広島市の弁護士仲田誠一です。
    
    経営者の離婚についてお話をします。
    
    同族中小企業の企業法務にも関わりますね。
    経営者の相続と同様、経営者の離婚も、給与所得者の相続、離婚と違った難しさがあります。
    けっこう大変なのです。
    まずは自社株、個人所有の事業用資産、会社への貸付金等が財産分与対象となりうることです。
    これは経営者の相続の場合と同様ですね。
    ここでまず、ややこしい話になります。
    
    平時には、経営者はそれらが財産だとは思っておりません。会社のための財産だと思っているでしょう。
    ところが、離婚になると、個人の財産という現実に直面するのです。自社株が財産分与財産になるのか、その評価はどうなるのか、あるいは事業用資産はどう保全するのか、会社への貸付金を現金化できるのか等、進め方に工夫が必要です。
    
    株式の評価が高い場合には、現金化できない資産であるにも関わらず財産分与に苦労します。
    株式現物を分与してもいいのですが、経営の安定のためには現物ではなく金銭で分与するという方法を考えるでしょう。
    債務超過会社ではない限り気を付けないといけませんね。
    
    会社への貸付金も財産ですからね。
    会社が倒産状態ではない限り、法的には財産としてカウントされてしまうでしょう。
    予め銀行借入等で個人と会社の貸借関係を整理した方がいいかもしれません。
    事業承継、相続対策と同じです。
    
    事業用資産(例えば工場の土地建物)が個人所有の場合には、財産分与の対象となることがありますね。
    不動産については、担保分を評価額から控除してくれることは原則としてできないことは相続の場合と同様です。
    事業用不動産などを売却してお金に換えることはできません。
    金銭で分与をする、あるいは他方配偶者の名義である場合には買い取るということもしないといけないでしょう。
    
    勿論、先代からの事業承継で相続・贈与で得た株式や事業用資産は原則として財産分与の対象とはなりません。
    例外として、他方配偶者に当該財産の維持等に一定の寄与が認められる場合には寄与の分だけ分与が認められることがあります。
    また、配偶者が会社役員になり、報酬をもらっている、従業員となっている場合も、ややこしい話になります。
    役員を解任するのか、その場合に会社に損害賠償義務が発生するのか、解雇ができるのか等々、進め方に工夫が必要です。
    節税対策が裏目に出てくる場面です。
    
    実際に、取締役となっていた他方配偶者を解任し、残り任期分の役員報酬相当額の損害賠償請求をされる例もあります。
    取締役はいつでも解任できますが(もちろん議決権を確保しておかないといけませんが)、正当な理由が無い場合には損害賠償請求がなされ得ます。
    離婚は正当な理由にはならない可能性が大きいです。
    他方配偶者を役員にするのか、取締役の任期は何年にするのか、リスクを考えた上で決断しておかなければいけません。
    役員の任期は、閉鎖会社では10年まで伸ばせることになっておりますが、離婚時にはリスクが高いですね。
    
    節税対策が裏目に出てくる点は、事業用資産を配偶者名義にしているケースもありますね。上述のとおりです。
    このような会社経営者の離婚は、給与所得者の離婚と比べて、考えないといけないことが多いためご注意ください。
    
    株式と個人所有の事業用資産、役員の任期・報酬を例に挙げて説明させていただきました。
    
    会社のリスク管理としてもきちんと考えておかないといけないことです。
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