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所得税法のお話に入ります [税法の話4]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

所得税法のお話に入りましょう。


所得税とは、文字どおり、所得にかかる税金ですね。
 

所得税のメリットは、担税力に応じた課税の実現という租税公平主義の要請に適合することと言われます。所得が多い人が少ない人よりも支払う税金が高いですからね。


さらに、日本の所得税が典型的ですが、担税力の差異に着目した所得分類が可能(所得の種類によって税金を変えられる)、担税力に影響ある人的要素人的控除に反映できる(〇〇控除などですね)、担税力を表す所得金額の大きさに応じて累進課税が可能(日本は超過累進課税です)ということも挙げられています。


所得税のデメリットは、正確に所得を捕捉するという税執行上の困難性が挙げられています。そこで、納税者番号制度導入云々の話になるのですね。

 

【課税単位】

所得税は、個人単位で課税されます。昔のように戸単位ではないのですね。


個人単位で課税されるとして、所得税は累進課税ですから所得が大きくなればなるほどその分税率も高くなります。
結果、1000万円の所得があるとして、それを
1人の所得として申告するよりも、2人の所得に分散して申告した方が(例えば500万円ずつ)、各人の所得税率は下がりますから全体の所得税は小さくなります。

同族経営の会社は、社長さんだけ役員報酬をたくさんもらうよりも、家族の役員報酬にも回した方が、所得税は安くなります(配偶者を役員にして相応の報酬を出しているケースでは離婚の際には困ったことになりますが)。
勿論、役員報酬の金額には合理的根拠も必要でしょう。

 

所得の分散が節税になるのですね。そこで、不当な所得分散を防ぐべく手当もされています。


事業の経営主体に事業からの所得が帰属するという事業主基準で判断されます。

原則として家族の1人が得た収入についてはその者にのみ課税をして、課税後の家族内の金銭等の移転について税法は関知しない建前になっています。

家族間での生活費の支払いや利益提供が行われても支払者側では控除できず(所得税法45条の家事費・家事関連費)、受領者側でも課税されません(所得税法9条、相続税法21条の3)。

 

親子歯科医師事件と呼ばれる高裁判決があります。
親子で歯科医師を開業しており、子は自分の事業として申告したケースですね。
事業主基準(が前提とされて、父親の単独事業に子供が参加した場合、特段の事情がない限り、父親が経営主体で子供はその従業員であるとされました。世帯の区別、資金の流れ、事業の歴史的経緯等を総合考慮して父親を事業主と認定しています。       

 

【所得税計算の仕組み】

所得税計算は所得税法第2条第1項の定めているとおりです。

① 所得分類と金額計算

  後述するように、所得を種類に分けて計算するということです。

② 損益通算・繰越控除

  許された損益通算、繰越控除をします。

③ 所得控除により課税所得(総所得・退職所得・山林所得)金額を計算

④ 税率適用による税額計算 
  累進超過課税になります。所得金額毎に税率が高くなります。単純な累進課税ではなく、低い所得部分は低い税率、高い所得部分は高い税率というような計算になります。
  法人税は違いますね。

⑤ 税額控除による年税額算出


納付すべき税額は、年税額-源泉徴収額-予定納税額ですね。

確定申告書のとおり金額を記載していけば上記の計算ができるようになっています。

 

損益通算は、マイナスを他の所得から控除できる制度だと思ってください。

不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得(但し特例法の制限あり、土地建物の譲渡損は他の所得との損益通算禁止等)で認められています。

 

所得控除と税額控除は紛らわしいですね。

所得控除は、納税者の個別の事情に応じて、総所得金額、退職所得金額、山林所得金額から控除することが認められているものです。あくまでも所得の控除です。生命保険料控除などです。

税額控除は、所得控除後の各種課税標準に対して税率が適用された後の金額からさらに政策的目的などから税額を控除するものです。税額そのものが控除されます。

当然、税額控除の方がありがたいですね。

 

課税標準という言葉が出てきました。課税標準とは、課税物件を具体的に数量や価格で示したものです。

所得税は所得(総所得金額、退職所得金額、山林所得金額)です。

 

所得分類という話も出てきました。


所得税法は、所得を10種類に分類しています(所得税法23条~35条)。


各所得の担税力に応じた課税をして租税公平主義の実現を図る趣旨です。所得金額が同じでも種類によって税金が違うのですね。

したがって、ある所得がどの種類の所得に該当するかは最大の関心事になります。所得税紛争の多くは、納税者が有利な所得で申告し、課税庁により不利な所得で更正処分を受けるものです。

一般に、勤労性所得(給与、退職)⇒資産勤労結合所得(事業、不動産)⇒資産性所得(利子、配当)の順に担税力が高い、すなわち税金が高いと言われています。

これに対し、法人税については所得分類はなく一律課税です。

会社の経営をなさっている方は、所得税と法人税の違いを踏まえて事業承継対策や節税を考えないといけません。
 
 

次回から個々の所得の話をしていきます。お話が少しは面白くなると思います。

 

お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

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