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コラム

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譲受人による使用貸借人の退去請求 [不動産]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
久しぶりに不動産問題について投稿します。
 
法律家でない限り、使用貸借契約という言葉は馴染みがないかもしれません。
意味は、無償の貸借契約のことです。
不動産を賃料を取らずに人に貸したら使用貸借です。
これに対して、有償だと(賃料を支払合意があると)、賃貸借契約ですね。

なお、不動産を借りるにあたって固定資産税の負担等金銭の授受があったとしても賃料支払の実質がなければ使用貸借契約と解釈されます。
 
不動産の賃貸借であれば、借地なら建物登記、借家なら引渡しで第三者に対する対抗要件を具備することができます。
借地借家法の規律です。
第三者対抗要件を具備するというのは、第三者に権利を主張できるようになるということを意味します。
そのため、物件が第三者に対して譲渡されても、賃借人が対抗要件を具備しているのであれば、譲受人の第三者に対して賃借権を主張できますから、結局、物権の譲受人は賃貸人の地位を引き継ぐことになります。
 
これに対し、無償行為である使用貸借は、借地借家法の適用外であり、そのような効力はありません。
無償であるから借地借家法によって保護されていないのですね。効力が弱いのです。
そのため、物件が第三者に譲渡されてしまうと、第三者たる譲受人に対抗できず、譲受人に使用貸借関係を主張できませんから、結局、譲受人からの建物収去請求、明渡請求が認められます。
これが原則です。
 
ところが、土地の使用貸借をして建物を所有する者に対して行われた土地の譲受人からの建物収去土地明渡請求について、権利濫用を理由に排斥した高裁の裁判例を見ました。東京高裁平成30年5月23日判決。
 
同判決は、土地の借主兼建物所有者の土地の占有権原は使用貸借であって土地譲受人に対抗し得る占有権原を有していないから、権利の濫用に当たるとの特段の事情が認められない限り、土地譲受人は土地所有権に基づいて建物収去・土地明渡を求めることを確認しています。
その前提の下、本事例ではその権利濫用に当たる特段の事情が認められるとしたわけです。
 
同事例は、低廉な売買価格(更地価格の3割にも満たない額)で売買・同日転売されたいかにも怪しい事例だったようです。
譲渡人も合理的に価格を検討していないでいいなりで安く売却したようです。
また、建物所有者・居住者に権利関係を尋ねることなく秘して取引が行われた異常性も指摘されています。
勿論、建物所有者も高齢で体調も悪いという気の毒な事情もあったようです。

上記裁判例は、土地譲受人は、権利関係を十分に把握していると思われない譲渡人から極めて低廉な底地価格で購入して巨額な経済的利益を得た上、借主の生活等に及ぼす影響を考慮していない、などと断罪し、権利濫用にあたる特段の事情を認めました。
 
明渡請求が信義誠実の原則に反して権利濫用に当たるかどうかは、使用貸借関係の当事者間で検討されるべきで、第三者たる譲受人は本来関係のないことです。
債権関係は当事者間の関係で第三者は関係ありません。
第三者にも主張できる所有権など物権と異なり(対抗要件は必要ですが)、債権は債権者が債務者に要求するだけの権利であり、第三者に何ら要求できないのが原則なのですね(土地建物賃貸借は借地借家法により対抗力を認められて第三者にも主張ができるという意味で、物権化されています)。
 
当事例では、売買の異常性を認め、土地譲受人側そのものの暴利性を認定したのでしょう。
 
一方で、上記裁判例は、明渡しが1億円の立退料を支払えば、権利濫用に当たらないとします。
そして、1億円の支払いとの引き換えに建物収去・土地明渡を認めました。
支払いと引き換えに請求を認める形の判決を引換給付判決といいます。
 
立退料は、賃貸借の更新拒絶における正当事由の存否の判断の場面において典型的に出てくるものですね。
〇〇円の支払いとの引き換えに更新拒絶の正当事由を認めて明渡しを認めるわけです。
前記裁判例では、使用貸借を前提とする権利濫用の判断においても、同じような考え方をしたということですね。
 
なお、更地価格は2億6000万円超だとのことです、使用貸借で立退料1億円というのはかなり高いですね。
対抗力ある賃借権であれば相応の借地権価格が認められますが、使用貸借は違います。
建物収去費用(土地上の建物を壊して撤去する費用)が2000万円ほどと認定されているようで、それも加味されているのでしょうが。
 
勿論、使用貸借は効力が弱いのは確かです。
権利濫用が認められるのは、特別なケースだけだと思います。
今回は、その特別なケースをご紹介しました。
 
不動産に関するご相談はなかた法律事務所にご用命を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
https://www.nakata-law.com/
 
https://www.nakata-law.com/smart/
 


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昔の抵当権が残っている不動産 [不動産]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。
 
今回の不動産問題コラムでは、不動産に昔の抵当権が残っているケースについてお話します。
 
相続で受け継いだ不動産に昔の抵当権設定登記が残っていて売却に支障が出ているという相談を受けたこともあります。
 
通常は、被担保債務を弁済したら、抵当権設定登記を抹消しますね。

昔の抵当権が残っているケースでは、被相続人あるいはその先代が抹消手続をするのを漏らしたのだろうと思います。
もしかしたらまだ弁済していないかもしれないケースもあるかもしれません。
ただ、昔の事情はもはやわかりません。
 
ところで、抵当権抹消登記は、抵当権者と所有者の共同申請になります。
住宅ローンを完済したら銀行から抹消書類をもらえますね。
実際には債務者が自分であるいは債務者が司法書士に依頼して抹消登記をするのですが、形上は、共同申請なのですね。
 
そうであれば、昔の抵当権も、抵当権者の協力を得られれば抹消登記をすることができます。

ただし、昔の抵当権であれば、抵当権者の相続人(勿論、相続が何回か続き、相続人が枝分かれして多数になっているかもしれません。)が相手ですね。、
 あまり現実的ではないかもしれませんし、手間がかなりかかります。
 
関係者が多い場合にはすべての方の同意が得られるかわからないし、書類取得などの協力を得ることも煩雑なため、訴訟により解決することの方が多いのではないでしょうか。
 
相続人は調べないといけませんが、相続人を相手に抹消登記手続請求訴訟を提起し、判決に基づいて抹消登記を行うのです。
 
判決に基づいて債権者の相続人の登記申請意思が擬制されますから、所有者一人で登記申請できます。
 
弁済した証拠がある場合は弁済による抵当権消滅を理由にして、ない場合には(ほとんどそうでしょうが)、消滅時効の援用による被担保債権の消滅を理由として、抹消登記を求めます。
 
勿論、訴訟提起をする場合には、事前に、被告となる相続人に対して連絡をし、事情を説明し納得してもらう努力をします。
 
訴状がいきなり届いたら驚かれますし、要らぬ紛争を生じさせてしまうかもしれません。
事情を理解してもらい、訴状が届いても放っておいてもらえつならば、スムーズに判決を得ることができます。
 
相続人による先祖名義の不動産の時効取得のケースですが、被告である現在の相続人が枝分かれをして30名を超えることになった例がありました。

事前にご理解を得て、お一人だけ裁判所に出てこられましたが、争わないというお話をその場でいただいたので、すぐに判決を得ることができました。
 
売却を予定しているケースなどでは、できるだけ早く抹消登記を実現しなければなりません。事前の根回しも必要です。
 
複雑なケースでは相続人調査だけで1~2カ月要することもあります。
できるだけ早く着手しましょう。
 
なお、昔の抵当権者が法人であった場合には、相続はありません。
 
その法人に対して抹消登記手続を依頼、あるいは抹消登記手続請求訴訟を提起します。

名前が変わっても、合併があっても、法人が存続している限り問題ありません。
 
法人がなくなっていたらどうでしょう。
なくなった、の意味によりケースバイケースで考える必要があるでしょう。
 
今回は、不動産に昔の抵当権が残っているケースでどうやって抹消をするのかをお話ししました。
 
不動産に関するご相談はなかた法律事務所にご用命を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
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登記に協力してもらえない場合 [相続問題、不動産問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
不動産登記、特に相続のお話です。
 
合意ができているのに不動産登記に協力してもらえないという例が稀にあります。
通常は、合意までしたのであれば登記協力はしてくれますし、実務上は、合意書面と同時に登記書類の作成や印鑑証明書の用意をしてもらいます。
 
ただ、書類のやりとりを郵送で行わなければならないこともあり、そのような場合には合意書面のみもらえて登記用の書類がもらえないという事態も発生し得るのです。
 
【代物弁済契約書などの契約書面を作成したにもかかわらず登記書類がもらえない場合】
 
契約が成立した時点で、条件や代金等支払の同時履行の抗弁など不動産の所有権移転が妨げられる理由がない限り、契約に基づいて不動産の所有権は移転します。
なお、理論上、契約は極一部の例外を除いて口頭でも成立しますから、契約書がない場合も契約の成立が認められるのであれば同じです(ただ、きちんとした証拠がなければ事実上裁判では認めてもらえません)。
 
契約が成立しているのであれば、契約の相手方は登記申請義務者になります。
○○契約に基づく所有権移転登記手続請求訴訟を提起して確定判決により相手方の登記申請意思を擬制してもらえれば、所有権移転登記をすることができます。
 
なお、契約書があるのであれば、割合容易に契約の成立が認められます。
書類作成の真正(名義人が自分の意思で作成したこと)が認められれば、特段の事情がない限り、書類の記載どおりの法的効果が認められるからです。
 
【遺産分割協議が成立したにもかかわらず印鑑証明書がもらえない場合】
共同相続人間の協議により遺産分割が成立した場合には、相続開始の時に遡ってその効力を生じます。
そのため、遺産分割協議が成立し、単独で相続することとなった相続人は、不動産を被相続人から直接承継取得したものとして、単独申請により相続登記をすることができます。
ただし、戸籍や遺産分割協議書は勿論、書面作成の真正を担保するために他の相続人の印鑑証明書を添付する必要があります。
 
そこで、他の相続人が印鑑証明書の提出に応じない場合には、相続登記ができなくなります。
 
契約に基づく移転登記請求は前述のとおり相手方に対する所有権移転登記手続請求訴訟の勝訴確定判決により相手方の登記申請の意思を犠牲し、登記をすることができます。
これに対し、被相続人名義のままの不動産の相続登記は、遺産分割により不動産を単独取得した相続人の単独申請の構造をとりますから、他の相続人は登記の申請義務者ではありません。
そのため、他の相続人に相続を原因とする所有権移転登記手続を求める判決を得ても意味がないとされています。
 
遺産分割協議に基づく登記ができない場合の解決方法としては、3つ挙げられています。
 
まず、遺産分割協議書の真否確認の訴え(遺産分割協議書が相続人全員の意思に基づいて作成されたことの確認を求める訴え)を提起して勝訴の確定判決を得る方法です。
民事訴訟法134条ですね。
確定判決を、印鑑証明書の代わりに相続を証する書面の一部として提出することができます。
その上で、登記に協力する相続人の印鑑証明書、遺産分割協議書等を提出し、相続登記を単独申請できます。
勿論、遺産分割協議書を作成していなければいけませんね。
 
次に、協力しない相続人に対し、遺産分割協議の結果としての所有権の確認訴訟を提起し、勝訴の確定判決を得る方法です。
遺産分割協議の成立により不動産の所有権は既に移転しています。
だから所有権を確認するということですね。
確定判決とともに、登記に協力する相続人の印鑑証明書、その者の署名・捺印ある遺産分割協議書を提出して、相続登記を申請することになります。
理屈上、遺産分割協議書が作成されていなくても提起できます。
しかし、口頭の協議成立を証する証拠がなければいけません。
 
最後に、法定相続分割合による共同相続登記をまず行い(これは単独申請できます)、協力をしない相続人に対し、遺産分割を原因としてその共有持分の全部移転登記手続請求訴訟を提起する方法です。
一旦共同相続登記が入れば、遺産分割協議による移転登記は共同申請となるため、判決による登記申請意思の擬制の意味が出てきます。
協力しない相続人との関係では確定判決をもって意思を犠牲してもらい登記申請する、協力が得られる相続人との関係では共同申請を行うということになります。
登記を2回する必要がありますね。
 
どの方法がいいかはケースバイケースの判断ですね。
遺産分割協議書があるのであればどれでもいいでしょう。
証書の真否確認訴訟の方が直截的でしょうか。
ただし、肝心の遺産分割協議書に少しでも不備があれば、真否確認の訴えも使いづらいですね。
 
遺産分割協議書がなければ真否確認の訴え以外の方法しかとれません。
一旦法定相続分による共同相続登記を行う方法がは、数次相続が起きているケースでは使いづらいですね。
 
私が扱った案件では、
相続人の1人が既に亡くなり、その相続人との間で遺産分割協議書が作成していた事例では、真否確認の訴えを
遺産分割協議書が作成されていましたが、少し不備があり、かつ相続人のうち2人が亡くなっていた事例では、所有権確認訴訟を、
代物弁済合意書がある事例では、勿論、所有権移転登記手続請求訴訟を、
各選択しました。
 
登記の問題が絡む訴訟は、勝訴判決が出た際に本当に判決に基づいて登記ができるのか、司法書士や法務局に確認をしないと進められません。
訴訟においても、裁判官から本当にこの形で登記ができるのか確認をされることも多いです。
 
不動産問題、遺言、相続、遺留分相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
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親族間での不動産売買の注意点 [不動産]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

今回の不動産問題コラムは、親族間での不動産売買の注意点の説明です。

 

親族間の不動産の売買をお手伝いすることがあります。
相続絡み
自己破産をしなければならいがどうしても自宅不動産を残したい場合
事業承継対策
などですね。

 

そこで、親族間での不動産売買の注意点をお話しようと思います。

 

親族間の売買でも第三者間の売買でも流れは基本的に同じです。

売買契約を締結し、
代金の支払いと所有権(あるいは持分権)移転登記
をするということになります。

 

代金ですが、勿論、法律上は自由に決められます。双方が合意した金額でいいのです。

 

ただ、親族間の不動産売買では、時価よりも価格を安くすることがよくあります。
親族間の売買にはいろいろな事情が絡みますからね。

 

ところで、不動産の時価とはなんでしょうか。

 

時価とは、流通価格、交換価値というべきでしょうか。

 

不動産の価値を示すものとしては、固定資産評価、路線価、公示価格がありますね。

一般的にはその並びで金額が上がっていきます。

固定資産評価は固定資産税等のための評価額です。
時価とイコールではありません。
昔は時価の7割と言われていましたが、ケースバイケースです。中には時価よりも高いケースもあります。

 

路線価とは相続税、贈与税のための評価額です。
これも時価とイコールではありません。昔は時価の8割と言われていました。こちらもケースバイケースです。
路線価評価は国税庁のホームページで簡単に調べることができます。
設置道路毎に価格が出ているのです。
ただし、路線価が出ていない地域もあります。
その場合は、倍率表というものがあって、固定資産評価×〇倍の評価をすることになっています。

 

公示価格は時価に最も近いものです。ただ、基準点の価格しか出ていないので、個々の不動産の評価には役にたつことは稀です。
たまたま基準値と近似した不動産だったりする場合には参考するという程度です。

 

結局、時価は簡単に調べられるものではありません。不動産業者に売買事例等を基にした評価をしてもらう、鑑定士に鑑定をしてもらう必要があります。
鑑定費用はかなりかかるので、査定書をとることが多いでしょう。

 

自己破産に絡んで自宅不動産を残すために売買をすることもあります。
自己破産絡みの売買であれば、時価相当額でなければ後に破産管財人否認されるおそれがあります。
時価相当額での売買でなければなりません。弁護士が介入して売買をし、かつ査定を取っておいた方がいいでしょう。

持分権の売買の評価は難しいです。
時価を基本として、一定程度減価することも許されるのではないでしょうか。
事実上、持分だけを売ることはできないですからね。

 

 

自己破産絡みでない場合でも、時価は気にしなければいけません。
廉価売買は贈与税の課税対象となり得るのです。購入者に対して贈与をしたとみなされるのです。

 

基準は、時価の2分の1だと思ってください。ただ、時価がいくらかを考えるのは難しいのは上述のとおりです。
税務調査がなされた場合にきちんと説明ができるように、価格算定の根拠は残しておかなければいけません。
時価の2分の1ぎりぎりでの売買は、税務署が考える時価がいくらか分からない以上、危険です。
事情があって安くする場合でもある程度余裕を持った金額、説明がきちんとできる金額で売買をした方が無難です。
後から税務署が高い時価評価をして課税してくることもあり得ます。

 

この点で、親族間の売買であっても不動産仲介業者を介入させることや、弁護士や税理士の価格算定に関する意見書を作成することもあります。

親族間の不動産売買は、このような税金面で慎重に検討しなければなりません。

 

なお、不動産を売買で取得すると、後から不動産取得税を支払わなければいけません。
不動産業者が絡む売買(新築戸建ての購入等)だと、不動産取得税の申告(そんなに難しいものではありません)の申告を代行してくれたりすることもあり、申告が必要なことをご存じないケースがあります。購入者は不動産取得税の申告が必要である点にもご注意ください。

 

親族間だからといって、簡単に売買をしてしまうと、足元をすくわれることがありますのでご注意を。

 

不動産に関するご相談はなかた法律事務所にご用命を。

 

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共有不動産の賃貸 【不動産問題】

広島県広島市の弁護士仲田誠一の不動産問題コラムです。

 

相続に基づく遺産分割により、あるいは元々共同で購入したため、共有不動産となっているケースで、これからその共有不動産を賃貸する、あるいは既に共有不動産を賃貸している場合の法律関係をお話ししようと思います。

 

民法は、共有物の変更行為には共有者全員の同意が必要(民法251条)、管理行為には持分の過半数で決める(民法252条)、保存行為は共有者単独でできる(同条ただし書)としています。

 

変更行為は、解体、処分、担保設定が典型です。

 

管理行為は、変更行為に当たらない(物件の状態を変更しないで)利用・改良する行為です。

 

保存行為は、破損部分の修繕、不法占有者に対する明け渡し請求、抵当権の解除などです。

 

賃貸借契約の締結はど変更行為・管理行為・保存行為のどれに当たるのでしょうか?
 

賃貸借は利用行為ですから管理行為と言えそうです。そして、実際に、賃貸借契約の締結も含まれるとされる見解もあります。

 

一方で、多くの賃貸契約締結には変更行為として共有者全員の同意が必要とされるとも言われています。

 
確立した判例がないため、事例判断によるしかありませんが、目的不動産の利用形態、前述の期間の長短がメルクマールとして判断されるようです。

まず、駐車場を建物建築目的で賃貸するような、共有物の利用形態を大きく変更する場合には、変更行為と見られる可能性が高いです。


次に
、期間の長短です。処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、賃貸期間は土地5年、建物3年と定められています(民法602条)。短期間の賃貸借なら合意していない少数持分権者への影響が小さいとされているのですね。長期間の賃貸借契約になると、少数持分権者への影響が大きいため共有者全員の同意が必要と言われます。

 

かつ、借地借家法の適用がある賃貸借契約は、短期賃貸借であっても更新されて長期間の契約になる可能性が高いです。借地借家法の適用のある賃貸借は共有者全員の同意が必要とした裁判例もあるようです。借地借家法の適用はないものは、建物所有を目的としない土地賃貸借や一時使用目的の建物賃貸借です。通常の賃貸借は借地借家法の適用があります。

 

無難な考え方をするのであれば、上述の借地借家法の適用のない短期賃貸借かつ利用形態を変えない賃貸借は共有者の過半数持分の同意でできる、それ以外は共有者全員の同意が必要というべきでしょうか。

 

共有物の賃貸借契約の解除を管理行為とすることは判例で確立されているようです。

 

賃貸借契約の更新の場合は難しいですね。自動更新ならいいのでしょうが、変更行為と見られる賃貸借の場合の都度更新の場合は更新契約にまた共有者全員の同意が必要と考えた方がいいでしょう。

契約内容の変更については、共有者間で決めた共有物の使用収益方法を変更する行為も共有物の変更とする見解があります。程度問題だとは思いますが。

 

共有者全員の同意が必要な賃貸借を過半数持分者の同意で賃貸借契約を締結した場合、反対の少数持分権者から異議が出たらどうなるのでしょうか。

少数持分権者分の持ち分について無断賃貸借ということになりますね、ただし契約当事者間ではただちに無効になりません。少数持分権者が明け渡しを要求できるかは難しい問題です。一般的な見解と言えるものは見当たりませんでしたが、共有者は持ち分に応じて共有物を利用できるので、賃借人は単なる不法占拠者とは見られず、かつ少数株主権者が単独の占有権がない以上、明渡しは認められない可能性が高いのではないでしょうか。勿論、共有者間では争いになりますし、賃料相当額の少数持分権者分を支払えとの請求は当然あるでしょう。正直簡単に答えが出て来ない問題ですね。

 

なお、契約手続代行、解除通知自体は共有者単独でできます。事柄に応じて、他の共有者の全員あるいは過半数持分の同意があればいいのです。

 

なお、共有物の賃貸による賃料については、特別な合意がない限り、当然共有者に持分に応じて分配する必要があります。費用も持分に応じた負担ですね。

賃料が分配されない場合には、不当利得あるいは不法行為として分配しない共有者に対して請求をすることができます。

確定申告も共有者全員がそれぞれしなければならないのが原則です。

このように共有物件は複雑です。共有状態は好ましくないですね。

 

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オーバーローンの共有不動産の分割請求 [不動産問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 
今回の不動産問題コラムは共有不動産の分割請求のお話です。


不動産は、結婚・離婚や相続により共有状態になることが多いでしょうか。
 

民法上、共有状態は異例な状態との位置づけであり、共有者はいつでも共有物の分割を請求できることが原則です。
共有物分割請求といいます。

  

共有物分割請求は、調停、訴訟ができます。訴訟で折り合いが付かなければ最終的には換価分割の判決が出る可能性があります。
勿論、現物で分けられる場合には現物分割もありえますが、実際には不動産を2つに割るのは難しいですね。
競売で換価して分けるというおそろしいことになり得ます。

通常、共有物分割請求では、お金で清算する、あるいは共同で売却して代金を分けるという和解的解決が図られます。
それが利害関係人共通の利益だと思います。合理的な解決ですね。

ただ、感情も入り、合理的な和解解決ができないこともありますね。
そういう場合は判決、競売もやむを得ないということになります。


ところで、オーバーローンの場合はよく考えないといけないことがあります。
オーバーローンというのは、不動産に担保が付いており、被担保債権が当該不動産の価値を上回っている状態です。
ローンがオーバーしている状態ですね。

離婚によって、オーバーローンの共有不動産が作出される場合が典型でしょうか。

共有物分割は、最終的には判決による解決、かつ換価分割が原則になるということは上述しました。


しかし、オーバーローンの場合、共有不動産を分割するために競売をすることはできません。そういう判例があります。

仮に、訴訟をして換価分割の判決を貰っても、執行ができなければどうしようもないですね。

 

じゃあ、オーバーローンの場合に和解的解決ができない場合はどうするかという問題があります。

ここで、全面的価格賠償による解決が出てきます。
全面的価格賠償とは、所有権を一方に認めるが他方にお金を払えという形のやや例外的な判決で、これを認めた裁判例もあります。
金銭解決ですね。

勿論、オーバーローンでない場合にも、あり得る判決です。

ただ、当事者の反対意向がなく単独所有権を取得する当事者に支払能力がある場合でないと出ない判決です。

価格賠償の判決が出る可能性があるのであれば、オーバーローンでも共有物分割請求訴訟をやって意味があるということになりますね。

 

理屈で言ったら不動産に価値が残っていない以上、価格賠償はゼロでもいいような気がしますが、そうはいかないでしょう。
離婚後のケースで、ローンの負担状況や居住利益等も含めた総合考慮により価格賠償額が決められた例もあります。

総合考慮だと金額の見通しはなかなかつけられないことになりますが。


不動産に関するご相談はなかた法律事務所にご用命を。

 

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