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コラム 仲田 誠一 12ページ目

共有不動産の賃貸 【不動産問題】

広島県広島市の弁護士仲田誠一の不動産問題コラムです。

 

相続に基づく遺産分割により、あるいは元々共同で購入したため、共有不動産となっているケースで、これからその共有不動産を賃貸する、あるいは既に共有不動産を賃貸している場合の法律関係をお話ししようと思います。

 

民法は、共有物の変更行為には共有者全員の同意が必要(民法251条)、管理行為には持分の過半数で決める(民法252条)、保存行為は共有者単独でできる(同条ただし書)としています。

 

変更行為は、解体、処分、担保設定が典型です。

 

管理行為は、変更行為に当たらない(物件の状態を変更しないで)利用・改良する行為です。

 

保存行為は、破損部分の修繕、不法占有者に対する明け渡し請求、抵当権の解除などです。

 

賃貸借契約の締結はど変更行為・管理行為・保存行為のどれに当たるのでしょうか?
 

賃貸借は利用行為ですから管理行為と言えそうです。そして、実際に、賃貸借契約の締結も含まれるとされる見解もあります。

 

一方で、多くの賃貸契約締結には変更行為として共有者全員の同意が必要とされるとも言われています。

 
確立した判例がないため、事例判断によるしかありませんが、目的不動産の利用形態、前述の期間の長短がメルクマールとして判断されるようです。

まず、駐車場を建物建築目的で賃貸するような、共有物の利用形態を大きく変更する場合には、変更行為と見られる可能性が高いです。


次に
、期間の長短です。処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、賃貸期間は土地5年、建物3年と定められています(民法602条)。短期間の賃貸借なら合意していない少数持分権者への影響が小さいとされているのですね。長期間の賃貸借契約になると、少数持分権者への影響が大きいため共有者全員の同意が必要と言われます。

 

かつ、借地借家法の適用がある賃貸借契約は、短期賃貸借であっても更新されて長期間の契約になる可能性が高いです。借地借家法の適用のある賃貸借は共有者全員の同意が必要とした裁判例もあるようです。借地借家法の適用はないものは、建物所有を目的としない土地賃貸借や一時使用目的の建物賃貸借です。通常の賃貸借は借地借家法の適用があります。

 

無難な考え方をするのであれば、上述の借地借家法の適用のない短期賃貸借かつ利用形態を変えない賃貸借は共有者の過半数持分の同意でできる、それ以外は共有者全員の同意が必要というべきでしょうか。

 

共有物の賃貸借契約の解除を管理行為とすることは判例で確立されているようです。

 

賃貸借契約の更新の場合は難しいですね。自動更新ならいいのでしょうが、変更行為と見られる賃貸借の場合の都度更新の場合は更新契約にまた共有者全員の同意が必要と考えた方がいいでしょう。

契約内容の変更については、共有者間で決めた共有物の使用収益方法を変更する行為も共有物の変更とする見解があります。程度問題だとは思いますが。

 

共有者全員の同意が必要な賃貸借を過半数持分者の同意で賃貸借契約を締結した場合、反対の少数持分権者から異議が出たらどうなるのでしょうか。

少数持分権者分の持ち分について無断賃貸借ということになりますね、ただし契約当事者間ではただちに無効になりません。少数持分権者が明け渡しを要求できるかは難しい問題です。一般的な見解と言えるものは見当たりませんでしたが、共有者は持ち分に応じて共有物を利用できるので、賃借人は単なる不法占拠者とは見られず、かつ少数株主権者が単独の占有権がない以上、明渡しは認められない可能性が高いのではないでしょうか。勿論、共有者間では争いになりますし、賃料相当額の少数持分権者分を支払えとの請求は当然あるでしょう。正直簡単に答えが出て来ない問題ですね。

 

なお、契約手続代行、解除通知自体は共有者単独でできます。事柄に応じて、他の共有者の全員あるいは過半数持分の同意があればいいのです。

 

なお、共有物の賃貸による賃料については、特別な合意がない限り、当然共有者に持分に応じて分配する必要があります。費用も持分に応じた負担ですね。

賃料が分配されない場合には、不当利得あるいは不法行為として分配しない共有者に対して請求をすることができます。

確定申告も共有者全員がそれぞれしなければならないのが原則です。

このように共有物件は複雑です。共有状態は好ましくないですね。

 

不動産に関するご相談はなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

https://www.nakata-law.com/

 

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遺産分割をしていないままの債務整理の注意点 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

お父さんが亡くなってまだお母さんが健在であるときなど、面倒くさいから、あるいは揉めることはないから、といって遺産分割協議書を作成せず、不動産の登記も亡くなった方のままにするケースがあります。
そのようなケースは、当職の経験上、珍しくありません。

 

事実上、誰かに、上の例だとお母さんが引き継ぐということで口頭では合意ができていることが多いでしょう。

 

遺産分割を放置しておくこと自体、曖昧な状態を残し、紛争が起きる原因になります。
また、更に代替わりした際には当事者が増えて登記をきれいにする場面で応じない方が出てきたり、相続手続自体が面倒になったりします。

今回は、債務整理の観点から、遺産分割をしないままで放置していた場合の問題点をお話しします。

 

亡くなった被相続人名義のままに不動産をしておくと、相続人が債務整理をしないといけないような事態に陥った場合、困ったことになりかねません。

 

債権者から強制執行をすることができますね。
相続登記を代位して、債務者の持ち分を差し押さえてくる可能性があります。
競売にかけられ、あるいは他の相続人が持分の買取りを強いられる結果になるかもしれません。

 

また、相続人の1人が自己破産あるいは個人再生をした場合、法定相続分が債務者の財産としてみなされます。
これが実務上よく出くわす事態です。債務整理に支障が出てくるのです。

 

個人再生の場合は、清算価値に当該不動産の価値の相続分を計上しなければなりません。
個人再生には清算価値保障原則というものがあって、清算価値=財産額以上の計画弁済額を定めなければいけません。
未分割の遺産の価値により清算価値が上がり多少返済額が大きくなるならまだいいのですが、債務額よりも清算価値が大きくなる、返済できないほど弁済額が大きくなってしまうような場合には、個人再生をする意味がなくなり手続を進めることができません。
かといって、次にお話しするように、自己破産を選べばいいかというとそうもいかないのです。

 

自己破産の場合は、オーバーローンではない不動産が存在するとして、原則として管財事件になります。
ます、予納金の負担が大きくなりますね。30万円強程度でしょうか。

さらに、破産管財人から、他の相続人に対して、破産者の持ち分(相続分)の買取り要求がなされたりします。
理屈上は、他の相続人が買取りを拒否すれば、管財人による換価手続もされ得ます(手順については議論があるのですが)。

このように、お金もかかるし、他の相続人に迷惑がかかることになってしまいます。

 

ただし、田舎の自宅田畑が相続登記されていないケースで、同時廃止事件として処理された例もあります。
遺産分割の話は既に決まって、引き継いだ人が占有を続けている、かつ資産価値も小さいという案件です。

 

逆に、遺産分割をしておけば、相続発生から多少遅くなっても、それが自己破産等申立ての直前あるいは経済的危機状況での遺産分割ではない限り、問題視されることはほぼありません。

相続登記を直前にした場合は管財事件となり否認対象となるか吟味されることになります。

 

遺産を未分割のまま終わらせないことは、後々のトラブルの防止のため、やはり大事なことなのです。

また、借金を抱えて苦しい方は、相続手続が終わっているかどうかを早めに確認してください。

 

債務整理(任意整理民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

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相続人がいないときの相続財産管理人とは [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

今回の相続問題コラムは、相続人がいない場合あるいは相続放棄によりいなくなった場合に選任してもらうことがある相続財産管理人についてのお話です。

みなさん相続財産管理人をご存知でしょうか。

 

相続財産管理人の選任の例が増えているようです。身寄りのいない人が増えてきているのだろうと思います。

 

相続財産管理人とは、家庭裁判所に選任さえた相続財産の管理をする者です(民法957条)。相続財産につき、法定代理人として管理、清算することになります。

 

相続人のあることが明らかではない」ときに、「利害関係人」または検察官の請求によって家庭裁判所が選任します。

 

当職も何件か家庭裁判所に選任されて相続財産管理人になったことがあります。

 

どのような場合に選任が請求されるのでしょうか。

 

典型的な例では、相続人がいない方が亡くなった場合、あるいはすべての相続人相続放棄をして相続人がいなくなった場合です。

相続財産に利害関係がある特別縁故者や債権者などが利用するケースが多いでしょう。

成年後見人が被後見人の死去の引継ぎとして申し立てた例も経験しました。

 

相続人のあることが明らかではない」とは、相続人の存否が不明なことをいいます。


典型例は、戸籍上相続人がいない、あるいはその皆が相続放棄した場合ですね。

ほかにもいろいろなケースで相続財産管理人選任ができるかどうかの議論があるところです。


なお、相続人がいるがその相続人が行方不明な場合は、不在者財産管理人の選任あるいは失踪宣告の手続になります。
 

「利害関係人」とは

利害関係人とは、相続財産の帰属について法律上の利害関係を有する者です。

特別縁故者、相続債務者、相続債権者、担保権者、事務管理者(遺産を管理している人などです)、受遺者、遺言執行者、相続財産の共有持分権者、被相続人が相続分を有する遺産の共同相続人、国・地方公共団体などが挙げられています。

 

相続財産管理人の仕事は、いろいろあります。
 

まず、財産目録を調整して家庭裁判所に提出しなければなりません(民法953条)。選任後1カ月以内ということで忙しいです。
相続放棄をされた方など関係者のご協力が必須です。関係者との面談や現地調査も必要です。銀行の調査もしないといけません。


そして、財産の管理をします。財産の把握が大変なケースもあります。
田舎の山林・田畑の位置確認等が大変だった経験がありますね。
何度か現地調査をしたり、近隣の親戚の方に教えてもらったりしました。


時には売買などの処分行為もすることになりますが、その際には家庭裁判所の許可が必要です。
経験した例では、売買だけではなく、古家の解体をしたり、道路にはみ出ていた物を撤去するような仕事もしました。
田畑は大変ですね、農業委員会に問い合わせるなどして誰か引き継いでくれないか探すことになります。


相続債権者に対しては、請求申出の催告を公告あるいは知っている債権者に対しては個別にしないといけません(民法927条)。

相続人捜索の公告の申立ても家庭裁判所にします(民法958条)。
相続人捜索の公告満了後特別縁故者からの分与申立てがあった場合には、その対応もありますね。


財産を処分して、相続債務を返済しても、かつ特別縁故者に分与しても、残余財産がある場合もあります。
その場合には、国庫に帰属させることになります。

基本的には、現金化して国庫帰属をするのですが、処分できない不動産はそのまま財務局に引き継ぎます。
昔は財務局がなかなか引き取ってくれず、不動産を残したまま手続を終了させる形が多かったようですが、最近は、お墓がある、所有関係が明確ではないといった不動産以外は引き取ってくれるようになりました。


けっこう大変な仕事ですよね。


そのため、申立ての際の予納金は数十~50万円程度かかる例が多いようです。
勿論、相続財産管理人の想定される仕事量、被相続人の財産額に照らし、ケースバイケースで判断されることになります。

 

遺言、相続、遺留分減殺、相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

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持ち家の財産分与 [離婚問題]

広島県広島市の弁護士の仲田です。

今回の離婚問題コラムは、持ち家の財産分与のお話です。

 

離婚に伴う持ち家の財産分与如何は持ち家がある場合の離婚の大きな関心事ですね。

 

【評価の方法】
 

まず、持ち家の評価はどうするのでしょうか。


固定資産税評価で進めることもあります。双方がそれでいいと合意をしている場合ですね。
中には土地について路線価を持ち出す場合もあります。固定資産評価は一般に時価の7割、路線価は時価の8割と言われています。

固定資産評価は固定資産税を取るための評価額、路線価は相続税・贈与税を取るための評価額なのです。

なお、公示価格というものもありますが、基準点が少ないので実務上あまり出てきません。

 

固定資産評価等で合意ができない場合には、査定書を取ることになります。

ただ、双方が取る査定額に乖離があることは珍しくありません。
その場合は両者の中間等で折り合いがつくのかどうかが問題となります。

 

どうしても持ち家の評価に折り合いがつかないときは、不動産鑑定士に鑑定を依頼することになります。
ただ、費用が高額であるため、取らないで折り合いをつけるケースが多いです。

 

財産分与の方法】


では、実際に持ち家を財産分与としてどういう形で分けるのでしょうか。


財産分与の際、持分を分与して夫婦が各2分の1などの夫婦共有名義にしないのが通常です。
共有状態は好ましくないからです。後々紛争が生じますからね。


住み続ける人あるいは住宅ローンを支払っている配偶者の名義にするのがスタンダードです。


元々共有名義である場合も、財産分与の調整等により単独名義にすることがよくあります。
代償金を支払ったり、財産分与額で調整したり、売買をしたりします。

 

勿論、双方が合意するのであれば、売却して売却金を分与するという方法も取られることがあります。

 

【住宅ローンがある場合の評価】
 

住宅ローンがある場合はどう評価されるのでしょうか。


基本的には、不動産の現在価値から住宅ローン残額を差し引いた金額が財産分与の対象となります。

オーバーローンの場合には、価値がないということで、財産分与の対象とされないのが通例です。

例外的に、居住権を他方配偶者に認める、扶養的要素から持分分与を認めるというような解決がなされる例もあります。

 

【住宅ローンの返済者】


住宅ローンは誰が返済していくのでしょうか。


住宅ローンは銀行との契約関係です。債務者である配偶者が支払を継続しないといけません。

他方配偶者が連帯保証人あるいは連帯債務者になっている場合はどうしたらいいのでしょうか。これも銀行との関係です。
そのため、銀行が同意しない限り、保証債務、連帯債務は残ります。

銀行は、新たな保証人あるいは連帯債務者を差し入れる場合などで同意してくれる可能性はあります。

調停などでは、連帯保証人を外す交渉をする、あるいは努力をするといった法的には効力があまりない約束を交わすこともよくあります。
なお、基本的に住宅ローンの債務の分与はありません。

 

財産分与による名義変更ができるか】
 

名義変更を伴う場合も銀行との関係が問題となります。
銀行との約款で無断での名義の移転は期限の利益喪失事由になっているからです。その場合は同意を得ておく必要がありますね。


ただ、登記名義の変更自体は銀行の同意がなくても法務局でできてしまいます。
問題なく返済する場合には問題視されるリスクは小さいとも言えます。リスクは承知の上で判断することが必要です。

 

【分与割合】


持ち家が財産分与の対象となる場合、分与割合は悩ましい問題です。


親からの贈与、婚姻前の預貯金、相続財産、別居後の弁済等、特有財産が購入費、返済資金に入っている場合は、2分の1では不公平なのでその分は考慮されます。


ただし、具体的にどのように考慮されるかの決まりはありません。裁判所の裁量になります。
購入費用のうちの特有財産の割合を当該配偶者に、残った割合を2分の1に分けて、分与割合を決めた例などが紹介されていますが、色々な考え方があり得ます。

 

離婚婚姻費用養育費財産分与慰謝料請求等、離婚問題のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

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相続人に未成年者がいる遺産分割など [相続問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

今回の相続問題コラムは、相続人に未成年者がいる場合の遺産分割などの注意点をお話します。

相続の際、相続人に未成年者がいらっしゃることがあります。

未成年の子を残して父あるいは母が亡くなった場合や、その後亡くなった父母の父母(祖父母)が亡くなって未成年の子が父または母の代襲相続人として相続人になる場合ですね。

 

遺産分割手続など(遺産分割協議・遺産分割調停・審判・相続放棄)を進めるにあたって、特別な注意をする必要が出てきます。

 

未成年者は単独で遺産分割協議等をすることができません。
親権者が未成年の子の法定代理人になります(民法824条)。


親権は父母の共同行使ですが、仮に父母の一方が死亡等により親権を行使できないときは、他の一方が単独で親権を行使します(民法818条)。

 

そうであれば残された配偶者(単独親権者)が未成年の子を代理して遺産分割協議等をすることができそうです。
しかし、そう単純ではありません。

 

例えば、被相続人相続人が配偶者と未成年の子1人である場合を考えてみましょう。

 

その場合、法律上、配偶者と未成年の子の利害が対立するとみられます。
外形的・客観的に法律関係を見て利害相反があるという関係になるのです(具体的な内容に関係なく形式的にみられます)。
会社法での利益相反取引と同じ考え方です。

 

このような親権を行う者と未成年の子との利益相反行為(利害が対立する行為)については、親権者が親権を行使して未成年者の代理人になることはできません。
この場合は、特別代理人を家庭裁判所に選任してもらわなければなりません(民法826条)。

 

次に、被相続人(祖母あるいは祖父)が亡くなって、それ以前に亡くなっていた配偶者の代襲相続人として未成年の子が相続人になるケースを考えてみましょう。

 

その場合、未成年の子が人だけならば、残された配偶者が問題なく未成年の子を代理して遺産分割協議等をすることができます。
配偶者は相続人ではありませんからね。
共同相続人の関係にないので、利益相反関係にないのです。

 

一方、未成年の子が人の場合には様相が異なります。
配偶者が未成年者
人の代理人となることは、双方代理となるのですね。

双方代理は本人同士の利害相反関係があるため、基本的にできないことになっております。
そのため、親権者が数人の子に対して親権を行う場合には、その
1人と他のことの利益が相反するときも、また特別代理人を家庭裁判所に選任してもらわなければなりません(民法826条)。


親権者は一方の代理人にはなれますが、もう人は特別代理人が代理して遺産分割協議等をすることになります。

 

それでは、相続放棄の場面を考えみましょう。

 

親権者が未成年の子を代理して相続放棄をすることはできるでしょうか。

 

親権者が相続人ではないときは、相続人となる未成年者が人であれば、問題なく未成年の子を代理して相続放棄することができます。

さきほどの、代襲相続で未成年者1人だけが相続人となるケースですね。

ただし、代襲相続の場合でも、未成年者が人以上である場合、一部のみの未成年者を代理して相続放棄をすることはできないです(特別代理人の選任が必要)。

 

親権者が相続人であるときは(最初のケースですね)、未成年者のみの相続放棄を代理することはできません。

一部のみの未成年者を代理して相続放棄をすることもできません。
親権者と未成年者、あるいは未成年者同士の利害が相反しますからね。

 

親権者と未成年の子全員が同時に相続放棄をする場合、あるいは先に親権者が相続放棄をして相続人でないことを前提として未成年の子全員が相続放棄をする場合は、親権者が特別代理人を選任することなしに未成年者を代理して相続放棄をすることができます。

この場合は、利益相反関係がないと判断されます。

 

相続放棄が必要な場合は、通常、親権者と未成年の子が一緒に相続放棄をすることになるでしょう。
そのため、通常の相続放棄では特別代理人の選任は必要ないと言えます。

 

このように、相続人に未成年者がいる場合には、利害相反というやや面倒なことを考えて手続をする必要がありますのでご注意ください。

 

遺言、遺産分割、遺留分相続放棄、等相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

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差押えの取下げと消滅時効 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

放っておいた借金の債権者から突然督促状が来て、驚いてご相談に来られる方も多いです。

 

はじめから消滅時効援用のご相談に来られる方だけではなく、債務整理をしたいというご相談の中で消滅時効援用により解決できるのではないかとアドバイスをする方もいらっしゃいます。

 

消滅時効はご存知でしょうか。
債権は一定の時効期間を経過し、かつ時効中断事由がなければ、消滅時効にかかります。
債務者が消滅時効を援用(具体的には消滅時効の援用通知を送ります。)すれば、支払義務から免れることになります。

 

一定の期間というのは、商人である銀行や貸金業者から借りている場合は5年間です。商人以外から借りている場合は10年です。
改正民法が施行されると期間は変わりますが。


しかし、時効中断事由があれば、それまで進行した時効期間がリセットされ、時効中断事由が終わってから再度時効期間が経過します。
判決等の場合は時効期間が10年に延びるということにもなります。

 

時効中断事由は、改正前の現行民法では、請求、差押え・仮差押え・仮処分、承認です(民法147条)。
請求には裁判上の請求と裁判外の請求(催告)があり、裁判外の請求については特殊で時効完成の猶予というイメージで捉えた方がよろしいです。
一番多いのは承認です。少額でも返済したら時効は中断します。

 

時効中断事由には様々な議論があるのですが、今回は差押えについてお話しします。

 

差押えがなされる場合には、判決あるいは支払督促等の債務名義によりなされますが(基本的には時効が判決等から10年に伸びている)、判決から10年経っており、その間に預貯金等の差押えがなされたが結局取下げられている、差押えからは時効期間が経過していないが、判決から10年経過していることをもって消滅時効の援用が認められるか、という事例に接したことがあります。

 

民法154条は、差押えが取下げらたら時効中断の効力は始めからなかったことになると読めます。

 

では、取り下げられた場合必ず時効中断の効力が及ばないのでしょうか。

 

ここは実は争いがあるのです。100%の確度をもって法律的な判断をくだせません。

 

所謂空振り、預金の差押えでは差し押さえる預金がなかった場合ですね。そのような場合には、時効中断の効力がなくならないと言うような古い裁判所の判断もあります。
債権者は権利の上に眠っていないということで、その判断を支持する見解もあります。

 

一方で、動産執行のケースですが、売却しても費用が支弁できない状態で執行官から取下げを勧められて取下げをした場合であっても、取り下げた以上は時効中断の効力は失うとした割合新しい裁判所の判断もあります。
最終的には債権者が自らの意思で取り下げたという事実を重視したものでしょう。

 

具体的な事例判断が集積されておらず、かつ明確な最高裁判例もないため、なかなか判断が難しい問題です。

 

調べても、この問題は本にもほとんど書いていないのですね。書きずらいのでしょう。

 

民法の条文からすれば、後者が正しいような気もします。
事例によって違うと法的安定性も損ないますね。

 

ということで、差押えの取下げがあった場合には、債務者からすれば時効中断の効力がなくなったとの主張をすることになります。
しかし、債権者からは時効中断があるという主張がなされてしまいます。
このような状況であると、裁判でないと決着が付かないですね。困ります。

 

なお、私が接した事例では預金に数十円は口座にありました。空振りの場合に時効中断の効力がなくならないという見解を前提としたとしても、全くの空振りではなく取り下げているはずですですから、時効中断の効力がなくなったと言うことも十分理由があります。
相手は強硬な態度を示すことで有名な業者でしたが、法的に争いがあるということで、和解で解決することになりました。

 

債務整理(任意整理民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

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自己破産か個人再生かの選択基準 [借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

今回の借金問題コラムは、自己破産と個人再生の選択基準についてお話しします。

債務整理のご相談の際、自己破産にすべきか個人再生にすべきかと悩まれてお越しになる方が多いです。

 

自己破産の要件は支払不能、個人再生の要件は支払不能のおそれです。
それらの区別は微妙なところですので、どちらでも使えるという場合が多いのです。

かつ、自己破産が個人再生と比べてペナルティがあるかというとそうでもありません。
双方とも経済的更生を目的とした制度ですので、自己破産を選択したら今後の生活に支障が出てくるということは基本的にはないのです。
違うのは、自己破産では職業制限があり、一定の職業、資格に一定期間(通常は手続中)就けないことでしょうか。

 

まず、単純に具体的事情を捨象して経済的合理性だけを考えると、自己破産の方によりメリットがありますね。
自己破産は全ての債務について免責を受けられるに対し、個人再生は計画弁済額の支払いをしないといけません。

 

【破産をしたくないと思われる場合】

自己破産を選択できない思いのある方もいらっしゃいます。

住宅ローンを支払いながら家を維持したいという方

この財産はどうしても処分したくない財産があるという方

自己破産は潔しとせず少しでも返済したいという方

等の方は、個人再生を検討するわけです。

 

住宅ローンを支払いながら家を維持したいという方は、個人再生において住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用する方法しかありません。
ただし、借入の方法や担保の付き方によって個人再生における住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を使えない場合もありますのでご注意を。
謄本、契約書、返済予定表、固定資産税納付通知書などを相談時に持っていって、本当に利用できるのかどうか検討しなければいけません。

 

財産をどうしても処分したくないという方は、個人再生を利用しなければその財産を残せないのかということを考えます。
管財事件になっても財産自体は残せるというケースもあります。
個人再生においては残す財産の価値が清算価値に計上されることになりますので、場合によっては弁済額が上がります。
弁済の見込みが立つのか検討しなければいけません。

 

なお、所有権留保付きの車を残したい場合には、個人再生、自己破産は関係なく、別途その方法を考えないといけません。
親族に適正価格で買い取ってもらう方法がスタンダードでしょうか。

 

自己破産は潔しとせず少しでも返済したいという方は、前述のように、ペナルティはほぼ変わらないという点をお考えいただきます。

 

このように、自己破産か個人再生かの選択にあたっては、いろいろ考えなければなりません。

しかし、いろいろ考えてしまうとなかなか決まりません。


依頼者様の思いについて優先順位を付けていただかないといけません。優先する目的が決まれば、選択する手続も決まります。

 

個人再生の方が無難な方】

自己破産だと管財事件になるリスクが高い場合は、費用の準備の問題で個人再生にする場合もありますね。免責不許可になりそうなケースではなおさらです。
個人再生の方が無難に進められるという場合です。

 

個人再生には免責不許可事由がありません。
自己破産の場合には免責不許可事由の程度が思い場合には管財事件となり裁判所に数十万円の予納金を納めないといけません。
したがって、免責不許可事由の程度が大きい場合には個人再生も検討することになります。

 

ただし、個人再生の場合でも、破産の場合の否認対象行為があれば否認対象分を清算価値に計上するのがルールとなっており、場合によっては計画弁済額が多額になります。
かつ、個人再生委員が選任されるケースもありますのでご注意を。
この場合、結局は多額の予納金が必要になります。

 

【自己破産を検討が必要な方】

個人再生は、継続・安定した収入がないと使えませんし、必要弁済額を返済できる見込みがないといけません。

そのような状況にない方は自己破産を選択せざるを得ないですね。

 

生活保護を受給している方も自己破産をするべきということになります。役所でもそう指導されるでしょう。

 

債権者数が少ない、あるいは1つの債権者が過半数の債権を持っている等の場合、再生計画に反対がなされた場合に小規模個人再生が認可されないリスクも考えないといけません。
小規模個人再生は、債権者の頭数あるいは債権額の過半数の反対があれば認可されません。

 

債権者の反対があっても大丈夫な(債権者の同意を必要としない)個人再生である給与所得者等個人再生もあります。
給与所得者等再生は、要件が厳しくかつ一般的に計画弁済額が小規模個人再生よりも大きくなりますので、小規模個人再生を利用するのが一般的です。

ただ、上述のような危ないときには、給与所得者等個人再生をはじめから選択する、小規模個人再生を申立て不認可になれば自己破産、給与所得者等再生を改めて申し立てるということも検討しなければなりません。
実際に小規模個人再生が認可されなかったため自己破産を申し立てて免責を得たケースもあります。

 

自己破産か個人再生かを選ぶのは、個々の相談者の状況を踏まえて様々なことを考えなければなりません。お早めに専門家にご相談を。
なおご相談先は、破産管財人個人再生委員の経験が豊富な弁護士をお薦めします。手続や考え方を表と裏から熟知していますからね。

 

債務整理(任意整理民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

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諸費用ローンがある場合の住宅資金特別条項付き個人再生 【借金問題]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

債務整理のうちの個人再生のお話です。

 

家を残したい方が債務整理(法的整理)をする場合は、自己破産でなく、個人再生を選択し、かつ住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用しますね。

そうすれば、住宅ローンを返済し続けながら、他の債務を圧縮して返済する形で債務整理ができるわけです。よくあるケースになります。

 

実は、住宅資金特別条項は、自宅不動産に住宅ローン以外の担保権(典型的なものが消費者金融の不動産担保ローン)が付いていたら利用できません。
債権者間で不公平になるからです。
債権者間で不公平が生じるような場合には住宅資金特別条項が使えないルールが定められています。これもその1つです。


不動産担保まで差し入れてお金を借りる状態であれば、将来債務整理をする可能性が十分あるとも言えます。
できれば、自宅不動産に他の担保を付けてお金を借りることは避けたいですね。

 

では、住宅ローンと同時に諸費用ローンを借りて、双方とも自宅不動産に抵当権が付いている場合はどうなのでしょうか。珍しい話ではありません。

やはり、住宅ローン以外の担保権が付いているとうことで住宅資金特別条項は適用できないのでしょうか?

 

実は、諸費用ローンは原則として住宅資金借入れとは見てくれません。
 

しかし、ここからが大事なのですが、運用上、諸費用ローンを住宅資金借入と見てくれて住宅資金特別条項(住宅ローン特則)が使えるケースがあります。

 

理屈上は、諸費用ローンが、住宅の建設もしくは購入に密接に関わる資金であり、諸費用ローンの額が住宅資金に比べて僅少な場合に、諸費用ローンを住宅資金貸付と扱ってくれる傾向です。

 

具体的には、金額の例として、住宅ローン1900万円と諸費用ローン180万円、住宅ローン2600万円と諸費用ローン250万円が挙げられています。

私が実際に扱った例では、住宅ローン1800万円と諸費用ローン180万円でした。

気付きましたか?諸費用ローンは通常住宅ローンの1割程度なのですね。
銀行が諸費用は大体
1割ぐらいかかるだろうと考えているのでしょう。


通常の銀行の諸費用ローンであれば、金額の面は基本的にクリアできます。

 

後は使い途ですね。

諸費用ローンの契約書に、住宅の建設もしくは購入に密接に関わる
登記費用、仲介手数料、税金、保険料等の使途が明確に記載されている場合はそれで説明できるでしょう。
契約書にそのような記載がない場合には、領収書等により使い途を説明をする必要があります。

勿論、諸費用ローンで借りたお金を別の物に使う例はあまりないでしょう。
ということは、諸費用ローンがあっても使い途をきちんと説明さえすれば住宅資金特別条項が使える可能性が高いとも言い得ます。

 
ただし、個人再生手続について注意をしていただくことがあります。
 

諸費用ローンがある場合には、個人再生委員の選任がなされる可能性が相応にあるということです。
諸費用ローンを住宅資金貸付と認めることは例外的な扱いなので、念のため個人再生委員の意見を聞いて裁判所が判断するということですかね。
なお、個人再生委員が選任される場合の裁判所への予納金は20万円+αがスタンダードと言えるでしょう。

この点も頭に入れてくださいね。

まとめると、諸費用ローンの担保が付いていても個人再生における住宅資金特別条項(住宅ローン特則)が利用できる可能性は高い、しかし個人再生委員の選任の可能性も相応にあるということです。

 

債務整理(任意整理民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

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中小企業の債権回収対策のエッセンス2 [企業法務]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

前回、債権回収トラブルの要因の大きな2つのうちの1つは契約内容の意識にズレがある場合である、契約内容の疑義をなくすことが実は債権回収対策の1つの柱である、ということをお話いたしました。

 

契約内容に疑義がなくても発生する債権回収のトラブルの要因(債権回収トラブル発生のもう一つの要因)は、勿論、相手に支払能力がないという場合ですね。
弁護士では手元不如意の抗弁なんて言ったりします。

 

中小企業の場合、取引先の財産や業況の把握が不十分である例、あるいは取引先事に与信枠(売掛金の枠)を設定しないで、あるいは意識もしないで、ご商売をされている例があります。
なかなか手が回らないところかもしれません。

 

しかし、売掛金があるということは取引先と債権債務関係に立っているということです。
お金を貸しているということと理屈上は同じです。

 

したがって、御社も取引先に対して「貸している意識」を持たないといけません。

 

取引先へは頻繁に訪問しないといけませんね。情報収集を欠かしてはいけません。

会社の雰囲気だけでも順調な会社と危ない会社は全く違います。取引先の情報が一番の保全だと思ってください。

在庫の管理状況や、荷物の搬出入状況も、日ごろから何気なくかつ意識して見ておかないといけません。

取引先が説明している状況と合っているでしょうか?在庫が不自然に溜まっているあるいは在庫がない、ないし荷物の搬出がほとんどないということはないでしょうか。
従業員の士気など会社を見ていてわかることもありますね。


特別なことをする必要はありませんが、日ごろの意識が大切です。
情報察知能力ですね。

 

売掛金の限度額(与信枠)も設定し、急激な取引増加はリスクの増大の兆候であることにも気を付けないといけません。
もしかしたら、他の取引先から断られて御社の取引量が増えているかもしれません。

 

実際に取引先の危険を察知した、トラブルの兆候が出てきたらどうしたらいいでしょうか。

 

残念ながら、契約内容にズレがあるケースではそれを解消するしかありません。
訴訟での解決等が必要な場合も多く、その解決は長期化します。
契約トラブル防止のお話でも説明しましたが、契約トラブルは怖いのです。

 

支払い能力に問題がある場合には、初動対応が大事です。

 

支払いが滞るまで至らない場合は、速やかにその取引先の与信枠を引き下げないといけません。
同業他社よりも先に逃げるということです。

 

支払いが滞りそうである場合には、まずは、契約書類等のチェックをし、不備があれば補完してもらいます。
契約に不備があると後で困りますので。
残高確認書などを貰うこともいいでしょう。

 

同時に、訪問・督促を頻繁に行い、「うるさい取引先」になることです。

うるさい先の順に頑張って支払うというのはよくあることです。

 

残念ながら取引先が手を挙げる(弁護士に依頼する、破産申立を考える)段階になるとどうしようもありません。

まだ、取引先が協力的なうちに、保証、相殺、商品引き揚げ、代物弁済、債権譲渡等の合意を取り付けて債権保全・回収を図らなければなりません。

同意なく商品の引き揚げや備品等の持ち出し等の取付行為がなされることがあります。
後に破産管財人に追及されることもありますし、刑事の問題にもなり得ますのでご注意を。

 

勿論、取引先の協力が取り付けられない場合には、法的措置をとるしかありませんね。

ただ、法的措置は、支払能力がない相手に対しては、時間がかかり実効性にも問題が生じます(弁護士が入って自己破産の準備をされてしまうと、基本的には何もできないと思ってください)。

 

債権回収対策は、トラブル発生を防止するためのルール・仕組みづくりが大切、日ごろはアンテナを張って情報察知能力を高める、一旦トラブルが発生したら初動対応に尽きる、ということだと思います。

 

顧問契約、契約トラブル、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。

 

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中小企業の債権回収対策のエッセンス1 [企業法務]

広島県広島市の弁護士仲田誠一です。

 

企業法務コラムとして、中小企業の債権回収対策のエッセンスその1をお話しします。

法律的な側面だけではなく、元銀行員の経験からのお話も含みます。

 

皆さん、債権回収を本当に考えてご商売をされているでしょうか?

 

債権回収トラブルの要因の大きな2つのうちのまず1つは、契約内容の意識にズレがある場合です。

 

契約内容どおりのことをしてもらっていない、要求される金額を約束していない、瑕疵があるからお金を払いたくない等の理由で、相手が御社に支払う必要がないと思っている場合ですね。
これがけっこう多いです。
弁護士として接するメインの案件はこのような場合です。

 
原因は契約内容(約束事)の全てを何らかの書面、FAX、メールなどできちんと確認をしていないことです。
 

中小企業では、基本的な契約書類すら不備があり、口約束でいいと思っている場合も珍しくありません。
しかし、契約書類に不備があり、両者の意識にずれがあると、取引相手の支払い拒否につながります。

この点は、前に契約トラブルの防止のエッセンスとして詳しくお話ししました。

 

「言った言わない。」の争いでは話が前に進みません。
契約内容の意識のズレが原因のトラブルは訴訟での解決によらなければならないことも多く、解決は長期化します。

また、契約内容への意識のズレは、御社が契約どおりの物を納めたつもりでも、先方は契約と違う物が納められたと認識して、債務不履行や瑕疵の損害賠償の主張にもつながってしまいます。

 

まずは、取引交渉過程及び取引履行過程の記録化・見える化で、契約内容に疑義がないようにしておくことが債権回収対策の1つの柱です。
手間がかかりそうかと思われることがありますが、そんなことはありません。
できるだけ省力化した形でルール化、ルーティン化すれば、対策にさほどコストはかからないはずです。

これをしているかしていないかは、トラブルの発生防止に大事なことはもちろん、仮に裁判になったときには有力な証拠になります。「この点さえ証拠があれば勝てるのに・・・。」と思うことは珍しくありません。

 

最初の契約内容はもちろんですが、追加や変更があった際のトラブルも非常に多いです。
追加や変更があったら、必ず確認結果を残し、最終的な契約内容に疑義が生じないようにしないといけません。

契約内容に疑義がない限り、かつ御社が疑義のない契約内容を履行している限り、債権回収トラブルは基本的に発生しません。

 

契約内容に疑義がなくても発生する債権回収のトラブルの要因(債権回収トラブル発生のもう一つの要因)は、勿論、相手に支払能力がないという場合ですね。
弁護士では手元不如意の抗弁なんて言ったりします。

 

この点に関しては、またお話させていただきます。

 

今回は、契約内容の疑義をなくすことが実は債権回収対策の1つの柱であることをお話いたしました。
当たり前のようなことですが、実はできていないケースが多いのです。
日頃の意識が大切です。

 

顧問契約、契約トラブル、企業法務サポートのご用命は是非なかた法律事務所に。

 

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