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コラム

個人再生の徹底解説

個人再生の徹底解説
広島市の弁護士仲田誠一です。今回は個人再生を徹底解説します。個人再生自己破産と比べて技術的な要素が高いためわかりにくい制度かもしれません。しかし、選択肢の1つとして検討していただきたい手続です。
ぜひ、ご覧ください。

目次

個人再生
選択する基準
住宅資金特別条項
小規模個人再生
給与所得者等再生
最低弁済額
清算価値
再生委員
費用
準備に関する注意点
まとめ

個人再生とは

1.個人再生手続とは

個人再生とは、裁判所から認可された再生計画に基づいて、原則3年(最長5年)の弁済期間で一定の債務(計画弁済額)を弁済し、計画弁済額を弁済し終わったところでその余の債務の免責を受けられる法的債務整理手続です。
民事再生の個人版です。
 
非免責債権を除いてすべての債務の支払義務を免れる自己破産と、元金カットがない任意整理との中間的な手段として位置づけられるでしょうか。
 
個人再生は申立て件数が自己破産に比べるとかなり少ないです。
個人再生自己破産の大きな違いとしては、①個人再生には免責不許可事由がない、②資格制限がない、③財産が処分されることはない、④住宅ローンを支払い続けることができる、といったものがあります。
これらの違いにより、個人再生を選択肢に入れることによってスムーズな経済的更生に向けた解決策が生まれることがあります。
  
個人再生での弁済期間◆
個人再生は債務の一部(計画弁済額)を弁済していきますが、その期間は原則3年です。「特別の事情」がある場合には5年まで定めることができます。
小規模個人再生のケースでは5年間の弁済期間を定めることは比較的容易です。
これに対し、要件判断が厳しい給与所得者等再生では、ハードルが高いです。3年では弁済できない理由やそれでも履行可能性があることなどを裁判所に理解してもらわなければなりません。
 
◆弁済方法◆
弁済方法は分割です。3か月に1回以上の弁済をすることが法律上要求されます。
ボーナス併用も許容されます。
しかし、当職は、例外なく、3か月に1度の均等弁済の計画案を作成しています。毎月ですと面倒ですし振込手数料もかさばります。また、変動する賞与をあてにすると怖いですからね。
 
例外として、不利益を受ける債権者の同意がある場合、少額債権、非減免債権等の支払方法を別に定めることができます。分割するまでもない少額の債権者について一括で弁済するケースが多いです。
 
なお、再生計画に基づく弁済中の繰り上げ返済ができるかという相談を受けることもあります。理屈上は、全債権者に対して一括弁済をする限りで許されます。

2.個人再生手続の種類

個人再生には、小規模個人再生給与所得者等再生という2種類の手続があります。
 
両者の大きな相違点は、最低弁済額、要件、再生計画案の決議の有無です。
 
小規模個人再生は、弁済額が小さく抑えられる可能性があるが、債権者の反対があれば認可されない。給与所得者等再生は、債権者の同意は必要ないが、要件が厳しいし弁済額が大きくなる傾向にある、とうイメージです。詳細は後述します。
 
小規模個人再生給与所得者等再生の選択基準◆
小規模個人再生給与所得者等再生のどちらの手続を選択するのかの基本的な考え方です。
 
小規模個人再生を優先することが多いです。
 
最低弁済額計算方法の違いから、給与所得者等再生では、特に収入が高い、あるいは被扶養家族が少ないケースで最低弁済額がかなり大きくなります。場合によっては、個人再生を選択できない、あるいはできても意味がなくなることもあります。
また、小規模個人再生に比べて要件が厳しく、裁判所も厳しく見てきます(個人再生委員選任の可能性も高まります)。
 
ただし、小規模個人再生の選択には、債権者の構成を気にしないといけません。
給与所得者等生成と違って、債権者の半数あるいは債権額の過半数を占める債権者の反対があれば再生計画が認可されません。債権者が2社以内、あるいは飛びぬけて債権額の大きい債権者がいるなどのケースでは、そのリスクが高くなります。敢えて給与所得者等再生を優先的に選択することもあります。

個人再生を選択するケース

1.任意整理と法的整理の選択基準

まずは、任意整理と法的債務整理(自己破産個人再生)のどちらを選ぶか考えないといけません。
 
任意整理は、債権者との交渉により通常3年から5年の分割弁済契約を結ぶことです。将来の利息をカットしてくれる債権者がほとんどですが、元金カットは望めません。裁判所の調停手続を利用する場合を特定調停といいます。
 
自己破産が「支払不能」、個人再生が「支払不能のおそれ」を要件としています。理屈上は、支払不能のおそれもないケースでは任意整理を選択することになります。「支払不能」とは、期限の到来した債務を一般的・継続的に弁済できない状態をいいますが、「支払不能のおそれ」といっても明確ではありませんね。
 
実際には、任意整理が可能かどうか検討して、可能であれば任意整理、可能でなければ個人再生自己破産を選択するというのが基本的な流れでしょう。
 
任意整理が物理的には可能かもしれないケースでも、法的整理を選択することはあります。元金カットができない任意整理よりも、元金カットが可能な個人再生を選択する方がいいケースも多いからです。
せっかく債務整理をするのであれば、経済的更生を確実に図りましょう。贅沢ではない普通の生活を続けて確実に支払える金額での任意整理ができる見込みがたたなければ、法的整理を選択すべきでしょう。
 
要は「支払不能のおそれ」を認めてもらえれば個人再生が使えるわけです。
 
当職は、総債務の元金合計額を3年で弁済できるのかどうかを基準にしています。月々の平均収支を考えて、3年で支払えない、あるいは支払い続けられるか不安であるケースでは、個人再生自己破産を選択します。
個人再生の弁済期間は原則3年であり、任意整理の支払期間も3年が標準です。そのため、3年を基準として支払えるかを考えるのです。
 
上述のような考え方で個人再生を申し立てて、裁判所から自己破産個人再生を否定された経験はありません。
 
◆法的債務整理を躊躇しうるケース◆
基本は上述の基準で考えていきますが、例外的に法的債務整理を躊躇するケースもあります。何点かコメントします。
 
家族に内緒にしているというケースがあります。
法的債務整理をしても家族に連絡が届くことはありませんが、同居の家族の収入証明資料(源泉徴収票、給与明細)が提出資料になっているなど同居の家族の協力がなければ用意ができないかもしれない書類があります。それらを集めることができないという理由で任意整理を選択するケースもあります(なお、個別の事情を説明して取得できない資料の提出を免除してもらったケースも例外的にあります)。
 
債権者に問題があるケースもあります。
法的債務整理ではすべての債権者を破産債権者あるいは再生債権者として扱わないといけません。
 
勤務先に対する借入金等債務を負っているケースや家賃滞納があるケースでは、やむなく任意整理を選択するケースも考えられます。もっとも、それらを優先して弁済して完済した時点で法的整理を行う方策が可能ですので、諦める必要はありません。
 
ま車のローンの担保になっている車(所有権留保物件)を維持するために個人再生自己破産を諦める方もいらっしゃいます。所有権留保物件であれば返却の必要があります。任意整理であれば車のローンを整理の対象としなければいいのですが、法的債務整理では許されません。
しかし、任意整理では経済的更生が難しいようなケースでは、法的債務整理を諦めてまで本当に車が必要なのかどうかを考えてもらいます(車なしの生活をされている方は多くいらっしゃいます)。どうしても車が必要な場合は、新たな車を準備することができないかどうか、親族等の援助を得て車のローンを完済する方法がないか等、自己破産個人再生をしても車が残る方策を考えます。

2.自己破産個人再生の選択基準

法的整理手続を選択するとして、自己破産個人再生のどちらを選ぶのかという問題が残ります。
経済的合理性の観点だけで考えると、全ての債務の支払義務を免れることができる自己破産を優先するのが基本となるでしょうか。
次のような基準で決断していただければいいと考えています。
 
◆支払不能か支払不能のおそれか◆
破産の要件は「支払不能」であるのに対し、個人再生の要件は「支払不能のおそれ」です。しかし、基準としてはあまり使いませんね。程度問題ですし、多くの場合は双方に当てはまります。
 
◆住宅ローン付の自宅を維持したいか◆
住宅ローン付の自宅を維持したいケースでは、個人再生を選択して、後述の住宅資金特別条項を利用します。個人再生事件の多くは住宅資金特別条項を利用した自宅の維持を目的とするものです。
自己破産では自宅は維持できません(適正価格での親族への売却により残せるケースもなくはないですが)。
 
◆破産における免責不許可事由の程度が重いケース◆
浪費やギャンブルなど破産法で定める免責不許可事由の程度が大きいケースでは、自己破産を避けて、個人再生を選択する場合があります。
破産でも免責不許可になるのはレアケースですが、リスクがある案件はあります。また、管財事件になる可能性も高まります。免責不許可事由がない個人再生を選択するケースもあります。
なお、免責不許可事由が偏頗弁済や贈与等無償行為などの否認相当行為にも該当するケースでは、個人再生手続においても清算価値の算出に影響します(それでも破産手続で否認されるよりは影響を自分だけに留めるメリットがあります)。
 
◆免責決定が確定してから7年未満のケース◆
前回自己破産の免責確定から7年未満のケースでは、自己破産をすることができません。厳密にいえば免責不許可事由の1つになるのですが、このケースでは裁判所が容易に裁量免責をしてくれません。そのため、小規模個人再生を選択します(給与所得者等再生は使えません)。
 
◆破産における資格制限を回避するケース◆
破産手続には、数は少ないですが、手続中に就けない職業があります(「資格制限」といいます)。警備員、保険外交員、証券外務員、宅建主任者、旅行業務取扱主任者、マンションの管理業務主任者などです。
これに対し、個人再生は資格制限がありません。資格制限を避けるために個人再生を選択するケースがあります。
 
◆処分されたくない財産があるケース◆
個人再生では、財産は処分されません。財産額(清算価値)が最低弁済額に影響を与えるにとどまります。車、保険、不動産を残したいという目的で個人再生を選択することもあります。価値が高いケースでは、最低弁済額が大きくなり、個人再生の選択ができない可能性もあります。
これに対し、自己破産においては、同時廃止事件ではない限り、本来的自由財産及び自由財産拡張対象財産しか手元に残らず、他の財産は処分されます。
 
◆車を残したい◆
ローンの付いていないあるいは完済した車は、個人再生では残せます。価値が最低弁済額に影響を与えるだけです。破産でも初年度登録から6年経過している車は原則残せます。
 
クレジット会社の所有権留保物件(クレジット会社のローンの担保物件)になっている車はどちらの手続でもクレジット会社へ返却します(普通自動車は、所有者名義の登録状況や契約形態によって返却すべきでないケースもありますのでご注意ください)。車検証の写しと契約書を弁護士に提出して確認してもらった方がいいです。
 
銀行のマイカーローンは所有権留保物件になっていないのが通常です。
 
◆勤務先に対する債務があるとき◆
法的債務整理手続では債権者は選べません。勤務先も含めて債権者はすべて破産債権者あるいは再生債権者として扱わなければなりません。勤務先に借金(名目は借金ではなくても債務があれば同じです。)があるときは、優先して弁済する決断をしなければならないケースもあります。破産でいう免責不許可事由否認対象行為に該当します。
そのようなケースでは、個人再生の方が無難かもしれません。免責不許可事由がないですし、否認対象行為も清算価値に計上するだけで済みます。
なお、相談時には給与明細を確認してもらえばいいと思います。
 
◆家賃滞納があるとき◆
家賃滞納があるケースでは、免責不許可事由否認対象行為に該当することを覚悟して優先して滞納を解消してから自己破産を申し立てるケースもありますが、個人再生の方が無難な方法です。免責不許可事由がないですし、否認対象行為と見られても清算価値に計上するだけで済みます。
 
自己破産を望まれるケース◆
個人再生を選択して少しでも債権者に弁済したいというご意向を尊重するケースも多くあります。自己破産を潔しとはしない方です。
ただし、職業が不安定なケースや、弁済期間が5年にしなければならないケースでは、お勧めしません。途中で弁済できなくなると水の泡になりますし、5年後に全く貯蓄がないという状況は好ましくないです。

住宅資金特別条項

1.住宅資金特別条項とは

住宅資金特別条項は、個人債務者が住宅を手放すことなく経済的更生を図ることを可能とするため、住宅ローンの返済を継続しながら住宅を維持しつつ、他の債務を圧縮して原則3年で弁済できるようにする制度です。住宅ローン特則とも呼ばれます。
 
住宅資金特別条項の利用には、担保が付いているのが「住宅」であり、対象のローンが「住宅資金貸付債権」でなければなりません。
 
「住宅」と認められるためには、
①所有する建物であること
②自己の居住の用に供する建物であること
③床面積の2分の1以上に相当する部分が専ら自己の居住の用に供されること
の要件を満たさないといけません(複数建物がそれらを満たす場合には主として居住の用に供する建物でなければいけません)。
 
この3つの要件を充たす限り、店舗兼居宅、二世帯住宅でもかまいません。
必ずしも単独で所有している必要はなく、共有の不動産でも対象になります。
 
「住宅資金貸付債権」と認められるためには、
①住宅の建設・購入あるいは住宅の改良に必要な資金の貸し付けであること
②分割払いの定めがあること
③債権または保証人(保証会社)の主たる債務者に対する求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されていること
の要件を満たさないといけません。
この3つの要件を充たす限り、借り換えローンやリフォームローンでもかまいません。抵当権ではなく根抵当権でもかまいません。
 
通常の住宅ローンですと、「住宅」、「住宅資金貸付債権」とも上述の要件を満たします。
 
住宅資金特別条項には、①期限の利益回復型、②リスケジュール型、③元本猶予期間併用型、④同意型・合意型の4つの種類があります。
 
住宅ローンの期限の利益を喪失していなくて、そのまま約定の弁済を続ける最も多いケースを「約定型」あるいは「そのまま型」と呼んでいます。
保証会社が既に代位弁済をしていても利用できます(「巻戻し」)。ただし、保証会社による代位弁済から6か月以内でなければならない等条件があります。利息損害金等の費用負担も問題となります。
抵当権が実行され競売を申し立てられているケースでは、競落されてしまうと住宅資金特別条項が利用できなくなりますので、中止命令申立てが必要です。
 
借入が住宅ローンだけのケースでも住宅資金特別条項を利用した個人再生が可能です。
 
住宅資金特別条項が利用できないときは、別除権協定を債権者と結んで住宅を残す方法も理屈上は考えられますが、実際上はなかなか難しいです。

2.住宅資金貸付特別条項が利用できるか問題となるケース

住宅資金特別条項が利用できるかどうかの判断は技術的で難しい場合があります。弁護士に相談される際には、①住宅ローンの契約書、②不動産の登記簿謄本、③固定資産課税明細書、④返済予定表をお持ちください。
 
住宅資金特別条項が利用できるか問題となる具体的な例についていくつかコメントをいたします。
 
◆オーバーローンではないケース◆
住宅資金特別条項は、自宅不動産がオーバーローン状態(不動産価値よりも抵当権の被担保債権の方が大きい状態)でなくとも利用できます。
ただし、余剰価値(不動産価値マイナス抵当権の被担保債権)は、清算価値に計上しなければいけません。余剰価値が大きいと、最低弁済額が大きくなりすぎます。
 
◆賃貸に出しているケース◆
賃貸している不動産については、自己の用に供する建物ではないとして住宅資金条項が使えないのが原則です。
しかし、転勤の期間を利用するなどして一時的な賃貸借をしており、将来的に居住の用に供すると客観的に認められるケースでは、住宅資金特別条項の利用が可能です。
 
◆他の担保が付いているケース◆
自宅不動産に住宅ローン以外の担保権が付いていたら住宅資金特別条項が利用できません。債権者間で不公平が生じるからです。
同じ理由で、滞納処分による差押えがなされている場合も利用できません。完済する、課税庁と協議が成立しているケースでは例外が認められ得ます。
 
不動産担保を差し入れてまで消費性ローンを借りる状況であれば将来の債務整理の必要性も予想できます。自宅不動産に担保を付けて借り入れをするのはできるだけ避けましょう。
 
◆諸費用ローンがあるケース◆
住宅ローンと同時に諸費用ローンを組み、自宅不動産に抵当権を付けているケースでは、住宅資金特別条項が利用できないのが原則です。しかし、諦める必要はありません。
運用上は、
①住宅の建設もしくは購入に密接に関わる資金の借入れであること
②諸費用ローンの額が住宅資金に比べて僅少であること
をきちんと説明できるケースでは、諸費用ローンを住宅資金貸付と扱ってくれる傾向にあります。
②は通常満たしますね。住宅ローンの1割程度が諸費用ローンの金額のはずです。①は、諸費用ローン契約書の資金使途欄の記載や領収書にて、登記費用、仲介手数料、税金、火災保険料等住宅の建設もしくは購入に密接に関わる資金であったことを説明すれば大丈夫です。
ただし、諸費用ローンを住宅資金貸付と認めるのは例外的取り扱いなので、個人再生委員が選任される可能性が高いと思われます。
 
◆夫婦ABが同時に債務整理しなければならないケース◆
夫婦ABが同時に債務整理をしつつ自宅を維持したい場合には気を付けないといけません。場合によっては自宅の維持に支障があります。
不動産所有者名義と住宅ローンへの関わり合いでパターンを分けて説明します。
 
①Aが所有者兼債務者でBが住宅ローンに関与していない
BがAの住宅ローンの連帯保証人や連帯債務者ではない、かつ不動産の所有権持分ももっていないケースが大多数ではないでしょうか。
Bの債務整理がAの住宅ローンに影響を与えることはありません。単純に住宅ローン債務者であるAが住宅資金特別条項を利用して個人再生を進めます。Bは自己破産でも個人再生でもかまいません(勿論任意整理でもかまいません)。
 
②Aが所有者兼債務者でBが連帯保証人
住宅ローン債務者であるAは住宅資金特別条項を利用して個人再生ができますが、保証人のBは住宅資金特別条項を利用できません。Bは所有者ではありません。
ここで困ることがあります。保証人の自己破産個人再生申立ては住宅ローンの期限の利益喪失事由に挙げられています。
Bが個人再生あるいは自己破産をすることによりAの住宅ローンの期限の利益が喪失されないように、住宅ローン債権者との交渉が必要になります。弁護士が交渉をすれば、多くの債権者は期限の利益を喪失しない扱いにしてくれるとは思います。
 
③Aが所有者兼債務者でBが住宅ローンの連帯債務者
所有者であるAしか住宅資金特別条項が利用できません。
Bが自己破産なり個人再生なりを選択するのであれば、上述の連帯保証人のケースと同じような交渉が必要です。
 
④不動産はAB共有、Aが債務者、Bが連帯保証人
このケースでは、ABが同時に個人再生を申し立てる場合に限って、夫婦ともに住宅資金特別条項が利用できるとされています。Bは所有者でありますが、保証債務履行請求権は住宅貸付金に該当しません。同時に申し立てる場合に限って利用が許される所以です。
なお、債務が住宅ローン債権のみで他に借金がなくても個人再生申立ては可能ですので、Bに他の債務がなくても同時申立てができます。
 
⑤不動産はAB共有、ABが連帯債務者
登記簿の乙区を確認してください。住宅ローンの抵当権の債務者の記載として夫婦AB両名が記載されていれば問題なく住宅資金特別条項の利用ができます。不動産が夫婦共有の場合はこのケースが多いと思います。抵当権の債務者の記載がズレているケースは記載のない方の配偶者は利用できないことになります。
 
⑥不動産はAB共有、ABが個別に住宅ローンを負担
夫婦がそれぞれ個別の住宅ローンを組んでいるケース(ペアローン)は、ABのそれぞれの住宅ローンについて各ABを債務者とする抵当権が設定されていれば、住宅資金特別条項が利用できます。ただし、このケースでもABが同時に個人再生を申し立てる必要があります。
 
◆住宅ローン債権者に他の借入れもあるケース◆
住宅ローンを借りている銀行に、カードローンなどの他の借金もあることは多いです。
このようなケースでも住宅資金特別条項を利用して、住宅ローンのみ支払いを継続することはできます(他の借金は再生計画に基づいてその一部を支払うことになります)。もっとも、受任通知が届くと引落口座を凍結されると思いますので、返済方法を銀行と協議する必要が出てきます。

小規模個人再生

1.小規模個人再生の要件

小規模個人再生を利用する要件は次のとおりです。
勿論。個人再生ですから、個人であることが前提となっています。
 
◆手続開始要件◆
①支払不能のおそれがあること
②申立てが適法であること
民事再生法25条所定の棄却事由がないこと
④将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあること(収入要件)
⑤負債総額が5000万円を超えていないこと
 
③は、主に再生計画の立案あるいは可決の見込みがあることが要求されます。特に履行可能性が問題になると思ってください。きちんと計画どおり弁済していける見込みがあるのかということです。
⑤では、住宅資金特別条項の住宅資金貸付(住宅ローン)の金額は外して計算します。
 
◆認可要件◆
再生計画が認可されるための認可要件として、債権者の消極的同意が必要です。そのため、書面決議手続があります。
具体的には、書面決議により、再生債権者の頭数の半数以上の不同意、あるいは基準債権額(議決権の額)の過半数となる債権者の不同意があると、再生計画案が否決されます。手続もそのまま廃止されることになります。
 
債権者が2社以内のケース、過半数の債権額を占める債権者がいるケースでは、1社でも反対をすれば再生計画が認可されませんので小規模個人再生の選択も慎重になり、給与所得者等再生の選択も検討します。
 
◆派遣社員、契約社員、アルバイト、年金生活者◆
継続的な就労実態がある限り、たとえ勤務先が変わっていたとしても、「将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込み」(収入要件)を満たすと認められます。年金生活者もまた利用可能です。給与所得者と違って、小規模個人再生では簡単に認めてくれる傾向にあります。
 
◆家族の収入や親族からの援助◆
将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあることの要件を満たせば、履行可能性については配偶者などの収入を入れた家計収支で判断します。親族の援助も確実に見込まれることが疎明できれば加味してもらうことは可能です。
 
◆専業主婦・専業主夫◆
継続収入の要件を充たさないために個人再生を利用することはできません。
 
◆再生中に退職予定の場合◆
転職先が確実に見込まれているときは可能です。
なお、退職金が出る場合には最低弁済額が大きくなってしまいます(手続中に支給されるケースで4分の1評価が可能であったケースがあります)。
 
◆債権者の反対◆
債権者の反対の可能性は高くはありません。従前は、公的金融機関以外はよほどのことがない限り反対をしてきませんでした。債権者にとって反対しても自己破産を選択されてしまうと経済的合理性がありません。
しかし、最近は、ケースバイケースの判断で、あるいは会社の方針として、反対する債権者が増えてきているような気がします。勿論、反対をしてこない債権者が大多数であることは変わりありません。
 
◆不認可となったら◆
債権者の反対により再生計画が不認可となった場合は、手続廃止を待って、すぐに自己破産あるいは給与所得者等再生を申立てます。
弁済率を上げれば債権者が賛成するという見込みがあれば、交渉の上、小規模個人再生の形で再度申立てをすることもあり得ます。

2.小規模個人再生の流れ

広島地方裁判所本庁における小規模個人再生の流れは次のとおりです。
わかりやすくするために細かい手続は捨象しております。
 
なお、個人再生委員が選任されない多くのケースでは、弁護士が代理する限り、ご本人が裁判所に行くことは原則ありません。例外的に事情を確認のために呼び出されることがあるだけです。
 
◆受任通知の発送◆
契約後、債権者に受任通知を発生します。
弁済はストップいたしますが、住宅資金特別条項を利用するケースでの住宅ローンは引き続き弁済してもらいます。
受任通知の発送により、借入れをしている銀行の口座が凍結されることにご注意ください。
 
◆申立準備◆
個人再生では家計収支表を3か月分提出しないといけません。自己破産よりも1か月分多く、準備期間を3か月から4カ月とることが多いです。
また、個人再生を選択するケースでは収入が相応にあり法テラスを利用できないケースも多いです。弁護士費用の分割払い期間が長くなれば準備期間も長くなります。
 
◆申立て◆
住所地(住民登録地と居所が別の場合には居所が優先)を管轄する地方裁判所に個人再生手続開始を申し立てます。
申立て後、1~2週間で、裁判所から補正連絡(宿題のようなもの)が来ることが多いです。
なお、履行可能性を確認するために必要とされる「試験積立」(予想される計画弁済額の月額相当額を毎月積み立ててもらうこと)を開始するタイミングも申立て時が多いです。
 
◆開始決定◆
補正連絡に対応し予納金を納めれば開始決定が出ます。裁判所から債権者に対して債権届の提出を求めます。
個人再生委員が選任されるケースでは、予納金を納付したタイミングで個人再生委員が選任され、選任後3週間を目途として開始要件に関する意見書が出された後に開始決定が出ます。
 
◆報告書、計画案の提出◆
財産状況報告書、再生計画案、返済計画表の提出期限が開始決定の2か月後程度に設定されます。試験積立通帳の写しは必ず、場合によっては家計収支表も一緒に提出します。
 
◆書面決議◆
報告書等提出後1週間程度で書面による決議に付する決定が出ます。回答書提出期限は1月弱でしょうか。
個人再生委員が選任されているケースでは、意見書の提出に2週間ほどかかります。
 
◆再生計画の認可・不認可◆
回答書の提出があり、再生債権者の頭数の半数以上の不同意、あるいは基準債権額(議決権の額)の過半数となる債権者の不同意がない限り、裁判所が再生計画の認可決定を1週間以内に出してくれます。
 
◆弁済開始◆
再生計画の認可決定が確定したら、再生計画に基づいた弁済の開始です。
再生計画認可の翌月末から弁済が開始するイメージでいいと思います。
 
◆申立て~認可決定の期間◆
スタンダードでなケースで5カ月程度だと思ってください。弁済開始までは6か月前後ですね。個人再生委員が選任されるケースでは1か月程度長くなります。
広島地方裁判所本庁では、開始決定が出ると今後の手続の予定を書いたスケジュールをもらうことができます。

給与所得者等再生

1.給与所得者等再生の要件

給与所得者等再生は、小規模個人再生の特則と位置付けられています。小規模個人再生の特則ですので、前述の小規模個人再生の手続開始要件を満たしていることが前提です。
 
小規模個人再生と違い、再生債権者による書面決議が必要ありません。債権者の意見は聞かれずに、裁判所がOKを出したら再生計画が認可されます。
再生債権者の書面決議を不要とする代わりに、要件が加重され、最低弁済額の計算を変わります。
それらを充足するかの意見をもらうため個人再生委員が選任される可能性が高まります。
 
◆加重される要件◆
「給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがあり、収入の変動の額が小さいと見込まれること」が必要です。将来において継続的・反復的に収入を得る見込みがあることが小規模個人再生よりもかなり厳しく吟味されることになります。
原則として過去2年間で給与収入の額に5分の1以上の変動がないことが要求され、もし変動があれば今後の変動が小さいと見込まれる事情の説明が必要です。
 
また、破産免責決定の確定、給与所得者等再生計画認可決定の確定、あるいはハードシップ免責再生計画認可決定の確定から7年を経ていることが必要です。
それらから7年未満の間も個人再生を利用すること自体はできるのですが、小規模個人再生を選択します。
 
さらに、個人再生では再生計画が遂行される見込みがないときは再生計画が認可されませんが、この再生計画の履行可能性をかなり厳しく吟味されます。小規模個人再生は再生債権者の書面決議を経るのと異なり、給与所得者等再生では債権者の意見を聴かずに認可の決定をするため厳しく吟味されます。小規模個人再生では書面決議の結果認可できるときは例外なく認可されます。
 
最低弁済額の計算方法◆
給与所得者等再生では、再生計画において計画弁済額を定める際の最低弁済額小規模個人再生と比べて厳しくなっております。
生活保護基準に従って計算した可処分所得の2年分以上であることが要求されます。収入と被扶養者の数によっては、可処分所得が大きくなりますので、独身者や収入が多い方は選択ができないケースもあります。
詳細は後述いたします。
 
◆個人事業主◆
給与所得者等再生といっても、給与に準じる定期的な収入があればいいわけで給与所得者だけが利用できるわけではありません。個人事業者であっても、安定的な収入が見込まれる限りで給与所得者等再生の利用も可能です。
 
◆派遣社員、契約社員、アルバイト、年金生活者◆
将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあること(収入要件)を満たし、かつ収入の変動幅が小さいと見込まれる場合には、給与所得者等再生も選択可能です。裁判所からは厳しく吟味されますが。年金生活者もまた利用可能なケースがあります。

2.給与所得者等再生の流れ

基本的には小規模個人再生のケースと同じ流れです。
書面決議が要らない分手続期間は短いでしょう。
 
ただし、給与所得者等再生では、個人再生委員が選任される可能性が相対的に高いと思ってください。

再生弁済額

1.最低弁済額とは

個人再生は、計画弁済額を原則3年、最長5年で、弁済する再生計画を策定しますが、計画弁済額の定める際の下限の金額が最低弁済額です。再生計画には、最低弁済額以上の計画弁済額を定めます。
 
最低弁済額をそのまま計画弁済額とする形をとることが多いです。もちろん、それを上回る計画弁済額を定めることもあります。債権者の中には弁済率の数字を反対するかしないかの判断にするところもあります。
 
小規模個人再生給与所得者等再生では最低弁済額の計算方法が違います。再生債権者の書面決議が必要にもかかわらず小規模個人再生の利用が圧倒的に多いのはこの理由によります。

2.最低弁済額の計算

最低弁済額の計算方法はややこしいです。
財産があまりなく、住宅ローン以外の借金も1500万円以下という最も多いケースでは、小規模個人再生では100万円と債務の5分の1(80%カット)の大きい方の額、給与所得者等再生では可処分所得によりそれが大きくなりうる、とイメージしてください。
 
小規模個人再生最低弁済額
小規模個人再生最低弁済額は、
①財産評価額(清算価値)
②基準債権から計算される最低弁済額(総債務の一定割合)
の大きい方の金額になります。
 
①まず、清算価値保障原則があります。財産財産(清算価値)以上の計画弁済額を定めないといけません。自己破産をする場合よりも多く弁済しなさいということです。そのため、清算価値の考え方は破産手続とほぼ同様になります。詳しくは後述します。
 
②次に、基準債権から計算される最低弁済額、次のとおりです。
基準債権額100万円以下・・・・その額
基準債権額の500万円以下・・・100万円
基準債権額1500万円以下・・・基準債権の5分の1
基準債権額3000万円以下・・・300万円
基準債権額5000蔓延以下・・・基準債権の10分の1
 
基準債権額には、未払利息・遅延損害金も入ります。手続が遅れるとだんだん大きくなっていきますので、気を付けてください。
 
なお、基準債権には、住宅資金特別条項を利用する場合の住宅ローン債務額は入りません。
 
例えば、借金が500万円、清算価値が30万円であれば、基準債権から計算される最低弁済額100万円が大きいですから100万円が最低弁済額です。借金が500万円、清算価値が150万円ですと、基準債権から計算される最低弁済額100万円よりも清算価値150万円の方が大きいですから、最低弁済額は150万円になります。
 
給与所得者等再生最低弁済額
給与所得者等再生の場合には、
小規模個人再生における
①財産(清算価値)、②基準債権から計算される最低弁済額
のいずれか大きい金額という計算に加えて、
最低弁済額が可処分所得の2年分以上であることも要求されます。
可処分所得は裁判所の書式である可処分所得算出シートに基づいて計算します。
 
可処分所得は、【手取り収入額-費用額】です。
 
【手取収入額】は、総収入から所得税額・住民税額・社会保険料額を控除して算出します。それだけしか控除できません。計算には過去2年分の源泉徴収票(あるいは確定申告書)、市県民税課税台帳記載事項証明書が必要になります。
 
【費用額】は実費ではありません。個別の事情にかかわらず、再生債務者の収入と年齢、被扶養者の数と年齢から、機械的に算出されます。生活保護基準がベースになっております。通常は、実際にかかっている費用よりも小さい数字になります。
 
実際に計算してみると、可処分所得の2年分がかなり大きくなることも多いです。収入が相応にあり、被扶養家族が少ないあるいは独身者のケースです。

清算価値

1.清算価値とは

小規模個人再生でも給与所得者等再生でも、計画弁済額を定める際は、清算価値を上回るように定めなければいけません。清算価値保障原則です。
 
清算価値保障原則は、自己破産との均衡を図るためのものです。
そのため、清算価値の計算においては、
・基本的に破産の場合の財産評価方法によります。
・破産における自由財産拡張相当の財産99万円までを控除することができます。
・破産における否認相当行為がある場合には清算価値に計上します。
 
手続的には、清算価値を、裁判所の書式である財産目録兼清算価値算出シートに従い算出するようになっています。

2.清算価値の注意点

清算価値の計算は、基本的には破産の場合の財産評価方法に従いますので、ここではいくつかコメントするに留めます。
評価方法や計算方法は専門的なため、弁護士の指示にしたがって資料を提出していただき、弁護士が計算することになります。
 
◆破産における自由財産◆
個人再生では破産における自由財産は清算価値に計上しません。自由財産には、本来的自由財産と拡張手続を経たそれ以外の自由財産があります。
 
本来的自由財産である現金と自由財産拡張の対象となる財産のうち全体で99万円までが清算価値から控除できるとイメージしてください(例えば300万円の財産価値があっても清算価値は201万円になりうる)。
 
本来的自由財産は、破産法で定められた自由財産で、99万円以下の現金及び差押え禁止財産が本来的自由財産だと考えてください。
差押え禁止財産の主なものは次のとおりです。
・生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用品等(通常の家財一式)
・退職金の4分の3(もっとも実際に退職間近でないかぎり支給見込額の8分の1の評価です)
・小規模企業共済
・中小企業退職金共済、建設業退職金共済
・確定拠出年金
差押え禁止財産は清算価値に計上しません。
 
自由財産拡張は、自由財産の範囲を本来的自由財産以外の財産まで拡げる手続ですが、その自由財産拡張対象となる財産について、本来的自由財産である現金を含めての99万円の範囲で清算価値から控除することができます。
経済的更生に必要・相当と認めてくれない財産は自由財産拡張の対象となりません。不動産、株式、債権、投資信託などが典型です。車については、実用車は対象ですが、趣味のための車は対象外です。それらの判断をしないと清算価値は計算できないことになります。
 
◆退職金の評価◆
退職が差し迫っている例外的なケースを除き、自己都合退職した場合の支給見込額の8分の1が財産額として評価されます。仮に退職が決まっているが受取前という段階まででしたら、差押え財産との関係で4分の1の評価まで抑えることができます。
これに対し、中小企業退職金共済(中退共)、小規模企業共済は、退職金と類似のものですが、法律上差押え禁止財産ですので財産とはみなされません
 
◆保険の評価◆
解約返戻金額が評価額となります。契約者貸付を受けている場合には同貸付金を控除した金額になります。解約をしたら現金預金での評価です。
確定拠出年金は本来的自由財産でありカウントされませんが、年金保険は評価の対象です。
 
◆破産における否認対象行為があるとき◆
破産における否認対象行為(一定の時期における贈与等無償行為や偏頗弁済など)があるときは個人再生手続においても清算価値に影響します。
否認相当行為があった場合には、破産において破産管財人否認権を行使して取り戻すべき財産の評価額を、清算価値に計上する扱いになります。例えば、申立て直前に100万円贈与したのであればその100万円が現在のこっているものとして清算価値に加えるのです。これも破産との均衡を図るためです(清算価値保障原則)。
 
免責不許可事由の程度が大きいため個人再生を選択しても、それが否認対象行為にもあたる場合には、その分清算価値が大きくなる結果、最低弁済額も大きくなる可能性があります。
 
◆共済借入があるとき◆
共済借入は個人再生開始決定が出るまでは給与天引きを止めないことがほとんどです。偏頗弁済としての否認相当行為として、受任通知後の弁済額を清算価値に計上するのが通常です。早めの申立てが必要なケースがあります。
 
◆交通事故の被害者◆
損害賠償金が入金されていれば、現金あるいは預貯金として財産評価されます。
そうでない場合には、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料という一身専属性が認められる慰謝料請求権とそれ以外の財産的損害を填補する損害賠償請求権に分けて考えます。
前者は金額が確定しない限りは財団債権に属さないとされているので確定しない限り清算価値に計上しません。後者の財産的損害に基づく損害賠償請求権は、財産として評価されます。治療費、介護費用、入院雑費については自由財産拡張対象財産としてその範囲で清算価値から控除することができます。
 
◆試験積立金◆
個人再生では履行可能性を判断するために、弁済計画に基づいて想定できる月額弁済金相当を通帳に積立ていただき、裁判所に再生計画等と一緒にその通帳写しを提出します。それを試験積立てと呼びます。履行テストですね。試験積立金は再生計画認可決定が確定次第、引き出す等して再生計画に基づく弁済に使ってもらいます。
再生開始決定までの試験積立金は清算価値に計上することになっていますので、当職は申立て後に試験積立てを開始してもらうことが多いです。

個人再生委員

1.個人再生委員とは

裁判所が必要と判断するケースで個人再生委員が選任されます(全件について選任する運用をしている裁判所もあります)。個人再生委員には弁護士が選任されます。
 
個人再生委員の仕事は、
①再生債務者の財産及び収入状況の調査
②再生債権につき適法な評価申立てがあった際の裁判所の補助
③再生債務者が適正な再生計画案を作成するために必要な勧告の実施
のうち裁判所が指定する職務を行うとされています。
といっても、手続全般に関してサポート、監督をするイメージです。
 
主に、
将来おいて継続的または反復して収入を得る見込み
破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれ
再生計画案の作成若しくは可決の見込みまたは認可の見込みがないことが明らかではないか(財産状況、清算価値保障原則、履行可能性)
をチェックすることになります。
 
個人再生委員は、破産手続の破産管財人と違って財産の管理処分権を有しませんし、調査権限もあまりありません。個人再生委員が再生開始の適否等を判断するのに必要な資料が提出されないことによる不利益は再生債務者が負担しますので、個人再生委員から求められた報告や書類はきちんと提出するようにしなければいけません。
 
個人再生委員が選任されることになると、裁判所への予納金が20万円程度高くなります。
 
個人再生委員の意見書(開始要件)の提出スケジュールが選任後3週間と、上述のような点を全て調査しなければならないことを考えると非常にタイトです。個人再生委員選任前に資料の提出などをお願いされることが多いでしょう。
 
開始決定後では、家計収支表の継続提出と試験積立口座の継続的な提出をお願いされるでしょう。個人再生委員は、その上で、再生計画案及び弁済計画表の作成指導をします。

2.個人再生委員が選任されるケース

広島地方裁判所本庁では必要があると裁判所が判断するケースのみ個人再生委員が選任されます。個人再生委員が選任される可能性があるケースでは追加予納金20万円程度の用意も考えておかなければいけません。
 
当職は個人再生委員を拝命することも多いですが、その経験から言えば、次のようなケースで選任される傾向です。
 
◆本人が再生手続をよく理解していないと判断されるケース◆
本人申立てや司法書士が書面作成代理をする案件で、本人が再生手続をよく理解していないと裁判所が判断したケースです。弁護士代理案件では弁護士が代理人おして裁判所に対応しますのでこのようなことは起きません。
 
◆裁判所からの補正要請に十分に対応していないケース◆
申立てをすると、裁判所から必要書類の不備の追完を指示されたり、問題点を指摘されて報告を求められたりします。そのことを補正連絡といいます。補正連絡にきちんと対応しなければ、個人再生委員が選任される傾向にあります。
 
住宅資金特別条項の適用要件を充たすか検討が必要なとき◆
住宅資金特別条項を利用する場合、不動産の価値の算定や諸費用ローンがある場合などの要件を充たすのか問題が生じることがあります。その判断のために個人再生委員が選任されることがあります。
 
◆開始要件や清算価値に疑義が生じ得る案件◆
収入要件を充たすかどうかや清算価値の計算方法などに疑義が生じるケースでは個人再生委員が選任されます。
 
◆破産における否認対象行為があるケース◆
破産における否認対象行為がある場合には清算価値に計上しなければならないのですが、その評価のために個人再生委員が選任される可能性があります。
 
◆別除権協定を締結する場合ケース◆
別除権協定を締結する場合には個人再生委員が選任されます。別除権協定を締結するケースはレアですので、あまり気にしなくてもいいです。

個人再生の費用

1.個人再生の費用

個人再生に必要な費用としては、弁護士費用と裁判所への予納金、予納郵券が挙げられます。
弁護士への相談時には、全体でいくかかかるのか、いつのタイミングで必要になるのか、よくご相談ください。
 
◆相談料◆
当事務所では借金問題の初回相談料は無料とさせていただいております。
お気軽にご相談ください。
 
◆弁護士費用◆
着手金が必要です(成功報酬金をとる事務所はあまりないと思います)。少額の実費を請求されることもあります。
 
着手金の相場は30万円から35万円(税抜き)前後でしょうか。
当事務所では、原則として25万円(税抜き)から対応させていただいておりますが、ご事情により増減させていただくこともあります。
 
◆法テラス◆
弁護士費用は法テラスの民事法律扶助制度を利用してご準備いただくことも多いです。弁護士費用を立て替えてくれ、毎月5000円からの分割で償還していきます。債権者の数にもよりますが20万円からの安価な設定となっております。自己破産よりも設定金額が高めとなっている理由は、手続が煩雑なためでしょうか。
法テラスへの利用は家計収入が一定未満であること、財産が一定額未満であることが必要です(資力要件)。申請は弁護士事務所を通じて行いますので、要件に該当するかどうか、必要書類は弁護士にお尋ねください。
なお、法テラスの無料法律相談も同一案件3回まで利用できます。
 
◆予納金等◆
個人再生委員が選任されないケースでは、債権者の数にもよりますが、予納金及び予納郵券で30,000円ほどお預かりしております。余った分はご返却しています。
個人再生委員が選任されるケースでは、予納金が20万円程度余分にかかる(直近では216,000円のケースがありました)と思ってください。個人再生委員の報酬分予納金が高くなります。

2.費用の準備

費用の準備の方法も弁護士とよく相談しないといけないことです。
 
法テラスの民事法律扶助を利用しないケースでは、分割払いにも応じております。
個人再生のケースでは、借金の弁済をストップしている間に、個人再生をしたと仮定して想定される月当たりの弁済額を毎月お支払いいただいて、試験積立ての代わりにすることが多いです。約束どおりお支払いできないかったケース、あるいは支払いが厳しかったケースでは、自己破産へ方針を変更することも検討します。
 
資産処分により弁護士費用、申立て費用を用意することも自己破産と同様に許容されています。
 
個人再生委員が選任される可能性があるケースでは、予納金の準備も考えなければなりません。準備中に用意してもらいますが、用意できる目途がたつまで申立てを遅らせるケースもあります。
 
費用の準備の方法や時期は、個々の事情に応じて申立てのタイミングを図りながら考えないといけません。弁護士によくご相談ください。

準備の注意点

1.弁護士のサポートが必要

個人再生の申立ては技術的な面が多いため、専門家のサポートが必要になります。
 
個人再生のサポートには、個人再生手続は勿論、清算価値等で考え方の重なる破産手続にも精通してなければいけません。個人再生や破産を表からも裏からも見ることができる破産管財人個人再生委員の経験も重要です。破産管財人個人再生委員は弁護士が担っています。弁護士のサポートを受けるべきでしょう。
 
また、自己破産と同様、個人再生申立代理人となれるのは弁護士だけです。諸手続について代理しあるいは同席できるのは弁護士ですので、やはり弁護士のサポートを受けるべきでしょう。
 
破産、個人再生に精通し経験豊富な弁護士であれば、ご相談内容に応じて、任意整理個人再生自己破産等のどの債務整理手続が適切なアドバイスができますし、問題となり得る点を想定して法的な対応を検討・整理できます。弁護士ならだれでもいいというわけではありません。準備や組立ての巧拙が、後の個人再生手続での手続進行や解決に直結します。個人再生委員の選任の有無にも関係してきます。
 
弁護士に相談される際には、細かいことでもどんどん質問してください。役に立つ弁護士であれば、具体的な回答やアドバイスがもらえるはずです。
 
当職は、破産や再生事件を業務の柱の1つとして倒産法制に精通し破産管財人等の経験も豊富な「倒産弁護士」の一人であると自負しております。個人再生については広島において最も多くの申立代理人や個人再生委員をしている弁護士の1人だと思います。ぜひ、当事務所にご相談ください。一緒に解決策を探していきましょう。

2.準備の注意点

個人再生の準備における注意点は必要書類を含めて自己破産の準備の注意点と重なります。ここでは、個人再生特有の注意点を中心にいくつかコメントいたします。
 
◆受任通知◆
個人再生においても受任通知を借り入れのある銀行に発送すると銀行口座が凍結されます。残高がある場合には相殺もされてしまいます。保証人の口座も同様ですのでご注意を。借入のある銀行に給与口座、年金口座がある場合、変更できたことを確認できてから受任通知を発送します。
住宅ローン債権者である銀行に他の借入れがあるケースでは、住宅ローンの返済方法を銀行と協議をして住宅ローンのみ返済を継続します。
 
自己破産個人再生の選択は申し立て直前まで変更できる◆
方針は申立て直前まで変更可能です。個人再生の申立準備期間は、本当に個人再生が可能か見極める期間でもあります。家計収支表の作成をしながら、あるいは費用を分割でご準備されながら家計をチェックした結果、個人再生に必要な弁済原資が確保できそうもなく自己破産に変更するということがあります。
 
◆試験積立◆
当職は試験積立を申立て後にしていただいております。開始決定前の試験積立金額は清算価値に計上されるからです。また、再計計画に載せる計画弁済額は準備が進まないと正確に把握できないという理由もあります(弁済のテストですので再生系買う認可後に想定される金額を積み立ててもらうのです)。
 
住宅資金特別条項の利用を考えている場合◆
相談時には、住宅ローン契約書、不動産登記簿謄本、固定資産課税明細、住宅ローンの残高が分かる資料をお持ちください。事前に近くの不動産業者にだいたいの相場を聞いてみることもできれば有用です。
申立て時には、原則として不動産業者の査定書が要求されます。取得できなければ弁護士に相談してください。銀行発行の住宅ローンの残高証明書も必要になります。
 
◆租税公課の滞納◆
租税公課の滞納がある場合には、弁済方法を課税庁と協議をしてもらわないといけません。協議結果およびその履行状況が申立書の報告事項になっております。
 
◆債権者に漏れがないように◆
個人再生はすべての債権者を計上しなければなりせん。
手続中に債権者に漏れが判明した場合には、債権者に届出をしてもらわなければならないのですぐに弁護士に伝えてください。
手続後に債権者の漏れが判明した場合には、再生計画の再生債権の弁済率に応じて債務を弁済します。再生計画で既に期限が到来している分は一括弁済です。免責の効果が及ばない破産よりは傷が浅いですが、気を付けてください。
 
◆給与天引きの返済◆
給与天引きで救済借入等が控除される形で弁済しているケースがあります、受任通知を出しても通常止まりません。理屈上は受任通知後の天引き分は偏頗弁済となり、清算価値に計上する必要が出てきます。そのためできるだけ早く申し立てなければならないケースもあります。
 
◆家計収支表◆
家計収支表3か月分が必要書類ですが、申立て後も履行可能性のチェックのために再生計画案提出までの家計収支表の作成を指示されることがあります。そのため、家計収支表は申立後も引き続き作成してもらうようにしております。
 
◆相続関係◆
相続関係は報告しないといけません。ケースによっては遺産分割協議書、不動産登記簿謄本、戸籍等の提出が必要となります。
未分割遺産があると法定相続分が財産となり清算価値に計上しなければいけません。清算価値が大きくなりすぎ個人再生の利用を諦める可能性も少なくありません。
また、直前の遺産分割は否認対象行為かどうか吟味されます。否認対象行為であると、取り戻されるべき財産評価額を清算価値に計上することとなります。

まとめ

1.個人再生の徹底解説

個人再生の徹底解説と題して説明をさせていただきました。
個人再生は、最低弁済額(多くのケースでは総債務の5分の1になる。)を原則3年(最長5年)で分割弁済をし、その余の債務の免責を受ける手続でした。まずは任意整理か法的整理手続か検討し、次に自己破産個人再生の手続選択をします。個人再生でも、最低弁済額の計算方法の違いからまずは小規模個人再生の利用を考えますが、給与所得者等再生を選ぶべきケースもありました。住宅資金特別条項の利用は個人再生選択の目的の1つですが利用できる条件がありますので注意が必要です。最低弁済額のルールは複雑で清算価値は破産と同じ考え方で計算をする必要がありました。個人再生委員は聞きなれない制度だったと思います。
徹底解説をしたつもりですが、かえって個人再生はややこしい手続だと思われたかもしれません。難しいことは専門家に任せれば大丈夫ですのでご心配なさらないでください。費用の面もご説明いたしましたが、通常無理なくご用意いただけています。
個人再生は経済的更生の手段として有効なものの1つです。ぜひ選択肢に加えてご検討ください。

2.専門的な弁護士のサポート

個人再生の制度は技術的で理解が難しいです。専門家のサポートです。
破産手続、個人再生手続に精通し、破産管財人個人再生委員の経験が豊富な弁護士のサポートを得ることが、スムーズに手続を進行するため、かつ問題が発生することを防止するための第一歩です。まずは、そのような弁護士に早めにご相談ください。具体的な解決方法を説明してもらえますし、先の見通しを把握でき安心できると思います。費用面も大事な相談内容ですので、ご遠慮なく相談されてください。
当職もそのような弁護士であると自負しております。当事務所にご相談いただければ幸いです。

この記事を書いた人

firsttime_lawyer.jpg弁護士仲田誠一(広島弁護士会所属)
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27アーバンビュー上八丁堀602
TEL082-223-2900
https://www.nakata-law.com/
https://www.nakata-law.com/smart/
◆経歴
1996年4月~
あさひ銀行 融資、融資管理、企業再生、法人営業等
2002年5月~
東京スター銀行 経営管理、内部監査、法人営業等
2004年4月~
広島大学大学院法務研究科
2008年12月
弁護士登録
2017年~各前期
広島大学大学院客員准教授(税法担当)
◆資格
弁護士
公認内部監査人試験合格

個人破産の徹底解説

個人破産の徹底解説
広島市の弁護士の仲田誠一です。
今回は、個人(自然人)の破産についての徹底解説です。当事務所では破産や個人再生などの倒産事件を業務の柱の1つとしています。できるだけ実務的な、実際に役に立つ情報を盛り込んだつもりです。ご参考にしてください。
なお、会社、法人の破産の解説については別途コラムを用意しておりますので、ぜひご参照ください。

目次

個人の破産とは
破産を選択する基準
同時廃止管財事件
破産しても残る財産
免責
破産における否認
非免責債権
破産準備の注意点
破産に係る費用
弁護士に依頼する意味
まとめ

個人の破産とは

1.個人の自己破産とは

破産手続とは、支払不能状態にあると判断される場合に選択される、資産・負債の清算手続です。換価できる財産を換価して債権者に配当できる場合には配当をする手続です。
個人の破産には、債務の支払義務を免れる「免責手続」が用意されています。資産と負債を清算しても債務が残りますから、別途支払義務を免除する手続が必要なわけです(法人の場合は法人格自体が消滅しますので免責手続はありません)。
裁判所の用意する申立書には免責許可決定申立てもセットで申し立てる形式になっています。
 
自己破産とは、上述の破産手続開始を「自己」が申し立てる場合です。
数は少ないですが、債権者が申し立てる債権者申立ての破産もあります。

2.個人の自己破産の流れ

自己破産申立てまでのスタンダードな流れは次のとおりです。

◆受任通知の発送◆
弁護士と契約をすると、弁護士から債権者宛に受任通知を出します。これで債権者からの督促等は止まります。原則として契約後すぐに受任通知を送りますが、事情によっては必要に応じて特定の債権者に対する受任通知の発送を遅らせることもあります。
受任通知の発送により物事が進んでいきます。期限の利益が喪失され、債権者である銀行は口座が凍結し、残高は相殺します。保証会社がいるケースでは代位弁済がなされます。車などの所有権留保物件の返却要請も来ます。
 
◆準備期間◆
申立ての準備期間は2か月~3か月です。
その間に、家計収支表の作成などの準備をしていただきます。弁護士の方は、債権者対応、債権調査をすることになります。
 
◆申立て◆
2カ月分の家計収支表の作成が完了し、債権調査も終わった、というタイミングで申し立てます。
 
申立先は、住所地を管轄する地方裁判所です(住民登録地と居所が違う場合には居所が優先します)。夫婦や連帯保証関係にある一方に管轄が付く裁判所であれば他方も同時に申し立てることができます。
 
申立て後、1~2週間を目途に、裁判所から補正命令という形で追加書類の提出要請や質問が送られてきます。
 
その後の流れは、選択される手続きによって変わるので、後述します。
 
◆給与等の差押えを受けている場合は急いで申立てる◆
受任通知時に差押えの取り下げ要請をしても応じない債権者が多いです。
そのため、可能な限り早く申立てをし、破産手続開始決定を得て、強制執行の中止を申立てます。
強制執行の中止決定をもらっても差押えが取り消されるわけではないですが、天引き分は勤務先にプールされ債権者に支払われません。免責決定が確定すれば従業員に支払われます。そのため、中止決定が出た段階では、通常の債権者は差押えを取り下げてくれます。
 
◆訴訟あるいは支払督促がなされている場合も急ぐ◆
訴訟や支払督促まで進んでいると、債権者が勤務先を知っている場合、給与等差押えに備える必要が出てきます。
訴訟の場合には答弁書を提出し、支払督促の場合には異議を出して、事実上の時間稼ぎをせざるを得ません。その間にできるだけ早く破産を申立て、破産手続開始決定へ進めなければいけません。
弁護士が代理した答弁書あるいは異議申し立ての提出があれば、手続を取下げてくる債権者も多いでしょう。

破産を選択する基準

1.自己破産を選択する基準

どのような場合に、任意整理個人再生ではなく、自己破産を選択するのでしょう。
 
任意整理とは◆
任意整理は、債権者との交渉により通常3年から5年の分割弁済契約を結ぶことです。将来の利息をカットしてくれる債権者がほとんどですが、元金カットは望めません。裁判所の調停手続を利用する場合を特定調停といいます。
 
任意整理自己破産個人再生の選択基準◆
自己破産の要件は「支払不能」、個人再生の要件は「支払不能のおそれ」です。それらがないときは、任意整理を選択することになります。理屈はそうですが、よくわかりませんね。
 
当職は、総債務を3年で「確実に」弁済できるかどうかを一つの基準としています。支払原資(通常の生活をした際に返済に回せるお金)を考えていただき、元金だけを36回で弁済できないようでしたら自己破産個人再生でいいです。裁判所に問題視されたこともありません。「確実に」というのは、ギリギリではなく余裕をもって返済に回せるお金を考えてもらうという意味です。
 
その他にも考えることがいくつかあります。まず、年収に近い消費性ローンの残高があるケースは、弁済ができないと見て自己破産個人再生でよろしいのでしょう。
 
無職、職業が安定されていない方、持病をお持ちで仕事に制約がある方は、基本的に自己破産でよろしいでしょう。債務額が小さくても「支払不能」の説明ができます。
 
生活保護を受給されている方は、金額にかかわらず自己破産を選択します。保護費からの弁済はしないように指導がなされているはずですから。
 
任意整理に応じない等強硬な債権者もいます。そのような債権者がいるケースも自己破産を選択した方がよろしいでしょう。
 
個人再生とは◆
個人再生とは、裁判所から認可された再生計画に基づいて、原則3年間(最長5年間)で一定の債務(計画弁済額)を弁済し、弁済し終わるとその余の債務の免責を受けられる手続です。任意整理自己破産との中間に位置づけられるイメージです。
債権者の同意が要らない「給与所得者等再生」と、債権者数・債権額の過半数の消極的同意が必要な「小規模個人再生」の2つがあります。給与所得者等再生は、弁済額が大きくなる可能性が大きいので、小規模個人再生を優先して考えます。
 
自己破産個人再生の選択基準◆
破産の要件は「支払不能」、個人再生の要件は「支払不能のおそれ」ですが、相対的な違いであり、どちらでも選択できるケースが多いです。
双方可能であれば、経済的更生の観点から、よりメリットの多い自己破産を優先して考えることになるでしょう。
 
他にもいくつか考えることがあります。
 
継続・安定した収入がない方は自己破産を選択します。個人再生が使えません。
個人再生を選択した場合に予想される計画弁済額を賄えるだけの家計の余裕がない場合も同じです。
 
債権者数が少ない、あるいはある債権者が過半数の債権を持っているケースでは小規模個人再生が使いにくいので、自己破産の方が無難でしょうか。反対を覚悟して個人再生を選択し、反対されれば自己破産を申し立てる戦略をとることもあります。
 
住宅ローンを支払いながら自宅不動産を維持したいケースでは個人再生です。住宅資金特別条項を用いなければいけません。
 
その他残したい財産があるケースは、ケースバイケースでしょう。個人再生でなく自己破産にて特定の財産を残す途も考えられます。
 
破産における「資格制限」にかかる職業を継続しなければならないケースでは、個人再生を選択します。保険外交員、警備員、証券外務員、宅建主任者等、法律で定まっています。
 
免責不許可事由の程度が大きい場合には、管財事件になる、あるいは免責不許可になる可能性を考慮します。免責不許可事由のない個人再生を選択する方が無難なケースもあります。
 
自己破産をいさぎよしとせず、個人再生にて少しでも弁済したいというご希望が強いケースもあります。経済的更生が可能だと判断できる限りで尊重すべきでしょう。

2.自己破産選択を悩むケースの具体例

自己破産の選択を悩む例をいくつか挙げます。
 
◆家賃滞納があるケース◆
債権者はすべて計上するのがルールです。債権者を選ぶことはできません。
破産自体では退去を求められません。しかし、家賃滞納がある場合には、家主を破産債権者として扱う必要が出てきますので、賃料不払いにより解約される可能性があります。
そのため、他の債務の支払をストップする間に家賃滞納の解消をしてもらうこともやむを得ないでしょう。偏頗弁済という免責不許可事由に該当しますが、弁護士が事情を説明して裁量免責をもらいます。なお、家主に事前に話をしてもらい、破産手続後滞納分を弁済する(これは自由です)と納得してもらって申立てたケースもあります。
 
◆勤務先に対する債務があるケース◆
名目は問わず勤務先に債務を負っているケースでは、勤務先を破産債権者に計上することは、勤務先の理解がない限り、事実上無理ですね。こちらも問題になることを承知で、やむを得ず優先して弁済するほかないケースもあるでしょう。
これに対し、組合借入、共済借入の場合には、勤務先自体からの借入れではありませんし、多くは保証会社が付いており支障がありません(ただし、給与天引きは破産開始決定が出るまで止まらないことが多いです)。
 
◆親族からの借入れ◆
親族も債権者として計上し難い場合がありますね。通帳に振込みあるいは支払の記録があって判明することがあります。客観的にはやむを得ない事情はないでしょうから、弁済を優先することは踏み込めません。
ただし、本当に貸借関係なのかを吟味してください。定期に弁済をしていないなどの場合には、法的に弁済を求められる借入金ではなく、援助(贈与)だという説明も可能です。その場合には債権者扱いをしません。
 
◆破産は恐いのか◆
破産は恐くありません。破産者の経済的更生を図るために設けられた法律上の制度であり、制裁はありません。前述のとおり、破産手続中の「資格制限」があるだけです。一定の財産を残すことができますし、家を追い出されるわけでもありません。
なお、個人信用情報機関に情報(所謂ブラック情報)が載り、破産後5年間あるいは10年間その記録が残りますが、延滞、他の債務整理でもブラック情報に載りますので程度問題ですよね。記録が残れば金融機関の審査が通りませんが、各信用情報機関加盟金融機関以外はアクセスできませんので、不動産賃借の審査などは関係がありません。
 
◆破産は恥ずかしいのか◆
破産、個人再生は官報公告があります(政府が発行する新聞のようなものに氏名・住所が載ります)。しかし、破産は恥ずかしいものではありません。破産者の経済的更生を図るために設けられた法律上の制度であり、悪いことではないのです。経済的に困窮された方は、法律上認められた制度に則り、早めに経済的更生を図るべきです。
 
◆破産をすることを家族に知られたくない◆
破産手続の中で家族であるという理由で家族に連絡が行くことはありません。程度の高い浪費のケースで家計を管理する配偶者と話をしたいと裁判所に言われた経験が1度だけあるぐらいです。
一方、同居の家族については、収入証明資料(源泉徴収票、給与明細)、家計の主口座(公共料金が落ちている口座)の写しの提出が原則必要です。
経済的更生にはご家族に事情を知っていただき協力してもらうことが望ましいことは別にして、同居家族に関する必要書類が揃うのであれば家族に内緒で自己破産が可能です。
なお、家族が保証人、債権者あるいは債務者である、あなたが家族の保証人である場合は、別です。裁判所あるいは債権者から連絡が行きます。
 
◆破産を勤務先に知られたくない◆
破産手続上、債権者ではない職場には連絡がいくことはありません。勿論、官報に氏名と住所が掲載されますが、見たことはありませんね。ほとんどの方は会社に内緒で自己破産をされています。
ただし、給与振込口座が債権者である銀行口座ならば、口座の変更を頼まないといけません。また、勤続5年以上の場合には退職金の説明資料を用意しなければいけません。その限りで勤務先の協力が必要なケースもあります。
 
◆破産すると仕事が続けられないのではないかと不安◆
通常の会社員であれば仕事に破産の影響はありません。
一部の資格や登録を伴う仕事(各種法律で定められています)だけ破産手続中に限りますが「資格制限」があり、その仕事に就けない、あるいは登録ができません。実務上見るのは、警備員、保険外交員、証券外務員、宅建主任者でしょうか。その場合でも破産手続が終われば法律上の制限が消えます。
資格制限により自己破産ができない場合には、資格制限のない個人再生等を選択することになります。
 
◆破産すると周りに迷惑がかかるか不安◆
債務は個人単位で負うものです。保証人以外には直接の迷惑がかかりません。
ただし、あなたがどなたかの借入れの保証人になっている場合には、債権者から債務者に対して保証人追加等を要請される等、間接的に影響があります。
また、不動産を共有している場合には、破産管財人があなたの持分を換価しますので、共有者に影響を与えます。
 
◆破産しても携帯・スマホが利用し続けられるか◆
携帯電話、スマートフォンでは、本体の購入代金を分割支払していることが多いです。厳密に見れば割賦債務に違いなく、破産債権でしょう。
しかし、実務上は、通信会社を債権者として扱わないことが原則となっております(料金滞納があれば別です)。生活必需品ですからね。
したがって、自己破産をしても利用し続けられるのが原則となります。
注意点があります。
ただし、おさいふケータイなどスマホのクレジット機能の使用は止めていただきます。借金と同様ですので。
また、1台当たり料金が1万前後に抑えていただきたいです。高額な支払いをしている場合には、裁判所から突っ込まれる可能性があります。
なお、通信会社のクレジットカードの利用がある場合など通信会社を債権者として扱うべきケースでも、利用料金のみを支払い続けることにより利用継続できる例が多いです。
 
◆自動車が手放せない◆
ローンのない車であれば、外車や高級車ではない限り、初年度登録から6年以上経ていれば価値がゼロと評価され、手元に残せます。6年未満の場合、自由財産の拡張手続等によって手元に残すことになります。車の価値は査定書かレッドブックの中古車相場で疎明します(レッドブックは当事務所で用意しています)。
 
車が所有権留保物件(クレジット会社のローンの担保になっているケース)では、返却が必要です。価値がないと放棄してくれるケースもありますが稀です。
親族などの助けを得て、残債を弁済する、あるいは買取りをする等により、車を残す方策もありますが、やり方を間違えると裁判所に問題視されますので弁護士と相談の上で進めてください。
 
相談時や準備の打ち合わせ時には車検証の写しを見せてください。普通自動車の場合は車検証の所有者名義によっては返還してはいけないケースもあり、間違って返却するとそれ自体で管財事件になり得ます。
 
なお、銀行のオートローン、マイカーローンのケースでは車が所有権留保物件ではないことが通常です。返還を求められた経験はありません。
 
◆2度目の破産◆
2度目の自己破産も、前回の破産免責が確定してから7年を経ていれば可能です。
7年以内であると不可能と考えてください。免責不許可事由の1つなのですが、容易には裁量免責をもらえません。個人再生を選択すべきことになります(小規模個人再生のみ利用可能です)。
 
二度目だからといって必ずしも管財事件になるわけではありません。同時廃止になる例も多いです。勿論厳しくは見られますので、それなりの準備が必要です。前回の破産と今回の破産とでの事情の違いを明確に説明した方がいいでしょう。
 
必要書類として、前回の破産開始決定及び免責決定写しが必要になります。手元になければ、前回の裁判所へ謄写申請して用意しなければいけません。
 
◆未分割遺産があるケース◆
未分割遺産の法定相続分は財産として扱われます。不動産や一定の遺産があれば管財事件になり、破産管財人が相続分の換価に動きます(田舎の換価不能な不動産の相続が未了のケースで同時廃止になったこともあります)。分割合意はされているが登記がなされていないケースも多いです。
他の相続人が遺産を取得する形の分割手続あるいは登記を急いでやっても問題は解決しません。その行為が否認行為として問題視されます。
ケースバイケースの判断でしょうが、価値が相応にある不動産だと裁判所の見方が厳しくなります。取り扱いが非常に難しい問題ですので、弁護士と早めに相談の上、打てる方策があるか検討しましょう。
 
◆個人事業を続けたいというケース◆
自己破産をする以上は、個人事業は廃止することが前提です。破産の原因にもなっていることも多いでしょう。
ただし、専ら特定の先に労務提供をして報酬を得ており実質給与所得者と変わらない事業の場合(いわゆる一人親方)はそもそも事業者として見られません。
設備がほとんどなく、売掛金や買掛金もない小規模の事業も、破産手続(資産・負債の清算手続)の影響を受けませんので、理屈上は事業継続も可能です。事業が借金の原因になっていない、今後もならないことを説明する必要がありますが。

同時廃止事件と管財事件

1.同時廃止事件

同時廃止とは、破産手続開始決定と破産手続廃止決定が同時になされる手続です。破産費用を支弁する財産がないという理由になります。
破産法上は管財事件が原則となっていますが、運用上は、同時廃止事件が多いです(広島本庁では70パーセント前後でしょうか)。
 
同時廃止事件の流れ◆
裁判所からの補正連絡に対応したタイミングで、3か月前後先の免責審尋期日の調整がなされ、同時廃止決定が出ます。問題事案ではその前に債務者審尋が開かれます。
 
同時廃止決定が出ると、破産手続自体は終わりです。免責審尋期日を待つのみです。問題事案などでは、家計収支表の提出など宿題ができることもあります。
 
免責審尋期日に出席すれば通常その日に免責決定が出ます(出席を要しない裁判所もあります)。弁護士も同席します。
原則として集団免責の形で行われます。広い部屋に破産者が集められ裁判所からの話を聞く手続です。二度目の破産や免責不許可事由の程度が大きい等のケースでは小さい部屋で裁判官から質問などをもされる個別免責手続が指定され得ます。
 
弁護士受任から6~7カ月で免責決定まで進むことがスタンダードなスケジュールでしょうか。
 
同時廃止管財事件の振り分け基準◆
裁判所が同時廃止管財事件とを振り分ける基準を用意しています。広島本庁では原則的に次のようなものが管財事件となり、それ以外は同時廃止です。
・現金・預貯金が50万円を超える場合
・個々の財産項目のいずれかが各20万円を超える場合
・オーバーローンではない不動産がある場合
上述のような財産がない場合であっても、
・過去5年以内に、会社代表者(それに準じる経営者)や個人事業主であった場合
免責不許可事由の程度が大きい場合(このケースを免責調査型管財と呼びます)
・看過できない否認対象行為がある場合
 
◆個人事業者◆
確定申告をしているから必ず個人事業主と扱われるわけではありません。
例えば、設備や仕入れを伴わずに決まった取引先から労務提供に対する対価を得ている場合(所謂、一人親方等)、実質的に給与所得者と異なることがないとして管財事件になりません。
 
◆保険の評価◆
解約返戻金額が評価額となります。契約者貸付を受けている場合には同貸付金を控除した金額になります。解約をしたら現金預金での評価です。
保険を解約しあるいは契約者貸付を受けて、破産費用、必要な生活費等に充てるのはある程度許容されます。そのままだと管財事件になるべきケースが、解約するないし契約者貸付を受けると同時廃止の処理になるケースもあります。
確定拠出年金は本来的自由財産でありカウントされませんが、年金保険は評価の対象です。
 
◆退職金の評価◆
退職が差し迫っている例外的なケースを除き、自己都合退職した場合の支給見込額の8分の1が財産額として評価されます。仮に退職が決まっているが受取前という段階まででしたら、差押え財産との関係で4分の1の評価まで抑えることができます。
これに対し、中小企業退職金共済(中退共)、小規模企業共済は、退職金と類似のものですが、法律上差押え禁止財産ですので財産とはみなされません
 
◆交通事故の被害者◆
財産的損害に基づく損害賠償請求権は、財産として評価されます。休業補償、逸失利益、介護費用、入院雑費は自由財産拡張の対象ですが、物損部分は難しいです。
精神的損害に基づく慰謝料請求権は、慰謝料金額が確定するまでは、行使上の一身専属権として財産とみなされません。金額が確定した場合には、財団に属するとされています。
破産手続開始決定時に損害賠償金が入金されていれば、現金あるいは預貯金として財産評価されます。
自己破産申立てと示談のタイミングも図る必要があります。弁護士とよく相談して段取りすることが必要です。

2.管財事件

管財事件とは、裁判所が破産管財人を選任し、破産管財人が財産調査、換価・配当などを行う手続です。個人の破産の場合には、免責調査、免責意見の提出も破産管財人の仕事です。破産管財人には弁護士が選任されます(そのため予納金が高額になります)。
手続中は、郵便局を通じた郵送物は破産管財人に転送され開封されます。
 
管財事件の流れ◆
補正連絡に対応しつつ、裁判所から指示された予納金を納めます。
債務者審尋の日か(破産管財人候補も出席して顔合わせ等をする期日)、同審尋が開かれないケースでは予納金納付日に近い時点で、破産手続開始決定が出ます。郵送物が破産管財人に転送されるようになります。
 
第1回債権者集会は、開始決定日の3か月後程度に指定されます。開始決定後第1回債権者集会までの間は、管財人事務所に赴いての打合せが必要になります。
 
開始決定後1か月以内を目処に自由財産拡張手続がなされます。
 
単純な免責調査型の管財事件であれば、第1回債権者集会の日に破産手続、免責手続が終了することが多いです。
 
資産の処分に時間がかかる、配当がある等の場合には、1年あるいはそれ以上かかることがあります。ただ、多くの場合は、第1回債権者集会の後は、2~3か月に1回の期日に出席すればいいだけです。弁護士も同席します。
 
なお、法人破産を同時に申し立てた場合には、法人破産のスケジュールに合わせて進んでいきます。
 
◆会社の同時申立てが必要か◆
会社の経営者が、法人破産の費用を捻出できない、あるいは帳簿類が散逸しているなどの理由で、個人の破産だけを申し立てるケースがあります。
会社が休眠状態になってから相応の年数を経ているケース以外では、法人の申立てを裁判所から勧奨されます。強制力はないのでしょうが、強く求められることも珍しくありません。法人の予納金を形だけでいいから納める、申立書も簡単な物でいいと説得され、やむなく法人の申立てに応じたケースもあります。

破産しても残る財産

1.破産しても残る財産

同時廃止の場合、破産管財人による財産の換価処分は行われません。そのため、保有している財産は全て残ります。
 
管財事件の場合でも、経済的更生が図ることができる制度である自然人の破産ではすべての財産が換価処分されるわけではありません。全体で99万円までの自由財産が手元に残ると思ってください。
 
◆自由財産◆
破産財団に組み入れられることなく破産者が自由に管理処分できる財産を自由財産といいます。自由財産ではなく財団に組み入れられる財産を破産管財人が換価処分します。自由財産には、本来的自由財産と拡張手続を経たそれ以外の自由財産があります。
 
◆本来的自由財産◆
本来的自由財産は、破産法で定められた自由財産です。
99万円以下の現金及び差押え禁止財産が本来的自由財産だと考えてください。
差押え禁止財産は、民事執行法その他法律にて差押禁止財産だと定められているものです。主なものは次のとおりです。
・生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用品等(通常の家財一式)
・退職金の4分の3(もっとも実際に退職間近でないかぎり支給見込額の8分の1の評価です)
・小規模企業共済
・中小企業退職金共済、建設業退職金共済
・確定拠出年金
 
自由財産拡張手続◆ 
自由財産拡張は、自由財産の範囲を本来的自由財産以外の財産まで拡げる手続です。一定の財産(自由財産)を手元に残すための許可を得る手続です。
自由財産の拡張は、破産管財人の意見を聴いて、裁判所により決定されます。破産者側の申立ては必ずしも必要ではありませんが、申立人の意向を反映させるために当職は申し立てています。
 
金額にして99万円の範囲内で行われます。本来的自由財産である現金を含めての99万円の範囲であることをご注意ください。制度上は不可欠と考えられる場合に99万円を超える拡張もあり得るのですが、運用上あまり見かけません。
勿論、無条件で99万円まで残せるわけではありません。経済的更生に必要かつ相当と見られる範囲です。一般的には本来的自由財産である現金を含めて99万円までみとめられる傾向にあります。ただ、他の本来的自由財産の金額の多寡も影響します。

2.自由財産拡張にあたっての注意点

自由財産拡張の対象にならない財産があります。経済的更生に必要・相当と認めてくれない財産は自由財産拡張の対象となりません。
不動産、株式、債権、投資信託などが典型です。
車については、実用車は対象ですが、趣味のための車は対象外です。
保険は、投資性の強い商品を除き、基本的に認めてくれます。
報告が漏れており破産管財人の調査で見つかった財産は対象とならない傾向です。
 
また、自由財産拡張範囲を超える財産は必ず換価されるわけではありません。
自由財産拡張対象外の財産は、財団に組み入れられ、破産管財人により換価処分されます。しかし、99万円の価値分を財団に組み入れるのであれば、個々の財産自体は解約、処分しなくてもいいケースがあります。
例えば、保険をどうしても残したいが財産が99万円を超える場合、手元に残るべき現金を財団に組み入れる形で、保険契約自体は残すことができます。

免責

1.免責とは

債務の支払義務を免れることを免責といいます。個人の破産では、免責許可決定を得ないと意味がありません。
 
免責不許可事由と免責◆
破産法では、このような行為があった場合には原則として免責を許可してはいけないという免責不許可事由が定められています。
 
免責不許可事由がない場合、権利として免責許可を得ることができます(権利免責)。免責不許可事由があったとしても、裁判所が事情を斟酌した上で裁量により免責許可を与えることができることになっています(裁量免責)。
運用上は、原則と例外が逆転し、免責不許可事由があってもほぼ裁量免責を得ることができます。
 
ただし、免責不許可事由が悪質・重大な場合には、それだけで管財事件(免責調査型)になる可能性がありますし、中には免責を受けられないケースもあります(数は少ないですが裁判所から取下げ勧奨を受けることもあります)。免責を得られるか不安なケースでは、個人再生を選択することもあります(なお、個人再生のケースでも、免責不許可事由否認対象行為に該当するケースでは清算価値への計上という形で影響します)。

2.免責不許可事由の種類

破産法に定められている免責不許可事由の主なものは次のとおりです。
・不当な財産価値減少行為(財産の隠匿・損壊・廉価売買・無償行為など)
・不当な債務負担行為(高利の借金や換金行為など)
・不当な偏頗行為(不公平な弁済・担保供与など)
・浪費または賭博その他の射幸行為
・詐術による信用取引(財産や収入に関し嘘をついて借り入れるなど)
・裁判所への虚偽説明や管財人への協力義務懈怠
 
免責不許可事由に該当するかの判断は解釈を要する事柄であり、程度問題もあります。弁護士に判断してもらうほかありません(弁護士からも確認します)。ここでは、何点かコメントするにとどめます。
 
◆浪費、ギャンブル◆
多かれ少なかれ浪費、ギャンブルが借金の原因になっていることは多いです。程度問題です、要は借金の原因になっているかが重要となるでしょう。破産の原因、借金の原因について、他の理由で説明できるか検討し、説明できなければそれらが主な原因になるのでしょう。管財事件になるケースもありますが、説明、反省を尽くせばほぼ何とかなります。
FXや仮想通貨等投資損害も浪費、ギャンブルと同じように扱われます。この場合は取引履歴等の資料の提出を要求されることが多いです。
 
◆ショッピング枠の現金化◆
借金の返済に追い込まれて手を出すケースが割と多い空クレジットのケースが典型です。ネットで価値のない物を高額のクレジットを利用して買った形式をとります。金券等をクレジットで購入してすぐに売却換金するケースもショッピング枠の現金化の一種と捉えていいでしょう。そのような行為の有無、内容は報告事項です。
これらの行為は免責不許可事由として扱われています(犯罪行為にも該当し得ます)。しかし、頻度や金額によって管財事件にはなり得ますが、免責不許可になる例は稀でしょう。同時廃止で終わるケースも多いです。無難に個人再生を選択することもあります。
 
◆スマホ、タブレットの不正購入◆
最近は、悪質金融業者に唆されて、スマホやタブレットをクレジットで購入し、物は業者あるいは債権者に売却するという事例もよく見ます。転売目的、譲渡目的でそれらを購入することは許されていません。違法であること、免責不許可事由として扱われることは、ショッピング枠の現金化と同じであり、裁判所へ丁寧な説明が必要です。無難に個人再生を選択することもあります。

破産における否認

1.否認権とは

破産管財人には、破産者が行った否認対象行為を否認し(法的効果を覆すこと)、散逸した財産を財団に取り戻す否認権があります。
否認対象行為には、詐害行為(廉価売買など)、過大代物弁済、無償行為(贈与など)、財産散逸行為、偏頗行為(不公平な債務の弁済等)、権利変動の対抗要件具備(登記行為等)ですが、それぞれ破産法に対象となる要件が定められており、解釈上の例外もあります。弁護士でないと具体的な判断が難しいです。経済的危機状態で財産状況を悪化させる行為が該当するとイメージしていただき、ひっかかる行為があれば弁護士に伝えてください。
 
裁判所からは、破産直前の弁済、財産処分、相続、離婚などの行為は必ずチェックされます。否認対象行為があり、その程度が重いケースは管財事件になります。
 
破産管財人は、否認対象行為がある場合、まずは交渉での和解的解決を図るでしょう。交渉で解決できないケースでは、破産裁判所への否認請求あるいは通常裁判所への否認の訴えを提起する流れになります。

2.否認に関する注意点

弁護士との相談時や準備の打ち合わせ時には、少なくとも2年程度遡って、大きな財産を売却したり、贈与したり、解約したり、名義を変えていないか報告してください。それらは申立時の報告事項ですし、事前に対処する必要があります。
なお、準備の中で否認対象となり得る行為をせざるを得ないケースもあります。必ず弁護士の関与の下で進め、否認リスクを減らしてください。
 
◆直前の財産処分の注意点◆
処分代金や解約金を、有用の資(破産費用、相当な生活費、医療費、転居費用、学費、公租公課)に費消することは許容されています。場合によっては不動産や車などどうしても生活に必要な物を親族等が買い取って残すこともあります。
弁護士が関与しない直前の処分は極力避けてください。リスクが高いですし、説明が不十分であるとそれだけで管財事件になります。弁護士が、処分代金あるいは解約金等を管理した上で、取引の妥当性や使途の妥当性を裁判所に説明する必要があるでしょう。
 
◆相続と自己破産
相続放棄否認の対象ではありません。身分行為で財産行為ではないからです。
これに対し、経済的危機状態でなされた不相当な遺産分割は否認の対象となります。財産処分の一種と見られるからです。否認リスクがあるので、法律的に合理的な説明を用意しておかなければいけません。
場合によっては、破産直前に遺産分割手続をせざるを得ないケースもあります。リスクが高いので、弁護士と相談の上で進めてください。
 
離婚自己破産
経済的破綻を原因として離婚することは珍しくありませんが、経済的危機状態での財産分与慰謝料の支払いは慎重にしなければいけません。
財産分与は、相当な内容であれば否認されることはない傾向ですが、相当性を法律的に説明しなければなりません。
慰謝料も相当額なら問題ないとも思われますが、偏頗弁済として問題視されることもあります。慰謝料財産分与の形をとる方法も考えられますね。
自己破産を予定される場合には、離婚協議も弁護士と相談の上で進めた方がよろしいでしょう。

非免責債権

1.非免責債権とは

非免責債権は、免責許可決定によっても免責されることのない債権です。支払義務が残るのですね。非免責債権の種類の中には、非免責債権に該当するか悩むケースもあります。破産手続では判断されず、別途訴訟が提起されればその中で判断されることになります。

2.非免責債権の種類

次のようなものが非免責債権となります。
◆国税徴収法または国税徴収法の例により徴収することができる債権◆
国税、地方税、国民健康保険、国民年金料などですね。そのため、破産者には、減免申請を役所にしてもらうようにしています。
なお、生活保護法63条に基づく保護費の返還請求権、同法78条の徴収金も、非免責債権になります。
◆悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権◆
故意ではなく積極的な「害意」が必要とされます。詐欺の被害者からの損害賠償請求権などです。不貞行為の慰謝料は通常のケースでは該当しない傾向にあると思われます。
◆故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権◆
悪質な交通違反による交通事故の人身傷害に関する損害賠償義務などです。
婚姻費用養育費
滞納している分ですね。
◆雇用契約に基づく給与や預り金返還請求権◆
個人事業主に対する労働債権ですね。
◆債権者一覧表に記載しなかった債権者の債権◆
過失で漏れていても該当します。債権者の漏れに注意してください。
◆罰金など◆
罰金、科料、過料、追徴金等です。

破産準備の注意点

1.必要書類の注意点

自己破産申立ての必要書類は多岐にわたり、かつケースにより種類や濃淡も異なります。弁護士と事前に十分に協議の上で段取りを組んでください。必要書類について、いくつか注意点を挙げておきます。
 
◆給与明細◆
直近2カ月分の給与明細が必要書類になりますが、遅くとも準備の打ち合わせ時に弁護士に見てもらうべきでしょう。
控除欄から、勤務先からの借入金や労働組合・共済組合からの借入金が判明することがあります。弁償金、返納金等の名目で勤務先から債務を負っているケースもあります。また、保険料や会費・積立が天引きされている場合は、保険・共済契約の内容や解約返戻金額の有無・金額が分かる資料が必要となりますし、会費や積立は資産性の有無、あるものについては残高の説明をしないといけません。
 
◆ネット専用口座◆
直近1年間の通帳の写しが提出書類になっております。ネット専用口座も1年間の取引明細と当該預金口座以外の口座がないことがわかる画面を紙ベースで提出します。
受任通知後、ネットバンキングが閉じられて、取引明細書が取れないケースも多いです。受任通知までに予め取引明細をとっておくことをお願いしております。申立日までの取引明細の提出を裁判所に要求されることもあり、そうなると郵送で銀行に依頼する必要が出てきます。
 
◆退職金◆
勤続5年以上(正社員)の場合には、退職金に関する資料(原則は勤務先の証明書となっています。)が必要ですが、取得が難しいですね。
退職金制度がある場合には、退職金規程、辞令等、退職金見込額が正確に計算できるだけの資料の提出で証明書に代えることができます。ポイント制を採用している会社は説明に苦労することがあります。
退職金制度がない場合には、退職金制度がないことがわかる就業規則を提出すれば事足ります。
なお、中小企業退職金共済、小規模企業共済のケースでは、財産として見られないものの、加入状況がかわかる資料は求められます。
 
◆居住証明書◆
自己破産の申立てには、居住証明に関する資料(賃貸借契約書か不動産登記簿謄本)を提出しますが、第三者が賃借している物件あるいは所有している物件にお住いの場合には、当該第三者から居住証明書の取得も必要です。勿論、同一世帯の親族名義の場合には、居住証明書を要求されません。
社宅の場合は、賃貸借契約書の写しを取れない場合もありますし、会社に居住証明書をもらうのも酷な場合があります。社宅利用許可証や給与明細上の天引き社宅料等、社宅に居住していることがわかる資料で説明を尽くせば大丈夫です。
 
◆家計収支表◆
家計収支表は家計簿を月単位でまとめたもので、広島地裁本庁では2か月分の会計収支表の提出が必要です。準備にあたっては、家計収支表の書き方も弁護士と協議してください。
同居の親族全ての収入と支出を合わせて記載することが原則なのですが(原則として家計を一とするとみられるため)、なかなか難しい場合もあります。破産者とその他親族を分離して親族間のお金のやりとりを明記することでの説明も許容され得ます。破産者の生活状況、お金の費消状況を的確に説明すればいいので、ケースバイケースで書き方を相談して決めています。
 
◆相続◆
自己破産の申立て時には実方の親が亡くなっている場合には必ず相続の有無を報告します。未分割遺産の報告漏れが多数あったためです。
経済的危機状態での相続、時期の近い相続がある場合には、戸籍、相続関係図、登記簿、固定資産評価証明書、写真、査定書などの提出をしないといけません。どこまで必要かはケースにより異なります。早めに協議をしておかないといけません。

2.その他の注意点

いくつかコメントいたします。
 
◆言い難いことこそ相談を◆
あなたが弁護士に対して言いづらいことにこそ、免責不許可や否認など破産手続上の問題点が隠れていることが多いです。言い難いことこそ早めに弁護士に伝えて、方針を見極め、善後策を図らなければなりません。
 
◆口座凍結・相殺◆
受任通知の発送により、借入先の銀行口座が凍結され、残高が残っていれば相殺されます。受任通知が銀行に届く前にお金は引き出さないといけません。
また、保証人がいる場合、保証人の当該銀行の口座も凍結され相殺されることにご注意を。
 
◆給与口座・年金受取口座◆
給与口座、年金受取口座、生活保護受給口座のある銀行が債権者であるときは、受任通知を出す前に借入れのない銀行口座に変更してもらいます。銀行に受任通知を送ると預金口座は凍結されるからです。変更に時間がかかる場合、確認できるまで当該銀行に受任通知を発送するのを待つこともします。
勤務先の方針で給与口座の変更ができないケースもあります。受任通知後の給与・年金の入金の引き出しは銀行も応じてくれるのが通常ですが(私の経験上は断られたことはありません)、その都度銀行窓口に行かなければならない等の手間がかかります。
 
◆債権者の漏れがないように◆
破産手続中でしたら、漏れがあっても債権者を追加すれば大丈夫です。
手続終了後に判明すると、債権者一覧表の記載を漏らした債権者の債権は非免責債権になります。過失によって漏れた場合であってもダメです。やむを得ないケースだったと裁判所で認められるのは簡単ではないです。
ただし、債権者が金融機関であるケースでは、判明した時点で破産開始決定通知及び免責決定通知を送ると免責処理をしてくれるケースも多いでしょう。
 
◆スケジュールを守る◆
弁護士から示されたスケジュールを守ってください。
金融機関は受任通知後少なくとも半年ぐらいは訴訟を提起せずに待ってくれますが(一部の債権者はすぐに訴訟をしてきますが)、徒に申立てが遅くなると訴訟等のアクションを起こす債権者が出てきます。
弁護士も、長期間放置をすると弁護士会の懲戒を受けかねませんので、一定期間経ても準備が進まないケースでは辞任をせざるを得ません。弁護士に辞任されると百害あって一利なしです。

破産にかかる費用

1.破産にかかる費用

自己破産の申立て代理業務を弁護士に依頼する場合の費用には、裁判所にかかる費用、弁護士費用、実費(弁護士費用込みのケースも多いです)があります。
なお、当事務所は債務整理に関する初回相談料(30分程度)は無料です。
 
◆裁判所にかかる費用◆
同時廃止事件では、予納金と予納郵券を合わせても15,000円あれば賄えます。申立ての際に預かります。
 
管財事件では、裁判所から具体的に納付金額の指示があります。23万円から33万円を用意してもらっています。
 
予納金は、原則即時支払う必要があります。分割支払いができませんが、事実上数か月待ってもらえることがあります(期限を区切って予納命令が出されます)。
管財事件の可能性が高いケースでは、申立てのタイミングを含めて予納金の用意について協議をしておいてください。
 
◆弁護士費用◆
弁護士費用は、依頼される弁護士によっても、案件の性質によっても異なります。広島では30万円(税別)前後が多いでしょうか。弁護士費用、その支払方法も弁護士と相談することの大事な1つです。
 
当事務所では25万円(税別)です。勿論、ケースによって、減額することもありますし、相応の規模の個人事業主や財産が多い場合には増額することもあります。
 
実情として分割でお支払いいただくことも多いです。原則として、弁護士費用の支払いが終了した後に破産申立てをします。
 
◆法テラスの民事法律扶助制度
法テラスの民事法律扶助制度は、一定の資力要件(平均手取り月収額と財産額)の下、弁護士費用を立て替えてもらい、立替金を月5000円からの分割償還する制度です。債権者数により異なりますが、155,000円からと安価な設定になっております。こちらを利用される方も多いです。
同制度を利用する流れは、
弁護士に相談(無料法律相談も3回まで可能)
申請書類を、弁護士を通じて法テラスに提出
承認後に弁護士事務所で契約
というものになります。申請から契約まで10日前後かかるでしょうか。
なお、ケースによっては、利用しない方が後の破産手続との関係でトータルの支出が押さえられるケースもあり得ます。
 
◆生活保護を受給されている方◆
生活保護を受給されている方、受給予定の方は、上記民事法律扶助制度を利用します(当事務所にて手続を行います)。
法テラスが予納金まで立て替えてくれます。かつ、立替金償還は猶予され、破産手続終了時にも生活保護を受給されていれば償還免除申請を行って免除されます。結果、費用負担がない形で自己破産をすることができるのです。

2.費用の準備

一度にご準備いただけないケースでは、弁護士が受任通知を送付して支払いをストップしている間に分割でご準備いただくケースが多いです。賞与で調整するケースもあります。
 
財産の処分代金から、あるいは保険等の解約金から、費用をご用意いただくこともあります。財産処分金を破産費用に充てることは許されております。過払金の回収により費用の用意が必要なくなったケースもあります。
 
費用の捻出方法はスケジュールも絡みケースバイケースで考えるべきことですので、弁護士とよくご相談ください。

弁護士に依頼する意味

1.弁護士に依頼する意味

自己破産の申立代理業務を弁護士に依頼する主な意味は、次のとおりでしょうか。
 
◆債権者対応◆
弁護士が受任通知を出して債権者対応をしてもらえるのは大きなメリットです。早めにご相談、ご依頼されて、精神的に疲弊をすることを避けてください。
 
◆効率的な準備◆
自己破産の準備といっても、初めての方はわからないでしょう。かつ、機械的に書類を集めればいいわけでもありません。専門家のサポートを受けて効率よくご準備ください。
 
◆破産は専門的なサポートが必要な手続◆
自己破産も法的手続きですから、準備の仕方あるいは申立て方によって、法的に選択される手続や法的に問題視されるかどうかが変わることもあります。法的な見地から準備、申立てを組立ていかなければなりません。弁護士に関与してもらう方がよろしいでしょう。
なお、弁護士であれば、裁判所での各手続等にも代理人として同席できます。
なお、本人申立ての場合には管財事件になりやすい傾向にあります。

2.破産弁護士による専門的なサポート

申立代理人弁護士の腕が、ご苦労の程度や手続のスムーズな進行度合いに直結します。準備に不備があると苦労を強いられかねませんし、破産法上問題となる行為が問題視されるリスクも高まります。破産管財人に就任した案件でも「準備をもう少しきちんとしていただければ苦労されなかったのに。」と感じることがあります。
 
破産手続には独特のルールや考え方があり、弁護士も職人的な能力が必要とされます。裁判所の傾向・考え方も事件処理の方向に影響しますので、キャッチアップしなければなりません。破産申立てを裏から見る破産管財人の経験も必須です。かつ自己破産は借金の支払義務を免れるためだけが目的の制度ではありません、経済的更生を図るための制度です。
 
様々なケースにおいて、諸々の問題を紐解いてシンプルに整理し、申立てのスキーム、段取りを調整できる専門的な弁護士のサポートを得てください。倒産法制に精通し、申立代理人経験も破産管財人等の経験も豊富で、破産等倒産事件を業務の柱の1つにしている弁護士を、「破産弁護士」「倒産弁護士」と呼んだりします。
 
弁護士に相談される際、いろいろな疑問点や不安な点をぶつけてみてください。破産事件に精通する弁護士であれば、具体的なアドバイスをしてくれます。疑問を解消してくれ、また問題点を的確に指摘してくれる弁護士を探してください。
 
なお、当事務所は、自己破産個人再生の申立件数が相対的に最も多い部類に属します。かつ、当職は、破産管財人個人再生委員の経験も豊富です。裁判所との倒産関係に関する協議会のメンバーにも属しています。ぜひ、相談してみてください。

まとめ

1.個人の自己破産についての徹底解説

個人破産とは免責を得ることを目的とした法的清算手続でした。
自己破産の選択基準、同時廃止管財事件の別、破産しても残る財産、免責手続、否認権、非免責債権、準備の注意点など、多岐にわたり説明させていただきましたが、ケースバイケースで様々なことを考えて、見通しを立て準備をしないといけないことがご理解いただけましたでしょうか。細かい点まで立ち入ることができなかった問題もございます。他のコラムも参照していただければ幸いです。
また、ぜひ当事務所にご相談ください。具体的事情に応じた解決策を一緒に考えましょう。

2.破産は経済的更生の手段

借金が嵩むとお金のやりくりばかり考えるようになり、追い詰められ、借金のために生きているかのような感覚に陥るようです。ご依頼者の方からは大変な苦労をお聞きしております。
破産手続などが終わった時には、本当に肩の荷が下りた気持ちになるようです。皆さんの表情からも変わります。
多くの方は、「もっと早く先生にお願いすればよかった。」とおっしゃいます。
個人の破産は、経済的更生を図る目的の制度です。
早めに個人の破産に精通した弁護士に相談、依頼され、諸々の課題を紐解きながら最終的にシンプルな形で整理してもらってください。
それが早期の経済的更生に繋がります。

この記事を書いた人

firsttime_lawyer.jpg弁護士仲田誠一(広島弁護士会所属)
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27
アーバンビュー上八丁堀602
TEL:082-223-2900
https://www.nakata-law.com/
https://www.nakata-law.com/smart/
◆経歴
1996年4月~
あさひ銀行 融資、融資管理、企業再生、法人営業等
2002年5月~
東京スター銀行 経営管理、内部監査、法人営業等
2004年4月~
広島大学大学院法務研究科
2008年12月
弁護士登録
2017年~各前期
広島大学大学院客員准教授(税法担当)
◆資格
弁護士
公認内部監査人試験合格

会社、法人自己破産の徹底解説

広島市の弁護士仲田誠一です。

当事務所では、破産、民事再生などの倒産事件を業務の柱の1つとしております。

会社、法人破産は、業種、業態、現在の業況あるいは資金繰りなど、個々のケースに応じたオーダーメイド的な対応が必要となります。段取りが大事なのですね。

会社、法人の自己破産をご検討されている方へ、できるだけ共通項を探った解説をさせていただきます。

目次

会社、法人の破産とは
会社、法人の破産は最後の手段か
会社、法人の破産の選択
弁護士に相談するタイミングなど
会社、法人の破産の流れ
破産に必要な費用の目安・費用の捻出
取引先との関係は
従業員との関係は
準備にあたっての留意点
弁護士に依頼する意味(倒産弁護士)
まとめ

会社、法人の自己破産とは

1.自己破産とは

簡単に申し上げると、破産手続は、資産・債務の清算手続です。破産開始決定時の資産を現金化し開始決定時の債権を弁済(配当)していくイメージです。実際には配当ができずに破産が終了する事件も多いです(「異時廃止事件」と呼ばれます)。
 
自己破産とは、破産手続開始の申立てを自分(法人・個人)が行う場合です。自己が破産の申立てをするから自己破産なのですね。破産というと僅かな例外を除いてほぼ自己破産に当たります。
 
他に、数は少ないですが、取締役、理事、業務執行社員あるいは清算人が申立てる「準自己破産」や、債権者が申し立てる「債権者申立て」の破産もあります。債権者申立ての破産については破産管財人として携わったことがありますが、広島本庁でも年数件あるかないかでしょうか。

2.法人と個人の自己破産との違い

◆法人破産には免責手続がありません◆
法人破産の場合には、手続完了により法人格が消滅します。そのため、破産手続が完了すれば債務を負う状態はなくなります。
これに対し、個人(自然人)の破産の場合には、破産をしても人格は残りますから、破産手続を経ても清算後残った債務を負った状態になります。そのため、別途借金支払義務を免れるための「免責」手続が用意されています。
 
◆法人破産では必ず破産管財人選任されます◆
法人破産では、必ず破産管財人が選任されます。破産管財人が財産の換価、配当等を行っていきます。いわゆる「管財事件」です。破産手続開始決定により会社、法人の財産管理処分権は破産管財人に移行します。
これに対し、個人破産の場合には、破産管財人が選任されない事件(「同時廃止事件」といいます)の方が多いです。広島地方裁判所本庁では、個人破産のうち70パーセント前後が同時廃止事件でしょうか。同裁判所では、免責不許可事由の程度が大きいケース、過去5年以内に経営あるいは事業を行っているケース、明らかにオーバーローンと認められない不動産を所有しているケース、一定額の財産があるケース(預貯金50万円、その他の財産は項目毎に20万円)などに限り破産管財人が選任されます。
なお、法人破産と同時に代表者さんの個人破産を申し立てることが多いですが、上述の基準によって管財事件になります。
 
◆自由財産の有無◆
法人破産の場合には、法人の財産は原則すべからく換価されて残りません。一方、個人破産の場合には、自由財産拡張手続を経て裁判所の許可を得れば、一定の財産に限りますが手元に残すことができます。


会社、法人の自己破産は最後の手段か

1.事業継続の可能性の見極め

会社・法人の営む事業はそれ自体に社会的価値が存在します。かつ、従業員さん、取引先など多様な利害関係者も存在します。その事業をなくしてしまうのは偲びないことですし、社会的な損失です。
そのため、事業継続に悩まれる経営者の方は、まず金融機関のリスケジュール(条件変更)あるいはM&Aでの事業継続の可能性を見極めるべきでしょう。
 
例えば、金融債務の返済をストップすれば資金繰りが回るのであれば、リスケ中に経営改善を図ればいいわけです。勿論、安易な資産の切り売り、事業縮小は、多くは企業価値を毀損するだけで傷を深くするだけに終わるので慎重にするべきです。
また、企業価値あるいは事業価値がある事業のM&Aによる承継も考えられます(破産とM&Aを組み合せて事業だけは残していくこともあります)。
 
当職は、認定経営革新等支援機関でもありますので、事業計画策定のお手伝い、リスケジュールのお手伝いなども対応しております。かう、M&Aのサポートも主業務の1つとしております。事業継続、M&Aも含めてご相談ください。

2.会社・法人の自己破産は最後の手段か

会社、法人の自己破産は、上述のような意味では、最終手段と言えるでしょう。
しかし、余力を全く残さない状態での破産は困難です。破産はぎりぎりまで引き延ばすべき手段でもありません。自己破産は、他の選択肢と並行して検討し、早期に決断しなければならない事柄といえます。早期に事業を整理する決断も大切な経営判断です。
 
◆破産費用を捻出する必要があります◆
破産費用を用意できなくなれば破産もできません。事業継続を引き延ばした結果として費用が用意できずに破産を断念された経営者さんもいらっしゃいます。
 
◆早期の決断も大事な経営判断です◆
早期の決断が結果的に迷惑をかける範囲を拡げないことにもなります。破産手続は利害関係者に対する最後のけじめとも言い得ます(所謂夜逃げや休眠状態で放っておかれるよりは破産手続を望まれるのが通常です)。理想形としては、給与の未払いが残らない形での事業廃止も望ましいですね(なかなか難しいですが)。
 
◆経済的再建も図らなければいけません◆
さらに、経営者様とそのご家族の早期の生活再建を図るべきと考えます。
経営者家族の生活を極限まで切り詰め、働き通しで体調を崩すなど苦労を重ねてきた末に弁護士に相談される方も多いです。その責任感には頭の下がる想いですが、「もう少し早くご相談に来ていただければ。」「そこまで思い詰める必要はなかったのではないか。」と思われる事例も多く目にします。

会社、法人の自己破産の選択

1.自己破産を選択するべきケース

前述のとおり、金融機関のリスケで対処できるケースであれば自己破産を選択する必要はありません。あるいは、M&Aで事業自体は残す途も検討してよいでしょう。
 
◆リスケで対応できるケース◆
資金繰りを改善するだけで経営が持ち直す余地がある、あるいは金融機関の支援を受ける間に経営改善策の実施により経営が持ち直す余地があるというケースでは、金融機関のリスケジュール(条件変更)で対応できます。

例えば、設備投資等による債務過多が業績不振の主な原因であり事業の収益力自体は相応に残っているのであれば、金融機関のリスケ対応により資金繰りを改善し計画的に債務を削減することで難局を乗り切れるでしょう。
また、利払いのみのリスケをすれば資金繰りがある程度余裕をもって回る、かつリスケ期間中に金融機関への弁済計画が立つまでの経営改善を図る見込みが立ちそうだというケースでは、経営改善策を試すべきとも言えます。
 
しかしながら、業績不振には様々な要因が絡みます。多種多様な要素が絡みますし、企業努力では如何ともしがたい外在的な要因も大きいです。単純明快かつ解決可能な原因による業績不振で簡単に改善できる、あるいは一時的に資金繰り手当てをすれば簡単に業績が持ち直すと計画が立案できるケースは残念ながら少ないです。
 
自己破産を選択すべきケース◆
慢性的な赤字体質であり事業継続により今後も状況を悪化させるケース、具体的には金融債務の返済を一時ストップしても資金繰りが余裕をもって回すことができる見込みが立たないケースでは、できるだけ早い自己破産の決断が必要でしょう。
企業再生あるいは事業再生は、事業自体の収益力がある、あるいは収益力が改善する見込みがある、ということが前提となります。
 
また、経営者に事業継続への気力・体力が残っているかも重要です。当職に相談に来られる経営者の方は既に疲弊されて余力も残っていないという方が多いです。その責任感は尊敬されるべきで、結果として自己破産を選択しても非難されるものでは決してありません。

2.民事再生との違い

会社、法人がとる法的債務整理手段としては自己破産のほかに民事再生もあります(なお、大企業向けの会社更生という手続もあります)。
民事再生は、債務を大幅に減額した上で、経営者の交替もなく事業を継続できるという大きなメリットがあります。
しかし、仕入先・外注先の協力が必要なこと(あるいは現金決済に耐えうるスポンサーが必要なこと)、事業用資産の担保権者の協力がいること、債務免除益の課税がなされること、及び申立てに多額の費用がかかるという条件が揃わないと選択できません(事実上必要となる条件も含んでいます)。
実際には、民事再生に適合するケースはなかなかお目にかかれません。

弁護士に相談するタイミングなど

1.弁護士に相談、依頼するタイミング

◆早期の相談が肝要◆
弁護士への相談は、できるだけ早めになさってください。
残された時間や、相談時の状況によって、できる準備や選択肢が異なります。
自己破産を選択する場合にも、費用の捻出の問題を始め、破産を前提とした事業廃止に向けて準備するべきことは多々あります。
早めに弁護士に相談をし、金融機関へのリスケ要請、自己破産申立て、民事再生申立てなどの手続選択の方針を決定し、それに応じた準備をしていかなければなりません。
 
◆相談時の注意点◆
弁護士への相談時には、少なくとも直近の決算申告書類一式をお持ちください(勿論、3期分程度を拝見した方が検討はしやすいです)。
資金繰表を作成されているのであればそれもお持ちいただいた方がありがたいです(資金繰り予想ができる入出金のメモ程度でもかまいません)。
連帯保証人の方の資産・負債状況もわかればありがたいです。会社、法人と連帯保証人である経営者の方などを一体として債務整理の方策を考えるべきですので。
 
◆弁護士への依頼もできるだけ早い方がよい◆
弁護士への依頼も、早期になされることが肝要です。
会社・法人の自己破産では、弁護士と事業整理に向けた段取りを計画的に組む必要があります。段取りが悪いと混乱をいたしますし、破産法上問題となる行為がなされることがあります。準備段階での出来不出来が、後の手続に響きます。できるだけ早くから弁護士関与の下で準備をすることをお薦めします。

勿論、できるだけ早くから弁護士の指示を受けながら、あるいは弁護士のナビゲーションによりご準備をされた方が、効率的ですし、ご負担も小さくなります。

2.事業廃止のタイミング

破産手続をスムーズに進めるには事業廃止のタイミングも重要です。事業廃止のタイミングを間違えば、要らぬ混乱を招く、破産手続に移行することができないという事態を招きかねません。事業廃止のタイミングも、弁護士とよく相談の上で決めてください。
 
事業廃止のタイミングは、買掛金等の支払いをストップすればお金が一番残る時点がベストになることが通常です。
会社、法人の破産には、裁判所への予納金だけでも多額の資金が必要になります。
 
勿論、事業廃止のタイミングの決定には、銀行取引停止処分の時期、従業員解雇あるいは退職のタイミング(解雇予告手当の問題もあります)、あるいは資産処分の状況(弁護士関与の下で資産を処分して破産費用を用意することもあります)も絡んでくる問題です。事業形態によっては、新規の仕事を取らずに時間をかけて既存の仕事を順次止めていく方法を選択することもあります。

ご事情に応じてケースバイケースにベストなタイミングを図っていきます。

会社、法人の自己破産の流れ

1.申立て準備段階の流れ

◆方針・スケジュールの決定◆
まずは、方針と段取りを話し合い、事業廃止のターゲットを決めた上で、準備のスケジュールを立てていきます。
様々な準備の段取りを組んでいきますが、悩まなくていいです、弁護士と話し合って決めてください。
 
◆受任通知の発送◆
弁護士との契約後、弁護士から債権者に対して受任通知を発送します。受任通知が債権者に届いてからは、債権者対応はすべて弁護士が窓口になりますので安心です。
事業廃止のタイミングで受任通知を発送することがスタンダードでしょうか。勿論、既に取立てが厳しい、あるいは銀行取引停止処分が予定されているなど急を要する場合は別です。
委任関係が前提となりますが、受任通知は、会社分だけではなく、代表者など連帯保証人についても同時に発送します。
 
◆申立ての準備の特徴◆
会社、法人破産の申立て準備は、必要書類を揃えればいいだけで準備が済むことが多い個人(自然人)のケースと異なり、程度の差こそあれ会社・事業の清算も進めなければならないことが特徴です。
事業廃止の前後にわたり、従業員退職・解雇、賃借物件の明渡し、売掛金の入金先口座変更、事業廃止時点の売掛金リスト・在庫リストの作成、債権者リスト作成、在庫や新規仕事の圧縮、資産保全、資産譲渡、契約関係解消(水道・電気を除く)、リース物件・所有権留保物件の返還、等々の準備をしていただくことになります。
段取り、整理の程度、あるいは整理の方法など、すべて弁護士の指示を受けてください、その方が後々問題になりませんので弁護士としても楽です。
 
◆資産処分等◆
準備と並行して資産のうち簡単に現金化できるものは現金化をします(それにより費用を捻出することもあります)。
これに対し、簡単に現金化できない不動産や大型あるいは大量の機械については、管財人にその処分を委ねるために保全管理のみします。
資産や在庫の処分は必ず弁護士の関与の下で行ってください。処分の内容や処分代金の費消方法によって、後の破産手続に問題が生じることがあります。
 
◆お金の管理◆
事業廃止時には、現預金を弁護士に預けていただき、弁護士管理の下でどうしても必要なもののみに支出していきます。
ある程度お手元に管理していただいて出納を記録してもらいながら整理にかかる費用を支出していただくこともあります。
売掛金や貸付金の回収も弁護士が代理人として進めていきます。
処分代金も弁護士が管理します。
破産を見据えて、弁護士がお金を管理することが大事なのです。
 
◆申立て◆
通常は、2か月程度の準備期間を経て(予定した資産の整理及び売掛金の回収が終わるタイミングが多いです)、自己破産申立てを行います。
申立て先は、原則として、本店所在地を管轄する地方裁判所です。広島地方裁判所本庁ですと、民事第4部になります。

2.申立て後の流れ

◆破産開始決定まで◆
自己破産を申し立てると、裁判所から追加資料の提出や質問事項の回答を求められることがほとんどです。それを補正連絡と呼びます。それらに対応しつつ、裁判所から指示がある予納金を納めると、破産手続開始決定が出ます。

法人破産には必ず破産管財人が就任いたしますので、破産管財人候補者と面談をする債務者審尋の日に破産開始決定が出ることが多いです。
急を要する場合や債務者審尋が開かれない場合(最近増えています)には、予納金を納めるとすぐに破産開始決定が出ます。
 
◆破産開始決定後◆
破産開始決定が出ると、2~3か月に1度のペースで債権者集会などの期日が開かれます。代表者の方には、申立代理人弁護士と共に同期日に出席していただきます。

また、第1回の債権者集会までの間には、破産管財人弁護士の事務所に赴いて面談をする機会が数度設けられます(その後は、あまり破産管財人に呼ばれることはありませんが、在庫や資産の処分などに破産管財人から協力を求められることはあります)。

◆破産手続にかかる時間◆ 
破産手続にどれくらいの期間がかかるかとは一概には申し上げられません。不動産の処分や債権回収などを破産管財人が行う業務量にも依りますし、一般の債権者に配当がなされる案件かどうかによっても所要期間が異なります。

資産の処分もない、配当もないケースでは3か月から6か月程度、それらがある場合には1年前後がスタンダードでしょうか。1年を超えるケースも珍しくはありません。

ただ、第1回債権者集会が終わると、破産管財人からの聞き取り調査等はほとんどなくなりますので、期日に出頭するだけという負担になることが多いです。期間が長くなっても、それほど負担は大きくありません。

破産に必要な費用の目安、費用の捻出

1.破産に必要な費用の目安

◆裁判所へ納める予納金◆
裁判所に破産開始決定を出してもらうためには予納金を納めなければいけません。
法人破産の場合の裁判所へ納める予納金は原則100万円からです。
大型管財と呼ばれる大規模な破産の場合にはより多額の予納金を要求されます。一方、休眠会社や複数の会社の申立て等、破産管財人の労力が少ない場合には減額も交渉次第で可能です。なお、2社申し立てると単純に倍となるわけではありません。
 
◆弁護士費用◆
弁護士を申立て代理人とする場合には、勿論弁護士費用の手当が必要です。
費用額は弁護士との相対で事情によってケースバイケースで決まりますので、一概に相場がいくらということはできません。
弁護士費用の目安として110万円(税込み)を確保できればありがたいですが、勿論、目安にすぎず必須というわけではありません。
費用も含めて弁護士への相談事項です。
 
◆諸費用◆
多額ではないですが数万程度の諸費用もかかります。
 
◆余裕のある準備のためには◆
以上を踏まえて、当職は、法人1社の場合、トータル(弁護士と裁判所にかかる費用)で250万円を「目標」に準備していただくようお願いしています。
250万円用意できればある程度余裕をもって準備ができるという意味の目標であり、必須という意味ではありません。
また、後述のとおり、ご依頼時に全額揃っていなければいけないということではありません。

費用の面の相談も弁護士相談の大きな目的の1つですので、お気軽にご相談ください(費用の面がご相談の大きな部分を占めているのが実情です)。
 
◆代表者個人破産との関係◆
代表者の自己破産も同時に受任するケースがほとんどです。
個人の破産での予納金は30万円前後がスタンダードですが、減額交渉が効くケースもあります。
弁護士費用はトータルで調整しております(例えば、個人で多くいただける場合は法人の分を減らす、あるいは法人で多くいただける場合には個人はいただかないというようなこともしております)。

2.破産費用の捻出をどうするか

破産費用の捻出はほぼ例外なく頭を悩ませる事項です。

◆口座のお金◆
まずは、会社、法人の口座にあるお金です。
入金がありかつ支払いをストップして一時的に資金が多く残るタイミング(事業廃止のタイミング)で、残った資金を弁護士に預けていただくことが多いです。

その準備として、借入銀行口座から順次資金を移す、あるいは入金先口座を借り入れのない銀行に変更することもあります。取引先は勿論、租税公課や銀行も資金を確保しようとしますので、段取りが大切になります。
破産法は、債権者平等原則が理念となっております。支払いをストップさせて資金を保全することが悪いわけではありません。債権者の平等を期するため資産を保全することは何ら問題がない行為なのです。
 
◆弁護士に依頼した後に資金を捻出するケース◆
弁護士への依頼時に資金が揃っていなければならないわけではありません。

事業廃止後に、順次、弁護士が売掛金を回収し、あるいは回収していただいたお金を弁護士に預けていただきます。依頼時には売掛金リストを作成していただき管理をしていきます。なお、滞納処分により売掛債権、資産が差し押さえられると現金化ができなくなることには注意を要します。

資産を売却・換価することにより、費用の捻出をすることもあります。
そのため、弁護士との相談時には、早期に換価できる財産がどれくらいあるのかも検討します。

弁護士関与の下で資産を現金化して破産費用に充てることは許されております。資金を弁護士が管理しつつ、その経過を裁判所にきちんと報告します。逆に、弁護士の関与なく資産を現金化して費消することは後に問題を生じさせる恐れがあります。

取引先との関係は

1.買掛先への対応

仕入先、買掛先も、借入をされている金融機関と同様に、債権者です。弁護士が受任通知を発送した上で対応しますのでご安心ください。

返品の要請には応じられないのが基本です。後の破産手続で問題視される可能性もあるためです。在庫の所有権が仕入先にあることが契約書上明確である場合は返還することもあります。
 
買掛先からの取り付け騒ぎの危険もなくはありません。無断で商品等を引き上げることは厳密に言えば犯罪ですが、そのようなことが起きないよう、事業廃止時には事務所・倉庫や車などのセキュリティーにも気を付けていただきます。また、場合によっては弁護士名の張り紙をして牽制をすることもあります。混乱を避けるために弁護士名の受任通知を事業廃止の当日か翌日に取引先に届くように手配することも心掛けています。

2.売掛先への対応

販売先、売掛先は債務者の立場になりますので、事業廃止後も売掛金の回収を行わなければいけません。事業廃止時の売掛金リストを作成していただき、弁護士名で回収を図ることが多いです(事業廃止したことを知ると支払いを渋る先も見受けられますので)。
借入のない銀行へ振り込んでもらうよう依頼して回収をするケースや(借入のある金融機関口座は弁護士の受任通知が届くと口座を凍結してしまい、基本的にその後の入金の引き出しには応じません)、小口集金形態のご商売の場合には集金を引き続きお願いして回収するケースもあります。
 
破産開始決定までに回収できていない売掛金は、破産管財人が回収を図ることになります。

なお、売掛金債権の滞納処分により、予定していた売掛金の回収ができなくなるケースもございます。

従業員との関係は

1.従業員の解雇・退職

◆解雇・退職◆
残念ながら、事業廃止日が決まれば、従業員の方々を解雇する、あるいは従業員の方々に退職してもらうことになります。
解雇をする場合には解雇予告手当を支払う余裕はないことが多いので30日間の解雇予告手続をとることが多いでしょうが、ケースバイケースです。

社会保険、特別徴収住民税の異動手続、ハローワークの手続、源泉徴収票の発行等の退職に伴う手続は忘れないでください。

破産申立て準備にどうしても必要となる従業員がいらっしゃる場合(多くは経理担当でしょうか)、給料あるいは相応の費用をお支払いすることで引き続き残っていただくこともございます。

◆事業廃止をいつ従業員に伝えるか◆
事業廃止をいつ従業員さんにお伝えするかは悩ましい問題です。
従業員さんの生活等のことを考えると、できるだけ早くお伝えした方がいいとは思います(小規模会社であれば自主的に退職してもらえるケースも多いです)。一方、あまりにも早く事業廃止を伝えると業務に支障を来すこともございます。
 
 ◆税理士・社会保険労務士
少し話はズレますが、税理士さんの協力が必要な場合もあります。費用との兼ね合いもありますが、事業廃止時点までは数字を作成してもらった方がありがたいです。また、破産管財人が就任後に税理士に申告を依頼することもあります。
社会保険労務士さんがいらっしゃる場合には、退職手続等でご協力をいただくこともありますね。

2.未払給与等の扱い

賃金の未払いはないようにしたいと思われるのが経営者の常です。労働基準法上罰則も定められています。
未払給与がない形で事業廃止できることが理想形ですが、支払えないケースがあるのも当然です。
 
◆破産手続における労働債権の扱い◆
破産手続において、労働債権は、破産手続開始決定前3か月間の未払給与と退職金の一部は財団債権として一般の債権者よりは優先して支払いを得ることができます。
ただ、時間がかかりますし、支払えるだけの財産が破産手続の中で残るかどうかわかりません。
勿論、事業廃止後できるだけ早く破産申立てをしなければいけませんね。
 
◆労働福祉事業団立替制度◆
そのため、労働福祉事業団立替制度の利用も考えないといけません。廃業時には従業員さんへの同制度の説明も必要です。
賃金台帳、タイムカード、就業規則等、未払給与を確認できる資料を破産管財人に引継ぐことになります。
破産管財人の証明書の発行により未払い給与の8割が立替払いされますが、大まかに申し上げると、退職、解雇から6か月以内に破産申立てをしなければ対象になりませんので早期の破産申立てが必要になります(なお、破産手続外の認定制度もあります)。
 
◆役員報酬の扱い◆
未払いの役員報酬は(従業員兼務役員のケースでは従業員分給料と認められ得る限りで別ですが)、一般の破産債権となります。経営者家族でも従業員の場合には一般の従業員と同じ扱いです。
 
◆中退金がある場合◆
従業員さんの退職金制度が中退共の場合は、請求手続をしていただければ、従業員さんが受け取ることができます。

準備にあったっての留意点

1.やるべきことの整理をするべき

破産を準備するといっても、経験がある方ではない限り、何にどの順番で手を付けていいかわからず途方にくれるものと思います。
破産をするためには事業の清算が必要ですが、申し立てる前にどこまで清算するかは事情により異なります。場当たり的な準備は、疲弊しますし、効率も悪く、中には後で問題となる行為をしてしまうこともあります。

◆やるべきことの整理◆
準備の仕方や優先順位には勘所があります。様々な問題点や課題を整理してシンプルにプランニングすることが弁護士の腕の見せ所です。
弁護士と相談して、最低限必要なこと、できればやっておきたいこと、放っておいても仕方がないこと等々、やるべきことの整理をしてください。そうすれば全体像がつかめますし、優先順位も決めることができ、悩まずに準備ができると思います。
 当職は、リストを作成し、優先順位をつけ、それらを潰していただきながら、打ち合わせを重ねていくことをしています。

◆要望や問題点は早めに弁護士に伝える◆
なお、準備にあたって、様々なご要望もあることと思います。
また、説明が難しい、準備が難しい等の問題点もあることが多いです。
弁護士への相談の際には、早めにそれら要望や問題点を伝えてください。遅くなるとそれだけ手当ができなくなる可能性が高くなります。

当職は、破産法上問題がない形で可能な限りご要望を形にするお手伝いをさせていただいておりますし、問題点を法的にどのように処理をしていくか早期に方針を立てて準備をしてもらいます。

2.やってはいけないこともある

破産手続をスムーズに進行させるため、あるいは問題視されないために、準備にあたってやってはいけないこともあります。弁護士のナビゲーションに従って、相談しながら準備を進めてください。
 
◆書類の廃棄は慎重に◆
事業を廃止したからといっても、すべての書類の廃棄をするのは止めてください。破産手続の中で提出しなければならない書類も多々あります。
弁護士と相談してから廃棄をするべきです。
 
否認対象行為◆
否認対象行為を行ってはいけません。
否認とは、破産管財人がその行為の効力を否定し財産等を取り戻す制度ですが、破産管財人否認できる行為、その要件は破産法で定められています。当職も破産管財人の立場で否認権を行使することがあります。
主要なものだけ簡単に説明させていただきます。
 
偏頗弁済は否認の対象です。偏頗弁済とは支払停止状態等の経済的危機状態での不公平な債務の弁済です。問題となるのは、経営者家族、親族に対する弁済が多いです。弁済の相手、時期、債務の内容等によって判断が異なります。事業廃止のタイミングも含め、支払っていいもの、いけないもの振り分けを弁護士と相談してください。
 
財産の散逸行為も否認の対象です。会社の資産の廉価売買、放棄など、財産を減少させる行為にお気を付けください。中には合理的な説明が可能なものもありますので、実行に移す前に弁護士に判断をしてもらってください。
 
◆法人と個人の財産の混同◆
破産手続は法人格毎の手続です。法人と個人とは明確に区別されます。
会社、法人の資産と個人との間の混同を避けてください。特に会社、法人から個人への財産移転は慎重にしなければなりません。
この点で、経営者家族の役員報酬、給与も問題になり得ます。事業廃止までの役員報酬、給与は、支払う原資があるのであれば支払って問題はないでしょうが、その他は弁護士と相談してください。

弁護士に依頼する意味(倒産弁護士)

1.破産申立代理を弁護士に依頼する意味

会社、法人の破産の申立てには、代理人弁護士を依頼することが通常です。会社、法人の破産は複雑であり、弁護士の助けがなければ難しいからです。
 
◆地図を作りナビゲーションを行う◆
自己破産を申し立てると言っても、何をどのようにすればいいかわかりませんね。弁護士が地図を作り、ナビゲーションしてくれれば、安心して、効率よく準備ができます。暗中模索の中で今後のことを悩まれるのは大変な心労です、「何もわからなかった頃が一番辛かった。依頼してよかった。」とおっしゃる方が多いです。
弁護士に複雑な状況を法的かつシンプルに整理してもらい(地図を作ってもらい)、弁護士の助言(ナビゲーション)に従って、効率的なご準備をしてください。
 
◆債権者対応を弁護士に任せる◆
取引先や金融機関への支払を停止すると、程度の差はあれ混乱が生じます。
債権者の対応を弁護士に任せられることは安心です。
 
◆申立後のサポート◆
破産手続が開始されてからは破産管財人が破産手続を主宰しますが、申立代理人弁護士も破産手続の最後までサポートをします。ご安心ください。

2.倒産弁護士

◆申立代理人の腕が手続の帰趨を決める◆
申立代理人弁護士の腕が、破産申立ての準備のご苦労の程度や申立て後の手続のスムーズな進行度合いに直結すると言っても過言ではありません。
申立準備に不備があると、申立て後に苦労を強いられかねませんし、破産法上問題となる行為が問題視されることもあります。当職が破産管財人に就任した案件でも「準備をもう少しきちんとしていただければ苦労されなかったのに。」と感じることがあります。
 
◆倒産案件の弁護士業務は職人芸◆
破産手続は、破産法に則って進められます。当然、破産手続開始の申立ての準備には、破産法の知識・倒産事件の経験が必要です。破産手続には、独特のルールや考え方があり、それに携わる弁護士も職人的な能力が必要とされます。その時々の破産裁判所の傾向・考え方も事件処理の方向に影響しますので、それらもキャッチアップしなければなりません。破産等倒産手続に精通した弁護士でなければなりませんし、破産申立てを裏から見る破産管財人の経験も必須です。法人破産の破産管財人の経験が豊富であれば、手続の勘所がわかるのですね。
 
◆企業会計の知識◆
会社・法人破産の申立ては、資金繰り、事業廃止・受任通知のタイミング、資産・契約関係の整理など様々な段取りを考えないといけませんね。そのため、企業会計に関する諸知識も必要です。
まずは決算申告書類等の会計書類を拝見して事案の見立てを行い、個々の問題を紐解いていきます。
 
◆倒産弁護士、破産弁護士◆
倒産法制に精通し、申立て代理人経験も破産管財人等の経験も豊富で、破産等倒産事件を業務の柱の1つにしている弁護士を「倒産弁護士」、「破産弁護士」と呼ぶことがあります。「離婚弁護士」なんてドラマもありましたね。
会社、法人の破産の申立てを依頼するのであれば、当然、そのような弁護士に依頼した方がいいでしょう。
弁護士の質を確かめるには、相談する弁護士に細かいことでもたくさん具体的な質問を投げかけてください。あなたの望む弁護士であれば、抽象的な回答にとどまらず、具体的なアドバイスをしてくれるでしょう。
 
なお、当職も、申立て代理は勿論、破産管財人経験も豊富で、裁判所との破産等に関する協議会のメンバーにもなっております。また、銀行出身であり、企業会計の諸知識も豊富です。安心してご相談いただけるものと自負しております。

まとめ

1.会社、法人の自己破産の決断にあたって

社会的価値のある事業はできるだけ継続するべきです。しかし、会社、法人の自己破産は最後の手段ではありません。事業継続の可能性を見極め、自己破産の決断を早期に行うことも大事な経営判断です。できるだけ早く弁護士に相談し、事業継続の可能性を見極め、事業継続の可能性に沿った適切な選択をしてください。費用面も弁護士と相談すればいいことです。経営者に必要なのは、適切な助言を得ることと決断することです。

2.会社、法人の自己破産の準備にあたって

自己破産を選択されたのであれば、できるだけ早く破産手続や企業会計に詳しい弁護士に依頼するべきです。海図と羅針盤なくして進んではいけません。弁護士とともに、事業廃止のタイミングを見極め、やるべきことを整理した上で、ナビゲーションに沿った準備を進めてください。効率的な、かつ適切な準備が後の破産手続のスムーズな進行に直結します。

この記事を書いた人

firsttime_lawyer.jpg弁護士仲田誠一(広島弁護士会所属)
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27
アーバンビュー上八丁堀602
TEL:082-223-2900
https://www.nakata-law.com/
https://www.nakata-law.com/smart/
◆経歴
1996年4月
あさひ銀行 融資、融資管理、企業再生、法人営業等
2002年5月
東京スター銀行 経営管理、内部監査、法人営業等
2004年4月
広島大学大学院法務研究科
2008年12月
弁護士登録
2017年~各前期
広島大学大学院客員准教授(税法担当)
◆資格
弁護士
公認内部監査人試験合格

臨時休業のお知らせ【令和2年4月19日(日)】

平素よりお世話になっております。

新型コロナウイルスの感染防止の関係で、
令和2年4月19日(日)
を臨時休業とさせていただきます。

よろしくお願いいたします

なかた法律事務所
弁護士 仲田 誠一

令和2年3月1日(日)臨時休業のお知らせ

平素よりお世話になっております。

令和2年3月1日(日曜日)でございますが、弁護士不在のため、臨時休業とさせていただきます。

ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。

なかた法律事務所
弁護士 仲田 誠一

臨時休業のお知らせ

平素よりお世話になっております。
令和2年2月2日(日)
ですが、弁護士不在の為、臨時休業とさせていただきます。
ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いします。

なかた法律事務所

臨時休業のお知らせ【令和2年1月13日(祝)】

平素よりお世話になっております。

令和2年1月13日(祝)でございますが、弁護士不在の為、臨時休業とさせていただきます。
ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。

なかた法律事務所 弁護士 仲田 誠一

民法改正講座13 【身近な法律知識】

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。
 
今回は、個別の契約類型の話に入ります。
講学上は、契約各論と呼ばれます。
 
【贈与に関する改正(民法549条から551条)】

めぼしい改正点は、贈与者の担保責任が削除され、贈与者の引渡義務に関する規定に改められたことだけです。

贈与者は、目的物あるいは目的である権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定されます。
当事者の意思推定規定です。

以下は、売買契約に関する条文の主な改正点です。
 
【瑕疵担保責任に関する改正】

売買などの有償契約の担保責任については、法定責任説(法律が特別に定めた責任)と契約責任説(契約上の責任)の考え方があり、従来は法定責任説をベースに解釈されてきました。

改正により、契約責任説に則った条文に変更されました。

そのため、「瑕疵」という言葉がなくなり、「契約の内容に適合しない」という言葉になっています。
 
【権利移転の対抗要件に係る売主の義務(民法560条)】

売主は買主に対し、登記等の対抗要件を備えさせる義務を負うことが明文化されました。
当然ですね。
 
対抗要件とは、その権利を主張するための要件です。
不動産なら登記、普通自動車なら登録、債権なら譲渡通知、動産なら引渡しですね。
 
【買主の追完請求権(民法562条)】

契約責任説の観点から、目的物が種類、品質又は数量に関して契約内容に適合しないものであるときは、買主は、修補請求、代替物の引渡し請求、不足分の引渡し請求(これらを追完請求権と呼びます)ができる旨定められました。
 
これに対し、売主は、買主に不当な負担を課するものではない限り、買主の請求した方法による追完(修補を請求されたが代替物を引き渡すなど)ができます。
 
勿論、契約不適合が買主の責任である場合には、買主は追完請求をすることができません。
 
【買主の代金減額請求権(民法563条)】
契約不適合のケースの買主の代金減額請求権の規定が定められました。
 
追完が不能であるとき、追完拒絶の意思が明確に表示されたとき、特定の日時・期間に履行しなければ契約目的を達成できない契約のその時期の徒過、以外のケースでは、相当の期間を定めて追完の催告をした上で、不適合の程度に応じた代金の減額を請求することができます。
 
このようなケースでは解除もできますね。解除しないで代金減額請求もできるということです。
  
【買主の損害賠償請求及び解除権の行使(民法564条)】

担保責任(追完請求権、代金減額請求権)が発生する場合でも、債務不履行による損害賠償請求、解除ができることが定められています。
契約責任説によっています。
 
また、以上の3条は、物ではなく権利の契約内容の不適合のケースへも準用されます(民法565条)。
 
【目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限(民法566条)】

種類または品質(数量不足は一般の債務不履行の期間制限です。)に関して契約内容不適合のケースでは、買主はその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければ、追完請求権、代金減額請求権、損害賠償請求権、解除権を保全できません。

権利行使ができなくなるということですね。
期間内に通知をすれば、個別の請求権は一般の消滅時効に服します。

ただし、売主が引渡しの時に不適合を知りあるいは重大な過失によって知らなかったときは、上の期間制限に服しません。
 
【目的物の滅失等についての危険の移転(民法567条)】

目的物の引渡し後、または買主の受領遅滞(履行の提供があったにもかかわらず受領しない場合)後に、当事者双方の責めに帰すことができない事由により目的物が滅失・毀損した場合は、買主がその危険を負担する旨明文化されました。
 
買主が危険を負担する場合、追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除はできませんし、代金の支払い義務を免れることはできません。
 
目的物の引渡しあるいは受領遅滞を危険の移転時期としたものです。
 
次回も売買関係の続きからです。

ここら辺は大きく変わっているところで、他にも細かい変更がありますが大所だけ挙げています。
なお、今回の売買契約の条文は、多くが他の有償契約にも準用されます点をご注意ください。
有償契約の総論規定のような性質の条文なのです。
 
お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
https://www.nakata-law.com/
 
https://www.nakata-law.com/smart/


民法改正講座12 【身近な法律知識】

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。
 
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。
 
今回は、契約の総論の続きです。
 
【催告による解除(民法541条)】
元々は履行遅滞(期限になっても債務を履行しないこと)の解除に関する条文でしたが、履行遅滞、不完全履行(債務の本旨に従った履行をしないこと)、履行不能(債務が履行できなくなったこと)の債務不履行共通の催告による解除の条文になりました。
 
債務の履行がない場合には、相当の期間を定めてその履行を催告し、その期間内の履行がないときには解除できます。
 
相当期間は、感覚的には10日間から2週間でしょうか。
催告と同時に履行がないときの解除も合わせて内容証明郵便で通知することが多いですね。
停止条件付解除通知といいます。
 
新法では、解除の要件として債務者の帰責事由を外しています。
相手方へのペナルティの問題ではなく、契約関係からの離脱の問題とされたからです。
 
ただし、不履行が契約及び取引通念に照らして「軽微」であるときは、解除ができないことも定められました。
そのケースでは、損害賠償請求ができるだけです。
 
【催告によらない解除(民法542条)】
上述の催告をすることなく解除できる場合が整理されました。
 
催告をしないで契約の全部を解除できるのは、
債務の全部の履行が不能であるとき(全部履行不能)
債務者が債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき
一部履行不能あるいは一部履行拒絶のケースで残存部分だけでは契約目的を達成できないとき
特定の日時または一定の期間内に履行しなければ契約目的を達成できない場合に履行がないとき
催告をしても契約目的を達成する履行がなされる見込みがないことが明らかであるとき
です。
 
催告をしないで契約の一部を解除できるのは、
債務の一部の履行が不能であるとき(一部履行不能)
債務者が債務の一部を拒絶する意思を明確に表示したとき
です。
 
催告をしても意味がないケースですね。

こちらも、解除の要件として債務者の帰責性が外されています。
 
【債権者の責めに帰すべき事由による場合(民法543条)】
債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由による場合は債権者は解除することができないことが明文化されました。
当然ですね。
 
【定型約款(民法548条の2~548条の4)】
約款取引というものがあります。
ガスとか電気とか預金など契約時に具体的な交渉により取引条件が合意されることなしに約款どおりの契約をするケースですね。
そのうち「定型取引約款」について、民法の条文に取り込まれました。
 
定型取引(不特定多数の者を相手方として行う取引)の約款は該当するものと考えていいでしょう。
事業者間取引の約款や契約書は該当しないとされています。
 
約款を読んで契約を申し込むことはあまりないかもしれません。
内容を知らない事も多いでしょう。
しかし、定型契約をする合意をしたとき、あるいは定型約款を準備した者が契約内容とする旨を表示していたとき、は約款が契約の内容となります。
ただし、信義則に反し相手方の利益を一方的に害する条項は合意がなかったものとみなされます。
 
定型約款準備者には定型約款の内容の表示義務が課されます。
 
次の一定の場合には、定型約款の変更を相手方との合意なしにすることもできます。
変更が相手方一般の利益に適合するとき
変更が契約目的に反せず、必要性・相当性・変更がある旨の定め有無等の事情に照らして合理的なものであるとき
です。
一方的な変更が認められる場合でも、変更について周知義務が課されています。
 
お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
https://www.nakata-law.com/
 
https://www.nakata-law.com/smart/


臨時休業のお知らせ

平素よりお世話になっております。

令和元年11月4日(振替休日)ですが、弁護士不在のため、休業させていただきます。
ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いします。

なかた法律事務所

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