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コラム 身近な法律知識

契約は慎重に [身近な法律知識]

弁護士の仲田誠一です。

 

「契約は守らなければならない。」が近代法の大原則です。

契約法は意思表示の合致に契約の拘束力を与えています。契約を守らないと社会秩序が守られないからでしょう。したがって、違法ではない限りどんな内容の契約でも守らなければならないといけないのが原則になります。

 

契約トラブルにおいて、契約が成立していると判断されるのであれば、原則契約内容を履行しなければなりません。不当だと言ったところで、違法でないとその効力を否定することはできません。

 

現代法になり、弱者保護の観点から、大原則は修正されているところです。借地借家法や消費者契約法などがその典型例です。契約の拘束力を排除できるような条項に該当すれば「契約は守らなければならない。」との大原則を破ることができるのですね。

 

このように、一旦契約をしてしまうと、契約の拘束力は非常に強いものになります。もちろん納得できていなくて、セールスに負けて、あるいはきちんとした説明を受けないで契約してしまうことはよくあります。しかし、内容や契約の仕方に納得いかなくても、法律の条項の要件に該当しない限りその効力を否定できません。契約というものは非常に怖いものです。

 

契約をする際には、本当に納得できたかを自問自答して慎重に行動してください。

訴訟には契約に関するものが多いのですが、契約の成立、契約の内容が争われ、その上で契約の拘束力を排除できる条項の適用が争われます。その契約が妥当かどうかの争いではないのですね。

 

契約トラブルはなかた法律事務所にご相談を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

 

http://www.nakata-law.com/

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代理人だけで手続はできるか[身近な法律知識]

弁護士の仲田誠一です。

「裁判所に出たくないから弁護士に依頼したい。」という方もいらっしゃいます。

弁護士に代理人になってもらったら裁判所には出向かなくていいのでしょうか。

 

通常の裁判であれば、そのとおりです。
勿論、裁判所でお話をしてもらう当事者本人尋問等には出てきてもらわないといけません。
しかし、それ以外の手続は代理人だけで大丈夫です。
なお、ケースによっては和解協議のために本人を呼んでくれと裁判官から言われることもあります。

 

家事事件だと様相が変わります。
例えば、離婚では、調停は毎回ではないですが、本人の出頭を事実上求められます。調停成立時には本人が出頭します。訴訟でも、和解をするときには本人の出頭を求められますね。

 

なお、破産、個人民事再生など倒産手続には、本人の出頭を求められます。出向く回数は少ないですが。

 

話は変わりますが、先日年金分割のために代理人として初めて年金事務所に行きました(いつもは、本人同士で手続をしてもらうか、公証人役場で手続をするのですが、試しに年金事務所での代理人による手続を試してみました。なお、調停調書、判決書があれば一方の出頭で大丈夫です)。印鑑証明書付の委任状を持って行ったのですが、分割請求書の署名は本人の署名の代行を求められ(本人の住所・名前を代理人が記入)、本人の印鑑が必要でした。代理人による手続であれば、代理人の署名(代理人の住所、〇代理人と顕名して代理人の署名)、代理人の印鑑を求めるのが筋だと思いましたが、手続のことなので理屈を通しても仕方がなく、従って手続をしました。

 

お悩み事がございましたらなかた法律事務所にご相談を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602
 

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弁護士費用の問題について(弁護士 仲田 誠一)

弁護士仲田誠一です。
 
よくある質問として弁護士費用の問題があります。
 
弁護士費用は弁護士に依頼する際には重要な判断事項ですね。
 
相場はいくらぐらいか、と聞かれることがあります。基本的には弁護士事務所と依頼者の相対で費用は決まるものなので、相場はあってないようなものです。
いろいろな弁護士に相談をしたらお分かりかと思いますが、バラバラです。
 
各事務所に費用の基準を備えつけるようになっているのですが、多くの事務所では旧日弁連の報酬基準を流用していると思います。
争いの金額等によって着手金報酬金が算定できるのですが、事案によってはかなり高くなってしまいます。
 
現実には、お話を詳しく聞いたうえで、何をするのか、それにはどのくらいの手間がかかるのか、報酬がどれだけ見込まれるか、ご相談者がどれだけお支払いできるのか等、様々なことを考えて、事案に応じて費用を決めていることが多いです。
 
ホームページ等に出している費用よりも高いということはないでしょうが、それよりも低い金額でお受けすることはよくあります。
 
ここで注意をしていただきたいことがあります。
まずは、着手金報酬金全体でいくらかかるのかを把握してください。
着手金が高くても報酬が見込まれないあるいは低額だと全体的に安くなりますし、その逆もあります。
次に、費用面だけで弁護士を選んではだめです。お医者さんなら安い方がいいとならないと同じ事です。
いいことばかり言わず、問題点をきちんと説明してくれ、責任をもって処理をしてくれると信頼できるかが一番大事なことです。もちろん、高いからいい弁護士、安いから悪い弁護士ということにもなりません。相談対応にも費用決定にも誠実さが大事だと思います。
 
結局は、信頼できる弁護士に出会えるまで、様々な弁護士に相談してみることがよろしいのではないでしょうか。
 
 
広島のなかた法律事務所
弁護士 仲田 誠一

「裁判所から訴状が届いたら?」【身近な法律知識8】

弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。catface

 

昨日,八丁堀福屋のところに新しくできた蒸しパン屋さんの蒸しパンを差し入れでいただきました。抹茶を食べたのですが,中にあんこが入っていておいしかったですよ。japanesetea

 

ところで,消費者金融から割りと長い期間の借り入れがある方に対して,突然,「消費者金融から借りているか?過払い金を取り戻してあげます。」という電話やDMが来るケースがまだまだあるみたいです。

どこで情報が漏れたのか,不思議です。いずれにしても,まともな弁護士等はそのような勧誘はしないと思っていいです。
そのようなケースでは,法外な料金を取られた,どう処理されたかよくわからない,弁護士をたらい回しにされた,過払金回収だけしかやってくれず他の借金はほっとかれた,などのお話を聞きます。
そもそも,業者が仲介料を取って弁護士に顧客を紹介する行為は,法律違反行為です。

何事もそうなのですが,まずは,地元の信頼できる弁護士や公的機関にご相談ください。

さて,今回は,よくある質問の1つとして,訴状が届いたらどうすればいいのか?についてお話をしようと思います。


◆ 訴状が届いたら?

裁判所から届いた封筒の中に,訴状,証拠の写し,期日呼出状,答弁書などが入っていると思います。

訴状と証拠の写しを見ると,誰があなたを訴えており,要求内容,その根拠がわかります。期日呼出状を見れば,第1回口頭弁論期日(最初の裁判の日)がわかります。答弁書は,訴状に対するあなたの答えとあなたの主張を書いて出すものです。

訴状が届いたら,自分で訴訟をしたい,と考える方でない限りは,すぐに弁護士に相談してください。
弁護士が対応するにしても,準備する時間が必要です。期日呼出状に記載されている期日の間際に相談をされても,なかなか間に合いません。
また,弁護士費用が不安でも,法律扶助制度を利用するなどで費用の問題を解決できるかもしれません,相談するのを怖がらないでください。


◆ 無視すると?

訴状が届いたのに,放っておいて,答弁書を出さないし期日にも出頭しないとどうなるのでしょうか?

一部の訴訟を除いて,裁判が第1回口頭弁論だけで打ち切られ,原告が出した訴状どおりの判決が出ることになります(「欠席判決」と呼ばれます)。不戦敗です。

よくあるのが,貸金業者から提起された貸金返還請求訴訟の訴状(支払督促のケースも多いでしょう)を,「よくわからない」「どうせお金がないから返済できない」「どうせ取られる財産はない」「仕事が忙しい」などとほっておくケースです。

しかし,判決をとられてしまうと,貸金業者がその判決に基づいてあなたの財産に対して強制執行ができます(差し押さえや競売などの強制執行をするためは「債務名義」と呼ばれる名目が必要なのですが,確定判決はその「債務名義」の1つです)。

給与債権も財産です。もし,あなたの勤務先が知られているならば,あなたの給与債権が差し押さえられる可能性があります。

給料を差し押さえられたら,勤務先にあなたの事情がわかってしまいますし,自己破産などの法的整理手続を進めないとなかなか取り下げてもらえません。


◆ 絶対に第1回期日に出頭しないといけない?

一部の訴訟を除いて,裁判所から来た封筒に入っていた答弁書を出しておけば,第1回口頭弁論期日は「擬制陳述」(裁判に出て答弁書とおりの内容を話したことにしてくれる)としてくれます。
そして,相手の主張をすべて認め,話し合いの余地もないといったケース以外は,次の期日を指定してくれます。

第1回口頭弁論に出席できない事情,自分の主張や和解希望,次回期日を指定してほしい旨,などを答弁書に書いておくことはもちろん,担当書記官さん(書いてあります)に電話で事情を話しておくと安心です。

なお,答弁書では,請求の原因に対する答弁の仕方に気をつけて下さい。

訴状をよく読んで,認められる事実,真実ではない事実,知らない事実を,それぞれきちんと細かく分けて答えてください。

不利なことを安易に認めると,「自白」となって,後で覆せなくなりかねません。


◆ 最後に

訴状が届いたら,ご自分だけで判断するのではなく,ぜひ弁護士に相談してください。ご自分で対応するという方も,法律相談ぐらいは受けてくださいね。coldsweats02

弁護士にとっても裁判は難しいものです。

 

 


「自分の物を自分で時効取得するって?」【身近な法律知識7】

弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。catface


みなさんは物をとっておく性格でしょうか?

私は,すぐに物を捨ててしまいます。昔の物はあまり持っていません。
駄菓子屋でこつこつ買って集めていたウルトラマンの消しゴムやカードなど,懐かしいなと思いつつインターネットオークションを覗いてみると,結構高く取引されているようですね。

ところで,法律的な争いはいつ起きるかわかりません。昔のことが今になって蒸し返されて争いになることは稀ではありません。
みなさん,昔の契約書や領収書など重要な書類や,古い通帳は保存していますか?

会社や事業主であれば,書類保存義務や帳簿保存義務を意識されて,重要な書類は5年から10年ほど保存しているでしょう。それでも20年以上も前の書類はどうでしょう?


◆ 古い証拠は残っていないことが多い,それが時効制度の存在理由の1つです

裁判になると,相手方が争う事実が真実だと裁判所に認めてもらうためには,証拠を出すことが必要です。証拠がなければ,真実を主張しているのに,裁判所には認められず,裁判に負けてしまうことがあるのです。

では,万が一裁判で争われることを考えると重要書類など証拠となる物は永久に保存しなければならないじゃないか!きりがないじゃないか!と思われるでしょう。

古い事実に関する証拠は散逸してしまうことが多いから立証が難しい。それが,時効制度の存在理由の1つです。時効制度があれば,証拠がなくても,時効で消滅した(「消滅時効」),時効で取得した(「取得時効」)と言えば済むわけです。

債権の「消滅時効」については以前に触れました。債権は一定期間それを行使しないと時効によって消滅する,その効果を得るためには時効の援用をしないといけない,時効完成後にそれを知らずに債務の承認をすると時効の援用ができなくなる,などのお話をしました。

今回は,自分の物だと一定期間の占有を続ければ,時効によって権利を取得する「取得時効」に絡むお話です。


◆ 自分の物を時効で取得する?

矛盾していると思いませんか?

既に自分の所有物であれば,理論7上,その後に時効により取得することはおかしいと思いますよね。「取得時効」を定める民法162条にも,時効取得の対象が「他人の物」と書かれています。

たとえば,あなたが30年前に土地を貰って,その後,家を建てて住んでいる。登記は前の所有者のままにしていた。しかし,突然,自分があなたの土地の所有者だという人が出てきて,あなたが立ち退くよう要求してきた。とします。

法律的に突き詰めるとややこしい話なのですが,少なくとも,あなたは相手方に対してその土地があなたのものだと主張しないといけないわけです。

でも,土地を貰ったのは昔のことで,書類が見当たらない。事情を知っている人も他界されている。としましょう。

困りますね。土地があなたのもの(貰ったもの)と立証できる証拠がなければ,不法占拠者扱いされてしまいます。

時効取得を主張できればどうでしょう。

自分が家をいついつ建てた,そして今もその家に住んでいる,ということを立証すればいいだけです。簡単ですね。

このように,所有権の取得時期が古い話で証拠がないケースでは,自分の物であっても時効取得の主張ができれば立証が楽になるのです。

そこで,判例も,自己の所有物の時効取得の主張も許されるとしています。判例の事案は少し特殊なので,紹介はしませんが,理屈はこうです。

時効制度は,永続する事実状態を尊重する趣旨である。所有権に基づいて占有をする者についても,所有権取得の立証が困難な場合など取得時効による権 利取得を主張できると考えるのが,その時効の趣旨に合致する。民法162条の「他人の物」という文言は,通常の場合を規定しただけに過ぎず,自己の物の時 効取得を否定するものではない。

実際に自己の物の取得時効を取得することは珍しくないです。

買った,貰った,相続した,という話でも,証拠が乏しいあるいはない場合には,裁判をする際に,売買・贈与・相続により所有権を取得したという主張とあわせて,それが立証できなくても時効取得によって所有権を取得したとの主張もする,とします。


◆ 最後に

今回は,「自己の所有物の時効取得」の主張という,一見して矛盾したような話をさせていただきました。

結論は,自己の物だとの立証が困難な場合には,自分の物でも時効取得を主張してもよいということです。

時効制度は卑怯だと感じる方もいらっしゃると思います。時効によって他人のものを自分のものにしたり,時効によって他人から借りた借金を返さないのは,一面で正義に反しそうです。

時効の制度の存在理由としては,①永続した事実状態の尊重,②権利の上に眠るものは保護しない,③過去の事実の立証困難の救済,の3つが言われています。

今回のお話で,③の話はわかっていただけたかなと思います。
時効制度は,立証が困難な古い話が争われたときにそれを救済する存在意義もあるのです。

時効に絡むお話は無数にあります。機会を見つけて,お話させていただきます。


「出世払いとは?」【身近な法律知識6】

弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。catface

前回,「条件」に関係するお話をしました。そこで,今回は,「条件」との区別が紛らわしい,「期限」のお話をさせていただこうと思います。
一見,当たり前のようで,しかし,難しいお話です。

出世払いの借金は,いつまでに返す必要があるのでしょうか,それとも出世しない限りは返済しなくていいのでしょうか?


◆ 「条件」と「期限」の違いは?

「条件」と「期限」の違いはわかりますか?

日常,よく「○○したら」とか「○○になったら」という言葉をつけて約束をしますね。それらは「条件」を決めたのでしょうか,それとも「期限」を決めたのでしょうか?

前回お話した,「広大に合格したら100万円をやる」という約束の「広大に合格したら」は,「条件」です(正確には「停止条件」です。「停止条件」 とは,それが成就したら効果が発生する「条件」です)。したがって,100万円の請求権は,広大に合格したという事実が発生(停止条件が成就)して初め て,発生するわけです。

では,「3月末になったら借金を返済する」という約束がされた場合の,「3月末になったら」は,どうでしょう?感覚的には,「条件」ではなく,「期限」だとおわかりでしょう。よく「返済期限」とか言いますからね。

なんとなくおわかりだと思います。「条件」と「期限」は,ともに将来の一定の事実ですが,その発生・到来が確実かそうではないかによって区別されます。

「合格」のように,将来それが発生するかどうかわからない事実が「条件」です。それに対して,「3月末」のように将来到来することが確実な事実が「期限」です。

「当たり前じゃないか」,「そんな区別ぐらいわかるよ」,とみなさん思われるかもしれません。

でも,そう簡単な話ではないですよ。

両者の区別が微妙なケースは多々あります。そして,どちらであるかによって,法律的な効果も違ってきます。

「出世払いで」借金をした場合はどちらでしょうか?
「出世したら返済する」という「停止条件」の意味なのでしょうか?
「出世するか出世しないかわかる時点まで返済を猶予する」という支払「期限」の意味なのでしょうか?

「出世すること」が「停止条件」だとすると,出世することがなければ返済する義務はありません。一方,支払「期限」だとすると,出世した時点または出世する見込みがなくなった時点で支払期限が到来して支払わなければなりません。


◆ 出世払いの約束の意味

大正時代に実際に争われた事例があり,有名な判例が出ました。

判例は,その事例での「出世払い」は「不確定期限」(将来確実に発生するが,その時期はわからない事実)であると判断しました。

つまり,出世しなかったら返済しなくていいという約束ではなく,出世した時点まで,あるいは出世の見込みがなくなった時点まで,返済を猶予するという意味の約束だとしたのです。

借金は返すべきだと考えると,判例のように,出世払いは停止「条件」ではなく不確定「期限」だという判断になるのでしょう。

もっとも,親族が出世払いでお金を貸すようなケースでは,そもそも貸主には借主に対して法的な返済義務を課すつもりがない場合が多いでしょう。

そのように法的に返済を強制されない債務を「自然債務」ということがあります。
これも戦前ですが,その点についての判例があります。
その判例は,カフェーの女給の歓心を買うために客がした女給に対して多額の金銭を与えるとの約束を,客が女給に対して裁判上の請求権を与える趣旨ではない(つまり,裁判では請求できない約束だから女給は裁判には負ける)と判断しました。

事例によって,そのようなケースなのか,上記の判例のような不確定期限付の約束なのかが判断されるのではないかと思います。


◆ 最近の事例

「条件」か「期限」か,の争いは,決して古いものではありません。

その点が争われた最高裁の判決が最近出ていました。デフォルメすると。

元請→ 一次下請 →二次下請 ・・・・・・・→Y →X,と順次工事が発注されました。XとYとの間には,「Yが請負代金の支払を受けた後に,Xに対して請負代金を支払う」との合意がありました。

「Yが請負代金の支払を受けた後」というのは,「条件」(「停止条件」)でしょうか,「期限」(「不確定期限」)でしょうか?

「停止条件」だとすると,Yが請負代金を受けない限り,XはYに請負代金を請求することができません。

XがYに対して請負代金の支払を請求しました。

最高裁は,その事案の事情(公共事業にかかわる工事であって,請負代金の支払が確実だったなど)の下では,XYの上記合意は,Yが請負代金の支払を 受けることを「停止条件」としたものではなく,Yが支払を受けた時点またはその見込みがなくなった時点でYの請負代金債務の支払「期限」が到来することを 定めたものだ,と判断しました。

それであれば,Yが自己の発注者から代金を回収できなくても,Xは自己の発注者であるYに対して,請負代金の支払を請求できることになります。

「条件」だとすると,Yが請負代金を回収できなければXもYに対して代金を請求できないことになり,結局,Yの請負代金回収リスクを,Xがまるまる 被ってしまいます。それは,通常,不公平でしょう。個人的には,特別の事情がない限り,そのような合意は「期限」と解釈するのが妥当だと考えます。


◆ 最後に

「条件」「期限」というような陳腐な言葉も,法律的に考えると判断が微妙なケースがあり,またどちらかによって効果も変わってきます。

契約書など文書を作成する場合は,その文章が法的にどのような意味を持つのか,よく確認してから作成しなければいけません。

外国語の文書の翻訳と同じような感覚で,専門家にチェックをしてもらう方が安心です。confident


「不誠実な行動は許さない」【身近な法律知識5】

弁護士(広島弁護士会所属)の仲田誠一です。catface

先日,阪神タイガースの選手が,不動産業者に対して仲介手数料を支払え,との判決を受けた,という報道がありました。
不動産仲介業者が自宅物件を鳥谷選手に仲介したが,結局,同選手は直接オーナーと契約したとして,不動産業者から仲介手数料を請求されたようですね。
事実自体にも争いがあったようで,事案の詳細はわかりません。

今回は,そのニュースをヒントに,正義(「信義則」)について考えてみましょう。


◆ 条件付権利とは,

さて,不動産の仲介手数料は業者が仲介した物件の契約をさせて初めて生じるものです。その意味で,「条件付権利」(正確には「停止条件付権利」)です。つまり,仲介料請求権は,成約という「条件」が成就して初めて発生する報酬請求権と言えます。

受験生に対して広島大学に合格したら100万円をあげる,といった約束をした場合の,受験生の100万円の請求権も,広大に合格するという「条件」が成就して初めて100万円の請求権が発生する点で同じく「条件付権利」(「停止条件付権利」)だと考えてください。


◆ そのような条件の成就を故意に妨げると?

上の例で,業者に仲介を頼んだ買主が,仲介料をケチって,業者から紹介してもらったオーナーと直接自分で契約をしたら,業者に対する仲介手数料はどうなるのでしょうか?
あるいは,100万円あげると約束した人が,100万円を惜しんで広島大学の受験に行こうとする受験生を邪魔して受験できなくさせたら,その100万円はどうなるのでしょうか?

常識的に見ると,自分が約束をしておいて,条件が成就すれば損をしてしまう当事者がそれを妨害して利益を得るのは卑怯だ,仲介料や100万円を払わないと正義(信義則)に反する,と考えますよね。

安心してください。法律は(基本的には)常識から外れていません。

契約関係にある当事者は,お互いに利益を得るためには他方に損害を与えても構わないというわけではありません。お互い相手の信頼を裏切らないよう に,相手に損害を与えないように行動をする必要があります。それを,「信義則」(「信義誠実の原則」)と言います。そうではないと,社会が無茶苦茶あるい は弱肉強食の世界になってしまいますよね。そこで,民法も「信義誠実の原則」を定めています。

そして,「信義則」を具体化した規定として,民法130条があります。同規定は,「条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは,相手方は,その条件が成就したものとみなすことができる」,と規定しています。

民法130条によると,仲介により成約する,広島大学に合格する,という条件が達成されることによって,お金を払うことになる当事者が,自分で勝手 に紹介されたオーナーと契約をしたり,広大に受験させなかったりして故意に条件の達成を妨げたのであるから,相手方(業者,受験生)は,その条件が達成し たとみなして,仲介手数料を請求したり,100万円を請求したりできることになります。


◆ 条件が成就したら利益を受ける当事者が故意にその条件を成就させたら?

民法130条は,条件成就により「不利益」を受ける当事者がその条件の成就を「妨げた」場合の規定です。

では,条件が成就したら「利益」を受ける当事者が故意にその条件を「成就させた」らどうなるのでしょうか。このような場面で直接適用できる規定はありません。もちろん,民法130条が適用される場面ではありません。

この点に関しては,有名な判例があります。
かつらメーカー同士の争いの結果,AB社は和解契約をしました。
その内容は,ある種類のかつらをB社が製造販売することを禁止し,それに違反したらB社がA社に対して違約金を支払うというものでした。
裁判所の認定では,A社は,B社が和解契約を守っているか調査・確認する範囲を超えて,人を使って積極的にB社が禁止された種類のかつらを製造販売するように仕向けた(誘発した)という事案でした。

ある種のかつらを製造販売しないという条項に違反するという「条件」が成就したら,違約金請求権が発生するという点で,A社の違約金請求権は「条件付権利」です。

A社は,B社が和解条項に違反したとして,B社に対して違約金を請求しました。

常識的にはどうでしょう。やはり,条件を故意に成就させた当事者がそれによって利益を得るのは,正義(「信義則」)に反すると思いませんか?

先ほどの民法130条も,正義(「信義則」)に基づく規定でした。

そこで,判例は,このケースは条件が成就したら利益を受ける当事者(A社)が故意にその条件を成就したケースだから,民法130条の「類推適用」によって,相手方(B社)はその条件が成就していないものとみなすことができる,として,A社の請求を認めませんでした。

「類推適用」とは,ある法律の規定が「直接」適用される場面ではないが,その規定の趣旨や適用される利益状況などが共通する場面にも,その規定の考え方を及ぼし,同じような効果を生じさせようとする「解釈」手法です。

民法130条が直接適用される場面ではない。しかし,同規定は「信義則」に基づくし,民法130条の適用される場面とこの場面とは,条件の成就に絡 んで一方当事者が不誠実な行動を取って利益を得ようとしているという利益状況も共通である。だから,同規定の趣旨をこの場面にも及ぼして,同じように不誠 実な当事者には利益を与えない結論を導く,ということです。


◆ 最後に

法律は,正義に基づくはずです。
また,裁判も正義に基づくはずです(証拠に基づく限りの判断という限界はあります)。

今回は,ニュースをヒントにして,正義(信義則)に基づく民法130条の紹介と,直接の規定がない場面にその正義(信義則)の考えを及ぼした判例の紹介をさせていただきました。

 


「車は走る凶器?」  【身近な法律知識】

弁護士の仲田誠一です。catface

 

 

年末もいよいよ押し迫ってきましたね。
例年,年末にかけて交通事故が増えるそうですね。日没が早くなったり,お酒を飲む機会が増えるからのようです。beer

飲酒運転は絶対に止めてくださいsign01

 

 

 

◆ 車は「走る凶器」
ところで,法曹界では,車は「走る凶器」とよく言われます。
近代法が整備された頃にはまだ馬車の時代でした,車がなければ,悲惨な交通事故も当然ありません。つまり,自動車は人などにぶつかったら凶器になります(実際に自動車を凶器に使った事件もありますね),だから「走る凶器」なのです。

なぜ車が公道を走ることが許されているかというと,それは便利だからです。危険なだけのものであったら,法律で使用を禁止されるところですが,社会的に有用であるため,利用が許されているのです。車がない社会なんて想像できませんからね。



◆ 「危険責任」
危険な物を利用する者は,その利用に伴って生じた損害の責任を負うべきだ!という考えを「危険責任」論と言います。社会的に有用(必要)だから使ってもいいが,人に迷惑をかけたら危ないものを使っていたあなたが悪いから責任も取ってね,ということです。

危険責任の考えが背景にもあって,「車」対「人や自転車など」の事故については,そもそも車の責任の方が大きいと見られてしまいます。
具体的には,「過失割合」の話になります。事故の形態によって,ある程度の「過失割合」が決まっていますが,車側が高い設定になっています。



◆ 自賠責保険の存在意義
「自動車による交通事故の責任は,危険な物を利用している車の運転手側に多く負わせるべきだ」,といっても,運転手にお金がないと被害回復は結局実現しません。
そのためにあるのが,強制加入の自賠責保険制度です。
つまり,被害者に最低限の被害回復をする用意(それが自賠責保険)ができていなければ,自動車を運転させないということです。



◆ 任意保険にも入ってください!
それでは,自賠責保険に入っていれば安心なのでしょうか?
先ほど,自賠責保険は「最低限」の被害回復を保障するものであるということを書きましたが,「最低限」では足りません。

自賠責ではそもそもカバーできない被害弁償もあります。また,大きな事故だと金額も十分ではありません。

お金を惜しんで任意保険に入らなかったばっかりに,交通事故を起こして大変な目に遭う方も少なからずいらっしゃいます。
また,それではそもそも被害者に対して申し訳が立ちません。
さらに,事故についての刑事事件でも,被害弁償をできたかどうかは重要な意味を持ちます。任意保険に入っていない場合には,大きな被害弁償をすることができないのが普通であり,そのため刑は重くなる傾向があります。

任意保険,しかも全損害をカバーする保険に入っておかないと,あなたの人生が台無しになるだけでなく,被害者や遺族にも二重の苦しみを与えてしまうことになります。

私は,保険会社の代理人でも,親族に保険屋さんがいるわけでもないのですが,任意保険加入は,「走る凶器」を利用するドライバーの最低限のマナーだと思っています。
相談者の中に任意保険に入っていない方が少なからずいらっしゃるのに驚いているところです。



◆ 破産をすれば損害賠償義務は免れる?
任意保険に入っていなかった,損害賠償請求をされたけど,そんなに大きな金額を払えるわけがない,となった場合,自己破産で逃げられるでしょうか?

そう簡単ではありません。

破産には,「免責不許可事由」というものがあり,それに該当すると破産をしても債務から逃れることはできません。

人身事故による損害賠償債務は,その「免責不許可事由」に該当するおそれがあります。
また,その調査のため「破産管財人」(弁護士から裁判所が選任します)が選任される可能性が高く,その際には裁判所に納める多額の「予納金」が必要となります。



◆ 最後に
皆が自動車は危険なものであるという認識を共有できれば,と願って止みません。
最近は,自転車の事故も問題視されて来ており,多額の損害賠償義務を負うケースもあるようです。自転車も,もちろん,人にとっては「走る凶器」と言えるでしょう。自転車の保険が整備されていない現状はもどかしく思います。rvcar

 


「契約」とは?なぜ守らないといけない? 【身近な法律知識】

弁護士の仲田誠一です。

本当に寒いですね。
弊法律事務所と裁判所との10分程度の往復も辛いです。口に出すとよけい寒くなるのでいけないとは思いつつ、人に会うとついつい口に出てしまいます。

これから、身近な、しかもよく考えてみると難しいという法律の問題を【身近な法律知識】として随時紹介していきたいと思っています。
今回は、「契約」についてです。契約とは何か?という問題は、初歩的な話のようにも感じられるでしょう。でも、実は契約の成否や内容が裁判で争われるケースが結構多いんですよ。

契約とは何でしょう?簡単なようでしかし言葉で説明しようとすると難しいんです。
「合意」=「契約」でしょうか。
しかし、世の中の「合意や「約束」のすべてが法的に「契約」と評価されるわけではありません。
デートする「約束」などは法的には「契約」とは言えないようです。

では、「約束」あるいは「合意」と「契約」はどう違うのでしょうか?
難しい言い回しで恐縮ですが、合意内容が実行されなければ法的な手段によって強制される義務(権利)がある「合意」だけが法的に「契約」と評価されるのです。

次に、契約はいつ成立するのでしょうか?
「契約書」が作成されないと契約は成立しないと考える方がいらっしゃいますが、そうではありません。
契約というものは、原則として「申込」と「承諾」が合致すれば成立するのです。 一部の契約を除いて、口約束でも「契約」が成立します。
ただし、あとで言った言わないのトラブルになりかねません。そのため、契約書を作成して、証拠として残すのです。

もっとも、いつ申込と承諾が合致したのか、と評価できるかはなかなか難しい問題です。

例を1つを挙げてみましょう。
住宅を借りる場合には、下見、申込証拠金、重要事項説明、契約書作成、引渡し、といった流れになると思います。
どの段階で契約が成立するのでしょう?

不動産仲介業者へのアンケートの集計結果を見たことがあるのですが、業者の意見もまちまちでした。
契約書作成あるいは引渡しの段階で契約が成立していること、下見の段階では契約が成立していないことは問題ないでしょう。
それでは、申込証拠金を出して物件を仮押えしてもらったときや重要事項説明を受けたときはどうでしょう?

なかなか難しい問題ですが、法的に言うと、契約には、その契約類型ごとに要素(絶対に決まっていないといけない事項)があります。
それらの要素について合意した段階で契約が成立したと評価されることになると思います。

上の例で言うと、建物賃貸借の要素とは、
 ①主体(借主・貸主)
 ②物件(の特定)
 ③賃料
 ④賃貸借期間(返還合意)
といったところです。

契約の成立は、具体的な事情によって、それらがどの段階で合意されたか判断されることになります。

このように考えると、建物賃貸借契約では、少なくとも重要事項説明を受け了承すれば、契約成立と言っていいでしょう。重要事項説明にはそれら要素がすべて含まれているからです。
もちろん、ケースによってはその前に契約の成立が認められるケースもあります。

このように、具体的事情によって、また契約の種類によって、契約の成立時期は異なります。そのため、契約の成否が裁判で争われることが稀ではないのです。

今回は少し小難しい話で退屈でしたでしょうか。契約にまつわる問題はたくさんありますので、機会を見つけてご紹介していきたいと思います。


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