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「生命保険金は遺産になるの?」 2 【相続問題】

弁護士の仲田誠一です。

前回、生命保険金は特別な事情がない限り遺産(相続財産)に含まれない、でもそれでは不公平ではないか、ということをお話しました。
今回は、前回お話しかけましたが、裁判所により不公平の是正がどのように図られるかについてお話します。
 
◇ 裁判所はどうやって不公平を是正するか?
裁判所による不公平の是正の理屈を簡単に言えばこうです。
生命保険金は遺産には属しない。しかし、不公平が著しい場合もある。その場合には、生命保険金は特別受益には
該当しないのだけれども、不公平を是正するため特別受益と同じような扱いをする。
ちなみに、特別受益(生前贈与などのことです)と同じような扱いをするということは、各相続人の相続分を算定する計
算の中で、生命保険金を「持ち戻し」、計算の基礎となる財産に加算するということです。

◇ どのような場合に不公平が是正される?
では、例外的に生命保険金が特別受益のように「持ち戻し」の対象となるのはどのような場合でしょうか?
 
結論から言えば、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が著しいと評価される特別
な事情がある場合です。
そして、その判断は、①保険金の額、②その額と遺産総額との比率、③同居の有無や介護への貢献の度合いなど被
相続人との関係、④各相続人の生活実態等、の諸般の事情を総合してなされます。
 
つまり、相続財産と保険金額の対比をベースにして、保険金を受け取った相続人がさらに相続財産も法定相続分に従っ
て受け取るのはさすがに不公平だろうと思えるかどうか様々な事情を考慮して考える、といった理解でいいと思います。
 
実際の例を紹介しますと、相続財産と保険金額の対比という点では、相続財産:保険金の割合が、10:1、15:1あた
りが否定され、1:1、8:5あたりが肯定された例があるようです。
ただし、あくまでも、金額だけではなく、様々な事情が総合考慮されますので、単純に結論を読むことはできません。
 
2回にわたって遺産相続における生命保険金の扱いについてご紹介しました。
少し難しかったと思いますが、「生命保険金は遺産には属さない、ただ不公平が著しいときは特別受益と同じ扱いがされる」とだけでも覚えておいてください。

 


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