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従業員は転勤を拒めない?  【企業法務】

弁護士の仲田誠一です。catface
 
 
 
これから4月をピークに転勤が増えていくのではないでしょうか。

みなさんの会社では,転勤の内示を受けるのはどれぐらい前でしょう?

今 は知りませんが,私が勤めていた頃の銀行は,転勤の直前に突然に転勤を知らされていました。もともと銀行は,癒着や不正を防ぐために定期的に転勤があるも のなのですが,直前に知らせることで不祥事を隠せないようにする配慮もあったようです。もちろん,家族持ちにはもう少し早く話が来ていたようですが。



さて,企業は自由に転勤を命じることができるのでしょうか?逆に言うと,従業員は転勤命令には絶対に従わないといけないのでしょうか?

転勤は,ケースによっては,企業側の業務上の必要性が,従業員の家族生活やキャリア形成の利益と衝突してしまう場面です。

最近読んだ法律雑誌に面白い記事が載っていたため,今回は,転勤命令のテーマをお話します。



◆ 企業に転勤命令権はある?
従業員に対する転勤命令権(法律的には「配転命令権」ということが多いです。)が企業にあるのでしょうか?

もちろん,勤務地・職種の限定がある労働契約を結んでいる場合には,従業員の合意がない限り配転はできません。一般的な契約の場合の話です。

少なくとも,就業規則上に転勤命令条項(転勤に関する条項)があり,勤務地限定の合意がない限りでは,企業側に転勤命令権が認められています。
就業規則の定めを確認しておいてくださいね。



◆ 企業は自由に転勤を命令できる?
結論を先に言うと,企業側に広い裁量が認められますが,完全に自由ではありません。

判例では,
① 企業側は業務上の必要に応じて,その裁量により広く転勤を命令できる,
② しかしそれは無制約ではなく,不当な動機・目的がある場合や従業員に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を追わせる場合など,特段の事情がある場合には,企業の配転命令権が権利の濫用として許されない。
としています(表現は噛み砕いています)。

つまり,企業に業務上の必要性がある限りで,「原則」的に従業員に転勤を命令できるが,従業員にあまりにも不利益を与えてしまうようなひどい場合には,「例外」的にそれは許されないということです。

上に要約したのは,昭和61年の最高裁判決です。事例は,母の扶養や妻の仕事の都合から従業員が単身赴任を強いられるケースでした。
裁判所は,業務上の必要性を幅広く認めた上で,単身赴任を強いられるような不利益は従業員が普通に我慢すべきだから企業側の配転命令拒否を理由とする懲戒処分は有効だと判断しました。



◆ 最近の裁判所の判断の傾向は?
最近読んだ法律雑誌で次のような記事を読みました。

大企業では転勤命令に際して従業員の意向を確認する例が増えてきた。
また,最近の裁判例で,転勤に伴う従業員の新幹線通勤や単身赴任の不利益などを認め,企業側が敗訴する例が増えてきた,という趣旨の記事です。

時代は変わりつつあるようです。
従業員の健康,育児・介護を重視する法律ができ,家庭生活を重視する風潮も定着しましたね。
裁判所もそれを構成する裁判官は世代が交代していくわけです。それに伴い,時代にあった判断がされるようになるのです(かなりのタイムラグがあるのが通常ですが・・・)。



◆ 最後に
その当否は別として,会社に滅私奉公するという時代は既に過去のものとなっているようです。
企業の転勤命令も慎重に行使しないといけなくなったわけでして,それに限らず,企業のコンプライアンスも,その時代に合わせた対応をすることが必要なようです。

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