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コラム 身近な法律知識

相続税法の概観 [税法のお話10]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

相続税法のお話を簡単にします。

 

相続税とは、相続財産という資産に担税力を認める資産課税であり、日露戦争中の戦費調達のために創設されたようです。
現在の相続税法は、英米系と大陸系の双方を加味した制度になっています。税金の計算方法がやや複雑です。

 

◆ 相続税課税対象財産

相続税の課税物件は、相続または遺贈によって取得した相続財産です。

 

相続財産には、財産権の対象となる一切の物及び権利が含まれます。
民法上の相続財産(民896)ですね。経営者であると会社への貸付金も相続財産ですので気を付けて下さい。

 

相続税法は、相続財産のほかに、相続財産と実質を同じくする財産及び権利も相続税の対象としています。みなし相続財産(相続税法3)ですね。

生命保険金、退職手当金などですね(各基礎控除が定められています)。遺産分割の際の相続財産と申告すべき遺産総額は異なるのです。

 

相続財産の評価は取得の時における時価によります(相続税法22)。
時価は、課税時期における当該財産の客観的交換価値(市場価格)ですが、実務上は、財産評価基本通達その他の通達による財産評価がなされます。
画一的、公平な課税処理のため一応の合理性が認められています。

 

なお、他の相続税課税対象財産もあります。
相続開始前3年以内の受贈(相続税法19)、相続時精算課税(21の9)の適用を受けた財産などです。

 

◆債務控除

相続財産から相続債務を控除できることは当然ですね。
ただし、控除できるものは、現存(相続税法13Ⅰ)+確実(同14Ⅰ)の債務だけです。
会社のオーナーの保証債務は、会社に支払能力がなく顕在化していない限り控除できないことになります。

相続財産に関する費用(遺産の管理保存費用、弁護士費用等)は控除できません。

葬儀費用については税法上債務控除が認められています(相続税法13Ⅰ)。民法とずれるところです。

 

◆基礎控除(相続税法15)

各人の課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いて課税遺産総額が算出されます。

現在の基礎控除は、3000万円+600万円×相続人の数、ですね。

先年大幅な増税がありました。基礎控除が従前の6割に下がりました。基礎控除を超える相続が増えたわけです。

養子による節税の件ですが、実子ありの場合は1、実子なしの場合は2まで相続人の数のプラスできます(相続税法15Ⅱ)。
なお、相続人の数は、代襲相続人も各1名と数えますし、相続放棄者も
1人に数えます。ややこしいですね。


基礎控除内の相続は相続税申告義務があるでしょうか?

答えはNOです。そのため申告をしないケースもたくさんあります。

 

法定相続分にかかる相続税の総額(相続税法16)

相続人法定相続分に応じて取得したと仮定し相続税率を適用して合計したものが相続税総額です。
実際の分割方法は相続税の総額には関係がないことになります。

 

◆各相続人等の相続税額(相続税法17)

相続税総額を各相続人の取得割合に応じて割り振った各相続人の相続税額に、2割加算(相続税法18)、あるいは税額控除をすれば、各相続人が納める税額になります。

 

イメージ的には、遺産総額がある、法定相続分に応じて相続した形で税額を計算して相続税の総額を算出する、それを実際に相続した相続人の取り分に応じて割り付ける、という流れです。

 

各種控除には、贈与税額控除(19)、配偶者の税額軽減(19の2)、未成年者控除、障害者控除(19の3、4)、相次相続控除(20)、相続時精算課税適用者にかかる贈与税額控除、外国税額控除(20の2)等様々な制度があります。

小規模宅地特例、配偶者軽減特例は、遺産分割ができていることが要件ですので注意してください。
揉めていて申告時期までに遺産分割が完了できない場合は、暫定的に相続税を支払って3年延期することも可能です(相19の2)。後で更正することになります。

 

◆その他

相続税、贈与税は連帯納付責任です(相続税法34)。
贈与をして受贈者が贈与税を払わない場合に贈与者に課税が来るという怖い話もあります。

 

遺留分減殺請求を後に受けた場合は、後発的事由による更正(国税通則法23)により還付をしてもらうということになります。

 

遺産分割協議の錯誤無効(想定していない税金がかかった!など)の場合も、民事訴訟を経て後発的事由による更正請求という方法が考えられます(なお、遺産分割の債務不履行解除はできないとされています)。簡単に錯誤無効が認められるわけではありませんが。

 

遺産の再分割、遺産分割協議の合意解除については、新たな契約と見られますのでご注意を(贈与等の課税リスクがあります)。

 

贈与税は、相続税の補完税として相続税回避の防止を立法趣旨としますから、贈与税法に規定があります。
贈与税は相続を前提とするため、個人からの贈与のみ課税対象です。個人が法人から贈与を受けたら所得税(一時所得など)です。

相続財産の評価と贈与財産の評価とは同一評価基準です。

基礎控除110万円内(21の5、措置法70の2)の贈与は申告が必要ありません。
ただ、暦年贈与は少しリスクがあります。確定日付を取っておく等の方法で明確にしなければいけません。

なお、贈与税には、婚姻期間20年以上の居住用不動産等の配偶者控除(21の6)や事業承継税制など特則がたくさんあり、要件も細かく決まっています。
よく見ておかないといけませんね。

租税法のお話が続きました。ここで一休みして、再開の際には法人税法のお話をしようとかと思います。

 

お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

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所得税法その他、無償譲渡、低廉譲渡 [税法のお話9]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

とりあえず所得税法は今回までです。

 

【所得控除】

各種所得の金額の計算の結果を一定のルールの下で合算して(損益通算)算出した①総所得金額、②退職所得金額、③山林所得金額から控除することが認められている負担の控除です。

 

所得控除が認められる理由は、控除の種類によって異なります。基礎的人的控除として控除する、担税力の減殺を表す事情に応じて控除する、担税力を持たない所得分を控除する、支出奨励のために控除する、といった理由です。

 

所得税法に定められている所得控除には、雑損控除(所得税法72条)、医療費控除(同73条)、社会保険料控除(74条)、小規模共済等掛金控除(75条)、生命保険料控除(76条)、地震保険料控除(77条)、寄付金控除(78条)、障害者控除(79条)、寡婦(夫)控除(81条)、勤労学生控除(82条)、配偶者控除(83条)、配偶者特別控除(83の2条)、扶養控除(84条)がありますね。

 

あくまでも所得控除で、税額控除ではありません。税金がそのまま安くなるわけではありません。

税率が高い方の方が効果ありますね。

 

【税額控除】

政策目的等から算出税額からさらに控除して年税額を計算するものです。税金がそのまま安くなります。

配当控除(92)、外国税額控除(95)、住宅借入金等特別控除がありますね。

 

所得税法のさわりをざっと説明してきました。本当はいろいろ複雑な話もあります。

 

最後に、譲渡所得に関する頭の体操をしてみようと思います。頭の体操といっても、机上の空論ではありません。実務上よく考えないといけないことです。

 

【無償譲渡】

まずは、無償譲渡の事例です。

ABが、各個人か法人で場合分けをして、それぞれの課税関係を検討してみましょう。

① A個人 ⇒  B個人 の無償譲渡

これは分かりやすいですね。所謂贈与のお話です。

Bに贈与税課税があります。贈与が物等の場合には、その評価は相続評価によります。表族税評価通達に沿って計算されることになります(法律ではないですが一定の合理性が認められています)。

なお、贈与されたBAの取得価格の引継があります。売却をするときに忘れないということですね。

 

② A個人 ⇒  B法人 の無償譲渡

贈与税は個人から個人への贈与だけに課税されます。相続税法の中に定められている税金(相続財産の逸失による相続税逃れを防ぐ税金とも言われています。)ですから、当事者に法人がいる場合には適用がありません。

A個人には、譲渡所得課税があります。いくらで譲渡したことになるかというと実勢価格(時価)で譲渡されたとみられます。所得税法第59条です。譲渡益は、時価-取得費で計算しますね。

B法人には法人税課税があります。実勢価格で計算した益金が認定されます。

 

③ A法人 ⇒  B個人 の無償譲渡

A法人には法人税課税です。益金は、実勢価格-取得費です。法人税法でも無償譲渡は時価で譲渡したものとみなされます。個人の譲渡所得税とは別の理屈からなのですが。

B個人には、一時所得あるいは給与所得課税(実勢価格)があります。個人からの贈与ではないため贈与税課税ではありません。

B個人がA法人の従業員あるいは役員である場合には給与所得課税があり得ますね。

それ以外は一時所得になるはずです。

 

④ A法人 ⇒  B法人 の無償譲渡

A法人に法人税課税(実勢価格―取得費が益金)があります。

B法人にも法人税課税(実勢価格です)があります。

 

【低廉譲渡(低額譲渡)】

続いて、低廉譲渡(低額譲渡とも呼ばれます。)を考えてみましょう。時価の1/2未満の代金の譲渡と思ってください。同じく、ABが各個人か法人で場合分けをして課税関係を検討します。

実務的には、親族間の紛争の解決によく出てきます。売買代金は当事者で自由に決めることができます。しかし、あまりに安いと、別の課税関係が生じます。税金を知らないと怖いですね。弁護士が解決を図る際も税金を考慮したスキームを考える方がいいですね。

 

① A個人 ⇒  B個人 の低廉譲渡

Aに譲渡所得税課税がありますね。ただ、実際の代金ベースです、取得価格が不明な場合や相続を受けて取得価格が低い場合以外は低廉譲渡で譲渡所得が発生することはないでしょう。ただ、代々引き継いだ不動産を低廉譲渡する場合はけっこうあります。

Bには、理屈上、贈与税課税があります。贈与額は、相続税評価額と実際の代金の差額となるでしょう。

 

② A個人 ⇒  B法人 の低廉譲渡

法人が当事者になると贈与税課税は関係ないですね。

A個人には、譲渡所得税課税があり得ます。実勢価格での譲渡があったことになります。所得税法第59条です。

B法人には法人税課税です(実勢価格と代金との差額が益金です)。

 

③ A法人  ⇒ B個人 の低廉譲渡 

A法人に法人税課税(実勢時価が益金)ですね。無償譲渡と同じ扱いになります。

B個人には、一時所得あるいは給与所得の課税があります。無償譲渡の場合と同様ですが、所得は実勢価格と実際の代金の差額でしょう。

 

④ A法人  ⇒ B法人 の低廉譲渡

Aに法人税(実勢価格―取得費)課税があります。

Bに法人税(実勢価格と実際の代金の差)課税があります。

 

無償譲渡、低廉譲渡の課税判断は、実務でもよく考えないといけないのですが、明確な基準がない(そもそも時価をどう見るかで判断が変わる)ため、難しい判断になります。また、理屈上の考え方を一応の目安として整理しています。実際に課税されるかどうかはわかりませんが、リスクがあり、課税されても文句が言えないということですね。和解や事業承継のスキームを考えるときは、合理的な根拠を説明できるようにしないといけません。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

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所得の種類その4 [税法の話8]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

所得税の所得の種類の続きです。
利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得とお話ししました。
あと3種類ですね。

 

【譲渡所得】

所得税法第33条に定められている資産の譲渡による所得です。

譲渡所得の計算は、「譲渡益-特別控除」です。

「譲渡益」というのは、収入-取得費-譲渡費用です。

租税特別措置法において、土地建物等は分離課税かつ長期・短期の区別により扱いを異にする、有価証券の譲渡は分離課税など、特則が定められています。

 

譲渡所得は、「資産」の譲渡による所得ですが、「資産」には、譲渡性ある財産をすべて含みます。

また、譲渡所得は、「譲渡」による所得ですが、「譲渡」は、有償無償を問わず資産を移転させる一切の行為が含まれるとされています。

譲渡行為の例は、売買、交換、競売、収用、代物弁済、現物出資等、借地権(33Ⅰ括弧書)などですね。

 

無償の移転行為も譲渡に該当します。
無償で移転したなら譲渡益はないじゃないか!と思われますよね。

譲渡所得課税の趣旨は、所有期間中の資産の価値の増加益(キャピタルゲイン)に対する精算課税です。儲けから取るというのとは少し違います。
含み益など未実現利益は課税されません。譲渡所得税は、そのキャピタルゲインを「譲渡」の機会を捉えて課税するものなのです。だから、譲渡する以上はい無償でもキャピタルゲイン課税をしますよということになります。

判例は、「資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益所得とし、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に、これを清算して課税する趣旨」と説明しています。
無償の移転行為であっても、譲渡を契機にそれまで課税していなかった含み益に課税されるということはご注意ください。

 

何点かその他注意点等をお話しします。

◆ 離婚による財産分与と譲渡所得税の関係

財産分与にも譲渡所得税が課税され得ます。
財産分与行為は、財産分与者が分与義務の消滅という経済的利益を享受しするための弁済として有償譲渡と見られます。
収入金額は譲渡時における資産の価額です。時価ですのでご注意を。多くは譲渡益は出ないのですが・・・
なお、被分与者には、相当額の財産分与である限り、贈与税が課税されません。贈与がないからです。

 

◆ 取得費(所得税法第38条第1項)
仲介手数料、名義書換料等資産を取得するための付随費用も含みます。
居住の用に供する取得に際する借入金の使用開始の日以前の期間に対応する借入利子は取得費、その後の利子は生活費・家事費とした判例があります。

譲渡資産が贈与を受けていた資産であった場合、受贈者が贈与者から資産を取得するための付随費用(名義 書換手数料)は取得費に該当するとした判例もあります。

なお、贈与等の取得資産の引き継ぎ(所等税法第60条)という制度があります。
贈与・相続・遺贈(限定承認除く)により個人が取得した財産は、取得費と取得時期を引き継ぎます。

 

◆ 譲渡費用「譲渡に要した費用」
残念ながら弁護士費用は入りません。

通達では、

①仲介料、運搬料、登記・登録に要する費用その他譲渡に「直接」要した費用、

②立退料、建物取壊費用等資産の譲渡価値を増加させるために支出した費用

とされています。

譲渡費用かどうかは、一般的抽象的に必要であるかではなく、現実に行われた資産の譲渡を前提に客観的に見てその譲渡を実現するために必要であったかで判断するとした判例があります。

 

◆ 保証債務を履行した場合の特例(所得税法第64条第2項)。

保証人、物上保証人が資産の処分・競売により保証債務を弁済した場合に弁済分の譲渡益がなかったものとされます。
リスケなどの際に考える特例です。担保不動産を失って税金もかかると困りますからね。

ただ要件が少し厳しいです。

① 求償権の全部又は一部の行使ができない場合

ここが一番問題ですね。
保証契約時に判断されます。危ない状況での借り換えは避けなければなりません。

② 申告書に記載が必要

申告しなければいけません。消費税課税取引の消費税にもご注意を。

 

◆資力喪失時の強制換価等の特例(所得税法第9条第1項10号、通則法第2条第10号、施行令第26条)

こちらも譲渡益がなかったとみなされます。破産管財人による任意売却は原則として該当しますが、任意整理の場合の任意売却にはご注意を。

 

 

一時所得】

所得税法第34条 

①これまでの8種類の他の所得に該当しない

②非継続・非対価性

の所得です。

 

懸賞金、生命保険に基づく一時金、一時払養老保険の満期返戻金、法人からの贈与、借家の立退料、競馬の払戻金などです。不動産の時効取得も一時所得とされています。

 

一時所得の計算は、収入-費用-特別控除(~50万円)です。かつ、その2分の1のみ課税対象です(所得税法第22条第2項第1号)。
一時的な所得なので担税力が弱いとされているのでしょう、2分の1課税ですね。
 

 

 

【雑所得】

所得税法第35条に定める最後の所得です。
公的年金、講演料等ですね。形、合法性を問いません(詐欺、闇金)。詐欺グループがまず所得税法違反事件で捕まることがありますね。

公的年金の計算は、収入-公的年金控除額です。

その他の計算は、収入―必要経費です。ただし、損益通算はありません。

 

一時所得・雑所得により全ての所得を把握するということで、所得税法は、包括的所得概念を採用していると言われます。
人の担税力を増加させる経済的利得はすべて所得を構成するということですね。
ただし、未実現利益と帰属所得(財産の利用や自家労働から得られる経済的利得)は課税されません。適正に補足不可能なため除外されているのでしょう。

 

以上、簡単に所得税の種類をお話してきました。所得の種類は税額に直結する問題なので、争いもありけっこう奥が深い話なのです。

 

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所得の種類その3 [税法のお話7]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

所得税における所得の種類の続きです。利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得とお話ししました。所得分類は10種類ですので、あと6種類ですね。

 

【給与所得】

所得税法第28条に定める給与所得です。

給与所得の計算は、収入-給与所得控除(所得税法第65条)ですね。
最近話題になっている特定支出制度(所得税法第57条の2)もあります。  

源泉徴収の対象で、他に一定額を超える所得や特定支出控除、医療費控除等の所得控除がない場合には、年末調整によって課税が終了します。
多くの給与所得者が確定申告をしないのはそのためです。

 

給与所得の一般的な定義は次のとおりです。

① 雇用又はこれに類する原因に基づいて

② 使用者の指揮命令に属して

③ 非独立的に提供する労務の対価

④ 退職支給金を除いたもの

です。
 

ストックオプション事件という有名な判例があります。

米社が国内100%子会社の役員に付与したストックオプションにかかる権利行使益は、一時所得に該当するのか、給与所得に該当するのかの争いです。
従前は一時所得として扱われていたものを課税庁が給与所得として課税するようになった経緯があります。一時所得の方が納税者には有利です。

何が問題になったかというと、ストックオプションを付与した米社と国内子会社の役員との間には雇用契約がありませんよね。
そうである以上、イメージ的には給与所得とは言い難いような気がします。

しかし、最高裁は、給与所得と認めました。

米社から子会社役員への職務を遂行したことに対する対価としての性質を有する経済的利益だとしたのです。

支払者との雇用契約関係がなくても給与所得になり得る例です。

 

もう一つ、りんご生産事業組合事件という判例もあります。

こちらでは、民法上の組合の組合員が組合から委嘱された作業に従事したことの対価として得た「給与」を給与所得として認めました。

組合員は組合員の構成員なので、民法の感覚では、給与が支払われるというのには違和感があるのですが・・・。利益配当ではないかと。

判例では、労務の提供や支払いの具体的態様等を考察して客観的、実質的に判断して、給与所得と認めたわけです。

 

給与所得も意外に難しいものですね。

 

【退職所得】

所得税法第30条に定める退職所得です。

分離課税、源泉徴収の対象です。

みなし退職所得という制度もあります(所得税法第31条)。

小規模共済、中退共等も退職所得ですね。

 

退職所得の計算は、(収入-退職所得控除)×2分の1です。

退職所得控除が大きいです。
かつ、2分の1課税です。
そのため、退職金は中小企業の節税スキームでよく使われます。

MAに際しても、旧オーナーさんには退職金の形で資金を取得してもらうことを考えますね。トータルの税金が大幅に変わってきますから。

退職所得の税金が安くなっているのは、
長期間に発生する所得であること、勤務に対する報償の性質を有すること、老後の生活保障であること、
などの退職所得のもつ特別の性質を考慮されているわけです。

 

そうであれば、比較的短い期間を区切って退職金名義の対価の支払いがなされても、負担軽減措置は必要ないですね。
 

5年退職金事件と10年退職金事件という2つの判例がありました。

① 退職、すなわち勤務関係の終了という事実によってはじめて支給されること

② 従来の継続的な勤務に対する報酬ないし労務の対価の後払いの性質を有すること

③ 一時金として支払われること

これらの性質を有する給与が退職所得です。形式的には要件すべてを備えなくても、実質的にみて要件の要求するところと合致し、課税上「退職により一時に受ける給与」と同一に取り扱うこと相当とするものも退職所得とされます。
実質的に勤務状態が継続していたような事案では、退職所得ではなく、給与所得として扱われることになります。

 

中小企業のオーナーが退職金をもらう際には気を付けないといけませんね。
せっかく支払った退職金が否認される可能性もあります。

 

【山林所得】

所得税法第32条に定められている、山林の伐採・譲渡による所得です。

植林には長期間を要する等の特別な性質から独立して規定されています。
正直あまり見たことはありませんが。

山林所得の計算は、収入-必要経費-特別控除額です。

分離課税で、5分5乗方式(所得税法第89条)という税負担を軽減した方法で課税されます。

今回はこの辺で失礼します。
 

 

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所得の種類その2 [税法のお話6]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

所得税の所得の種類の続きです。事業所得のお話です。

 

【事業所得】

事業所得は、所得税第27条に定められています。各種事業から生じる所得です。

個人事業主の方のメインの所得ですね。

事業所得の計算は、収入-必要経費です。

 

事業とは、自己の危険と計算において営利を目的とし対価を得て継続的に行う経済活動をいいます。定義だけ見てもよくわかりません。

判断のメルクマールを見ていただいた方がわかりやすいです。

事業かどうかは、次のメルクマールで判断されます。
 

①規模・設備、組織性

不動産所得、雑所得との区分ですね。事業規模なのかそうでないのかの判断です。

 

②自己の計算と危険、独立性

給与所得との区分ですね。支配従属関係で労務を提供しているのか、自身の計算と責任で事業を営んでいるのかの判断です。基本的には、雇用関係と見られれば給与所得、請負関係、委任関係と見られれば事業所得です。ちなみに、弁護士と顧客の関係は委任契約です、委任契約の場合は受任者に裁量があり顧客から独立しています。

 

③営利性、有償性

一時所得、雑所得との区分ですね。営利性、有償性あるものが事業です。

 

④継続性、反復性

一時所得、雑所得との区分ですね。継続性、反復性があるものが事業です。

 

②に関連して、弁護士の顧問契約に基づく報酬が給与所得か事業所得か争われた事件もあります。

事業所得とされました。弁護士は顧客に従属しているわけではなく独立していますからね。
当然なのでしょう。

 

弁護士繋がりですが、必要経費(所得税法第37条)の範囲が争われた事例もありました。

必要経費が収入から控除されるのは、投下資本の回収部分に課税が及ぶのを避ける趣旨(拡大再生産)です。

法律の建前は、所得税法第37条第1項に必要経費である直接対応費用(売上原価に対応します)と一般(期間)対応費用(販売管理費に対応します)を定めています。
一方、所得税法第45条には、必要経費に不算入となる家事費及び家事関連費が定められています。
事業所得は、収入金額から、個人の支出額を事業関連費と家事費及び家事関連費に分類し、後者を支出額から除いたものを必要経費として控除して算定すると判断されました。課税庁は、必要経費にするには事業との直接関連性が必要と主張していましたが、業務遂行上の必要性の要件でいいと判断されたと解釈されています。

この事件は、弁護士会役員の様々な会務に関係する懇親会等の出費が問題となりました。
会務の懇親会費は家事費や家事関連費ではないことは明白です。弁護士会は強制加入団体で、様々な活動を行っていますから(それ自体は個人の事業ではなくても事業を継続させる基盤です)。個人的な懇親会と言われても困りますね。

 

事業所得に関しては、所得税法第56条の解釈でも面白い裁判例があります。

同条は、事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例です。居住者と生計を一にする配偶者その他の親族が居住者の営む事業に従事したこと等により事業から対価の支払いを受ける場合にはその対価に相当する金額はその居住者の必要経費に算入しないこと等を定めています。

必要経費と認められる専従者給与とは別の話です。
生計を一にする親族に報酬を払った場合の規定です。

 

所得税は個人単位課税の制度です。超過累進課税の下では1人の所得として申告するよりも複数人の所得に分散した方が全体の所得税が小さくなるというというお話をしました。
上記条文は、その個人単位課税の弊害防止を目的とする規定なのです(家族構成員の間に所得を分割して税負担の軽減を図ることを防止する趣旨)。

 

そこで、同条が、租税回避のおそれがある場合に限って適用されるべきか、支払先の家族が独立した事業者であっても適用されるかが争われました。独立した事業者間の支払いであれば、故意の所得分散を図ったとは言えなさそうです。
 

しかし、最高裁は、弁護士・弁護士事件にて(夫婦がともに弁護士であった例ですね、弁護士夫が弁護士妻に報酬を払いました)、趣旨・文言に照らせば居住者と生計を一にする配偶者その他の親族が居住者と別に事業を営む場合であっても適用を否定できないとして、必要経費への参入を認めませんでした。

護士・税理士事件もありました。弁護士配偶者が税理士配偶者に仕事を頼んで報酬を支払った例ですね。弁護士・弁護士事件よりも、より所得分散による課税逃れの色彩は薄まると思います。仕事内容が違いますからね。
しかし、この事件でも最高裁は同様に必要経費への参入を認めませんでした。

 

租税法律主義の下、租税法は文言に忠実に解釈されます。具体的妥当性は別として、条文に限定がない以上、独立した事業者間でも所得税法56条の適用なされても仕方がないのかもしれません。

 

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所得の種類その1 [税法の話5]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

今週から本年度の広島大学ロースクールでの租税法の講義が始まります。

お話は所得税に入っていました。

 

所得税は、担税力に応じた課税を実現するため所得を10種類に区別し異なる課税をしている点はお話したところです。
具体的にお話していきましょう。

 

【利子所得】

所得税法第23条に定められている利子所得とは、公社債・預貯金の利子にかかる所得です。
利子所得の金額の計算は、収入金額そのままです。

 

利子所得にはあまりなじみがないと思います。他の所得と分離して一律に比例税率で課税されるからです(租税特別措置法)。源泉徴収され、一律源泉分離課税(所15%、地5%)ですね。通帳に源泉徴収された後の利子が入金されていますよね、定期預金を解約した際にもらう計算書を見ても税金が差し引かれています。
申告が要らないからあまり気にしません。

 

利子、というと、人にお金を貸した際の利子を思い浮かべるでしょう。
貸し借りの合意を金銭消費貸借契約といいます。
金銭消費貸借契約に基づく利子収入は、利子所得ではなく、雑所得として課税対象となります(なお、事業として貸借しているのであれば事業所得になります)。

 

【配当所得】

所得税法第24条に定められている配当所得とは、法人から受ける剰余金の配当等(利益が出資額に応じて分配される点が共通)に係る所得です。

みなし配当という制度もあります(所得税法第25条)。事業承継対策の際に出てくる制度ですね。

配当所得の金額の計算は、収入金額-負債利子(配当を生む元本取得の借入れの利子です。)です。

こちらも、源泉分離課税の対象となっています

 

【不動産所得】

所得税法第26条に定められている不動産所得は、不動産(航空機、船舶も)の上に存する権利等の「貸付」「による」所得です。

不動産所得の計算は、収入-必要経費です。

 

不動産等の貸付による所得であり、売買による所得は譲渡所得です。
不動産だけではなく、航空機、船舶の貸し付けによる所得も不動産所得です。
節税スキームとして流行った航空機リース、船舶リースなどで出てくるものです。私も銀行員時代には航空機リースなどをセールスしたことがあります。

 

「収入」には、賃料だけでなく、権利金、礼金、更新料、転貸承諾料、賃料相当損害金なども入ります。
ただ、権利金については、施行令にて、価格の
2分の1に相当する金額が譲渡所得判定基準とされます。譲渡所得課税される場合があります。

 

合意解除に伴い土地貸主に建物が譲渡された事例で、不動産所得か一時所得かが争われた裁判がありました。」
一時所得の方が納税者には有利なのです。

裁判所の判断は次のようなものでした。
「貸し付けによる所得」とは、借り主から貸主に移転される経済的利益のうち、目的物を使用収益する対価としての性質を有する経済的利益に限定される。
不動産所得の概念につき、(資産性所得であり担税力は大でありそのために租税負担の緩和措置が取られていないという立法目的があるから)合理的な根拠なくして拡大解釈を行うことは租税法律主義の観点から認められない。
ということを前提に、上記建物は、専ら契約の終了に伴う原状回復義務の履行を賃借人が免れることを目的とし目的物を使用収益する対価たる性質を有するものではないとして、不動産賃貸業務における継続的行為によって生じた所得に当たらず、一時所得にあたる。


租税法律主義に則って安易な拡大解釈は許さないことを前提に事実認定にて納税者を勝たせたものですね。

 

節税に絡む航空機リース事件もありました。

任意組合による航空機リース事業が不動産所得に該当するか(減価償却、損益通算ができますね)が問題となりました。
課税庁は雑所得(民法上の組合契約とは別個の契約類型である利益配当契約の性質)と主張しました。

裁判所は、民法上の契約類型を選択したことを前提として表示行為の解釈を行うのは当然。達成しようとする法的ないしは経済的目的に照らして上記契約類型の選択が著しく不合理である場合には、真実は民法上の組合契約を締結する意思ではなく同契約は不成立であると判断される余地があるにすぎない。としました。


課税法律関係は、一義的には私法関係が規律するというお話です。
契約自由の原則が妥当する世界であり、訴訟でも事実認定には契約書等を重視する処分証書の法理が適用されます。
私人間で契約をきちんとしたら根拠もなくひっくり返せないということですね。

 

なお、組合には、導管理論、バススルー課税というお話もあります。
組合は権利義務の主体となりえず権利義務が直截的に組合員に及ぶため課税客体とされないという考えです。

 

不動産の貸付等が、事業として行われていても人的役務が伴わないあるいは付随的なものに過ぎない場合は、不動産所得です。

事業規模か業務規模かという形で判断されます。
俗に、5棟10室基準と言われています。5棟あるいは10室以上の物件を貸し付けていたら事業規模ということですね。
今回は3種類の所得を説明しました。

 

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広島の弁護士 仲田 誠一

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所得税法のお話に入ります [税法の話4]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

所得税法のお話に入りましょう。


所得税とは、文字どおり、所得にかかる税金ですね。

所得税のメリットは、担税力に応じた課税の実現という租税公平主義の要請に適合することと言われます。所得が多い人が少ない人よりも支払う税金が高いですからね。

さらに、日本の所得税が典型的ですが、担税力の差異に着目した所得分類が可能(所得の種類によって税金を変えられる)、担税力に影響ある人的要素人的控除に反映できる(〇〇控除などですね)、担税力を表す所得金額の大きさに応じて累進課税が可能(日本は超過累進課税です)ということも挙げられています。

所得税のデメリットは、正確に所得を捕捉するという税執行上の困難性が挙げられています。そこで、納税者番号制度導入云々の話になるのですね。

 

【課税単位】

所得税は、個人単位で課税されます。昔のように戸単位ではないのですね。

個人単位で課税されるとして、所得税は累進課税ですから所得が大きくなればなるほどその分税率も高くなります。
結果、1000万円の所得があるとして、それを
1人の所得として申告するよりも、2人の所得に分散して申告した方が(例えば500万円ずつ)、各人の所得税率は下がりますから全体の所得税は小さくなります。同族経営の会社は、社長さんだけ役員報酬をたくさんもらうよりも、家族の役員報酬にも回した方が、所得税は安くなります(配偶者を役員にして相応の報酬を出しているケースでは離婚の際には困ったことになりますが)。勿論、役員報酬の金額には合理的根拠も必要でしょう。

 

所得の分散が節税になるのですね。そこで、不当な所得分散を防ぐべく手当もされています。

事業の経営主体に事業からの所得が帰属するという事業主基準で判断されます。
原則として家族の1人が得た収入についてはその者にのみ課税をして、課税後の家族内の金銭等の移転について税法は関知しない建前になっています。
家族間での生活費の支払いや利益提供が行われても支払者側では控除できず(所得税法45条の家事費・家事関連費)、受領者側でも課税されません(所得税法9条、相続税法21条の3)。

 

親子歯科医師事件と呼ばれる高裁判決があります。
親子で歯科医師を開業しており、子は自分の事業として申告したケースですね。
事業主基準(が前提とされて、父親の単独事業に子供が参加した場合、特段の事情がない限り、父親が経営主体で子供はその従業員であるとされました。世帯の区別、資金の流れ、事業の歴史的経緯等を総合考慮して父親を事業主と認定しています。       

 

【所得税計算の仕組み】

所得税計算は所得税法第2条第1項の定めているとおりです。

① 所得分類と金額計算

  後述するように、所得を種類に分けて計算するということです。

② 損益通算・繰越控除

  許された損益通算、繰越控除をします。

③ 所得控除により課税所得(総所得・退職所得・山林所得)金額を計算

④ 税率適用による税額計算 
  累進超過課税になります。所得金額毎に税率が高くなります。単純な累進課税ではなく、低い所得部分は低い税率、高い所得部分は高い税率というような計算になります。
  法人税は違いますね。

⑤ 税額控除による年税額算出


納付すべき税額は、年税額-源泉徴収額-予定納税額ですね。

確定申告書のとおり金額を記載していけば上記の計算ができるようになっています。

 

損益通算は、マイナスを他の所得から控除できる制度だと思ってください。

不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得(但し特例法の制限あり、土地建物の譲渡損は他の所得との損益通算禁止等)で認められています。

 

所得控除と税額控除は紛らわしいですね。
所得控除は、納税者の個別の事情に応じて、総所得金額、退職所得金額、山林所得金額から控除することが認められているものです。あくまでも所得の控除です。生命保険料控除などです。
税額控除は、所得控除後の各種課税標準に対して税率が適用された後の金額からさらに政策的目的などから税額を控除するものです。税額そのものが控除されます。
当然、税額控除の方がありがたいですね。

 

課税標準という言葉が出てきました。課税標準とは、課税物件を具体的に数量や価格で示したものです。
所得税は所得(総所得金額、退職所得金額、山林所得金額)です。

 

所得分類という話も出てきました。

所得税法は、所得を10種類に分類しています(所得税法23条~35条)。

各所得の担税力に応じた課税をして租税公平主義の実現を図る趣旨です。所得金額が同じでも種類によって税金が違うのですね。
したがって、ある所得がどの種類の所得に該当するかは最大の関心事になります。所得税紛争の多くは、納税者が有利な所得で申告し、課税庁により不利な所得で更正処分を受けるものです。

一般に、勤労性所得(給与、退職)⇒資産勤労結合所得(事業、不動産)⇒資産性所得(利子、配当)の順に担税力が高い、すなわち税金が高いと言われています。
これに対し、法人税については所得分類はなく一律課税です。

会社の経営をなさっている方は、所得税と法人税の違いを踏まえて事業承継対策や節税を考えないといけません。
 
 

次回から個々の所得の話をしていきます。お話が少しは面白くなると思います。

 

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租税、租税法とは [税法の話3]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

租税法の総論的なお話は今回で終わりです。

 

【租税とは】

考えると、税金ってなんだろうと思いますよね。学術的に議論されており、かつ判例でも定義されています。

判例の定義は、次のとおりです。

「国又は地方公共団体が、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてではなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付はその形式のいかんにかかわらず、憲法84条に規定する租税」(旭川国民健康保険料事件最大判H18.3.1

 

租税は金銭的給付です。徴兵などは税金ではありません。

 

租税は公益性(公共サービス)のための資金調達です。制裁目的の罰金は租税ではありませんね。

 

課税権に基づき強制的に徴収されるのが租税です(強行性権力性)。国税徴収法により租税債権は大変強い効力を与えられています。租税債権の優先が定められていますし、裁判所を通じなくても差押等の滞納処分ができます(自力執行力)。寄付金は強制ではないから租税ではありません。

租税債権の優先という点で、破産管財人をしていると銀行の根抵当権と租税債権の優先関係をケアしないといけない場面に出くわします。登記と差押えの先後ではなく、登記と法定納期限の先後で決まるのです、滞納租税の法定納期限なんて確認しないとわかりませんから怖いですね。

 

非対価性も租税のメルクマールです。特別の給付に対する反対給付の性質ないということで、国民健康保険や各種手数料は租税ではありません。判例で、国民健康保険は、強制加入、強制徴収等において租税に類似する性質だから憲法84条の趣旨は及ぶとはされていますが。

 

【租税法の機能】

租税法の機能は大きくわけて2つです。

1つ目は、行動規範(マニュアル)です。

戦後、基本的に申告納税制度になりました。納付すべき税額を納税者の申告によって確定させる制度ですね。所得税申告時期の2/163/15は、知り合いの税理士さんは大変です。お祭りみたいなもののようです。

「租税法律主義+申告納税制度=租税民主主義」と言われます。

もっとも、先払いの制度があります。予定納税制度と源泉徴収制度です。前者の意義は、納税者の負担軽減、国庫歳入平準化、所得発生時期と納期を近くするのが理想という理由が挙げられていますが、どうなのでしょう。後者は、申告納税制度を補完する制度で納税者の取引相手に納付義務を課すものです。多くの給与所得者は納税が完結しますね。

 

2つ目は、裁判規範(事後的解決基準)です。

法律ですからね。

 

【私法と税法の関係】

国と納税者の関係は租税法律関係とされています。

私法上の法律関係を前提に租税法律関係が構築されますから、租税法律関係は第1次的には私法により規律されます。売買なら所得税、贈与なら贈与税といったように私法上の契約関係が前提なのですね。民事訴訟法の理論に処分証書の法理というものがあり、裁判では私法上の契約関係の認定に契約書類がかなり重要視されます。

① 経済取引事実の発生      個人A→お金→個人B

② 私法上の要件事実の認定  労働契約、預金契約、棚卸資産と対価 

③ 私法上の法律構成     雇用、消費寄託、売買、贈与、相続

④ 租税実体法の発見     所得税法、相続税法

 

租税法と実体経済にはギャップが存在します。

私経済は不断に変化します(私的自治、法律形式選択の自由)。

租税法は法律の改正が必要です。追いついていけません。

解釈で実体経済をどこまで捕捉できるかという問題が出てきます。

 

【借用概念と固有概念】

条文の解釈の問題です。借用概念は、「売買」「贈与」など租税法に定義がない概念で、本来の法分野である私法と同一意義に解釈されます。課税庁によって自由に解釈されて課税をされてしまうと、租税法律主義の要請である国民の予測可能性、法的安定性を害しますからね。

「住所」の解釈が争われた裁判があります。民法の解釈に沿って、贈与税回避目的があるからといって客観的な生活の実態は消滅するものではない(立法により解決するべき)と国が負けました(最高裁H23.2.18判決)。

 

固有概念は、租税法に定義規定が有る概念です。「同族会社」「みなし配当」などですね。

 

租税法に定義規定がない、かつ私法から借りてきた概念でもない文言というのもあります。

住宅借入金等特別控除にいう「改築」の意味が争われた裁判で、特段の事情がない限り、言葉の通常の用法に従って解釈するとされました。

 

【まとめ】

総論のまとめです。

① 租税法律主義の貫徹

租税憲法の話ですね。

② 私法の重視(借用概念)

租税法律関係は第一義的に私法で規律される。特別な定義が租税法にないならば借用概念として私法と同じ解釈をするべきということですね。

③ 当事者の契約内容重視

租税法律関係は第一義的に私法で規律されます。契約の意味内容も私法で解釈されるべきで、課税庁が勝手に売買を交換等の別の法形式として扱っては駄目ということですね。そこに処分証書の法理という民事訴訟の理論も関わってきます。基本的には、契約書と同じ内容の法的効果の発生し、それに対応した課税しかできないのが原則です。

 

総論的な話が続きましたがこれで終わりです。次回から皆さんになじみの深い所得税法のお話に入っていこうと思います。

 

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民法改正講座1 [身近な法律知識]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

改正民法(債権法改正)の施行が近づいて来ました。2020年4月1日です。

民法は私法関係(私人と私人の間の法律関係)を規律する基本法です。

我々弁護士も最も活用している法律といえるでしょう。大事な法律なので、順次、改正点をかいつまんでですが、説明させていただこうと思います。

 

【意思能力の明文化】

第3条の2 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

 

意思能力に関する新しい条文です。
これまでも、意思能力を欠く者がした法律行為は無効であるとされていました。改めて明文化したということになります。

 

意思能力が問題となるのは、成年後見制度を利用していないが認知症等で判断能力がない方、あるいは泥酔・薬物などによる一時的な能力の喪失のケースでしょうか。

実務上は、意思能力がなかったとはなかなか認めてもらえません。高齢者の消費者被害などしか使わないかもしれません。
判断能力がなくなった場合には成年後見を開始しておいた方が無難です。

 

なお、意思能力は問題となる法律行為ごとに判断される傾向にあります。
その行為によって必要な能力は異なりますからね。

勿論、意思能力がないとは認められない場合でも、本人の意思決定過程に問題があるのであれば、金融トラブルなどの際の適合性原則違反、説明義務違反(専門家責任)、錯誤、詐欺等を主張して契約の効力を争う、あるいは解除をすることを主張することになります。

 

【錯誤】

旧95条

意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

新95条

1 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくもので、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要な物であるときは、取り消すことができる。

 ① 意思表示に対応する意思を欠く錯誤

 ② 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

2 前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項による意思表示の取消しをすることができない。

 ① 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。

 ② 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき

4 第1項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

 

まず、錯誤の効果が無効から取消しに変更されました。

無効は最初から法律行為の効力が発生しない、取消しは取り消された初めて法律効果が遡ってなくなるという理論上の違いがあります。
実務上、一番大きい違いは、取消しには取消し通知が必要ですが、無効は当然無効ですので通知行為は必要ないです。
錯誤も、詐欺等ほかの規定と平仄を合わせて(意思決定過程に瑕疵がある点は同じですからね)、今回取消しに変更されました。

 

その他の変更点は、判例法として既に確立している点、講学上争いがない点を明文化したものです。
基本的には、旧法の解釈と変わらないのであろうと思います。

 

錯誤とは勘違いですが、重要な事項に関する勘違いでなければなりません。
契約の目的や社会通念(常識)から、錯誤がなければ本人も普通一般人もその意思表示をしなかったであろうと考えられる重要なものでなければなりません。

 

また、実務上錯誤が出てくるのは、ほぼ動機の錯誤と言われるものです。
その内容の契約をすることについては勘違いがないが、その基礎事情(動機)に勘違いがあるということですね。
それが明文化されました。従前の解釈と同様、動機の表示が必要とされています。
この点は、契約書やパンフレット等から黙示に表示されていても動機の表示がありとされ得ます。

 

実務上、錯誤は、説明義務違反による解除、損害賠償請求、詐欺による取消し、消費者契約法が使えるときには消費者取消権の行使、と一緒に主張することが多いです。
相手方から何らかの不適切な情報提供などによる意思決定への不当な働きかけがあり、本人が騙された!と感じるケースですね。
当職が現在携わっている違約金充当合意の効力を争う控訴審でも、錯誤の有無が争点となっております。一審ではあまり争点とはならなかったのですが、裁判官によって焦点の当て方が異なることは珍しくはありません。

 

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租税憲法と租税回避行為 [税法の話2]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

今回は租税憲法と租税回避行為についてのお話です。

 

【租税法律主義】

租税法律主義は、憲法84条、30条に定められています。

租税を課すには法律の規定が必要なことは、国民の財産権を定める憲法29条から当然です。
課税権の制限が立憲主義の原動力となったという歴史的背景があって、憲法に2条も規定がおかれているのです。
そのため、租税法律主義は、刑罰権の制限である罪刑法定主義と同様非常に大事な原理になります。

考え方も罪刑法定主義とパラレルですが、財産権の制限という性質上、罪刑法定主義ほどは厳格に解釈されません。

租税法律主義は、課税要件法定主義、課税手続法定主義、課税(租税)要件明確主義、合法性の原則、租税法規不遡及の原則を要請するとされます。

なお、無限定ではないですが、法律には条例も含まれます。

 

課税要件法定主義

課税要件は法律で定められなければいけません。当然ですね。政令、省令などに、重要な点を丸投げしてはいけません(包括委任の禁止)。

課税要件とは、①納税義務者、②課税物件(対象行為、物、事実)、③課税物件の帰属、④課税標準、⑤税率です。

税務通達は、国税庁長官から職員に対して発出される命令(国家行政組織法14Ⅱ)にすぎません。法令解釈通達、執行通達、事務運営指針(加算税通達)です。法律とは扱われません(通達課税の禁止)。法律ではなく通達による課税」ということになれば違法になります。

ただし、法律に何ら根拠のないレベルにあることが実務上要請されます。判例でも、「課税がたまたま通達を機縁として行われたものであっても、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである以上、法の根拠に基づく処分」とされています。裁判にあたっては、あくまでも法律の解釈がなされます。通達は参考規定にすぎません。通達に沿った課税は、根拠法令の立法趣旨に照らして合理性を厳格にチェックされます。

 

課税手続法定主義

課税要件だけ法律で定められていても、課税手続が法律で定められなければ適正手続が保障されません。
課税手続も法定されることが要請されます。罪刑法定主義と同じです。

 

課税(租税)要件明確主義

租税法の定めはなるべく一義的で明確でなければいけません。

曖昧な規定では、租税法の

①公権力の濫用防止機能、

②予測可能性、法的安定性確保機能、

を果たせません。
租税負担の増大化、及び経済活動の高度化・複雑化に伴い、租税法律関係の予測可能性と法的安定性の確保が重視されるべきとも言われます。申告納税制度ですから、租税法は国民のマニュアルですからね。

したがって、租税法解釈をする際には、文言の明確性を崩さない手法をとらなければいけません。拡張解釈は許されません。現実には、「(不)相当」「正(不)当」などの文字からは具体的にどういう場合に適用されるかわからない「不確定概念」が多用されています。担税力に応じた実質的公平をはかるためには合理性があり、法の趣旨・目的からその意義が明確化できるなら問題がないとされます。

 

合法性の原則

課税庁は、課税要件が充足されている限り課税するべきで、恣意的課税・徴収は許されません。法律の規定どおり課税しろということです。

したがって、課税庁は融通が利きませんし、裁判でも和解ができないとされます(ただし、合法性の原則の論理的な帰結ではないとされますが)。

 

租税法規不遡及の原則

課税するには法律の定めが必要ならば、法律ができる前の行為には適用されないはずです。ただし、罪刑法定主義とは異なり、合理性がある限りで遡及適用も許されるとされます。

所得税の分野で、特措法改正による長期譲渡所得損益通算不可とする改正を年度の初めに遡って適用した事例の判例があります。

最高裁は、合理的制約は許容されることを前提に、 駆け込み防止という合理的必要があり、所得税が期間税であること(既に発生した納税義務の内容を変更ではない)、報道等により予測可能だった等から、遡及適用を是認しました。ぎりぎりの例ではないでしょうか。

 

【租税公平主義】

憲法14条1項の平等原則から導かれます。「担税力」(納税能力)に即した課税を要請します。

所得税法における所得分類、超過累進課税がその最たる例です。
所得税では所得の種類(10種類)によって課税の仕方が違います。所得の種類によって担税力が違うということを根拠にしています。
超過累進課税制度も、勿論担税力に応じた課税の制度です。

  

【租税法律主義と租税公平主義の相克、租税回避行為】

租税法律主義と租税公平主義は場合によっては相克します。

法律の不備は立法で解決するか、公平を期すために租税法を柔軟に解釈して解決すべきかの問題です。
前者では文理解釈が要請されますし、後者だと目的論的解釈、拡張解釈が要請されます。ほかにも、通達への対応、規定がない場合の否認を許すか、についても対立します。

租税法律主義が憲法にはっきり定められている大事な原則である以上は、基本的には租税法律主義が優先します。

 

租税法律主義と租税公平主義の相剋の典型的な場面として、租税回避行為への対応があります。

節税とは、租税法規が予定した法形式を用いることです。軽減特例の利用などです。
脱税とは、課税要件充足事実そのものを秘匿することです。
租税回避行為は、節税でも脱税でもありません。

①通常のものと考えられている取引形式とは異なる取引形式を選択し

②通常の取引形式を選択した場合と同一またはほぼ同一の経済的効果を達成し、

③租税上の負担を軽減または排除することです。

税負担軽減目的は前提ですが、脱税という違法行為ではないのですね。

 

昔の典型的な例は、土地売買にかかる譲渡所得税負担軽減を目的として、お金が欲しい人が土地を欲しい人に対して極めて長期の地上権設定し、土地を欲しい人がお金を欲しい人に対して弁済期を地上権の終期とする時価相当額の金銭の貸付を行う。地代と利子は同額、一方的更新可能の例です。現在では通用しませんが。

 

様々な租税回避行為が、「節税スキーム」と称されて次々に考えられています。

法律を変えるのは大変、法律の抜け道を考えるのは簡単、ということで、いたちごっこになります。
そこで、法律の改正をしないで、当事者が用いた法形式を租税法上は無視し、通常用いられる法形式に対応する課税要件が充足されたものとして扱うこと(税法上の否認)が許されるかが問題となります。租税回避行為の否認の問題です。

 

租税法律主義の下では、法律の個別否認規定によらない否認は認められません。

租税公平主義からすれば似たようなことをしている者同士は同じ課税をするべきということになりますが、租税法律主義が優先します。

租税法律主義の下においては当事者の選択した法形式を通常用いられる法形式に引き直し、それに対応する課税要件が充足されたものとして取り扱う権限が課税庁には認められていないのですね。

 

現在では、個別否認規定によらない否認は認められないことを前提として、私法上の法形式を租税法上もそのまま容認するかどうかが争われる傾向のようです(事実認定による否認)。

 

上の例では、地上権設定を売買として課税するというのではなく、私法上の契約が売買と認定される、売買と認定される以上は譲渡所得課税するという理屈です。法律解釈論(この場合も当該規定が適用されるか)ではなく事実認定(この場合はどんな契約が成立したか)で解決するイメージです。

 

租税の争いなのに、民法あるいは商法等の私法上どのような契約が成立したかの解釈で決着がつけられることになります。
勿論、簡単に認められません。私法上、法形式選択の自由が認められるのでどんな形式を遣おうが自由ですから。

 

次回は租税とは、租税法とは、といったお話です。そのあと所得税法のお話に入ろうと思っています。

 

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