旧コラム

現在のコラムはこちらから

租税法とは [税法の話1]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

広島大学大学院法務研究科にて平成27年から租税法の講義を担当しております。
客員准教授と固い肩書ですが、司法試験を目指す生徒さん相手にざっくばらんなお話をさせていただいております。

 

租税法は本当にわかりにくいです。

 

租税法は、申告納税制度を採用しています(制度上は確定申告をしないでいい給与所得者は例外扱いです。)。
したがって、租税法は国民の申告マニュアルの機能を有しているはずです。

本来は誰が見てもわかるようにわかりやすくないといけないのですね。

租税法は国民の予想可能性、法的安定性を保障しないといけないのです。

 

しかし、わが国の租税法は特にわかりにくいと言われています。

所得税法、法人税法、祖相続税法等の法律自体、専門家が読まないとわからないものですし、租税特別措置法等の特別法が絡んでくるともう厳しいですね。
正直、私も把握しきれません。

 

なお、租税法がわかりにくいこともあって、通達というものがあります。租税の世界は通達行政の代表選手です。

でも、よく誤解があるのですが、通達は行政機関内部の連絡等文書であって租税法ではありません(税理士さんとよくお会いしますが、税理士試験は通達を勉強するもので法律を勉強するものではないと自嘲気味におっしゃいます)。

 

わかりにくい租税法ですが、経営や生活に直結する世界です。少しでもご紹介していこうと思います。
どれだけ書けるかわかりませんが、授業の進行に合わせて投稿しようかなと思っています。

 

今回は、租税法の世界の大きな特徴2つをお話しします。

 

まず1つ目は租税憲法です。

 

租税法の解釈は、憲法が強く反映されます。
法律なので憲法に則らないといけないのは当然ですが、ボストン茶会事件の「代表なくして課税なし」に代表されるように、近代憲法制定の大きな動機の1つが国王の徴税権を制限するということだったのです。市民が闘争を経て勝ち取ったのが徴税権の制限なのです。

その流れを汲む日本国憲法も、租税には気合が入っており、少ない条文の中で2条も租税関係に費やしています。憲法84条と30条ですね。
国民の財産権を直接侵害する租税については気を遣っているのです。

そのため、租税法は常に憲法に立ち返って解釈されることになります。租税憲法と言われるゆえんです。

 

その憲法も、時には相反する要請を内在します。

 

まず、租税法律主義です。「代表なくして課税なし」です。

国民の代表である議会が制定した法律でなければ租税を課すことはできないということですね。

なんでも法律で明確に決めるということが要請されます。

 一方、法の下の平等を定める憲法14条からは、租税公平主義が導かれます。

法律を柔軟に解釈して公平な課税をすることを要請されます。

 この2つの要請は相剋することがあるのです。租税法の解釈の争いは、この2つの要請が対立する場面でよく起こります。

勿論、基本は、租税法律主義が優先します。憲法にはっきり書かれていますからね。

 

2つ目は、租税法のスタンスです。視点といってもいいかもしれません。

 

民法、商法等、いわゆる私法は、私人-私人間の法律関係を規定しています。

 

一方、刑法、行政法等、いわゆる公法は、国-私人間の法律関係を規定しています。

 

租税法はどうでしょうか。少し特殊です。

税金を賦課する場面では国-私人間の法律関係を規律するものであることは勿論です(租税法律関係)。

しかし、物が人から人へ動いただけでは、税金はかけられません。

例えば、売買には所得税、贈与には贈与税(贈与税は相続税法に規定されています)と、私人間の法律関係でどのような契約が原因で物が動いたかによって税金が違います。
売買なのに贈与税を課税してはいけませんよね。

このように、私人-私人間の法律関係を規定する私法上の法律関係を前提に、国-私人の租税法律関係が構築されるのです。

従って、租税法の解釈(課税関係の分析)についても、第1次的には私法の解釈が必要です。
経済取引事実の発生があり(モノとカネが動いた)、それを私法上の要件事実(モノの所有権移転約束と代金支払約束)に当てはめて法律構成し(売買契約)、当てはめるべき租税法(所得税法)を解釈運用する、ということです。

 

結局、租税法は、(私人-私人)-国の関係が上から見ているイメージでしょうか。

 

租税法のお話にニーズがあるのかどうか不安ですが、これからも投稿していこうと思います。

 

お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

https://www.nakata-law.com/

 

https://www.nakata-law.com/smart/


アーカイブ 全て見る
HOMEへ
082-223-2900

PCサイト