HOME > 倒産・破産

倒産・破産

自己破産・民事再生・リスケ

残念ながら会社の経営、事業の継続が厳しくなった際は、まずは事業継続の可能性、事業再生の見込みを見極めなければなりません。会社・法人の営む事業はそれ自体に社会的価値があり多数の利害関係者もいます。継続事業をなくしてしまうのは社会的損失です。一方、事業継続、事業再生の見込みがないと判断されるケースでは、自己破産民事再生という法的整理を早期に決断しなければなりません。安易な延命は傷を深くし周囲への影響を大きくするだけですし、経営者の疲弊を招く結果になってしまいます。整理のための費用を捻出する余力も残しておかなければいけません。資産の切り売り・事業縮小で当面の資金繰りあるいはコスト削減を図ることは、抜本的な解決ではなく、かえって企業再生の途を閉ざす異なる例を見ておりますのでご注意ください。

再生の見込みがあると判断できる場合には、再生計画を銀行に提出し任意整理=リスケジュール(金融機関の返済条件変更)により企業再生を図ることになります。民事再生など再生型法的処理を選択することも可能です。
事業再生の見込みが立たないのであれば、資金的な余力のあるうちにできるだけ早く自己破産を準備しなければいけません。できるだけ早期に会社の状況を客観的に分析し、決断をすることが肝要です。

当事務所代表弁護士仲田は、法人の自己破産の申立てあるいは破産管財人の経験が豊富であることはもちろん、企業法務、金融経験から中小企業経営・企業再生にも精通しております。認定経営等革新等支援機関として事業計画の策定サポートをしてきております。事業継続の可能性の見極めからご相談を承りますので、ぜひご相談ください。

ご相談時には、決算申告書類一式(付表、科目明細、固定資産課税台帳も含まれているもの)をお持ちいただければ幸いです。
資金繰り表、会社や不動産の登記簿(全部事項証明書等)、経営者家族の債務一覧表や不動産登記簿もあればアドバイスの助けになります。
 

法人・事業主の債務整理の特色

任意整理(リスケ)】
交渉のタイミングとしては、一度弁済をストップしてから交渉するケースもあれば返済を継続しながら交渉するケースもあります。交渉先は、全金融機関が基本です。他の銀行の動向も確認されます。

リスケには事業計画の策定が必要です。金融機関からも提出を求められるでしょう。事業計画策定には当職をはじめとする認定経営革新等支援機関や税理士さんのサポートを受けることも多いと思います。
要請、交渉はご自身ですることができます。当職がサポートするケースでは、交渉・説明も担当します。

保証協会保証付き借り入れについては保証協会がOKすればすんなりOKです。プロパー借入れについては本部決済のケースが多いので時間が多少かかりますので早めに準備をしなければいけません。
大事なのは、金融機関が稟議を書きやすいような事業計画の策定と説明です。

リスケで多いパターンは、1年以内の一定期間は利払いのみの形にして、同期間経過時の状況をみて、再度のリスケを検討するという形です。
初回の期限は決算月の3か月後に設定することが多いでしょうか。決算数字が出て再度のリスケの交渉・手続を行うのに都合のいいですので。
リスケ期間ごとに、弁済原資を確定して各金融機関にプロラタ返済(公平な按分による弁済)をするケースも増えています。

企業再生が実現すれば、分割返済による正常化を図ります。

民事再生
会社、法人がとる法的債務整理手段としては、自己破産のほかに民事再生があります(大企業向けには会社更生という手続もあります)。
債務を大幅に減額した上で、経営者の交替もなく事業を継続できるという大きなメリットがあります。

しかし、仕入先・外注先の協力あるいは現金決済に耐えうるスポンサーが必要なことが民事再生選択の一番のネックになります。ほかにも、申立てに高額の費用がかかること、事業用資産の担保権者の協力がいること、債務免除益の課税がなされ得ること、というネックもあります。
これらの条件が揃うことはあまりありません。勿論、信用棄損のダメージが大きいこともあります。

そこで、民事再生による整理を現実に図ることができるケースは少ないです。民事再生の申立て件数も、自己破産と比べて極端に少なくなっています。

勿論、上記諸問題をクリアできるケースでは、有力な企業再生手段となります。ご相談いただければ実現可能性を見極めます。

なお、会社が民事再生をするケースでも、連帯保証人である社長ほか個人の債務整理を別途行う必要があります。

自己破産
法人は、破産手続の終了により法人格が消滅することになります。破産開始決定後は破産管財人に財産の管理処分権が移り、法人の資産を換価し負債を整理していきます。
連帯保証をしている代表者の破産も伴うことがほとんどです。

自己破産にはある程度まとまった資金が必要となりますので、商売のサイクル、資金繰りも踏まえて事業廃止時期を決断しなければいけません。自己破産は最後の手段ではありません。企業再生と並行して検討するべき事柄です。ずるずると赤字経営を続け、徒に借り入れを起こし、資産を投げ売りし、個人資産を投入し、状況を悪化させながら申立費用の捻出もままならない状態に陥るケースも多いです。自己破産申立てのタイミングを逸すると、問題を複雑にし、かつ身動きが取れない状態にもなりかねません。

事業を整理には様々な課題が出てきます。リストを作成して優先順位をつけて段取りを組まなければ混乱いたします。後日問題にならないよう、弁護士が関与した上での資産の整理・処分、債権回収、リース資産の管理等も必要です。

一方、不渡り、銀行取引停止処分が予想されるケースでは、可及的速やかに弁護士が入り、混乱を生じさせないようできるだけ早く手続を進める必要があります。

このように、自己破産申立てには、事業廃止のタイミングも踏まえた事前準備がとても重要になります。
できるだけ早く専門性のある弁護士にご相談いただき、効率的かつスムーズな準備に向けてナビゲーションをしてもらってください。

法人、会社の自己破産の具体的な詳細は後述いたします。


弁護士に相談、依頼する意味

事業継続の可能性を見極めが前提となるとしても、選択肢の1つとして同時に検討しなければならない法的整理の専門家は弁護士です。方針決定にあたっては、法律だけではなく経営や事業のことを理解できる弁護士からアドバイスを得るのが適切でしょう。事業の継続の見極めを法的整理の可能性も踏まえて検討することができます。

会社の現状を把握し、今後の見通しを立て、適切な手続選択をする、法的手続が必要であれば、申立てのタイミングを図り段取りよく準備をしていく。これが、スムーズな会社の企業再生・倒産処理の基本です。
それにはできるだけ早い段階で弁護士が関与することが重要です。

リスケ交渉自体を弁護士に依頼する必要は必ずしもありません。もっとも、事業計画やリスケジュールプランの策定等の書面作成は専門家のサポートがなければむずかしいかもしれません。弁護士であれば交渉も依頼できることはメリットでしょう。

自己破産民事再生は、法的手続でありその内容も極めて技術性・複雑性が高いものです。弁護士の助けがなければ難しいです。
破産法、民事再生法には独特なルールや技術的な問題があり、弁護士にとっても職人的な能力が必要となる特殊な分野です。企業といっても業種や業態は様々であり、個別のケースに応じて問題や課題が発生します。オーダーメイドでスキーム等をプランニングしなければいけません。場数が重要となります。弁護士の腕が準備のご苦労やその後の手続の帰趨に直結します。倒産法制に精通した、豊富な経験がある弁護士のサポートを得てください。

弁護士 仲田は、銀行員としての企業サポート・再生支援業務、及び企業再生サポートを業務の1つの柱としている弁護士業務を通じて、中小企業の経営問題、会計には精通しております。中小企業庁の経営革新等支援機関の認定も受けております。自己破産申立代理、破産管財人等、倒産業務も業務の1つの柱としており、倒産事件関連の裁判所との協議会のメンバーともなっております。広島では最も倒産事件に精通している弁護士の1人と自負しております。

ぜひ当事務所にご相談ください。一緒に解決策を考えましょう。

弁護士費用

以下の基準はあくまでも目安です。ご事情により、分割支払のご相談をさせていただきます。
費用面も含めてご相談ください。


※事案の規模、複雑さによって異なります。

※法人の自己破産あるいは民事再生の費用は、その規模、複雑さ、資金状況、資産状況等によって協議の上で個別に設定させていただいております。できるだけご用意可能な金額での対応を努めております。
※リスケ交渉等につきましては、顧問料形式でお支払いいただくことも多いです。
自己破産民事再生は、裁判所に納める多額の予納金が必要です。事案によって異なりますが、一応の目安はご相談時にお伝えできます


会社、法人の自己破産

1.自己破産とは

破産手続は、資産・債務の清算手続です。破産開始決定時の資産を現金化し開始決定時の債権を弁済(配当)していくイメージです。配当ができずに破産が終了する事件も多いです(「異時廃止事件」と呼ばれます)。
自己破産とは、破産手続開始の申立てを自分が行う場合です。破産事件は僅かな例外を除いてほぼ自己破産に当たります。
他に、数は少ないですが、取締役、理事、業務執行社員あるいは清算人が申立てる「準自己破産」や、債権者が申し立てる「債権者申立て」の破産もあります。

2.法人と個人の自己破産との違い

法人の自己破産と個人(自然人)の自己破産は次のような違いがあります。
◆法人破産には免責手続がありません◆
法人破産は手続完了により法人格が消滅します。これに対し、個人(自然人)の破産の場合には、破産をしても人格は残りますから、破産手続を経ても清算後に債務が残った状態になります。そのため、別途「免責」手続が用意されています。
◆法人破産では必ず破産管財人が選任されます◆
法人破産では、必ず破産管財人が選任され、財産の換価、配当等を行っていきます。いわゆる「管財事件」です。破産手続開始決定により会社、法人の財産管理処分権は破産管財人に移行します。
これに対し、個人破産の場合には、破産管財人が選任されない事件(「同時廃止事件」といいます)の方が多いです。ただし、過去5年以内に経営あるいは事業を行っているケースでは管財事件になります。法人破産と同時に代表者の個人破産を申し立てることが多いですが、管財事件になります。
◆自由財産の有無◆
法人破産の場合には、法人の財産は原則すべからく換価されて残りません。個人破産の場合には、自由財産拡張手続を経て裁判所の許可を得て一定の財産を手元に残すことができます。

3.事業継続の可能性の見極め

会社・法人の営む事業はそれ自体に社会的価値が存在します。かつ、従業員さん、取引先など多様な利害関係者も存在します。その事業をなくしてしまうのは偲びないことですし、社会的な損失です。
そのため、事業継続に悩まれる経営者の方は、まず金融機関のリスケジュール(条件変更)あるいはM&Aでの事業継続の可能性を見極めるべきでしょう。
例えば、金融債務の返済をストップすれば資金繰りが回るのであれば、リスケ中に経営改善を図ればいいわけです(勿論、安易な資産の切り売り、事業縮小は、多くは企業価値を毀損するだけで傷を深くするだけに終わるので慎重にするべきです)。
当職は、認定経営革新等支援機関でもありますので、事業計画策定のお手伝い、リスケジュールのお手伝いなども対応しております。
かつ、M&Aのサポートも主業務の1つとしております。事業継続、M&Aも含めてご相談ください。

4.会社・法人の自己破産は最後の手段か

破産はぎりぎりまで引き延ばすべき手段でもありません。他の選択肢と並行して検討し、早期に決断しなければならない事柄です。その決断も大切な経営判断です。
◆破産費用の捻出◆
破産費用を用意できなくなれば破産もできません。事業継続を引き延ばした結果として費用が用意できずに、会社の破産を断念されたケースも多いです。
◆早期の決断も大事な経営判断です◆
早期の決断が結果的に迷惑をかける範囲を拡げないことにもなります。破産手続は利害関係者に対する最後のけじめとも言い得ます。給与の未払いがない形での事業廃止が望ましいです。
◆経済的再建も図らなければいけません◆
経営者様とそのご家族の早期の生活再建も図らなければなりません。経営者家族の生活を極限まで切り詰め、働き通しで体調を崩すなど苦労を重ねてきた末に弁護士に相談される方も多いです。その責任感には頭の下がる想いですが、「もう少し早くご相談に来ていただければ。」「そこまで思い詰める必要はなかったのではないか。」と思われる事例も多く目にします。

5.自己破産を選択するべきケース

一次的な資金繰りの悪化を改善するだけで経営が持ち直す余地があるなら、金融機関のリスケジュール(条件変更)により資金繰り手当てができる限りで対応が可能です。金融機関の支援を受ける間に経営改善策の実施により経営が持ち直す見込み、計画が立てられるのであれば、また同様です。例えば、設備投資等による債務過多が業績不振の主な原因であり、事業の収益力自体は相応に残っているケースでは、リスケ対応により資金繰りを改善しつつ計画的に債務を削減することで難局を乗り切れるでしょう。
しかしながら、業績不振には様々な要因が絡みます。多種多様な要素が絡みますし、企業努力では如何ともしがたい外在的な要因も大きいです。単純明快かつ解決可能な原因による業績不振で簡単に改善できる、あるいは一時的に資金繰り手当てをすれば簡単に業績が持ち直すと計画ができるケースは残念ながら少ないです。リスケによる企業再生を図る際には、単なる時間稼ぎになってしまわないのかをよく吟味する必要があります。
慢性的な赤字体質であり事業継続により今後も状況を悪化させるケースでは、できるだけ早い自己破産の決断が必要でしょう。金融債務の返済を一時ストップしても資金繰りの余裕がないケースでは慢性的な赤字体質といえます。企業再生には、事業自体の収益力がある、あるいは収益力が改善する見込みがある、ということが前提となります。
経営者に事業継続への気力・体力が残っているかも重要です。経営者の方は既に疲弊されて余力も残っていないという方が多いです。その責任感は尊敬されるべきで、結果として自己破産を選択しても非難されません。

6.民事再生との違い

会社、法人がとる法的債務整理手段としては自己破産のほかに民事再生もあります(なお、大企業向けの会社更生という手続もあります)。
民事再生は、債務を大幅に減額した上で、経営者の交替もなく事業を継続できるという大きなメリットがありますが、仕入先・外注先の協力が必要なこと(あるいは現金決済に耐えうるスポンサーが必要なこと)、事業用資産の担保権者の協力がいること、債務免除益の課税がなされること、及び申立てに多額の費用がかかるという条件が揃わないと選択できません。実際には、民事再生に適合するケースは少ないです。

7.弁護士に相談、依頼するタイミング

当然のことでしょうが、弁護士に相談、依頼するタイミングは早いに越したことはありません。
◆早期の相談が肝要◆
残された時間や、相談時の状況によって、できる準備や選択肢が異なります。早めに弁護士に相談をし、金融機関へのリスケ要請、自己破産申立て、民事再生申立てなどの手続選択の方針を決定し、費用の捻出の問題を始め準備を段取りを組んで進めることが理想です。
◆相談時の注意点◆
弁護士への相談時には、少なくとも直近の決算申告書類一式をお持ちください(勿論、3期分程度を拝見した方が検討はしやすいです)。資金繰表を作成されているのであればそれもお持ちいただいた方がありがたいです(資金繰り予想ができる入出金のメモ程度でもかまいません)。連帯保証人の方の資産・負債状況もわかればありがたいです。会社、法人と連帯保証人である経営者の方などを一体として債務整理の方策を考えるべきですので。
◆弁護士への依頼もできるだけ早い方がよい◆
会社・法人の自己破産では、弁護士と事業整理に向けた段取りを計画的に組んで進める必要があります。段取りが悪いと混乱をいたしますし、破産法上問題となる行為がなされることがあります。準備段階での出来不出来が、後の手続に響くのです。できるだけ早くから弁護士のナビゲーションによりご準備をされた方が効率的でもあります。
◆緊急の場合もあります◆
手形・小切手の不渡りが見込まれるなど急を要する場面もございます。それに応じた対応をすることになりますが、1日が惜しいケースもあります。

8.事業廃止のタイミング

破産手続をスムーズに進めるには事業廃止のタイミングが重要ですから弁護士とよく打ち合わせをしてください。タイミングを間違えば、要らぬ混乱を招く、破産手続に移行できないという事態を招きかねません。
買掛金等の支払いをストップすればお金が一番残る時点がベストになることが通常です。破産費用の手当てが必要ですし、残る財産は各債権者に平等に配当されるべきともいえます。勿論、未払給与はできるだけないようにしたいです。
銀行取引停止処分の時期、従業員解雇や退職のタイミング(解雇予告手当の問題もあります)、あるいは資産整理の状況(弁護士関与の下で資産を処分して破産費用を用意することもあります)も絡む問題です。事業形態によっては、新規の仕事を取らずに時間をかけて既存の仕事を順次止めていくほかないこともあります。

9.法人自己破産の流れ(申立準備段階)

会社、法人の自己破産の相談~申立準備までの一般的な流れは次のようにイメージしてください。
◆方針・スケジュールの決定◆
まずは、方針と段取りを話し合い、事業廃止のタイミングを決めた上で、破産へ向けた準備のスケジュールを立てていきます。悩まず弁護士の指示やサポートを受けてください。
◆受任通知の発送◆
弁護士から債権者に対する受任通知が発送されます。債権者対応はすべて弁護士が窓口になります。事業廃止のタイミングでの発送がスタンダードでしょうか。
勿論、個別の債権者毎に受任通知発送のタイミングを図ることもあります。
◆申立ての準備◆
会社、法人破産の申立て準備は、程度の差こそあれ会社・事業の清算も進めなければならないことが特徴です。
事業廃止の前後にわたり、例えば、従業員退職・解雇の手続、賃借物件の明渡し及び交渉、売掛金の入金先口座変更等売掛金の回収手立てをする、管理のための事業廃止時点の売掛金リスト・在庫リストの作成、債権者リスト作成、整理のための在庫や新規仕事の圧縮、財産の逸失を防ぐ資産保全、整理のための資産譲渡、継続的契約関係の解消(水道・電気を除く)、リース物件・所有権留保物件の返還、等々の準備をしていただくことになります。
個々のケースで必要な準備は異なります。段取り、整理の程度、あるいは整理の方法など、すべて弁護士の指示を受けて負担なくご準備ください。
◆資産処分等◆
準備と並行して簡単に現金化できる資産は現金化をします(それにより破産費用を捻出することもあります)。不動産や大型あるいは大量の機械については、管財人にその処分を委ねるために保全管理のみすることが多いです。
資産や在庫の処分は必ず弁護士の関与の下で行ってください、処分の内容や処分代金の費消方法によって、後の破産手続に問題が生じることがあります。
◆お金の管理◆
事業廃止時の現預金を弁護士に預けていただき、弁護士管理の下でどうしても必要なもののみに支出していくことが多いです。ある程度お手元に管理していただいて出納を記録してもらいながら、そこから事業の整理にかかる費用を支出していただくこともありますね。
売掛金や貸付金の回収も弁護士が代理人として進めていきます。資産の処分代金も弁護士が管理します。弁護士がお金を管理し、お金の散逸を防ぎ、適正な管理状況を報告できるようにすることが大事です。
◆申立て◆
通常は、2か月~3か月程度の準備期間を経て、自己破産申立てを行います。予定した資産の整理及び売掛金の回収が終わるタイミングも待つことも多いです。
申立て先は、原則として、本店所在地を管轄する地方裁判所です。広島地方裁判所本庁ですと、民事第4部になります。

10.法人自己破産の流れ(申立て後)

申立て後の一般的な流れは次のようにイメージしてください。
◆破産開始決定まで◆
自己破産を申し立てると、裁判所から追加資料の提出や質問事項の回答を求められることがほとんどです。それを補正連絡と呼びます。補正連絡に対応しつつ、裁判所から指示がある予納金を納めます。
破産管財人候補者も同席する債務者審尋の日に破産開始決定が出ることが多いです(申立後1か月前後先がスタンダード)。急を要する場合や債務者審尋が開かれない場合は、予納金を納めるとすぐに破産開始決定が出ます。
◆破産開始決定後◆
破産開始決定が出ると、2~3か月に1度のペースで債権者集会などの期日が開かれます。代表者の方には、申立代理人弁護士と共に同期日に出席していただきます。
また、第1回の債権者集会までの間には、破産管財人弁護士の事務所に赴いて面談をする機会が数度設けられます(第1回の債権者集会の後は、破産管財人に呼ばれることはあまりありません)。
◆異時廃止◆
配当ができるまでの財産が形成されない場合、異時廃止の形で手続が終了します。
◆債権調査・配当◆
配当ができる見込みがあるケースでは、債権調査、配当の手続がありますので、その分手続が長引きます。
◆破産手続にかかる時間◆ 
一概には申し上げられません。不動産の処分や債権回収その他管財業務にかかる業務量にも依りますし、配当がなされる案件かどうかによっても所要期間が異なります。
資産の処分もない、配当もないケースでは3か月から6か月程度、それらがある場合には1年前後がスタンダードでしょうか。1年を超えるケースも珍しくはありません。

11.破産に必要な費用の目安

◆裁判所へ納める予納金◆
法人破産の場合の裁判所へ納める予納金は原則100万円です。大型管財と呼ばれる大規模な破産の場合にはより多額の予納金を要求されます。一方、休眠会社や資産の整理が必要のない会社等、破産管財人の労力が相対的に少なく見積もられるケースでは交渉次第で減額も可能です。なお、2社同時に申し立てると単純に倍となるわけではありません。
そのほか、裁判所が債権者等に書類を送る際に使用される予納郵券(債権者数に応じて納付します)がかかりますが、多額ではありません。
◆弁護士費用◆
費用額の設定は、弁護士と相対での交渉事で決まりますので、一概に相場がいくらということはできません。一応の目安としては、110万円(税込み)を確保できればありがたいです。
勿論、目安であり、必須というわけではありません。事情に応じて話し合いで設定しております。手間がかからないような案件ではより少額の金額設定もありますし、資産が相応にあるケースではより高額の金額設定もあります。
費用の面の相談も弁護士相談の大きな目的の1つですので、お気軽にご相談ください。
◆諸費用◆
多額ではないですが数万程度の諸費用もかかります。
◆余裕のある準備のためには◆
以上を踏まえて、当職は、法人1社の場合、トータル(弁護士と裁判所にかかる費用)で250万円を「目標」に準備していただくようお願いしています。ある程度余裕をもって準備ができるという意味の目標で、必須ではありません。
また、ご依頼時に全額揃っていなければいけないということではありません。費用の手当の可能性を探る、手当の段取りを組むことも相談内容です。
◆代表者個人破産との関係◆
連帯保証人となっている代表者の自己破産も法人の自己破産と同時に受任するケースがほとんどです。個人の破産での裁判所の予納金は30万円前後がスタンダードですが減額交渉ができるケースもあります。
弁護士費用は法人・個人トータルで調整しております。例えば、個人で多くいただける場合は法人の分を減らす、あるいは法人で多くいただける場合には個人はいただかないというようなこともしております。

12.破産費用の捻出をどうするか

破産費用の捻出はほぼ例外なく頭を悩ませる事項です。依頼時によく吟味をして段取りを組みます。概要をお話します。
◆口座のお金◆
まずは、事業廃止時点で会社、法人の口座にあるお金が基本ですね。入金がありかつ支払いをストップして一時的に資金が多く残るタイミングで、残った資金を弁護士に預けていただくことが多いです。
その準備として、借入銀行口座から順次資金を移す、あるいは入金先口座を借り入れのない銀行に変更します。破産法の理念である債権者平等を期するための資産保全ですので、何ら問題がありません。
◆依頼後の資金捻出◆
弁護士への依頼後に、売掛金回収、資産売却、金融資産の解約等で費用を用意することも多いです。資産を現金化して破産費用に充てることは許されております。資金を弁護士が管理しつつ、その経過を裁判所に報告します。
売掛金は、事業廃止後に、順次、依頼者が引き続きあるいは弁護士が回収し、回収金は弁護士が管理します。売掛金リストを作成していただき管理をしますね。滞納処分により売掛債権、資産が差し押さえられると現金化ができなくなることには注意を要します。
資産を売却・換価することにより、費用の捻出をすることもあります。弁護士との相談時には、換価できる財産がどれくらいあるのかも検討します。

13.買掛先への対応

相談者がよく悩まれることです。仕入先、買掛先も、借入をされている金融機関と同様に、債権者です。弁護士が対応しますのでご安心ください。
商品引き揚げの要請には応じられないのが基本です。在庫の所有権が仕入先にあることが契約書上明確である場合は返還することもあります。
買掛先からの取り付け騒ぎの危険もなくはありません。無断で商品等を引き上げることは厳密に言えば犯罪ですが、事業廃止時には事務所・倉庫や車などのセキュリティーにも気を付けます。弁護士名の張り紙をして牽制をすることもあります。混乱を避けるために弁護士名の受任通知を事業廃止の当日か翌日に届くように手配します。

14.売掛先への対応

販売先、売掛先は債務者の立場になりますので、事業廃止後も売掛金の回収を行います。事業廃止時の売掛金リストを作成していただきます。入金先を借入のない銀行口座あるいは弁護士口座へ振り込むよう依頼します。小口集金形態のご商売の場合には集金を引き続きお願いして回収するケースもあります。破産開始決定までに回収できなかった売掛金は、破産管財人が回収を図ります。

15.従業員の解雇・退職

◆解雇・退職◆
残念ながら、事業廃止日が決まれば、従業員の方々を解雇する、あるいは従業員の方々に退職してもらうことになります。解雇予告手当が必要ない30日間の解雇予告手続をとることが多いでしょうが、ケースバイケースです。
社会保険、特別徴収住民税の異動手続、ハローワークの手続、源泉徴収票の発行等の退職に伴う手続は忘れないでください。
破産申立て準備にどうしても必要となる従業員がいらっしゃる場合(多くは経理担当でしょうか)、給料あるいは相応の費用をお支払いして残っていただくこともございます。
◆事業廃止をいつ従業員に伝えるか◆
事業廃止をいつ従業員さんにお伝えするかは悩ましいです。従業員さんの生活等を考えると、できるだけ早い方がいいと思います(小規模会社であれば自主的に退職してもらえるケースも多いです)。一方、事業廃止を伝えると業務に支障を来すこともございます。
 ◆税理士・社会保険労務士
少し話はズレますが、税理士さんの協力が必要な場合もあります。費用との兼ね合いもありますが、事業廃止時点までは数字を作成してもらった方がありがたいです。破産管財人が就任後に申告を依頼することもあります。
社会保険労務士さんがいらっしゃる場合には、退職手続等でご協力をいただくこともありますね。

16.未払給与等の扱い

賃金の未払いはないようにしたいです。労働基準法上罰則も定められています。しかし、支払えないケースがあるのも当然です。
◆破産手続における労働債権の扱い◆
破産手続において、労働債権は、破産手続開始決定前3か月間の未払給与と退職金の一部が財団債権として一般の債権者より優先して支払えることができます。
ただ、時間がかかりますし、支払えるだけの財産が破産手続の中で残るかどうかわかりません。また、事業廃止後できるだけ早く破産申立てをしなければいけませんね。
◆労働福祉事業団立替制度◆
そのため、労働福祉事業団立替制度の利用も考える必要があり、事業廃業時には従業員さんへの同制度の説明をします。破産管財人の証明書の発行により未払い給与の8割が立替払いされますが、時間の制約があります。大まかに申し上げると、退職、解雇から6か月以内に破産申立てをしなければ対象になりませんので早期の破産申立てが必要になります(なお、破産手続外の認定制度もあります)。
◆役員報酬の扱い◆
未払いの役員報酬は(従業員兼務役員のケースでは従業員分給料と認められ得る限りで別ですが)、一般の破産債権となります。経営者家族でも従業員の場合には一般の従業員の給与と同じ扱いです。
◆中退金がある場合◆
退職金制度が中退共の場合は、請求手続をしていただければ(開始決定後は破産管財人が協力します)、従業員さんが受け取ることができます。

17.準備にあたりやるべきことの整理をする

破産を準備するといっても、何をどの順番で手を付けていいかわからず途方にくれるものと思います。事業の清算をどこまですべきか事情により異なります。場当たり的な準備は、疲弊しますし、効率も悪く、中には後で問題となる行為をしてしまうこともあります。
◆やるべきことの整理◆
準備の仕方や優先順位には勘所があります。様々な問題点や課題を整理してシンプルにプランニングすることが弁護士の腕の見せ所です。弁護士と相談して、最低限必要なこと、できればやっておきたいこと、放っておいても仕方がないこと等々、やるべきことの整理をしてください。そうすれば全体像がつかめますし、優先順位も決めることができ、悩まずに準備ができます。
◆要望や問題点は早めに弁護士に伝える◆
なお、準備にあたって、様々なご要望もあることと思います。また、説明が難しい、準備が難しい等の問題点もあることが多いです。弁護士には、早めにそれら要望や問題点を伝えてください。破産法上問題がない形で可能な限りご要望を形にするお手伝いをしますし、問題点の対応策を組み立てます。知るのが遅くなると手当ができなくなる可能性が高くなります。

18.準備の中でやってはいけないこともある

準備にあたってやってはいけないこともあります。弁護士のナビゲーションに従って、相談しながら準備を進めてください。
◆書類の廃棄は慎重に◆
事業を廃止したからといっても、すべての書類の廃棄をするのは止めてください。破産手続の中で提出しなければならない書類も多々あります。
否認対象行為◆
否認対象行為を行ってはいけません。否認とは、破産管財人がその行為の効力を否定し財産等を取り戻す制度ですが、破産管財人否認できる行為、その要件は破産法で定められています。主要なものだけ簡単に説明させていただきます。
偏頗弁済は否認の対象です。偏頗弁済とは支払停止状態等の経済的危機状態での不公平な債務の弁済です。問題となるのは、経営者家族、親族に対する弁済が多いです。支払っていいもの、いけないもの振り分けを弁護士と相談してください。
財産の散逸行為も否認の対象です。会社の資産の廉価売買、放棄など、財産を減少させる行為にお気を付けください。合理的な説明が可能なものもありますので、弁護士に判断をしてもらってください。
◆法人と個人の財産の混同◆
法人と個人とは明確に区別されます。会社、法人の資産と個人との間の混同を避けてください。特に会社、法人から個人への財産移転は慎重にしなければなりません。
経営者家族の役員報酬、給与も問題になり得ます。事業廃止までの役員報酬、給与は、支払う原資があるのであれば支払って問題はないでしょう。

19.破産申立代理を弁護士に依頼する意味

会社、法人の破産の申立てには、代理人弁護士を依頼することが通常です。会社、法人の破産は複雑であり、弁護士の助けがなければ難しいです。
◆地図を作りナビゲーションを行う◆
暗中模索の中で今後のことを悩まれるのは大変な心労です。弁護士に複雑な状況を法的かつシンプルに整理してもらい(地図を作ってもらい)、弁護士の助言(ナビゲーション)に従って、効率的なご準備をしてください。
◆債権者対応を弁護士に任せる◆
取引先や金融機関への支払を停止すると、程度の差はあれ混乱が生じます。債権者の対応を弁護士に任せられることは安心です。
◆申立後のサポート◆
破産手続が開始されてからは破産管財人が破産手続を主宰しますが、申立代理人弁護士も破産手続の最後までサポートをします。ご安心ください。

20.倒産弁護士、破産弁護士

◆申立代理人の腕が手続の帰趨を決める◆
申立代理人弁護士の腕が、破産申立ての準備のご苦労の程度や申立て後の手続のスムーズな進行度合いに直結すると言っても過言ではありません。申立準備に不備があると、申立て後に苦労を強いられかねませんし、破産法上問題となる行為が問題視されることもあります。当職が破産管財人に就任した案件でも「準備をもう少しきちんとしていただければ苦労されなかったのに。」と感じることがあります。
◆倒産案件の弁護士業務は職人芸◆
破産手続は、破産法に則って進められます。当然、破産手続開始の申立ての準備には、破産法の知識・倒産事件の経験が必要です。破産手続には、独特のルールや考え方があり、それに携わる弁護士も職人的な能力が必要とされます。
その時々の破産裁判所の傾向・考え方も事件処理の方向に影響しますので、それらもキャッチアップしなければなりません。破産申立てを裏から見る破産管財人の経験も必須です。法人破産の破産管財人の経験が豊富でなければ手続の勘所がわかりません。破産等倒産手続に精通した弁護士のサポートを受けてください。
◆企業会計の知識◆
資金繰り、事業廃止・受任通知のタイミング、資産・契約関係の整理など様々な段取りを考えます。企業会計に関する諸知識も必要ですね。決算申告書類等の会計書類を拝見して事案の見立てを行い、個々の問題を紐解いていきます。
◆倒産弁護士、破産弁護士◆
倒産法制に精通し、申立て代理人経験も破産管財人等の経験も豊富で、破産等倒産事件を業務の柱の1つにしている弁護士を「倒産弁護士」、「破産弁護士」と呼ぶことがあります。会社、法人の破産の申立てを依頼するのであれば、当然、そのような弁護士に依頼した方がいいでしょう。弁護士の質を確かめるには、弁護士に細かいことでもたくさん具体的な質問を投げかけてください。抽象的な回答にとどまらず、具体的なアドバイスをしてほしいです。
なお、当職も、申立て代理は勿論、破産管財人経験も豊富で、破産等の倒産案件を業務の柱の1つとしています。裁判所との破産等に関する協議会のメンバーにもなっております。また、銀行出身であり、企業会計の諸知識も豊富です。安心してご相談いただけるものと自負しております。

このページのトップへ