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「生命保険金は遺産になるの?」 1 【相続問題】

弁護士の仲田誠一です。

 

法人税が5%下がるようですね。個人事業主である私には関係ない話ですが...

経済浮揚策として個人的には異論はあるのですが、結果を出してくれれば文句は言いません。

とくかく結果を早く出して欲しいですね。

 

今回は、相続の際によく問題となる生命保険金の扱いについてお話したいと思います。

相続のご相談を受ける際、生命保険金はどうなるのかよく質問されます。生命保険金も遺産に含めて考えていらっしゃる方が多いようです。一般の方の感 覚では、特定の相続人が、生命保険金をもらった上で、他の遺産を法定相続分に従って受け取るというのは不公平だと感じるのでしょう。

 

では法律上の扱いはどうなっているのでしょうか?

 

◇ 生命保険金は「遺産(相続財産)」に属するのか。

 

いくつかの場面に分けてお話します。結論から申し上げますが、特別な事情がない限り、生命保険金は遺産(相続財産)には含まれません。

 

1 保険金の受取人として特定人が指定されている場合

この場合には、契約(法律的には第三者のための契約になります)の効果として、保険金請求権を指定された受取人が自己の固有の権利として取得することとなります。

わかりやすく申し上げると、亡くなった方が保険会社に「私が死んだら保険金をこの人にあげてください」とお願いしていたため、保険会社はその依頼に基づい て受取人に保険金を支払うのであって、受取人が相続の効果によって亡くなった方の財産を取得するのではない、という理屈です。

したがって、生命保険金は相続財産に含まれず、遺産分割の対象ともなりません。

 

2 保険金の受取人を単に「相続人」としている場合

この場合にも、理屈は上と同様で、生命保険金は指定された「相続開始時の相続人」が固有の権利として取得することとなります。

相続人法定相続分に応じて保険金請求権を取得することになりますが、相続によって取得したわけではないのです。

もっとも、この場合には、遺産分割協議の中で、事実上分割の定めをすることが多いと思います。

 

3 保険金の受取人を指定しなかった場合

相続人による指定がないため、保険約款あるいは法律に従うことになります。

多くの場合、保険約款に「受取人指定がない場合には相続人に支払う」旨定められていると思います。

その場合には、結局上の2のケースと同様の扱いとなります。

 

◇ 生命保険が遺産に含まれないとすると不公平では?

 

以上のように、生命保険金は遺産(相続財産)に含まれず、遺産分割の対象にならないのが原則です。

 

でも、生命保険金は通常高額なものですよね。始めに書きましたが、他の相続人は不公平感を持ちます。

 たとえば、相続人が長男、長女の2人で、生命保険金が3000万円、遺産は預金の1000万円だとしましょう。保険の受取人が長男と指定がある場合、長男 は3000万を固有の権利として受け取り、その上で預金から500万を相続により取得します。一方、長女は500万しか相続しません。

 

でも保険料って被相続人の財産から支出されていますよね。長女からするとやはり不公平だと感じます。

 そこで、判例により、不公平が著しい場合には、上記の理屈の結果が修正され、不公平を是正する方策が認められています。次回にその辺をお話したいと思います。

 


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