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民法改正講座8-2【身近な法律知識】

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。
 
多数当事者の債権債務関係の続きです。
多数当事者というのは債権者あるいは債務者が複数いる場合ですね。
 
【委託を受けた保証人の求償権関係(民法459条から460条)】
委託を受けた保証人(普通は委託を受けています。勝手に保証人になることはあまりないですね)の求償権関係の条文が整理されました。
委託を受けた保証人は、弁済等債務消滅行為をした場合に主債務者に求償できます、主債務の期限前の行為と期限後の行為とで求償権の効果が異なります。
一定の場合には事前求償権も認められます(あまり利用するケースはないでしょうが)。
併せて改正民法462条では、委託を受けない保証人の求償権の規定が整備されています。
 
【通知を怠った保証人の求償の制限等(民法463条)】
保証人がいる場合に弁済等債務消滅行為をする場合には、主債務者あるいは保証人に対し通知をしないと一定の法律効果が付されます。事前の通知義務ですね。
正直言ってそのような通知をするということはあまり目にしないのですが、気を付けないといけないですね。
 
保証人が債務消滅行為を行う際の主債務者に対する事前の通知義務が委託を受けた保証人に限定されました。
委託を受けていない保証人の求償権はそもそも主債務者の利益を受けたあるいは受ける限度に限定されているから必要ないというテクニカルな理由です。
委託を受けた保証人が事前通知を怠って債務消滅行為をすると、主債務者が債権者に対抗することができた事由(相殺権など)を保証人の求償権に対し行使できます。
 
逆に、主たる債務者が委託を受けた保証人に対して債務消滅行為をしたことの通知(事後の通知)を怠った場合には、善意の保証人がさらに債務消滅行為をしてしまうと、保証人が自己の債務消滅行為が有効であるとみなすことができます。
 
また、保証人が事後の通知を主債務者に対して怠った場合には、善意の主たる債務者がさらに債務消滅行為をすると、主債務者は自己の債務消滅行為が有効であるとみなすことができます。
 
【根保証の規律の整備(民法465条の2~465条の5)】
根保証とは、被担保債務の限定のない保証ですね。
 
一部規律の対象が、「貸金等根保証契約」から「個人根保証契約」に変更になりました。
貸金等債務が含まれない根保証一般を意味します。
賃貸借契約における根保証契約も対象となることになります。

従来の貸金等の根保証に限定された規律も残っており(元本確定等)、その場合は従来の貸金等根保証契約が「個人貸金等根保証契約」と呼ばれています。
 
個人根保証契約は、極度額を定めなければ無効となることにご注意ください。
所謂、金額の限定がない包括根保証の禁止ですね。
 
【公正証書の作成と保証の効力(民法465条の6)】
これは大きな改正ですね。
会社や個人が融資を受ける際の第三者の保証契約について(事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約または主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約について)、公証人による保証人(個人に限る)の意思確認手続が新設されました。
保証意思宣明公正証書を作成しなければ保証契約が無効となります。
 
ただし、主債務者の事業と関係の深い方が保証人となる多くの保証契約にはルールが適用されないことになります。
主たる債務者が法人である場合の、
理事・取締役・執行役またはこれらに準ずる者、議決権の過半数を有する株主等、
主たる債務者が個人である場合の、
共同事業者、事業に従事している配偶者、
にはこのルールは適用ありません(民法465条の9)。
 
公正証書を作成するというのはけっこう手間ですよね。
第三者個人保証はなくした方がいいというのが世の中の流れなので、その方向に進んでいくことが前提なのかもしれません。
 
また、会社の借入れはわかりやすいですが、個人事業の借入れは「事業のため」と言えるか問題となります。賃貸マンション・アパートの建設資金借入の場合などですね。
金融機関としては広めに解釈するのでしょうね。
 
なお、主たる債務者が、事業のために負担する債務について保証を委託するとき、または主債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証を委託する時は、保証を委託する個人に対し、①財産及び収支の状況、②主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況、③主たる債務の担保に関する情報、を提供するというルール(情報提供義務)も新設されています(民法465条の10)。

仮に主債務者が情報提供義務を懈怠した場合には、保証人が①から③について誤認し保証を契約し、かつ債権者が主債務者の情報提供義務懈怠について知っていたまたは知ることができたなら(知らないことに過失がある場合ですね)、保証人が保証契約を取り消すことができます。
 
保証契約は非常に危険です。
借りたわけでもないのに主債務者と同じ責任を負います。
自分が借りる感覚でないといけません。
主債務者と利害関係が一致していない場合はできないですね。
第三者の保証を要求されるケースでは、主債務者の信用があまりないということを意味します。危険ですね。
 
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広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
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