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自己破産等の申立て直前の財産処分 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一による借金問題コラムです。

 

今回は、債務整理のうち、自己破産個人再生で問題となり得る申立て直前の財産処分についてお話します。

 

破産や個人再生等をする場合には、様々な理由で処分行為を行うことがあります。身辺整理も必要ですからね(特に、法人破産の場合には、いつもどこまで処分をして整理するか悩みます)。

整理をして申立てをしなければならない。一方では、処分行為の中には自己破産等手続の中で問題視されることもある。今回はそのようなお話です。

 

直前の財産処分が問題となるのは、破産における否認対象行為かどうか、あるいは個人破産における免責不許可事由に該当するか、という点になります。
個人再生においても、破産における否認相当行為があった場合には、清算価値に処分した財産が計上されます。

具体的には、直前の処分行為について、不当に廉価な財産処分をしていないか、贈与行為ではないか、財産逸失行為に該当しないか、費消しやすい財産に形を変えて費消したのではないか、特定の債権者に対する不公平な弁済行為になっていないか、などが問題となります。

 

贈与行為等無償行為、偏波弁済(特定の債権者だけに対する弁済)行為は、基本的に、否認対象行為あるいは免責不許可事由になります。
できるだけ避けなければなりません。

 

贈与行為でよく問題になるのは交際相手への贈与、偏頗弁済でよく問題になるのが親族への弁済ですね(よくあるので気を付けてください)。
 

なお、偏波弁済では、給与天引きの弁済も問題となります。弁護士が受任通知を送っても破産開始決定等がないと天引きを止めないケースが結構あります。
理屈上は偏波弁済行為に当たり得るのです。
破産管財人から弁済額の返還請求をされることがあります(実際に破産管財人として請求をしたこともあります)。

 

勿論、贈与行為でも、扶養義務者の被扶養者に対する扶養義務履行行為とみられる行為は大丈夫です。程度問題です。

 

不動産の処分はよくお手伝いしますが慎重に行います。
 

自己破産申立費用を捻出するための売却、抵当権者に促されて行う任意売却のケースが多いでしょうか。


中には、なんとか不動産を残したいということで、親族間で売買をすることもあります。


積極的に問題がない行為ですとは申し上げられないですが、処分行為があったこと自体で、即、管財事件になったり、あるいは免責不許可事由否認対象行為となったりするわけではありません。
 

妥当な内容の売買で、かつ代金の管理・費消も妥当であると認められれば問題はありません。

裁判所に必ず妥当性を確認されますので、できれば弁護士が関与した方がいいです。

弁護士が、
適正な売買価格かどうか、

売買代金をどのように管理したか(弁護士が管理した方がベターです)、

何に費消していくら残っているのか、

などをきちんと説明します。
 

換価した結果の金銭の費消は、弁護士費用、申立て費用、必要最小限度の生活費などに対するものが許されます。
自由に使っていいわけではありません。

 

車の処分もありますね。


駐車場や税金の問題で維持できないケースが典型でしょうか。

こちらも適正価格か、売買代金額の管理が肝要です。売却する前に車検証の写しを取っておくこと、走行距離等車の状態を写真に残しておくこと、できれば査定書を取っておくことも大事です。

 

中には、なんとか車を残したので親族間で売買をするということもあります。


単純な売買や、所有権留保債権者から名義変更を受ける形での売買もあります。

管財事件にならないために車を現金化するという目的(現金化すると同時廃止管財事件の振り分け基準によると同時廃止の可能性が高まり得る。)もある場合もあるかもしれません。


車の処分も裁判所に妥当性を確認されます。説明が必要なので、弁護士に相談しながら進めた方がいいでしょう。

 

なお、直前の現金化は、財産の性質をもともとの財産として見て自由財産拡張対象の判断がなされるリスクもあります。
そもそも自由財産拡張対象財産して認められない財産-不動産、株式など-を現金化しても、もともとの財産の形で残っていると仮定して自由財産拡張対象から外されるリスクです。
ケースバイケースの判断です。

 

保険の解約、保険契約者貸付も最近よく見ます。
 

こちらは少なくとも広島ではある程度許されています。

保険の財産評価は解約返戻金額で行うのですが、契約者貸付を受けているとその額を控除した金額になります。解約したら現金預金としての評価ですね。
広島本庁であれば、管財事件になる基準が保険解約返戻金だと20万円、現預金だと50万円です。
そのままでは管財事件になるけれども、保険を解約する、あるいは契約者貸付を受けるだけで、管財事件にならなくて済むケースがあるのです。

 

財産処分のお話をしてきましたが、具体的に当該財産の処分をする方がいいのかどうか、する場合の妥当性を保つにはどうしたらいいかの判断は、ケースバイケースで行う必要があります。

一概にこのような行為はよいと判断することができず、処分の必要性と考えられるリスクを考量して判断しなければいけません。

 

お早めに弁護士に相談し、計画的に物事を進めることをお薦めします。

 

債務整理(任意整理民事再生自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

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所得税法のお話に入ります [税法の話4]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

所得税法のお話に入りましょう。


所得税とは、文字どおり、所得にかかる税金ですね。
 

所得税のメリットは、担税力に応じた課税の実現という租税公平主義の要請に適合することと言われます。所得が多い人が少ない人よりも支払う税金が高いですからね。


さらに、日本の所得税が典型的ですが、担税力の差異に着目した所得分類が可能(所得の種類によって税金を変えられる)、担税力に影響ある人的要素人的控除に反映できる(〇〇控除などですね)、担税力を表す所得金額の大きさに応じて累進課税が可能(日本は超過累進課税です)ということも挙げられています。


所得税のデメリットは、正確に所得を捕捉するという税執行上の困難性が挙げられています。そこで、納税者番号制度導入云々の話になるのですね。

 

【課税単位】

所得税は、個人単位で課税されます。昔のように戸単位ではないのですね。


個人単位で課税されるとして、所得税は累進課税ですから所得が大きくなればなるほどその分税率も高くなります。
結果、1000万円の所得があるとして、それを
1人の所得として申告するよりも、2人の所得に分散して申告した方が(例えば500万円ずつ)、各人の所得税率は下がりますから全体の所得税は小さくなります。

同族経営の会社は、社長さんだけ役員報酬をたくさんもらうよりも、家族の役員報酬にも回した方が、所得税は安くなります(配偶者を役員にして相応の報酬を出しているケースでは離婚の際には困ったことになりますが)。
勿論、役員報酬の金額には合理的根拠も必要でしょう。

 

所得の分散が節税になるのですね。そこで、不当な所得分散を防ぐべく手当もされています。


事業の経営主体に事業からの所得が帰属するという事業主基準で判断されます。

原則として家族の1人が得た収入についてはその者にのみ課税をして、課税後の家族内の金銭等の移転について税法は関知しない建前になっています。

家族間での生活費の支払いや利益提供が行われても支払者側では控除できず(所得税法45条の家事費・家事関連費)、受領者側でも課税されません(所得税法9条、相続税法21条の3)。

 

親子歯科医師事件と呼ばれる高裁判決があります。
親子で歯科医師を開業しており、子は自分の事業として申告したケースですね。
事業主基準(が前提とされて、父親の単独事業に子供が参加した場合、特段の事情がない限り、父親が経営主体で子供はその従業員であるとされました。世帯の区別、資金の流れ、事業の歴史的経緯等を総合考慮して父親を事業主と認定しています。       

 

【所得税計算の仕組み】

所得税計算は所得税法第2条第1項の定めているとおりです。

① 所得分類と金額計算

  後述するように、所得を種類に分けて計算するということです。

② 損益通算・繰越控除

  許された損益通算、繰越控除をします。

③ 所得控除により課税所得(総所得・退職所得・山林所得)金額を計算

④ 税率適用による税額計算 
  累進超過課税になります。所得金額毎に税率が高くなります。単純な累進課税ではなく、低い所得部分は低い税率、高い所得部分は高い税率というような計算になります。
  法人税は違いますね。

⑤ 税額控除による年税額算出


納付すべき税額は、年税額-源泉徴収額-予定納税額ですね。

確定申告書のとおり金額を記載していけば上記の計算ができるようになっています。

 

損益通算は、マイナスを他の所得から控除できる制度だと思ってください。

不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得(但し特例法の制限あり、土地建物の譲渡損は他の所得との損益通算禁止等)で認められています。

 

所得控除と税額控除は紛らわしいですね。

所得控除は、納税者の個別の事情に応じて、総所得金額、退職所得金額、山林所得金額から控除することが認められているものです。あくまでも所得の控除です。生命保険料控除などです。

税額控除は、所得控除後の各種課税標準に対して税率が適用された後の金額からさらに政策的目的などから税額を控除するものです。税額そのものが控除されます。

当然、税額控除の方がありがたいですね。

 

課税標準という言葉が出てきました。課税標準とは、課税物件を具体的に数量や価格で示したものです。

所得税は所得(総所得金額、退職所得金額、山林所得金額)です。

 

所得分類という話も出てきました。


所得税法は、所得を10種類に分類しています(所得税法23条~35条)。


各所得の担税力に応じた課税をして租税公平主義の実現を図る趣旨です。所得金額が同じでも種類によって税金が違うのですね。

したがって、ある所得がどの種類の所得に該当するかは最大の関心事になります。所得税紛争の多くは、納税者が有利な所得で申告し、課税庁により不利な所得で更正処分を受けるものです。

一般に、勤労性所得(給与、退職)⇒資産勤労結合所得(事業、不動産)⇒資産性所得(利子、配当)の順に担税力が高い、すなわち税金が高いと言われています。

これに対し、法人税については所得分類はなく一律課税です。

会社の経営をなさっている方は、所得税と法人税の違いを踏まえて事業承継対策や節税を考えないといけません。
 
 

次回から個々の所得の話をしていきます。お話が少しは面白くなると思います。

 

お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

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事業承継、同族会社株式の注意点 [企業法務]

広島県広島市の弁護士仲田誠一による企業法務コラムです。

 
今回は事業承継に関連する同族中小会社の株式の相続のお話です。
遺産分割の方法、遺産分割までの相続共有株式の権利行使、遺留分制度の改正などをお話します。


株式公開をしている大企業と異なり、同族中小企業のオーナー株主の相続が発生すると事業承継問題が顕在化します。

相続にあたり同族会社の株式も遺産分割の対象となる相続財産になります。会社の所有者は株主です。オーナーチェンジが起きるのですね。

 

同族会社の株式の帰趨は経営権と直結する問題です。

株式を少なくとも過半数保有しなければ、他の株主の協力なしに取締役選任もできません。
自分の意思で経営をしていくことはできません。

後継者にきちんと株式を移行させないといけませんね。

また、前オーナーに株式の他に目立った相続財産がないケースでは、遺産分割協議において後継者が株式を得る代わりに他の相続人に対して高額の代償金を支払わなければならないこともあります。

 

仮に株式を分割相続した場合、経営をしない相続人は、お金に変えられない株式に対して相続税だけを支払わないといけません(驚くほ高額な評価がされる会社もあります)。

同族中小企業の株式は、ほぼ例外なく譲渡制限が付いており、かつ購入ニーズもMAの場合を除きないでしょう。
 

遺言がある場合には遺留分の話ですね。


時限立法の事業承継特例税制は、税金面の話です。
事業承継対策は、原則を押さえないといけません。


株式は現代表者あるいは後継者だけに集中しておく、

かつ集中した株式を後継者に生前あるいは遺言により移転しておく
といった準備をすることが肝要です。

その上で、事業用資産・株式は後継者に、それ以外を他の相続人に、を基本にスムーズに承継させる必要があります。

 

実際に、相続の場面において、同族会社株式がどう扱われるかなどをお話しましょう。

 

まず、遺産分割の方法のお話です。

 

流れは、遺産分割協議 ⇒ 調停 ⇒ 審判と続いていきます。

 

遺産分割協議において、後継者が株式を単独取得する合意ができれば問題はありませんね。
会社の所有者は株主です。後継者が単独取得するべきでしょう。

 

ただし、財産的評価の問題があります。
協議段階では、株式の相続税評価を参考に協議されることが多いのではないでしょうか。
後継者が株を取得しても、他の財産を全く承継できない、あるいはそれに加えて代償金を支払わないといけないケースもあります。

 

代表者は会社の債務の連帯保証も負います。
連帯保証債務は相続時に存在した債務(現実の債務)は各共同相続人にその相続分に応じて承継されます。

後継者としては、銀行と折衝して、相続債務である連帯保証債務を免責的債務引受(他の相続人は債務を免れる形の債務引受)することを条件に他の相続人の譲歩を取り付けるべきだと思います。
誰しも保証債務は負いたくありません。実際に経営をしていない相続人はなおさらです。

 

調停も合意手続ですので、遺産分割協議と同様、話し合いです。
ただ、裁判所が妥当な線で調停成立を働きかけてくれる期待があります。

 

審判に至った場合は、裁判所が遺産分割内容を決めます。


後継者であること、後継者に株式を集中しないと困る事情等をきちんと説明すれば、株式は後継者である相続人の単独取得という内容で審判を出してくれる可能性が十分あります。
機械的に法定相続分に応じて分けるということではありません。

 

当事者の意見も重視されると思いますが、経営をしていない相続人が株式の現物を欲しいとは言わないでしょう。

その代わり、後継者は資金負担への準備が必要になる場合があります(株に価値があり他の遺産で賄えない場合など)。

評価額は、裁判所が決めます。鑑定評価に付されるケースもあります。

 

次に、遺産分割が完了するまで(あるいは調停が成立するまで、審判が確定するまで)、相続株式の権利行使をすることができるのは誰かの問題です。

 

株式は、帰属が確定するまで共同相続人による準共有になります(株式は、物ではないので物に使う共有という言葉を使わず準共有と呼ばれます)。

 

権利行使に関しては、会社法106条にて、相続人らが権利行使者を指定し、会社に通知するというルールが定められています。

 

判例によって、権利行使者の指定は、原則として持分の過半数で決するとされています。
特段の事情がない限り株主権の行使は共有物の管理行為とみられているわけです(共有分の管理行為は持分の過半数で決します)。


過半数で決められずに権利行使ができなければ困りますね、少数株主による株主総会の開催がなされてクーデターが起きることもあり得ます(勿論、株主総会の定足数も関係してくる問題です)。

 

会社法106条但し書では、権利行使者の指定・通知がなくても会社が同意すれば相続人による権利行使ができるとされています。

会社が同意する場合の権利行使のルールについても平成
27年に最高裁判例が出ました。

会社が権利行使を許す場合であっても、民法の共有の規定に従い持分の過半数で決めなければならないとされました。

結局は、相続共有株式については、後継者側の相続人で過半数持分を持っていない限り、権利行使ができません。
後継者グループで既に過半数の株式を持っているケースではいいですが、そうでない場合には困りますね。
例えば過半数が相続共有株式だと定時総会も開けなくなります。


定款に相続株式の相続分による単独行使を認める旨の定めをしておく対策も考えられました(そうであれば少なくとも相続株式全体が反対に回ることはなくなります)。
実際に、従前はそのようなアドバイスもしておりました。

上記判例の出現でその定款規定の効力が維持できるのかどうか危惧するところです。

 

勿論、経営権はく奪目的の、法の間隙を突く株主総会決議は、権利濫用としてその効力を否定される可能性はあります。
ただ、例外的に適用される理論ですので、事前にこのような問題が起きないように措置をしておくことが肝要ですね。

 

なお、遺留分制度の改正がありました。まもなく施行されることになります。


これまでは、遺留分減殺請求の制度でした。

遺言で全株式を後継者に相続させる旨を定めていても、その遺言が他の相続人遺留分を侵害する場合、遺留分減殺請求により当然に物権的効果が生じ(遺留分侵害にあたる株式が当然に遺留分請求者に移転し)、受遺者である後継者と遺留分減殺請求をした他の相続人の準共有状態が生じました。


しかし、改正民法1046条1項が遺留分減殺制度を遺留分侵害の金銭請求に変更しました。

遺留分制度によってはもはや株式の準共有状態が生じないことになります。経営の混乱は生じないことになりました。

ただし、支払請求に対応できる資産を後継者に準備しておかなければなりません。

 

顧問弁護士、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

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個人再生の概説 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

今回の借金問題コラムでは、債務整理のうち、個人再生のことを改めてまとめたいと思います。

個人再生は、少し理解がしづらいこともあって、制度自体の質問をよく受けます。

 

個人再生とは】

簡単に説明しますね。

個人再生とは、裁判所から認可された再生計画に基づいて、原則3年間(最長5年間)で一定の債務を弁済し(計画弁済額)、弁済し終わったところでその余の債務の免責を受けられる手続です。

元金カットが想定できない任意整理と、債務弁済責任を全て免れる自己破産との、中間的な効果のある制度だと思ってください。

 

【支払不能のおそれ】

個人再生は、支払不能のおそれが要件になります。
おそれなので、ある程度の債務があればここが問題となることはありません。

これに対して破産は支払不能が要件ですね。

支払不能というのは、期限の到来した債務を一般的・継続的に弁済できない状態をいいます。

弁護士が受任通知を出せば期限の利益は喪失されそれら債務の弁済期が到来します。
債務整理を受任する場合には、支払不能か支払不能のおそれは通常認められるわけです。

 

【どのようなときに個人再生手続を選択するか】

大きなくくりで5つ挙げられます。

 

1 支払不能の要件を満たさない場合


債務の額と収入の兼ね合いによります。自己破産ができないから個人再生を利用するという例です。
この観点から個人再生を選択する例はあまりありません。

 

2 住宅ローン付の自宅を維持したい場合


自己破産では住宅ローン付自宅を維持することはできません(残す方策が取れるケースは少ないです)。
個人再生では住宅資金特別条項(所謂住宅ローン特則)を利用すれば、住宅ローンの支払いを継続して自宅を維持しながら、他の債務の整理ができます。

個人再生の利用はこのケースが一番多いですかね。
 

ただし、別のコラムで詳細は説明しましたが、住宅資金特別条項はどんなときでも利用できるわけではなく、条件があります。
自宅の登記簿謄本とローンの契約書をお持ちになって弁護士に相談してください。

 

3 免責不許可事由の程度が重い場合


免責不許可事由の程度が重い場合も個人再生を利用する典型的な例です。

自己破産には免責不許可事由があります。ギャンブル、浪費などですね。最近相談が多いのがショッピング枠の現金化でしょうか。

そのような問題行動の程度が重いと思われる場合には管財事件の扱いとなる可能性が高まります。
最終的に免責不許可決定が出る例は稀ですが、手続が煩雑となり、申立費用は嵩みます。

これに対し、個人再生では、免責不許可事由はありませんし、個人再生委員が選任されて予納金が高額化する可能性も小さいです。

そのため、免責不許可事由の程度が相応に高いと考えられるケースでは、自己破産を選択するか個人再生を選択するか検討をしてもらっています。

 

4 資格制限に該当する場合


自己破産には保険外交員、警備員、証券外務員、宅建など、破産手続中に付けない職業が限定して規定されています。
資格制限にひっかかってしまうケースでは、そのような資格制限のない個人再生を利用して債務を整理することもありますね。

 

5 処分をしたくない財産があるとき
個人再生では、担保が付いていない限り、財産を処分をする必要はありません。
清算価値だけ弁済すればいいだけになります。
考えられるのは自動車や保険のケースでしょうか。

6 個人再生を望まれる場合


このケースも少なくはありません。
依頼者さんが可能な限り債権者さんに支払いたいと希望されるケースですね。
勿論、無理な弁済計画を立ててはいけません。

 

個人再生の種類】
 

個人再生には、給与所得者等再生と小規模個人再生の2つがあります。


小規模個人再生を利用することが多いです。
なぜなら給与所得者等再生よりも返済額が少なくて済むケースがほとんどだからです。


個人再生は計画弁済額が重要です。いくら弁済してその余を免責してもらうかの話です。

小規模個人再生での最低弁済額のルールは、

1 債務額の5分の1(と100万円の大きい方)

ただし、100万円超1500万円以下の債務額のケースです。
ほかに、
100万円以下ならその額、
3000万円以下であると300万円、
5000万円以下であると10分の1
と債務額によって定まっています。


2 清算価値


の大きい方となります。


財産がそれほどなくて借金が400万円だと、最低弁済額は100万円ですね。それを原則3年で弁済します。


債務が500万円超ある場合には、最低弁済額は債務額に応じて増えるわけです。
 

ここで債務とは遅延損害金も含む債務と思ってください、申立てが遅くなると最低弁済額も増えるケースにご注意を。
 

一方で、財産がそれよりも多いと評価される場合にはその財産評価額(正確には清算価値)以上の弁済を計画しないといけません(清算価値保障原則)。
ただし、自己破産における自由財産拡張対象と認められる財産の額は清算価値から控除できます。

清算価値が自由財産拡張対象と認められる金額を削っても150万円の評価額があれば、債務が400万円であっても100万円ではなく150万円を弁済します。

 

これに対し、給与所得者等再生は、債権額の基準及び清算価値保障原則に加えて、可処分所得の2年分が最低弁済額を画します。

可処分所得はその計算式が定められています。
手取収入から費用額を差し引いて可処分所得を算出する計算です。
手取収入は総収入から所得税、住民税、社会保険料しか控除できません。
費用額は、実費ではありません。債務者の収入と年齢、被扶養者の数と年齢によって、機械的に決まっており、実際より低いかもしれません。

そのため、収入がある程度ある、被扶養者が少ないという場合には、最低弁済額が大きくなることが多いのです。

 

個人再生で注意をしておいた方がいいこと】
 

1 継続収入がないと個人再生は選択できません。
 

勿論、派遣や定期雇用でも、途切れなく稼働されている場合は個人再生を利用できます。

年金収入でも利用できるでしょう。

ただし、給与所得者等再生では安定的な収入をより厳格に吟味されます。そういった場合には、小規模個人再生を選択することになるでしょう。

 

2 先ほども述べましたが、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)が使えないケースもあります。その際には、別の方策を弁護士が捻りださないといけません。

 

3 小規模個人再生の場合、債権者の頭数の半数以上、あるいは債権額の過半数となる債権者が再生計画に同意しないと、再生計画が認可されません。
債権者が2社以内、あるいは債権額が過半数を占める債権者がいるなどの場合は、小規模個人再生の選択に躊躇します。
通常は反対されないのですが、最近反対意見を出す債権者が増えてきたような気がします。
名前は出しませんがショッピングサイト系とかです。昔は反対されても政府系金融機関ぐらいでしたが。


反対されて再生計画が認可されなかった場合、自己破産給与所得者等再生を申立てし直します。実際にそのような経験があります。


なお、給与所得者等再生は債権者の意見は関係なく裁判所が認めればいいのですが、上述のように要件効果が厳しいところです。

 

4 破産での否認対象行為(申し立て直前の贈与行為などですね)がある場合には、否認された際に破産管財人が取り戻すべき財産の額を、清算価値に計上することになっております。
清算価値が上がると最低弁済額が大きくなりますね。


免責不許可事由の程度が大きいために個人再生を利用するケースでは、否認対象行為にもなるケースがあります。
その場合には弁済額がどれくらいになるのかをよく吟味しないといけませんね。

 

個人再生委員が選任される場合】
 

自己破産であれば管財事件の可能性がある場合に個人再生を選択する可能性があることも述べました。


ただし、個人再生でも、個人再生委員が選任された場合には、高額の予納金が必要になります。20万円がスタンダードでしょう。


どのような場合に個人再生委員が選任されるかですが、弁護士が代理人についているケースでは、手続を使える要件が該当しているか吟味をしないといけない案件、財産評価に疑義がある等財産調査をしないといけない案件、否認対象行為の判断が必要とされる案件など、例外的です。
弁護士が代理人としてきちんと手続を踏んでいるからです。特に個人再生委員の判断を仰ぐ必要がある場合に選任されます。

これに対し、個人申立て(司法書士書類作成代理の場合も含め)の場合には、事実上、個人再生委員が選任される可能性が高まる傾向にあります。

 

個人再生の話は尽きませんが、長くなりました。今回はこの程度にさせていただきます。

                   

債務整理(任意整理民事再生自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

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自己破産と相続、離婚 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。


【初めに】                         

今回は、債務整理のうち自己破産と相続、離婚との関係のお話です。
 

前にも説明はさせていただいたことがありますが、最近何件か自己破産と相続、離婚が関係する案件をお手伝いしたので、改めてお話しようと思う次第です。


自己破産のお話をしますが、勿論個人再生もパラレルに考えられます。
個人再生では自己破産における否認という問題が直接には出てきませんが、清算価値保障原則の関係で個人再生も同じように考えます。

 

自己破産と相続】
 

自己破産の申立て時には、相続の有無の報告をしないといけません。
広島ではご両親がなくなっている場合には必ず報告を求められています。
いつ亡くなったか、遺産の有無、遺産分割協議の有無、居住形態は所有か賃貸か、を聞かれます。

未分割遺産の報告漏れが多かったからです。


未分割遺産については、相続分に応じた持ち分が財産として評価されるのが原則です。
それが不動産であれば、即管財事件になることが基本です。
他の財産である場合には、その評価額次第で管財事件になるかが決まります。

 

未分割遺産があり管財事件になるケースでは、破産管財人が、他の共同相続人に持ち分の買い取りをお願いする、あるいは共同で売却・解約し換価することを要請します。

他の共同相続人がそれに応じない場合は困りますね。破産手続が進みません。持ち分のみを市中で売却することは困難です。
また、破産管財人が遺産分割協議をしてその後に共有物分割請求を行えるかどうかは議論があります。
そもそも時間もかかります。
破産管財人からは他の共同相続人に粘り強く協力要請が来るでしょう。

 

例外もあります。未分割遺産(多く場合は田舎の不動産でしょう)の売却可能性が乏しく財産価値があると評価できないケースです。
そういう場合は、きちんと説明をすれば、管財事件にならず、同時廃止事件として処理してくれる例も何件か経験しました。

 

田舎の不動産で、遺産の分け方は跡取りあるいは母が相続することが決まっていたが、相続登記をするのが面倒かつ費用がかかるということで、相続登記をしていないケースもあり得ます。
対抗要件に登記が必要という点を除けば、理屈上は他の相続人が受け継ぐことに合意した破産者の財産ではないですね。

価値がない、あるいは小さいケースでは、既に遺産分割は終了しており破産者の財産ではないと認めてくれるケースもあります。

ただし、価値が相応にある不動産の場合には裁判所の対応も厳しいでしょう。
経験上、未分割遺産があるケースではそもそも価値がない不動産であることがほとんどです。
その場合、遺産分割が終了しているという理由で同時廃止になるのではなく、価値がないという理由で同時廃止を認めてくれる傾向があると感じています。
価値がある不動産の場合にはハードルが高いかもしれません。
破産直前に急いで相続登記をしても、登記自体が否認の対象になり得ます。

 

いずれにせよ、戸籍、相続関係図、登記、固定資産税評価証明書、写真、査定書(取れないならその事情を説明)、他の相続人の事情説明書などを揃えて申立てをすることになります。

 

経済的危機状態あるいは破産申立て直前の遺産分割あるいは相続放棄ということもあります。
最近も何件かお手伝いしました。
経済的危機状態あるいは破産申立て直前の場合は、否認対象行為になるかという問題が出てきます。
破産管財人は、一定の要件の下で、支払不能状態等での財産散逸行為、無償行為等の効力を否定し、財産を取り戻すことができるのです。

 

相続放棄は破産直前であっても基本的に大丈夫です。
財産処分行為ではなく、身分行為だからという理由です。裁判所に突っ込まれたことはありません。

 

遺産分割は、相当な内容だと大丈夫ですが、不相当な内容であると(正当な理由がなく破産者の取り分を少なくする内容であると)、否認の対象となります。
必ず説明を求められるため、合理的な説明を用意しておかなければいけません。

 

自己破産離婚


離婚自体は自己破産申し立ての有無は関係ないです。

離婚自己破産後まで待つ必要はありません。

 

破産申立て直前の離婚時給付と否認の問題があります。

離婚時給付というと、財産分与慰謝料ですね。養育費はあまり問題視されることはありません。

理屈上は相当の財産分与慰謝料
OKです。不相当な部分は否認の対象となります。
この相当性という説明が問題です。必ず突っ込まれるところなので、説明は慎重に期します。
もっとも、相当性がある支払いであっても偏頗弁済行為として問題視される可能性は残ります。

自己破産をお手伝いするときは、相当性のある財産分与等の組立てをします。慰謝料については原因の証拠も提出することが多いです。

 

離婚時給付を分割でお支払いされているケースもあります。
財産分与の分割払いを見たことがありますが、これは破産債権として免責の対象になってしまいますね。
慰謝料は内容によりますが、非免責債権として扱うことも可能です。

 

今回のお話はここまでとなります。

 

債務整理(任意整理民事再生自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

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相続放棄と廃車など財産処分 [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 
今回の相続問題コラムは、相続放棄後の廃車など、相続放棄をした後の処分行為が許される範囲などを説明します。

 

最近は相続放棄の話が多くて恐縮です。偶々変わった相続放棄をお手伝いすることが多かったのでご容赦ください。

 

相続放棄をするのであれば、被相続人の財産を「処分」してはいけません。

相続人の財産の「処分」行為をしたら、単純承認事由となります。
相続債権者が相続放棄の効果を覆すことが可能になってしまいます。
相続放棄の申述手続自体でも家庭裁判所から来る質問内容に処分行為の有無が入っています。

 

相続人の家主等から遺品の整理や引き取りを頼まれるようなこともあるでしょう。
賃貸借の連帯保証人でなければ理屈上は対応する必要はないですが、心情的に断りづらいですね。

 

仮に保管してしまった被相続人の財産は、理屈上、相続財産管理人か新たに相続人が判明したらその相続人に引き渡すまで管理をすることになります。

皆が相続放棄をしても相続管理人が選任されることは稀です。

引き継ぐ先が永遠に現れない場合は、財産的価値がなくなるあるいは誰からも文句を言われることがなくなっただろう頃合いを見計らって処分せざるを得ないと思います。
理屈ではなく現実的な対応ですが。

 

勿論、財産的価値のない遺品の廃棄等は、被相続人の財産の処分としては見られません。
念のため、財産的価値がないことを後で説明できるよう証拠を残しておいた方がいいでしょう。

 

相続人の車を預からざるを得なかった場合はどうしたらいいのでしょうか。

勿論、相続放棄をしたら基本的に預かる必要はないのですが・・・

 

相続人の所有名義車両に価値がない場合には、処分することは単純承認行為にはならないでしょう。
ただ、査定書を出してもらってから処分した方がベターです。

 

車両に価値がある場合には、困ってしまいます。

売却して代金を保管する行為は、保管料・保管の手間を省略して財産を管理する行為として、単純承認行為にはならない可能性はあります。
管理費用を削減することになりますからね。

もっとも、法律上は、相続放棄をした人は相続財産を取得しないため、車両を第三者に売却できませんよね。
売却するために相続財産管理人の選任をしてもらうことも費用がかかり躊躇します。

そうすると価値がなくなるまで保管するという選択肢しかないかもしれません。

 

預かった車がクレジット会社の所有名義である場合は、別の観点からも考える必要があります。
車両が所有権留保物件であった場合、クレジット会社の所有名義になっています。

 

仮にクレジット会社の債権が残っているのであれば、原則として債権者に引き揚げてもらえますね。
債権者に連絡して引き揚げてもらっても問題がないです(清算金が発生する場合には受け取れない旨伝えないといけませんが)。
それができたら楽ですね。


しかし、クレジット会社に車両の所有権を放棄すると言われた場合(価値がないあるいは小さい場合に言われることがあります)には、困ります。

価値のある車だと、理屈上は価値が亡くなるまで保管し価値がないと思われる時点で処分をしないといけません(あるいは相続財産管理人の選任申立てをして処分します)。

 

価値がない車であれば、理屈上、債権者から放棄の書類(名義変更の書類)を貰って廃車できるのでしょう。

 

クレジット会社に債権が残っていなくて、単に名義を変えていない場合(価値がないことが前提です)も、理屈上、債権者から放棄の書類(名義変更の書類)を貰って廃車できるのでしょう。

 

ただ、双方の場合とも、相続放棄をした親族が債権者から放棄の書類(名義変更の書類)を貰えるかが問題とはなります。

 

実際に経験した例は後者のケースでした。
 

相続人の家主に頼まれて車を引き取って保管していたのですが、保管に困り廃車にしようとした、
しかし車検証を見るとクレジット会社が所有者登録されており廃車ができないと言われた、
クレジット会社に問い合わせたところ弁護士から連絡をしてくれと言われた、
ということでした。


当職がクレジット会社と交渉しましたが、最初は相続人ではないから書類は渡せない、相続財産管理人にしか渡せないと断られました。
 

困っている事情と理屈(相続財産管理人は選任されておらず選任される予定はない、車両価値がないことは明白なのでこちらが処分しても問題はない等)を説明して、他の部署からOKを貰い、なんとか名義変更書類を取得することができました。

 

一般的な扱いかどうかはわかりませんが、紹介させていただきます。

 

相続放棄をする以上、下手に被相続人の財産を管理することがないようにすることが一番大事です。
勿論、事情があってやむを得ず管理することになってしまうこともあります。
預かった以上は管理の義務が発生しますので、管理する財産の処分等は慎重に判断してください。

 

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租税、租税法とは [税法の話3]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

租税法の総論的なお話は今回で終わりです。

 

【租税とは】

考えると、税金ってなんだろうと思いますよね。学術的に議論されており、かつ判例でも定義されています。

判例の定義は、次のとおりです。

「国又は地方公共団体が、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてではなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付はその形式のいかんにかかわらず、憲法84条に規定する租税」(旭川国民健康保険料事件最大判H18.3.1

 

租税は金銭的給付です。徴兵などは税金ではありません。

 

租税は公益性(公共サービス)のための資金調達です。制裁目的の罰金は租税ではありませんね。

 

課税権に基づき強制的に徴収されるのが租税です(強行性権力性)。国税徴収法により租税債権は大変強い効力を与えられています。租税債権の優先が定められていますし、裁判所を通じなくても差押等の滞納処分ができます(自力執行力)。寄付金は強制ではないから租税ではありません。

租税債権の優先という点で、破産管財人をしていると銀行の根抵当権と租税債権の優先関係をケアしないといけない場面に出くわします。登記と差押えの先後ではなく、登記と法定納期限の先後で決まるのです、滞納租税の法定納期限なんて確認しないとわかりませんから怖いですね。

 

非対価性も租税のメルクマールです。特別の給付に対する反対給付の性質ないということで、国民健康保険や各種手数料は租税ではありません。判例で、国民健康保険は、強制加入、強制徴収等において租税に類似する性質だから憲法84条の趣旨は及ぶとはされていますが。

 

【租税法の機能】

租税法の機能は大きくわけて2つです。

1つ目は、行動規範(マニュアル)です。

戦後、基本的に申告納税制度になりました。納付すべき税額を納税者の申告によって確定させる制度ですね。所得税申告時期の2/163/15は、知り合いの税理士さんは大変です。お祭りみたいなもののようです。

「租税法律主義+申告納税制度=租税民主主義」と言われます。

もっとも、先払いの制度があります。予定納税制度と源泉徴収制度です。前者の意義は、納税者の負担軽減、国庫歳入平準化、所得発生時期と納期を近くするのが理想という理由が挙げられていますが、どうなのでしょう。後者は、申告納税制度を補完する制度で納税者の取引相手に納付義務を課すものです。多くの給与所得者は納税が完結しますね。

 

2つ目は、裁判規範(事後的解決基準)です。

法律ですからね。

 

【私法と税法の関係】

国と納税者の関係は租税法律関係とされています。

私法上の法律関係を前提に租税法律関係が構築されますから、租税法律関係は第1次的には私法により規律されます。売買なら所得税、贈与なら贈与税といったように私法上の契約関係が前提なのですね。民事訴訟法の理論に処分証書の法理というものがあり、裁判では私法上の契約関係の認定に契約書類がかなり重要視されます。

① 経済取引事実の発生      個人A→お金→個人B

② 私法上の要件事実の認定  労働契約、預金契約、棚卸資産と対価 

③ 私法上の法律構成     雇用、消費寄託、売買、贈与、相続

④ 租税実体法の発見     所得税法、相続税法

 

租税法と実体経済にはギャップが存在します。

私経済は不断に変化します(私的自治、法律形式選択の自由)。

租税法は法律の改正が必要です。追いついていけません。

解釈で実体経済をどこまで捕捉できるかという問題が出てきます。

 

【借用概念と固有概念】

条文の解釈の問題です。借用概念は、「売買」「贈与」など租税法に定義がない概念で、本来の法分野である私法と同一意義に解釈されます。課税庁によって自由に解釈されて課税をされてしまうと、租税法律主義の要請である国民の予測可能性、法的安定性を害しますからね。

「住所」の解釈が争われた裁判があります。民法の解釈に沿って、贈与税回避目的があるからといって客観的な生活の実態は消滅するものではない(立法により解決するべき)と国が負けました(最高裁H23.2.18判決)。

 

固有概念は、租税法に定義規定が有る概念です。「同族会社」「みなし配当」などですね。

 

租税法に定義規定がない、かつ私法から借りてきた概念でもない文言というのもあります。

住宅借入金等特別控除にいう「改築」の意味が争われた裁判で、特段の事情がない限り、言葉の通常の用法に従って解釈するとされました。

 

【まとめ】

総論のまとめです。

① 租税法律主義の貫徹

租税憲法の話ですね。

② 私法の重視(借用概念)

租税法律関係は第一義的に私法で規律される。特別な定義が租税法にないならば借用概念として私法と同じ解釈をするべきということですね。

③ 当事者の契約内容重視

租税法律関係は第一義的に私法で規律されます。契約の意味内容も私法で解釈されるべきで、課税庁が勝手に売買を交換等の別の法形式として扱っては駄目ということですね。そこに処分証書の法理という民事訴訟の理論も関わってきます。基本的には、契約書と同じ内容の法的効果の発生し、それに対応した課税しかできないのが原則です。

 

総論的な話が続きましたがこれで終わりです。次回から皆さんになじみの深い所得税法のお話に入っていこうと思います。

 

お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。

 

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相続法改正ポイント6 [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

相続法問題コラムとして、2019年日から順次施行される改正相続法(民法)のお話をさせていただいております。
今回が最後になります。

 

【持戻し免除の意思表示の推定】
 

特別受益者の相続分を定める903条の改正です。配偶者の保護のための改正です。


「改正第903条

4 婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。」

 

「第1項の規定を適用しない旨の意思」とは、持戻し免除の意思表示です。

 

特別受益がある場合、特別受益を遺産の中に回復させて(これを「特別受益の持戻し」といいます。)、特別受益者はそれに基づいて算出した相続分から特別受益額(贈与又は遺贈の価額-財産評価の基準時は相続開始時です。)を差し引くことになります。

 

これには例外があり、被相続人が持戻しの免除の意思表示をしたときは、特別受益は相続財産に算入されません(民法903条3項)。
その意思表示は、遺贈の場合には遺言によりますが、贈与は明示でも黙示でも同時でも事後でもいいとされています。

勿論、持戻し免除の意思表示は遺留分を侵害することができません。相続人に対する贈与は相続開始前10年間にしたものに限りその価額を、遺留分を算定するための財産の価額に算入します(改正民法1044条3項)。

 

上記改正民法903条第4項は、婚姻期間が20年以上の夫婦の間における居住用不動産の遺贈・贈与に関する持戻し免除の意思表示の推定規定です。
死因贈与についても遺贈と同様に考えられるとされています。

 

推定されますので、それを覆す被相続人の意思表示を立証しない限り持戻し免除の意思表示があったと扱われます。推定といっても強い効力を有します。

 

【預貯金債権の仮払い制度】

改正民法第909条の2のお話です。

 

従前、預貯金債権は、遺産分割の対象とならず、各相続人法定相続分に応じて払出しを要求することが可能でした。
対応しない金融機関に対しては訴訟をすれば勝訴できました。

 

平成28年の最高裁決定で、その扱いが変わりました。預貯金債権については、遺産分割までの間は共同相続人全員の準共有状態になるから権利は全員が共同で行使しなければならない、遺産分割の対象となる、としたのです。

これで、預貯金債権も遺産分割調停・審判に乗せることができ(それまでは他の相続人の同意が必要だった)、特別受益の持ち戻しに関連する不公平が解消できます。

一方で、相続債務を弁済する、葬儀代を捻出する等のために相続預金を遣えなくなる不都合が生じます。
遺産分割が完了しないと理屈上金融機関は払出しに応じません。

 

まず、改正家事事件手続法200条3項は、遺産の仮分割の要件を緩和し、一定の要件の下で裁判所が認める預貯金債権の仮払いを認めました。
詳細は省略します。でも、やはり手続の手間暇が負担ですね。

 

そこで、改正民法が、裁判所を経ることなく、預貯金の払戻しができる制度を設けています。
相続開始時の預貯金債権額の3分の1×当該相続人法定相続分が払い戻しの上限です。
さらに法務省令により金融機関ごとの限度額が設定されるようです。

 

【遺産の一部の分割】

遺産の一部を分割できるかについては、現行法では明文規定がありませんでした。解釈上は、当然認められると考えられていましたが。

改正民法907条1項は、一部分割が可能であることを明示しました。

 

それに応じて、一部遺産分割の調停、審判も原則として認められるようになりました(改正民法907条2項)。
特別受益や寄与分の調整の場面等で他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合には許されません。

 

【相続後遺産分割前に遺産に属する財産を処分した場合】

改正民法906条の2です。遺産分割前に遺産がされた場合であっても、共同相続人全員の同意により、遺産分の分割時に遺産として存在するとみなすことができる(1項)。
ただし、共同相続人により遺産が処分されたときは処分をした相続人の合意は必要がない(2項)。

 

1項は、現行法の解釈実務のとおりです。2項が新しいものですね。

これまでは、遺産分割前に相続人が預金を勝手に引き出した等の場合には、遺産分割において当該相続人の同意がない限り、不法行為による損害賠償請求あるいは不当利得返還請求をするほかありませんでした。
改正民法によれば、遺産分割に乗せるのか、損害賠償あるいは不当利得返還の請求をするのかどちらか選べるということになりますね(遺産分割に乗せるには被侵害相続人全員の同意は必要ですが)。

 

なお、相続前の預貯金の無断引き出しについては、従前どおりになります。
相続人の同意により遺産分割対象財産に含めるか、損害賠償請求あるいは不当利得返還請求を行うことになります。
この場合は特別受益(生前に被相続人から贈与された)との反論もあり得ますが。

 

改正相続法のお話はこれでいったん終わりです。

大きな改正で、実務の集積が必要です。

 

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相続法改正ポイント5 [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

相続問題コラムとして、2019年71日から順次施行される改正相続法(民法)のお話をさせていただいております。

 

【特別の寄与制度】

相続人の寄与分制度は現行法でもあります。相続人以外の制度ができました。

寄与分は、被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をした「相続人」のための制度ですね(民法904条の2)。

なお、裁判所は寄与分をなかなか認めません。親族の扶養義務の範囲内を超える行為と認められなければなりません。事実上、そのハードルは高いです。

 

改正民法1050条では、相続人ではない「被相続人の親族」に「特別の寄与」制度を認めました。

相続人と養子縁組をしていない子の配偶者などが該当しますね。

これまでは特別な寄与をした相続人である子の夫(あるいは妻)を妻(あるいは夫)の履行補助者と考えて、相続人の寄与と考えるというような処理がされていました。
改正により、必ずしもそのような理論構成が必要とはいえなくなるわけです。

新しい制度なのでどこまで有効なのかは未知数です。

 

相続人の寄与分制度と特別の寄与制度は建付けが異なります。

特別寄与者は、特別寄与料という金銭支払いを各相続人に各相続分に応じて請求することになります。

特別寄与料は、相続人と合意できない場合、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することになります(審判ですね)。

権利行使期間も定められています。相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内、または相続開始の時から1年以内なのでご注意を。

 

なお、特別寄与料の額は、寄与分制度と同様、遺産から遺贈の価額を控除した残額を超えることができません。そうなると遺言ですべて相続を指定している場合は特別寄与料と請求する余地がありませんね。そういう制度だと割り切るしかないところです。

 

【配偶者居住権】

新しい制度ですね(改正民法1028条~1036条)。

相続人の配偶者は、被相続人所有の自宅不動産に住み続けたいのが通常です。

遺産分割協議にて配偶者が自宅不動産を相続する、あるいは遺言により配偶者が承継するのであれば問題がありません(その場合は遺留分の問題もあります)。

仮に、他の相続人と配偶者の共有の状態になると、場合によっては不動産を処分しないといけなくなる、賃料相当金の支払義務の問題が出てくる、共有物分割請求がなされる等々、配偶者が法的に不安定な立場におかれます。

そこで、改正民法は、配偶者居住権を新たに定め、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身または一定期間、無償でその配偶者に居住等を認めることにしました。

 

配偶者居住権設定の方法は、

① 遺産分割協議による設定

② 遺言による配偶者居住権の遺贈(死因贈与でもかまわないと解釈されています。)

③ 家庭裁判所の審判

の3つです。

 

配偶者居住権の期間は、原則配偶者の終身の間です。

ただし、遺産分割協議、遺言あるいは家庭裁判所の審判で期間を定めたならばその期間です(改正民法1030条)。

 

改正民法は、配偶者居住権を財産権(相続財産の一部)とみます(改正民法1028条)。
配偶者はその配偶者居住権の財産的価値に相当する金額を相続したものとされます。評価方法は難しいですね。

(年額建物賃料相当額‐配偶者負担の必要費)×年金現価率
あるいは
建物敷地の現在価値‐負担付き所有権の価値、
が提示されていますが、実務の集積を待つほかないでしょう。

 

なお、一定の配偶者居住権の遺贈については、民法903条4項が準用され、持戻しの免除の意思表示があったことが推定されます(1028条3項)。この点は次回お話します。

 

配偶者居住権は登記が対抗要件です。建物所有者には登記手続協力義務があります(改正民法1031条)。

 

配偶者が一部に居住していた場合でも全部の使用収益が認められます。

ただし、権利を譲渡することはできませんし、居住建物の改築・増築・第三者による使用収益は所有者の承諾が必要です(改正民法1032条)。

 

改正民法は、配偶者に第一次的な修繕権を付与し、通常の必要費(固定資産税、通常の修繕費等)を配偶者の負担としています(改正民法1033条、1034条)。
ほかにも修繕と費用に関して細かい規定がありますが割愛しますね。

 

なお、被相続人が配偶者以外の者と共有している建物については配偶者居住権が成立しません。成立を認めてしますと他の共有者の利益を一方的に奪うことになるからです。
ご注意ください。

 

【配偶者短期居住権】

これも新しい制度です(改正民法1037条~1041条)。

遺産分割までの共有状態(遺産共有)の間の配偶者の居住権を保護するものです。

 

判例では、共同相続人の1人が被相続人の許諾を得て同居していた場合には、遺産分割時を終期とした使用貸借契約が被相続人とその相続人との間で成立していたと推認されるとされていました。改正法はそれについて制度化したものですね。

 

配偶者短期居住権は、配偶者に対し、一定期間において居住建物の無償使用権を認める制度です。

存続期間は、配偶者が居住建物の遺産分割協議手続に関与できる通常の場合は、遺産分割時または相続開始から6カ月後のいずれか遅い日です。

配偶者が相続放棄をした、居住建物が遺言で他の相続人に相続させられた場合等、配偶者が遺産分割手続に関与できない場合は、居住建物取得者からの配偶者短期居住権の消滅の申入れがなされてから6カ月後までです。

 

無償使用権なので他の相続人等から賃料相当額の請求ができないことになります。

 

修繕・費用等については、配偶者居住権の規定が準用されています。

 

【内縁配偶者】

内縁配偶者の居住権については改正法で手当てがなされませんでした。

 

これまでどおり、具体的事情によっては、相続人からの明渡し請求を権利濫用で排斥する、あるいは被相続人と内縁配偶者の使用貸借関係を認めるといった保護が与えられます。
不安定な状況におかれたままですね。

きちんと使用貸借契約書を作成しておく、あるいは遺言で対処をするべき問題であることは変わりません。

 

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相続法改正ポイント4 [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

相続問題コラムとして2019年71日から順次施行される改正相続法(民法)のお話をさせていただいております。

 

遺言関係のお話をかいつまんでします。

 

【自筆証書遺言の方式緩和】

改正民法968条ですね。こちらはすで施行されています。

 

現行民法では、自筆証書遺言は、前文、日付、氏名を自署しなければいけません。

遺言者の真意を確かめる、偽造・変造を防ぐという趣旨です。

財産がたくさんある場合には面倒ですよね。書き間違いも生じます。

 

改正民法では、相続財産(遺贈も含む)を特定する財産目録については、自署が必要ないとされました。次の条文です。

 

「改正民法第968条

2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自署することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自署によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。」

 

パソコンで作ってもいいわけです。

登記事項証明書や預貯金通帳の写しを添付する方法でもいいと説明されています。

ただし、全てのページに署名・押印は要求されています。

なお、加除変更がある場合に遺言者の指示・署名・捺印が必要なのは本文と同じです。

 

【自筆証書遺言の保管制度】

民法改正自体の話ではないのですが、自筆証書遺言保管制度が創設されました。

法務局における遺言者の保管等に関する法律です。

自筆証書遺言は、公正証書遺言と異なって、家庭裁判所での検認手続が必要ですが、同制度を利用した自筆証書遺言は検認手続が不要となります。

検認手続により遺言の有効性が判断されるわけではないのですが(遺言の存在を確認するといった色彩の手続です)、検認手続を経ないと相続手続が進められません。検認手続が必要ないとすると楽なのです。

保管者は、法律の名称からわかるとおり、法務局です。事務を取り扱うのは遺言書保管官という舌を噛みそうな名称の方です。遺言者が自ら、住所地もしくは本籍地、または所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所(法務局ですね)に出頭して、申請をしないといけません。勿論、一度保管してもらった遺言の保管を撤回してもらうこともできます。

新しい制度なので、使ってみないと使い勝手の良さはわからないですね。

 

なお、公正証書遺言と自筆証書遺言は検認手続が必要かどうかだけの違いではありません。

保管制度を利用した自筆証書遺言よりも、やはり公正証書遺言の方が確実です。

形式不備が基本的にはありませんし、遺言の有効性に関する判断においても公証人(法律の専門家出身がほとんどです)の意思確認を経由しているので公正証書遺言の方が確実です。

 

【遺言執行者】

改正民法1007条第2項で、遺言執行者が任務開始時の相続人に対する遺言内容の通知義務が定められました。

 

不明確あるいは争われることもあった、遺言執行者の法的地位を明確にした規定もできました。

改正民法1012条では、遺言執行者は遺言の内容を実現するため相続財産の管理その他の遺言に必要な一切の行為をする権利義務を有する、改正民法1015条は、遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は相続人に対して直接にその効力を生ずる、としています。

 

その他にも権限等に関する改正がありましたが、ややこしい話なので省略いたします。

遺言の内容と遺言執行者の権限はできるだけ明確に定めておくといいでしょう。

 

改正民法1016条では、遺言執行者の復任権が認められました。相続財産の内容や遺言の内容によっては親族の遺言執行者がご自分で手続を行うことが難しい場合があります。遺言執行者が弁護士等の専門家や法律や手続に詳しい親族の依頼できるということですね。

 

改正民法1013条です。

遺言施行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることができません。

遺言で特定の相続人に対して承継させるように定められている不動産について他の相続人が相続登記をして第三者に処分したような場合ですね。

他の相続人の行為は無効です。それは現行法の解釈と変わりません。

しかし、善意の第三者に対して対抗することができないと定めました。上の例では先に登記を経た方が優先します。

また、相続債権者、相続人の債権者は、遺言執行者の有無にかかわらず、相続財産に対して権利を行使できることも定められました。

以前に説明したとおり、相続による権利移動はすべて登記等の対抗要件が必要とされました。遺言執行者がいる場合もそれは変わらないということですね。

 

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