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コラム 2010年12月
「よいお年を」

大変ですが、私の勉強にもなりました。

ご興味がありましたら読んでいただければ幸いです。






【身近な法律知識2】 コラム一覧「車は走る凶器?」(2010-12-27)
【消費者問題1】敷金、原状回復義務について(2010-12-05)
【消費者問題2】マンショントラブル,管理費を払ってもらえない!(2010-12-12)
【消費者問題3】破産って恐い?(2010-12-19)
【消費者問題4】マンションでのトラブル(ペット・リフォーム問題)(2010-12-25)
【相続・家庭問題1】「家族の安心のために遺言を」(2010-12-07)
【相続・家庭問題2】「生命保険金は遺産になるの?」(2010-12-15)
【相続・家庭問題3】「遺留分って何?」(2010-12-17)
【相続・家庭問題4】「協議離婚の話」(2010-12-21)
【相続・家庭問題5】「調停離婚の話」(2010-12-22)
【相続・家庭問題6】「裁判離婚の話」(2010-12-23)
【相続・家庭問題7】「成年後見制度ってなぜ必要?」(2010-12-29)
【企業法務1】整理解雇って? (2010-12-11)
【企業法務2】従業員は転勤を拒めない?(2010-12-28)






来年からも、少しでも役に立つお話をさせていただければと思っていますので、よろしくお願いします。
良いお年を。

(なかた法律事務所)
2010年12月31日 00:20
「デリバティブで倒産急増」
弁護士の仲田誠一です
広島南部も大雪注意!だそうですね
たまに雪が積もると,雪に慣れていない分,交通などが麻痺したり,事故が増えたりしますね。
気をつけないといけませんね
さて,昨日の中国新聞で,「デリバティブで倒産急増」という記事が載っていました
中小事業者が銀行から為替デリバティブ商品を買っていたところ,このところの急激な円高で多額の損失が発生し,倒産などに追い込まれるケースが急増しているとのことです。
デリバティブは,なんであれ,うまく使わないと「博打」になってしまいます。
うまく使うということは,私の金融経験上,「儲けは考えない。保険料を払うような気持ちで,損失を抑える契約をする。」ということです
本来,一般事業者が行うデリバティブは,リスクヘッジの方法のためにあるべきです。儲けが出るような契約は,損失も青天井だったりします,それはくどいですが「博打」と同じです
銀行から勧められると,付き合い(力関係)や安心感から,いろいろな金融商品に手を出して損をするケースが多いのも実情です。言うまでもなく銀行も営利事業者です。元銀行員の私が言うのもなんですが,お客さんの利益になることばかりを勧めるわけではありません。
特に,注意して欲しいのが,銀行が新しい商品を販売したり,新しい提携商品を紹介したりする時期です。新規投入商品というのは,通常の商品よりもノ ルマがきつく,またノルマ達成に対するインセンティブが高いのが通例です。どうしても,売りたくなります。一方,新しい商品なので,銀行側の知識もまだ 蓄積されていません。
その両者があいまって,トラブルが起きるような取引をしがちなのです。変額保険しかり,投資信託しかり,デリバティブしかり,です。
新聞の記事を読んだだけなので詳細はわかりませんが,トラブルが生じている事業者が,本当にデリバティブ商品が必要だったのか,またその商品が適切だったのか,気になります。
銀行は,もちろん堅い商売をするため,通常は安心して取引できる相手です
ただ,盲信はいけません。トラブルが生じているのも現実です(ご相談もお受け致します)。
金融取引をするときは,失敗しても誰も責任を取ってくれないという意識で,慎重に取引してください。
それでは,失礼します。
(なかた法律事務所)
2010年12月30日 00:19
「成年後見ってなぜ必要?」 2 【相続問題】

また,不景気が続いているからでしょうか,親のお金を当てにした人が起こす犯罪やトラブルも増えているような気がします。
公的年金も期待できませんし,これからの時代は老後について自己防衛をしていかないといけませんね。
さて,前回は成年後見の必要性について途中までお話いたしました,今回はその続きです。
◆ 将来の相続財産争いを防ぐ
将来の相続財産争いを防ぐために成年後見制度を利用するケースも多いでしょう。
相続争いの中でよく問題になるものとして,本人の判断能力に疑いがある時期の預金の引き出しや遺言の作成があります。
近い親族が,よくわかっていない本人を囲い込んで,自分に有利な遺言を書かせたり,預金の管理の名目で勝手に預金を引き出す例が,本当によくあります。
いざ,相続が発生すると,他の相続人は納得いきません,親族間の財産争いになります。
この点,成年後見制度を利用すると,裁判所の監督の下で,財産管理がされます。本人の判断能力がないなと感じたら,早めに成年後見制度を利用すると,一部の親族によるそれらの勝手な行為を防ぐことができます。結局,相続争いを防ぐことになるのです。
◆ 悪徳業者への対抗として
判断能力のない,あるいは乏しい高齢者を狙って,高価なものを次々と買わせたり(次々販売),だましてお金を取ろうとする詐欺行為が後を絶ちません。
そのような場合,成年後見制度(あるいはそれよりも程度の軽い保佐制度)を利用していたら,簡単に効力を否定することができます。
もちろん,それらの制度を使わなくても対処する方法はあるのですが,利用していた方が安心でしょう。
◆ 借金が見つかった!
認知症になった父に多額の借金があるのがわかったから自己破産などの債務整理をしたい,と言っても,本人に判断能力がなければどうしようもありません。
その場合には,成年後見人を選任してもらって,自己破産など債務整理をすることを考えます。
◆ 後見人は誰がなればいいの?
多くの場合は,親族や弁護士などを後見人候補者として予め決めてから,家庭裁判所に後見人選任を申し立てます。
候補者は親族でも,弁護士などの専門家でも結構です。
ただし,最終的には裁判所が後見人を選任することになります。推定相続人間で争いがある場合は,候補者を親族と予め決めておいても,第三者的な弁護士が選任されるケースが多いでしょう。
◆ 後見人になると大変ですか?
後見人は裁判所の監督に服します。だからこそ,本人の財産が適切に保全されるのです。
そのため,後見人は裁判所に対して各種報告書を提出する必要があり,その事務負担は軽いとは言えません。
なお,最近,本人の親族である成年後見人が,本人の財産を私消したため,業務上横領罪により逮捕されたという報道もありました。後見人は本人の財産を適切に管理する義務があり,自分のために勝手に使ってしまうと,業務上横領罪が成立し得るのです。
◆最後に
今回は制度の詳細までは説明できませんでした。細かい話は機会を見てお話します。
ご家族の現在あるいは将来のご本人の生活がご心配な方は,早めに弁護士などの専門家に相談されることをお勧めします。


(なかた法律事務所)
2010年12月30日 00:18
「成年後見制度ってなぜ必要?」 1 【相続問題】

おせち料理も,いつからか食べなくなってしまいました。
県外出身の方はみなさん田舎へ帰ったりするのでしょうか。

残念ながら,私は実家が広島なので,里帰り気分も味わえません。
もっとも,親が近くにいる分,安心できる面もあります。
やはり故郷に高齢のご親族を残されている方はご心配でしょう。
ということで,今回は,高齢者に深く関係する成年後見制度について簡単にお話しようと思います。
◆ 成年後見制度とは?
成年後見制度とは,日常生活を営むにおいて判断能力が乏しく助けが必要な方のために,裁判所が後見人を選任し,その後見人が,本人に代わって財産管理を行い,また身上監護事務(施設契約など)を行う制度です。
成年後見制度には,法定後見制度と任意後見制度があります。
法定後見制度は,認知症患者であるなどの理由で,本人が常に判断能力がない状態にある場合に利用します。
任意後見制度は,現在は判断能力がある本人が,将来,自分がそれを失った時に後見人を選任してもらうよう,予め手当てをするために利用します。
◆ なぜ成年後見が必要なのですか?
そもそも何のために成年後見制度が必要なのか?がわかれば,成年後見制度がわかりやすいと思います。
簡単に言えば,成年後見制度があるのは,判断能力がない方には助けが必要だからです。
それでは,助けてくれる家族がいれば必要ないのではと思われるかもしれませんが,そうでもありません。
法律上,判断能力(意思能力)のない方はご自分では有効に契約などの法律行為ができません。
理屈は次のとおりです。
本人がする契約などの法律行為に本人が拘束されるのは,その契約などが自らの意思に基づくからです。
しかし,そもそも自分の行為が理解できない方が契約などの法律行為をしても,それは自らの意思に基づくとはいえませんね。
意思に基づかない以上,本人を縛ることはできない。
だから,その契約などの法律行為が無効になるのです。
ただ,そうなると,認知症などにより日常の判断能力がない方は,財産管理や施設との契約締結などを法的に有効にすることができません。
たちまち困ってしまいますね。
確かに,それらの行為を家族が本人に代わって行うケースも多いです。問題が起きなければそれでいいでしょう。
しかし,家族が本人に代わって行うそれらの行為は法的には問題があります。
判断の能力がない本人から頼まれたといっても,「頼む」(「代理権を与える」)ためにも本人の判断能力が必要です。
したがって,判断能力のない本人の家族が本人の「代理」で行った行為は基本的には有効にはなりません。
いざ相続が発生した際,「あなたが勝手にやったことだから無効だ!」と異を唱える相続人が出てきて,トラブルになるケースは決して少なくありません。
また,家族がいつまでも本人の面倒を見続けられるわけでもありません。その場合には,代わって面倒を見てもらう人が必要です。
さらに,判断能力がなくなると,不必要な高価な品をたくさん買ってしまい,財産を無駄に散逸させてしまいかねません。
そこで,財産管理や身上監護事務(施設の契約など)を,本人に代わり,ちゃんと(有効に)行う人物が必要になるのです。
◆ 最後に
成年後見制度の必要性は今回お話したことに尽きるものではありません。
将来の相続財産争いを防ぐために利用されるケースも多いですし,判断能力の乏しい高齢者を狙った悪質な次々販売などへの対処にもつながります。
次回は,そこら辺りのお話と成年後見人は誰がなればいいのかというお話しをさせていただきます。

(なかた法律事務所)
2010年12月29日 00:16
「ペットとマンション」 【消費者問題】
弁護士の仲田誠一です。
今日はクリスマスですね。昨晩はよいクリスマスイブを過ごされましたでしょうか。私は,家族とトマト鍋を食べただけです。
前回,クリスマスイブとは関係のない熱帯魚飼育の話をさせていただきましたね。
そういえば,以前に,よくあるマンショントラブルとして管理費問題をお話させていただきました。覚えていますか?滞納者が自己破産しても新しい所有者から回収できるなどお話しました。
今回は,熱帯魚の話をさせていただいたついでに,よくあるマンショントラブルの続きとして,「ペットとマンション」の問題をお話させていただこうと思います。
◆ ペット飼育禁止の規約は守らないといけない?
ペットブームといわれて久しいですね。
ペット飼育OKの分譲マンションも増えてきたように思います。
ただ,まだまだ,ペット飼育禁止の規約があるケースが多いでしょう。たとえば,小鳥・魚類以外の動物の飼育の禁止や,他の居住者に迷惑・被害を及ぼす恐れのある動物の飼育禁止が,管理規約などで定められているのではないかと思います。
そのようなペット禁止規約は守らないといけないのでしょうか?
「自分のマンションだからいいじゃないか」と思いたくなりますよね。
実際に争われた事件もあります。
裁判所は,その中で,そのようなペット禁止規約の有効性を認めています。ペット禁止規約は,マンションでの平穏な生活の維持などのために合理的理由があるという理屈です。
したがって,ペット禁止規約は,守らなければなりません。
◆ ペット禁止規約に違反する住人に対して何が請求できる?
まずは,話し合うことになるでしょう。直接迷惑がかかっている居住者からは言いにくいので,管理組合として注意するのがいいでしょう。
おそらく,違反している居住者は,ペット禁止規約を知りつつ飼っている確信犯です。また,ペットを捨てろ,ペットを殺せというのか,とペットの命をかたに反論し,話し合いで解決しないかもしれません。
かといって,例外を認めてしまうと,規約がなし崩しになってしまい,ほかにも問題が生じるかもしれません。
では法的には何が請求できるのでしょう?
裁判所は,ペット禁止規約違反に対しては,厳しい態度をとっているようです。
違反行為に対して,禁止命令や損害賠償請求を認めたケースがあります。
そこで,あくまでも程度問題ですが,話し合いで解決できない住民に対しては,飼育禁止命令や損害賠償を請求することができることになります。
また,鳴き声,糞尿,悪臭などの程度が著しいケースでは,「共同の利益に反する行為」として,専有部分(つまり居室)の使用禁止なども請求できます。この点は,ペット飼育が認められているマンションも同様です。
◆ 「共同の利益に反する行為」とは?
先ほど触れた「共同の利益に反する行為」は,マンショントラブルの説明には欠かせない言葉ですので,ここで簡単に説明しておきます。
所有権者はその物を自由に使用・収益・処分できるのが原則です。この所有権の概念は,封建制度を否定した(何重もの土地支配を否定したなど)という歴史的意義があります。
でも,みんなが所有権の自由を主張すると,社会に混乱が生じて(たとえば隣地所有者の争いが多発します),社会生活が成り立たないのも現実です。そ こで,所有権自由の原則は,あくまでも原則であり,社会生活を維持するために一定の制限が加えられることは当然だと考えられています。
その所有権の制限が,分譲マンションにおいて顕在化しているのが,区分所有法6条1項であり,そこで,「区分所有者は,」「区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。」と定められています。
そして,区分所有法は,「共同の利益に反する行為」を行った区分所有者に対しては,差止請求,使用禁止請求および競売請求の3つの裁判上の請求ができるとも定めています。
なお,区分所有法上,「共同の利益に反する行為」をしない義務は,区分所有権者以外の専有部分の占有者(賃借人など)にも課されています。賃借人が義務に違反する場合にも同様な請求ができることになります。
◆ 最後に
次回には,マンションに関するトラブルでまだお話していないものを,ご紹介させていただこうと思います。
PS.先日,中学1年生の甥っ子が私のコラム,ブログを読んでくれていると聞きました。励みになりますね。
(なかた法律事務所)
2010年12月29日 00:08
「コリドラスの赤ちゃん」 【閑話休題】
弁護士の仲田誠一です。
私は趣味で熱帯魚を飼っているのですが、ついに産まれました
白コリドラスの赤ちゃん
コリドラスとはナマズの仲間で、水槽の底砂をいつもつついている水槽の掃除屋です。
先日来、何度か卵が産まれていたところでしたが、すぐに水槽内のヌマエビなどに食べられていました。
「やっぱり繁殖はだめだな」って思っていたら、今日、見つけました
5ミリぐらいの白コリドラスの子供を2匹
小さいのに大人の形そのままで、大人と同じように、もう砂をつついていました。かわいいです。
コリドラスは、多産なのでしょうか、環境が合っているのか最近は毎週のように卵を産んでいます。
うちで繁殖した他の熱帯魚は、オトシンクルスネグロしかいません。やっと2例目です。
熱帯魚飼育は、ほんとうに手間がかかる趣味ですね。
しかも、お魚やエビなどの命がかかっていることなので、疲れたからといってサボれないものです。
でも、やっぱりかわいいし、眺めると癒されます。
実は、正直世話がしんどいので、熱帯魚を飼うのを止めてもいいとは考えてはいるんです。
でも、止めるのは最後の一尾が亡くなった時ですよね。
川などに熱帯魚を捨てる人が後を絶たないようですが、殺すようなもので許せません、「興味本位で動物を飼うな」と言いたいです。
魚の数が少なくなるとどうしても補充してあげたくなるし、子供も生まれたりもするし、結局、私の水槽では、最後の1尾が亡くなることはなさそうです。
これからも延々と熱帯魚と付き合って行きそうです。
(なかた法律事務所)
2010年12月28日 14:18
従業員は転勤を拒めない? 【企業法務】

みなさんの会社では,転勤の内示を受けるのはどれぐらい前でしょう?
今 は知りませんが,私が勤めていた頃の銀行は,転勤の直前に突然に転勤を知らされていました。もともと銀行は,癒着や不正を防ぐために定期的に転勤があるも のなのですが,直前に知らせることで不祥事を隠せないようにする配慮もあったようです。もちろん,家族持ちにはもう少し早く話が来ていたようですが。
さて,企業は自由に転勤を命じることができるのでしょうか?逆に言うと,従業員は転勤命令には絶対に従わないといけないのでしょうか?
転勤は,ケースによっては,企業側の業務上の必要性が,従業員の家族生活やキャリア形成の利益と衝突してしまう場面です。
最近読んだ法律雑誌に面白い記事が載っていたため,今回は,転勤命令のテーマをお話します。
◆ 企業に転勤命令権はある?
従業員に対する転勤命令権(法律的には「配転命令権」ということが多いです。)が企業にあるのでしょうか?
もちろん,勤務地・職種の限定がある労働契約を結んでいる場合には,従業員の合意がない限り配転はできません。一般的な契約の場合の話です。
少なくとも,就業規則上に転勤命令条項(転勤に関する条項)があり,勤務地限定の合意がない限りでは,企業側に転勤命令権が認められています。
就業規則の定めを確認しておいてくださいね。
◆ 企業は自由に転勤を命令できる?
結論を先に言うと,企業側に広い裁量が認められますが,完全に自由ではありません。
判例では,
① 企業側は業務上の必要に応じて,その裁量により広く転勤を命令できる,
② しかしそれは無制約ではなく,不当な動機・目的がある場合や従業員に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を追わせる場合など,特段の事情がある場合には,企業の配転命令権が権利の濫用として許されない。
としています(表現は噛み砕いています)。
つまり,企業に業務上の必要性がある限りで,「原則」的に従業員に転勤を命令できるが,従業員にあまりにも不利益を与えてしまうようなひどい場合には,「例外」的にそれは許されないということです。
上に要約したのは,昭和61年の最高裁判決です。事例は,母の扶養や妻の仕事の都合から従業員が単身赴任を強いられるケースでした。
裁判所は,業務上の必要性を幅広く認めた上で,単身赴任を強いられるような不利益は従業員が普通に我慢すべきだから企業側の配転命令拒否を理由とする懲戒処分は有効だと判断しました。
◆ 最近の裁判所の判断の傾向は?
最近読んだ法律雑誌で次のような記事を読みました。
大企業では転勤命令に際して従業員の意向を確認する例が増えてきた。
また,最近の裁判例で,転勤に伴う従業員の新幹線通勤や単身赴任の不利益などを認め,企業側が敗訴する例が増えてきた,という趣旨の記事です。
時代は変わりつつあるようです。
従業員の健康,育児・介護を重視する法律ができ,家庭生活を重視する風潮も定着しましたね。
裁判所もそれを構成する裁判官は世代が交代していくわけです。それに伴い,時代にあった判断がされるようになるのです(かなりのタイムラグがあるのが通常ですが・・・)。
◆ 最後に
その当否は別として,会社に滅私奉公するという時代は既に過去のものとなっているようです。
企業の転勤命令も慎重に行使しないといけなくなったわけでして,それに限らず,企業のコンプライアンスも,その時代に合わせた対応をすることが必要なようです。
(なかた法律事務所)
2010年12月28日 00:30
「車は走る凶器?」 【身近な法律知識】
弁護士の仲田誠一です。
年末もいよいよ押し迫ってきましたね。
例年,年末にかけて交通事故が増えるそうですね。日没が早くなったり,お酒を飲む機会が増えるからのようです。
飲酒運転は絶対に止めてください
◆ 車は「走る凶器」
ところで,法曹界では,車は「走る凶器」とよく言われます。
近代法が整備された頃にはまだ馬車の時代でした,車がなければ,悲惨な交通事故も当然ありません。つまり,自動車は人などにぶつかったら凶器になります(実際に自動車を凶器に使った事件もありますね),だから「走る凶器」なのです。
なぜ車が公道を走ることが許されているかというと,それは便利だからです。危険なだけのものであったら,法律で使用を禁止されるところですが,社会的に有用であるため,利用が許されているのです。車がない社会なんて想像できませんからね。
◆ 「危険責任」
危険な物を利用する者は,その利用に伴って生じた損害の責任を負うべきだ!という考えを「危険責任」論と言います。社会的に有用(必要)だから使ってもいいが,人に迷惑をかけたら危ないものを使っていたあなたが悪いから責任も取ってね,ということです。
危険責任の考えが背景にもあって,「車」対「人や自転車など」の事故については,そもそも車の責任の方が大きいと見られてしまいます。
具体的には,「過失割合」の話になります。事故の形態によって,ある程度の「過失割合」が決まっていますが,車側が高い設定になっています。
◆ 自賠責保険の存在意義
「自動車による交通事故の責任は,危険な物を利用している車の運転手側に多く負わせるべきだ」,といっても,運転手にお金がないと被害回復は結局実現しません。
そのためにあるのが,強制加入の自賠責保険制度です。
つまり,被害者に最低限の被害回復をする用意(それが自賠責保険)ができていなければ,自動車を運転させないということです。
◆ 任意保険にも入ってください!
それでは,自賠責保険に入っていれば安心なのでしょうか?
先ほど,自賠責保険は「最低限」の被害回復を保障するものであるということを書きましたが,「最低限」では足りません。
自賠責ではそもそもカバーできない被害弁償もあります。また,大きな事故だと金額も十分ではありません。
お金を惜しんで任意保険に入らなかったばっかりに,交通事故を起こして大変な目に遭う方も少なからずいらっしゃいます。
また,それではそもそも被害者に対して申し訳が立ちません。
さらに,事故についての刑事事件でも,被害弁償をできたかどうかは重要な意味を持ちます。任意保険に入っていない場合には,大きな被害弁償をすることができないのが普通であり,そのため刑は重くなる傾向があります。
任意保険,しかも全損害をカバーする保険に入っておかないと,あなたの人生が台無しになるだけでなく,被害者や遺族にも二重の苦しみを与えてしまうことになります。
私は,保険会社の代理人でも,親族に保険屋さんがいるわけでもないのですが,任意保険加入は,「走る凶器」を利用するドライバーの最低限のマナーだと思っています。
相談者の中に任意保険に入っていない方が少なからずいらっしゃるのに驚いているところです。
◆ 破産をすれば損害賠償義務は免れる?
任意保険に入っていなかった,損害賠償請求をされたけど,そんなに大きな金額を払えるわけがない,となった場合,自己破産で逃げられるでしょうか?
そう簡単ではありません。
破産には,「免責不許可事由」というものがあり,それに該当すると破産をしても債務から逃れることはできません。
人身事故による損害賠償債務は,その「免責不許可事由」に該当するおそれがあります。
また,その調査のため「破産管財人」(弁護士から裁判所が選任します)が選任される可能性が高く,その際には裁判所に納める多額の「予納金」が必要となります。
◆ 最後に
皆が自動車は危険なものであるという認識を共有できれば,と願って止みません。
最近は,自転車の事故も問題視されて来ており,多額の損害賠償義務を負うケースもあるようです。自転車も,もちろん,人にとっては「走る凶器」と言えるでしょう。自転車の保険が整備されていない現状はもどかしく思います。
(なかた法律事務所)
2010年12月28日 00:20
「リフォームには集会決議が必要?」 【消費者問題】
弁護士の仲田誠一です。
みなさん仕事納めはいつでしょうか?
私は,前職が銀行員であったので,仕事納めは12月30日,仕事始めが1月4日,というのが当たり前だと思ってしまっています。裁判の予定が12月 30日や1月4日に入ることはなく,物理的にはもっと休めるのですが,やはり銀行や役所が休みではない以上,仕事をしないと気持ちが悪いのです。
そのような私の気持ちは事務員さんや他の弁護士にとっては理解し難いらしいです。
結局,年末年始は他のみんなは多く休みを取り、私だけが長く働くはめになっています。
今回は,前回のペット問題以外のマンショントラブルについて,少し紹介させていただこうと思います。
◆ 専有部分と共有部分
マンションには,専有部分と共有部分があるのはご存知ですね。
でも,その区別については,実はなかなかややこしい問題もあるのです。
専有部分とは,区分所有権の対象となる建物部分です。居室部分ですね。
共有部分とは,専有部分以外の建物部分,その付属物,および規約で共用部分とした部分です。
廊下,階段,建物玄関,エレベーター,電気配線,ガス・上下水配管,消防設備,貯水槽,浄化槽などです。ベランダも一般的には共用部分と考えられています。
専有部分か共用部分か争われるものがいくつかあるのですが,それはまたの機会にお話します。
◆ 隔壁は共用部分ですか?
例えば,隔壁(専有部分相互間の境界部分を構成する壁)は共用部分でしょうか?
この点は,境界部分の骨格をなす中央の部分は共用部分であり,上塗り部分だけが専有部分であるとされています。隔壁は,建物を支える面もあり,建物の維持管理上,共用として管理されるべきだからです。
◆ リフォームには集会決議が必要ですか?
基本的には,管理規約の定めによることになります。
法律上の話をすると,区分所有法は,共用部分の変更に集会の決議を要求しています(17条,18条)。
したがって,勝手にした隔壁の撤去やベランダの改造などのリフォームは,集会決議を経ない共用部分の変更として,法律違反行為になるので気をつけて下さい。
この点については,バルコニーに勝手に温室を作った区分所有者に対し,管理組合がその撤去を求めて認められた例があります。
◆ 専有部分ならどう使ってもいい?
そんなことはありません。前回,「共同の利益に反する行為」を説明させていただきました。
専有部分の利用に関するトラブルとしては,前回のペット問題のほか,建物の基本構造に大きな影響を及ぼすような増改築,住居専用と定めた規約に違反してなされた事務所・営業所使用などがあるでしょう。
それらは,具体的な事情によって,「共同の利益に反する行為」と判断されるならば,法律上,差し止めや使用禁止,競売の請求の対象となります。
◆ 最後に
マンションでのトラブルの防止や早期解決には,日ごろの住民間のコミュニケーションが大事です。いうまでもありませんね。
また,ひとたび居住者による問題行動を発見したら,それが既成事実化してしまう前に,即座に対処してください。それが円満な解決の秘訣だと言えます。
さらに,管理組合の日ごろの活動に,無関心ではいけません。他の住民が無関心であることをいいことに,理事長が勝手なことをしてしまうのは珍しいことではありません。
管理組合の活性化やトラブルへの早期対処のためには,熱心で世話好きな方が1人でもいてくれれば非常に助かりますね。
もしそういう方がいらっしゃったら,うるさがらずに協力し,大事にしてあげましょう。
(なかた法律事務所)
2010年12月28日 00:12
裁判離婚の話 3 【離婚問題】
弁護士の仲田誠一です。
離婚をするかどうかまだ悩まれている方の法律相談を受けることもよくあります。
その場合,離婚を決意された場合の法的な説明はもちろんするのですが,どうしても人生相談の様相を呈することになります。
特にお子さんが小さい場合には悩みますね。
相談者と一緒に,
「離婚後の生活はどうするのか?」
「苦しい生活を我慢して続けることがお子さんの幸せに繋がるのか?」
「やはりお子さんにとっては両親が揃っていた方が幸せなのか?」
「あなたにとって一度しかない人生を我慢して費やしていいのか?」
「我慢し続けてあなたの心が耐えられるのか?」
などと悩むことになります。
考えは人それぞれです。そのため,自分の考えを押し付けないよう気をつけています。
ただ,私は,「あなたが幸せになることが,周りの幸せに繋がるはずだ。」と必ず伝えるようにしています。
私に相談に来られるのも縁です,どういう形であれ幸せになって欲しいと願うのみです。
と言っておいてなんですが,今回も離婚の話をさせていただきます。
前々回が協議離婚の話,前回が調停離婚の話でしたので,今回は裁判離婚の話を簡単にさせていただきます。
◆ 裁判離婚とは?
離婚について同意が成立しない以上,いよいよ裁判で離婚を求めるしかなくなります。
裁判離婚とは,離婚請求を認容する判決によってする離婚です(もちろん裁判の中で,和解・認諾がされると判決によらずに離婚することができます)。
日本の法制度上,裁判離婚は,法定の「離婚原因」がないと認められません。
裁判所によって相手方の婚姻継続の意思を否定して強制的に離婚を成立させるわけですから,この場合なら強制的に離婚させてやろうという「離婚原因」が法律で決まっているのです。
◆ 法定の「離婚原因」って何?
民法770条1項に次の5つが定められています。
① 配偶者の不貞行為
② 悪意の遺棄
③ 3年以上の生死不明
④ 回復の見込みがない強度の精神病
⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由
◆ 「配偶者の不貞行為」とは?
自由な意思で行った配偶者以外の者との性的交渉です。
一般的には浮気のことですが,ずいぶん前の判例で,夫から生活費をもらえない妻が生活のために行った売春行為を不貞行為であるとした例があります。
結婚すると,貞操義務が発生します。その貞操義務に違反すると,離婚原因になるだけでなく,慰謝料の支払い義務も負います。
「どこまでが貞操義務に反する行為なのか?」はまた面白い問題なのですが,機会があればご紹介します。
◆ 悪意の遺棄とは?
夫婦は,お互いに同居・協力・扶助義務を負います。正当な理由もないのに,夫婦のそれらの義務を果たさないことが「悪意の遺棄」です。
多い例が,相手を捨てて家出することでしょう。単に別居しただけでは当たりません。
◆ 3年以上の生死不明とは?
生存を示す最後の事実があった時点から3年間,生きているか死んでいるかもわからない状態が続いたことです。
生死不明の原因や責任は問われません。
失踪宣告でも婚姻関係を解消できますが,7年かかりますので,早く婚姻関係を解消したいときは,この離婚原因が意味を持ちます。
◆ 回復の見込みがない強度の精神病とは?
これは一見するとひどい法律だと感じられるかもしれません。
そもそも夫婦には,協力・扶助義務があるはずです。「配偶者が強度の精神病にかかって回復しないなら捨てていいのか?」と思われますよね。
ただ,一方で,相手と精神的な交流が全くできない中で,婚姻生活を続けることを強制するのも酷だとも言えます。法律はこの点を重視したものです。
この点,判例では,さすがに配偶者が強度な精神病であることだけでは離婚を認めていません。
病気の配偶者の今後の療養や生活について具体的な方途を講じ,ある程度前途に見通しがついた上でないと,離婚は認めない(後で触れる裁量棄却をする)としています。「具体的方途論」と呼ばれるこの考え方には,賛否両論あるでしょう。
◆ その他婚姻を継続し難い重大な事由とは
こ れまで書いた4つの離婚原因を具体的離婚原因と言いますが,最後の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」は,抽象的離婚原因と呼ばれます。先の4つの離婚 原因がなくても,婚姻が破綻して回復の見込みがない場合には離婚を認める,それは具体的なケースにより総合的に判断する,という意味の定めだからです。
離婚請求訴訟をする場合には,通常,4つの具体的離婚原因の主張と併せて,この抽象的離婚原因を主張して争うことになります(具体的離婚原因の立証に失敗しても,抽象的離婚原因の立証が認められれば訴訟に勝てるからです)。
どのような場合にそうと認められるかを説明するのは難しいです。度重なる犯罪行為による服役や,性的異常・性的不能,DV,著しい浪費癖,過度の宗教活動等のケースがあるようですが,あくまでも具体的な事情によって判断されます。
も ちろん,自分が不貞行為をしておいて,「婚姻関係が破綻したから別れたい」,と言っても,簡単に認められるわけではありません。そのような婚姻関係破綻に 責任ある配偶者からの離婚請求を,「有責配偶者の離婚請求」と呼びます。これを説明すると長くなるので,別の機会にお話します。
◆ 法定の具体的離婚原因があると認められれば必ず離婚できるのか?
そうではありません。
法律では,裁判所は,具体的離婚原因となる事実があったとしても,一切の事情を考慮して離婚を認めないことができるとされています。
「裁量棄却」と呼ばれるものです。先ほどの強度の精神病の所で挙げた例がこれです。
◆ 裁判離婚の場合,養育費や親権者はどうなるの?
離婚と一緒に裁判所に請求すれば,裁判所が決めてくれます。別途,調停・審判を経る必要はありません。
◆ 最後に
離婚のご相談は,簡単なようで難しいです。
感情の問題がおおきい点はもちろんですし,今後の長期間にわたる生活にも関わってくる問題だからです。
離婚問題は,弁護士にとって,デリケートに扱わないといけない事件の1つであることは確かです。
3回にわたって,離婚についてざっとお話しました。
離婚にまつわる細かい話は,機会を見つけてまたお話したいと思います。
(なかた法律事務所)
2010年12月27日 14:17