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コラム 仲田 誠一

競業があったときの競業避止義務、秘密保持義務、不正競争防止法の徹底解説【企業法務】

広島県広島市の弁護士による企業法務コラムです。
今回は、競業避止義務、秘密保持義務・不正競争のお話です。

退職した従業員や退任した役員が競業行為をしている、会社の技術ノウハウを盗まれた、他の従業員が引き抜かれたなどの相談は珍しくありません。同業者間での転職や、同業者による引き抜きは効率的なために必然的に多くなります。独立する際も培ってきた知識・ノウハウ・人脈を利用するのが当然でしょう。一方、企業にとって、技術・ノウハウ・顧客情報・人材の流出は死活問題です。納得できませんね。こうした理由で、競業避止義務、秘密保持義得・不正競争が絡む紛争は多々発生しています。

これまで、一般的な企業では、就業規則において副業禁止規定が設け、従業員の副業を禁止していました。
ところが、最近は、副業を認める企業が増えてきており、国をそれを後押ししています。
副業が増えれば、在職中の競業行為の可能性も増えますね。今後、競業避止義務違反・秘密保持義務違反、不正競争防止法違反の紛争が増加していくかもしれません。

目次

競業避止義務とは
従業員の競業避止義務
競業避止義務違反の判断
取締役の競業避止義務
競業行為に対する措置
従業員の引き抜き行為
秘密保持義務
不正競争防止法
まとめ

Ⅰ競業避止義務とは

1.競合避止義務とは

競業避止義務は競業行為を避止する義務です。競業行為とは、取締役に関する会社法の定めでは、自己または第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をすることを意味します。ただし、実際に就業規則や合意などで定められている競業行為はそれよりも広い意味です。競業会社への就職も含まれたりします。
従業員の競業避止義務と、取締役等役員の競業避止義務とは、その根拠を異にするため、分けて考えなければいけません(考え方は重なりますが)。

競業避止義務というと、ほかに営業譲渡人の競業の禁止(商法16)が思い浮かぶでしょうか。営業譲渡をした譲渡人は、同一の市町村で同一の営業を20年間行ってはいけないとう法定の義務です。事業譲渡株式譲渡などM&Aの契約書では、ほぼ例外なしに、競業避止義務条項が設けられています。

一定の従業員や役員は企業独自のノウハウ、秘密の技術、集約された顧客情報など企業の様々な無形の資産に接することができます。一人前の仕事をしてもらうにはそれらを積極的に教えなければいけません。従業員や役員が、ライバル企業に転職したり、事業を立ち上げて競争相手になるのは、企業からしたらフェアな行為だと思えません。私も経営者ですから、そのような心理は理解できます。競業避止義務は、企業として当然の要請といっていいでしょう。


一方で、転職の自由、営業の自由は憲法上保障される価値です。それらを制限する面がある競業避止義務には制約が存在します。
 

2.憲法との関係

憲法は、職業選択の自由(憲法22Ⅰ)を明文で定めます。身分な性別によって職業が固定されていた歴史を踏まえた規定です。また、同条、および財産権を保障する憲法29条は、営業の自由を保障すると解釈されています。憲法上、職業を選択するのも、事業を始めて営業するのも、本来自由です。競業行為を禁止する競業避止義務は、個人の職業選択の自由あるいは営業の自由という憲法上の権利を制限する面があることになります。

憲法は私人間の法律関係に直接適用されるわけではありません。近代憲法は、国家に対して個人の自由を保障することを本来の役割とします。しかし、競業避止義務の有効性や具体的行為が同義務に違反するかどうかの判断においては、憲法上の人権保障の趣旨が及ばされます。会社の利益、従業員・取締役の不利益および社会的利害に立って、制限期間、場所的職種的範囲、代償の有無を検討し、合理的範囲かどうかが判断され、職業選択の自由等を過度に制限し合理性がない競業避止義務の定めや合意は、公序良俗(民法90)に反して無効となります。


Ⅱ 従業員の競業避止義務

1.在職中の競業避止義務

従業員の在職中の競業避止義務は、取締役等役員のそれと違い、法律の明文で定められてはいません。しかし、在職中の従業員は、労働契約に付随する義務として、当然に、競業避止義務を負います。

労働契約はその人的・継続的な性格から当事者間の信頼関係が要請されます。労働契約法でも信義誠実の原則が特に規定されている所以です(労働契約法3Ⅳ)。労働契約の当事者双方は、信義誠実の要請に基づいて、各種付随的義務を負います。使用者の付随義務としては、安全配慮義務が代表的ですね。一方、労働者の付随義務としては、営業秘密保持義務、競業避止義務、使用者の名誉・信用を毀損しない義務などが挙げられています。

当然認められる義務ですが、就業規則や誓約書等の合意によって競合避止条項が定められいることが多いと思います。法律上当然に認められる義務であっても、その内容を具体的・詳細に定めていくことはいいことです。

なお、就業規則に競業避止義務条項を設け、さらに誓約書等の個別合意にて競業避止義務特約を締結するケースでは、両者の内容が抵触しないように注意します。特約の内容が就業規則の基準に達しない条件として無効になりかねません(労働契約法12)。就業規則の競業避止義務条項において、個別の特約を許容する旨を記載すべきと言われています。
 

2.退職後の競業避止義務

競業避止義務違反が問われるトラブルのうちの多くは、退職後に競業行為がなされたケースです。

職業選択の自由あるいは営業の自由の観点から、従業員が退職後に競業行為をすることは原則自由です。
退職前の競業避止義務とは異なり、退職後の競業避止義務は原則として存在しません。
退職後の競業避止義務を課すためには、
① 就業規則の規定で定めておく
あるいは
② 従業員との間で個別の合意(雇用契約、誓約書等)をしておく
の方法をとっておかなければなりません。

就業規則の定め、あるいは競業避止義務の特約が存在するだけではいけません。
競業避止義務は、職業選択の自由、営業の自由という憲法上の価値との関係で、合理的な制限でなければ許容されず、無効となります。就業規則あるいは誓約書等の合意文書は、後に有効性が否定されない形で作成しなければいけません。

なお、前述のとおり、就業規則の定めと個別の合意の双方を用意する場合には、双方の内容が抵触しないよう注意してください。

Ⅲ 競業避止義務違反の判断

1.在職中の競業行為

在職中は、定めや合意のあるなしにかかわらず、競業避止義務が認められました。
競業避止義務違反かどうかの判断においては、従業員の引き抜き、顧客奪取、企業秘密の漏洩等、使用者の事業活動に影響を及ぼす行為が行われているかが重視されていると言われています。企業側を保護する要請が高いため、高い役職の従業員や機密情報に密に接していた従業員の行為は競業避止義務違反と認められやすい傾向にあります。

2.退職後の競業避止義務の定め・合意の有効性

従業員が退職後に競業行為をすることは原則として自由であり、退職後の競業避止義務はそれを定める就業規則の定めや個別の合意が要求され、その内容も合理性を欠くと無効となりました。

退職後の競業避止義務の定めの有効性は、次の①~⑥の要素を総合考慮して、企業の利益と従業員の職業選択の自由の調整を図るものとしてが適切かどうかの観点から判断される傾向にあります。

①守るべき企業の利益(競業避止の必要性)
技術情報、顧客情報、ノウハウ等守るべき企業の利益が、職業選択の自由を制限するに値するものであるかです。不正競争防止法の「営業秘密」(同法2Ⅵ)と同じように、秘密管理性、有用性、非公知性などが総合考慮されて判断されます。
もちろん、守るべき利益は、不正競争防止法上の「営業秘密」に限定されません。「営業秘密」として保護するのが難しい、独自のノウハウや技術的な秘密も、企業側の利益なり得ます。特約の中で保護すべき対象をできるだけ明確にしておきましょう。

②対象従業員等の地位
従業員全員を一律に対象とする規定や一定の役職以上を一律に対象する規定は、対象従業員の限定が不十分として無効となりかねません。あくまでも企業に営業秘密などを守る必要がなければいけませんから、対象の従業員は、機密性の高い情報に接する従業員に限定される傾向にあります(形式的な地位は問いません)。
なお、一般的な業務に関する知識・経験・技能を用いることにより実施される業務は競業避止義務違反の対象とならないとした裁判例もあります。また、対象の限定が不十分な就業規則の文言を合理的な内容に限定解釈して、その限りで有効性を認める裁判例もあります。

③地域的な限定
地域的な限定がないケースは否定的な報告に評価されます。他の要素との相関で判断されますので、会社が全国チェーンであるケースでは地域的限定なしに有効性が認められた例もあります。
いずれにせよ、無効となるリスクを低減するためには、従業員の不利益を考慮し、できるだけ地域を限定することになります。

④存続期間
1年ないし2年とする例が多いといわれています。
1年以内の存続期間は有効とされる傾向にありますが、2年の存続期間は否定的に評価する裁判例もあります。2年ぐらいからはリスクがあると考えた方がいいでしょう。2年を超える存続期間は、特に競業を禁止する必要があり十分な代償措置がある等の特別な事情がない限り、有効性を認めてもらうのは困難です。

⑤禁止される行為の範囲
競合他社への転職を全面的・抽象的に禁止する規定は、職業選択の自由を一般的に制限するものとして、無効と評価されかねません。他方、業務内容、職種、地域等を特定し、禁止する行為の範囲を限定すれば、肯定的な評価になります。例えば、対象行為を競業や在職中に担当した顧客との取引を禁じるに留めるケースでは有効と評価されやすいでしょう。

⑥代償措置
代償措置の有無については企業側の認識がないかもしれません。本来ある自由を制約するには対価が必要だということでしょうか。相当額の金員が交付されていれば、退職後の競業避止義務を課しても著しく授業員の不利益はないと評価され、有効性が認められやすくなります。退職後の競業避止義務に見合う代償措置がまったくないケースでは、有効性が否定されやすくなります。
退職金の加算、在職中の高額な賃金、特別な奨励金等、金員交付の名目は問われません。労務提供の対価を超える金員が交付されているケースでは、実質的に代償措置が講じられていると認められる可能性があります。

Ⅳ 取締役の競業避止義務

1.在任中の競業避止義務

取締役在任中の競業避止義務は法律で明確に定められています。取締役は会社のノウハウや顧客情報等を奪う形で会社の利益を害する危険が高いためと言われています。

取締役が「自己または第三者のために」「株式会社の事業の部類に属する取引」をしようとするときは、株主総会(取締役会設置会社であれば取締役会)の承認を得なければなりません(会社法356Ⅰ①、365)。

「会社の事業に部類に属する取引」が競業です。会社が実際に行っている取引と目的物ないし事業(商品・役務の提供)および市場(地域・流通段階等)が競合する取引を意味します。定款所定の事業であっても実際に行われていない事業は対象外です。一方、会社が進出を予定しているときには対象となります。取締役が同業他社の業務執行をしない取締役となるだけでは対象となりません。部下や親族を役員に就任させて人的物的に援助を続けるなど事実上の主宰者として競合会社を支配していた場合には、自ら競業を行うのと同一視して競業避止義務違反となります。

なお、行為が「競業」に該当しなくても、営業秘密を利用して競業避止義務規定が守ろうとする法益を害する形で会社に現実に損害を生じさせたといえるケースでは、取締役の忠実義務違反の責任が生じます。取締役は、会社に対し、善管注意義務(民法644)・忠実義務(会社法355)を負います(両者は同じ意味と考えていいです)。競業避止義務は、善管注意義務・忠実義務の一内容となっています。
取締役が会社が関心を持つはずの新規事業機会等を自己の事業にすることも、会社に対する忠実義務違反となることがあります。会社の機会の奪取と呼ばれています。取締役が個人の資格で得た情報等をどこまで会社に提供するべきかは、会社のタイプおよび取締役の社内的立場等により異なり、たとえば、会社が上場会社等公開型のタイプであれば常勤の取締役はその能力すべてを会社に捧げるべき、将来の保障が必ずしもない中小企業の非同族の取締役にはそこまでの忠誠を期待することは無理である、と言われます。

「自己または第三者のために」とは、「自己または第三者の計算において」という意味(利益が誰に帰属するのかに着目)と考えられています。

競業の承認を得ないで取引をしたときは、当該取締役または第三者が得た利益の額を会社に生じた損害額と推定して損害賠償請求ができるという損害の推定規定が用意されています(会社法423ⅠⅡ)。会社の立証負担が軽減されます。

委任契約などにおいて、取締役等に対し、会社法の定める「競業」よりも広い形で競業避止義務を負担させている例も多いでしょう。禁止される事項と違反に対するペナルティを具体的に定めることはいいことです。

なお、退任予定の取締役による従業員の引き抜きもよく見られます。部下に対する退職勧誘が当然に忠実義務違反となるのではありません。職業選択の自由(転職の自由)の観点から、取締役の退任の事情、取締役と部下との従来の関係(自ら教育した部下か否か)、引き抜かれた人数等の会社に与える影響の度合い等の諸般の事情を総合考慮し、不当な態様のものに限って忠実義務違反になります。

2.退任後の競業避止義務

取締役の退任後の競業は、職業選択の自由、営業の自由の観点から、原則として自由です。従業員の場合と同様です。

企業が役員に対して退任後の競業避止義務を負わせたいときには、委任契約や誓約書などで合意しなければいけません。競業避止義務の合意は取締役の職業選択の自由、営業の自由に関わります。そこで、社内での地位、営業秘密・得意先維持等の必要性、地域・期間など制限内容、代償措置等の諸要素を考慮し、必要性、相当性が認められる限りにおいて有効であると考えられています。

なお、競業行為が、在任中の営業秘密を利用した不正競争に当たる場合には、退任後であっても不正競争防止法違反となります。

Ⅴ 競業行為に対する措置

1.企業としての対処

①警告文
競業行為が発覚し次第、当該従業員等に対して警告文を送付することが考えられます。

②懲戒処分
競業行為は就業規則違反(「会社の利益に反する著しく不都合な行為」など)となります。
退職前に競業行為が発覚した場合には、退職の申出を承認(正式受理)をせず、懲戒解雇等を検討することになるでしょう。

③退職金の減額・没収
退職金の減額・没収は、退職金規程等就業規則にその旨の明確な規定が存在することが必要です。
勿論、定めが有効ではなければいけません。規定の合理性と当該ケースへの適用の可否は、退職後の競業制限の必要性や範囲、競業行為の態様等に照らして判断されます。

④監査・調査
競業行為をした従業員が、会社を私物化して不正行為をしていたというケースは多々見ます。調査する必要があります。

⑤被害を抑える努力
早急に被害を食い止めなければなりません。法律的な対処では時間がかかりすぎるのは否めません。
取引先への事情説明を直ちに行い顧客奪取をできるだけ防ぐ、社内に対して会社の毅然とした態度を示し引き抜き行為を防ぐ等、傷口が拡がらないための対処が必要です。

⑥予防が大事
なお、競合行為への対処としてはその予防が一番であることは言うまでもありません。
経験上、日々のガバナンスが競業行為を防ぐと感じています。ガバナンスが効いている企業では競業行為を招く環境がありませんし、競業行為をすることも難しいでしょう。
いくつか考えていることを挙げます。従業員の自由に任せていた場合には、モラルハザードが生じて競業行為を生みがちです。権限分掌を明確にしておくべきです。従業員の士気が高い会社は、従業員の引き抜きができず、競業行為も困難となります。問題社員の放置はモラルハザードの原因です。対処を先送りしないようにしてください。担当者だけがつながっている取引先を作らないでください。経営者も取引先とつながっておけば顧客奪取はされません。

2.法的な対処

① 損害賠償
競業避止義務違反は債務不履行です(不法行為も成立し得ます)から、損害賠償請求ができます(民法415)。
ただし、近時の裁判例では、退職後の競業避止特約に基づく損害賠償について、職業選択の自由に照らして、制限の期間・範囲を最小限にとどめることや一定の代償措置を求めるなど、厳しい態度をとる傾向にあると言われます。

使用者は、競業避止義務違反と相当因果関係のある損害を主張・立証します。相当因果関係ある損害の発生、および損害額の立証はときに困難です。競業行為がなかったら当然に受注していたと立証します。いかなる利益を逸失しているか具体的に金額を算定し、それが難しい場合には合理的な推計計算をします。

逸失利益の計算期間は、競業避止義務違反の影響から回復する(新たな顧客の獲得、人材の補填、営業の回復等)に足りる相当期間ですが、6カ月以内が多いといわれます。
民事訴訟法248条の規定が利用された裁判例もあります。賠償額の立証が極めて困難な場合に裁判所が相当な損害額を認定することができると定める規定です。
不正競争防止法違反のケースでは、同法5条の損害額の推定規定を利用できます。

以上を踏まえると、誓約書等の合意書面では、立証負担の軽減のため損害賠償額の予定(民法420)を盛り込むべきかと考えます。もちろん、有効と認められる定めでなければいけません。

なお、退職後の競業避止義務の存在が認められない場合であっても、職業選択の自由や自由競争の原理を逸脱する違法な態様での競業が行われたときは、使用者に対する不法行為(民法709)が成立しうるとされています(最判H22.3.25、事案では否定)。

② 差止め請求
競業避止義務を定める就業規則や個別の合意に競業の差止め条項が明記されているケースでは、同条項に基づいて差し止めを求めます。差止めは、競業主体に直接重大な不利益を課す措置です。差止め対象の行為は必要十分な期間に限定され、差止め期間も必要十分なものに限定される等、合理的なものでなければいけません。

合意がなく、不法行為を根拠に差し止めをする場合には、違法性が強度で、事後的な損害賠償では損害の回復が図れない場合に限定されるといわれます。

なお、不正競争防止法違反が認められるときは、同法3条1項に基づく差止め請求ができます。

Ⅵ 従業員の引き抜き

1.従業員の引き抜き

競業行為に伴って他の従業員が引き抜かれる事例は多々あります。企業は人材の育成に多大なコストを払っています。かつ、人材が抜けるとそれを回復するのは容易ではありません。企業規模によっては、突如従業員を引き抜かれてしまうと、事業の遂行自体を困難ならしめる影響を受けます。企業にとっては到底許せない行為です。

しかしながら、労働市場における転職の自由も憲法上の価値から尊重されます。引き抜き行為を行うことは原則として違法ではありません。単なる勧誘の範囲を超え著しく背信的な方法で行われ社会的相当性を逸脱した場合、あるいは引き抜き行為が社会的相当性を著しく欠くような方法・態様で行われた場合に限って、違法な勧誘行為と評価されます。

その判断に際しては、引き抜かれた従業員の会社における地位、引き抜かれた人数、引き抜きが会社に及ぼした影響、勧誘の方法・態様等の諸般の事情が考慮されます。大量の引き抜き、きわめて執拗な勧誘、地位を利用した勧誘、経営秘匿情報を用いた勧誘、虚偽情報を用いた勧誘などが該当し得るとされています。

2.引き抜き行為への対処

引き抜き行為の事実を把握した場合には警告文を送付します。社内にも会社の毅然とした態度を周知する必要があるでしょう。

引き抜きは原則として自由な行為であるため、特別な事情がない限り、差止め請求はできません。
損害賠償請求ができるのも、引き抜き行為が違法と評価されるケースのみです。その場合、競合他社の不法行為責任(709、715、719等)も追及できる場合があります。引き抜かれた従業員も別途競業避止義務違反が問われ得ます。

引き抜き行為に対する法的な対処は特に悪質なケースに限られます。仮に損害賠償請求ができたとしても、事後的対処では事業への悪影響は避けられません。従業員のモラルを維持して引き抜きを防ぐ日頃の経営努力が大切になりますね。

Ⅶ 秘密保持義務

1.在職中の秘密保持義務

労働者は、労働契約の付随義務として、信義則上、使用者の営業上の秘密を保持すべき義務を負います。
役員についても、委任契約の付随義務として、同様の義務が認められるでしょう。

在職中の秘密保持義務は、当然の義務でありますが、多くの企業では、就業規則あるいは誓約書や秘密保持契約等の個別の合意書面にて、具体的にその内容が定められていると思います。効果的なものにするためには、対象となる秘密情報の範囲および違反した場合のペナルティはできるだけ具体的に定めるべきでしょう。

なお、取引先との秘密保持契約では、自社が負うのと同等の秘密保持義務を役員・従業員に負わせることが要求されている例は多いです。

在職中の秘密保持義務違反への対処としては、従業員に対する就業規則に基づく懲戒処分・解雇、あるいは債務不履行による損害賠償請求(民法415)が考えられます。もちろん、差止め請求も考えられます。
漏えい先の第三者が、当該従業員等が秘密保持義務を負っている事実を認識した上で漏えいさせたのであれば、第三者に対する損害賠償請求(民709)も可能です。

2.退職後の秘密保持義務

従業員は、退職後については、就業規則あるいは個別の合意がない限り、秘密保持義務を負いません。退職後・退任後の秘密保持義務を課すためには、就業規則の定めを整備し、あるいは個別の合意を交わす必要があります。役員も同様です。
ただし、退職後であっても、信義則上、一定の範囲では引き続き秘密保持義務を負うとした裁判例もあります。

秘密保持の定めあるいは契約は、職業選択の自由、営業の自由を制約する側面がありますから、必要性・合理性を求められます。秘密保持の対象を明確に定めることが必要ですし、秘密の性質・範囲、秘密の価値、退職前の地位に照らし、内容が合理性であることが要求されます。

なお、不正競争防止法では退職の前後を問わず「営業秘密」が保護され、第三者にも主張でき、立証軽減措置も設けられています。その代わり、不正競争防止法で保護される「営業秘密」は認められるハードルが高いです。
これに対し、就業規則や合意による定められた秘密保持義務は、第三者に対する効力は原則なく、特別な立証軽減措置もありません。その代わり、対象となる企業秘密の範囲・種類を自由に決められます。また、違反に対するペナルティを、その有効性が認められる限りで柔軟に定めることができます。

Ⅷ 不正競争防止法

1.不正競争防止法による営業秘密の保護

重要な知的財産である秘密情報が不正に開示、使用されると、それ自体で大きなダメージを受けるとともに、信用問題にも発展しかねません。情報流出には民法上の不法行為(民法709)によっても対処ができるのですが、必ずしも十分ではないため、不正競争防止法で特に保護を強化しているのです。

不正競争防止法は、「営業秘密」(法2Ⅵ)の不正な取得・使用・開示を「不正競争」(法2Ⅰ④~⑩)として規制しています。役員・従業員は、在職中・退職後を問わず、「営業秘密」を保持する義務を負い、これに違反すると不正競争防止法違反となります。

不正競争防止法違反に対しては、差止め(法3Ⅰ)、損害賠償(法4)、侵害行為を組成した物の廃棄・侵害行為に供した設備の除却(法3Ⅱ)、信用回復措置(法14)を請求することができます。
刑事罰として営業秘密侵害罪(法21)も用意されています。

被害回復を容易にするために、損害賠償の推定規定(法5)、立証負担の軽減(法5の2)の規定が用意されています。

不正競争防止法では「営業秘密」を強力に保護しています。競業行為、秘密保持義務違反行為が、不正競争防止法が使える案件であれば、まずは不正競争防止法違反を問うことになるでしょう。

2.営業秘密と認められる要件

営業上の秘密がすべて不正競争防止法で保護されるわけではありません。これは、経営者によって必須の知識です。すなわち、不正競争防止法の保護を受けるためには、侵害された情報が「営業秘密」であると認められる必要があります。そして、「営業秘密」と認められるには高いハードルがあります。

「営業秘密」とは、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他事業活動に有用な技術上、又は営業上の情報であって。公然と知られていないもの」と定義されます(法2Ⅵ)。したがって、
①秘密として管理されていること(秘密管理性)
②事業活動に有用な技術上または営業上の情報であること(有用性)
③公然と知られていないこと(非公知性)
の3つが要件となります。

そのうち秘密管理性は容易に認められません。否定する裁判例は多数あります。秘密管理性が認められるためには、保有企業に主観的に秘密にする意思があるだけでは足りません。情報が客観的にも秘密として管理されていなければなりません(客観的な秘密管理性)。
①情報にアクセスできる者が制限されていること(アクセス制限性)
②情報にアクセスした者に情報が営業秘密であることが認識できるようにされていること(認識可能性)
の2つが判断要素とされています。

就業規則の規定や合意による秘密保持義務の設定は秘密管理性を肯定する方向の事情の1つになりましょう。もちろん規定や合意だけではなく、パスワードなどで技術的にアクセスの制限をする、秘密情報として特定して厳格に管理するなどの管理の徹底も必要となります。不正競争防止法による保護を受けられるように管理を徹底していれば、同時に、不正行為の予防にも繋がります。

裁判例では、客観的な秘密管理性を、情報の性質、情報の保有形態、情報を保有する企業の規模などの諸事情を総合考慮して合理的な管理がなされていたかどうかで判断しています。情報の種類や事業内容に応じた、適切かつ企業規模に見合った管理ということですが、具体的にどのような管理をすればいいかはケースバイケースで画一的に申し上げられません。参考となるものに、経済産業省が出している「営業秘密管理指針」があります。弁護士等の専門家に相談し、適切な対処を準備しておいてください。

Ⅸ まとめ

1.競業避止義務・秘密保持義務・不正競争防止法

在職・在任中の競業避止義務・秘密保持義務は当然に認められ、退職後・退任後の競業避止義務・秘密保持義務は原則として就業規則等の定めや個別の合意がなければ認められませんでした。いずれにせよ、競業避止義務・秘密保持義務とも、具体的に、詳細に定めておくことが肝要です。
そして、退職後・退任後の競業避止義務・秘密保持義務の定めや合意は、合理的な内容と認められなければ無効とされました。就業規則の定めあるいは個別合意文書を作成するにあたっては、有効性を判断する際に考慮される各項目について、できるだけ無効となるリスクを低減できるような条項を吟味しましょう。
不正競争防止法の定める「営業秘密」を利用した不正競争に対しては、同法に救済を受けることができました。ただし、「営業秘密」として認められるには高いハードルがあります。日頃からの厳格な管理が肝要でした。

2.事前準備・予防が肝要

競業避止義務、秘密保持義務、不正競争が絡む紛争は珍しくありません。被害の回復には困難を伴うケースがあります。仮に金銭的な被害回復が実現しても、それだけではダメージは回復できません。
企業としては、顕在化する可能性が相応になるリスクの1つとして、被害をできるだけ小さくする対処を事前に準備しなければいけません。もちろん、そのような事態が発生しないように予防をすることがより大切になります。

一度、①どのような情報、どのような技術、どのようなノウハウを守らないといけないか、②現状ではどのような管理をしているか、③担当者が競業他社に転職したり独立した場合にはどのような影響があるのか、④就業規則や合意文書ではどのような内容が決められているのかなどを見直してください。もちろん、専門家の助けを得て確認してください。リスクは法的に評価しなければいけません。

この記事を書いた人

弁護士 仲田 誠一(広島弁護士会所属)

◆経歴
1996年4月~
あさひ銀行 融資、融資管理、企業再生、法人営業等
2002年5月~
東京スター銀行 経営管理、内部監査、法人営業等
2004年4月~
広島大学大学院法務研究科
2008年12月
弁護士登録
2017年~各前期
広島大学大学院客員准教授(税法担当)
◆資格等
弁護士
公認内部監査人試験合格
著作「自転車利活用のトラブル相談Q&A」(民事法研究会,2022)

非免責債権の徹底解説【借金問題】

広島市の弁護士による借金問題コラムです。

今回は自己破産です。テーマは「非免責債権の徹底解説」です。

非免責債権があるとないとでは経済的更生への段取りが変わります。
非免責債権はどういうものなのか、非免責債権があればどのような手続になるのかなどを解説いたします。

目次

破産における非免責債権とは
租税等の請求権
悪意による不法行為に基づく損害賠償請求権
故意または重大な過失による生命・身体を侵害する不法行為に基づく損害賠償請求権
親族関係に係る請求権
雇用関係に基づく使用人の請求権等
知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権
罰金等の請求権
まとめ

破産における非免責債権とは

1.破産における非免責債権とは

破産手続において、免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権についてその責任を免れます(破産法253Ⅰ柱書本文)。これが破産における免責です。

しかし、上記条文には続きがあります。「ただし、次に掲げる請求権については、この限りではない。」として1号から7号までの請求権が定められています(破産法253Ⅰ柱書ただし書)。この1号から7号に定められている請求権を、非免責債権といいます。「この限りではない」という意味は、破産免責の効果が及ばない、すなわち破産者が支払義務を免れることができないことを意味します。

結局、破産における免責は、非免責債権を除いて、弁済義務を免れるということになります。

勿論、これは個人破産のお話です。法人の破産は法人格自体が消滅しますので、免責手続自体が存在しません。

2.非免責債権の破産における扱い

非免責債権も破産債権です。配当を受けることができます。配当されない部分について免責の効果が及ばない点が異なります。

免責許可決定が確定すると非免責債権は破産債権者表に記載され、債務名義となります。強制執行をするには執行文を得ます。

なお、裁判所書記官において当該破産債権が非免責債権に該当するか否かの判断が容易でない場合があることに照らして、破産後に債権者が非免責債権についての給付訴訟を提起したとしても訴えの利益に欠けないとした判例があります。

非免責債権か、一般の破産債権なのか争いがある場合でも、破産手続では判断がなされません。非免責債権かどうかは、債権者から提起した給付訴訟、あるいは債権者からなされた強制執行に対して破産者が提起した請求異議の訴えという訴訟手続の中で判断されます。免責許可決定が確定しているのであれば、非免責債権と認められない限り、給付判決では棄却判決が出て、請求異議の訴えは認容されて強制執行が失効します。

以下、非免責債権にどのようなものがあるか具体的に見ていきましょう。

租税等の請求権(1項1号)

1.租税等の請求権

租税等の請求権とは、「国税徴収法又は国税徴収法の例によって徴収することのできる請求権」です(破産法97④)。国税徴収法によって徴収することができる請求権は国税ですね。国税徴収法の例による請求権は、地方税やその他の公租公課(例えば国民健康保険料、国民年金保険料)などで、地方税法、行政代執行法、厚生年金保険法、地方自治法などの各法律において「国税徴収法に規定する滞納処分の例による」などと定められている請求権です。

結局、国税徴収法または国税徴収法の例によって徴収することのできる請求権とは、法律で自力執行力を認められた請求権(債務名義を取得し裁判所を通じて強制執行を申し立てる一般の債権と異なり、自らの滞納処分等を執行できる請求権)ということになります。

1号は国庫等の収入を図るとの趣旨から設けられた規定と言われています。

2.租税公課の滞納がある場合

租税公課は自己破産をしても免れることはできないと考えておいてください。

自己破産をしただけでは租税公課の支払義務は残ります。支払いに困ったら税務所、区役所の課税課などの相談窓口に相談しなければいけません。各租税公課について、滞納処分の停止およびそれが3年間継続したときの支払義務の消滅、納付猶予・免除、保険料免除・保険料納付猶予等の救済措置が定められています。もちろん、容易に免除はされないことになっています。

自己破産は経済的更生を図る手段です。依頼者さんには、破産とは別途、滞納租税公課やこれからかかる租税公課について担当窓口と相談をしておくようお願いしています。

悪意による不法行為に基づく損害賠償請求権(1項2号)

1.悪意による不法行為に基づく損害賠償請求権

加害者に対する制裁、被害者救済、加害者の人格的・道徳的責任などの観点から定められた規定と言われています。

不法行為の被害者は加害者に対し損害賠償請求権を取得します(民法709)。不法行為の主観的な成立要件は、加害者の故意または過失です。

これに対し、本号の免責不許可事由の主観的成立要件は「悪意」です。
「悪意」は単なる故意では足りません。一般に、他人を害する積極的な意欲(「害意」)が要求されるとされます。すなわち、不法行為のうち、特に「害意」があるケースだけ、本号の非免責債権になるということです。

例えば、預託金の横領、債務超過を認識した上でのクレジットカードによる商品購入や飲食、虚偽の説明をした上での金融業者からの借入れ、売買代金の詐取などのケースで本号の適用を認めた裁判例があるようです。

2.債務不履行、不貞行為

本号の適用は、あくまでも「害意」のある不法行為による損害賠償請求権です。

個人の債権者の中には、破産者に「騙された。」と感じて本号の非免責債権であると主張される方もいらっしゃいます。しかし、借入時に多少の虚偽説明があったとしても、詐取といえるケースは限定されます。債権者に対して「害意」があると認められるケースは少ないでしょう。
仮に、破産者に当初は弁済する気があり、実際に弁済をしていたようねケースでは、不法行為ではなく、単なる債務不履行(約束違反)とみられるケースが多いでしょう。

不貞行為の慰謝料請求権の非免責債権該当性も問題となります。不貞行為の場合、通常は故意による不法行為ですね。問題は「害意」があるかどうかです。
実は、非免責債権に該当しないとされる傾向にあります。恋愛感情からなされる不貞行為は、原則として、配偶者に向けた積極的な害意を目的とするものではないという考え方です。
不貞行為の悪質性や、配偶者の多大な精神的苦痛といった事情は、破産者に「害意」があったかどうかのに判断とは直結しません。

故意・重過失による生命・身体を侵害する不法行為に基づく賠償請求権(1項3号)

1.故意または重大な過失による生命・身体を侵害する不法行為に基づく損害賠償請求権

被害者の保護が特に必要なために本号が設けられています。

本号は故意または重過失による不法行為に適用されます。重過失とは、僅かな注意をすれば容易に結果を予見し、回避することができたのに、漫然と看過したような、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態です。
一方、軽過失による不法行為に基づく損害賠償請求権には本号の適用がありません。破産免責の対象となります。

また、本号は、生命・身体を侵害する不法行為に適用されます。
財産を侵害する不法行為については、故意・重過失による不法行為であっても、本号の対象ではありません。
財産的損害に対する損害賠償請求権については、2号に該当しない限りは、破産免責の対象になります。

2.交通事故の損害賠償請求権

加害車両が無保険であった場合など、交通事故の加害者が自己破産をすることもあります。

その場合、赤信号無視、飲酒・酒気帯び、無免許運転など、無謀運転による交通事故被害者の損害賠償請求権は、本号により非免責債権となります。加害者に重過失があればいいので、必ずしも危険運転致死傷罪が成立するようなケースに限られません。

ただし、非免責債権となるのは、生命・身体を被侵害法益とする損害賠償請求権のみです。これに対し、物損部分など財産の侵害に基づく損害賠償請求部分は、本号が適用されない結果、免責対象となります。

親族関係に係る請求権(1項4号)

1.親族関係に係る請求権

親族関係にかかる請求権は要保護性が高いこと、およびモラルハザードを防ぐ必要があること等から、本号が設けられています。

夫婦間の協力・扶助義務(民法752)
婚姻費用分担義務(民法760)
子の監護義務(民法766)
扶養義務(民法877~880)に基づく請求権
並びにそれらに類する契約上の請求権が対象となります。

2.離婚時給付は免責の対象か

離婚時に合意であるいは判決で決められる給付は、婚姻費用分担、養育費財産分与慰謝料ですね。

婚姻費用分担請求権、養育費支払請求権は、請求権の成立が認められる限りで、過去の分も含めて本号の非免責債権です。

離婚に伴う財産分与請求権は、夫婦共有財産の清算として基本的に財産請求権とみられます。したがって、本号の非免責債権に該当しません。
ただし、財産分与には、清算的要素のほか、慰謝料的要素、扶養的要素を含みます。扶養的財産分与の部分を明確に区別できるようにしてあるのであれば、本号の非免責債権となる余地があるでしょう。

離婚に伴う慰謝料請求権については、2号の「害意」のある不法行為による損害賠償請求権、あるいは3号の故意または重過失による生命・身体を侵害する不法行為に基づく損害賠償請求権と認められない限り、免責対象となります。不貞行為は2号に該当しない傾向にあることは上述のとおりです。

雇用関係に基づく使用人の請求権等(1項5号)

1.雇用関係に基づく使用人の請求権等

雇用関係に基づく使用人の請求権と使用人の預り金返還請求権です。
雇用関係に基づく請求権一般が対象となります。

2.雇い主が法人の場合

本号の適用があるのは、雇い主が個人事業主の場合です。
雇い主が法人である通常のケースでは関係がありません。法人破産の場合には、破産により法人格が消滅する結果、免責手続は存在しません、非免責債権もありません。従業員の給与請求権と退職金請求権が、財団債権あるいは優先的破産債権として保護されるだけとなります。

知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(1項6号)

1.知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権

債権者名簿(代用される債権者一覧表)に記載されない債権者に対しては、裁判所から意見申述期間の通知(破産法251②)がなされません。そのような債権者がいれば、意見申述の機会を奪われることになります。したがって、本号が設けられています。債権者一覧表に記載のない債権者には免責の効果が及びません。ただし、破産債権者が破産開始決定の事実を知っている場合には除きます。この場合は債権者が意見申述の機会を奪われないという理由です。

2.過失により債権者一覧表に記載しなかった請求権

条文には「債権者名簿に記載しなかった請求権」と表現されているのですが、故意にではなく、過失によってうっかり債権者名簿に記載しなかった請求権も含まれます。
債権者の記載漏れ等に破産者の過失がないケースは少ないかもしれません。債権者一覧表に記載漏れがあった場合は、当該債権者の請求権は非免責債権になり、破産免責の効果が及ばない可能性が高いことに注意してください。もちろん、破産手続中に債権者の漏れが判明した場合には、債権者を追加するだけで対応できます。気付かずに手続が終わった場合に本号が問題となります。

なお、仮に記載漏れのまま破産手続が終わってしまっても、当該金融機関が免責されたものとして処理してくれるケースがあります。

罰金等の請求権(1項7号)

1.罰金等の請求権

罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金、過料です。本人に負担させるべきとして非免責債権となっています。

2.破産手続での扱い

罰金等の請求権は、劣後的破産債権とされます。通常は配当対象とはならないが、非免責債権であるということになります。

まとめ

1.非免責債権とは

非免責債権は破産免責の効力が及ばない請求権です。
破産法253条1項1号から7号に定められています。各号の内容を説明してまいりました。どんなものが非免責債権に当たるかどうかのイメージを持っていただければ幸いです。

2.非免責債権があるケース

非免責債権があるケースでは、自己破産手続だけでは経済的更生を図ることができない可能性があります。準備段階で非免責債権があるかどうかを確認し、トータルでの経済的更生を検討しなければいけません。

また、債権者から非免責債権であると主張されるケースもあります。免責に反対するであろう債権者が想定できる場合には、それを前提とした手続の見通しを立てておくことが大事です。

以上、非免責債権の徹底解説と題して、破産免責の効果が及ばない非免責債権について解説しました。

信頼できる弁護士選びが経済的更生の第一歩です。
ぜひ、当事務所にご相談してみてください。

この記事を書いた人

弁護士 仲田 誠一(広島弁護士会所属)
◆経歴
1996年4月~
あさひ銀行 融資、融資管理、企業再生、法人営業等
2002年5月~
東京スター銀行 経営管理、内部監査、法人営業等
2004年4月~
広島大学大学院法務研究科
2008年12月
弁護士登録
2017年~各前期
広島大学大学院客員准教授(税法担当)
◆資格等
弁護士
公認内部監査人試験合格
著作「自転車利活用のトラブル相談Q&A」(民事法研究会,2022)

破産免責の徹底解説【借金問題】

広島県広島市の弁護士仲田誠一による借金問題コラムです。

今回は、自己破産の話、テーマは「破産免責の徹底解説」です。
個人が自己破産をする目的は免責を受けることです。そこで、破産免責とは何か、免責不許可事由とは何か、免責手続ってどう進んでいくのかなど、堀り下げた解説をさせていただきます。


目次

破産免責とは何か
権利免責と裁量免責の違い
免責不許可事由の種類
免責手続とは
免責を得られる可能性
免責に反する債権者が要いるケース
まとめ

破産免責とは何か

1. 免責の申立て

破産手続自体は、破産者資産負債の清算をするだけです。資産負債を清算して残った債務の支払義務は残ります。個人の債務者が債務の責任を免れるためには、免責許可の申立てをし、免責許可決定をもらわなければなりません。

これに対して、法人の破産では、破産手続終了により法人格自体が消滅すれば、債務も消滅します。債務が残るということはありませんから、免責手続はありません。免責は個人破産特有の制度です。

免責許可申立てを忘れることは基本的にありません。債務者が破産手続開始の申立てをした場合(自己破産の場合)は、反対の意思を表示していない限り、同時に免責許可の申立てをしたものとみなされます(破産法248Ⅳ)。裁判所が用意している申立書書式も、破産手続開始と免責許可をセットで申し立てる形式になっています。

なお、自己破産ではなく、債権者申立ての破産手続では、免責許可の申立てをしたものとみなされません。したがって、破産者が免責を得るためには、破産開始決定が確定した日から1月以内に免責許可申立てをしなければいけません(破産法248Ⅰ)。


2. 破産免責の意味

破産法253条1項柱書本文は、「免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。」と定めます。これが破産免責です。破産債権について支払義務を免れるという意味ですね。

 

破産法253条1項柱書のただし書きでは、「ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。」と、1号から7号までの請求権が掲げられています。それら1号から7号の請求権を「非免責債権」といいます。破産免責によっても責任を免れることができない債権です。非免責債権の詳細は後述いたします。

 

結局、破産免責は、非免責債権を除いて、破産債権について弁済義務を免れるということになります。

 

なお、復権と免責は少し意味が違います。
復権とは、自然人に対する破産手続開始決定に伴い、同人に対して課せられていた行使の資格制限を消滅させ、破産者に本来の法的地位を回復させることです。免責許可決定の確定は基本的な復権事由となっています(破産法255)


権利免責と裁量免責の違い

1. 権利免責

裁判所は、破産者に破産法第252条第1項各号に掲げる免責不許可事由がいずれも該当しない場合、免責許可の決定をします(破産法252Ⅰ柱書)。
この場合には必ず免責決定を得られますから、権利免責といいます。権利として免責を受けられることができるという意味合いです。

破産者について、免責不許可事由(破産法252Ⅰ各号)が該当する場合は、権利免責を得ることができません。裁量免責が認められるかという話にはります。

 

2. 裁量免責

破産法第252条第2項は、「前項の規定(注:権利免責)にかかわらず、同項各号に掲げる事由(注:免責不許可事由)のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。」と定めます。これが、裁量免責です。

免責不許可事由があれば権利免責はありません。しかしながら、免責を許可することが相当である事情があれば、例外として、裁量によって免責許可を与えてもいいという建前です。

破産制度は破産者の経済的更生を図るための制度です。そのため、実際の運用では、上記原則と例外が逆転しています。免責不許可事由があって権利免責を得られなくても、ほとんどケースでは裁量免責を得られます。免責不許可となるケースは稀です。免責不許可事由の程度が大で、救済する事情もないような事例に限られます。

なお、免責不許可事由の程度が大きい場合には、同時廃止手続にはよらず、破産管財人を選任して一定期間破産者の調査や指導を行わせ、破産管財人から出された免責意見を踏まえた免責判断がなされることがあります。この場合の手続を、免責調査型管財事件といいます。予納金は20万から25万円程度です。

 

免責不許可事由の種類

1. 法252条1項1号から6号

債権者を害する目的で行う財産の価値を不当に減少させる行為(1号)

破産財団に属する、あるいは属すべき財産は、総債権者の配当原資となります。そのため、同財産の価値を減少する行為は、総債権者を害する行為として免責不許可事由となっています。財産には、不動産、動産、債権、知的財産権など財産的価値を有するもの一切を含みます。ただし、破産財団を構成しない差押禁止財産などは含みません。価値を不当に減少させる行為は、隠匿(秘匿)、損壊その他の価値減少行為の一切を含みます。

なお、生活資金捻出のための売買など、その行為に不当性がなければ本号の免責不許可事由に該当しません。弁護士管理の下で、財産を有用の資(生活費、弁護士費用、破産費用、引越し費用その他どうしても必要な支出)に供することはよくあることであり、問題視されません。

破産手続開始を遅延させる目的で行う不利益処分行為等(2号)

破産手続を遅延させる目的で行われる(破産者が支払不能状態にあって、同事実を認識していることが必要です)、著しく不利益な条件での債務負担行為、信用取引により買い入れた商品を著しく不利益に処分する行為などです。
著しく不利益な条件は、取引社会の実情からみて不合理な程度に債権者にとって不利益なものをいいます。不利益な処分とは、著しく低廉な価格で処分すること(廉価売買)、権利放棄などの行為を指します。要するに、経済的合理性を欠く行為ですね。破産手続開始を遅延させる目的には、破産手続開始自体を免れる目的を含むとされています。

なお、クレジットで購入した商品を低廉で売却することはよく見られる行為ですが、破産手続を遅延させる目的でなされた行為とまで言えるケースは少ないでしょう。きちんと説明をしていれば過度には問題視されない傾向です(勿論5号に該当するかが吟味されます)。

不当な偏頗行為(3号)

一部の債権者に対し、特別の利益を与える目的または他の債権者を害する目的で、義務に属さない担保提供または債務消滅行為をすることです。担保提供は、抵当権、質権、譲渡担保など、債務消滅行為は、弁済、代物弁済などです。配当原資となるべき責任財産を毀損させて総債権者の利益を害する行為ですね。

偏頗的な(不公平な)弁済を、特に偏頗弁済(へんぱべんさい)と呼びます。親類や知人など金融会社以外に偏頗弁済をしてしまうことが多いでしょうか、よく見る免責不許可事由の1つです。否認対象としても典型的な例です。当職が受任する際には、個人間のものを含めて、一切の弁済行為を止めるようお願いしています。

浪費又は賭博その他射幸行為による著しい財産減少等(4号)

頻繁に目にする免責不許可事由です。
浪費または賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、または過大な債務を負担したことです。浪費とは、必要かつ通常の程度を超えた不相応な支出です。社会的地位、境遇、財産など諸般の事情を考慮して判断されます。賭博にはギャンブル一般を含み、射幸行為は投機目的の証券取引、商品先物取引、FX取引、先物オプション取引などが該当します。射幸行為かどうかも、資力、職業、知識などから判断されます。著しく財産を減少させたかどうか、または過大な債務を負担したかどうかは、債務者の財産状況との関係において社会通念によって判断されますので、その判断は人により異なります。要するに、分相応か分不相応かということでしょうか。

浪費や射幸行為と、著しい財産減少や過大な債務負担との間には、相当因果関係が必要です。ギャンブル等が遠因となっているにすぎない、一因となっているが他に主要な原因があるといった場合には、本号の免責不許可事由に該当しません。


詐術を用いた信用取引による財産取得(5号)

破産手続開始の申立日から1年以内にされた、破産手続開始の原因(支払不能)となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得する行為です。

詐術には、消極的態度によって相手を誤信させる場合も含まれます。ただし、ほとんどの破産者は支払不能になっても引き続き信用取引を続けるのが通例です。支払不能状態であることの単なる不告知という消極的態度によっては詐術に該当しないと考えられています。そのためか、本号の免責不許可事由はあまり見かけません。


帳簿等の隠滅、偽造等(6号)

破産者の業務および財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件一般について、隠滅、偽造(名義の冒用)、または変造(内容を改変する行為)する行為を対象とします。それらの行為は破産財団の管理を困難とし、破産債権者の利益を害するため、免責不許可事由になっています。
あまり見かけない免責不許可事由になります。

 

2. 法252条1項7号から11号

虚偽の債権者名簿の提出(7号)

債権者名簿あるいは債権者名簿とみなされる債権者一覧表に事実に反する内容を記載し、記載すべき債権者名等を記載しない行為が対象となります。免責手続の適正な遂行を妨害する行為として、免責不許可事由となっています。
通常の自己破産手続では債権者一覧表が債権者名簿とみなされています。免責不許可事由に該当するのは、破産者が手続の遂行を妨害し、または債権者を害する目的がある場合に限られるべきといわれています。免責不許可事由という制裁に相応しい行為に限るべきということです。

なお、債権者一覧表に誤りがある、抜けていた債権者が破産手続中に判明する、といったようなことは多々あります。途中で訂正・追加すれば問題はありません。過失により債権者名簿に債権者名等を漏らし手続を終えた場合には、非免責債権(破産法253Ⅰ⑥)となる可能性はありますが、免責不許可事由には該当しません。

調査協力義務違反(8号)

裁判所は、破産手続の全般について調査をすることができます(破産法8Ⅱ)。裁判所は、書記官に調査させ、破産管財人を通じた調査も行います。これら裁判所の調査に対し、説明を拒み、または虚偽の説明をする行為は、免責不許可事由に該当します。説明の拒絶には正当な理由のない審尋期日の欠席を含みます。虚偽の説明には当然に説明すべき事項について消極的に説明しないことも含みます。退職金や所有不動産を報告しないケースが典型的ですね。ただし、うっかりした報告漏れは補正をすればいいだけです。実務上、申立書の記載に誤りや漏れがあることは珍しくありませんが、本号の免責不許可事由を問題とすることはあまりありません。

このように、申立書類に嘘を書くと免責不許可事由のペナルティがありますから、申立てにあたっては、あくまでも嘘はつかない範囲内で、できるだけ有利に説明することが大事です。

不正な手段による破産管財人等の職務の妨害(9号)

破産管財人等とは、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理または保全管理人代理です。別途、破産管財人等に対する職務妨害罪(破産法272)も定められています。職務妨害罪に該当する行為のほか、財産持ち出し、引渡しや明渡しの拒絶、脅迫、郵便物の発送回避等が免責不許可事由に該当します。

過去に受けた免責(10号)

次の①から③に掲げる日(債権者の同意を問題としない免責あるいは一部免責の確定日になります。)から7年以内に申立てがあった場合には、免責不許可事由に該当します。モラルハザードを防ぐ趣旨です。
他の免責不許可事由と比べても厳しく運用され、裁量免責が容易には認められない印象があります。7年間は原則として再度の自己破産はできないと考えていた方がいいでしょう。
①破産の免責許可決定の確定日
給与所得者等再生における再生計画認可決定の確定日
③ハードシップ免責にかかる再生計画認可決定の確定日
各決定から確定日までは、ざっくり1か月ぐらいだと思ってください。

①~③から7年を経過すれば、自己破産を申し立てて免責を求めても問題ないこととなります。複数回の破産免責を法も許容しているのですね。2回目の破産でも、それだけでは免責不許可事由に該当しません。かつ、2回目というだけで管財事件になるわけでもありません。勿論、反省文などで反省を示す必要があるなど、初めての破産に比べてより厳しく見られるのは仕方がありません。また、管財事件になる可能性は初回に比べると高いのも確かです。

破産法上の義務違反(11号)

破産手続中の説明義務(破産法40Ⅰ①)、重要財産開示義務(同41)、免責手続における調査協力義務(同250Ⅱ)、「その他のこの法律に定める義務」への違反があった場合には、免責不許可事由となります。「その他のこの法律に定める義務」違反は、保全処分(同28)、居住等の制限義務(同37Ⅰ)、債権調査期日への出頭義務(同121Ⅲ)などへの違反です。

 

免責手続とは

1. 免責についての意見申述

破産法では免責についての意見申述制度を設けています(破産法251)。免責手続における破産債権者に対する手続保障ですが、破産管財人も意見申述をすることができます(破産管財人は必ず免責意見を提出する運用です)。免責決定の影響を受けない非免責債権者(破産法253Ⅰ)には、意見申述権が認められていません(破産法251Ⅰかっこ書)。

意見申述は、原則として、裁判所から指定された意見申述期間に、書面を提出して行います。意見申述期間は、破産手続開始時から3カ月程度先というイメージです。

破産債権者の免責についての意見は、裁判所を拘束するものではなく、裁判所が判断する際の参考資料にすぎません。裁判所は意見申述に対する応答をする必要もありません。個人の債権者からは意見申述がなされることがときどきありますが、それにより免責不許可となる例は見たことがありません(なお、金融業者は基本的に意見申述をしません)。


2. 免責の効力発生(許可の確定)

免責許可決定が確定すると、破産者は、破産債権についてその責任を免れます(破産法(253Ⅰ本文)。

利害関係人は、免責責許可申立ての裁判に対し、即時抗告をすることができます(同252Ⅵ)。利害関係人とは、免責許可決定では破産管財人および破産債権者(非免責債権者も含みます)、免責不許可決定では破産者です。
即時抗告期間は、決定を受けた日から1週間です(破産法13、民訴法13)。破産債権者に対して送達代用公告がなされた場合は公告の効力が生じた日から起算して2週間です(破産法9)。破産債権者については通常後者ですね。

即時抗告期間が終了すれば免責許可が確定します。即時抗告がなさない通常のスケジュールでは、免責許可決定日から約1か月後が確定日となります。2週間前後に官報公告され、それから2週間で確定ですから。

一方、即時抗告がなされれば確定はしません。抗告審によって免責許可申立ての裁判の当否が判断されます。勿論、一度出た免責決定が覆されるのは稀なケースといえるでしょう。

 

免責を得られる可能性

1. 裁量免責にあたって考慮される主な事項

裁量免責の判断にあたっては、主に次のような事情を考慮するとされています。

破産手続開始の決定までの事情

①破産者の年齢、職業、収入、家族構成など、②債務を負担するに至った経緯、③支払不能に至った事情、④破産手続開始の申立てに至った事情です。
どれも申立書に記載する事項ですね。この説明内容が一番大事になります。

免責不許可事由に関する事情

免責不許可事由の種類、内容、程度、②免責不許可事由の行われた時期、③同行われた経緯、④破産者の主観的状況、⑤破産手続に与えた影響
要するに免責不許可事由の悪質性の程度です。
免責不許可事由があると想定されるケースでは、管財事件になるリスクを下げるため、免責不許可にならないため、これらの事情をきちんと整理・説明します。

債権者側の事情

①債権者の属性、②破産者との関係、③与信内容、現在額、④与信の経緯、⑤債権者の審査能力の有無、⑥調査内容、⑦債権管理状況、⑧債権回収状況です。
破産はあくまでも破産者の経済的更生を図る制度です。そのため、債権者側の事情は一般的には重視されない傾向にあります。

破産手続開始後の事情

①配当状況、②破産者の協力状況、③破産者の反省の有無程度、④破産者の生活状況、⑤再生への意欲、⑥再生の見込み、⑦関係者の評価です。
主に破産管財人が免責意見を出すときに破産者を救う方向の事情として挙げるものです。プラスの事情があまりないケースでは、②の破産者の協力と、⑤⑥の経済的更生の可能性が、免責意見のメインになります。
なお、③については、手書きの反省文を初めから提出しておくといいでしょう。スムーズに同時廃止手続に進む傾向にあります。

免責許可決定のもたらす影響

①破産者の再生に及ぼす影響、②債権者に及ぼす影響、③免責許可についての債権者の意見です
破産はあくまでも破産者の経済的更生を図る制度です。そのため、免責許可についての債権者の意見は、あくまでも参考資料として取り扱われるべきといわれています。

 

2. 免責を得られる可能性

免責不許可決定がでるのは非常に稀なケースです。免責不許可事由の程度が重大であり、かつ救う材料がまったくないようなケースでした。

広島地方裁判所本庁で免責不許可の決定がでるのは、年間数件程度にすぎません。もっとも、明らかに免責不許可となるような事案では、別途、裁判所から申立てを取下げるよう勧奨を受けることがあります。それを含めるともう少し多いのかもしれません。いずれにせよ、全体の申立件数からはごく少数です。ほとんどの案件では、最終的には免責決定を得られています。

当職の経験でも免責不許可決定を得たことはありません(勿論、免責を得られることが明らかに難しいと判断したケースでは個人再生手続を勧めています)。破産管財人として免責不許可相当の意見を提出したことも、1度しかありません。そのほかは全件について免責相当の意見を申述しています。

一方、免責を得るための努力が必要なケースは多々あります。浪費やギャンブルの案件では説明を尽くした上で反省文を書く、
家計の収支状況を報告する、否認が疑われるような案件では財団に金銭を拠出して和解的解決をする、などの努力が典型的でしょうか。
個別の事情に応じて努力の仕方は変わります。肝心なのは、資料をできるだけ集めて事情をわかりやすく説明することです。当職もその一人ですが、破産管財人の経験が豊富な弁護士は、説明するツボや説明を要求される程度を肌感覚で理解しています。
なお、広島地裁では、一定期間金銭を積み立てて任意弁済をするという方法は採られなくなりました。

 

免責に反対する債権者がいるケース

1. 免責に対する意見申述、即時抗告

破産法では免責についての意見申述制度を設けていますから(破産法251)、免責に反対する債権者が免責不許可の意見を申述する可能性があります。
裁判所は債権者の意見に拘束されるわけではありません。債権者の意見は参考資料にすぎません。

仮に、裁判所、破産管財人が免責許可を相当と考えていた場合、結論が覆ることはなかなかありません。同時廃止事件は裁判所が免責を許可する方向で選択した手続です。管財事件での破産管財人も免責不許可相当の意見を出すのは免責不許可事由が重大で救う方法もないような稀なケースです。あまり効果がないことを知っていてか、
金融会社が反対意見を提出してくることはまずありません。

なお、結論は変わらなくとも、場合によっては、集団免責審尋から個別免責審尋に切り替えられる、免責決定が一定期間留保されるなど対応が必要となることがあります。裁判所あるいは破産管財人から意見書の提出を求められることもあります。

免責許可申立ての裁判に対しては、利害関係人が即時抗告をすることができますから(破産法252Ⅴ)、免責許可決定に対して債権者が即時抗告を申し立てる可能性があります。即時抗告がなされると、免責許可決定は確定せず、抗告審により当否が判断されることになります。破産者の意見を抗告審に提出する必要もあるでしょう。
勿論、一度出た免責決定が覆されるのは稀なケースです。だからでしょうか、あまり利用されない印象です。

 

2. 給付訴訟、強制執行

免責許可決定が確定すると、破産者は、非免責債権を除き、破産債権についてその責任を免れます(破産法253Ⅰ本文)。ただし、非免責債権には免責の効力が及びません(破産法253Ⅰただし書)。

貸金返還請求訴訟、損害賠償請求訴訟などの給付訴訟が提起された場合、免責決定が確定していれば、請求債権が非免責債権に該当しない限り、請求が棄却される形で訴訟が終わります。
既に訴訟が提起されていたときも同様です。免責許可決定が確定し次第棄却されます。

また、強制執行がなされた場合には、破産者は、責任の消滅を理由として、請求異議の訴え(民事執行法36)を提起することになります。

非免責債権であると主張している債権者がいれば、破産手続および免責手続の終了後、貸金返還請求訴訟、損害賠償請求訴訟などの給付訴訟を提起する、あるいは既に債務名義を取得していればそれに基づいて強制執行をしてくる可能性があるでしょう。
非免責債権かどうかに争いがある場合でも、破産手続では判断してくれません。債権者から提起された給付訴訟の中で、あるいは破産者から提起された請求異議の訴えの中で、非免責債権に該当するかどうかが判断されます。

 

まとめ

1. まとめ

免責とは非免責債権を除き破産債権についてその責任を免れることです。その免責には、権利免責と裁量免責の2つがありました。
免責決定をするためには、意見申述期間が設けられます。
免責決定後、即時抗告がなされなければ確定し、免責の効力が発生します。決定から約1カ月後です。

実務上は、免責が原則、免責不許可が例外として運用されています。

債権者の意見は参考資料にすぎません。
給付訴訟、あるいは強制執行では、債権者免責許可決定が確定していれば、非免責債権でない限り、訴訟は棄却され、請求異議が認容されます。非免責債権かどうかは破産手続の中で判断してくれません。

 

2. 最後に

弁護士による破産免責の徹底解説と題して、破産免責について詳しく解説してまいりました。免責を得られない自己破産は意味がありませんね。破産の準備にあたっては、免責を得られるかどうか、何を準備すればいいのか、見通しをもって段取りを考えます。

スムーズに免責を得る第一歩は、破産手続に詳しい、経験が豊かな弁護士のサポートを得ることです。ぜひ、広島の破産弁護士である当職までご相談ください。

 

この記事を書いた人

弁護士 仲田 誠一(広島弁護士会所属) 

◆経歴
1996年4月~
あさひ銀行 融資、融資管理、企業再生、法人営業等
2002年5月~
東京スター銀行 経営管理、内部監査、法人営業等
2004年4月~
広島大学大学院法務研究科
2008年12月
弁護士登録
2017年~各前期
広島大学大学院法務研究科客員准教授(税法担当)
◆資格等
弁護士
公認内部監査人試験合格
広島市消費生活紛争調停委員会委員
経営革新等支援機関(中小企業庁)
M&A支援機関(中小企業庁)
著作「自転車利活用のトラブル相談Q&A」(民事法研究会,2022)

中小企業の株式対策エッセンス【企業法務】

広島市の弁護士、仲田誠一による企業法務コラムです。

今回は、中小企業の株式対策として、株式の分散、株式の集中、株価対策、議決権の集中、自己資本比率など、中小企業に必須な株式対策のエッセンスを解説します
。個々の問題の詳しい解説は改めてさせていただきます。

目次

株式の分散
株式の集中
株価
議決権の集中
自己資本比率
まとめ

株式の分散

1.株式の分散とは

オーナーが自社株式の100%を保有しておらず、他の親族、役員、従業員、共同経営者らも株式を保有している状態を、株式の分散と呼びます。

過去には、株式会社の設立時の発起人が7名必要だった時代がありました。また、中小企業でも従業員に株式を持たせることが奨励された時代もありました。
また、民法の原則は分割相続です。オーナーが100%保有していたとしても、相続により各相続人に分割承継されることがあります。
そのため、株式が分散している会社は少なくありません。


2.株式の分散の弊害

株式の分散は、上場あるいは株式公開をしていない中小企業にとって、特別にそれを必要とする事情がない限り、百害あって一利なしです。
特別なケースとは、外部資本からベンチャー投資などを受け入れるなど、どうしても経営者以外が株式を保有する必要がある場合ですね。

この点は見解が統一されつつあります。株式の分散は、株主総会等のコストが増える、経営のスピードを阻害する、M&A事業承継の障害になるなど、経営の足かせになるからです。
株式の分散は、中小企業の強みである機動力・スピードに反するのですね。

そもそも、会社の所有者は株主です。オーナー企業であればその実態に合わせてオーナーが100%保有するべきでしょう。


株式の集中

1.株式の集中

上述のように、株式の分散はよくないということで見解が一致しつつあります。
株式が分散している会社は、現オーナーあるいは後継者に株式を集めます。これを、株式の集中あるいは集約といいます。

最近は、株式の集中に関する提案が、金融機関やコンサルタント会社から
事業承継対策としてなされることが当たり前になってきました。ただし、株式の集中は法律問題です。弁護士にきちんと相談してから進めてください。

2.株式集中の方法

株式の買取りが一番穏当な手段です。
なお、他人名義の株式が名義株であるときは、別途名義株の解消をします。

株式を強制的に集約する法制度も整備されつつあるところです。
事業承継問題への対策の一つとも位置付けられますでしょうか。
強制的な集約手段として特別支配株主の株式買取請求制度ができました。
以前からあった株式併合の手段を活用した少数株主排除の手段もとりやすくなっております。


株価

1.株式の集中と株価

株式の集約をするにあたって一番困るのは株価が高いケースです。株価が高いケースとしては、長年、適切な役員報酬をとらず会社に利益をプールした結果であることが多いですね。

株価が高いと、株式の集約にかかるコストが跳ね上がります。税務上問題のない形での売買、株式買取請求、株式併合等のコストは株価次第ですからね。

2.株価の引下げ

M&Aで株式を売却する場面は別として、株価が高いことには何らのメリットもありません。むしろ弊害が多いといえます。

事業承継が絡むケースであれば、役員退職金が即効性のある株価引き下げ策として利用できます。
ただ、経営権が移譲できないケースでは使えません。

ある程度の所得税を払っても中長期的な報酬戦略をとって、会社から個人(オーナーあるいは後継者)への資産移転を進めなければなりません。

議決権の集中

1.議決権の集中

株価が高すぎるケースなど、どうしても株式の集中ができない事情があることもあります。
その場合には、次善の策として、議決権の集中を図ります。
オーナーあるいは後継者の保有する株式に議決権を集めるのです。

株式の集中ができなくとも、議決権を集中することで、経営のスピード・機動力の確保、円滑な事業承継には耐えられます。


2.議決権の集中の例

議決権の集中は、種類株式あるいは属人株式を活用します。

種類株式の活用とは文字どおり種類の違う株式を発行することです。
経営者以外の株主の株式を議決権なし優先配当の種類株式とするケースがイメージされやすいでしょうか。


属人株式は株主によって株式の取扱いを変えることです。{C}{C}{C}代表取締役の保有する株式の議決権を100倍にすると株主総会の開催も決議も簡単になりまね。

勿論、種類株式、属人株式の導入は高いハードルがあり、かつ法的なリスクも伴います。弁護士に相談の上で進めてください。


自己資本比率

1.自己資本比率とは

法律論とは少し離れます。

自己資本比率は、自己資本/総資産(%)で表されます。
自己資本比率が高いほど、自己資金が豊富ということなので、経営の
安全性が高いといわれます。
自己資本比率は、ひと昔前の銀行の与信審査では大きなウェイトを占めました。

株価が高いということは、基本的に利益を内部留保し自己資本比率も高くなるということになります。


2.自己資本比率は高いほどいいのか

大企業は別として、少なくとも中小企業に限っては、自己資本比率が高ければ高いほどいいとはいえません。もちろん、自己資本比率が低すぎると危険ですよ!

営業活動をすれば、資産(売掛金等)あるいは負債(買掛金等)が膨れ、自己資本/総資産で表される自己資本比率は低くなります。
また、会社の信用を生かして銀行から借り入れて商売の幅を拡げる、あるいは資金の回転を多くして利益を増やそうとすると、当然に自己資本比率が低くなります。

中小企業は、銀行からお金を借りて(間接金融により)調達した資金を運用して、利益を拡大させるものです。すなわち、儲けようとすれば自己資本比率は下がるはずです。自己資本比率が過度に高い中小企業には成長性がありませんし、経営効率が悪いことになります。


まとめ

1.今回お話したこと

株式の分散は望ましい状態ではありませんでした。株式の集中を図る必要があり、そのための法制度も整備されつつありました。高すぎる株価の弊害は多くありました。株式の集中の障害にもなります。即効性のある役員退職金や継続的な報酬戦略が求められました。株式の集中が困難な場合には議決権の集中を考えることができます。なお、自己資本比率は高いほどいいわけではありませんでした。

株主は会社の所有者です。したがって、株式対策は経営の基本となります。
株式対策を決して先送りにしないでください。


2.企業法務に詳しい弁護士に相談を

株式の集約などの株式対策は、すぐれて法律問題です。法的なリスクを伴い場面が多いですし、スキーム作りには税法の問題意識も必要とします。必ず、企業法務に精通した弁護士にご相談の上で進めてください。

弁護士仲田は、企業法務に精通しているのは勿論、税法の専門知識も併せ持っております。M&A事業承継案件での株式対策サポートの経験も豊富です。ぜひご相談ください。


この記事を書いた人

弁護士 仲田 誠一(広島弁護士会所属)

◆経歴
1996年4月~
あさひ銀行 融資、融資管理、企業再生、法人営業等
2002年5月~
東京スター銀行 経営管理、内部監査、法人営業等
2004年4月~
広島大学大学院法務研究科
2008年12月
弁護士登録
2017年~各前期
広島大学大学院法務研究科客員准教授(税法担当)

◆資格等
弁護士
公認内部監査人試験合格
広島市消費生活紛争調停委員会委員
経営革新等支援機関(中小企業庁)
M&A支援機関(中小企業庁)

売れない不動産の破産や再生での扱い【借金問題】

広島の弁護士による自己破産個人再生解説です。
今回は、一般に売却することが困難な不動産が、自己破産個人再生などでどのような扱いを受けるのか説明します。なお、自己破産個人再生などの倒産手続は、各裁判所により扱いが多少異なります。私は広島の「倒産弁護士」(破産など倒産手続に精通し業務の柱とする弁護士)です。そのため、裁判所によって異なる点は広島地方裁判所の扱いを前提に説明しております。

目次

不動産の扱い(自己破産
不動産の扱い(個人再生
売れない不動産とは
売れない不動産はどうなるか(自己破産
売れない不動産はどうなるか(個人再生
まとめ

自己破産における不動産の扱いの基本

1.不動産がある場合は同時廃止管財事件

不動産があれば原則として管財事件となります。共有不動産の持分権しかない場合も同じです。
不動産がある場合の予納金は30万円が標準となります。

不動産があっても例外として同時廃止事件となるケースもあります。
同時廃止基準(同時廃止管財事件を振り分ける基準で各裁判所が定めています。)によれば次のとおりです。

①被担保債権の残債が固定資産税評価額の概ね1.5倍以上又は業者査定価格の概ね1.3倍以上であるとき。

②不動産の性状及び立地条件に照らして明らかに売却可能性が乏しいと認められるとき。

①は、いわゆる「オーバーローン」の場合です。不動産の価値が残っていないことが明らかなケースでは同時廃止になるということです。

②が、売れない不動産ということになります。管財人に売却を試みてもらう必要はないということですね。
ただし、②は簡単には認めらません。田舎の不動産でも、共有持分権だけでも、破産管財人に売却可能性を検討してもらうため管財事件になる傾向があります。
地目では、山林や農地であれば可能性があります。宅地であればハードルは高いです。
価値が小さいと客観的に認められる、正確な位置すらわからない、売買されるような地域ではない、共有持分しかない等の事情もありますね。
裁判所は総合的に判断をします。当職の経験に基づくと、固定資産税評価が僅少で、路線価がついておらず倍率地域であるなど、価値がほとんどないことが客観的に明らかであることが疎明されているかを重視するようです。

なお、不動産を直前に売却して不動産を持っていない状態にすれば必ず同時廃止になるのかというと、そうではありません。確かに不動産があるという理由では管財事件とはなりません。しかし、売買の妥当性を検証させるために管財事件となることは珍しくありません(不動産の売買は弁護士の下で行ってください)。

2.管財事件での不動産の扱いの基本

管財事件では、破産開始決定と同時に破産管財人が選任されます。
開始決定以後は、財団(開始決定時にある自由財産以外の財産と思ってください。)の管理処分権は破産管財人に移行します。

不動産は自由財産ではありません。そのため、破産管財人は、不動産を処分しようとします。不動産が担保に入っている場合でも、担保権者が敢えて競売による処分を希望しない限り、管財人が処分をすることが基本です。

破産管財人が最終的に処分ができなかった不動産は、破産管財人が財団から放棄します。放棄された不動産は破産者の手元に戻ることになります(担保がついていれば競売あるいは任意売却により処理されます)。

個人再生における不動産の扱いの基本

1.個人再生における不動産の扱いの基本

個人再生における不動産の扱いは破産と全く異なります。個人再生では財産が処分されることはありません。
不動産は、財産のひとつとして、清算価値保障原則(破産をした場合の財産=清算価値以上の額を弁済するというルール。)とのかかわりで問題となります。

個人再生での清算価値の計算において、破産における自由財産拡張対象財産は、99万円まで控除できます。破産と平仄を合わせるためです。
不動産は自由財産拡張対象財産ではありません。不動産の価値がそのまま清算価値に加算されます。
最低弁済額が大きくなる可能性があります。弁済可能な再生計画案を作成する見込みがなくなり、個人再生を断念するケースもあります。

なお、住宅ローン付の自宅不動産がある場合、自宅を維持するために住宅資金特別条項を利用した個人再生が選択されることが多いです。その場合も、不動産価値が住宅ローンよりも大きければ、価値が超過する分(余剰価値)が清算価値に加算されます。

2.個人再生委員が選任されるか

個人再生において個人再生委員が選任されることがあります。

具体的な選任基準はありません。当職が経験した中では、破産でいう否認対象行為が目立つケース、住宅資金特別条項適用の判断が難しいケース、履行可能性その他要件を満たすか判断が難しいケース、債務が多いケース、弁護士が代理しておらず本人の手続理解が乏しいケースなどで個人再生委員が選任されます。
個人再生委員が選任された場合の追加予納金は20万円が標準です。

清算価値保障原則との関係で申立人側は不動産価値を小さく主張する傾向があります。
不動産価値の評価が難しいケースや微妙なケースでは、個人再生委員が選任される可能性が高いでしょう。

売れない不動産とは

1.売却できる不動産

不動産(特に宅地)は基本的に売却が可能と見られます。

共有不動産はどうでしょうか。他の共有者が購入するかもしれませんし、共有持分だけでも購入する業者は存在します。共有であることだけで売却ができないとは見られません。
市街化調整区域の不動産でも売却は可能です。
特殊な不動産(農地、元旅館など)でも売れないとは限りません。

なお、売却できる不動産であれば、任意売却を試みてから破産を申し立てる選択肢も出てきますね。売却代金を有用の資(破産費用、どうしても必要な生活費、引越代等)に充てることは許されます。親族に買い取ってもらうこともできますね。勿論、直前の不動産売買は弁護士の関与の下で問題なく進めなければなりません。

2.売れない不動産

上述のとおり不動産は基本的には売却可能と見られます。客観的・抽象的に不動産の売却可能性がないと説明することは意外に難しいです。

ただ、実際に売れない不動産は珍しくありません。
共有持分権は、他の共有者か特別な不動産業者しか購入しません。
農地は親族、小作人、農業委員会からの紹介者でないと売れないですね。元旅館な元ガソリンスタンドなど特殊な物件はタイミングよくニーズが存在しないと売買が長期化します。
特殊な事情がなくても、買取りニーズがない地域で値段を下げても買い手が付かないということも珍しくありません。
具体的に動いてみて売れないという不動産はけっこうあります。

売れない不動産も倒産手続では財産として見られます。どのように取り扱われるかを見ていきましょう。

破産手続で売れない不動産はどうなるか

1.同時廃止事件での扱い

売れない不動産であると申立時に認められるケースでは、同時廃止基準により、同時廃止事件になります。
もちろん、ほかに管財事件になる理由があれば別ですが。

同時廃止とは、簡単にいうと管財人報酬等手続費用を賄える財産がないから破産手続開始決定と破産手続の廃止決定を同時にする手続です。免責手続のみ残り、財産整理手続(破産管財人により管理処分手続)は省略されるわけです。
そのため、同時廃止手続では、不動産は処分されず、申立人所有のまま変わりません。

もちろん、不動産に担保がついている場合には、破産手続外で処理がなされます。担保権者による不動産担保の実行(競売です。)がなされることになります。担保権者から競売の前に任意売却の協力を乞われることもあります。

2.破産管財人の処理の目安

管財事件では、破産管財人が不動産を不動者業者を通じて売り出すのが基本です。
勿論、物件に合わせて売り方も変えます。賃借人、隣地所有者などと直接交渉することもありますし、入札により売買することもありました。

共有物件の場合は、ほぼ例外なく他の共有者(主に親族でしょう。)に買取りを打診します。
予め他の共有者に話をしておいた方がいいと思われます。
勿論、共有持分権なので売買価格は融通がききます。

破産管財人が、様々な方法で売却を試みて、それでも売却が見込めないときは、財団からの放棄を検討します。不動産が財団から放棄されれば破産者の手元に残ります。
放棄の際には、破産者から任意でいくらかの金銭を財団に組み入れてもらうこともあります。

なお、破産管財人は、年末に向けて放棄を検討する傾向にあります。固定資産税・都市計画税は1月1日の所有者名義人に賦課されるため、翌年度の税金を財団で税金を負担しないよう12月31日までの放棄を考えます。ちなみに、放棄対象が自動車であれば4月1日になります。

個人再生で売れない不動産はどうなるか

1.清算価値の算出

個人再生手続では、不動産の価値が清算価値算出の過程で問題となります(清算価値によって最低弁済額が変わりえます)。
客観的な資料を基に不動産価値を裁判所に説明します。基本的には査定書を要求されます(書面で査定をくれない業者さんも多くて査定書の取得はなかなか面倒なのですが)。

裁判所は、不動産の価値がゼロとはなかなか認めてくれません。価値がない、あるいは小さいと主張する申立人側は、それなりの資料を提出して裁判所を説得しなければいけません。価値評価に問題があるとされれば個人再生委員が選任される可能性があることは上述しました。

2.個人再生委員の意見

個人再生委員は、清算価値の算出が適切になされているかもチェックをします。
売れない不動産として価値がない、あるいは小さいと主張されているケースでは、その評価の妥当性をチェックし、追加の資料提出を求めるなどします。個人再生委員をやっていると、表紙だけの査定書、あるいは1社だけの査定書では、その評価額に納得感がないケースもあります。
個人再生委員は、場合によって、個人再生委員から清算価値算出シートの訂正や弁済計画の変更を指導します。

まとめ

1.自己破産を検討する場合

自己破産では不動産があれば管財事件になるのが基本です。
不動産があっても同時廃止事件になるケースが同時廃止基準に定められていました。ただし、「明らかに売却可能性が乏しい」と認められるのは大変です。

管財事件では原則として破産管財人が不動産の売却を試みます。共有物件の場合は他の共有者に打診がなされます。どうしても売却が見込まれないケースでは、財団から放棄され、破産者の手元に残ることになります(担保が付いている場合には担保権者との関係で処理されます)。

あなたのケースでは同時廃止事件なのか管財事件なのか、管財事件であれば破産管財人がどう不動産の売却に動いてどういう落としどころになると見込まれるか、倒産事件に詳しい弁護士と十分に打ち合わせをして準備してください。

2.個人再生を検討する場合

個人再生では不動産が処分されることはありません。不動産の価値は清算価値に計上され、最低弁済額を画することになります。不動産は破産における自由財産ではないのでその価値は清算価値に直接加算されます。

清算価値を算出する過程で、価値をゼロとする、ないし価値を小さく評価する場合では、裁判所を納得させる資料の提出を要します。不動産の評価が問題となるケースでは個人再生委員が選任される可能性があります。

あなたのケースでは、不動産の評価がどのようになされ、その結果として個人再生手続の選択が可能なのかどうか、倒産事件に詳しい弁護士と十分に打ち合わせをして準備してください。

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弁護士 仲田 誠一(広島弁護士会所属)

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◆経歴
1996年4月~ あさひ銀行 融資、融資管理、企業再生、法人営業等
2002年5月~ 東京スター銀行 経営管理、内部監査、法人営業等
2004年4月~ 広島大学大学院法務研究科
2008年12月 弁護士登録
2017年~各前期 広島大学大学院客員准教授(税法担当)
◆資格
弁護士
認定経営革新等支援機関(中小企業庁)
公認内部監査人試験合格

民法改正講座13 【身近な法律知識】

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。
 
今回は、個別の契約類型の話に入ります。
講学上は、契約各論と呼ばれます。
 
【贈与に関する改正(民法549条から551条)】

めぼしい改正点は、贈与者の担保責任が削除され、贈与者の引渡義務に関する規定に改められたことだけです。

贈与者は、目的物あるいは目的である権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定されます。
当事者の意思推定規定です。

以下は、売買契約に関する条文の主な改正点です。
 
【瑕疵担保責任に関する改正】

売買などの有償契約の担保責任については、法定責任説(法律が特別に定めた責任)と契約責任説(契約上の責任)の考え方があり、従来は法定責任説をベースに解釈されてきました。

改正により、契約責任説に則った条文に変更されました。

そのため、「瑕疵」という言葉がなくなり、「契約の内容に適合しない」という言葉になっています。
 
【権利移転の対抗要件に係る売主の義務(民法560条)】

売主は買主に対し、登記等の対抗要件を備えさせる義務を負うことが明文化されました。
当然ですね。
 
対抗要件とは、その権利を主張するための要件です。
不動産なら登記、普通自動車なら登録、債権なら譲渡通知、動産なら引渡しですね。
 
【買主の追完請求権(民法562条)】

契約責任説の観点から、目的物が種類、品質又は数量に関して契約内容に適合しないものであるときは、買主は、修補請求、代替物の引渡し請求、不足分の引渡し請求(これらを追完請求権と呼びます)ができる旨定められました。
 
これに対し、売主は、買主に不当な負担を課するものではない限り、買主の請求した方法による追完(修補を請求されたが代替物を引き渡すなど)ができます。
 
勿論、契約不適合が買主の責任である場合には、買主は追完請求をすることができません。
 
【買主の代金減額請求権(民法563条)】
契約不適合のケースの買主の代金減額請求権の規定が定められました。
 
追完が不能であるとき、追完拒絶の意思が明確に表示されたとき、特定の日時・期間に履行しなければ契約目的を達成できない契約のその時期の徒過、以外のケースでは、相当の期間を定めて追完の催告をした上で、不適合の程度に応じた代金の減額を請求することができます。
 
このようなケースでは解除もできますね。解除しないで代金減額請求もできるということです。
  
【買主の損害賠償請求及び解除権の行使(民法564条)】

担保責任(追完請求権、代金減額請求権)が発生する場合でも、債務不履行による損害賠償請求、解除ができることが定められています。
契約責任説によっています。
 
また、以上の3条は、物ではなく権利の契約内容の不適合のケースへも準用されます(民法565条)。
 
【目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限(民法566条)】

種類または品質(数量不足は一般の債務不履行の期間制限です。)に関して契約内容不適合のケースでは、買主はその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければ、追完請求権、代金減額請求権、損害賠償請求権、解除権を保全できません。

権利行使ができなくなるということですね。
期間内に通知をすれば、個別の請求権は一般の消滅時効に服します。

ただし、売主が引渡しの時に不適合を知りあるいは重大な過失によって知らなかったときは、上の期間制限に服しません。
 
【目的物の滅失等についての危険の移転(民法567条)】

目的物の引渡し後、または買主の受領遅滞(履行の提供があったにもかかわらず受領しない場合)後に、当事者双方の責めに帰すことができない事由により目的物が滅失・毀損した場合は、買主がその危険を負担する旨明文化されました。
 
買主が危険を負担する場合、追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除はできませんし、代金の支払い義務を免れることはできません。
 
目的物の引渡しあるいは受領遅滞を危険の移転時期としたものです。
 
次回も売買関係の続きからです。

ここら辺は大きく変わっているところで、他にも細かい変更がありますが大所だけ挙げています。
なお、今回の売買契約の条文は、多くが他の有償契約にも準用されます点をご注意ください。
有償契約の総論規定のような性質の条文なのです。
 
お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
https://www.nakata-law.com/
 
https://www.nakata-law.com/smart/


民法改正講座12 【身近な法律知識】

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。
 
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。
 
今回は、契約の総論の続きです。
 
【催告による解除(民法541条)】
元々は履行遅滞(期限になっても債務を履行しないこと)の解除に関する条文でしたが、履行遅滞、不完全履行(債務の本旨に従った履行をしないこと)、履行不能(債務が履行できなくなったこと)の債務不履行共通の催告による解除の条文になりました。
 
債務の履行がない場合には、相当の期間を定めてその履行を催告し、その期間内の履行がないときには解除できます。
 
相当期間は、感覚的には10日間から2週間でしょうか。
催告と同時に履行がないときの解除も合わせて内容証明郵便で通知することが多いですね。
停止条件付解除通知といいます。
 
新法では、解除の要件として債務者の帰責事由を外しています。
相手方へのペナルティの問題ではなく、契約関係からの離脱の問題とされたからです。
 
ただし、不履行が契約及び取引通念に照らして「軽微」であるときは、解除ができないことも定められました。
そのケースでは、損害賠償請求ができるだけです。
 
【催告によらない解除(民法542条)】
上述の催告をすることなく解除できる場合が整理されました。
 
催告をしないで契約の全部を解除できるのは、
債務の全部の履行が不能であるとき(全部履行不能)
債務者が債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき
一部履行不能あるいは一部履行拒絶のケースで残存部分だけでは契約目的を達成できないとき
特定の日時または一定の期間内に履行しなければ契約目的を達成できない場合に履行がないとき
催告をしても契約目的を達成する履行がなされる見込みがないことが明らかであるとき
です。
 
催告をしないで契約の一部を解除できるのは、
債務の一部の履行が不能であるとき(一部履行不能)
債務者が債務の一部を拒絶する意思を明確に表示したとき
です。
 
催告をしても意味がないケースですね。

こちらも、解除の要件として債務者の帰責性が外されています。
 
【債権者の責めに帰すべき事由による場合(民法543条)】
債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由による場合は債権者は解除することができないことが明文化されました。
当然ですね。
 
【定型約款(民法548条の2~548条の4)】
約款取引というものがあります。
ガスとか電気とか預金など契約時に具体的な交渉により取引条件が合意されることなしに約款どおりの契約をするケースですね。
そのうち「定型取引約款」について、民法の条文に取り込まれました。
 
定型取引(不特定多数の者を相手方として行う取引)の約款は該当するものと考えていいでしょう。
事業者間取引の約款や契約書は該当しないとされています。
 
約款を読んで契約を申し込むことはあまりないかもしれません。
内容を知らない事も多いでしょう。
しかし、定型契約をする合意をしたとき、あるいは定型約款を準備した者が契約内容とする旨を表示していたとき、は約款が契約の内容となります。
ただし、信義則に反し相手方の利益を一方的に害する条項は合意がなかったものとみなされます。
 
定型約款準備者には定型約款の内容の表示義務が課されます。
 
次の一定の場合には、定型約款の変更を相手方との合意なしにすることもできます。
変更が相手方一般の利益に適合するとき
変更が契約目的に反せず、必要性・相当性・変更がある旨の定め有無等の事情に照らして合理的なものであるとき
です。
一方的な変更が認められる場合でも、変更について周知義務が課されています。
 
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広島の弁護士 仲田 誠一
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民法改正講座11 【身近な法律知識】

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。
大事な法律なので、改正点をかいつまんでですが(実務上あまり変更がない点は極力飛ばして)説明させていただいております。
 
今回は、契約の総論です。
 
【契約の締結及び内容の自由(民法521条)】

契約の自由が明文で定められました。
契約締結の自由、相手方選択の自由、方式の自由、内容決定の自由は元々認められている原則です。
契約をするかどうか、誰と契約するか、どのような形式で契約するか、どのような内容で契約するか、は本来自由です。
 
勿論、法律に反しない限りです。

例えば、公序良俗に反する内容の契約は無効になります。
また、消費者契約法など特別法にて、契約の効力は制限されています。
 
自由だからこそ、契約締結は慎重にしなければなりません。
契約を締結してしまうと、その効力を覆すことは大変です。

訴訟では、争いの解決は契約条項の解釈によることが多いです
一度立ち止まって考えてから、内容をきちんと確認して契約を締結してください。
 
【契約の成立と方式(民法522条)】

契約は、申込に対して相手方が承諾したときに成立する旨明文化されました。
申込みに際して、承諾の期間を定めたり、撤回する権利を留保することは勿論できます。
民法523条で明文化されました。
 
また、契約の成立には、法令の特別な定めがない限り、書面の作成その他の方式を要しないとする方式自由の原則も明文化されました。
例えば遺言は、要式行為といって、方式が法定されています。

 
【承諾の期間の定めのない申込み(民法525条)】

申込みは承諾の通知を受けるのみ相当の期間を経過するまでは撤回できないです。
ただし、申込者が撤回をする権利を留保した場合は撤回することができます。
 
これに対し、対話者に対する申込みは、対話が継続している間は撤回できます。
対話中に承諾の通知を受けなかったときは反対の表示をしない限り申込みの効力を失います。
 
契約の成立の有無及び時期は裁判でよく争われますが、契約書などの書面が作成されていないケースでは、様々な間接事実が考慮されて判断されることになります。
 
【同時履行の抗弁(民法533条)】

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができます。
これを同時履行の抗弁といいます。
 
双務契約は通常の契約ですね。
一方が他方に義務を負うだけではなく、売買の引渡義務と代金支払債務のように双方が義務を負う契約です。

実際にはどちらかが先履行である旨を定めることも多いです(代金後払い、代金先払いなど)。
気を付けてくださいね。
 
【債務者の危険負担等(民法536条)】

当事者双方に責任なく債務の履行ができなくなったとき(履行不能)、債権者と債務者のどちらが負担をするのかという問題を危険負担の問題といいます。
従来は、危険は債権者が負担するという債権者主義が定められていましたが、改めました。
不合理だからです。
 
新法では、債権者が反対給付の履行を拒むことができます。
ただし、契約関係から離脱するには、理屈上、契約解除をする必要があります。
 
勿論、債権者の責めに帰すべき事由による履行不能のケースでは、債権者は反対給付の履行を拒むことができません。
当然ですね。
 
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破産と生活保護費の返還債務 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。
 
今回の借金問題コラムでは、生活保護返還債務と破産の関係のお話です。
 
破産をお手伝いするときに、生活保護費の返還を求められている、あるいは返還請求された金額を少しずつ返還されているという方がいらっしゃいます。
 
働きながら保護費を受給していた方、各種年金・手当を受給しながら保護費を受給していた方に多いでしょうか。
収入認定との兼ね合いで調整が必要なケースですね。
 
生活保護を脱した方、現在も受給中の方、双方ともあり得ます。
 
先日申立てた自己破産案件も保護費の返還債務を負っているケースでした。
 
以前は、返還債務を破産債権に計上しておけば、事足りました。
 
生活保護費の返還請求権も、一般的な金融機関からの借り入れと同様、一般債権の扱いでしたので、破産免責の対象となり、免責決定を受ければ支払い義務を免れることができていたのです。
 
しかし、法律の改正があったのですね。
 
生活保護法63条に基づく返還請求権が、平成30年10月1日施行の改正生活保護法により、国税徴収法の例により徴収することができる債権、すなわち破産法上の財団債権、非免責債権になりました。
 
国税徴収法の例により徴収できるということは、税金と同じ扱いです。
 
改正の際には各弁護士会も反対意見を出していたような気がします。
 
破産をしても税金と同じ優先される債権になり、免責を得ても支払義務から免れられない債権になったのですね。
 
非免責債権ですので、管財事件で財団債権として破産管財人が支払ってくれるケースを除いて(財産がある程度あるケースに限ります)、役所と相談して支払い方法を協議しなければいけません。
 
なお、個人再生事件では、役所との協議結果を裁判所に報告しなければいけません。
 
生活保護法63条に基づく保護費の返還請求のことをお話しました。
 
これに対し、不正が悪質な場合の78条の徴収金は、先立つ平成26年に既に財団債権化、非免責債権化が行われています。
 
債務整理(任意整理個人再生自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
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会社も同時に破産申立てをする必要があるか [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。
 
会社代表者あるいは会社代表者をしていた方が自己破産を申し立てるとき、会社も同時に自己破産を申し立てないといけないのかどうか、今回の借金問題コラムはそんなお話です。
 
個人と法人は法律上別人格です。
 
理論上、個人だけ、法人だけ破産を申し立てることは許されるはずです。
 
ところが、会社代表者が自己破産を申し立てる際には、法人の自己破産も申し立てるように裁判所から勧奨されます。
 
なぜなのか裁判所に聞いたことがあります。

法人と個人は財産が混同する危険が高く、破産管財人が個人の財産調査だけするのでは不十分だから、法人も同時に申し立ててもらい会社財産も調査することができるようにするのだと説明されました。
 
他に、代表者個人とほぼ債権者が一致することが多い会社を放置するのは望ましくないとの説明もあるようです。
 
法律上強制的に会社あるいは法人の破産申立てをしないといけないわけではありません(破産法にそんなことは書いていませんから)。
 
しかし、強く会社の申立てを要請する裁判所が多いようです。
 
広島本庁でも、会社あるいは法人の経営者ないし数年前まで経営していた方が自己破産を申し立てると、個人と法人の同時申立てを要請されます。
時期によってその強弱は異なるかなあという実感です。
 
代表者個人しか破産申立てをしない理由は、
1 法人破産は多額の予納金が必要だが用意できない
2 あるいは既に事業廃止しており資料が散逸しており申立て書類が作られない
の2つでしょうか。
 
裁判所に要請された際には、そのことを話すのですが裁判所はなかなか引き下がらない印象です。

1の予納金ですが、法人が動いていない、財産も残っておらず、破産管財人業務の負担がないというケースでは減免してくれます。
 
極端なケースですが、「追加の予納金は要らない。」とまで言われました。
個人で用意した予納金を法人と個人で割り振るのですね。
 
2の書類がないという点も、「調査・書類は不十分であってもかわまないから申立てだけはしてくれ。」、とまで頼まれた経験もあります。

本当に簡単な書類で申し立てたことがあります。
 
基本的には代表者が破産をするときには法人も同時に申し立てしなければならない、ただし予納金の額や申立て準備については相当融通も利く、と考えた方がいいでしょう。
 
勿論、会社の事業廃止から5年超経ているような場合は同時申立てを要請されません。
そもそも同時廃止で処理されることも可能です。

ただし、その場合でも最後の2期分の決算書の提出は求められますね。
                    
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