場合の費用の精算は上述のとおりの問題が出てきます。

 

相続預金口座は、相続発生の連絡により(中には銀行が新聞を見て動く場合もあります)、凍結されますね。
凍結されても家賃の振込入金は継続できるケースもあります。ただ、手続を踏まないと引き出せません。

 

同意ができる範囲で同意書を取り交わし、家賃等管理口座を作成して、賃借人に振り込み先の変更をお願いするのが現実的でしょうか。

 

実際には、事実上1人の相続人が管理を引き継いで振込みを受けることもありますが、他の相続人に対して清算義務が勿論あります。
かつ、本来は共同相続人共同の事業として各人が申告をしないといけないことになります(実際には代表して誰かが申告すればそれ以上突っ込まれないところですが)。
一人で申告した場合には後の清算の場面で所得税の扱いが面倒ですね(また、共同事業として各相続人が申告した方が税金は通常安くなります)。

 

遺産分割前に、空室について新規の賃貸借契約ができるかの問題もありますね。

新規の賃貸借は、管理行為になるか変更行為になるか争いがあります。

管理行為なら持分の過半数で決められる(民法252条)、変更行為なら共有者全員の同意が必要です(民法251条)

事例判断に依らざるを得ないことになります。目的不動産の利用形態、期間の長短がメルクマールとなるようです。

まず、利用形態を大きく変更する賃貸借は変更行為と見られるでしょう。

次に期間ですが、民法602条の短期賃貸借(土地5年、建物3年)であれば理屈上大丈夫でそうですが、借地借家法の問題があります。

借地借家法の適用のある賃貸借契約(通常の賃貸借は適用があります。適用がないのは、建物所有を目的としない土地賃貸借や一時使用目的の建物賃貸借などです。)であれば、短期賃貸借であっても更新がなされて長期間の契約になる可能性が高いのですね。そのため、変更行為と判断された裁判例もあります。

無難に考えるのであれば、借地借家法の適用のない短期賃貸借かつ利用形態を大きく変えない賃貸借は過半数持分の同意でできるというべきでしょうか。

更新の場合も、自動更新の場合には問題がなさそうですが、都度更新の場合には変更行為となる場合があるでしょう。

事実上、一人の相続人が管理をして賃貸借契約を締結するということもあります。それは法律的には無断賃貸借になります。

 

なお、賃貸借契約の解除は管理行為です。過半数持分での決定ですね。

 

このように、遺産分割前の収益物件の管理は法律的に見るとかなりややこしいです。


最近も、お母さまの相続後何年も一人の相続人が遺産分割なしで事実上ビルの収益管理を継続した上でその方も亡くなったという事例がありました。
遺産分割は勿論、不当利得返還請求や相続後の家賃・管理費用等問題が多岐にわたっており、訴訟で紐解くのも可能ながら効率的ではなかったため、なんとか和解的解決を図りました。

 

できれば、遺産分割前の物件管理等について合意書面を作っておく方がいいですね。

 

遺言、相続、遺留分減殺、相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

 

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