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コラム

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「事業承継対策の必要性」  【企業法務】

弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。catface

 

 

大昔の話ですが,私が就職活動をする際,最初に受けた某企業の集団面接において,「企業にとって何が一番大切か?」と聞かれたことがありました。

私が「心です」と元気に答えると,面接官やほかの学生に笑われてしまいました。他の学生はもっともらしいことを話しており,恥ずかしかったです。
幼稚な考えだと思われたのでしょうか。当然,面接には落ちました。

しかし,銀行員あるいは弁護士として多くの企業を見てきた現在でも,「企業には心が一番大事だ」という考えは変わっていません。

心=経営理念は企業組織を貫く柱です。経営者の「心」が,組織の末端にまで到達していなければ,営業活動は上手くいくはずありません(営業マンが何 を話してもお客さんに何も伝わりません)。また,企業不祥事の原因も,経営理念が行き渡らなかったためのモラルが低下であることが多いようです。リスク管 理の根幹も経営理念の浸透にあります。

事業活動の根幹は,「心」だと思います。

ちなみにその会社は,斜陽の一途をたどっています。

さて,今回は,中小企業の「事業承継対策はなぜ必要か?」についてのお話をさせてください。

事業承継対策の必要性については,近年さかんに宣伝され,経営承継円滑化法など立法や金融支援制度などの手当てもされているところです。経営者の方に対して,金融業界や弁護士,税理士など,様々な業界からアプローチがされているのではないでしょうか。

私なりの考えることを,銀行員として多くの中小企業経営を見てきた経験やリスク管理部署にいた経験も踏まえた上で,かつ法律の専門家としての観点から(といっては偉そうですが),お話しさせていただきたいと思います。

結局は,「心」の引継ぎが必要だというよくわらない話になりそうですが…

◆ 中小企業の事業の継続のためには・・・

企業は,事業を継続していくことに存在意義のある組織です(ゴーイング・コンサーン)。企業活動には,経営者一族はもちろん,従業員や取引先など利害関係者が多く存在します。企業がその事業活動を止めてしまうと,それらの利害関係者に多大な影響を与えてしまいます。

大企業をイメージすると,一般的には株主(企業の所有者)と経営・事業資産は分離しています(「所有と経営の分離」)。株主の経営に対する影響力 は限られていますし,よほどの大株主が変更しない限り経営者は代わりません。事業資産も会社名義なので株主の変更により影響を受けません。そのため,株主 が代わっても事業継続に支障をきたすことはないのが一般的です。

個人事業主はもちろん,法人であっても,わが国の中小企業の場合は様子が変わります。所有(株主)と経営は分離していません。事業自体が株主(兼経 営者)の資質に左右されることが大きいことはもちろん,株主の変更は即経営者の変更を意味します。さらに,工場や社屋など事業用資産が株主名義になってい るケースも多いです。したがって,株主(兼経営者)が交代すると,事業継続への影響が大きいのです。

そのため,中小企業においては,事業の継続を確保するために,ひいては多くの利害関係人のために,後継者などにスムーズに事業を引き継ぐことを考えなければならないのです。

それが事業承継の問題です。


◆ 中小企業の事業承継対策をしないと
具体的な話をしましょう。

例えば,経営者が,遺言を作成することなく急に亡くなったとします。経営者の遺産の大部分は持ち株や事業用資産でした。法定相続分に応じて,持ち株や事業用資産(事業用不動産など)が分割相続されたとしましょう。
後継者はなんとなく長男みたいなのですが,まだまだ周りから信認されているとは言えず,そのため他の相続人も納得していません。
そして,仕事ができて従業員や取引先の信認も厚い次男が,他に株を持っている親族なども抱きこんで後継者争いが始まりました。
長男は何とか遺産分割協議をまとめたいが,話合いがまとまりそうもない。

極端な,最悪なケースです。この会社は,事業継続自体が危ぶまれますし,会社が分裂する可能性もあるでしょう。

このようにならないために事業承継の対策が必要なのです。


上の会社は何が悪かったのでしょう?

◆ 後継者の育成

上の例では,そもそも後継者の育成がおざなりでした。

まず,事業承継の肝は,言うまでもなく,後継者の育成です(M&A,MBOも含めて)。
後継者が育たなければ,他のどんな対策をとっても意味がありません。

ちなみに,銀行時代の経験上,経営者代替わりによって取引先の企業が傾いたという実例は珍しくありませんでした。

さらに,後継者争いが起こった企業の有形無形のダメージは相当なものでした。

そのようなことがあって,銀行も,取引先企業に後継者候補がいるかいないか,また後継者候補の資質などを,みなさんが思っている以上に気にしています。銀行の融資対応にも少なからず影響すると言ってもいいと思います。


◆ 一般的に言われる「事業承継対策」

一般的に「事業承継対策」といわれている方策は,後継者育成のための環境作り,引き継いだ後継者へのサポートの意味合いを持ちます。

企業は,「ヒト・モノ・カネ」で出来ています(「ジョウホウ」を含めることもありますが,ここでは「ヒト」に含まれると考えてください)。
事業承継というからには,それらを後継者にスムーズに引き継ぐ必要があります。

せっかく育てた後継者に,会社の「ヒト・モノ・カネ」をスムーズに引き継がないと,後継者を育成した意味がありません。これも当然に重要なことです。


◆ 「モノ・カネ」の承継の問題

上の例の「モノ・カネ」の面を話すと,まず,事業用資産が分割取得されている面が問題です。上の例のように親族間の関係が悪化すると,事業継続に支障を来たすおそれがあります。
また,持ち株が共有取得されている問題もあります。そもそも関係悪化による事業継続への支障がおきるという問題に加え,新しい取締役等の決定もままならない手続上の問題も生じ得ます。
さらに,資産形成面でも,持ち株と事業用資産に集中をさせすぎていて,遺産分割に柔軟性を持たせられない問題もあります。


◆ 「ヒト」の承継の問題

一方,「ヒト」の承継の問題は,従業員の志気,取引先との関係,銀行との関係など,「心」の問題になります。

上の例では,経営者の生前の行為あるいは遺言によって,他の親族が事業の引継ぎを納得できるような環境を作れなかったため争いを招きました。

さらに,従業員がモラルを維持できるような,取引先や銀行との関係を維持できるような後継体制が整備されていなかった問題もあります。対策をしない うちに争いが起きてしまった以上は,従業員の士気は下がり,築き上げた企業風土は消え去ります。取引先もどちらにつくか混乱するでしょう。もしかしたら銀 行は融資を引き上げるかもしれません。

そのようになってしまうと収拾をつけるのは難しくなります。事業継続が難しくなるか,あるいはダメージを負ったまま分裂してしまうかもしれません。


事業承継対策の必要性

上に挙げたのは極端な例ですが,多かれ少なかれ,中小企業にとっての経営者の交代は企業の命運を左右するリスクがあることなのはわかっていただいたと思います。

中小企業の事業承継が,企業にとっての大きなリスク要因である以上(しかも保険ではカバーできません),経営者にとって,そのリスク管理は必須です。

「家族が争って事業をだめにするようなことはあり得ない」と考える方もいらっしゃるでしょうが,それは事業承継リスク管理の放棄です。問題が起きた 場合のダメージは大きいため,問題発生の可能性が完全にゼロと証明できない限りは,それに対する対策をする必要があります。


事業承継対策っていうけど・・・

事業承継対策は具体的にどういうことをするべきか,上の例に沿って,ほんのさわりだけお話しさせていただきます。詳しくは機会を見つけてお話しようと思います。

◆ 後継者の育成には

企業理念,取引先とのパイプ,企業人として心構え,経営者の自覚,カリスマ等々の引継ぎは非常に難しく,皆が納得できるような後継者育成には時間がかかります。

また,経営者は,往々にして,自分が元気なうちはすべて自分がやりたいと思う傾向があると思います。企業経営者には,ある程度自分を抑えて,計画的に後継者を育てる責任があると思います。

後継者の育成の方法としては,他社に修行に出す,社内で育てていく,子会社や一部門を任せる,などいろいろな方針があると思います。

経験上,社内で育成する場合には注意が必要だと思います。どうしても,裸の王様になりがちなような気がします。

銀行のジュニア層向けの親族会に積極的に参加させたり,社内でもきつい仕事を受け持って苦労を知ってもらうなどもいいかもしれません。

個人的には,中小企業経営者やその後継者が集まる企業法務あるいはマネジメントの講座や私塾に参加することもいいと思います。意識の高い目上の人あるいは対等の人との交流は,きっとよい財産になると思います。


我田引水ですが,私も大学と連携して他の弁護士や税理士などと,そのような戦略的ビジネス法務の研究会の準備をしているところです。

◆ 「モノ・カネ」の承継は,財産権の承継の問題です。

財産権の承継の問題である以上,持ち株や事業資産の分散を防ぐ対処は,遺言の作成や生前の売買・生前贈与・死因贈与によってできます。ただし,どの 方法をとっても,極端な場合には遺留分減殺請求をされて結局争いが生じかねません。この点で,経営承継円滑化法の特例も万全とはいえません。

また,資産の形成方法にも配慮する必要があります。過度に持ち株と事業用資産に集中せず,遺言作成や将来の遺産分割に柔軟性を持たせる方がベターです。

なお,株式が共有状態になる手続上の支障は,きちんと定款等の手当てをすれば大丈夫です。

◆ 「ヒト」の承継の問題はどうでしょう。

「ヒト」の引継ぎは,従業員の志気,取引先との関係,銀行との関係,他の株主との関係など,「心」の問題になります。対策は簡単ではなく,一朝一夕にはいきません。

「ヒト」の承継には,納得のいく後継者の育成を前提に,経営者の想いやメッセージを利害関係人に対して伝えていくことが必要です。経営者の想いを 表す遺言の作成によって,経営者の理念,会社に対する想い,後に残された関係者に対する願いを伝えることも1つの方法でしょう。

「モノ・カネ」の承継対策だけでは限界があり,「ヒト」の承継対策が不可欠です。
「モノ・カネ」や相続税対策ばかり考えても意味はないのです。利害関係者の納得を得られないような(「ヒト」がうまく承継できないような)対策を講じても,万全な対策にはなりません。

「ヒト」の承継が完全なら,そもそも争いは生じません。むしろ,他の方策をとる必要はないとも言えるかもしれません。

もっとも,実際には万が一にも争いが生じるリスクは消せないため,「モノ・カネ」の対策も不可欠なのですが。

そのような観点で事業承継を準備して初めて,一般的な事業承継対策も実を結ぶことになります。


◆ 最後に
企業戦略としての事業承継は,経営者が自ら決断・実行する部分が大きなウェイトを占めます。企業や経営のことがわからない専門家のアドバイスだけで準備をしても不十分です。

今回は,抽象的な話に終始してしまった感があります。具体的な話はまたの機会にさせていただきます。

 


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中小企業のM&A価格の考え方 [企業法務]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。
 
今回の企業法務コラムでは、中小企業のM&Aの代金額の決定方法のお話しです。
 
当職は、M&Aに関わることが割合多く、最近は常に案件に携わっている状態が続いています。
すべて中小企業のM&Aです。
 
M&Aといっても、その形態はほぼ株式譲渡事業譲渡です。
合併や会社分割を絡めたM&Aのニーズやメリットは中小企業にはあまりありませんので。
 
関わり方はケースバイケースです。
交渉から関わるケース、買い手売り手双方のコーディネーターとしてかかわるケース、契約関係や法定手続だけサポートするケースなど、依頼者のニーズに合わせた関わり合いをします。
 
いただく費用も関わり合いに応じて千差万別です。
しっかり財務デューデリジェンスをする案件では、税理士と弁護士がセットでお手伝いします。
 
今回は買収価格の決定方法の話です。
 
勿論、買収価格の決め方には決まりはありません。
当事者が自由に決められます。
不当に安いあるいは不当に高い価格での売買には税務上のリスクがあるだけです。
 
もっとも、決めるのには目安がないといけませんね。
 
株式譲渡であれば、株式の価格です。
事業譲渡では対象事業(物も含めて)の価格です。

税務上の株式評価(相続税評価)は使いません。税金のための評価ですからね。
 
評価方法はいくらかありますが、経験上、中小企業の株式譲渡は、
 
時価純資産価格+営業権価格
あるいは
そのどちらか一方、

を目安に決めることが多いです。
 
時価純資産は、決算書あるいは試算表の純資産をベースに、含み益をプラスし、含み損をマイナスして算出された、所謂、清算価値・純資産価格ですね。
要するに、株式が表章する会社のモノ・カネの価格です。
 
この純資産価格ベースでの価格決定も多いです。
利益があまり出ていない会社はこれだけで十分だからです。
 
営業権価格は、会社が将来生む利益あるいはキャッシュフローを価格に反映させるものです。
 
営業権価格の計算は、
利益(キャッシュフロー)×1~5年
で行いますが、それぞれどの数字を持ってくるかが重要になります。
それにより数字はかなり変わりますから。
 
利益には、基本的に営業利益を持ってくるでしょうか。
 
減価償却費をプラス、時にはオーナー役員報酬の全部または一部をプラスするなどして、キャッシュフロー的な数字を持ってくることも多いです。

経常利益を使うこともあるでしょう。こちらの方が収益力が正しく反映されていることがあります。

ケースバイケースですね。
 
期間は、3年がスタンダードでしょうか。
業種や業態により、短ければ1年、長ければ5年でしょうか。
 
価格の目安が決まったとして、実際の契約価格を決めるには別の考慮をします。
 
売主が個人の株式譲渡のほとんどでは、前オーナーは会社を退きます。
 
株式譲渡による譲渡所得税よりも退職所得の方が一般的に有利です。
そこで、売り手には株式譲渡代金と退職金とを分けて受け取ってもらうことが多いです。
 
買い手にも損はありませんし。
 
総額を決めて、役員退職金をいくら受け取れるか検討し、残額を代金額にするというイメージです。
退職金支給により株式の価値は下がりますから当然といえば当然です。
 
次は事業譲渡の価格ですが、基本点には株式譲渡の価格の考え方に準じます。
 
全ての資産を含めた全事業を譲渡する場合には、株式譲渡と変わりませんね。
ただ、看板名を変えることのリスク、従業員を引き継げるかのリスク、取引口座を引き継げるかのリスクなど、価格マイナス要因はあるでしょう。
 
全ての事情譲渡であれば株式譲渡でもいいのですが、売り手の債務・リスクを遮断したいときには、債務を引き継がない形の事業譲渡にすることがありますね。

逆に、免許や取引先の関係で株式譲渡の方法しかとれないケースもあります。
 
一部の事業譲渡、あるいは資産を引き継がない事業譲渡では、引き継ぐ資産の時価に引き継ぐ事業の営業権価格を加えた金額が一応の価額の目安になります。
 
最初にお話ししたように、M&Aの価格は自由に決められます。
実際に、売り手・買い手のパワーバランスによって価格は大きく左右されます。
 
また、業種によっても様相が変わります。
いろんな業種のM&Aに携わると、様々なことに気付きます。
 
事業承継の一環として、後継者のいない会社のM&Aが増えているようです。
事業承継は後継者に引き継ぐか売却するかの2者択一ですからね。

逆に言えば、現在では、会社を買うチャンス、顧客・市場を獲得するチャンスも増えているということです。
 
事業承継の一環として、あるいは経営戦略の1つとしてM&Aをお考えになることもいいと思います。
 
顧問契約、契約トラブル、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
https://www.nakata-law.com/
 
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労働契約法20条 [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
最近、労働契約法20条絡みの裁判例をよく目にします。
企業法務のうち労務管理に関する問題ですね。
 
労働契約法第20条をご存知でしょうか。
次のような条文です。
第20条
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
 
分かりにくいですが、有期雇用契約労働者と無期雇用契約労働者(正社員)との間で職務内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定です。
 
「労働条件」には、労働者に対する一切の待遇が含まれます。
賃金、手当に限りません。
「期間の定めがあることにより・・・相違」とは、有期契約労働者と無期契約労働者(正社員)との労働条件の相違が、期間の定めの有無に関連して生じたものであることを意味します。
 
「不合理」の判断は、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理であるかを、
1 職務の内容(業務の内容および当該業務に伴う責任の程度)
2 当該職務の内容および配置の変更の範囲
3 その他の事情
を考慮して評価されます(総合判断)。
その他の事情の代表例は、定年再雇用の事実です。
 
気を付けないといけないのは、不合理かどうかの評価は、各賃金項目・各手当等個別の労働条件の相違毎に判断されます。
待遇の差異が総合的に判断されるわけではありません。
職務の内容等に照らして格差があることの理由が立たない手当が不合理な労働条件の相違と評価されています。
使用者には、個々の手当等毎に不合理ではないことの説明が求められますね。
 
不合理とされた労働条件の定めは無効となります。
無効となっても、有期契約労働者が無期契約労働者の労働条件と同一になるわけではありません。
しかし、不法行為に基づく損害賠償の対象となります。
 
実は、この労働契約法第20条は削除されることが決まっています。
規律がなくなるかというと、勿論、そうではありません。
パートタイム労働法に移管されることになります。
労働契約法第20条が、行政指導の根拠となるパートタイム労働法に移管されるという説明がありました。
改正後は、有期雇用労働者と無期雇用労働者との待遇の差が行政による指導・勧告の対象となるということですね。
 
なお、パートタイム労働法は、正式名称は「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」です。
改正に伴い、同法の名称が「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関す法律」に改められます。
 
施行日は来年の4月1日です(中小企業は再来年の4月1日)。
 
有期雇用労働者と無期雇用労働者の待遇の違いが不合理であってはいけません。
ただ、企業は様々な要素を考慮して人事施策を決定します。
有期雇用労働者と無期雇用労働者との間の合理的な待遇の差異も存在することは否定できませんね。
企業としては、合理的な待遇の差をつける場合にも、その方法はよくよく吟味しなければならないということです。
前述したように、個々の労働条件毎に不合理ではない待遇の差であることを説明できなければなりません。
結果として職務内容等の相違から合理的に説明できない手当等の名目により待遇の差が生じていれば、仮に総体的には合理的な相違だとしても、効力が否定されることになります。
 
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固定残業代・定額残業代 [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
企業法務のうち労務管理のお話です。
 
時間外労働等の割増賃金を固定・定額で支払うことは直ちに違法ではありません。
固定残業代あるいは定額残業代と呼ばれます。
 
既に最高裁の判例もあるところです。
固定残業代あるいは定額残業代の有効性判断の枠組みを見ていきましょう。
 
まず、時間外労働等に対する対価としての性質を有するものであるか否かが問題となります。
対価性の要件などと呼ばれます。
業務手当等残業代と違う名目で支払われている場合などに問題になります。
時間外労働等に対する対価として支払われていたかどうかは、雇用契約書等の記載内容のほか、具体的事案に応じ、使用者の説明内容や就労実態等の事情を総合的に勘案して判断されます。
合意内容の認定として一般的に採られる方法ですね。
 
次に、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とに判別できるかという問題があります。
判別要件あるいは明確区分性などと呼ばれます。
そして、判別ができる場合に、割増賃金として支払われた金額が、通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として、労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを踏まえて判断されることとなっています。
 
これら基準自体が総合的判断を前提とするものですので、基準を基にして具体的事情に応じて総合的に有効性が判断されます。
 
固定残業制・定額残業制を導入・維持するのであれば、有効だと認められるような仕組みを用意しておかなければリスクがありますね。
 
仮に固定残業代・定額残業代の支払いが有効ではないとされると、時間外等割増賃金が未払いとされ(一種のペナルティーである付加金も請求されるでしょう)、しかも割増賃金の計算の基礎に定額支給された手当も入ってしまうということになりますね。
 
そうすると、次のようなことに気を付けないといけません。
 
雇用契約書、労働条件通知書、賃金規程等就業規則にて、定額支給手当が時間外等手当として支払われている旨が明記されていた方がいいでしょう。
明記されていなければ、運用上しっかり時間外等手当として支払われていることが明確になっていないと厳しい判断が予想されます。
また、募集要項も含めて、曖昧な記載も避けなければなりません。
 
勿論、賃金体系上、所定内労働の対価の部分と時間外等割増賃金の部分を明確に区分できるものであることも必要です。
精勤手当の性質等の他要素を組み合せた形の定額支給手当は避けた方が無難です。
労働者が判別できるような計算指標、計算根拠となる時間数を超えた場合の精算方法も明示されることが望ましいです。
 
定額手当の金額は、法令上許される時間外手当等の範囲内の金額であること(法令の趣旨に反する金額であると有効性が否定されかねません)、時間外労働等の対価としての合理的な支給根拠が説明できる金額であること(それ以外に合理的な支給根拠がないこと、実際の勤務実態とほぼ合致していること等)も必要でしょう。
全従業員一律の額であると合理的な説明ができないかもしれませんね。
 
運用上も、支給時に支給対象の時間労働等の時間数と残業手当の額が明示されていること、
固定残業代によってまかなわれる時間数を超えた場合の精算をする取り扱いが確立していることも要請されます。
 
残業代等の固定支払いは、支払方法について法定されていないため、一概に無効とはされない傾向ですが、事案によっては無効と判断されかねません。
リスクを排除するためには、上述のような手当をしなければなりません。
 
固定残業制のメリットの1つは労務管理の簡便化でしょうか。
上述のように見ていくと、リスクを排除するには結局手間がかかるような気がします。
一定の無駄なコストも生じるわけですし、その分を賞与あるいは成果的報酬に反映する方が労働者のモチベーションの向上につながる経営戦略上のメリットがあるような気がしています。
 
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債務免除益の課税区分 [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
経営者などの個人が会社に対する債権について会社に債務免除を行うことはよくあります。
決算書の見栄えをよくするため、あるいはM&Aの下準備として、個人の会社に対する貸付を放棄することはよく見ますね。
 
債務免除益も原則として課税の対象となることは争いがありません。
数千万もの会社に対する貸付金を免除すると同額の益金が会社に発生します。
繰越欠損が潤沢にあり課税がなされない、あるいは高額な税金がかからない場面に限って考えることでしょう。
 
その逆、会社から個人に債務免除を行うことはあまりないかもしれません。
ただ、法人から経営者の離婚、相続対策の前提で行うことなど、いろいろな場面で考えることができると思います。
 
その場合に債務免除益を受けた個人の税金は所得税ですね。
所得税には、法人税と異なり、所得区分という問題があります。
所得税課税がありますよという注意だけではなく、所得の種類を考える必要があるのです。
法人から個人が受けた贈与は、一般的には、一時所得か、個人が役員・従業員の場合には給与所得になる、というイメージなのではないでしょうか。
私も、広島大学のロースクールにて(租税法を教えています)、法人からの贈与は一時所得か給与所得だよ、と教えています。
 
ちなみに贈与税は、個人から個人への贈与の場面での課税です。
 
法人から個人に対する債務免除について、債務免除益の所得区分が争われた地裁の裁判例を目にしましたので投稿します。
 
金融機関が、賃貸用の建物の建築資金とするための借り入れの返済に充てられた借入金の債務免除、農業用機械の購入資金とするための借入金の借り換え等にかかる債務の返済に充てられた借入金の債務免除、をおこなった事案です。
事案自体は特殊かもしれません。
 
納税者たる個人は、債務免除益を一時所等として申告したんですね。まあ、無茶な申告ではないと思います。
しかし、課税庁は、借入れ目的に応じて、事業所得、不動産所得、一時所得に該当するとして更正したのです。
 
所得税は所得区分に応じて税金のかけ方が違います。
一時所得は所謂2分の1課税の所得区分ですので税金が安いのですね。
更正により、当然税金が上がります。過少申告加算税賦課決定も合わせてされています。
裁判の事件名は、所得税更正処分等取消請求事件です。「等」の中に過少申告加算税賦課決定も入っています。
 
裁判所は、
所得区分の判断にあたっては、当該所得の内容及び性質、当該利益が生み出される具体的態様を考慮して実質的に判断される、
借入金の債務免除益の所得区分の判断においては、当該借入金の目的や債務免除に至った経緯等を総合的に考慮して判断することが相当である、
とします。

そして、
不動産貸付業務に充てるため、あるいは農業用機械の購入資金に充てるための借入金の債務免除益は、不動産所得あるいは事業所得に該当するとしました。
それぞれ、不動産貸付業務あるいは事業遂行による収入ということができるからということのようです。

また、不動産貸付業務、事業の運転資金的性質を持つ借入れの返済に充てられた部分の借入金、借換資金、及びその債務免除益も同様の性質を有するとしています。

勿論、不動産所得あるいは事業所得に該当する以外の債務免除益は一時所得とされました。
 
借入金の債務免除益の所得区分の判断においては、借入金発生原因をよく吟味しないといけないということですね。
債務免除益は、単なる法人から個人への贈与とは場面が異なるのかもしれません。
こういう裁判例がある以上、債務免除益は法人からの受贈益として一時所得でいいのではないか、と簡単にお話することはできませんね。
 
顧問契約、契約トラブル、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
https://www.nakata-law.com/
 
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契約書類の解釈 [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
現在控訴審で契約解釈の争いとなる裁判を1年以上続いています。
B TO Bの訴訟はほぼ契約内容の解釈で決着が付きます。
 
一審では当方の主張した点があまり細かく吟味されずに全面敗訴してしまいました。
 
控訴したところ、控訴審では、さすがに簡単すぎる判決だと感じてくれたのでしょう。
何も整理されていないじゃないかと指摘され(それは一審の裁判官の判断なのですが)、なかなかないことですが細かい審理を続けてくれています。
先日、控訴人である当方に有利な和解案が出されました。
和解は整わなかったのですが、逆転勝訴の可能性が十分に出てきたところです。
勿論、結果は最後までわからないところですが。
 
事案は、
注文書発行・預り金預託 ⇒ キャンセル ⇒ 預り金没収の念書作成 の流れで、預り金の違約金充当合意が無効であり預託金を返還しろと請求した訴訟です。
高級外車だったので没収された預託金が大きかったのですね。
 
注文書上、申込の撤回(キャンセル)ができるのか、契約が成立していて一方的解約ができないのか、が第1の争点でした。
原審ではきちんと当方の主張を汲み取ってもらえずに、あっさりと契約は成立しているから申込の撤回はできないと判断され、敗訴判決を貰いました。
 
一方、控訴審では、注文書の記載を細かく吟味して、契約は成立しておらず、キャンセルは可能であった、という方向で話を進めてもらっています。
 
確かに、注文書裏面の約款条項には注文書を発行したらキャンセルができないという条項はあったのです。
しかし、注文書の他の約款条項とは矛盾する内容でした。
条項全体を吟味していくと、やはり契約は成立しておらずキャンセルを許容する趣旨の合意だと見られるべき書類だったのです。
控訴審では、そこが理解されたということです。
書面の解釈で前提問題ががらりと変わるのが訴訟です。
訴訟では、いくら経緯や実態を説明しても、契約書類に「こう書いてありますよ。」とあっさり切られることも珍しくはありません。
勿論、契約書類の記載は、大きな武器にもなります。 

契約あるいは合意書面は大事であるということをことある毎にお話ししています。
FAXでもなんでもいいので書面を残しておくのです。
裁判になると想像以上に、条項や取り決めを吟味されて契約内容が解釈されます。契約条項が独り歩きする感もあるぐらいです。
処分証書の法理という考え方があります。
法律行為(契約など)を直接表す書面(契約書など)が真正に成立していれば、特段の事情がない限り、その記載どおりの法律行為の存在を認定するという考え方です。
実務では、契約書等があれば必ず勝てるというほどは厳格に適用されていない感がありますが、それでも処分証書となる契約書類は非常に重要なのですね。
理屈上は、反証が成功しなければ、処分証書の記載内容どおりの事実が認定されるのです。
その観点からいけば、個々の契約条項がよく吟味されるのは当然だと言えます。
 
企業の事前のリスク対策としては、契約書、少なくとも合意内容がわかる書類を残すことは勿論、個々の条項や取り決めが相互に矛盾しないようにそれらを作成することが必要です。
誰が見ても一義的に理解できる内容、このケースではこう解決されるとイメージができる内容にしなければなりません。
そのような契約書類があれば、相手方も争ってくることはあまりありません、トラブルが防止できますね。
トラブルが発生したら、当然、強力な武器として契約条項が使えます。

B TO Bのトラブルの相談に限りませんが、契約書、あるいは契約関係書類、合意書面がしっかりしているご相談は、ほっとします。
逆に、取り決め内容がきちんと残っていない案件は、どうやってそのことを立証すればいいのか、立証が可能なのかと悩むところです。
直接の証拠がないので、間接事実で立証することになりますが、実際そのような訴訟は多いです。
 
御社が使っている注文書や契約書のひな型を1度チェックしてみてはどうでしょうか。
取引の流れ(注文あるいは受注から代金支払いあるいは納品・代金受領)を、注文書や契約書等の取引関係書類に沿っていろいろなケースを想定しながらトレースしていけるかを見るのです。
こういう場合はこうなると明確に理解できるのであればいいのですが、そうでなかった場合には契約書類に不備があることになります。
契約条項1つの内容で、トラブルの発生の可能性、トラブルが発生したときの解決にかかるコストが変わってきます。
 
必要なコストだと考えて、一度専門家に契約関係書類を吟味してもらうことをお勧めします。
ひな型や、大口取引先関係を1回見てもらえば何度もチェックを受ける必要もないと思います。
 
本当は、書類関係だけではく、取引プロセス自体の監査をして、トラブル防止の仕組みを整備することもお勧めしたいです。
裁判をしてみると、依頼企業の主張を裏付ける記録が何もないという例も珍しくありません。
ルーティン化できる簡単な仕組みでそういうことは防げます。
 
なお、上記案件ですが、キャンセルはどうやらできそうという第1関門は突破しましたが、しかしキャンセル条項の中にキャンセルの場合には通常生ずる損害は賠償請求できる旨もありました。
そこで、現在は、通常生ずる損害とは何かを議論しているところです。

一審でやってくれていればよかったのですが・・・

なお、消費者契約法9条の話では通常生ずべき損害の立証は消費者側に負わされる傾向ですが、こちらはB TO Bの争いで条項自体に通常生ずべき損害と記載されているので、立証責任は損害を主張する側です。
 
顧問契約、契約トラブル、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
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