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交通事故の被害者と自己破産 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

債務整理をしないといけない方が交通事故に遭った場合、特に自己破産を選択されている場合のお話をします。

 

交通事故の被害者には不法行為に基づく損害賠償請求権を取得しますね。それが自己破産手続においてどのように扱われるかというお話です。

 

自己破産においては、財産は破産手続開始決定時が基準となり整理されます。同時廃止事件になれば財産はそのまま残せる、管財事件になった場合には最終的に自由財産拡張手続によって認められた範囲で財産を残せるということになります。

 

交通事故による損害賠償請求権は自己破産手続の中でどういう扱いになるのでしょうか。

破産開始後に交通事後に遭われた場合は難しいことを考える必要がありません。
損害賠償請求権は新得財産として無視されます。
なお、個人再生の場合には、清算価値の計算の基準時が開始決定時ではないため、理論上、開始決定後でも早くとも再生計画提出までの交通事故による損害賠償請求権が清算価値に影響を及ぼしうるということになります。

 

破産手続開始決定時において損害賠償金が既に入金されている場合はどうでしょうか。
損害賠償金は開始決定時点では既に預金、現金等の形の財産となっているので、開始決定当時の財産として評価されます。

財産全体として自由財産拡張の範囲(原則99万円が限度)を超える部分は財産に組み入れることになります。

財産に組み入れるとは、管財人に引き渡すという意味です。
財団に組み入れられたお金は、手続費用、管財人報酬、配当等に回されます。

 

破産手続開始決定時点においてまだ損害賠償金が入金になっていない場合はどうでしょうか。

やや複雑です。

 

物損など純粋な財産的損害に基づく損害賠償請求権は、財団に帰属します。
自由財産拡張の対象にもならない傾向のようです。財産が残っているか損害賠償の形かの違いだからでしょうか。厳しいなあと感じますが、ケースによっては拡張対象となることもありうるのではないでしょうか。

 

財産的損害に基づく損害賠償であっても、給与の代わりの性質を持っている休業補償や逸失利益、あるいは治療に直接関係する介護費用や入院雑費は、自由財産の拡張対象となり得ると考えられているようです。
ただ、拡張対象範囲を超えるものは取られてしまうことになりますね。

 

精神的損害に基づく損害賠償(慰謝料請求権)については、また違う扱いになります。

慰謝料金額が確定するまでは破産財団に属しません。財産とみなされません。慰謝料請求権は、それを行使するかどうかはその人にまかされているからです(行使上の一身専属権)。

しかし、破産手続中に金額が確定した場合には、破産財産に属します。自由財産の拡張対象とはなります。拡張対象範囲を超えるものは取られてしまうことになります。

 

破産準備中に事故に遭う、交通事故に遭ったため債務の返済の継続が難しくなるというケースも時々接します。そういう場合には上述のようなことが問題となるため考えて対応しなければなりません。

   

債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

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