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事業承継

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1.事業承継とは

同族中小企業にとって事業承継問題は避けられない問題であり、かつ死活問題です。我が国の経済、特に地域経済を支える中小企業の多くは同族企業です。
株式を公開する大企業では、経営者≠株主です。会社法の当初想定した株式会社の仕組みの根幹である「所有と経営の分離」が実現している姿です。不特定多数の株主から資本調達を行い経営のプロである取締役が経営を担当する形であり、経営者の交替は雇われ経営者の変更を意味するだけです。社長の交代は取引先や営業には影響をほぼ与えません。
これに対して、同族中小企業では、経営者である社長=会社の所有者である株主であり、所有と経営が一致しています。事業用資産も経営者個人が所有しているなど会社と個人の財産も峻別されていない例が多いです。経営者=株主は、人です。引退あるいは相続が必ず発生します。経営を本当に引き継ぐのであれば所有も引き継ぐ必要があります。また、我が国の相続制度は共同相続であり、株式や事業用資産が共同相続されてしまうと後継者が経営を引き継げない事態も生じてしまい、困るわけです。株主総会も開けず、新しい取締役も選任できず会社の存続に危機をもたらす恐れもあります。少数株主からのクーデターの可能性もなくはありません。同族中小企業では、社長から後継者への株主=支配権の移転、財産の移転も重要になります。かつ、会社=社長ですから、社長の交代は取引先や営業に大きく影響を与えます。

一方で、事業承継はチャンスです。
事業承継は、同族中小企業共通の課題でありリスクです。会社が経営不振に陥って企業再生に至る、あるいは倒産に至る要因の1つとして、事業承継問題対応の失敗があります。銀行等の債権者も貴社が思っている以上に事業承継の進捗あるいは後継者の質を注視しています。スムーズに事業承継を実現するだけで、他のライバル企業に自ずと差が付きます。
また、本当の事業承継を実現すると、スピードある企業体質を維持・復活させることができ、かつ変化する外部環境にチャレンジできる環境が整います。中小企業の強みは何でしょう。大企業のように資本や規模で勝負はしていません。小回りが効く、すなわち経営のスピードが強みです。企業にも寿命があります。時の経過とともに事業環境は変化し、組織の硬直化、前例踏襲は事業環境変化に対応するスピードを停滞させます。常に新陳代謝が必要なのですね。事業承継対策を機に、会社の問題点を洗い出し解消することにとって、後継者が引き継ぎやすい会社を用意することも肝要です。

世間の事業承継対策は、株式移転に伴う相続税対策に力点を置きすぎている感があります。勿論、それは重要なことですが、1つの要素にすぎません。相続税対策が事業承継であると誤解してはいけません。

もっとも重要なのは、後継者の育成、教育です。会社を活かすも殺すも後継者次第です。教育にいくらお金をかけても税金はかかりません、最重要課題として取り組んでください。
段階的にでも経営権限と責任を移譲しなければ意味がありません。肩書を交代したといっても経営の実権(経理)を先代が握っていたら意味がありませんね。なお、若手経営者、後継者育成を億的とした経営塾もご紹介させていただいております。様々な経営者に揉まれて一緒に勉強していくことで、人のつながりはもちろん、経営者としての自覚、素養を身に付けます。

株式の集中も事業承継の前提ですね。名義株、従業員持ち株等の第三者株式を経営者あるは後継候補者に収斂させる必要があります。株式・財産の移転、相続対策も重要です。遺言書の作成だけではなく、柔軟な相続ができるような遺産構成を整理しなければいけません。株式の完全な集中が難しい場合には、種類株式や属人株式を利用することにより議決権の集中を図ります。
遺言に頼ってもいけません、経営者が元気なうちから株式移転、会社から経営者あるいは後継者への所得移転(報酬戦略)も計画的に進めて備える必要もあります。後継者が引き継ぎやすい、あるいは引継ぎたくなる、会社組織作り、事業計画策定を含めた事業の再編成の検討も必要でしょう。

法律あるいは法的制度は、それら様々な事業承継対策の基礎となり、あるいはバックアップする道具となります。法務面での検討、準備が必須です。
かつ、所得や財産の移転には税金がつきものです。相続税、贈与税ではなく、所得税や法人税も踏まえた税制の統一的理解を基にして、最適なタックスプランニング(単純な節税だけではなくて目的・緊要度に応じた最適なタックスプランニングです。)をする必要があります。
保険の活用も税制面で有効な場合もあります。

様々なことを考えていかなければいけませんが、即効性のある対策もあれば時間をかけなければならない対策もあります。
できるだけ早めに対策を検討してください。
段階的な承継や中継ぎ経営者を置く承継など事業承継のスキームはいろいろ考えることができます。スキーム作りから専門家に相談してください(少なくとも法律が基礎になりますから少なくとも弁護士には相談してください)。

専門家のサポートを得て事業承継対策のスキーム作り行うべきですが、事業承継は弁護士、税理士、社会保険労務士等様々な士業の分野に跨る問題です。
それぞれの専門家によるサポートを合わせれば総合的なサポートになるわけではありません。連携してプランニングをしてもらうことも大事です。
当職は、金融業務経験を有し広島大学大学院にて税法の客員准教授を務めるなどしておりますので、会計や税務についてもある程度の見識を有します。銀行と連携するなどして事業承継対策のサポートをさせていただいております。また、他仕業等とのネットワークを整備しており、総合的な事業承継対策についてワンストップでのサービスを提供することもできます。
ぜひご相談ください。

以上は、親族内承継を前提とした事業承継対策のお話です。後継者がいない中小企業は珍しくなく社会問題化しつつあります。親族外の第三者へ事業を承継していく方策は、後述のM&Aになります。

なお、事業承継対策は相続に備えるだけではいけません。まだお若い経営者であっても、なんらかの理由で行方不明になったり、不慮の事故等で判断能力を失うケースもあります。突然、社長=株主が居なくなり、会社が動かなくなるリスクが常に存在しているのです。不在者財産管理人、成年後見人等の法的な対応では不十分な点もあり、法的に事前の備えをしておくことが必要です。任意後見契約や属人株式の活用による万が一のリスクへの対処も考えないといけません。
 

2.事業承継の対策の例

  • 事業計画(事業承継計画)策定 ・・・ 事業承継対策のスタートであり、ゴールになります。会社の進むべき道を見つめなおし、事業承継に向けた段取りを組む必要があります。
  • 後継者の育成・教育 ・・・ 権限責任の移譲、経営塾参加等の教育など最も重要な対策です。なお、他社での修行は経営者の経験を積ませることにはなりません。
  • 会社の問題点の洗い出し ・・・ 後継者が引き継ぎやすい、引き継ぎたくなる会社にしていきます
  • 組織のスリム化、戦略的な組織構築 ・・・ 企業組織、体制作りも経営戦略の1つです。規模や経営方針に沿った期間設計も法律上可能となっております。人事施策の整理も含みます。
  • 遺言書作成 ・・・ 遺言書作成は必須となります
  • 遺留分対策 ・・・ 遺言書を作成しただけではいけません、遺留分対策が必要です。遺産の構成の検討、先代の財産の育成などです。遺留分放棄制度の活用もありえます。
  • 後継者の財産の育成 ・・・ 相続税対策は勿論(株式の評価が高い場合は特に)、経営者としての基盤・信用創出が必要です。
  • 後継者等への株式の移転 ・・・ 株式の集中が前提になります(名義株の整理、第三者保有株式の集中)。また、税制の統一的理解を基に、生前贈与や売買による移転も検討します。
  • 種類株式・属人株式の活用 ・・・ 議決権の集中、遺産の構成の整理、中継ぎ経営者を活用するケースや段階的な事業承継のためのスキーム作りに活用できます。
  • 事業承継法制の活用 ・・・ 相続税対策として事業承継税制を利用することがあります(万能ではありません)。
  • タックスプランニング ・・・ すべての対策の基礎となります。相続税・贈与税だけではなく、所得税・法人税を含めた税制の横断的理解が必要です。
  • 定款や規則の変更 ・・・ 組織、体制の再構築や人事制度の整理にはこれらが必要になります。 
  • 会社と個人の事業用資産の整理 ・・・ 売買、代物弁済、退職金の現物支給、あるいは遺言により整理をします。 
  • 任意後見契約 ・・・ 年のための備えに活用することがあります。属人株式の設定に代えることもあります。
  • M&Aの検討 ・・・ 親族外承継の検討も必要かもしれません。
  • 事業承継対策は以上の例で尽きるものではありません。親族関係、自社株の保有状況、会社・経営者・後継者の資産負債の状況、経営方針等様々な事情や以降によりオーダーメイドのプランニングが必要です。かつ、総合的なプラニングが望ましいことになります。


費用

ご相談を承った際に個別にお見積りをさせていただきます。

事業承継対策はオーダーメイドにより設計・サポートする事柄であり、どのような対策を行うかによって費用が異ならざるを得ません。
なお、顧問弁護士契約の中で対応させていただく、あるいは顧問料形式で一定期間費用をお支払いいただく例もあります。

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