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準共有株式の議決権行使2 [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。

前回に続いて、企業法務の話のうち、事業承継にかかわりのある準共有株式の問題です。
 

会社法の106条本文によって、相続等によって生じた準共有株式は、会社に権利行使者を定めて通知しなければ権利行使自体ができないため、困った事態に陥る危険がある。
そして、事業承継対策等のためには、遺言書が必須であること、定款に分割行使の許諾文言を入れておくことが望まれる。といったお話しをしました。
ところで、会社法106条の但し書には、「ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合には、この限りではない。」と定められています。

なんだ、会社が同意すれば権利行使者を定めて通知する必要はないじゃないか、と思うかもしれません。

実際、その解釈で、一部の相続人に権利行使を認め、取締役選任等の株主総会を開催し、経営を承継したケースで、他の相続人から株主総会決議が取り消されるべき等と争われた事例がありました。
相続人は2人で2分の1ずつの相続分だったようです。


平成27年の2月に最高裁判所の判断が出ました。結果は、株主総会決議取り消しです。
私は現在、広島大学大学院法務研究科、いわゆるロースクールで税法講習を担当していますが、授業の際、学生に話を振ったら、すでに勉強をしている判例でした。重要判例ですね。


前回お話ししたとおり、共有関係における民法の原則は管理行為は共有者の過半数で決めるというものです(民法252条本文)。
会社が会社法106条但し書に基づいて権利行使を許しても、過半数で決定した議決権行使ではないから、会社が同意しても不適法である、といった判断がなされました。


106条但し書で会社が任意に権利行使を認めることができれば不公平な結果が生じることも考えられ、仕方がないですね。


最高裁の判断が出ましたから、やはり、前回お話したとおり、事業承継対策としては、自社株式に関しては必ず遺言書を書く、定款の定めを整備しておくといったことが必要です。

正直言いまして、前回お話しした定款の規定が上記判例に沿って有効とみなされるかリスクが高まりました。
一応あった方がいいとは思いますが。
 

もちろん、事前に株式を後継者に移転することができれば良いに越したことはありません。
少なくとも遺言は作成してください。

また、種類株式、属人株式の活用により柔軟な事業承継対策もできるわけです。

事業承継対策を考えたことはない、考えているがまだ始めていない、という企業さんは、早めに専門家に相談してください。


今回は、最高裁の裁判例をネタに、事業承継問題に関わる準共有株式の権利行使方法についてお話しました。


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弁護士 仲田 誠一
 

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