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コラム 仲田 誠一 21ページ目

生前の財産管理 [相続問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

終活という言葉が流行って久しいですね。そこで、生前の財産管理についてお話させていただきます。

人が亡くなった際には、その財産は遺産として管理することになります
生前の財産管理はどうでしょうか?
 
生前は自分が財産管理すればいいじゃないかと言われそうですね。
確かに、そのとおりです。
しかし、生前の財産管理の相談を受けることも多いのですよ。
 
もちろん、ご本人が元気なうちはもちろんご自身が管理すればいい話ですね。
ご相談を受けるのは、
自分あるいは家族が「今は元気なんだけど、将来はどうしたらいいか不安だ」、
あるいは「財産を狙っている親族がいて自分が弱ったときにどうなるか不安だ」、
というケースが多いです。
「高齢で、詐欺等も恐いから、管理をしてほしい」
というケースもあります。
お一人暮らしの方からの相談が多いでしょうか。
 
海外では生前に資産を専門家が管理するというのも珍しくはないようです。
日本ではあまり聞かないですね。
 
ご本人の判断能力が法的に弱っていると評価されるレベルであれば、成年後見人、保佐人、補助人の話になりますので、単純な話です。法的手続が用意されていますから。
しかし、ご本人が悩まれるのはその前段階です。
 
法的制度を執る前段階で、他人に財産管理を任せるためには財産管理契約を結ぶことになります。
契約に基づき財産を弁護士等に管理してもらい、一定額を常に普通預金に入れてもらう、あるいは都度必要なお金を出してもらう等の方法で、財産が無駄になくならないようにしてもらうのです。
生前のお金の管理が明確になるため、相続争いを防ぐことにもなります。
遺言作成をセットにすることも多いでしょう。
あなたの意向に沿って動いてくれる弁護士なら安心ですね。
 
ただし、後にご本人の判断能力がなくなった場合に財産管理契約の効力が続くかは一つ問題なります。
もちろん、成年後見人が就任すれば契約は解消されるのだろうと思います。
 
そこで、財産管理契約時に、任意後見契約という契約を合わせて弁護士等と締結しておくことが望まれます。
ご本人の判断能力が亡くなった場合に指定された人が後見人になるという契約です。

財産管理契約を結び、ご本人の判断能力がなくなった際には、そのまま後見人として財産を管理してもらう、という形をとっていれば、財産管理に支障を来たすことがなくなるでしょう。

弁護士に財産管理をしてもらう過程で、様々な相談をして助言もしてもらえます。
心強い相談相手になるかもしれません。

生前の財産管理に関するトラブルも珍しくはありません。お子さんの間でトラブルになることが多いですね。
親御さんがお子さんの争いを止めるのはご苦労なことのようです。
財産管理契約を締結すればそのようなトラブルも防ぐことができるでしょう。


ご本人あるいはご親族の財産管理に不安を持たれている場合には、専門家に相談してみてはどうでしょうか(もちろんご本人の意向は無視できませんので、ご本人も一緒にお話を聞かれた方が良いとは思います)。

なお、終活サービスが盛んに宣伝されています。
中にはいかがわしい団体もあると聞きます。お気を付けください。
 
遺言、相続、遺留分等相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
 
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602

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個人の所得税と法人の法人税の違い [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。

所得税と法人税の違いをお話いたします。
個人と法人とは税金の仕組みが全く違います。
会社経営をされている方の節税や事業承継対策もそこら辺がヒントになることが多いです。
 
当職は昨年度から広島大学大学院法務研究科(いわゆるロースクール)にて税法の講義を担当しているのですが、学生に対する講義もそのような話からスタートしました。
 
税法はかなり細かいのです。
不正確になることを承知で、ざっくりとしたお話をしましょう。
 
個人の所得税と法人税の大きな違いは2点です。
 
まず、個人の所得税では、所得が10種類に分けられて、それぞれ課税の仕方が異なります。
これに対して、法人税は一律です。

所得税には税金が安い所得の種類があります。その代表例は、退職所得です。
法人から個人への財産移転を考える際にはその点を考える必要があります。

次に、所得税は超過累進課税であるのに対し、法人税は一律税率です。
個人の所得税は、所得を分散するだけで1人あたりの所得が減るため適用税率が下がり、節税になります。
会社で税金を払うか、個人で税金を払うかの問題もあります。
 
これらの点を一番考えないといけないのが事業承継の場面です。
 
事業承継対策をするには株式承継は勿論、遺留分対策、相続税準備のために後継者の資産育成も必要でしょう。先代の遺産の維持・形成との兼ね合いも問題となります。
どうしても、会社から個人(先代あるいは後継者)への所得移転の場面が出てくるのです。
現オーナーの資産形成を図るべき場合もあるでしょうし、承継に備えて後継者の資産育成を図るべき場合もあるでしょう。
なお、会社の内部留保を蓄積する一辺倒は、税金面、事業承継面では愚策です。
 
会社⇒先代あるいは後継者への資産移転は、できれば安い所得分類になるよう、できれば所得を分散するよう、中長期計画を立てて、適切なタックスプランニングを行うことが得策です。
 
もちろん、具体的にどのような対策を行うかは会社や個人の状況によって異なります。
オーダーメイドでプランを立てないといけません。
 
なお、事業承継は、税金のことだけを考えてはいけません。
タイミング、緊急性等を加味して税金がかかっても行うべき手段は行うという心構えが必要です。
税金対策に終始するのではなく、適切なプランニングが大事ということです。
今回は、税制面のお話でしたが、会社の承継は、経営資源であるヒト・モノ・カネ・ジョウホウの承継です。
カネのことばかり考えても承継は成功しません。
きちんとした計画を立てて進めるべきです。事業承継税制を利用したら終わりという話ではありません。


ちなみに、税法にはちゃんと同族会社の行為計算否認等の否認規定が用意されています。
後に否認されるような節税対策を行うことはコストを逆に上げることになりますのでご注意ください。

事業承継は、法律面でのサポートは勿論、税制の統一的理解の下で進めなければいけないということですね。
 
顧問弁護士のご用命は是非なかた法律事務所に。
 
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生活保護受給者の自己破産 [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

久しぶりのコラム更新となりました。
今回は債務整理の話です。
 
生活保護を受けていらっしゃる方の債務整理の相談もよく受けます。
 
ところで、生活保護費から借金は返してはいけない建前となっております。
当職が調べた限りでは法律上明文で規定されているわけではなさそうですが、借金の返済は最低限度の生活保障という生活保護の趣旨に反するからでしょう。

なお、勿論生活保護受給者が借金をすることも許されていません。基本的に収入認定されてしまいます。
 
そのため、生活保護受給者が借金を抱えていることが分かった場合、ほぼ例外なく生活保護の担当課から借金の整理を指導されます。市役所の相談課からそのような方の相談を承ることもよくあります。

生活保護を受給している方からの債務整理のご相談を受けた場合には、
ご本人がどうしても任意整理をしたいとおっしゃらない限り、
あるいは借金の金額がおよそ自己破産をすることが考えられない金額ではない限り、
自己破産を申し立てる方向で助言をいたします。
生活保護費から借金の返済をしてはいけない建前だからです。
勿論、生活保護費から返済していくのは厳しいはずですし。

そして、生活保護受給者であれば、数十万の借金でも自己破産が認められる傾向です(広島本庁ですが)。
中には10万円を切る借金でも認めてもらったことがあります。
最初は、借金額が小さいことを裁判所に指摘されていましたが、何件か頑張るうちに金額が小さくでも自己破産をすんなり認めてくれるようになってきました。
 
そして、費用の面です。
生活保護受給者は、実質的に費用をかけずに弁護士に依頼して自己破産を申し立てることができます。
法テラスの民事法律扶助という制度を利用します(もちろん当事務所にてその手続は行います)。
そうすれば、弁護士費用、予納金は法テラスが立て替えてくれ、しかも、生活保護を受けている限り、立替金の猶予、免除を受けることができるのが通常です。
その意味で実質的に費用負担はありません。
 
生活保護を受給している場合で借金を抱えている方は、このような支援制度がありますので、費用のご心配をなさらずに、ぜひご相談ください。
 
借金整理、民事再生、自己破産のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
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自己破産、民事再生で車はどうなるか [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

債務整理のうち、自己破産、個人再生をお考えになる方の中で、どうしても車がないと困るとおっしゃると相談されることが多いです。

住んでいる場所、仕事の関係あるいは介護の関係で、どうしても車がないと困る場合ですね。

まず、債務整理のうち任意整理ではあまり問題とならないですね。
財産を処分される場面はないですし、
所有権留保のオートローンを債務整理の対象から外せばいいだけです。

そこで、今回は、自己破産、個人再生における自動車の取り扱いについてお話します。
 
まず、車が所有権留保物件なのかどうかが問題となります。

所有権留保とは、代金や立替金を支払うまで所有権をクレジット会社が保有する形の担保です。

自動車の場合には車検証の所有者名義がご本人ではないケースです。

自己破産、個人再生では、一部の債権者を対象から外すことはできません。

車が所有権留保物件であれば、支払いをストップする以上、法律上返還義務があります。
債権者が車の返却を受けることを引き揚げといいます。

所有権留保物件の車の中には、価値が全くないため引き揚げをしないと債権者が所有権を放棄するケースもあります。

なお、銀行のオートローン、マイカーローンの場合には所有権留保がなされていないことが通例です。

所有権留保物件でも車を残したい場合もあります。

その場合には残債額で親族等に買い取ってもらう例もありますね。
その方法は複数あり、債権者と相談して決めることが多いです。

破産者の財産からお金を出したのではない限りは、問題視されないことが多いです。
ただし、仮に残債よりも価値が高い車であれば、その差額が問題となりますね。

要件が厳しいのであまり使わなない方法ですが、個人再生で別除権協定を結んで所有権留保物件を残すということも考えられます。

ただし、所有権留保物件の車を債権者に車を返却する場合には注意が必要です。
 
登録が対抗要件(担保として誰にでも主張できる要件)となっている普通自動車は簡単に返してはいけません。

車検証上、クレジット会社が所有者として記載されているのならばいいのです。
しかし、販売会社等が記載されている場合は、対抗要件がない担保になる可能性があります。

そのまま返してしまうと後の法的手続で、否認対象行為として見られ、それだけで管財事件になる可能性があります。
民事再生上も類似の問題が生じます。

販売店が所有者として記載されている場合であっても、最近の契約書では、対抗要件を備えた担保として見られるケースもあります。
難しい言葉ですが、法定代位構成の保証方式の契約書で最高裁が認めました。
弁護士に確認してもらわないといけません。

普通自動車と異なり、軽自動車は引き渡しが対抗要件です。
基本的には占有改定という引渡しが認められるので、返却の際には神経質に考える必要はありません。
 
次に、あなたが車の完全な所有権を持っている場合(所有者登録があなたの名義の場合)、車を処分する必要があるかどうかが問題となります。
 
処分しないといけないかどうかは、状況によって異なります。
 
自己破産ではどうでしょうか。
 
自己破産においては、広島本庁では、初年度登録後6年以上経っているのであれば、価値はないと評価してくれ、原則として処分は必要ありません。

通常は残すことができます(破産管財人によってはそれでも時価を調査することはあります)。

ただし、外車や高級車等古くても価値が出そうな車の場合には話が別です。

管財事件になり処分をされることもあります。

また、車が借金の原因になっているような場合は処分を勧奨された経験もあります。
 
そこまで古くない車の場合はどうでしょうか。

管財事件の場合には破産管財人による処分の方向に進みます。

もっとも、処分の代わりに価値相当の現金を入れる方法もありますし、車がどうしても必要な事情があれば自由財産の拡張も可能でしょう。

同時廃止事件では処分しなくても大丈夫です。

ただ、車の価値がある場合には、管財基準(広島本庁では財産20万円が基準)により、それだけで管財事件になることがあります。
 
自己破産ではなく個人再生ではどうでしょうか。
 
勿論、所有権留保物件は返却が必要なことは個人再生と自己破産とで異なりません。

所有権留保物件ではない場合には、個人再生においては、車の価値が清算価値にのってきます。

個人再生の返済額は、
債権額の5分の1(多くの場合です。債務額によって基準が変わります)
清算価値(財産額)
100万円
のうち一番大きい金額といった基準で決まります(小規模個人再生の場合)。

給与所得者等再生では、可処分所得の2年分という基準が加わります。

車の価値によっては清算価値が大きくなり、返済額が増えてしまうということがありえます。

ただ、処分をする必要はありません。

 なお、先ほどの所有権留保物件で登録がクレジット会社とずれて対抗要件がない普通自動車についても、その価値が清算価値に加算されます(その場合、車を返す必要があるのかは解決されていない問題ですが、返還をしないという理屈が十分成り立ちます)。
 
以上、自己破産、個人再生における車の取り扱いについて簡単にお話しました。

結局はケースバイケースでよく考えないといけない問題ですので、お早目に弁護士にご相談ください。
 
借金整理(自己破産、個人再生任意整理等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
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新株発行価額 [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。

前回、事業承継対策等の戦略的経営のための種類株式や属人株式の活用をお勧めしました。
 
それに絡む新株発行の価額について若干の補足をします。

新株を発行するのは、文字どおり資本を導入することもあれば、株主構成の変更を企図するものもあると思います。
いずれにせよ、会社に何かがないとあまりやりませんね。
将来の紛争の火種がある場面が多いかもしれません。
 
そこで、新しく株を発行する場合には、その発行価額に注意しなければいけません。
 
新株発行において、それを面白くないと思う株主がいる場合、「特に有利な金額」で発行したと判断されると手続要件が加算されるため、株主総会決議を取り消されるなどして効力を覆されるリスクがあります。
 
特に有利な金額で発行した(「有利発行」といいます。)とされるのは、「公正な価額」を下回る価額設定をしたときです。
 
漫然と、当初の発行価額で新株を発行してはいけないのです。

この点、旧商法下の事件ですが、近時判例が出ました。
 
非上場会社が株主以外の者に新株を発行するに際し、客観的資料に基づく一応合理的な算出方法によって発行価額が決定されたといえる場合には、その発行価額は、特別の事情のない限り、有利発行には当たらない。
 
とするものです。
 
相場が出ている上場会社の株式と違って、非上場株式の株式は、時価の評価方法自体が、純資産方式、類似会社比準方式、配当還元方式、収益還元方式、DCF方式等、と多岐に別れています。
「これが正しい」という明確な基準はありません。
そのため、何が公正な価額=時価に近い価額であったかを、事後的に、評価方法のどれかによって検証されてしまうと、新株を発行する側は恐いですね。
新株を発行する時点で、将来どのような基準で公正な価額が判断されるのか予測できないからです。
 
先の判例は、経営者の予測可能性を考慮して、公正な価額を事後的に検証するのではなく、当時の経営者の判断過程が合理的であったかどうかを検証するとした判断です。
これにより、経営者は、発行当時に客観的に妥当と思われる判断過程で決定すれば安心です。
裁判所の言い回しである「特段の事情」は一般的に簡単に認められません。
もちろん検討資料等、専門家の意見等判断過程の妥当性を証する書面は作成、保存する必要があります。
むしろ、判例は、それらの資料をきちんと作成して保存することを要求する趣旨と捉えるべきでしょう。

実務に即した判断と言えるかもしれません。

なお、従業員に対する新株発行に多いですが、時価を無視して従前の発行価額にて新株を発行した場合、税務上の問題も出てきます。
会社や経営者が従業員に対して発行した株式を購入する場面でも、時価を無視して従前の発行価額にて買い取ることもありますね。こちらも税務上の問題が出てきます。
思わぬ課税関係を発生させるので、ご注意ください。
 
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種類株式、属人株式2 [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。

前回からの種類株式、属人株式のお話の続きです。

種類株式、属人株式の活用例ですね。
 
後継者に引き継ぐ前に中継ぎ経営者を用意する場合があります。
中継ぎ経営者が株主である場合あるいは経営に一定の責任を持ってもらうために株式を取得してもらう場合には、後継者の株式と中継ぎ経営者の株式の種類を変えることでスムーズになるでしょう。
経営に責任を持ってもらい、かつ将来揉めることがないようにする対策ですね。
 
後継者育成のため種類株式としては、黄金株(議決権制限・拒否権付・取得条項付)を先代が持つ例がよく挙げられます。
お目付け役の株ですね。
個人的には、2種類の議決権の属人株式(ステップ・ダウン株)を設定する方がおもしろいと思います。
先代と後継者の議決権数が年を経るごとに変わるものです。最初は先代が決定権を有する議決権数を維持し、後継者の成長に合わせて何年かすれば後継者の議決権数が先代の議決権数を上回ります。

外部資本を導入する際には、議決権制限、取得請求権付、取得条項付、代金、議決権復活条項、拒否権付等様々な組み合わせを設定することが考えられます。
種類株式の内容によって利害調整をするわけです。
ただ、外部資本の導入は、結果的に借り入れよりもコストが高くつくことがあります。
IPOを企図している場合は別ですが、慎重に進めないといけませんね。
 
大株主が事故等で判断能力を失った際、行方不明になった際に、株主総会の定足数を満たすことができずに株主総会開催ができない事態があります。
新たな取締役の選任すらできなくなります。
成年後見人や不在者財産管理人の選任では経営の継続がおぼつきませんし、時間がかかります。
特に、揉める要素があると困るのですね。
そのような事態を回避して会社の継続を可能とするものとして、属人株式を利用することもお勧めです。ヒーロー株と言われているようです。
 
他にもいろいろな場面での活用が可能です。会社の戦略に応じた設計ができるのです。
せっかく会社法がこのような制度を用意してくれました。
組織設計は、戦略的経営そのものではないですが、戦略的経営を支えるものとして、経営者の方々には是非検討していただきたいところです。
 
次回、新株発行の価格について補足します。
 
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種類株式、属人株式1 [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。

前回、定款自治のお話の中で、種類株式、属人株式に触れました。
今回は、その補足をいたします。
 
会社の所有者は株主です。
株主は数量的に(持ち株数に比例して)平等に扱うのが原則です。株主平等原則です。
ところが、今は株主平等原則の例外が認められています。
それが、種類株式、属人(的)株式です。
 
それらが認められた理由は様々あります。
ざっくり申し上げると、資金調達を多様にする、経営形態を多様にするといったところでしょうか。
 
中小企業にとっては、外部資本を導入するためのほか、事業規模に応じた戦略に応じた機動力ある意思決定をするために、あるいは事業承継、会社の継続のために利用すべき制度です。
 
種類株式は、内容の違う株式のグループを作るとイメージしてください。
配当、残余財産、議決権、譲渡制限、取得請求権付、取得条項付、全部取得条項付、拒否権付(黄金株)、役員選任解任権付について内容の違う株式を発行し、それぞれ株主に割り当てるのです。
ニーズに合わせて、複数の内容を組み合わせることもできます。
登記事項なので種類株式の発行の事実は外部からわかります。
 
なお、同時に種類株主総会決議不要の定款の定めもしておかないと面倒です。
 
属人(的)株式は、ニーズに合わせて株主の個性を重視し異なる取扱いをするものです。
閉鎖会社のみ設定可能で、剰余金、残余財産、議決権について定めます。
種類株式と異なって登記事項ではありません。会社の外からはわからないのですね。
 
種類株式、属人株式は、戦略的に様々な利用が考えられます。
 
例えば、相続、事業承継の対策としてはどうでしょう。

種類株式、属人株式は、相続、事業承継としての株式の集中あるいは議決権の集中に活用することができます。
 
種類株式であれば、議決権株式(配当無)と無議決権株式を設定する、後継者株式以外を取得条項付(共有持分含む旨明記)にする、といったところでしょうか。
勿論、他にも考えられるでしょう。

属人株式では、議決権の属人株式(VIP株)の設定です。現社長あるいは後継者の株式の議決権を他の株主の持つ株式よりも多くするものです。

私は後者の方が使い勝手がいいなと考えています。
特に、株価が高いなどの理由で株式の集中に時間がかかる場合には、議決権の属人株式(VIP株)と暦年贈与を組み合わせるといいですね。

勿論、事業承継税制を利用して済むケースもあるでしょう。
時限立法なので忘れずに検討してください。
事業承継税制の利用では対応しきれないケースも多くあり、上記のような対策は有用です。

 蛇足ですが、相続対策として、共有株式の分割権利行使の定めを定款に記載することをお勧めしていました。それがなければ、遺言がない場合は遺産分割協議が終わるまで、遺言があっても遺留分減殺請求をされた場合、株主総会が事実上開催できない、もしくはクーデターなどの紛争を招く可能性があるからです。しかし、最高裁の判例で遺産共有株式の権利行使方法について、持分過半数で決定するという判断がなさました。上記定款の規定の有効性を論じたわけではないですが、有効性に大いに疑問を生じさせてしまう判例です。このような定款の規定は無効とされると考えて対策を練らないといけないのでしょう。

続きはまた次回に。
 
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相続預金の取り扱い2 [相続問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

以前に、金融機関が法定相続分の払い戻し請求に応じるようになったとお話しました(以前のコラムはこちら「相続預金の取り扱い」)。
  
今回はもっとやっかいな話です。
 
最高裁を始め、実務は、預金債権は、相続開始と同時に、各相続人法定相続分に応じて分割取得されるというという立場に立っています。定額貯金にはまた別の問題が出てきますが、それはまた別の機会にお話します。
 
法曹界がその立場で一貫しているから、金融機関が法定相続分に応じた払戻請求に応じるようになったのです。
 
問題はここからで、その理屈をとおすと、遺産分割調停において相続人が預金を遺産分割の対象に含めないと主張した場合、当該預金が遺産分割の対象とならないということです。
 
なぜ問題なのでしょう。
 
通常は、こんなことは争われてはいません。預貯金も含めて分割方法等が話し合われます。
 
が、争われると、預貯金が遺産分割対象から外れ、それ以外の遺産の分割だけが残ります。
そうすれば、特別受益や寄与分もその範囲でしか考慮されないとなりそうです。特別受益や寄与分は遺産分割手続でのみ考慮・判断される事柄だからです。
 
それって不公平じゃないですか?
 
遺産は1000万円の預貯金のみで、長男が生前贈与を1000万円もらっていたとしましょう。預貯金が遺産分割の対象となるのであれば、特別受益を考慮して、次男は1000万円の預金をすべて取れます。
 
しかし、預金が遺産分割の対象とならないのであれば、分割すべき遺産がありません。長男は金融機関に法定相続分の預金の払い戻し請求をして、500万円を取得できるのです。
 
遺産が不動産なのか預金なのかは偶然で決まることですよね、それによって分け方が変わってしまうというのは常識的には理解に苦しみます。
 
そのような結論を明確に断言した文献は見当たらなかったのですが、そうであろうとした文献はありました。実務も問題点を把握しながらそのような扱いをしているようです。法的理屈をとおさないといけないということでしょうが。
 
問題点は多く、おかしいではないかとの見解も多々あるようですが、実務上は、謙抑的に相続預金は遺産分割の対象とならないと考えておいた方がいいのでしょう。

※やはりおかしいということだったのでしょう。コラム投稿後に最高裁判例の変更がありました。
同判例変更により、預貯金債権は、遺産分割の対象となることとなりました。
一方、遺産分割手続前の払戻しについて金融機関が応じられない状況となっております。
そこで、さらに民法改正により預貯金の一部払い戻し制度が創設されます。
本コラムの記載内容は古くなったことにご注意ください※
 
繰り返しますが、そこまで主張してくる例はあまりないのですがね。主張されたら仕方がありません。
 
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正義と納得 [閑話休題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

裁判あるいは法律で正義は実現するのでしょうか。

正解はないのでしょう。

もちろん弁護士である以上、社会的正義の実現は理念的にバックボーンとしています。

しかし、裁判所は訴訟上出てくる事実に基づいて、かつ法律に則って判断をします。

真実であっても証拠がなければ裁判所は事実と認めてくれません。
真実だから証拠があると思ったら大間違いです。

また、裁判所は、「どちらが正しいか」ではなく、主張されている法律上の請求権を基礎づける事実がそれを主張する側によって立証されているか、を問題とするのです。

請求権を主張する側は、たいてい被害者的立場の方です。
事故の被害者であったり、お金を返してもらえなかったりする人です。
被害者的な立場の人が、証拠に基づいて自らの主張する請求権を立証しなければ裁判で負けてしまうのです。

おまけに、証拠があっても法的に請求権が成立しないのであればば裁判をすることはできません。
勧善懲悪ではないのです。

相談時に「正義はないのですか」とおっしゃるご相談者のお気持ちは非常にわかります。
しかし、裁判あるいは法律で実現できないことがあることをご理解いただくほかありません。

弁護士としては、どのような証拠があれば勝負になりそうか、通常どのような証拠があるべきか、この事実関係だとこういう法的主張が考えられる、等のアイデアを出し、依頼者と一緒に証拠を探す、主張立証方法を考えるほかありません。

ところで、正義と納得は違います。
正義は実現できるかわかりません、そもそも何が正義なのかも難しい問題です。

一方、「納得」は、その人が納得すれば実現できます。
しかも、トラブルに巻き込まれた方は正義を求めている点は否定できませんが、結局はご自身が納得できる解決を望んでいるのです。

そのため、私は、依頼者の「納得」を目標としています。裁判で勝つだけが目標ではありません。
勝てるかどうかは神様でなければわかりません。お互い譲って和解をすることもあります。
勝っても負けても、譲っても、納得してもらう。
そのために、状況をよく説明した上で、できるだけのことを一緒に頑張る。

理想論でしょうが、それが大事なのだと思います。

もちろん、私が必ず依頼者に納得してもらえているかというとそうではないでしょう。
やはり限界があります。
納得を目標に頑張っていかないといけないなと自省するところです。

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会社運営と定款自治3 [企業法務]

広島市の弁護士仲田誠一です。

前々回、前回に引き続き会社運営と定款自治の話です。
今回は、定款自治の話です。


定款自治(定款により会社の仕組み、ルールを柔軟に決められること)が拡充された今日、戦略に基づく機関設計、自己責任への対応が必要だとお話しました。
定款とは、会社の基本ルールを定めたもので、会社の憲法とも言われます。

設立時にはひな型を使って定款を作り、その後も見直しをしていないという会社は多いと思います。

定款には、
①絶対的記載事項(記載しないといけないもの)、
②相対的記載事項(記載をすれば法的効果を与えてくれるもの)、
③任意的記載事項(それ以外)あります。

①は絶対に定めないといけないものです。
戦略的活用というのは主に②及び③の話です。

②は、先にお話した機関設計はもちろん、株主総会の手続要件、役員任期、取締役会の決議要件等です。
手続はできるだけ簡素化しておきましょう。
株主総会の定足数もリスクが生じない程度に下げておいた方が楽です。
発行株式の半分が遺産共有になってしまい、かつ揉めていたため、株主総会の定足数が法定原則の議決権の過半数株主の出席では株主総会も開けなかったという例もあります。
役員任期は何も考えずに10年に延長すると痛い目に遭うことがあります。
解任時の損害賠償請求権に関わります。離婚や仲たがい等、10年も今の関係を維持できるかどうかはわかりません。リスクを負うと考えてください。
このように、会社の設計が自由になるということは、様々なリスクを考えて設計をしないといけないということになります。
 
③は経営理念、株主間契約的な定め等です。
経営方針を定めることは重要です。定款をもっと活用するべきだと思います。


なお、定款変更には、特別決議(議決権過半数出席+その3分の2賛成)が必要です。
さらに、特定の事項についてはそれ以上の決議要件が定められています(議決権株主半数以上かつその議決権の3分の2賛成、総株主の半数以上かつその議決権の4分の3賛成)。

ただ、変更の際には、「和」は乱さない形での変更が望ましいです。
中小企業の人的強みを壊さないよう、決議要件は別として、すべての株主の納得を得られるうちに変更するのがよいでしょう。
また、特に種類株式、属人株式のような劇薬は、仕組みを対立利害関係者によって逆手に取られないように留意して設計することが必要です。


いずれにしても、一度、定款を点検してみてはどうでしょうか。

次回は、種類株式、属人株式について補足します。

顧問弁護士のご用命は是非なかた法律事務所に。

広島の弁護士 仲田 誠一
広島市中区上八丁堀5-27-602
なかた法律事務所

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