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コラム 仲田 誠一 24ページ目

「だれが相続人になる?」【相続・家庭問題11-1】

弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。

寒ブリが記録的豊漁みたいですね。氷見では去年の25倍の大漁らしいです。
生物の異常発生などの異常気象は地球温暖化の影響で起きたと言われるのが近年の定番であるところですが,この寒ブリ豊漁の原因は違うみたいです。
日本の冬の寒さ,日本海の海水温の低下が原因らしいですね。
いずれにしても,寒ブリが昨年の半値ぐらいのようです。今年は,寒ブリが食卓に並ぶ頻度が高くなりそうです。個人的には,照り焼きが一番おいしいと思います。

さて,これまで,相続問題についていろいろなお話をさせていただいたところですが,「だれが相続人になるのか?」という基本のお話をさせていただいていませんでした。

そこで,2回にわけて,相続人の範囲や相続人が見つからない場合について説明させていただこうと思います。

相続人の範囲を把握することはもちろん大事です。
遺産分割協議は,相続人全員の合意によらなければ成立しませんし,遺産分割調停なども他の相続人全員を相手に申し立てる必要があります。
また,相続放棄をしようとする場合でも,通常は相続人が居なくなるまで相続順位に応じて順次相続放棄をする必要があります(以前にも書かせていただきました)。
相続人を把握することがこれらの手続の出発点です。

なお,弁護士にとっても,相続人の範囲を確定するのは骨が折れる作業になることがあります。何代も前の先祖の名義の不動産が残っている場合などは, 数十人にものぼる相続人を戸籍で追跡する必要があります。また,戸主制度である旧法(明治民法)が適用される相続もあったりすると,さらに複雑になりま す。

◆ 配偶者は常に相続人となる

相続人が亡くなったら,その生存配偶者は常に相続人となります。

もちろん,被相続人よりも配偶者が先に亡くなっていたり,離婚したりして,被相続人がなくなった時点では既に婚姻関係が解消されているなら,相続人ではありません。


◆ 内縁関係の夫あるいは妻は相続人とならない

内縁関係の場合(実質的に夫婦同然の関係であるが,婚姻の届出をしていない場合)には,被相続人の内縁の夫あるいは妻には相続権がありません。
そのため,財産を内縁相手に残そうとするには,生前贈与,生命保険,遺言により対処する必要があります。

なお,内縁の相手でも,被相続人相続人がいない場合には,居住用建物の借家権を承継することができたり,特別縁故者として財産を承継することはあります。
もちろん,共有理論などの民法の一般理論での保護も考えることができます。


◆ その他の相続人(血族相続人)の順位,代襲相続

血族相続人は,
第1順位 子(代襲相続人,再代襲相続人を含む)
第2順位 直系尊属(父母や祖父母)
第3順位 兄弟姉妹(代襲相続人を含む)
の順で,配偶者とともに,あるいは配偶者がいないときには同順位者だけで,相続人になります。

配偶者とともにする相続の際の相続分は,直系卑属が1/2,直系尊属が1/3,兄弟姉妹が1/4です

「子」は,実子あるいは養子縁組をした子です。前妻・前夫との間の子や,他家に養子縁組した子(実家との縁が切れる特別養子のケースを除きます)も,「子」に含まれます。
非嫡出子(被相続人と婚姻関係にない母との間に生まれた子)も「子」に含まれますが,相続分は嫡出子の1/2になります(法律婚の尊重のためですが,平等原則に反していないか議論があるところです)。
なお,胎児も相続については既に生まれたものと扱われます。

「直系尊属」は,父母や祖父母です。子などの第1順位の相続人がいないか,その全員が相続放棄した場合に,相続人となります。当たり前ですが,直系尊属の中では,親等の近い方(父母は1親等,祖父母は2親等)が優先します。

「兄弟姉妹」については,第1順位,第2順位の相続人がいない,いなくなった場合に,配偶者とともにあるいは兄弟姉妹だけで,相続人となります。
父母の一方だけを同じくする兄弟姉妹は,父母の両方を共通とする兄弟姉妹の1/2の相続分となります。
なお,兄弟姉妹は,遺留分の権利がない点で他の相続人とは大きく異なります。そのため,遺言により兄弟姉妹の相続権を完全に排除することができることは,以前にお話させていただきました。

代襲相続について
子,兄弟姉妹については,「代襲相続」という制度があります。

相続発生以前(「同時死亡の推定」の場合も含みます)に,子が亡くなっている場合には孫が「子」の代わりに(「代襲相続」),孫も亡くなっている場合には曾孫が「子」と孫の代わりに(「再代襲相続」),相続人となります。

相続発生以前に,相続人であるべき兄弟姉妹が亡くなっている場合には,その子である「おい・めい」が兄弟姉妹に代わって(代襲相続),相続人となります。
兄弟姉妹の代襲相続は,子の場合と異なって1代限りです。「おい・めい」までしか相続を受けることはできません。

正確には,代襲相続が認められるのは,相続発生以前に相続人となるべき者が亡くなられていた場合だけではありません。子や兄弟姉妹に相続「欠格事由」がある場合,子や兄弟姉妹が「廃除」された場合も,代襲相続が認められます。欠格,廃除については次回にお話します。

一方,子や兄弟姉妹が相続放棄をした場合には,それらの子に代襲相続は認められません。

◆ 例を挙げると
相続人の関係者には,妻A, Aとの子B・C,Bの子(孫)D,前妻E,Eとの子F,母親G,姉H,なくなった妹の子であるめいI,がいるとしましょう。

まず,妻のAは無条件に相続人となります。血族相続人は,第1順位である子B・CとEです。法定相続分はAが1/2,B・C・Fが各1/6です。前妻との子は非嫡出子ではありませんのでご注意を。

相続人と子Bとが同じ自動車に乗っていて大きな事故で同時に亡くなった場合にはどうでしょう?同時死亡の場合にはその両名の間には相続が発生しません。ただし,代襲相続が認められています。結局,DがBに代わって相続することになります。

A,BおよびCが被相続人の借金が多いことを知って相続放棄をしたらどうでしょう?
相続人は,Fだけです。Bの子Dは相続人とはなりません。相続放棄では代襲相続が発生しないからです。

ではFも相続放棄をしたらどうでしょう?
そうすると第一順位の血族相続人である「子」がいなくなりますから,第2順位の「直系尊属」である母Gが相続人となります。

さらに,Gも相続放棄をすると?
第1順位に続いて,第2順位もいなくなりますので,第3順位である,兄弟姉妹が相続人となります。姉Hと亡くなった妹を代襲相続するめいIが相続人となります。相続分は,各1/2です。

◆ 最後に
次回は,今回のお話に出てきた,「同時死亡の推定」,「欠格事由」,「廃除」という言葉について簡単に説明させていただくとともに,もう少し突っ込んだお話をさせていただきます。


「債務はどう相続されるの?」【相続・家庭問題10】

弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。

水槽がいよいよ凄いことになって来ました。白コリドラスが増え続けていますし,オトシンクルスネグロの赤ちゃんまで登場してきました。
みんなが大きくなったら水槽を増やさないといけないなと頭が痛いです。


さて,相続のご相談を受ける中で,個人の借金がある場合の相続のされ方や遺産分割協議での扱いについて,ご存じない方や誤解されている方が多くいらっしゃると感じています。

そこで,今回は,故人(「被相続人」といいます)に債務がある場合の,債務相続のルール,それを踏まえて遺産分割ではどう扱ったらいいのか,についてお話しようと思います。

 

◆ 債務の相続についてのルール

相続人Aさんが亡くなり,その相続人が妻のBさんと子のC,Dさんだったとしましょう。AさんにはE銀行から借りた1000万円の借金を残しました。これだけなら相続放棄をすればいいのですが,そこそこの財産があったため,皆が単純承認しました。

債務はどのように相続されるのでしょうか。

借金は「可分債務」です。
例えば,「車一台」を引き渡す義務など分割できない(分割して車の一部を引き渡されても意味がないですね)債務を「不可分債務」,借金のように金額・数量などで分割できる債務を「可分債務」と言います。

相続が発生すると,「可分債務」は,各相続人に,法定相続分に従って,当然に分割して承継されます。上の例では,Aの相続に関し,相続人の各法定相 続分は,Bが1/2,C,Dが各1/4です。したがって,可分債務であるAの1000万円の借金は,Bが500万円,CとDが各250万円とに分割して受 け継がれることになります。

E銀行の方から見ると,遺産分割を待たずに相続人に対して請求することができる一方,Bに対して500万円,C・Dに対して各250万円しか請求することができないことになります。

もちろん,BがAの借金の保証人であった場合には,Bは保証人として1000万全額の債務を負いますが,それは相続とは別の話です。

 

◆ 遺産分割協議での取り扱い

借金は各相続人にその法定相続分に応じて「当然に」承継されます。

そのため,遺産分割が終了していなくてもE銀行は各相続人に返済を請求することができます。

では,相続人BCDの話し合いで,債務はすべてCだけが引き受けるという遺産分割協議を成立させることはできるでしょうか。

実は,そのような遺産分割協議は相続人BCD間だけで有効になるだけで,債権者E銀行には主張できません。「可分債務」である借金は,法定相続分に したがって「当然に」分割承継されますし,もし債権者にも対抗できるとすると財産・収入がない相続人に債務を集められて債権者が損失を被ってしまいかねな いからです。

財産を多く受け継ぐ相続人が債務も引き継ぐという遺産分割協議を行うことは稀ではないと思います。商売をされている方の相続は特にそうでしょう。

そのような内容の遺産分割協議が債権者に対抗できないということは,次のように困った事態が生じえます。
Cが財産を多く引き継ぐ代わりにE 銀行の借金も承継する内容で遺産分割を行って,E銀王に対して事実上返済を続けていたとしましょう。その後,Cがなんらかの事情で返済をできなくなりまし た。E銀行から,B・Dに対して,その法定相続分に応じて,返済要求をされました。B・Dは遺産分割の結果をE銀行に主張することはできませんから,返済 要求を拒めません。という事態です。

B・Dからすれば,遺産は多くCに取られにもかかわらず,借金は法定相続分に応じて支払わされるという,矛盾した結果を受け入れることになるかもしれません。

 

◆ どうすればいいか?

債務はCが引き継ぐ遺産分割協議の結果を借金にも及ぼそうとすれば,債権者との合意がどうしても必要です。そのような協議は,債権者の合意が得られてから成立させる必要があるでしょう。

具体的には,BCDが,E銀行との間で,Aの債務はCだけが引き受けるという契約(免責的債務引受契約)を締結すればいいのです。免責的債務引受契 約とは,引き受ける人が債務を負い,引き受けてもらう人は債務を免れるという契約です。そうすれば,Cがもし借金を支払えなくなっても,BDがCに代わっ て支払う必要がなくなります。

その際,BDが,保証人になったり,「重畳的債務引受契約」(引き受けてもらう人と引き受ける人が重ねて債務を負う契約)を締結したら,あまり意味がありません。


◆ 最後に

以上のように,遺産分割協議を行う際には,財産だけではなく,被相続人の債務の取り扱いが今後どうなるのかも考慮に入れて行う必要があります。

なお,保証債務の相続のご相談もよくあります。

保証債務も,法定相続分に応じて分割承継されます(なお,故人が代表者包括根保証を入れている場合には,保証人の地位は相続されませんが,すでに発生している債務については分割承継します)。

保証債務の場合は,その存在がわかりにくいこともあって,知らずに相続を受けたり,それを考慮せずに遺産分割をするケースもあります。気をつけて下さい。


「遺言書が見つかったらどうしたらいい?」 【相続問題】

弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。

週末から非常に寒かったですね。雪が少しでも降ると,慣れてない分,滑らないように歩くのに気を使いますね。

さて,遺言作成がなぜ必要かについては以前にお話しましたところです。今回は,故人が遺言を残していたことが,亡くなられてからわかった場合にどうしたらいいのかをお話したいと思います。

◆ 自筆証書遺言の形式をとった遺言書が見つかった場合

自筆証書遺言が見つかった場合には,家庭裁判所において検認の手続をする必要があります(しなくても遺言の効力には影響しませんが,過料に処されると法律で決まっています)。

検認手続とは,遺言書の存在や内容の保存を確実にして,後日の隠匿や変造を防ぐ手続です。遺言の有効性を確認するものではありません

なお,封印がある遺言書の場合には,勝手に開封してはいけません。家庭裁判所で開封する必要があります(反した場合,過料に処されると法律で決まっています)。
また,遺言書を変造・破棄した人は,相続欠格者となり,相続人としての資格を失います。

なお,公正証書遺言の場合には,検認手続は要りません。隠匿や変造の危険がないからです。

◆ 遺言書が見つかったのが遺産分割をする前だったら

相続人全員の合意(遺贈がある場合には受遺者も含みます)があれば,遺言と異なる遺産分割をすることはできます。ただし,遺言で遺言執行者が定められている場合には,遺言執行者との関係で問題が生じます。

なお,遺言の執行に関しては,遺言執行者が遺言で決められていない限りは,一部の内容の遺言を除いて,相続人が執行をすることができます。

もちろん,遺言執行者を家庭裁判所に選任してもらうこともできます。

◆ 遺産分割をした後に遺言書が見つかったら

遺産分割後に遺言が見つかった場合も,次の理屈ですでに行った遺産分割の効力を考えることになります。

遺産分割は,相続人等の遺産分割協議当事者の1人でも欠けると無効になります。また,遺産が実はなかったということだと当然に無効になります。
さらに,遺産分割協議の前提となる重要な事項について錯誤(そのことを知っていたら合意しなかった)がある場合も無効とする余地があります。そんな遺言があったなら,あんな分割合意はしなかったと主張するのです。

少し説明すると,以下のようになります。

相続人資格に変更がある遺言があった場合は?

認知,排除またはその取消しが遺言に書かれていた場合には相続人資格に変更があります。そのため,分割協議は有効だが金銭で賠償しないといけなくなる,分割協議が無効となる,などの事態を招きます。

◆ 遺贈がある場合は?

遺贈(遺言による贈与)があった場合には,それが全ての財産の遺贈であれば分割協議の対象となる財産が存在しないことになり,すでに行った遺産分割協議は無効です。
相続人ではない第三者に割合的(遺産の2分の1など)遺贈をした場合には,遺産分割の当事者が欠けていたことになります。そのため,すでになされた協議が無効となります。
相続人に対してそのような遺贈があった場合には,遺言があったらそんな不利な内容で合意しなかったという相続人から錯誤無効を主張できることになります。
特定の財産の遺贈があった場合は,その財産は遺産分割協議の対象から外れますので,その限りで遺産分割協議が無効となります。もちろん,それ以外の部分も,錯誤無効の話が出てきます。

◆ 「相続させる」旨の遺言があった場合は?

特定の相続人に対して,「包括的」に,「割合的」に,あるいは「特定」の財産を,「相続させる」との遺言があった場合です。その性質は,遺産分割方法の指定だとされています。
不動産を「相続させる」旨の遺言を残しておくと,単独申請で移転登記できるため(遺贈だとすると登記義務者である相続人との共同申請になります),このような遺言がさせているという事情があります。

包括的な場合には,全ての財産の遺贈と同じく,遺産分割協議は無効となるでしょう。
割合的な場合には,当該相続人が錯誤無効を主張できます。
特定の財産の場合には,相続人に対する特定遺贈の場合と同様に,その限りで遺産分割協議は無効となるでしょう。もちろん,それを前提に行った協議については錯誤無効の話が出てきます。

◆ その他の内容の遺言があった場合は?

その他の内容が定められた遺言が見つかった場合も,はじめに書かせていただいた理屈で考えていくことになろうかと思います。

◆ 最後に
今回は,少し難しいお話かなと思います。
遺言が見つかった場合,このように少しややこしい話になりかねません。
お早めに弁護士にご相談ください。

 


「亡くなった父の借金が見つかった!」 【相続問題】

弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。

「冬晴れ」という季語の印象が強いからでしょうか,冬にはすっきりと晴れる日が多いようなイメージを持っています。
ところが,この冬はからっと晴れる日が少ないですね。

そのため,洗濯物が乾きにくいようで,私のタンスの中の衣類はどんどん減っていって,中身がすかすかになっています。

猛暑の昨夏はあれだけ憎らしかった太陽が,今は恋しいものです。

 

さて,前回は,相続放棄などについて簡単にお話をしましたが,今回はその補足です。

◆ 遺産がなく負債があるだけなら,相続放棄すればいいの?
単純にそうとも言い切れません。

以前に,過払金返還請求を説明させていただきました。

例えば,被相続人が10年以上も前からずっと消費者金融からお金を借りていた場合には,引直し計算をすると過払金が発生している可能性が大きいです。
外見上は「負債」を負っているようでも,実際には過払金返還請求権という「債権」を持っていることもあるのです。

過払金返還請求権は遺産です,負債が大きいからといって相続放棄をすると,それも引き継ぐことはできません。

「単純承認」をすると,被相続人の過払金返還請求権は,法定相続分に応じて各相続人に分割して帰属することとなります(もちろん請求し取り立てることができます。)。

過払金がでる可能性が高ければ,早めに弁護士等の専門家に相談し,熟慮期間中に過払金の存否の調査をしてもらってから,相続放棄の要否を検討するのもいいでしょう。

◆ 父の相続人は子の私1人だけですが(祖父母もいません),自分だけ相続放棄すればいい?
相続放棄をすると,初めから相続人ではなかった扱いになります。

ところで,相続が発生すると,被相続人に配偶者がいれば常に相続人となり,それとともに,子(第1順位)→子がいなければ直系尊属(第2順位)→子も直系尊属もいなければ兄弟姉妹(第3順位)の順で,相続人になります。

同順位の相続人の全員(子ならすべての子)が相続放棄をした場合には,その順位の相続人が最初からいなかったことになり,後順位の推定相続人相続人となります。

ということは,あなたが相続放棄をすれば,第1順位の相続人がいないことになり,第2順位の直系尊属(父方の祖父・祖母)もいないから,第3順位の兄弟姉妹(あなたから見ると叔父叔母)が相続人となります。

第3順位の推定相続人である兄弟姉妹がすでに亡くなっているが,その子(あなたから見るといとこ)がいる場合には,代襲相続によって,いとこが相続人となります。

あなたの後順位に推定相続人がいなければ,あなただけが相続放棄をすると,もはや相続人がいなくなることになって,それでお終りです。
一 方,あなたの後順位の推定相続人がいる場合には,あなたが相続放棄をすると,後順位の推定相続人(いとこまで)が負債を相続してしまうことになります。通 常は,後順位の推定相続人相続放棄をする必要があるでしょう。あなたが相続放棄をする場合には,後順位の推定相続人への配慮も必要になります。

◆ 親戚に相続放棄を依頼できない場合は?
例えば,被相続人の負債が大きく,残された妻と子にも財産がなく支払える見込みがないというケースで考えてみましょう。

妻と子が相続放棄をした場合は,上に記載したとおり,後順位の推定相続人が負債を相続します。そのため,後順位の推定相続人に対し,「子の相続放棄によってあなたが相続人となってしまうから相続放棄の手続をとってもらいたい」旨,お願いする必要があります。

一方,母と子が一度相続を受けて(単純承認),その後母と子が自己破産をした場合には,どうなるでしょう?
負債は単純承認した母子が引き継いだことになりますので,実際に相続人となっていない後順位の推定相続人は債務を相続することはありません。
その母子が自己破産をするだけで,結局は債務を免れることができます。後順位の推定相続人に対して相続放棄の依頼をする必要はありません。

どうしても親戚に迷惑をかけられないという場合には,ここら辺のことも,参考として考えていいかもしれません。

◆ 最後に
相続放棄は,簡単なようですが,法律的に難しい問題もあります。戸籍の取り寄せなどの手続も意外に大変だったりします。

弁護士等の専門家に相談・依頼されることをお勧めします。


破産って恐い? 2  【借金問題】

弁護士の仲田誠一です。
 
朝のニュースで嵐とAKBで年間シングルオリコンチャートを独占したという話を聞きました。
ネット配信等でCDが売れなくなったと聞いて久しいですが、ネット配信等をあまり利用しない若年層がCDを買っているのかもしれませんね。
オリコンチャートはどのようにして作成されているかはわかりませんが。
 
さて、今回は前回の「破産って恐い?」の話の続きをお話します。


◆ 破産をするとみんなに知られてしまう?

破産手続き上,債権者には裁判所から通知が行きます。しかし,借金に関係のない職場や親族には連絡は行きません。

もちろん,破産手続の中で,破産者の住所氏名等が「官報」に載ります。「官報」とは政府が発行する新聞のようなものなのですが,見たことないですよね?普通 の方は見ないものです。また誰かが見ようと思っても,破産者はたくさんいらっしゃるので,いつ出るかわからなければ,なかなか見つけられるものではありま せん。
ただ,職場に一定年数以上勤務されている方は,退職金の見込額を裁判所に報告する必要があります,もしかしたらその関係で職場に協力をお願いする必要が出てくるかもしれません。
また,破産申立書類の準備にご家族の協力が必要な場合もあるケースもあるかもしれません。

私は,ご家族に関しては,(依頼者がどうしてもいやだとおっしゃるなら別ですが,)ご家族には相談するようお奨めしています。依頼者に経済的に立ち直ってもらうためには,ご家族に事情を知っていただき,協力していただいた方がいいと思うからです。

結論を申し上げますと,職場や家族に知られずに破産をすることは可能なのです。


◆ 破産をすると仕事を続けられない?

答えは原則としてNOです。
通常の会社員であれば破産の影響はありません。

ただ,一部の仕事だけ「資格制限」と言うものがあり,破産手続中はその仕事に就けません。
どのような仕事に就けないかは,細かく法律等で決まっています。
保険外交員や警備員など,人のお金を預ったりする職業が多いようです。

もっとも,一部の職業に資格制限があるといっても,それは破産手続が終わるまでです。破産手続が終わると法律上の制限は消えます。

自分の職業が資格制限に該当するかは,専門家にご相談ください。





◆ 破産をするとみんなに迷惑がかかる?

こちらも,答えは原則としてNOです。
もちろん,債権者には迷惑をかけることにはなります。ここで「みんな」とはご家族のことを念頭に置いています。

破産によって直接ご家族に迷惑がかかることはありません。
法律上,ご家族といっても別人格と扱われますので,あなたが破産をしてもご家族に債務が移るということはありません。
ただ,あなたがご家族等の借金の保証人になっている場合,あるいはご家族等があなたの借金の保証人になっている場合は,別です。

あなたが破産をする際には保証債務も債務として手続に乗せる必要があります。具体的には保証している相手方(たとえばお父さんの銀行からの借金に保証をして いる場合にはその銀行)に通知をすることとなり,(先の例では銀行からお父さんに対し)新たな保証人の追加などを要求されることもあります(銀行とお父さ んが交渉することになります)。
また,あなたが破産をするということは,当然,あなたの保証人に対し債権者から請求が行くことになります。



さらに,不動産をご家族と共有している場合には話が複雑になるでしょう。不動産の維持は,非常に込み入った話になり,ケースごとに判断する必要があります。弁護士などの専門家とじっくりご相談してください。







◆ 最後に

みなさんが思っているほどは,破産は恐くないということをお話しました。

もちろん,破産を積極的に勧めているわけではありませんからね。



ただ,破産でしか救われない方もたくさんいらっしゃるのが現実です。



借金でご苦労されている方は,是非早く弁護士等にご相談ください。あなたにあった解決策を考えましょう。


 


みなさんが思っているほど「弁護士も恐くない」ですよ。

 


破産って恐い?  1 【借金問題】

弁護士の仲田誠一です。
 
 
昨日は,久しぶりに高校の同級生が2人大阪と千葉から広島まで遊びに来てくれました。高校時代の同級生兼バンド仲間です。
懐かしかったです。高校の仲間と会うと,すぐに高校生に戻った気分になりますね。
 
さて,昨日の中国新聞に、クレジットカード・信販会社の消費者向け貸付残高が1年で1兆円減った、消費者金融も含めた新規貸付額もかなり減った、現金化業者やソフトヤミ金が後を経たない,との記事が載っていましたね。

ご存知のとおり「総量規制」の導入(年収によって貸付額を制限する)を含む貸金業法の改正があり、新規貸付がなかなかできなくなり資金業者の経営は悪化してきています。また,武富士の経営破たんをきっかけに,心配した消費者から過払金返還請求が急増し、経営環境がさらに悪化して新規貸付に慎重になっているようです。貸付が減っているということは、他から借りて借金を返してやりすごす自転車操業ができなくなっているということで、弊事務所でも返済に行き詰った方のご相談が増えてきています。

また、弊事務所でも過払金返還請求事件を多く抱えていますが、貸金業者の経営悪化に伴い、回収率 (計算上の過払金と実際に取り戻せる金額の比率)は急激に悪化しています。早々に、第2、第3の武富士が出てくるかもしれません。消費者金融などの高い金利で借入している方、あるいは借入していた方は、できるだけ早めに相談してください。

さらに、周りに相談できない、配偶者などに知られたくない、どこに相談したらいいかわからない、といったような方の中には、新聞記事にもあったように現金化業者に頼って、あるいはクレジットカードで商品を買ってすぐに売ることにより現金を得て、一時しのぎをする方が多いようです。それでは、何の解決にもなりません。借金を増やしてしまうだけです(クレジット利用も「借金」です。高い手数料分借金が増えてしまいます)。それだけでなく、以前にも書きましたが、いよいよ追い詰められて破産をする際には、その行為が問題視されてしまいます。

なお「ソフトヤミ金」と呼ばれる業者は、「ソフト」と呼ばれていても悪質な違法業者です。「ソフト」と言っても、借り手に警察や弁護士に駆け込まれないように、督促に手心を加えるだけです(個人的には呼び方が不適切だと思います)。絶対に借りてはいけません。人生が狂ってしまいますよ。


◆ 破産って恐い?
やっと本題に入りますが、みなさん「破産」って恐いでしょうか?
多重債務のご相談にこられる方の中には、最初に「絶対に自己破産はしたくない」という方がかなりいらっしゃいます。
その中にも自己破産を選択されるのが適切な方もいらっしゃるわけでして、そのような方には自己破産の制度を説明します。その際、そもそも自己破産について、今までの生活ができなくなる、子供など周りに迷惑をかけてしまう、など誤解している方が多いように感じます。
そこで、「破産は皆さんが思っているほど恐くない」ことをご紹介しようと思います。
 テーマ上、個人の自己破産のお話になりますが、法人の自己破産のお話はまたの機会にさせていただこうと思っています。


◆ 破産すると身ぐるみを剥がされる?
答えはNOです。自己破産をしても身ぐるみを剥がされるわけではありません。
なぜでしょうか?

それは、破産制度(個人の破産制度)は、破産者の経済的更生を図るための制度だからです。経済的に立ち直れないような制度であればその目的が達せません。
法律的に説明するとややこしいのでここではざっとしか説明できませんが、現預金,家財道具や価値のない(古い)車、解約返戻金の大きくない保険等、総額99 万円までの財産なら(原則として)残す途が用意されています。また,賃貸物件にお住まいの方であれば、そこを出る必要もありません。

少なくとも,破産自体によって生活ができなくなるということはないのです。


私が本題に入るのが遅く、長くなってしまいました。
次回に今回話せなかったことについて書かせていただきます。

「近況報告、個人関係、特にショッピング枠の現金化」

弁護士の仲田です。近況報告をさせていただきます。
<本日は個人関係のお仕事の近況をお話します。法人関係の近況は次回に書きますね。
個人関係の仕事といえば、やはり相続、離婚、債務整理(特に自己破産)が多いです。
悪徳商法等消費者問題にも積極的に取り組んでおります。

お仕事以外では、マンショントラブルについて最近2回にわたり毎日新聞にコラムを書かせていただき、また現在シニア層向けのフリーペーパーである「CHIC・シック」に遺言・成年後見・相続について記事を連載させていただいております。
最近、自己破産で特に問題となっているのが「ショッピング枠の現金化」の問題です。よく報道もされていますね。
「ショッピング゙枠の現金化」というのは、まず、業者(ヤミ金まがいの業者が多いです)から価値のない、あるいはほとんどない物をクレジットカード゙で高額で購入します(インターネットで簡単に手続ができます)。そしてクレジット会社から業者に払われる立替金(購入代金)から業者が高率の手数料を差し引いた現金を依頼者に渡すというものです(もちろん依頼者は立替金全額の返済義務があります)。貸金業法改正の影響で新たな借入れができなくなった方が勧誘され、藁をもつかむ思いで利用してしまうケースが増えてきています。

「ショッピング゙枠の現金化」の問題点
依頼者から見れば高金利でお金を借りた(高額の手数料が引かれた現金を手にするので)のと同じように感じてしまいます。
法外な手数料をとるそれ自体が問題なのですが、実はこれは犯罪といって言い行為であり、後に行き詰って(ここまで追い詰められると行き詰るケースがほとんどです)自己破産をする場合に支障もきたします。
価値を偽ってあるいは商品の購入実態がないのに信販会社へ立替金を請求するということでクレジット会社に対する詐欺になりうるのです。
もちろん依頼者にとっては追い詰められてしてしまった行為です。
しかし、裁判所はこのような行為に厳しいです(破産法で、このような場合には借金を棒引きにしてはならないと定められている免責不許可事由の1つに該当します)。
その場合に、破産(正確には免責)が全くできないわけではないですが、裁判所に免責を認めさせて困った依頼者をお助けする際に大変苦労をします。

私が日弁連の会合に出席した際、警察担当者の方が、 業者の実態がつかみにくいことと詐欺罪で立件すると利用者が犯罪の共犯となってしまい処理が難しいこともあって、摘発が難しいとおっしゃっていましたが、最近は業者の摘発を頑張っているようです。

なお、破産に支障をきたすのは、クレジットを返済する前にクレジットで購入した品物を質屋さん等に売却してしまうケースも同様です。
通常クレジットで購入したものは返済するまで所有権は購入者にはなく、クレジット会社等にあります。そのため、商品を勝手に売却すると、それも犯罪的行為となってしまうのです

ご相談に来られた方にそのような行為をされた方がいらっしゃると、もっと早めに相談していただければ先を見据えたアドバイスができたのにと残念に思うところです。
他にも破産法上やってはいけないことは多々あり、借金でお困りの方は問題を拡げる前にご相談いただければ助かります。

それは、借金問題に限りません、追い詰められる前に、争いを複雑化してしまう前に、お困りごとを弁護士に相談していただければと思います。

次回は、法人関係の近況をお話します。


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