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個人再生における住宅資金特別条項の徹底解説

広島県広島市のなかた法律事務所所属弁護士仲田誠一による債務整理コラムです。今回は住宅資金特別条項を利用した個人再生の徹底解説です。
債務整理において個人再生を選択する場合、住宅ローンを支払い続けて自宅を維持したいという目的であることが多いですね。
住宅資金特別条項(いわゆる住宅ローン特則)を利用し、住宅ローンは従前どおり支払い続けて、他の債務を整理します。
その住宅資金特別条項の利用には要件があり、場合によっては利用できません。また、住宅資金特別条項の利用に特有の注意点もあります。
そこで、住宅資金特別条項を利用した個人再生を徹底解説します。
住宅資金特別条項については別途旧コラム「個人再生の徹底解説」でも触れていますが、より詳細に、かつアップデートした内容となっています。
 

目次

個人再生とは
住宅資金特別条項とは
利用の要件(住宅、住宅資金貸付債権)
諸費用ローン・資金流用
住宅資金特別条項利用上のその他注意点
夫婦双方が債務を負担する場合の注意点
個人再生手続上の注意点
相談時の注意点
まとめ


個人再生とは

1.個人再生とは

個人再生とは、裁判所が認可した再生計画に基づいて、原則3年(「特別の事情」がある場合には最長5年まで)の弁済期間で、一定の債務(計画弁済額)を弁済し、
計画弁済額を弁済し終わったところでその余の債務の免責を受ける、という法的債務整理です。民事再生の個人版で手続が簡易化されています。
 
自己破産(非免責債権を除き全ての債務の支払義務を免れる)と、任意整理(元金カットがない)の中間的な手段と位置づけられます。
個人再生は自己破産と次の点で大きく違います。
①破産にある免責不許可事由がない(ただし否認相当の行為は清算価値に影響する)、②破産にある資格制限がない、③破産と違って財産が処分されない、④住宅資金特別条項を利用して自宅を維持できる、などです。
 
個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類がありますが、基本形は小規模個人再生です。
両者の違いを簡単に説明します。
小規模個人再生は、弁済額が小さく抑えられる可能性があるが(最低弁済額の基準は債務額と清算価値)、債権者の頭数の半数以上あるいは債権額の過半数を占める債権者の反対があれば再生計画が認可されません。
一方、給与所得者等再生は、債権者の同意は必要ないですが、要件が厳しく、収入が多いあるいは被扶養者が少ないケースでは最低弁済額が大きくなる傾向にあります(最低弁済額の基準に可処分所得の2年分が加わります)。

2.個人再生の活用

個人再生の申立て件数は、自己破産と比べ、かなり少ないです。そのため、不慣れな弁護士も多いです。
しかし、スムーズな経済的更生に向けた解決策として個人再生は非常に有用です。
 
個人再生は概ね次のようなケースで利用されます。
◇自己破産を潔しとはしないケース
◇破産における免責不許可事由の程度が重いケース
◇住宅ローン付の自宅を維持したいケース
◇破産における資格制限に引っかかるケース(警備員、保険外交員、証券外務員、宅建主任者、旅行業務取扱主任者等)
◇処分されたら困る財産があるケース
◇前の破産の免責決定確定日・前の給与所得者等再生の再生計画認可決定確定日・前の個人再生でハードシップ免責を受けた場合の再生計画認可決定確定日から各7年以内のケース(ただし小規模個人再生のみ可能)
 
その中で最も利用が多いのが、住宅ローン付の自宅を維持したいというケースですね。
自己破産では、親族への適正価格での売却やリースバックによって自宅が残せるケースでない限り、自宅は維持できません。
一方、住宅資金特別条項を利用した個人再生では、自宅の維持も可能です。今回は、その住宅資金特別条項を徹底解説します。
 

住宅資金特別条項とは

1.住宅資金特別条項とは

住宅資金特別条項は、個人債務者が住宅を手放すことなく経済的更生を図ることを可能とするため、住宅ローンの返済を継続しながら住宅を維持しつつ、他の債務を圧縮して原則3年で弁済できるようにする制度です。
住宅ローン特則とも呼ばれます。住宅ローンを抱えて経済的な破綻に瀕した個人債務者がその生活の本拠である住宅を手放すことなく経済生活の再生を図ることを可能にするための制度です。
 
当然ですが、小規模個人再生、給与所得者等再生とも利用することが可能です。
 
もっとも、借入が住宅ローンだけで他の債務を整理する必要がないケースでも、住宅資金特別条項を利用した個人再生が可能です。
既に代位弁済がなされて後述の「巻戻し」が必要なケースや夫婦が同時に申し立てないといけないケースなどに住宅資金特別条項の利用が必要となります。
ただし、住宅ローン残高が住宅の価値よりも小さい場合(オーバーローンではない場合)には、支払不能のおそれという個人再生の利用要件がないと判断され得ることに注意しなければいけません。
 
なお、個人再生の利用要件の一つに「再生債権の総額5000万円を超えないこと」がありますが、住宅ローン債権は「再生債権の総額」から除外されます。
住宅ローン以外で5000万円を超えなければ個人再生の利用ができます。
 

2.住宅資金特別条項の種類

住宅資金特別条項は、法律の条項上、4種類あります。
①期限の利益回復型、②リスケジュール型、③元本猶予期間併用型、④同意型・合意型の4つです。
住宅ローンの期限の利益を喪失しておらず(延滞していないか延滞後間もない場合)、申立後も弁済許可制度を利用して従前の住宅ローン契約の約定の弁済を続ける最も多いケースを、「約定型」あるいは「そのまま型」と呼んでいます(法律上は①に位置づけられるそうです)。ほとんどこの約定型・そのまま型ですね。
 
大事なのは次の2点です。
1 住宅資金特別条項の利用について、原則として住宅ローン債権者(住宅資金貸付債権者)の同意は必要ありません。例外として同意型については書面による同意が必要になります。
2 保証会社が既に代位弁済をしていても利用できます。
 
2の「巻戻し」ですが、再生計画認可決定確定により、住宅ローン債権者は、代位弁済時に遡って保証会社から住宅ローン債権者に復帰します。
すなわち、代位弁済がなかったことになります。
ただし、「巻戻し」型には、保証会社による代位弁済から6か月以内に再生手続開始申立てを行わないといけない等の条件がありますし、「巻戻し」により利息・損害金が免除されるわけではありません。
同意型ではない期限の利益回復型であれば、認可決定確定までに期限が到来する原本、同時点までに発生する利息・損害金を、弁済計画期間内に支払う必要があります(同意型では銀行の同意を得て柔軟な弁済方法が設定できます)。
また、既に競売を申立てがなされているケースでは、急ぎ開始決定を得て、裁判所に中止命令を出してもらわないといけません。
競売費用等も負担の問題もあります。確実に住宅を残すためには、遅くとも代位弁済をされる前に動きたいところです。
 

利用の要件(住宅、住宅資金貸付債権)

1.担保が付いているのが住宅であること

住宅資金特別条項の利用には、抵当権等の担保が付いているのが「住宅」であり、対象のローンが「住宅資金貸付債権」でなければなりません。
一般的な住宅ローンであればそれら要件を満たすのですが、注意しないといけないケースもあります。
まずは「住宅」について説明します。
 
「住宅」と認められるためには、次の3つを満たさないといけません。
①申立人の所有する建物であること
②自己の居住の用に供する建物であること
③床面積の2分の1以上に相当する部分が専ら自己の居住の用に供されること
 
①について
必ずしも申立人が単独所有している必要はありません。共有不動産でも対象になり得ます。夫婦や親子で共有ということは、珍しくありません。
 
②について
転勤などで自宅を賃貸しているケースがあります。
賃貸用不動産は、自己の用に供する建物(上記②)の要件を欠き、住宅資金特別条項は利用できないのが原則です。
しかし、転勤期間を利用するなどして一時的な賃貸借をし、将来的に居住の用に供すると客観的に認められるケースでは、例外的に「自己の居住の用に供する」と認められ、住宅資金特別条項の利用が可能です。
 
③について
床面積の2分の1以上が専ら自己の居住の用に供されている限り、店舗兼居宅、二世帯住宅でも利用できます。
申立時には図面等を提出し、要件を満たすことを疎明します。
 

2.対象ローンが住宅資金貸付債権であること

次に、住宅資金特別条項の利用には、対象のローンが「住宅資金貸付債権」でなければなりません。
 
 
その「住宅資金貸付債権」と認められるためには、次の3つを満たさないといけません。
①住宅の建設・購入あるいは住宅の改良に必要な資金の貸し付けであること
②分割払いの定めがあること
③当該債権または保証人(保証会社)の主たる債務者に対する求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されていること
 
①について
リフォームローンでも住宅資金特別条項を利用できます。住宅の改良に必要な資金の貸付けだからです。
借換えローンでも住宅資金特別条項を利用できます。従前の住宅ローンと同視できるからです。
住宅資金貸付債権である限り、銀行ではない債権者の住宅ローンでも利用できます。例えばハウスメーカー系のノンバンクなどがありますね。
住宅ローン減税の対象となる借入れは住宅資金特別条項を利用することができると考えていいです。
 
③について
担保が抵当権であることが必要です。
普通抵当権のケースだけではなく、根抵当権の被担保債権が住宅ローン債権のみであれば根抵当権でも利用が可能です。珍しいケースですが、実際に取り扱った例があります。
 

諸費用ローン・資金流用

1.諸費用ローンも借りているケース

諸費用ローンとは、仲介手数料、登記手続き費用、税金等の諸費用の支払いに充てるためのローンです。
住宅ローンより金利が高い、借入期間が短い場合が多いでしょうか。住宅ローン減税の対象ともなりません。
諸費用ローンという名称ではなく、消費資金貸付という名称のケースもありました。
 
住宅ローンと同時に諸費用ローンを組んで住宅に別個の抵当権が設定されている場合、
諸費用ローンについても住宅資金特別条項を利用しなければ住宅の維持ができません(なお、抵当権が設定されていなければ他の再生債権と同じ扱いをすればいいだけです)。
諸費用ローンが「住宅資金貸付債権」に該当するかどうかが問題となるのですが、原則として、諸費用ローンは前記の要件を欠き「住宅資金貸付債権」に該当せず、住宅資金特別条項を利用できないとされています。
 
しかし、諦める必要はありません。生活の本拠である住宅を手放すことなく経済生活の再生を図ることを可能にするという制度趣旨から、ある程度柔軟に例外を認めてくれます。
実務上、諸費用ローンの使途が契約上明確でありその額も住宅ローンと比較してかなり少額である場合や、多少高額なローンであっても使途が不動産取得行為等に直接必要な経費の範囲内で明確になっている場合等に、
住宅資金貸付債権と認められています。
申立て時には、
①住宅の建設もしくは購入に密接に関わる資金の借入れであること
②諸費用ローンの額が住宅資金に比べて僅少であること
を説明することになります。
 
①は、登記費用、仲介手数料、税金、火災保険料等の住宅の建設もしくは購入に密接に関わる資金であったことを説明すればいいだけです。
領収書があれば領収書と通帳で、なければ契約書の資金使途欄の記載等も利用して説明します。
一方、家電購入費用、既存借入れのおまとめ費用等、住宅の建設もしくは購入に密接に関わる資金といえない使途も含まれる場合は、後述の資金流用が複合的に問題となります。
 
②も通常満たしますね。一般的には住宅ローンの1割程度が諸費用ローンの限度額ですので。
一方、住宅ローンの2割を超えるような多額のローンのケースでは、慎重・詳細な説明が必要です。通常の諸費用よりも多額なのですから後述の資金流用も問題になります。
 
経験上、典型的な諸費用ローンであれば問題なく住宅資金貸付債権と扱ってくれる傾向にあります。
 
 
諸費用ローンを住宅資金貸付と認めるのはあくまでも例外的取扱いです。
個人再生委員が選任される可能性は高まります(広島本庁の傾向)。申立時には疎明資料を付けて詳細な説明をすることが肝要でしょう。
当職は上申書を提出しています。
 

2.資金流用があるケース(住宅購入資金以外への支払い)

諸費用を、諸費用ローンではなく、住宅ローン本体に組み込む金融機関もあります。
また、住宅ローンの使い道として、家電購入費用、引越費用、既存借入れのおまとめ資金等、住宅の建設もしくは購入に密接に関わるとは言えない資金が組み込まれていることもあります。
申立代理人としてあるいは個人再生委員として関与した案件では、債務の一本化を条件とする金融機関の例や、おまとめローンを組み込んだ住宅ローンの商品展開をする金融機関の例もありました。
太陽光発電システム設置費用が含まれるケースもあります。
それらのケースでは、住宅ローンの借入金が住宅の建設・購入あるいは住宅の改良に必要な資金以外に流用されているため、
前記の当該住宅ローンが住宅の建設・購入あるいは住宅の改良に必要な資金の貸付けであることという要件を満たすかが問題となります。
 
諸費用ローンの場合と同様、原則として、前記の要件を欠き「住宅資金貸付債権」に該当せず、住宅資金特別条項を利用できないとされています。
しかしながら、諸費用ローンと同様、例外的に、全体として住宅資金貸付債権と認められ得ます。
住宅資金貸付債権に関する特則は個人債務者が住宅を手放すことなく経済的再生を図ることを可能とするための制度であり、
他用途が含まれている場合を一律に住宅資金貸付債権に該当しないとしてしまうと制度趣旨に反するからです。
 
一般の諸費用ローンの対象となる登記費用、仲介手数料、税金、火災保険料等の物件取得に直接必要な費用ないし密接関連費用に流用されているケースでは問題なく住宅資金貸付債権と認められるでしょう。
 
その他の使途に流用されている場合には、流用額の住宅ローンに占める割合、物件取得費に対する比率から主要部分が住宅購入等の目的に使用されたと認められると説明することになります。
 
こちらも例外的な扱いなので、個人再生委員が選任される可能性は高まります。申立時には疎明資料を付けて詳細な説明をすることが肝要でしょう。当職は上申書を提出しています。
 

住宅資金特別条項利用上のその他注意点

1.住宅に他の担保が付いていないこと

自宅不動産に住宅ローン以外の担保権が付いていたら住宅資金特別条項が利用できません。住宅ローン以外の後順位担保権者がいる場合ですね。
担保権が実行されて再生債務者が住宅を失う恐れがあるからです。自宅を不動産担保として差し入れてまで消費性ローンを借りる状況であれば将来の債務整理の必要性も予想できるはずです。
自宅不動産に担保を付けて借り入れをするのはできるだけ避けましょう。
 
住宅資金特別条項を利用するためには後順位担保を抹消する必要がありますが、債権者平等の観点から問題が生じ得ます。
勿論、親族などの第三者が資金を出して弁済することには問題は生じません。
再生債務者本人が弁済してしまうと、偏波弁済として破産法上の否認対象行為となります。
清算価値保障原則の観点から、弁済による清算価値の減少分を清算価値に計上する必要があります。最低弁済額が大きくなり、再生計画を立てられなくなる可能性があります。
 
再生開始決定により、再生債権に基づく仮差押えあるいは差押えの手続は注します。
したがって、住宅に対する差押え等がある場合でも住宅資金特別条項を利用することができます。しかしながら、租税債権は再生手続の制約が及びません。
滞納処分がなされている状態では、原則として、再生債務者が住宅の所有権等を失うと見込まれる場合として再生手続を進めることができません。
租税債権を弁済する、分納協議成立により換価を猶予してもらう等の手当が必要となります。一般優先債権である税金を弁済しても債権者平等には反しないとされています。
 
なお、逆に担保が多い場合として、再生債務者以外(妻)の所有する不動産が住宅ローンの共同担保となっている珍しいケースも経験しました。
このケースでは住宅資金特別条項を利用するのに支障はありませんでした。
 

2.住宅ローンを借りた銀行に他の借入れもあるケース

住宅ローンを借りている銀行にカードローンやマイカーローンなどの他の借金があるケースは少なくありません。
銀行で作ったクレジットカードの債権者が銀行となるケースもあります。
そのような場合、住宅資金特別条項を利用し住宅ローンだけの返済を継続し、同じ銀行から借りている他の債務を整理することができるのでしょうか。
 
勿論、このケースでも住宅資金特別条項を利用し、住宅ローンのみ支払いを継続し、他の借金は再生債権として再生計画に基づいてその一部を支払うことができます。
 
もっとも、受任通知が借入先の銀行に届くと、原則として預金口座を凍結されてしまいます(住宅ローンのみの場合には受任通知を送りませんから口座を凍結されることはありません)。
凍結されたままであると住宅ローンの引落口座として利用できません。
その場合は銀行と住宅ローンの返済方法を協議する必要があります。振込みで弁済する方法、口座凍結を解除してもらう方法等、対応は銀行ごとに変わり得ます。
 
なお、最近は引落口座として別銀行の口座を指定できる金融機関もあるようです。その場合には、引落口座のある銀行に他の借入れがない限り、上記問題は生じません。
 
 

夫婦双方が債務を負担する場合の注意点

1.ルールがある

ご夫婦双方の名義で多大な債務を負担しご夫婦とも債務整理の必要があるケースは珍しくありません。
夫婦ABが同時に債務整理をしつつ自宅を維持したい場合には気を付けてください。場合によっては自宅の維持に支障を来たす例もあります。
不動産所有者名義と住宅ローンへの関わり合いによってルールがありますので、次にパターンを分けて具体例を説明します。
 

2.具体的例

①Aが所有者兼債務者、Bが住宅ローンに関与していない
BがA名義の住宅ローンの連帯保証人や連帯債務者ではないケースでは、Bの債務整理がAの住宅ローンに影響を与えることはありません。
住宅ローン債務者であるAは、住宅資金特別条項を利用して個人再生を進めます。
Bは、自己破産・個人再生のどちらを選択してもかまいません。
 
②Aが所有者兼債務者、Bが連帯保証人
住宅ローン債務者Aは、住宅資金特別条項を利用した個人再生を選択します。
これに対し、住宅ローンの連帯保証人Bは、住宅資金特別条項を利用できません。住宅を所有(共有)していないBは前述した住宅資金特別条項の利用要件を満たさないからです。
 
ここで困ることがあります。連帯保証人の自己破産あるいは個人再生申立ては住宅ローンの期限の利益喪失事由に挙げられています。
そこで、Bが個人再生あるいは自己破産を選択することによりA名義住宅ローンの期限の利益を喪失されないよう、住宅ローン債権者との交渉が必要です。
弁護士が銀行と交渉をすれば、例外なく(経験上)、期限の利益を喪失しない扱いにしてくれます。
 
③Aが所有者兼債務者、Bが連帯債務者
所有者Aしか住宅資金特別条項が利用できません。共有ではないので、連帯債務者Bは利用要件を満たさないからです。
Bは自己破産あるいは個人再生を選択し、かつ連帯保証人のケースと同じように期限の利益を喪失されないよう交渉します。
 
④住宅はAB共有、Aが債務者、Bが連帯保証人
夫婦の同時申立てに限って、夫婦ともに住宅資金特別条項が利用できるルールです。ABが同時に個人再生を申し立てる必要があります。
Bは所有者(共有者)ではありますが、保証債務履行請求権は住宅資金貸付債権に該当しません。そこで、同時に申し立てる場合に限って住宅資金特別条項の利用が許されているのです。
なお、負担する債務が住宅ローンだけで他に債務がなくても住宅資金特別条項の利用は可能です。Bに他の債務がなくても同時申立てができます。
 
⑤住宅はAB共有、AとBが連帯債務者
このパターンは「夫婦リレーローン」と呼ばれることがあるようです。親子の場合には「親子リレーローン」ですね。
登記簿の乙区を確認してください。住宅ローンの抵当権の債務者の記載として夫婦AB両名が記載されていれば問題なく住宅資金特別条項を利用できます。
1つの債務に1つの抵当権が設定される住宅ローンですので。AとBは単独で申し立てることができます。ABが同時に申し立てる必要はありません。
一方、抵当権登記の債務者の記載がABが連帯債務者であるという事実とがズレている場合には、抵当権登記に記載のない連帯債務者は住宅資金特別条項を利用できません。
 
なお、仮にAB同時申立てでは、双方の再生計画案に住宅ローン全額を支払う記載があるでしょう。
勿論、毎月の弁済額が2倍になるわけではありません。両者で弁済する金額の合計が再生計画で予定された弁済額ならいいです。
従前支払っていた1人が代表して全額を支払うケースが多いでしょう。
 
⑥住宅はAB共有、ABが個別に住宅ローンを負担
夫婦がそれぞれに個別の住宅ローンを組んでいるケースです。所謂「ペアローン」と呼ばれるものですね。
共働き世帯(死語かもしれませんが。)に多いです。夫婦AとBのそれぞれの住宅ローンについて、AとBそれぞれを債務者とする抵当権が設定されていなければなりません。
かつ、このケースも、住宅資金特別条項の利用には、夫婦AB双方が住宅資金特別条項を利用した個人再生を申し立てる必要があります。
他方の抵当権が実行されてしまうと、住宅資金特別条項が無意味になってしまうからです。
一方が住宅ローン以外の債務を負担していないときに例外的に単独申立てを許容した例もあるにはあるようですが、双方申立てが原則だとお考えください。

 

個人再生手続上の注意点

1.住宅の価値と住宅資金特別条項

住宅資金特別条項は、自宅不動産がオーバーローン状態(不動産価値よりも抵当権の被担保債権の方が大きい状態)でなくとも利用できます。
ただし、余剰価値を、清算価値に計上します。余剰価値は、不動産価値から抵当権の被担保債権を控除して残る価値です。
余剰価値が大きいケースであると、最低弁済額が大きくなり、履行可能な再生計画を立てられなくなる可能性があります。
 
不動産の価値は時価です。固定資産税評価あるいは路線価での評価ではなく、交換価値です。
そのため、住宅資金特別条項を利用するには、住宅に関する査定書を申立時に提出するルールになっています。
 

2.住宅資金特別条項と個人再生委員

住宅資金特別条項を定める場合には、個人再生委員が選任されるケースが相対的に高まる傾向にあります。
もっとも経験・知識がある弁護士が代理人として関与した事案では、住宅資金特別条項を利用したからといって、個人再生委員の選任はなされません(広島本庁)。
疑義や問題がある案件に限って個人再生委員が選任されます。
 
例えば、当職が個人再生委員に就任したケースでは、不動産の評価に疑義がある例、資金流用等の例外な取扱いについて再生委員の意見が欲しい例がありました。
ほかに、司法書士さんが書類作成代行をして本人が手続を理解していない例、適切な弁護士が代理人に就任しておらず書類の不備が補完されない等手続が進まない例など、手続面で問題があるケースもありました。
 

相談時の注意点

1.相談時の注意点

住宅資金特別条項が利用できるかどうかの判断は技術的で難しい面があります。
そもそも個人再生の申立代理人をしたことがないという弁護士もいる分野ですので、ご相談する際には、弁護士の経験と知識が豊富かどうか見究めるようにしてください。
疑問点をいくつか質問してみると、経験・知識が豊富な弁護士であれば、具体的に、端的に回答してくれるでしょう。
 
住宅資金特別条項を利用した個人再生を検討される場合には、ご相談時に、次の書類等をお持ちいただいたらありがたいです。利用の可否等の目安を示せると思います。
①住宅ローンの契約書
②不動産の登記簿謄本(古くてもけっこうです)
③固定資産課税明細書
④住宅ローンの返済予定表をお持ちください。
 
また、ネット等で近隣の不動産売り出し状況などを調べていただいたらなお助かります。
 
なお、小規模個人再生ではなく、給与所得者等再生の選択をお考えの方は、源泉徴収票2年分、市県民税課税台帳記載事項証明書2年分もお持ちいただければ助かります。
 

2.住宅資金特別条項が利用できない場合

住宅資金特別条項が利用した個人再生を選択することができないケースもあります。
その場合、個人再生を選択し、別除権協定を債権者と結んで住宅を残す方法も理屈上は考えられます。しかし、実現には難しい面があり、あまり見ない事例です。
 
ほかにも、自己破産を選択した上で住宅を維持する方法もなくはありません。
ご家族かご親族がに売却して住宅ローン債権者に弁済し、抵当権を外してもらう方法が考えられます。
いわゆるリース・バックにて住宅を業者に売却して居住を継続する方法もあります。ただし、条件が合うケースは珍しいという印象を持っています。
いずれも弁護士が適正価格での売買であると説明できるように進めないといけません。ご注意を。
 
なお、ご自宅の維持を諦めて、自己破産により全てリセットした形での再スタートを図る方がいいケースもございます。
弁護士とよくご相談ください。
 

まとめ

1.まとめ

これまで住宅資金特別条項を説明しました。細かい点は省略して説明したつもりですが、大部になってしまいました。奥が深いですね。
住宅資金特別条項を利用した個人再生手続は、個人債務者が住宅を手放すことなく経済的更生を図ることができる制度でした。ぜひ活用してください。
利用できる要件としては、「住宅」かどうか、「住宅資金貸付債権」かどうかがポイントでした。諸費用ローンや資金流用のケースでは、例外的な運用がなされていることも説明したとおりです。
その他、他の担保が付いてないか、住宅ローン債権者から他に借入れがないかも注意点でした。
夫婦双方が債務を負担する場合は注意を要するので、ご夫婦がそれぞれどのような債務整理手続を利用するかを弁護士とよく話し合わないといけません。
住宅の価値や個人再生委員など、住宅資金特別条項の利用に伴い関係する個人再生手続の注意点もありました。
個人再生は弁護士により知識経験に差がある分野ですので、知識経験が豊富な弁護士に相談し、あなたに適合した手続を選択してください。
 

2.最後に

弁護士による個人再生における住宅資金特別条項の徹底解説と題し、住宅資金特別条項について詳しく解説しました。
自宅を維持しながら債務整理を行う際には、住宅資金特別条項を利用した個人再生手続の選択をまず検討します。
しかし、個人再生や住宅資金特別条項は極めて技術的な制度です。スムーズに自宅を守りながら債務整理をする第一歩は、個人再生手続に詳しい、経験が豊かな弁護士のサポートを得ることです。
手前味噌ですが、当職は、広島の弁護士としては、個人再生申立て件数及び個人再生委員就任件数は最も多い部類の弁護士です。
弁護士向けの勉強会の講師も担当しています。的確なアドバイスができると自負しております、広島の倒産弁護士である当職までぜひご相談ください。


 

 

この記事を書いた人

弁護士 仲田 誠一(広島弁護士会所属)
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◆経歴
1996年4月~
あさひ銀行 融資、融資管理、企業再生、法人営業等
2002年5月~
東京スター銀行 経営管理、内部監査、法人営業等
2004年4月~
広島大学大学院法務研究科
2008年12月
弁護士登録
2017年~各前期
広島大学大学院客員教授(税法担当)
◆資格等
弁護士
公認内部監査人試験合格
著作「自転車利活用のトラブル相談Q&A」(民事法研究会,2022)

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