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代表者の行方不明、判断能力喪失のリスク2 【企業法務】

広島の弁護士仲田誠一です。

前回は、企業法務のうち、代表者=株主の行方不明のリスクについて事業承継問題類似のお話をしました。

今回は、前回の続きで、代表者=株主の判断能力喪失のリスクの話です。


事業承継問題は、代表者=株主の死去、すなわち相続を念頭に置いて議論がされることがほとんどだということは前回お話しました。
そうではなくて、不慮の事故等で社長=オーナー株主が判断能力を喪失してしまった場合はどうでしょうか。

絶対に事故に遭わないとは誰も言うことが出来ません。
突然の話で準備ができないため、相続問題よりもリスクが高いと言えるでしょう。


人はその判断能力を喪失すると、法的に有効に財産管理ができなくなります。
もし代わりに誰かが財産管理を行うと後で法的に覆されるリスクが生じるのです。
自社株についての議決権も同様です。本人は有効に株主権を行使することができませんね。


起きうる事態は行方不明のケースと同様です。
オーナー株主は過半数の株式を保有しているでしょうから、多くの場合、定足数が足りず株主総会等を開いて新しい取締役を選ぶこともできません。
法律的には経営がストップし、事実上の経営権を巡り争いや混乱が生じることも容易に想定できます。
おまけに、取締役が1人だと取締役会も開けません。
予め株主総会の定足数を下げておくことも考えられますが、法的に限界もあり、かつリスクが生じます。


法律上、判断能力を喪失した方の財産(自社株含む)を管理する方法として、成年後見制度があります。
また、裁判所に職務代行者を選任してもらうことも可能かもしれません。
しかし、それらには時間がかかり、また成年後見人や職務執行代行者の権限にも制約があります。
日々動かないといけない経営の継続性の点からは、非現実的な手段だと思います。


その対処方法としては、まず、任意後見契約を行うことが考えられます。
自身の判断能力が失われた場合に備えて、予め自身で後見人を選んでおき、その事態が発生したら速やかに財産管理をしてもらう制度です。
特別な方式を要求される契約ですが、その際には代理権目録に株主権の行使を記載しなければいけません。そうしないと意味がありません。


株主の行方不明のケースと同様の対策も考えられます(こちらの方がお勧めですかね)。
予め属人株式、具体的には俗にいう「(逆)ヒーロー株」を設定します。
代表者=株主が判断能力を失っても、他の方の議決権により問題なく株主総会を開催できるようにし、経営の継続性を保つのです。

勿論、後を託すに足りる人物がいないといけません。

属人株式の設定は特別な手続要件があり、また悪用されないように慎重に設定することは言うまでもありませんのでご注意を、というお話も前回同様です。


会社のリスク管理の一環として、代表者の判断能力喪失に備えをしておくことも必要だと思います。
不慮の事故、不慮の病気は完全には避けられませんからね。

 

今回は、前回の行方不明の場合への対処に続いて、判断能力喪失への対処についてお話しました。
事業承継対策はもちろん必須ですが、相続に至らないままに株主=代表者が有効に株主権を行使できなくなるリスクにも対処をしなければなりません。
あまり意識されていない点なのでぜひご検討してみてください。


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