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「セクハラ行為が判明したら?」【企業法務7-2】

弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。catface


みなさん,時々どうしても食べたくなるものってあるでしょうか?

私は,宅配ピザと宅配カレーです。restaurantしょっちゅう食べるわけではないのですが,数ヶ月に一度は食べたくなります。
宅配ピザは,生地が分厚いアメリカンなやつが大好きです,端っこのパン生地がどうしても食べたくなります。
カレーは,チキン煮込み+イカフライ,400グラム,1辛,と注文するものが決まっています。

カレー屋さんについては,学生時代にバイトをしていた弁護士が未だにそのカレーのファンでいるようなので,しっかりした企業なのでしょう。

食べ物関連の職場で働いたことがある人から,二度と食べたくない,○○が嫌いになった,などの話を聞いたことはありませんか?

内部の人,内部にいた人からのよい評判は,企業の力強い宣伝になります。しかも,そのような企業では従業員が誇りを持って働いており,企業全体の活気があります。

銀行員時代,たくさんの企業を見てきましたが,企業ないし従業員の活気と,企業業績は比例するケースがほとんどでした。
活気があるから業績がいいのか,業績がいいから活気があるのか,それは難しい問題です。おそらくは,両者とも正しいのでしょう。相乗効果で企業が成長していくのだと思います。


前回は,セクハラの一般的なお話をしました。書かせていただきましたが,セクハラは企業活力に対するサイレント・キラーです。
無いのが当たり前のことを対策することは億劫かもしれませんが,無いのが当たり前だからこそ対策をする必要があるとも言えるのです。


◆ 企業のセクハラ対応が問題となるケース

企業のセクハラに対する対応が問題となるケースには,前回のとおり,企業に対する責任を追及されるケースだけではありません。

セクハラをした従業員に対する処分や転勤命令を巡って,加害者側の従業員などから争われるケースもあります。

企業にとっては,セクハラの被害者から訴訟などで争われるだけでなく,対処を誤ると加害者からも争われることとなります。


◆ セクハラに対する事前の対策

前回お話した「職場環境配慮義務」の内容のとおり,事前の防止措置としては、セクハラに関する方針を明確にして周知・啓発することや相談体制の整備が要求されます。

抽象的には,企業の規模に応じた措置をとればいいとは思います。

最低限,就業規則やセクハラ規程の作成などによって,従業員にセクハラ禁止の方針を伝え,セクハラが起きたときの処分内容を周知することが必要でしょう。

できれば,セクハラに関する講習会や勉強会もすればいいと思います。
顧問弁護士に講習させるもよし,役所などがやっている講習に従業員を派遣してその従業員に勉強会を主催させるなどでもよいでしょう。

相談体制の整備は,ホットライン(直通相談電話)の整備やラインから独立した相談部署の設置などですが,企業規模によっては難しいことです。
企業規模に応じてできるだけ被害者が相談しやすいような体制を作る必要があります。相談担当を決めること(基本的には社長直轄),相談によって一切不利益を被らないという方針の周知は必要でしょう。


◆ セクハラをした従業員に対する対応

まずは,真偽を確かめる必要があります。そして,できるだけ早くに対処をしないといけません。

処分が遅い,ということは,それだけで職場環境配慮義務違反になるおそれがあります。

公平な措置,迅速な措置が従業員の士気を低下させない唯一の方法です。

場合によっては,経営者の迅速・厳正な対処が,従業員の一体化・忠誠心の向上という,プラス面に転じることも期待できます。

従業員に対する対処としては,始末書提出,訓告,訓戒,配転,減給,退職勧奨,解雇,懲戒解雇などがあるでしょう。


◆ 事案の客観的な把握が必要

処分が後で問題となる場合,セクハラ行為の証拠が必要になります。

そのため,ある程度客観的な証拠,例えば第三者たる同僚の証言やメール・手紙などが必要でしょう。

もちろん,加害者とされる従業員が認めるならば,始末書等を書かせて証拠化するのもいいでしょう。

客観的に間違いないだろうと判断できることが必要です。

被害者の一方的な思い込みというケースも,多くはないでしょうが,絶対にないとは言えません。


◆ 事案に即した適正な処分や措置が必要

ある程度客観的に事案を把握したら,次に,できるだけ早く対処をする必要があります。

ここで大事なのは,客観的に妥当な,公正な判断をすることです。

加害者が力のある従業員だからといって,穏便に済ますようなことがあると,被害者だけではなく,他の従業員はどう感じるでしょう?
力のある従業員を守って,返って,企業活力全体を下げてしまう,という結果を招きかねません。

逆に,厳しすぎる処分などをしても,後で争われることになりますいようです。

例えば,裁判例を見ると,いきなり懲戒解雇というのは認められ難いようです。

まずは,企業側に,その従業員に対して行動を是正させるべく,注意,警告,より軽い懲戒をすることが要求されるようです。それには,早期のセクハラ発見が必要になりますね。

配転や退職勧奨,そして普通解雇なども,行為の内容や職場の環境などの諸条件によって,有効性が判断されているようです。

そのため,加害者従業員に対する処分や処置は,慎重に行わないといけません。
できれば,弁護士に相談しながら対処を決めるほうがいいでしょう。

何度も言いますが,企業の対処は,法律的な有効性はさておき,従業員が注目しています。被害者が「もういいです」と言っても,厳正な経営判断が必要でしょう。


◆ 最後に

セクハラに対する社会の見方の変化によって,認められる損害賠償額も大きくなっていますし,ある程度厳しい処分も有効だと考えられて来たような気がします。

セクハラの企業に対するリスクの大きさも時代の変化に応じて大きくなっていると思います。

何度も言うようですが,企業も時代に応じた対応が必要です。

自社の対応が十分か,再検討をしてみてください。


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