• 刑事事件
  • 所属弁護士
  • 用語集
  • よくある質問
  • コラム
  • リンク集

HOME > コラム > アーカイブ > 相続問題 > 5ページ目

コラム 相続問題 5ページ目

相続預金の取り扱い 【相続問題】

前回、離婚の話のうち、子の面接交渉、面会交流についてお話しました。
今回は相続の話です。

相続預貯金は、相続人全員のハンコ、遺産分割調停調書、あるいは遺産分割審判書がないと引き出せないか?

少し前までは、YESとの回答でした。「どうしてもと言うなら銀行相手の裁判をしてもいいけど、遺産分割調停の方が早く終わるかも。」というアドバイスをしていたでしょう。

従前は、約款を盾にして、あるいは相続争いに銀行が巻き込まれるのを防止するために、ゆうちょ銀行、市中銀行とも払い戻しを拒絶していたはずです。ところが、最近は変わってきたようなんです。

通常貯金は自己の相続分の払い戻し請求ができる、あるいは普通預金は通帳がなくても払い戻し請求により銀行が履行遅滞(損害金が発生する)に陥る、定期預金も満期到来によって履行遅滞に陥る、といった裁判例が出ているから金融機関の態度が変わってきたのかもしれません。

現在では、払い戻し請求をすると他の相続人へ照会をして問題がなかったら払い戻しに応じる、あるいは問題があっても払い戻しに応じてくれる金融機関が出てきました。定額貯金、定期預金はそれでも満期到来まで待たされるのでしょうが。

確かに、法律上、預金債権は分割債権であり相続によって相続人法定相続分に応じて分割取得するということになるのでしょう。ただ、実務では、払い戻しができたら確定的に解決したと考えるのは早計です。特別受益、寄与分、分与方法の判断によっては、すでに払い戻しを受けた金銭の返還を求められることでしょう。

そこで、現在のアドバイスは次のようになります。「払い戻しに応じる金融機関がでてきたから早く現実を手にしたければ払戻手続をしてみてもいいのではないですか、でも他の相続人に照会が行くから争いが激化するかもしれませんし、後に調停・審判で取り分が法定相続分から減ってしまうと他の相続人に返還しないといけませんよ、あくまでも最終的な解決は遺産分割調停、審判の結果を待たなければなりません。」という感じでしょうか。相続預金が遺産分割の対象となるかどうかの問題は「相続預金の取り扱い2」を参照してください。

相続預金を払い戻すことができるようになりつつあるのはいいことかもしれません。ただ、「遺産分割合意を早くしないと預金を分割できないからお互い譲って早く合意しましょう」というインセンティブが世の中からなくなると、相続争いが長期化する危険もあるのかなぁと危惧もします。

今回は相続問題に付きものの相続預金の取り扱いについてお話ししました。
動いている話なので、専門家に相談して慎重に対処してください。

コラム投稿後に、最高裁の判例で相続預金に関する従来の取り扱いを変更する判断が出ました。
本コラムは内容が古くなっております。
相続預貯金は、遺産分割の対象となりました。逆に、金融機関としては相続分に応じた払い戻しに対応できないということになるでしょう。
そこで、民法改正により、相続預金の一部払い戻し制度が創設されます。
なお、可分債権(貸付金など)は、判例変更がありませんので、従来どおり、相続と同時に各相続人が相続分に応じて取得することになります。

ぜひ相続問題は「なかた法律事務所」にご用命を。

広島市中区上八丁堀5-27-602
なかた法律事務所
弁護士 仲田 誠一

https://www.nakata-law.com/

 

https://www.nakata-law.com/smart/




[相続]寄与分について (弁護士 桑原 亮)

こんにちは。
弁護士の桑原です。
 
2014年も1か月が過ぎ,2月に入りました。
そろそろ暖かい春が待ち遠しいですね。
 
ところで,私はなかた法律事務所に入所してまだ日は浅いですが,
相続に関する相談をよく目にするので,今回は相続についてお話をしたいと思います。
 
相続人が複数いる場合,共同相続人のある者が被相続人の財産の維持・増加に特別の貢献をしていることがあります。
たとえば,ある父親に子どもたち3人がいる場合を想定してください(母親は既に亡くなっているものと仮定します)。
一生懸命父親の介護をしてきた長男のために亡くなった父親が遺言で多めに財産を与えてくれればよいのですが,そうではなく遺言がなされていない事例が多くあります。
原則として,遺言がない場合には長男の貢献は無視され,兄弟3人で均等に父親の財産を分けることになります。
しかし,これでは介護をした長男は不公平だと感じることでしょう。
そのため,公平の観点から,寄与分という制度が民法上認められています。
もっとも,民法上親子には扶養義務がありますから,子が親を扶養するのは当然です。そのため,寄与分は滅多に認められるものではありません。
たとえば,長男が自分の仕事を辞めて老齢の父親の介護に専念した結果,本来であれば父親が支払うはずの介護費用が長男の献身的な介護により不要になったような場合であれば,長男は介護のための費用を抑えることで親の財産の減少を食い止めてきたと評価されうるでしょう。
寄与分が認められたら,寄与者である長男の特別の寄与を考慮し,相続分から寄与分を控除して相続分算定の基礎財産とし,算定された相続分に寄与分を加えて寄与者の相続分とされることになります。
 
では,一生懸命介護をしてきた人が共同相続人ではない場合はどうでしょうか。
たとえば,先ほどの事例で3人兄弟の長男の妻が夫の父親の介護をしていたような場合です。
子の配偶者は相続人ではないので,このケースでは長男の配偶者に相続権はありませんし,したがって寄与分も認められません。
しかし,その配偶者の寄与を相続人の寄与と一体のものと考えたり,寄与した者を相続人の補助者として捉えることで,間接的に認めていくことができる場合もあります。
 
寄与分は,実務上容易に認められるものではない点にはご注意ください。
もし,お悩みを抱えておられる方がいらっしゃいましたら,一度弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。
 
後の相続を巡る紛争を予防するため,公平な遺言書の準備をしておくことをお勧めします。
また,介護や援助をされておられる方は,それらの記録をきちんと残しておくとよいでしょう。
 
広島の弁護士事務所
「なかた法律事務所」
弁護士 桑原亮

[相続]遺産について (弁護士 里村文香)

こんにちは。
 
弁護士の里村です。
当事務所のブログ再開にあたり,簡単に私の自己紹介をしたいと思います。
私は,高校,大学,大学院と広島で過ごし,約10か月ほど大分県にて司法修習を行い,平成23年12月,当事務所に入所しました。
地元広島で,広島のみなさんのお力になれればと思いながら,日々仕事に精進しております。
 
さて,今回は遺産にまつわるお話しを少しだけしたいと思います。
身寄りのない方,相続人のいない方が亡くなられた場合,その遺産は,どのように扱われるのでしょうか。
法律上,その遺産は,相続人がいない場合には,亡くなられた方と生計を同一にしていた人や,療養看護にあたっていた人など特別に縁故のあった人(特別縁故者といいます。)に与えられ,そういう人もいなければ,国に帰属することになっています。
 
「自分は特別縁故者にあたりそうだ」と考える人がその財産の分与を求めるにあたっては,家庭裁判所に対する申立てが必要です。
そして,亡くなられた方と特別な縁故があったというための証拠も必要になってきます。
「あの人とは深いかかわりがあった」などと言っていても,一方の方が亡くなられている以上,その方と特別な縁故にあったということを分かってもらうのは容易ではありません。
そのような場合には,生前どのような実質的なかかわりがあったのかを示したり,細かく述べたりする必要があります。
 
私が担当したケースでは,縁故者の方もご高齢で,かつ,生計を同一にしていたとか療養看護にあたっていたという事情もありませんでした。さしたる証拠もなく,申立ての際には,古い記憶を思い出してもらい,何度も聴き取りを重ね,申立てにこぎつけました。
残された方のために,遺言を書いておかれるのが一番だということを痛感した次第です。 
 
当事務所では,遺言に関するアドバイスや相続についての相談も広く取り扱っております。
お困りのことがあれば,ご相談いただければ幸いです。
 
以上
 
なかた法律事務所
弁護士 里村 文香
 
広島県広島市中区上八丁堀5-27
アーバンビュー上八丁堀602号
TEL 082-223-2900

「相続放棄はいつまでできるか?」【相続家庭問題14-2】

弁護士の仲田誠一です(広島弁護士会所属)。


昨晩は時間をかけて手紙を書きました。

私が大学を卒業して初めて配属された銀行の支店長であり,その後いくつかの銀行の役員などを歴任され,昨年から隠居生活に入られた方です。お世話になった方です。

新前銀行員の私にとっては,当時,話すのも恐れ多い存在の方でしたが,縁あってまだ交流が続いています。

不思議なもので,怖い人は何年経ってもやはり怖いですね。その方に対する手紙の文章も,恥ずかしくないように何回も書き直して,ようやく書き上げました。


さて,前回の続きです。相続放棄の熟慮期間の具体例をお話したいと思います。


◆ 前回の復習

最高裁の立場では,

3ヶ月の熟慮期間の起算点(「自己のために相続の開始があったことを知った時」)は,原則として,相続人が相続開始の原因となった事実および自己が法律上の相続人となった事実を知った時です。

ただし,例外的に相続人を保護していました。

相続開始を知ってから3ヶ月以内に相続放棄または限定承認をしなかった理由が,被相続人に相続財産が全くないと信じたことであり,
かつ,
相続人の生活歴,被相続人相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて相続人に対し相続財産の調査を期待することが著しく困難な事情があって,相続人がそう信じることに相当な理由があるときは,
相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した又は通常これを認識しうべき時」が熟慮期間の起算点です。

それでは,どのような場合に,被相続人に相続財産が全くないと信じ(善意),かつ信じたことに相当の理由がある(相当性)と認められるのでしょうか?

具体例を見てみましょう。


◆ 肯定例

善意かつ相当と認められた(相続開始から3ヶ月以上先後に行われた相続放棄が有効とされた)例をいくつか挙げます。

最高裁の判例の事案は,被相続人相続人との行き来が14年以上途絶えていた,被相続人が債務を負ったのは交渉が途絶えてから10年後だった,被相 続人から資産負債の説明を受けたことはない,相続すべき積極財産がなく葬儀も行われなかった,その1年後に判決正本の送達を受けて初めて債務の存在を知っ た,などの事情から,被相続人に相続財産が全くないと信じたことに相当性を認めました。

相続人が被相続人と別居してから被相続人死亡まで30年間以上全く交渉がなかった,葬式の時も内縁の妻が喪主となり相続人は資産負債について話を聞かされなかった,某信用保証協会の突然の通知で債務があることがわかったという例。

相続人の債権者から突然内容証明郵便が送られて来たが,それまで全く交渉のなかった債権者から突然送られたこと,その記載内容や添付資料も不十分であることから,その後4ヵ月後に行った相続放棄を有効とした例。

事例が少ないのですが,基本的には,相続人に相続財産調査を期待できない事情があるケースですね。

最初から認められたケースでは,そもそも争いにならないので,当然に裁判例が残りません。そのため裁判例は否定例の方が多いです。


◆ 否定例

善意かつ相当と認められなかった(相続開始から3ヶ月以上先後に行われた相続放棄が無効とされ,単純承認の扱いになった)例をいくつか挙げます。

それらを大きく分けると,諸々の事情から相続人が簡単に相続財産債務の調査ができたであろうと判断される例と,一部でも積極財産の存在を認識した以上はたとえ借金を知らなくてもその時から3ヶ月の熟慮期間が進行するとされた例です。

そうであれば,被相続人に積極財産がない場合であっても,借金があるかもしれないと少しでも疑う場合には,必ず債務の存否の調査をしなければならないということになるでしょう。放っておいてはいけません。
また,一部でも不動産や預金などの積極財産があることを知ったなら,必ず債務の調査もする必要があるということになります。

気をつけて下さい。

具体的にはこれらの例です。

相続人は被相続人と同居し,被相続人死亡後はその経営していた会社の役員となっていた,被相続人の死亡後に相続不動産を第三者に賃貸した等の事情か ら,相続人は被相続人が積極・消極の財産を有していたことを知っていたものと推認されるし,財産がないと信じたとしても相当性がないとされた例。

相続人と長年月没交渉であったわけではなく,相続人の学生時代は被相続人の元に出入りしていたから,その生活状態を認識していた筈であること,他 の相続人(その人の母親)に対して債権者から照会が来ているから相続人は簡単に債務の存在を調査できた,などの理由から,相当性が否定された例。

会社員である被相続人の死亡時に,負債の存在は知らなかったとしても不動産などの相続財産の存在を知っていた,被相続人は会社員であってもその妻は 個人事業主であり事業に関連して保証債務を負う可能性もあること,被相続人死亡時にその妻に多額の借金があることを知っていたこと,被相続人と同居してい た他の相続人に容易に被相続人の債務の有無などを確認できたこと,などの理由から,相当性を否定した例。

相続人死亡時に,被相続人の積極財産の一部として土地,預金が存在することを知っていた以上,高額の相続債務があることを知らなくても,被相続人死亡時が熟慮期間の起算点となるとした例。

相続人死亡時に,被相続人の積極財産として不動産の存在を知っていた以上,長男が相続するものと信じ,自分は相続することはないと信じたとしても,被相続人死亡時が熟慮期間の起算点となるとした例。


最後の2つの例は,相続財産の一部でも認識したらその時が熟慮期間の起算点だとする判例に沿うものです。しかし,近時は,事情によって反対の判断をする裁判例もあります。

例えば,相続人が遺産の存在を認識していたとしても,他の相続人が相続する等のために,自己が相続すべき遺産はないと信じ,かつ,そう信じる無理からぬ事情がある場合には,熟慮期間は未だ進行しないとする裁判例があります。
また,被相続人の死亡時に相続財産の存在を知っていても,自らは全く承継しないと信じ,かつ,そう信じる相当な理由がある場合(そのケースでは遺言書がありmなした)には,被相続人の死亡時を熟慮期間の起算点としないとする裁判例もあります。

今後はこちらよりの判断がされる可能性が高いでしょう。


◆ 最後に

最後まで読んでいただいた方がいらっしゃるかわかりませんが・・・

上記のように,裁判では,具体的な事情によって微妙な判断がなされるようです。

不安になったらすぐに専門家に相談してください。
裁判で争わなくていいようにするに越したことはありません。


「相続放棄はいつまでできるか?」【相続家庭問題14-1】

弁護士の仲田誠一です(広島弁護士会所属)。


最近「ぬた」をよく食べています。「わけぎ」と酢味噌があれば簡単にできるからいいですね。葱で作るよりも「わけぎ」で作るほうが,やはり食感がよく,おいしいです。

「ぬた」に和えるのは,タコがいいです。今,タコは高いですね。高級魚並みです。昔は安かった記憶があるのですが。
私の育った家の近所の海では,蟹型の疑似餌を投げれば,数時間で何回かタコがかかりました。餌になる蟹やエビが減ってきているのでしょうか。


さて,相続放棄については以前にもお話ししましたが,今回と次回にわたり,相続放棄はいつまでできるか?についてお話しようと思います。


◆ 被相続人に借金がある場合にとる手段

田舎で1人残っていた母親が亡くなり,葬式も終わり,あなたが家を片付けました。その際,母親に多額の借金があることがわかったらどうしましょう?

相続人(母親)の借金などの債務は,相続分に応じて,相続人(あなたなど)に承継されるのが原則です。

原則どおり母親の借金をあなたが返すかどうか,選択肢は3つあります。

まず,財産よりも借金が明らかに大きいときには,特別な事情がない限り,「相続放棄」をすることになるでしょう。
相続放棄をした相続人は, 初めから相続人ではなかったものと取り扱われます。その結果,先順位の相続人が全員いなくなれば,後順位の推定相続人相続人となります。そのため,相続 順位ごとに相続放棄を順次検討する必要があります(第1順位の推定相続人が全員相続放棄をすれば,次に第2順位の推定相続人相続人となるから,再度その 時点で相続放棄をするか検討しなければなりません)。

次に,財産と借金のどちらが大きいかわからない場合には,「限定承認」をすれば,相続財産の範囲で借金を返済することができます(負債が返済しきれない場合も相続人は相続債務を負担しません)。
相続人全員が行う必要があることや手続が煩雑であるなどの理由から,あまり使われてはいません。

最後に,「単純承認」です。財産を受け継ぐ代わりに,原則どおり債務も受け継ぎます。
財産の方が借金よりも明らかに大きい場合や,負債の方が大きくてもどうしても手放せない財産があるなどの理由で放棄などができないケースには,単純承認することになります。

単純承認には手続は要りません。しかし,「相続放棄」および「限定承認」をするには家庭裁判所に申し立てる必要があります。また,いつまでもそれらを申し立てることができるわけではなく,申し立てる期間(「熟慮期間」)が決められています。

 

相続放棄はいつまで申し立てれば良いのか

先ほどのとおり,相続の放棄には,申し立てることができる期間(「熟慮期間」)が決められています。母親の借金を引き継ぎたくないと思っても,何もせずに放っておくと,結局は引き継ぐことになってしまいます(単純承認)。

民法で定められた熟慮期間とは,「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内というものです。

短いですよね。なお,熟慮期間の伸長を家庭裁判所に申請すれば認めてくれることもあります。

遠く離れて住んでいた母親の借金は簡単にわからないことが多いでしょう。
また,悪知恵の働く債権者は,お母さんが亡くなってから3ヵ月経過後にあなたに対して返済を要求するかもしれません。

そのようなケースではあなたを保護して,お母さんが亡くなられてから3ヶ月経過後に借金がわかったときに,なお相続放棄を認めてもよさそうと考えられます。

そこで,民法で定められている「自己のために相続の開始があったことを知った時」とはどの時点か?が議論されることになります。
その時点を後にずらせば,より相続放棄がし易くなるのです。

この点は,相続放棄制度の捉え方によって考え方が異なります。

相続人が亡くなっても,財産・負債の存在を知らなければ,相続放棄等の手続はとらないで放っておくのが通常ですね。それなのに,被相続人の死亡の 事実だけ知れば3ヶ月の計算がスタートしており,3ヵ月経過後に借金が判明しても,もはや相続放棄をすることができないとするのは,少し酷だと考えられま す。

そこで,相続放棄相続人を保護するための制度だと考えれば,「自己のために相続の開始があったことを知った時」は,自分が受け継ぐべき財産または債務の一部でも知った時だ,と言いたくなります。

一方で,相続は単純承認が原則だ,相続放棄や限定承認は例外的に認められる,と考える人もいます。相続人は財産負債を受け継ぐのが当然だということですね。

そう考えれば,「自己のために相続の開始があったことを知った時」は,被相続人の死去(相続発生)の事実さえ知ったときでいい,財産・負債を知らなくて3ヶ月経っても,単純承認の原則に戻るだけだからいいじゃないか,となるのでしょう。

 

最高裁の判例は,相続人の保護を例外的に認める立場をとっています。

まず,熟慮期間の起算点(3ヶ月の計算の出発)は,原則として,相続人が相続開始の原因となった事実および自己が法律上の相続人となった事実を知った時だとします。

ここまでだと単純承認が原則で相続放棄は例外という考えと基本的に一緒ですね。

ただし,例外的に相続人を保護します。

3ヶ月以内に相続放棄または限定承認をしなかった理由が,被相続人に相続財産がまったくないと信じたことであり,かつ,被相続人の生活歴,被相続人相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて相続人に対し相続財産の調査を期待することが著しく困難な事情があって,相続人がそう信じることに相当 な理由があるときは,「相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した又は通常これを認識しうべき時」を熟慮期間の起算点にするとしました。

要するに,あなたが母親には財産も借金もないと信じて放っておいた,そしてあなたが母親とは疎遠でよく母親の事情がわからず,母親の家を片付けても 財産も借金も見つからなかったなど,あなたが母親には財産も借金もないと信じたことがもっともだという事情があるときは,1年後に債権者から借金の返済を 要求されたなど,母親の債務の存在を知ってから3ヶ月以内に相続放棄手続をすればいい,ということです。


◆ 最後に

少し長くなりました。

どのような場合に相続放棄がなお認められるか,具体的に判断するのは難しいところです。

例えば,財産は少しあることは知っていた,しかし後に多額の借金を請求された,というケースではどうなるのでしょうか?
実際にありえそうな話です

次回に,上記の判例を踏まえた,具体的な裁判例を紹介したいと思います。


「親子じゃないのに子が相続?」【相続家庭問題12】

弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。

 

昨晩の食事は,もやし鍋でした。市販される鍋のつゆの種類が最近増えてきましたね,昔はキムチとちゃんこぐらいしかなかったように思います。カレー 鍋が出てきたあたりから急に増えてきたような気がします。鍋は野菜をたくさん食べることができるので,週に1度は食べています。

 

 

今回は,最近,法律雑誌に載っていたおもしろい裁判例を題材にお話をさせていただこうと思います。


◆ 親子関係が存在しない戸籍上の子には相続権がない

親子関係が存在しない戸籍上の子とは,どのようなケースでしょうか?

親族などから子を譲り受ける形で,虚偽の出生届を出し,実子として育てる例があります。これは,「藁(わら)の上からの養子」と呼ばれる慣行です。その出生届は虚偽のため無効であり,また出生届は縁組届の形式をとっていないため養子縁組としての効果も生じません。

珍しい例としては,産院で乳児が取り違えられた例もあります。

もちろん,戸籍上「子」と記載されていても,事実の方が優先します。

「子」は,第一順位の相続人ですが,親子関係がない以上は,戸籍の記載があっても,相続人の資格はありません。

他の相続人などの利害関係人から,親子関係不存在確認訴訟によって親子関係が否定されると,相続を受けられないことになります。


◆ 最近の裁判例

最近出た控訴審判決の中に,このような事例がありました。まだ,結論が出ていない事案のようなので,事例自体はデフォルメさせていただいております。

産院で取り違えられて長男として戸籍上の記載があるYさんは,戸籍上の父母と実親子同様の関係で生活していました。ところが,戸籍上の父母の死後, 戸籍上の弟Xさんらと相続をめぐって対立しました。そして,その遺産争いを直接のきっかけにして,XさんらがYと戸籍上の父母の親子関係不存在確認訴訟を 提起しました。

Xさんらの請求は認められるでしょうか?

DNA鑑定でYさんが戸籍上の父母の子ではない事実は確認されています。事実である以上,親子関係がないことの確認が認められるべきだと思われるで しょうか?実の子であるXさんらからすれば,実子ではないYさんが,相続において,自分たちと同じ「子」として平等に扱われるのは許せないかもしれませ ん。

もちろん,理屈はそうです。真実の親子関係と戸籍の記載が異なる場合には,親子関係が存在しないことの確認を求められることが原則です。
第一審はその原則どおりに考えたようです。

一方で,実の親子と同様に育った事実は無視していいのでしょうか?Yさんには落ち度はありません。遺産相続争いという財産争いのために,これまで築いてきたYさんの人生を否定してもいいのでしょうか?血縁関係がないといっても,日本では養子も認められていますよね?

例外的に,Yさんを保護してあげないといけないケースがあるような気がしますよね。


◆ 裁判所の判断

上のように,第三者(Yさんと戸籍上の父母との親子関係については実の子は第三者です)から,戸籍上の子と親の間の親子関係不存在確認訴訟が提起されたケースについては,5年ほど前の最高裁の判例がありました。

最高裁判例の事例は,「藁の上からの養子」のケースだったようです。

最高裁は,具体的な事情を考慮して,実親子関係の不存在を確定することが著しく不当な場合には,その確認請求は権利の濫用として許されないと判断しました。

そして,考慮される事情としては,
①実の親子と同様の生活実体の長さ
②不存在確認を認めることによって戸籍上の子が被る精神的・経済的不利益
③改めて養子縁組の届けをして嫡出子の身分を得ることができる状況か(父母が死んでいたらもう養子縁組ができない)
④第三者が不存在確認を請求する経緯,動機・目的
⑤不存在を確認できないことによって第三者以外に不利益が及ぶか
等の諸般の事情を挙げています。

実の親子として何十年も暮らしてきた,そのため本人のショックが大きいし遺産をもらえないのも酷だ,戸籍上の父母が亡くなっているから改めて養子縁 組できない,第三者が訴訟を提起したのは遺産目的・財産目的だ,戸籍を直さなくても他に支障はない,といった事情があれば,実親子関係の不存在確認は許さ れない可能性が高くなります。

不存在確認が許されないということは,結局,戸籍上の子はそのまま相続できるという結果になります。

そのため,「親子関係のない戸籍上の子が相続する」ことが実質的に認められることになります。

最近の控訴審の裁判例でも,上の最高裁判例と同様な判断枠組みで判断しました。最高裁の「藁の上からの養子」(戸籍上の父母は知っていた)事例ではなく,産院での取り違え(戸籍上の父母も知らなかった)の例でも,同じ枠組みで判断したところが新しいところです。

同裁判例は,①Yさんは戸籍上の父母と46,7年間という長きにわたり実親子関係同様の生活実体を形成してきた,②戸籍上の父母が亡くなっており新 たにYさんが養子縁組をすることができない,③不存在確認を認めるとYさんに重大な精神的損害・少なからぬ経済的損害を与えること,④Xさんらの訴訟提起 は遺産争いを直接の契機としている,⑤不存在を確認できなくてもXさんら以外に不利益を受ける人はいない,などの事情を考慮して,Xさんらの親子関係不存 在確認訴訟は権利濫用として許されないとしました。


◆ 最後に

親子関係がないのに実質的に相続を受けられるという例を紹介しました。意外だったのではないでしょうか。

法律は,法的安定性(継続している事実状態を尊重するという姿勢)を重視します。継続する事実状態が容易に覆されると,それを前提に形成されてきた社会関係が混乱してしまうからです。前々回お話した時効制度も事実状態の尊重がその根本にあります。

上のような親子関係不存在確認訴訟も,形成されてきた生活実体を重視し,血縁主義や戸籍は正確でなければならないという要請の例外を認めたものだと思います。

 


「だれが相続人になる?」 【相続・家庭問題11-2】

弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。

さっそくですが,前回の相続人の話の続きをお話いたします。

 

◆ 同時死亡の推定

事故などで,数名の人が亡くなり,そのうちある人が死亡した時点で他の人が生存していたかわからない場合には,法律上,同時に死亡したものと推定されます。これが同時死亡の推定です。

推定ですから,反証(証拠を出して覆すこと)はできます。

同時死亡とされる場合には,それらの者相互の間では相続が生じません。遺贈の効力も発生しないことになります。
例えば,祖父A,祖母B,父であるABの子C,母であるCの妻D,CDの子Eがいるケースを考えましょう。AとCが事故で亡くなったとします。

まず,Aが亡くなったら,相続人は妻Bと子Cですね。Cが亡くなったら,相続人は妻Dと子Eですね。
次に,Aに不動産があるとして,Aが先 に,次いでCが亡くなったら相続はどうなるでしょう。不動産の相続者は,まずAの妻B・子Cが1/2ずつでAを相続して,さらにCの妻Dと子EがCを1 /2ずつ相続します。結局,不動産は,祖母B1/2,嫁D1/4,E1/4の共有状態となります。
父Cが先に,次いで祖父Aが亡くなったらどうでしょう。Aの不動産の相続人は,Aの妻であるBが1/2,Aの孫Eが既に亡くなったCの代襲相続人として1/2を相続します。結局,B1/2,E1/2の共有状態となります。仮に,Eがいないとすると,Bがすべて相続します。
このように,死亡の先後によって相続の結果は大きく変わります。

そのため同時死亡の推定により,反証がない限り,その間では相続の関係がないものとして公平に扱うのです。
AとCとの間で相続の関係が生じないということは,Aの財産は,本来B1/2・C1/2で相続されるはずですが,Cがいないので,前回お話しした代襲相続により1/2をCの子であるEが相続します。Cの財産は,もちろん,DとEが1/2ずつ相続します。


◆ 遺言を破棄すると相続人でなくなる-相続欠格

民法では,一定の行為をした者は相続権を剥奪されると定めています。それが,相続欠格の制度です。

遺言の破棄は,その相続欠格事由の1つです。

相続欠格事由には,
1 被相続人,あるいは相続について先順位・同順位にある者に対する殺人・殺人未遂の刑を処せられた
2 被相続人が殺害されたことを知って,告訴・告発をしなかった
3 詐欺や強迫により,相続に関する被相続人の遺言作成・取消し・変更を妨げた
4 詐欺や強迫により,相続に関する被相続人に遺言作成・取消し・変更をさせた
5 被相続人の相続に関する遺言書を偽造・変造,破棄・隠匿した

相続欠格は,前回お話した代襲相続の原因となります。相続欠格者に子がいれば欠格者に代わって相続人となることになります。

相続欠格制度は,相続人の著しい非行行為を理由に,相続資格を法律上当然に剥奪する制度です。したがって,なんらの手続も要りません。


◆ 放蕩息子に相続させたくない -廃除

相続欠格ほどの非行や不正がなくても,被相続人が特定の推定相続人にその財産を相続させたくない場合,その意思によって相続資格を奪う制度が廃除制度です。

以前にお話したように,兄弟姉妹を除く相続人には,遺留分の権利がありますから,遺言を作成して特定の者に相続させないようにしても,限界がありま す。生前贈与で他の推定相続人に財産を移転させる場合も,税金の問題が生じますし,遺留分の問題もやはり残ります。しかし,推定相続人に対して相続させた くないという被相続人の意思に客観的に合理的な理由がある場合にまで,遺留分を保障する必要はないですよね。そのため,一定の要件の下で,裁判所が許可し た場合に限り,遺留分を有する推定相続人相続権を奪う廃除制度があるのです。

どのような場合に廃除できるかは,法律で決まっています。推定相続人に,被相続人に対する「虐待」「重大な侮辱」「著しい非行」がある場合です。そ の判定は,家庭裁判所が行うのですが,被相続人の感情など主観面からではなく,あくまでも客観的に判断されます。簡単に認められるものではありません。

有名な例では,年少時代から非行を繰り返し,暴力団員との交際・元組員との結婚,反対したにもかかわらず親の名前で招待状を出す,などの行為があっ た場合に認められたものがあります。否定されたものでは,過去に少年院に入ったが現在は更生した男性と親の反対を押し切った結婚した例などがあります。

廃除をするには,被相続人の請求が必要になります。被相続人が家庭裁判所へ調停・審判を申し立てる方法か,遺言によって意思表示をして,その死亡後に遺言執行者が家庭裁判所に廃除請求をする方法があります。

なお,一旦廃除しても,素行を改めたなどの理由で,その取消しをすることもできます。


相続人がいない場合は?

調査の結果,相続人がいるようだが行方がわからない場合と,調査の結果,相続人が本当にいないとわかった場合に分けてお話します。

相続人に行方不明者がいる場合は?
生死不明の状態が7年以上の場合には家庭裁判所に失踪宣告をしてもらえば,行方不明者が死亡したものとみなされますので,その時点と被相続人の死亡時の先後を見て,必要であれば行方不明者の相続人と遺産分割協議を行えばいいことになります。
生死不明の状態が7年以上続いているとは言えないような場合には,家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらって,不在者財産管理人と協議,調停などを行えばいいことになります。

相続人がいない場合は?
戸籍上推定相続人となるべき者がいないか全員が相続放棄をした場合には「相続人不存在」の状態となります。
その場合には,利害関係人などが請求して選任される相続財産管理人が,相続財産から債務の弁済を行ったうえで,特別縁故者の請求があれば財産分与を行ったり,残りを国庫に帰属させます。

相続人に未成年者がいるとき

相続に未成年がいる場合に,困ることがあります。

父親がなくなり,相続人は母親と幼い子3人だとしましょう。親権者は母親であり,母親は子の法定代理人なのですが,母親が子を代理して行った遺産分 割協議は,法的には無効です(子が成年になって追認しない限り)。客観的には,母親と子は共同相続人として利害相反関係にあると見られ,利害相反ある代理 は本人の同意がない限り無権代理行為として無効だからです。

そのような場合は,法的には,家庭裁判所に対して,それぞれの子について特別代理人を選任してもらって,その特別代理人と遺産分割協議をする必要があります。

◆ 最後に
相続の話は,みなさんに身近なお話ですし,一般の方向けの書籍も多数あります。当事務所へ相談に来られる方も,ある程度の知識を持って相談に来られますし,自分で手続などを始めている方も少なくありません。

ただ,相続に関する話は,奥が深く,ある程度の知識だけでは対応できないものだと感じています。知識の誤解や感情的な主張や言動によって,手続を誤った方向に進めていたり,いたずらに対立を激化させているような例も少なくありません。

そのようなことにならないようご注意ください。

 


「だれが相続人になる?」【相続・家庭問題11-1】

弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。

寒ブリが記録的豊漁みたいですね。氷見では去年の25倍の大漁らしいです。
生物の異常発生などの異常気象は地球温暖化の影響で起きたと言われるのが近年の定番であるところですが,この寒ブリ豊漁の原因は違うみたいです。
日本の冬の寒さ,日本海の海水温の低下が原因らしいですね。
いずれにしても,寒ブリが昨年の半値ぐらいのようです。今年は,寒ブリが食卓に並ぶ頻度が高くなりそうです。個人的には,照り焼きが一番おいしいと思います。

さて,これまで,相続問題についていろいろなお話をさせていただいたところですが,「だれが相続人になるのか?」という基本のお話をさせていただいていませんでした。

そこで,2回にわけて,相続人の範囲や相続人が見つからない場合について説明させていただこうと思います。

相続人の範囲を把握することはもちろん大事です。
遺産分割協議は,相続人全員の合意によらなければ成立しませんし,遺産分割調停なども他の相続人全員を相手に申し立てる必要があります。
また,相続放棄をしようとする場合でも,通常は相続人が居なくなるまで相続順位に応じて順次相続放棄をする必要があります(以前にも書かせていただきました)。
相続人を把握することがこれらの手続の出発点です。

なお,弁護士にとっても,相続人の範囲を確定するのは骨が折れる作業になることがあります。何代も前の先祖の名義の不動産が残っている場合などは, 数十人にものぼる相続人を戸籍で追跡する必要があります。また,戸主制度である旧法(明治民法)が適用される相続もあったりすると,さらに複雑になりま す。

◆ 配偶者は常に相続人となる

相続人が亡くなったら,その生存配偶者は常に相続人となります。

もちろん,被相続人よりも配偶者が先に亡くなっていたり,離婚したりして,被相続人がなくなった時点では既に婚姻関係が解消されているなら,相続人ではありません。


◆ 内縁関係の夫あるいは妻は相続人とならない

内縁関係の場合(実質的に夫婦同然の関係であるが,婚姻の届出をしていない場合)には,被相続人の内縁の夫あるいは妻には相続権がありません。
そのため,財産を内縁相手に残そうとするには,生前贈与,生命保険,遺言により対処する必要があります。

なお,内縁の相手でも,被相続人相続人がいない場合には,居住用建物の借家権を承継することができたり,特別縁故者として財産を承継することはあります。
もちろん,共有理論などの民法の一般理論での保護も考えることができます。


◆ その他の相続人(血族相続人)の順位,代襲相続

血族相続人は,
第1順位 子(代襲相続人,再代襲相続人を含む)
第2順位 直系尊属(父母や祖父母)
第3順位 兄弟姉妹(代襲相続人を含む)
の順で,配偶者とともに,あるいは配偶者がいないときには同順位者だけで,相続人になります。

配偶者とともにする相続の際の相続分は,直系卑属が1/2,直系尊属が1/3,兄弟姉妹が1/4です

「子」は,実子あるいは養子縁組をした子です。前妻・前夫との間の子や,他家に養子縁組した子(実家との縁が切れる特別養子のケースを除きます)も,「子」に含まれます。
非嫡出子(被相続人と婚姻関係にない母との間に生まれた子)も「子」に含まれますが,相続分は嫡出子の1/2になります(法律婚の尊重のためですが,平等原則に反していないか議論があるところです)。
なお,胎児も相続については既に生まれたものと扱われます。

「直系尊属」は,父母や祖父母です。子などの第1順位の相続人がいないか,その全員が相続放棄した場合に,相続人となります。当たり前ですが,直系尊属の中では,親等の近い方(父母は1親等,祖父母は2親等)が優先します。

「兄弟姉妹」については,第1順位,第2順位の相続人がいない,いなくなった場合に,配偶者とともにあるいは兄弟姉妹だけで,相続人となります。
父母の一方だけを同じくする兄弟姉妹は,父母の両方を共通とする兄弟姉妹の1/2の相続分となります。
なお,兄弟姉妹は,遺留分の権利がない点で他の相続人とは大きく異なります。そのため,遺言により兄弟姉妹の相続権を完全に排除することができることは,以前にお話させていただきました。

代襲相続について
子,兄弟姉妹については,「代襲相続」という制度があります。

相続発生以前(「同時死亡の推定」の場合も含みます)に,子が亡くなっている場合には孫が「子」の代わりに(「代襲相続」),孫も亡くなっている場合には曾孫が「子」と孫の代わりに(「再代襲相続」),相続人となります。

相続発生以前に,相続人であるべき兄弟姉妹が亡くなっている場合には,その子である「おい・めい」が兄弟姉妹に代わって(代襲相続),相続人となります。
兄弟姉妹の代襲相続は,子の場合と異なって1代限りです。「おい・めい」までしか相続を受けることはできません。

正確には,代襲相続が認められるのは,相続発生以前に相続人となるべき者が亡くなられていた場合だけではありません。子や兄弟姉妹に相続「欠格事由」がある場合,子や兄弟姉妹が「廃除」された場合も,代襲相続が認められます。欠格,廃除については次回にお話します。

一方,子や兄弟姉妹が相続放棄をした場合には,それらの子に代襲相続は認められません。

◆ 例を挙げると
相続人の関係者には,妻A, Aとの子B・C,Bの子(孫)D,前妻E,Eとの子F,母親G,姉H,なくなった妹の子であるめいI,がいるとしましょう。

まず,妻のAは無条件に相続人となります。血族相続人は,第1順位である子B・CとEです。法定相続分はAが1/2,B・C・Fが各1/6です。前妻との子は非嫡出子ではありませんのでご注意を。

相続人と子Bとが同じ自動車に乗っていて大きな事故で同時に亡くなった場合にはどうでしょう?同時死亡の場合にはその両名の間には相続が発生しません。ただし,代襲相続が認められています。結局,DがBに代わって相続することになります。

A,BおよびCが被相続人の借金が多いことを知って相続放棄をしたらどうでしょう?
相続人は,Fだけです。Bの子Dは相続人とはなりません。相続放棄では代襲相続が発生しないからです。

ではFも相続放棄をしたらどうでしょう?
そうすると第一順位の血族相続人である「子」がいなくなりますから,第2順位の「直系尊属」である母Gが相続人となります。

さらに,Gも相続放棄をすると?
第1順位に続いて,第2順位もいなくなりますので,第3順位である,兄弟姉妹が相続人となります。姉Hと亡くなった妹を代襲相続するめいIが相続人となります。相続分は,各1/2です。

◆ 最後に
次回は,今回のお話に出てきた,「同時死亡の推定」,「欠格事由」,「廃除」という言葉について簡単に説明させていただくとともに,もう少し突っ込んだお話をさせていただきます。


「債務はどう相続されるの?」【相続・家庭問題10】

弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。

水槽がいよいよ凄いことになって来ました。白コリドラスが増え続けていますし,オトシンクルスネグロの赤ちゃんまで登場してきました。
みんなが大きくなったら水槽を増やさないといけないなと頭が痛いです。


さて,相続のご相談を受ける中で,個人の借金がある場合の相続のされ方や遺産分割協議での扱いについて,ご存じない方や誤解されている方が多くいらっしゃると感じています。

そこで,今回は,故人(「被相続人」といいます)に債務がある場合の,債務相続のルール,それを踏まえて遺産分割ではどう扱ったらいいのか,についてお話しようと思います。

 

◆ 債務の相続についてのルール

相続人Aさんが亡くなり,その相続人が妻のBさんと子のC,Dさんだったとしましょう。AさんにはE銀行から借りた1000万円の借金を残しました。これだけなら相続放棄をすればいいのですが,そこそこの財産があったため,皆が単純承認しました。

債務はどのように相続されるのでしょうか。

借金は「可分債務」です。
例えば,「車一台」を引き渡す義務など分割できない(分割して車の一部を引き渡されても意味がないですね)債務を「不可分債務」,借金のように金額・数量などで分割できる債務を「可分債務」と言います。

相続が発生すると,「可分債務」は,各相続人に,法定相続分に従って,当然に分割して承継されます。上の例では,Aの相続に関し,相続人の各法定相 続分は,Bが1/2,C,Dが各1/4です。したがって,可分債務であるAの1000万円の借金は,Bが500万円,CとDが各250万円とに分割して受 け継がれることになります。

E銀行の方から見ると,遺産分割を待たずに相続人に対して請求することができる一方,Bに対して500万円,C・Dに対して各250万円しか請求することができないことになります。

もちろん,BがAの借金の保証人であった場合には,Bは保証人として1000万全額の債務を負いますが,それは相続とは別の話です。

 

◆ 遺産分割協議での取り扱い

借金は各相続人にその法定相続分に応じて「当然に」承継されます。

そのため,遺産分割が終了していなくてもE銀行は各相続人に返済を請求することができます。

では,相続人BCDの話し合いで,債務はすべてCだけが引き受けるという遺産分割協議を成立させることはできるでしょうか。

実は,そのような遺産分割協議は相続人BCD間だけで有効になるだけで,債権者E銀行には主張できません。「可分債務」である借金は,法定相続分に したがって「当然に」分割承継されますし,もし債権者にも対抗できるとすると財産・収入がない相続人に債務を集められて債権者が損失を被ってしまいかねな いからです。

財産を多く受け継ぐ相続人が債務も引き継ぐという遺産分割協議を行うことは稀ではないと思います。商売をされている方の相続は特にそうでしょう。

そのような内容の遺産分割協議が債権者に対抗できないということは,次のように困った事態が生じえます。
Cが財産を多く引き継ぐ代わりにE 銀行の借金も承継する内容で遺産分割を行って,E銀王に対して事実上返済を続けていたとしましょう。その後,Cがなんらかの事情で返済をできなくなりまし た。E銀行から,B・Dに対して,その法定相続分に応じて,返済要求をされました。B・Dは遺産分割の結果をE銀行に主張することはできませんから,返済 要求を拒めません。という事態です。

B・Dからすれば,遺産は多くCに取られにもかかわらず,借金は法定相続分に応じて支払わされるという,矛盾した結果を受け入れることになるかもしれません。

 

◆ どうすればいいか?

債務はCが引き継ぐ遺産分割協議の結果を借金にも及ぼそうとすれば,債権者との合意がどうしても必要です。そのような協議は,債権者の合意が得られてから成立させる必要があるでしょう。

具体的には,BCDが,E銀行との間で,Aの債務はCだけが引き受けるという契約(免責的債務引受契約)を締結すればいいのです。免責的債務引受契 約とは,引き受ける人が債務を負い,引き受けてもらう人は債務を免れるという契約です。そうすれば,Cがもし借金を支払えなくなっても,BDがCに代わっ て支払う必要がなくなります。

その際,BDが,保証人になったり,「重畳的債務引受契約」(引き受けてもらう人と引き受ける人が重ねて債務を負う契約)を締結したら,あまり意味がありません。


◆ 最後に

以上のように,遺産分割協議を行う際には,財産だけではなく,被相続人の債務の取り扱いが今後どうなるのかも考慮に入れて行う必要があります。

なお,保証債務の相続のご相談もよくあります。

保証債務も,法定相続分に応じて分割承継されます(なお,故人が代表者包括根保証を入れている場合には,保証人の地位は相続されませんが,すでに発生している債務については分割承継します)。

保証債務の場合は,その存在がわかりにくいこともあって,知らずに相続を受けたり,それを考慮せずに遺産分割をするケースもあります。気をつけて下さい。


「忘れた頃に借金返済の督促が来たら」 【借金問題】

弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。catface

職業柄,首と肩がよく張ります。そのため,定期的に事務所近くのマッサージ屋さんに行っています。

昨年,上海に行った際,気功院というところに表敬訪問して来ました。気功院といっても,公的な病院兼教育施設です。気功の先生はみな医師資格を持っ ているということでした。日本とは違い,気功・マッサージの位置は,西洋医術に劣らない権威があるようです。私もマッサージを受けたのですが,気功の 効果か,体が半日ぽかぽかしていました。

肩こりの悩みを持っていると,健康維持のために,マッサージはありがたく,それは他の医者とは変わりません。健康保険が使えたり,医療費控除の対象となったりしないものでしょうか。

さて,忘れた頃に借金返済の督促が来たという話をよく聞きます。「知人から借りたお金は返したと思うのだけど古いことだから思い出せない」,「督促 が来ないからもう大丈夫だと安心していたら多額の遅延損害金と一緒に請求された」,など事情は様々です。中には,古い債権を買い取って督促してくるような 悪質な業者もあるようです。

そこで,「忘れた頃に借金の督促が来たら」というテーマで,消滅時効のお話と注意点をお話したいと思います。

◆ 借金の消滅時効をご存知でしょうか?
忘れた頃に借金の返済の督促が来たとしたら,もうその借金は時効にかかっているかもしれません。

貸金などの債権は,権利を行使することができるときから,10年間行使しないときは消滅します。貸金業者の貸金債権は,商事債権として扱われ,5年間で消滅します。
それが,債権の消滅時効であり,誰から借りたのかによって消滅時効の期間が異なります。

貸金業者からの督促でしたら,最終返済日から5年経っていれば時効にかかっていると疑ってください。支払督促,訴訟,差押えなどの時効中断手続をとられていないかぎりは,時効にかかっている可能性が高いです。

もし時効にかかっていたら,「時効の援用」をすれば,借金は確定的に消滅します。時効の援用とは,消滅時効の効果を確定させるために必要な意思表示です。法的に形式は問われないのですが,念のため内容証明郵便で行った方が安心です。

時効制度の詳細は,また機会を見つけてお話します。

◆ 督促に対してはどのように対応したらいい?

消滅時効にかかっているのでしたら,あなたが時効を援用すれば支払わなくてすみます。相手には支払義務があるか調べると答えればいいです。

また,借金をすべて返済したはずだが,古い話だからその証拠(領収書など)が見つからないという場合も,時効を援用すればいいのです(返済した事実を証明しなくても支払い義務を免れることができます)。

しかし,時効制度を知っている人物や業者は,もし自分の貸金が消滅時効にかかっていたとしても,その上で,あなたに対し「少しでもいいから払ってくれ」「誠意を見せてくれたらいい」と言ってきます。

しかし,「時効にかかっているかもしれない」と思うなら,あなたはそのような言葉に応じて支払ってはいけません。それが小さい金額でもです。債務承認書に署名したり,返済の約束もしてはいけません。

実は,時効が完成した後,あなたがそれを知らずに一部でも返済等債務の承認をしてしまうと,信義誠実の原則により,あなたの時効の援用は認めないというのが判例です。
それを知っている人物は,あなたに対して,小さい金額でも払わせたり,債務の承認をさせようとしたりします。払ってしまうと,残りの金額も「時効は援用できないから返せ」と言ってきます。
実際にしばしばある話です。

判例の理屈は次のとおりです。
時効の完成後に債務者が債務の承認をすることは,時効の主張と相容れない行為である。債権者は,債務者がもう時効の援用をしないだろうと信頼するだろう。したがって,その後は債務者に時効の援用を認めないことが信義則上相当である。

でも,時効が完成した後に返済すると時効の援用を認めないということが,常に正義に適うでしょうか?現実にそれを悪用する人物はいます。時効を知らない人がそのような人物にだまし討ちを食らう可能性があります。

そこで,最高裁の判例ではなく,下級審の裁判例ですが,時効が完成した後に返済があっても例外的に時効の援用を認めたものがあります。

先にお話したように,時効完成後の返済があれば時効援用を認めない判例の理屈は,もう時効援用はないだろうと債権者が信頼・期待する以上,そのとお り時効援用を認めないのが信義則に適うというものでした。そのような理屈であったら,相手方がそのような期待をしない場合には,債務者の時効の援用を否定 する必要はないはずです。

そこで,裁判例では,「債権者及び債務者の各具体的事情を総合考慮の上,信義則に照らして,債務者がもはや時効の援用をしない趣旨であるとの保護す べき信頼が債権者に生じたとはいえないような場合には,債務者にその完成した消滅時効の援用を認めるのが相当といわなければならない。」として,その事例 では消滅時効の援用を認めました。

どういう事情があれば債権者に保護するべき信頼が生じていないと認められるのかは,まだ裁判例の蓄積がないため,判断しずらい状況です。ただし,もし返済などの債務承認をしてしまった後でも,争う余地があることは確かです。

◆ 最後に
忘れた頃に請求が来たという相談は意外に多いです。

その場合には,遅延損害金が加算され,元金の2倍の請求が来たりして,驚かれるようです。

その中には,時効にかかっていたり,引き直し計算をすると逆に過払金が出たりするケースも多いです。

ご自分で判断するのではなく,弁護士に相談して対応するのが安心です。


<<前のページへ123456

« 借金問題 | メインページ | アーカイブ | お知らせ »

このページのトップへ