M&A

M&Aとは

M&Aは Mergers and Acquisitions の略称です。「合併と買収」と訳されるようですが、企業や事業の買収を広く意味する言葉として使用されています。資本提携や業務提携も含めることがあります。
M&Aの手法には様々なものがあります。株式譲渡、株式移転、会社分割、合併、事業譲渡でしょうか。法的には株式譲渡の一種ですがTOB(株式公開買付)やMBO(マネジメントバイアウト)という手法もニュースなどでお聞きになっていると思います。

1.中小企業のM&Aの手法

中小企業のM&Aの手法は、株式譲渡事業譲渡の2つにほぼ収斂されます。
法律上は、会社の所有者は株主です。社員あるいは持分権のない特殊な法人は別として、各種法人も同様出資者の所有物です。会社・法人の売買には株式や持分を売買すれば事足ります。それを端的に実現するのが株式譲渡です。従業員や役員が株式を買い取るMBO、敵対的買収であるTOBも株式譲渡の手法です。会社・法人そのものではなく、ある部門あるいはある事業だけを売り買いしたいケースもあります。それを端的に実現するのが事業譲渡ですね。
中小企業のM&Aはコスト面(手間、期間、費用)の配慮も重要です。株式譲渡あるいは事業譲渡は、他の手法と比べて手続が簡便となっています。
そのため、中小企業のM&Aには、株式譲渡事業譲渡が利用されます。年に数件はM&Aに携わりますが、株式譲渡事業譲渡がほとんどです。

株式移転、会社分割は、特殊なニーズがあるスキームに採用すべき手法です。合併も、適格合併のケースを除いて、税制上のメリットがほぼなくなり、コストがかかるだけの手法となった感があります。

いずれにせよ、買い手・売り手双方のニーズに適した効率的な手続を選択することが効率的です。手続選択から弁護士等の専門家にご相談されることをお薦めします。

2.事業承継とM&Aの関係

後継者がいない中小企業の数は多いです。広島県や隣県の山口県は後継者不在率が全国ワーストの部類に属しております。
会社の営む事業にはそれ自体社会的価値があります。中小企業は、日本の経済、特に地域経済を支える重要な存在です。事業をなくしてしまうのは社会的損失です。また、従業員ほかの利害関係者も多数存在します。事業を引き継ぐのは経営者の責任でしょう。
そこで、M&Aです。後継者のいる同族中小企業は事業承継対策(親族内承継)で、後継者のいない同族中小企業はM&A(第三者承継)で、事業をバトンタッチして、事業や従業員等を守ります。当職がお手伝いさせていただいているM&Aも、事業承継対策の一環のものが多いです。

後継者不足は、買い手の視点から見ると、会社を買うチャンス、すなわち顧客・市場を新たに獲得するチャンスといえます。M&Aはデフレ下で顧客・市場を拡大する最も有効な経営戦略の1つです。また、人材不足課が叫ばれるようになってからは、人材の確保もM&Aの目的になるようになりました。

3.株式譲渡によるM&A

利用されるケースが多い株式譲渡とは、文字どおり株式の譲渡です。会社の所有者は株主です。株式譲渡とは、オーナーチェンジですね。
株式譲渡の手続は、
株式譲渡契約書の締結、
②譲渡承認決議(株主総会、取締役会)-中小企業のほとんどは株式譲渡制限会社です、
③役員の変更決議(株主総会、取締役会)
が基本となります。
株式譲渡による譲渡所得税課税と退職金支給による退職所得課税の兼ね合いで、
④旧経営陣への退職金支給を絡めることも多いです。

4.株式譲渡のメリット・デメリット

株式譲渡によるM&Aの特徴をいくつか挙げます。
【法人格をそのまま引き継ぐ】
株式譲渡では、会社の法人格(器)はそのまま存続し、会社の所有者=株主が変更されるだけです。会社の名称、債権債務関係、従業員との関係、許認可、取引先との関係も影響を受けません。不動産や自動車の登記、登録の変更も必要ありません。一方で、会社の保有するリスクや負債の遮断ができません。買収監査をきちんと経る必要性が高いともいえます。
【退職金支給によるプランニング】
取締役、監査役等の役員が退任するタイミングで(旧経営陣が一定期間残るスキームもあります)、旧株主に支給する退職金を活用して税制上有利なプランニングをすることができます。退職金でも株式譲渡代金でも同じお金ですが、退職金は退職所得課税、株式譲渡代金は通常は長期譲渡職課税、と課税関係が異なります。バランスを考えて、効率的なプランニングをします(なお、買い手が会社のケースでは株式取得価格を下げるため退職金に多く割り振ると喜ばれます)。
【会社の清算の必要がない】
株式譲渡では、会社の清算を考える必要がありません。事業譲渡では譲渡人会社は残りますから、全部の事業を譲渡しても会社の清算という課題が残ります。
【その他】
金銭の授受が記載されない通常の株式譲渡契約書は印紙税の課税文書ではありません。
また、株式譲渡は消費税の課税取引ではありません。

5.事業譲渡によるM&A

よく利用されるもう1つの手法である事業譲渡とは、文字どおり、事業の譲渡です。個人事業も含めて規律する商法の表現では、営業の譲渡になります。
一定の営業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む)の全部または重要な一部を譲渡することを意味するのですが、要するに、個々の財産の売買ではなく営む事業の全部または一部の譲渡ですね。一部の事業を売買する目的で、あるいは譲渡人会社の負債やリスクを切り離す目的で、よく利用されます。
事業譲渡の手続は、①事業譲渡契約書の締結、②株主総会の事業譲渡等承認決議(会社法467条)と簡便な手続です。ただし、株式譲渡と異なり、当然に契約関係等を引き継ぐことはできませんし、個々の財産について移転に必要な手続をしなければなりません。

6.事業譲渡のメリット・デメリット

【譲渡対象を自由に選ぶことができる】
事業譲渡の最大の特徴です。対象資産を選択できますし、事業を部門別や取引関係などを基準に切り取ることもできます。自由度が高く様々なニーズに対応することができる一方、事業譲渡契約書は緻密に作成する必要があります。
リスクを遮断することができる】
株式譲渡は、債務やリスクを負った状態の会社(器)のオーナーの変更です。これに対し、事業譲渡は、譲渡人の債務を承継せず(譲渡契約書に明記します)、リスクも承継しないで、事業のみを譲り受けることができます。大きなメリットです。
【原則として商号は続用できない】
ただし、譲渡人の商号を譲受人が使い続けると、譲受人も譲渡人の営業によって生じた債務の弁済責任を負います(商法第17条第1項)。事業譲渡では、譲渡人の商号を使って営業を継続することをしないのが原則です。
仮に商号を変更しないといけないとなると、取引先関係の引継ぎに苦労をすることもあるかもしれません。
譲受人が商号続用によるこのような責任を免れるためには、譲渡後遅滞なく譲渡人の債務については責任を負わない旨を登記するか、譲渡後遅滞なく譲渡人および譲受人から第三者に対して、その旨を通知することになります(商法第17条第2項)。
【従業員の引継ぎ】
譲渡事業に携わる従業員は譲渡人との間で雇用契約を締結しております。事業譲渡契約では引き継げません。譲渡人からの退職、譲受人への再就職について従業員の合意が必要です。退職金制度があれば退職金の問題も出てきます。
【取引先との関係、契約関係、許認可】
取引先との契約関係や債権債務、賃貸借契約関係など契約関係も当然には移転しません。相手方の同意を得て、契約上の地位の移転あるいは新規契約等の手続を踏む必要があります。
許認可についてもそのまま利用することはできません。譲受人が新たに取得する、あるいは譲渡手続を承認してもらう等しなければいけません。
【その他】
事業譲渡契約書は印紙税法の課税文書です。
事業譲渡の対象には消費税の課税資産を含みますので、消費税も考慮しなければなりません。
事業譲渡では譲渡対象資産である不動産の移転登記、自動車の登録変更などをしなければなりません。

7.株式譲渡を選ぶケース

中小企業のM&Aで株式譲渡の手法がもっとも多く使われます。特に次のようなケースでは株式譲渡を選択するべきといえます。
【経営者が引退あるいは廃業を考えているケース】
原則株式譲渡の方法を選択するでしょう。事業譲渡では、譲渡人の会社が残ります。引退、廃業のためには、別途会社の清算手続を考える必要があります。ただし、負債やリスクの遮断を目的に事業譲渡を選択し、別途清算を行うケースもあります。
【許認可の引継ぎがメインの目的となるケース】
株式譲渡では、法人格の移動はありませんので、法人格に付いている許認可はそのままです。役員や株主の変更について届出が必要なケースがあるというだけです。
【取引先との継続取引関係に価値があるケース】
取引先との継続取引関係の引継ぎはM&Aの重要な目的です。株式譲渡であれば、法人格はそのままですので、法律上は取引先との契約関係に変更はありません(取引基本契約書で届出等の手続を要求されていることはあります)。新たな取引口座の開設が難しい場合は事業譲渡ではなく株式譲渡でしょう。
【従業員をスムーズに引き継ぎたいケース】
従業員を引き継ぐことはM&Aの主要目的の1つでしょう。従業員との雇用契約関係に影響がない株式譲渡を選択します(経営者変更を契機に退職されないような十分な説明等は必要です)。
これに対し、事業譲渡では従業員の同意を取り付ける必要がありますし、退職金の扱いや移籍後の待遇も問題になります。
【商号続用をしたいケース】
事業譲渡では、商号続用をしないことが基本です(リスクを負えれば商号続用もあり得ますが)。
事業譲渡ではコスト負担が大きいケース】
事業譲渡では、権利の移転には、別途対抗要件の具備や合意が必要になります。不動産の移転登記、自動車の登録変更、リースの契約名義変更、賃貸借の名義変更等々ですね、契約移行等の手間がかかることは勿論、登記費用等に多額の費用がかかることもあります。
 

8.事業譲渡を選択するべきケース

一方、次のようなケースでは事業譲渡を検討することになります。
【売り手が事業継続を前提とするケース】
売り手が事業継続を前提とし、ある部門等を売却したいときは(選択と集中)、事業譲渡を選択します。
【株式の集中ができていないケース】
経営者及びその家族が全株式を保有しておらず、第三者が一部株式を保有しているケースでは、株式譲渡によるM&Aは現実的ではありません。買い手が見つかる可能性は低いです。
第三者からの買取り、自己株式化、名義株の整理等、株式の集中を事前に図ることが肝要ですが、仮に株式の集中が実現しなくとも、事業譲渡承認決議ができる限りで、事業譲渡は可能です(ただし、反対株主の株式買取請求権のリスクはあります)。
【売り手のリスク、負債を引き継ぎたくないケース】
事業譲渡は、譲渡人のリスク、負債を引き継がない形でのM&Aが可能です。株式譲渡ではそれらを遮断することはできません。そのため、株式譲渡では、買収監査の必要が大きいです。売り手企業の財務内容が悪い、あるいは不審な点があるケースでは、事業譲渡にて譲渡人の負債・リスクを遮断する方法が適切かもしれません。買収監査も簡便にすることもできます。
【売り手の負債が多いケース】
売り手が債務過多である場合は、その負債を引き継ぐほどの株式価値がある企業はあまり存在しません(合併も同じことがいえます)。これに対し、事業譲渡では、売り手の債務を引き離して事業を買収することが可能です(会社分割を利用しても可能です)。ただし、売り手企業が後に倒産するほどの経済的危機状況でのM&Aは、資産隠し、債務飛ばしとして問題視され得ます。譲渡人の債権者から債権者取消権を行使される、あるいは破産管財人等から否認権を行使されるリスクがあります。そのような事業譲渡は、弁護士の関与の下で慎重に組立てをする必要があります。

9.買収価格の考え方

買収価格は、需要と供給の問題で、ケースバイケースで決めることで、ルールはありません。ただし、不当に安いあるい高いケースでは税務上のリスクがあります。
しかし、価格の目安というものはあります。株式譲渡では株式の時価です(贈与税・相続税のための相続税評価額は時価ではありません)。事業譲渡では事業(移転する財産も含めて)の時価ですね。
評価方法はいくつかありますが、同族中小企業のM&Aでは、
① 時価純資産額
② 営業権価格
③ ①+②
を目安に考えることが多いです。同じパターンでもその具体的な評価方法は多岐に分かれます。

なお、当職がお手伝いする前に、既に譲渡価格が合意されていることもありますが、税法上リスクが高くない限りはそのまま話を進め、支払名目(代金か退職金か)等をアドバイスします。

10.買収価格の算定方法

前述した①資産価格、②営業権価格、③資産価格+営業権価格について、考え方を補足いたします。
【資産価格(時価純資産)】
株式譲渡における時価純資産は、株式が表章する会社のモノ・カネの価値です。決算書あるいは試算表の純資産額をベースに、含み損益をプラスマイナスし、資産価値のない資産項目をマイナス等するなど修正して算出します。
利益が出ていない会社の営業権価格は考える必要がなく、純資産価格ベースだけでの価格決定も珍しくありません。
事業譲渡では、譲渡対象とする資産の時価を算出いたします(簿価で進めるケースもあります)。
【営業権価格】
営業権価格は、会社(事業)が将来生む利益あるいはキャッシュフローを価格に反映させるものです。のれん代ですね。資産がほとんどない会社であれば営業権価格だけで買収価額が決められます。
営業権価格は、 ①基準とする利益 × ②算定期間(1~5年) で算出します。
①の基準利益には、営業利益、経常利益あるいは当期利益の直近2~3年の平均額を入れます。営業利益の平均を持ってくることが多いでしょう。ただし、営業利益に実際に支出されない減価償却費を加えることが多いです。現オーナーの役員報酬が大きい場合には買収後想定できる役員報酬との差額を加えることもあります。
②の年数に決まりはありません。3年分がスタンダードですが、業種や業態等により異なります。安定した業種・業態なら長く、不安定であれば短いイメージです。

事業譲渡での営業権価格の算出はやや難しいですね。部門別の損益計算書等の数字を出してもらうのですが、販売管理費の振り分けが難しいです。また、商号変更、従業員や取引関係の引継ぎリスクは価格引き下げ要因となるでしょう。
業種によって特殊な価格算定の慣例があります。当職が経験したものでは、売上〇カ月分と決めるケース、タクシー会社で営業権付車両台数×単価で決めるケースがありました。
【資産価格+営業権価格】
時価純資産価額と営業権価額の合計額を買収額の目安とすることが一番多いパターンでしょう。上述の組み合せですね。
【買収総額と買収額との関係】
主に株式譲渡のケースの話ですが、旧経営者に対して退職金を支給するケースでは、退職金を支給すればその分株式の純資産価格も減少します。買収総額は退職金支給額と株式譲渡価格の合計になります。買収総額を決めたら、退職金額を検討し、その余を譲渡代金にする形です。
また、長期間にわたって旧経営陣による引継ぎが必要な業態であり、旧経営者にある程度高額の報酬を支払うケースでは、営業権は引継ぎにより実現すると考えて、営業権価格を加味しないこともあります。
 

11.M&Aの流れ

単純化するとM&Aの流れは次のようなイメージでしょうか。②から⑤や⑦の順番は前後しますし省略されるものもあります。
① マッチング(相手方候補者の選定)
② 基本契約書の締結
③ デューデリジェンス(買収監査)、価格・条件交渉
④ 最終契約書作成
⑤ 法定手続、最終契約書締結
⑥ 決済
⑦ 引継ぎ

①相手方候補者が見つからないとM&Aがスタートしません。当事者が見つけてくるケースも珍しくはありません。M&A専業コンサルタント、事業引継ぎ支援センター、取引銀行あるいは銀行系コンサルタントが探してくることも多いでしょう。当職もマッチングを実現したこともありますが、情報量では銀行さんに劣ります。銀行の保有する情報量を活用することは大事です。
②独占交渉権付与と秘密保持契約を内容とする基本契約書を、交渉のスタートとして作成するケースも多いです。作成した方が双方が安心でしょう。それまでに確定した交渉結果の内容も盛り込むこともあります。
③価格算定のためのデューデリジェンス、財務・会計監査、法務監査などです。M&Aは、買収対象の株式(企業価値)あるいは事業自体にリスクが包含されている危険がありますし、手続面でのリスクもあります。程度の差こそありますが何かしらのデューデリジェンスあるいは監査を入れることが多いです。価格・条件交渉を当事者だけで進めることはあまりお勧めしません。条件面は最終的に法律的に可能な形で最終契約書に落とし込む必要がありますので、客観的な専門家が仲立ちあるいは調整しながら具体化する方がいいでしょう。かつ、当事者間ではどうしても感情的になってしまう場面が出てきますので、専門家の助言や調整が欲しいところです。
④M&Aの合意内容を定めた契約書を作成する必要があります。基本契約書に対して最終契約書と呼びます。契約書作成は法律の専門家である弁護士のサポートを得てください。多くの場合、引継ぎのための業務委託契約書、事業用不動産に関する不動産売買契約書や不動産賃貸契約書、あるいは旧経営者が残るケースの取締役委任契約書など、他の契約書も必要になります。
⑤法定手続
M&Aには、履行しなければM&Aの効力が否定されることもある法定手続が定められています。方法により、スキームにより、あるいは会社の組織体制によって、必要な手続は異なります。法定手続の検討の過程で問題点が判明することもあります。契約書作成に専門家(特に弁護士)が入るケースでは、手続面のサポートも得られます。
⑥実行日に決済を行いますが、銀行の応接室にて、双方当事者と当職のようなアドバイザーが一同に会することが多いです。買い手の銀行融資が絡むことも多いですね。決済日には、印鑑、鍵等の引継ぎや必要な登記書類の作成も行います。株式譲渡ではほぼ必ず、事業譲渡でもケースによって登記が絡みますので、司法書士の立会いもお願いすることがあります。
⑦引継ぎは、基本契約書締結から順次するケース、最終契約書締結から始めるケース、決済日から始めるケースがありえます。被買収会社あるいは事業の内容によってケースバイケースで適切な引継ぎ方法を考えることがM&A成功の秘訣です。旧代表者等が数か月から半年程度、業務委託契約に基づいて引継ぎや従業員へのケアをしていくことも珍しくはありません。

12.株式譲渡事業譲渡の流れの補足

株式譲渡の流れに関する補足】
株式譲渡では、リスクや負債を負っている会社の株式を売買するためデューデリジェンスやリスク監査が重要となります。しかし、価格がほぼ決まっているから税理士等による価格算定のためのデューデリジェンスは必要がない、企業規模や事業形態から税理士等による財務・会計監査までは必要がない、というケースも多いです。ただし、法務監査は必ず入れた方がいいです。複雑な契約ごとですし、最低限簡便なリスク監査は必要でしょう。法務監査の中で、価格算定や財務面も最低限見てもらうというパターンも多いでしょうか。

旧経営者との間の債権債務関係の清算を決済までに行います。旧経営陣との間の債権債務関係を残しません。旧経営陣に対する債務を免除してもらい整理することもあります(繰越欠損があるケース)。

そのほかにも整理できるものは整理してシンプルな形にして株式を売買することが多いです。なお、引継ぎ関係の話では、各種契約の旧代表者の連帯保証を新代表者に変更することも必要ですね。

事業譲渡の流れに関する補足】
事業譲渡では契約書と引継ぎが特に重要になります。事業譲渡の内容は契約書の記載次第とですから、契約書の作成に一番気を使うことになります。漏れなく、かつ明確に記載しなければいけませんし、売掛金と買掛金をどう割り振るか等の細かい取り決めも必要です。個々財産や契約関係の移転を考える必要があるため、営業用電話やFAXの番号の引継ぎの有無など細かいことについても決めておかなければいけません。

従業員を引継ぎたい場合は、従業員に対する説明、説得を重ねて、実行日に退職・再就職してもらうように手配が必要です。再就職時の手当(サイインインボーナス)を支給することもあります。
譲渡事業に必要な賃貸借契約等の契約関係の引継ぎも事前に相手方から了承をとるようにしておかなければなりません。

不動産や自動車など登記登録が必要な資産の譲渡では実行日に変更登記等に必要な書類を授受します。

13.M&A準備の注意点

個々の事例に即して、譲渡対象会社あるいは事業の内容を把握し、当事者双方の意向を確認しながら、リスクの有無や問題点を洗い出し、調整しながら法律的に有効な形で契約条項を作成する必要があります。注意点はケースに応じて多岐にわたるのですが、ここでは共通項と思われる点をいくつか挙げます。
【株主、株券の確認】
株式譲渡では、株式の保有状況の確認が必要です(決算申告書の付表は証明資料にはなりません)。会社成立時から現在までの株主の移動を説明するのが原則ですが、株主総会議事録等の古い書類が残っていないケースもありケースバイケースの確認になります。名義株式や第三者の保有株式がある場合にはできるだけ早めにその解消方法を検討しなければなりません。
また、株券の発行の有無、発行会社であれば株券の存否を予め確認します(商業登記、定款で確認します)。株券発行会社であっても実際には株券がないケースも珍しくありません。株券が発行されていて現在見当たらないケースは一番困ります、失権手続等の手当が必要なのかを検討しなければなりません。早期に状況を確認してできる手当を講じることが肝要です。
【資産の整理】
事業用の不動産等が会社所有ではなく個人所有であるケース、逆に会社保有資産を個人で使用しているケースも多いです。それらの整理をしなければなりません。
個人所有の事業用資産は、事業に引き続き使用できるよう、新オーナーあるいは会社が引き継ぐか(売買、代物弁済等)、所有者から使用権を設定(賃貸借契約等)してもらわないといけませんね。
会社保有資産の個人使用のケースでは、売買契約、代物弁済、退職金の現物支給等の方法により会社から個人への移転を考えます
【不動産】
境界が確定できているか(争いがなく確認標・鋲があれば問題はないのでしょう)、建築確認済書類等建築図書・検査済証を引き継げるかどうかも、確認しておかなければなりません。保健所が絡む工場や薬局などでは、建物図面や届出書類の引継ぎも必要となってきます。
【許認可】
許認可の内容、移転手続の要否等は実行日前に余裕をもって確認をする必要があります。譲渡人に所管の役所にて確認をしていただくことが多いでしょう。
【役員保険】
役員退職金を手当てする等の目的で役員を被保険者として保険契約しているケースも多く、そのケースでは解約して退職金を支払うことで整理します。保険の解約益と退職金計上損金の期がズレると無駄な法人税がかかります。
旧役員が引き継ぎたい保険がある場合には契約者名義の変更の手続をします。解約返戻金額を評価額とする退職金の現物支給あるいは売買です。そうでなければ高い税金がかかります。

14.M&A引継ぎの注意点

スムーズかつ十分な引継ぎがなされなければM&Aの目的は絵に描いた餅になりかねません。いくつかコメントをさせていただきます。
【旧経営陣の処遇】
株式譲渡であれば問題になります。会社のオーナーが交代する以上、旧経営陣は取締役等役員から退任してもらうのが原則です。けじめをつけることがスムーズな体制移行に必要です。
一定期間取締役として役員報酬をもらうことが条件の案件や、建設業等資格の問題で旧経営陣に役員として留まってもらう案件もあります。経営権の問題が曖昧になることや定款で定めた取締役任期の関係のリスク等の課題がありますので、慎重にプランニングしなければいけません。
【引継ぎの形態】
取引先との取引関係を引き継ぐため、従業員に対するケアのため、あるいは技術移転が必要等のため相応の引継業務が必要な場合には、業務委託契約を締結して委託報酬を支払う形をとることが多いでしょう。期間雇用の形態をとるケースもあります。引継期間の報酬あるいは給与が相応に高額になるケースでは、営業権価格をその分割り引くことになるでしょう。
【経理、会計】
きりがいい形で譲渡実行日を決算期末に合わせることも多いでしょうか(税理士さんもそのタイミングで変えやすいです)。その場合は決算申告事務の引継ぎの問題が発生しますね。
また、会計ソフトのデータは汎用性があることが多いですが、実際にデータを引き継げるかどうか確認も必要です。取引先との受発注システムの引継ぎも苦労したケースがあります。薬局関係のレセプト等データも同様です。
【取引先】
取引先の引継ぎは一番大事ですね。ある程度余裕をもって新旧社長が挨拶に行くことをお薦めしております。取引基本契約書のチェンジオブコントロール条項(会社の支配権の移動がある場合の届出あるいは承認を定めた条項)の有無も確認します。なお、取引先の安心を得るために一定期間の引継ぎ期間をとり、旧経営者に補佐してもらうことも珍しくありません。
 

15.サポート費用

どこに依頼するか、どの範囲を依頼するのかにより費用は大きく変わります。一概に説明することは困難です。マッチング(相手先探し)からのサポートをするM&Aコンサルタント会社の報酬は、売買価格の〇パーセントで最低〇円と定まっていると思います。最低報酬は安くて5百万円から高くて数千万(想定規模によって違うようです)が多いのではないでしょうか。銀行系コンサルタント会社は報酬500万円からが相場でしょうか。これらと別に弁護士費用、税理士あるいは会計士費用がかかるケースもあります。

マッチングがなければM&Aはスタートしませんから、マッチングの対価として相応の費用を取ることは当然です。ただ、あまり高額だと地方の中小企業では利用できません。事業引継ぎ支援センターの利用も増えているようです。なお、地方銀行さんの持つ情報とネットワークは侮れません。地方の中小企業規模のM&Aは地方銀行のマッチングによるケースが多いです。当職もマッチングを実現することはありますが個々の法律事務所では限界があります。銀行さん等の手をお借りすることもあります。

ここでは、マッチング以外の、弁護士のサポートを受けるべきサービスの費用を説明します。当事務所での一応の目安は次のとおりです。
【助言・契約書作成・法定手続のサポート】
スキームの設計、契約書作成、法定手続のサポートまでの一貫したサポートです。事案や仕事量に応じて、55万円(税込み)から165万円(税込み)の範囲で話し合って設定することが多いです。
買収規模、法務監査の有無、費用負担者(当事者双方か一方からだけか)等の事情によって変わります。一応は良心的な部類に属すると評価されています。
【税理士と連携する案件】
価格算定のためのデューデリジェンス、財務デューデリジェンス、会計監査を入れる案件では、税理士も加わります。法務監査の中でも最低限は対応しますが、きちんとチェックするなら弁護士だけでは対応できません。
弁護士1人・税理士1名で対応できる案件は220万円(税込み)程度の設定が多いでしょうか。
【コストの考え方】
M&Aは大きな売り物、買い物です。トラブルが生じた場合の損害や解決にかかるコストも大きいです。専門家の費用は、安心して手続を進めるための保険のようなコストだと捉えてください。その上で、取引の規模、想定されるリスクの大小で許容できるコストを考えていただき、その範囲でのサポートを得ればいいと思います。当事者双方がコストを負担する形がとれれば、各当事者のコストは下がりますね。当事務所も、許容コストに応じたサポート内容を提案させていただいております。
【費用の頂き方】
着手時一括払いのケースのほかは、設定金額を、着手金50~70%、成功報酬金30~50%の割合で分けてお支払いいただくことも多いです。契約時に協議をして決めます。
株式譲渡では、当事者である株主から費用をお支払いいただくのが原則です(会社に対するコンサルタントともいえますので、ご希望に合わせて会社からお支払いいただくこともあります)。事業譲渡のケースでは、売買の当事者である会社から費用をいただきます。
【その他諸費用】
役員変更登記、本店変更、会社の目的の変更、不動産登記などケースに応じて登記費用(司法書士報酬と登録免許税)がかかります。当事務所では、司法書士とも連携しております。契約書、定款あるいは議事録等、登記の基礎となる資料は当職が作成しますので、それらを司法書士に依頼するコストは省けます。
その他は、印紙代(株式譲渡では原則として必要ありません)、証明書等の取得費用ぐらいでしょうか。大きなコストは見当たりません。

16.弁護士のサポートの意味

M&Aには多かれ少なかれリスクが伴います。当事者だけで進めることはお薦めしません。
【プランニング】
M&Aは定型的なものではなく、オーダーメイドでプランニングします。様々な当事者のニーズを法制度の中でできるだけ効率的に実現するかの問題です。民法、会社法、税法等法律を横断的に理解して法的に実現可能な限りの最適なスキーム設計が必要です。経験上、スキームの設計が一番難しく、かつM&A成功の秘訣であると感じます。法律の専門家である弁護士のサポートを是非とも得てください。
【契約書】
各種契約書は、その内容に疑義がないように第三者の目を入れて作成してください。M&Aの内容は勿論、想定できる課題をすべて契約内容にします。当事者が良好な関係にあっても、曖昧な契約書は後日のトラブルのもとです。M&Aの当事者には、単なる売り買いの価格面ではなく、その他の条件面や引継面を始め、様々な想いや希望もあります。それらニーズを法律に則った形で具体化し調整するサポートが必要です。法律の専門家、トラブル事例を熟知している弁護士のサポートを得てください。
【法定手続】
M&Aには各種手続に伴い必要な法定手続があります。法律の専門家である弁護士のサポートにより安心して、かつ効率的に進めてください。
リスクの監査】
株式譲渡(合併もです。)は、被買収会社のリスクはそのまま残りますので、リスクの監査を経ることが望ましいです。事業譲渡でもリスクは事業価値評価にかかわります。リスクは、最終的に法律を経て(裁判等)、損害賠償請求権等の形で顕在化しますので、監査は弁護士が法的な観点からするべきです。少なくとも最低限の法務監査は弁護士にしてもらいましょう。
【総合的なサポート】
財務デューデリジェンスが必要な案件、そうでなくとも退職金が絡む税務面での設計はその限りで、税理士の助けが必要です。司法書士の助けも必要でしょう。社会保険労務士のアドバイスも必要な例もあります。ワンストップでそれら専門家のサポートを得ることが理想です。
当職も、税理士、司法書士、社会保険労務士にアドバイスをいただきながらサポートをすることが多いです。財務デューデリジェンス等が絡む案件では、弁護士、税理士がタッグを組んでサポートしています。中小企業サポートの目的で士業(弁護士、税理士、司法書士等)が集結した合同会社RYDEENの一員として総合的なサポートをすることも多いです。
【M&Aに精通した弁護士のサポート】
弁護士業務の中でM&Aはやや特殊な仕事になり、得手不得手のある分野です。法律知識だけでは不十分で、様々なケースに対応できるだけの場数を踏まなければなりません。M&Aサポートに向けて他の士業との連携体制を整えていなければ総合的なサービスを提供することもできません。どうせサポートを受けるのでしたら、M&Aに精通しサポート体制を整えている弁護士のサポートを得てください。
手前味噌ですが、当職は、銀行勤務経験から会計にも明るく、税法にも精通しており、M&Aサポートの経験も数多く、他の士業との連携体制も整っております。ぜひ、ご相談ください。
 

17.サポートのタイミング等

弁護士がM&Aをお手伝いするタイミングは、
①相手方候補者探し(マッチング)から、②相手方候補者との契約交渉の段階から(交渉あるいは調整、助言、スキーム設計)、③契約書作成の段階から(助言、スキーム設計、契約書作成、法定手続サポート)とケースバイケースです。
また、関わり合い方も、一方当事者の代理人のケース、あるいは双方当事者のアドバイザーとして調整していくケース等、ニーズに合わせた形をとっています。

①M&Aの相手を当職の伝手で探した例がありましたが、銀行のサポートを得ることもあります。当職が携わる事案では、当事者で既に話し合っている、あるいは銀行ないし事業引継ぎ支援センターが既にマッチングしているケースが多いです。
②相手方候補が決まっても、なかなか当事者間でスムーズに話し合いができないケースもあります。当事者では協議がし難い事柄もありますし、概要は合意できてもそれを形にすることはなかなかできません。弁護士が一方の代理人あるいは双方のアドバイザーとなり交渉あるいは調整しながら整理をしていきます。アドバイスを受けながら具体的に話を詰めていくだけでも大きな意味がありますね。
③ほぼ当事者で話が決まった段階で、契約書はきちんと作らないといけない、具体的にどう進めていいかわからない、客観的な第三者に入ってもらった方が安心だ、等の理由で弁護士を入れることも多いです。当事者で決めた話を吟味してスキームを設計し、助言をしながら契約書の形に具現化していき、法定手続等もサポートします。
②と③は重なり合います。③の場面でも、これまでの交渉結果を具体化するスキーム設計を改めてしなければなりませんし、交渉により確定しなければならない詳細が多く残っているが通常です。

②③の段階で、買収監査を盛り込むケースもあります。法務監査、財務デューデリジェンス(こちらは税理士と連携します。)ですね。契約書作成過程にて最低限の法的リスクのチェックは行っております。

どこで依頼するべきかはケースバイケースの判断でしょう。ただ、遅くとも相手方との具体的な交渉の段階では、少なくとも弁護士の助言を得る方が安心ですし効率的です。
当事者で話し合いを進める際も、少なくとも専門家による整理をしながら進めるべきでしょう。契約事はシビアに接するべき場面もありますし、感情的になり決裂するケースも少なくありません。

費用など

ご相談を承った際に個別にお見積りをさせていただきます。
【参考料金表】
FA業務のみ 88万円(消費税込)~132万円(消費税込)
※ 標準:110万円(消費税込)-簡易な法務デューデリ含む
※ M&A対象の企業規模・事業規模等により異なります。
FA業務+
法務デューデリジェンス
追加費用:標準55万円(消費税込)
※ M&A対象の企業規模・事業規模等により異なります。
FA業務+
法務・財務デューデリジェンス
追加費用:標準110万円(消費税込)
※ M&A対象の企業規模・事業規模等により異なります。
 
法務デューデリジェンスのみ 追加費用:標準55万円(消費税込)
※ M&A対象の企業規模・事業規模等により異なります。
※ M&Aはオーダーメイドにより設計・サポートする事柄であり、どのような対策を行うかによって費用が異ならざるを得ません。顧問弁護士契約の中で対応させていただく、あるいは顧問料形式で一定期間費用をお支払いいただく例もあります。

※ 登録M&A支援機関として、中小M&Aをガイドラインを遵守しています。
以下、遵守事項一覧です。 
番号 遵守事項 該当箇所
  • 仲介契約・FA契約の締結
  1.  
業務形態の実態に合致した仲介契約・FA契約を締結する。

「3 各工程の具体的な行動指針」「(2)仲介契約・FA契約の締結」【53~54ページ】

  1.  
契約締結前に依頼者に対し仲介契約・FA契約に係る重要な事項について明確な説明を行い、依頼者の納得を得る。
説明すべき重要な点は以下のとおりである。
  • 譲り渡し側・譲り受け側の両当事者と契約を締結し双方に助言する仲介者、一方当事者のみと契約を締結し一方のみに助言するFAの違いとそれぞれの特徴
  • 提供する業務の範囲・内容(マッチングまで行う、バリュエーション、交渉、スキーム立案等)
  • 手数料に関する事項(算定基準、金額、支払時期等)
  • 秘密保持に関する事項(秘密保持の対象となる事実、士業等専門家等に対する秘密保持義務の一部解除等)
  • 専任条項(セカンド・オピニオンの可否等)
  • テール条項(テール期間、対象となるM&A等)
  • 契約期間
  • 依頼者が、仲介契約・FA契約を中途解約できることを明記する場合には、当該中途解約に関する事項
  • 最終契約の締結
  1.  
最終契約の締結に当たっては、契約内容に漏れがないよう依頼者に対して再度の確認を促す。 「3 各工程の具体的な行動指針」「(8)最終契約の締結」【56ページ】
  • クロージング
  1.  
クロージングに向けた具体的な段取りを整えた上、当日には譲り受け側から譲渡対価が確実に入金されたことを確認する。 「3 各工程の具体的な行動指針」「(9)クロージング」【56ページ】
  • 専任条項
  1.  
依頼者が他の支援機関の意見を求めたい部分を仲介者・FAに対して明確にした上、これを妨げるべき合理的な理由がない場合には、依頼者に対し、他の支援機関に対してセカンド・オピニオンを求めることを許容する。ただし、相手方当事者に関する情報の開示を禁止したり、相談先を法令上又は契約上の秘密保持義務がある者や事業承継・引継ぎ支援センター等の公的機関に限定したりする等、情報管理に配慮する。 「5 専任条項の留意点」【57~58ページ】
  1.  
専任条項を設ける場合には、仲介契約・FA契約の契約期間を最長でも6か月~1年以内を目安として定める。
  1.  
依頼者が任意の時点で仲介契約・FA契約を中途解約できることを明記する条項等(口頭での明言も含む。)も設ける。
  • テール条項
  1.  
テール期間は最長でも2年~3年以内を目安とする。 「6 テール条項の留意点」【58~59ページ】
  1.  
テール条項の対象は、あくまで当該M&A専門業者が関与・接触し、譲り渡し側に対して紹介した譲り受け側のみに限定する
  • 仲介業務を行う場合における特則(※仲介業務を行わない場合は不要)
10.
仲介契約締結前に、譲り渡し側・譲り受け側の両当事者と仲介契約を締結する仲介者であるということ(特に、仲介契約において、両当事者から手数料を受領することが定められている場合には、その旨)を、両当事者に伝える。 「3 各工程の具体的な行動指針」「(2)仲介契約・FA契約の締結」【53ページ】、「4 仲介者における利益相反のリスクと現実的な対応策」【57ページ】
11.
仲介契約締結に当たり、予め、両当事者間において利益相反のおそれがあるものと想定される事項(※)について、各当事者に対し、明示的に説明を行う。また、別途、両当事者間における利益相反のおそれがある事項(一方当事者にとってのみ有利又は不利な情報を含む。)を認識した場合には、この点に関する情報を、各当事者に対し、適時に明示的に開示する。
※ 例:譲り渡し側・譲り受け側の双方と契約を締結することから、双方のコミュニケーションや円滑な手続遂行を期待しやすくなる反面、必ずしも譲渡額の最大化だけを重視しないこと
「3 各工程の具体的な行動指針」「(2)仲介契約・FA契約の締結」【53~54ページ】、「4 仲介者における利益相反のリスクと現実的な対応策」【57ページ】
12.
確定的なバリュエーションを実施せず、依頼者に対し、必要に応じて士業等専門家等の意見を求めるよう伝える。 「3 各工程の具体的な行動指針」「(3)バリュエーション(企業価値評価・事業価値評価)」【54~55ページ】、「4 仲介者における利益相反のリスクと現実的な対応策」【57ページ】
13.
参考資料として自ら簡易に算定(簡易評価)した、概算額・暫定額としてのバリュエーションの結果を両当事者に示す場合には、以下の点を両当事者に対して明示する。
 ⑴
  • あくまで確定的なバリュエーションを実施したものではなく、参考資料として簡易に算定したものであるということ
 ⑵
  • 当該簡易評価の際に一方当事者の意向・意見等を考慮した場合、当該意向・意見等の内容
 ⑶
  • 必要に応じて士業等専門家等の意見を求めることができること
14.
DDを自ら実施せず、DD報告書の内容に係る結論を決定しないこととし、依頼者に対し、必要に応じて士業等専門家等の意見を求めるよう伝える。 「3 各工程の具体的な行動指針」「(7)デュー・ディリジェンス(DD)」【56ページ】、4 仲介者における利益相反のリスクと現実的な対応策」【57ページ】
・上記以外の中小M&Aガイドライン記載事項について
15.
上記の他、中小M&Aガイドライン中「M&A専門業者」に関する記載事項について中小M&Aガイドラインの趣旨(*)に則った対応をする。 番号1~14の他、中小M&Aガイドライン「Ⅱ M&A専門業者」に記載されている事項【52~59ページ】


 

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