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「遺留分って何?」 【相続問題】

弁護士の仲田誠一です。
本格的に寒くなってきましたね。
昨日は広島市内でも雪が少し降っていました。
 
さて、これまで何度かお話の中で出させていただいた「遺留分」という言葉について、まだきちんと説明できていなかったと思います。
そこで、今回は「遺留分」についてお話しようと思います。
 
例えば、あなたの親族として母親と兄弟2人がいるとします。
お母様が亡くなられた後,「長男にすべての遺産を相続させる」という内容の遺言が出てきたとしましょう。
あなたが「遺言はちゃんと作られたようだけど、長男ばかりが母親の世話をしていたわけではないから私の取り分が全くないというのは納得できない」と思ったら、それが遺留分減殺(げんさい)請求の場面になります。
 
遺留分制度とは?
原則として、被相続人が遺言などで財産をどのように処分するかは自由です。故人の財産だから当然ですよね。
ただ、それでは不公平な場合もあります。
 
そこで法律は、相続が発生した際、配偶者,直系卑属(子、既に亡くなっている場合は孫)、直系尊属(通常は父母)に対して、最低限の一定額の相続財産を確保することを認めています。それが遺留分です。
遺留分を認められている人を「遺留分権利者」、遺留分を請求することを「遺留分減殺請求」と言います。
 
最初にお話しました特定の相続人にすべて相続させる遺言のように、法律で一定割合に決まっている「遺留分」を侵害する遺言などがある場合、子などの「遺留分権利者」が希望すれば「遺留分減殺請求権」を行使して、相続財産を取り戻すことになります。
あくまでも、被相続人の財産処分が自由であることが前提です。そのため、希望する遺留分権者が自ら遺留減殺請求をすることが必要で、自動的に遺留分が認められるわけではないことにご注意ください。
 
◇ 兄弟姉妹には遺留分の権利はないんです
ここで気をつけて欲しいのが、兄弟姉妹はほかに相続人がいない場合に相続人にはなりますが、遺留分の権利者ではありません。

以前,遺言の話をしたときにも触れましたが、夫婦と兄弟姉妹(既に亡くなられていたら甥・姪)だけの親族構成の場合、夫婦の一方がなくなられたら兄弟姉妹にも相続分が発生してしまうのが原則です。
そこで遺言が大事になるのです。
夫婦の一方にすべての財産を相続させる遺言さえ書いておけば、財産の散逸を防ぐことができます。兄弟姉妹は遺留分がないから文句が言えないのです。自宅不動産が相続財産である場合に非常に重要な話になります。
 
確かに、遺言がなくても、兄弟姉妹が遺産分割協議の中で,あるいは相続放棄をして、丸く収めてくれるケースが多いでしょう。しかし、財産を目にすると人が変わるケースもあります。トラブルになったら取り返しがつきません。備えあれば憂いなし!です。
 
遺留分の割合とは?
遺留分の割合は、直系尊属だけが相続人であるときは相続財産の3分の1、それ以外の場合には2分の1です。
最初の例で言いますと、相続人は子3人です。全体の遺留分は2分の1になります。個々の相続人遺留分は、全体の遺留分に各自の相続分をかけると出ます。
子が3人で相続分は3分の1ですから、結局あなたの遺留分は6分の1となります。
 
◇ いつまでに遺留分を請求すればいいのか?
先ほども書きましたが、遺留分は請求しないともらえません(これを「遺留分減殺請求」と言います)。
もちろん、権利を行使しないと時効にかかります。

それが結構短いんです。
遺留分減殺請求権は、相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から、1年間権利を行使しないときは時効にかかってしまいます。先の例で言うと、遺言の存在を知ってから1年間ということになります。
そのため、少なくとも1年以内に証拠が残る内容証明郵便で請求してください。ただ、請求の内容が法的に遺留分減殺請求と認められなければ意味がないので、専門家に相談して請求するのが無難です。

また、相続開始のときから10年経過しても時効にかかってしまいます。遺言を知らなければいつまでも行使できるというわけではないんです。
 
◇ 実務では?
遺留分を減殺したいという場面では、そもそも遺言の有効性に争いがあるケースが多いです。
なかなか遺言を無効だと主張するのは証拠が乏しい点で難しく、特に公正証書遺言の場合に遺言の効力を覆すのは難しいです。「この時期の遺言は絶対におかしい」と言えるような証拠がある場合には,遺言無効確認訴訟と遺留分減殺請求訴訟を合わせて検討することになります。

また,遺留分減殺請求をする時点では、相手方は既に遺言等によって財産をもらっているケースが多いです。そのため、実際に相手方から取り戻すのに苦労するケースもあります。できるだけ早く権利を行使しましょう。
 
◇ 最後に
遺留分減殺請求については、法律的に難しいところが多々あります。
是非、お早めに専門家にご相談ください。

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