HOME > コラム > 相続問題 > 法人破産のための準備など2 [借金問題]

コラム

< 【GW中の営業日】  |  一覧へ戻る  |  相続共有株式がある場合の役員変更 [企業法務] >

法人破産のための準備など2 [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

法人破産の準備はどうするべきかの続きです。

 

◇ 財産処分・整理

(決算書記載資産)

決算書に記載されている資産項目については、すべて説明をして、現金化できるものはしておくということが基本です。
破産管財人の手間を少しでも削減する意味もあります。
すぐに現金化できないものは破産管財人に引き継ぐことになります。

 

(銀行関係)

借入のある金融機関が絡む保険、共済、定期預金等は解約できるうちに早めに現金化します。申立費用等を捻出する必要がありますしね。
現金化債権者平等原則に従って破産手続により平等に弁済する、あるいは債権者共通の利益に費消するということですので、後ろめたいことはありません。


借入のない金融機関の預金については、もう使わなくていいというタイミングで解約していただきます。


当座取引があり手形帳、小切手帳がある場合には弁護士に預けてください。


貸金庫契約がある場合もあります、中身を空にして解約をしていただきます。

 

(機械・工具、什器・備品)

まずは固定資産台帳の確認です。台帳記載資産のチェックをします。

台帳記載以外の一括償却資産、償却済み資産については、最終的にリストは作成していただきます。

処分をするかどうかはケースバイケースの判断ですね。実際に現場を拝見してからの判断になります。
賃貸物件の整理の必要性からは処分を急ぐ場合もあります。破産管財人の立場ですが、工場内の機械類一式を競争入札で売却したことがあります。

自動車については、使わないタイミングで鍵を預かります。自動車保険についても使わなくなったタイミングで解約をしてもらいます。

 

(既に処分した資産)

法人破産を決断する前には資金繰りのために様々な資産を現金化していることが多いです。
少なくとも半年前、かつ直近決算後の売却、解約等の現金化については説明をしないといけません。
解約関係書類を探していただくことになります。使途も説明しなければなりません。

 

(保証人の銀行資産)

受任通知を銀行に出すと、保証人の口座も凍結され、相殺されることになります。
受任通知を出す金融機関には、法人・個人とも資産がない状態が理想です。忘れることがあるので気を付けてください。

 

◇ 賃貸物件

明渡しをしないといけませんね。弁護士が受任通知を出した上で、弁護士が折衝をすることになるでしょう。

中のものを処分整理して明渡しが可能なら明渡しをします。

中にある物の処分が難しい、あるいは処分費用がかなりかかる等の理由で、明渡しを破産管財人に引き継がなければならないケースも多いです。

勿論、家主と和解的な解決により(原状回復費用が払えないという前提で)、早期の明渡しが可能な場合もあります。

 

◇ リース、所有権留保物件

リース物件、所有権留保物件は返却します。弁護士が受任通知を出せば返還の要請が来ます。確認のため契約書は弁護士に渡してください。

自動車では、予め弁護士に車検証を確認してもらってください。きちんと所有権留保の形の所有者登録ができていない場合には、そのまま返却することができません。

場合によっては、債権者から所有権を放棄される、無償譲渡される場合もあります。そうなるとこちらで処分するか破産管財人に引き継ぐかをしないといけません。

 

◇ 帳簿、税理士

事業廃止までの帳簿はきちんとつけていただきます。

事業廃止後ですが、少なくとも領収書や請求書など帳簿作成に必要な資料を整理・保管してもらいます。

資金がある場合には、税理士への依頼を継続してもらうこともあります。

 

◇ 不動産

不動産については、処分が可能(担保に入っていない)かつ売却をしないと破産申立資金が捻出できない場合には、弁護士関与の下で適正価格にて売却します。
売却資金の使途はきちんと説明しなければなりません。

それ以外はそのまま破産管財人に引き渡します(鍵を弁護士に預けることになります)。

勿論、お邪魔して、写真を撮り、状況を報告します。

 

◇ 許可、認可、登録

法人破産をすれば最終的に法人はなくなります。営業を廃止した後に、営業に必要な許可、認可、登録などは抹消等を届けてもらいます。

 

◇ 仕掛の仕事

基本的には営業廃止にかかる仕事は受けないようにしてもらいます。

それでも残ってします仕掛仕事は、契約書を基に一覧表を作成します。対応ができるものはしていただくこともあります。

賃貸管理会社の破産の場合にもそうでしたが、継続的な仕事についてもリストを作成し、顧客に営業廃止後の対応を説明しないといけないですね。

 

まだまだ法人破産の準備の話は尽きませんが、この辺までにしておこうと思います。法人破産はオーダーメイド色が強いです。できるだけ早く弁護士の助けを得て、ご準備ください。
本格的な準備は営業廃止後ですが、その前にやっておかないといけないこともあります。

ざっと法人破産の準備についてお話いたしました。
勿論、個別の問題毎にもう少し掘り下げて説明しないといけない点が多々あります。機会を見て説明していきますね。

 

債務整理(任意整理、民事再生、自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

http://www.nakata-law.com/

 

http://www.nakata-law.com/smart/


カテゴリ:

< 【GW中の営業日】  |  一覧へ戻る  |  相続共有株式がある場合の役員変更 [企業法務] >

同じカテゴリの記事

相続法改正ポイント6 [相続問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

2019年71日から順次施行される改正相続法(民法)のお話をさせていただいております。
今回が最後になります。

 

【持戻し免除の意思表示の推定】
 

特別受益者の相続分を定める903条の改正です。配偶者の保護のための改正です。


「改正第903条

4 婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。」

 

「第1項の規定を適用しない旨の意思」とは、持戻し免除の意思表示です。

 

特別受益がある場合、特別受益を遺産の中に回復させて(これを「特別受益の持戻し」といいます。)、特別受益者はそれに基づいて算出した相続分から特別受益額(贈与又は遺贈の価額-財産評価の基準時は相続開始時です。)を差し引くことになります。

 

これには例外があり、被相続人が持戻しの免除の意思表示をしたときは、特別受益は相続財産に算入されません(民法903条3項)。
その意思表示は、遺贈の場合には遺言によりますが、贈与は明示でも黙示でも同時でも事後でもいいとされています。

勿論、持戻し免除の意思表示は遺留分を侵害することができません。相続人に対する贈与は相続開始前10年間にしたものに限りその価額を、遺留分を算定するための財産の価額に算入します(改正民法1044条3項)。

 

上記改正民法903条第4項は、婚姻期間が20年以上の夫婦の間における居住用不動産の遺贈・贈与に関する持戻し免除の意思表示の推定規定です。
死因贈与についても遺贈と同様に考えられるとされています。

 

推定されますので、それを覆す被相続人の意思表示を立証しない限り持戻し免除の意思表示があったと扱われます。推定といっても強い効力を有します。

 

【預貯金債権の仮払い制度】

改正民法第909条の2のお話です。

 

従前、預貯金債権は、遺産分割の対象とならず、各相続人法定相続分に応じて払出しを要求することが可能でした。
対応しない金融機関に対しては訴訟をすれば勝訴できました。

 

平成28年の最高裁決定で、その扱いが変わりました。預貯金債権については、遺産分割までの間は共同相続人全員の準共有状態になるから権利は全員が共同で行使しなければならない、遺産分割の対象となる、としたのです。

これで、預貯金債権も遺産分割調停・審判に乗せることができ(それまでは他の相続人の同意が必要だった)、特別受益の持ち戻しに関連する不公平が解消できます。

一方で、相続債務を弁済する、葬儀代を捻出する等のために相続預金を遣えなくなる不都合が生じます。遺産分割が完了しないと理屈上金融機関は払出しに応じません。

 

まず、改正家事事件手続法200条3項は、遺産の仮分割の要件を緩和し、一定の要件の下で裁判所が認める預貯金債権の仮払いを認めました。
詳細は省略します。でも、やはり手続の手間暇が負担ですね。

 

そこで、改正民法が、裁判所を経ることなく、預貯金の払戻しができる制度を設けています。
相続開始時の預貯金債権額の3分の1×当該相続人法定相続分が払い戻しの上限です。さらに法務省令により金融機関ごとの限度額が設定されるようです。

 

【遺産の一部の分割】

遺産の一部を分割できるかについては、現行法では明文規定がありませんでした。解釈上は、当然認められると考えられていましたが。

改正民法907条1項は、一部分割が可能であることを明示しました。

 

それに応じて、一部遺産分割の調停、審判も原則として認められるようになりました(改正民法907条2項)。特別受益や寄与分の調整の場面等で他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合には許されません。

 

【相続後遺産分割前に遺産に属する財産を処分した場合】

改正民法906条の2です。遺産分割前に遺産がされた場合であっても、共同相続人全員の同意により、遺産分の分割時に遺産として存在するとみなすことができる(1項)。
ただし、共同相続人により遺産が処分されたときは処分をした相続人の合意は必要がない(2項)。

 

1項は、現行法の解釈実務のとおりです。2項が新しいものですね。

これまでは、遺産分割前に相続人が預金を勝手に引き出した等の場合には、遺産分割において当該相続人の同意がない限り、不法行為による損害賠償請求あるいは不当利得返還請求をするほかありませんでした。
改正民法によれば、遺産分割に乗せるのか、損害賠償あるいは不当利得返還の請求をするのかどちらか選べるということになりますね(遺産分割に乗せるには被侵害相続人全員の同意は必要ですが)。

 

なお、相続前の預貯金の無断引き出しについては、従前どおりになります。全相続人の同意により遺産分割対象財産に含めるか、損害賠償請求あるいは不当利得返還請求を行うことになります。この場合は特別受益(生前に被相続人から贈与された)との反論もあり得ますが。

 

改正相続法のお話はこれでいったん終わりです。

大きな改正で、実務の集積が必要です。

 

遺言、相続、遺留分減殺、相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

 

http://www.nakata-law.com/

 

http://www.nakata-law.com/smart/

相続法改正ポイント5 [相続問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

2019年71日から順次施行される改正相続法(民法)のお話をさせていただいております。

 

【特別の寄与制度】

相続人の寄与分制度は現行法でもあります。相続人以外の制度ができました。

寄与分は、被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をした「相続人」のための制度ですね(民法904条の2)。

なお、裁判所は寄与分をなかなか認めません。親族の扶養義務の範囲内を超える行為と認められなければなりません。事実上、そのハードルは高いです。

 

改正民法1050条では、相続人ではない「被相続人の親族」に「特別の寄与」制度を認めました。

相続人と養子縁組をしていない子の配偶者などが該当しますね。

これまでは特別な寄与をした相続人である子の夫(あるいは妻)を妻(あるいは夫)の履行補助者と考えて、相続人の寄与と考えるというような処理がされていました。
改正により、必ずしもそのような理論構成が必要とはいえなくなるわけです。

新しい制度なのでどこまで有効なのかは未知数です。

 

相続人の寄与分制度と特別の寄与制度は建付けが異なります。

特別寄与者は、特別寄与料という金銭支払いを各相続人に各相続分に応じて請求することになります。

特別寄与料は、相続人と合意できない場合、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することになります(審判ですね)。

権利行使期間も定められています。相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内、または相続開始の時から1年以内なのでご注意を。

 

なお、特別寄与料の額は、寄与分制度と同様、遺産から遺贈の価額を控除した残額を超えることができません。そうなると遺言ですべて相続を指定している場合は特別寄与料と請求する余地がありませんね。そういう制度だと割り切るしかないところです。

 

【配偶者居住権】

新しい制度ですね(改正民法1028条~1036条)。

相続人の配偶者は、被相続人所有の自宅不動産に住み続けたいのが通常です。

遺産分割協議にて配偶者が自宅不動産を相続する、あるいは遺言により配偶者が承継するのであれば問題がありません(その場合は遺留分の問題もあります)。

仮に、他の相続人と配偶者の共有の状態になると、場合によっては不動産を処分しないといけなくなる、賃料相当金の支払義務の問題が出てくる、共有物分割請求がなされる等々、配偶者が法的に不安定な立場におかれます。

そこで、改正民法は、配偶者居住権を新たに定め、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身または一定期間、無償でその配偶者に居住等を認めることにしました。

 

配偶者居住権設定の方法は、

① 遺産分割協議による設定

② 遺言による配偶者居住権の遺贈(死因贈与でもかまわないと解釈されています。)

③ 家庭裁判所の審判

の3つです。

 

配偶者居住権の期間は、原則配偶者の終身の間です。

ただし、遺産分割協議、遺言あるいは家庭裁判所の審判で期間を定めたならばその期間です(改正民法1030条)。

 

改正民法は、配偶者居住権を財産権(相続財産の一部)とみます(改正民法1028条)。
配偶者はその配偶者居住権の財産的価値に相当する金額を相続したものとされます。評価方法は難しいですね。

(年額建物賃料相当額‐配偶者負担の必要費)×年金現価率
あるいは
建物敷地の現在価値‐負担付き所有権の価値、
が提示されていますが、実務の集積を待つほかないでしょう。

 

なお、一定の配偶者居住権の遺贈については、民法903条4項が準用され、持戻しの免除の意思表示があったことが推定されます(1028条3項)。この点は次回お話します。

 

配偶者居住権は登記が対抗要件です。建物所有者には登記手続協力義務があります(改正民法1031条)。

 

配偶者が一部に居住していた場合でも全部の使用収益が認められます。

ただし、権利を譲渡することはできませんし、居住建物の改築・増築・第三者による使用収益は所有者の承諾が必要です(改正民法1032条)。

 

改正民法は、配偶者に第一次的な修繕権を付与し、通常の必要費(固定資産税、通常の修繕費等)を配偶者の負担としています(改正民法1033条、1034条)。
ほかにも修繕と費用に関して細かい規定がありますが割愛しますね。

 

なお、被相続人が配偶者以外の者と共有している建物については配偶者居住権が成立しません。成立を認めてしますと他の共有者の利益を一方的に奪うことになるからです。
ご注意ください。

 

【配偶者短期居住権】

これも新しい制度です(改正民法1037条~1041条)。

遺産分割までの共有状態(遺産共有)の間の配偶者の居住権を保護するものです。

 

判例では、共同相続人の1人が被相続人の許諾を得て同居していた場合には、遺産分割時を終期とした使用貸借契約が被相続人とその相続人との間で成立していたと推認されるとされていました。改正法はそれについて制度化したものですね。

 

配偶者短期居住権は、配偶者に対し、一定期間において居住建物の無償使用権を認める制度です。

存続期間は、配偶者が居住建物の遺産分割協議手続に関与できる通常の場合は、遺産分割時または相続開始から6カ月後のいずれか遅い日です。

配偶者が相続放棄をした、居住建物が遺言で他の相続人に相続させられた場合等、配偶者が遺産分割手続に関与できない場合は、居住建物取得者からの配偶者短期居住権の消滅の申入れがなされてから6カ月後までです。

 

無償使用権なので他の相続人等から賃料相当額の請求ができないことになります。

 

修繕・費用等については、配偶者居住権の規定が準用されています。

 

【内縁配偶者】

内縁配偶者の居住権については改正法で手当てがなされませんでした。

 

これまでどおり、具体的事情によっては、相続人からの明渡し請求を権利濫用で排斥する、あるいは被相続人と内縁配偶者の使用貸借関係を認めるといった保護が与えられます。
不安定な状況におかれたままですね。

きちんと使用貸借契約書を作成しておく、あるいは遺言で対処をするべき問題であることは変わりません。

 

遺言、相続、遺留分減殺、相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

 

http://www.nakata-law.com/

 

http://www.nakata-law.com/smart/


相続法改正ポイント4 [相続問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

2019年71日から順次施行される改正相続法(民法)のお話をさせていただいております。

 

遺言関係のお話をかいつまんでします。

 

【自筆証書遺言の方式緩和】

改正民法968条ですね。こちらはすで施行されています。

 

現行民法では、自筆証書遺言は、前文、日付、氏名を自署しなければいけません。

遺言者の真意を確かめる、偽造・変造を防ぐという趣旨です。

財産がたくさんある場合には面倒ですよね。書き間違いも生じます。

 

改正民法では、相続財産(遺贈も含む)を特定する財産目録については、自署が必要ないとされました。次の条文です。

 

「改正民法第968条

2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自署することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自署によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。」

 

パソコンで作ってもいいわけです。

登記事項証明書や預貯金通帳の写しを添付する方法でもいいと説明されています。

ただし、全てのページに署名・押印は要求されています。

なお、加除変更がある場合に遺言者の指示・署名・捺印が必要なのは本文と同じです。

 

【自筆証書遺言の保管制度】

民法改正自体の話ではないのですが、自筆証書遺言保管制度が創設されました。

法務局における遺言者の保管等に関する法律です。

自筆証書遺言は、公正証書遺言と異なって、家庭裁判所での検認手続が必要ですが、同制度を利用した自筆証書遺言は検認手続が不要となります。

検認手続により遺言の有効性が判断されるわけではないのですが(遺言の存在を確認するといった色彩の手続です)、検認手続を経ないと相続手続が進められません。検認手続が必要ないとすると楽なのです。

保管者は、法律の名称からわかるとおり、法務局です。事務を取り扱うのは遺言書保管官という舌を噛みそうな名称の方です。遺言者が自ら、住所地もしくは本籍地、または所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所(法務局ですね)に出頭して、申請をしないといけません。勿論、一度保管してもらった遺言の保管を撤回してもらうこともできます。

新しい制度なので、使ってみないと使い勝手の良さはわからないですね。

 

なお、公正証書遺言と自筆証書遺言は検認手続が必要かどうかだけの違いではありません。

保管制度を利用した自筆証書遺言よりも、やはり公正証書遺言の方が確実です。

形式不備が基本的にはありませんし、遺言の有効性に関する判断においても公証人(法律の専門家出身がほとんどです)の意思確認を経由しているので公正証書遺言の方が確実です。

 

【遺言執行者】

改正民法1007条第2項で、遺言執行者が任務開始時の相続人に対する遺言内容の通知義務が定められました。

 

不明確あるいは争われることもあった、遺言執行者の法的地位を明確にした規定もできました。

改正民法1012条では、遺言執行者は遺言の内容を実現するため相続財産の管理その他の遺言に必要な一切の行為をする権利義務を有する、改正民法1015条は、遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は相続人に対して直接にその効力を生ずる、としています。

 

その他にも権限等に関する改正がありましたが、ややこしい話なので省略いたします。

遺言の内容と遺言執行者の権限はできるだけ明確に定めておくといいでしょう。

 

改正民法1016条では、遺言執行者の復任権が認められました。相続財産の内容や遺言の内容によっては親族の遺言執行者がご自分で手続を行うことが難しい場合があります。遺言執行者が弁護士等の専門家や法律や手続に詳しい親族の依頼できるということですね。

 

改正民法1013条です。

遺言施行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることができません。

遺言で特定の相続人に対して承継させるように定められている不動産について他の相続人が相続登記をして第三者に処分したような場合ですね。

他の相続人の行為は無効です。それは現行法の解釈と変わりません。

しかし、善意の第三者に対して対抗することができないと定めました。上の例では先に登記を経た方が優先します。

また、相続債権者、相続人の債権者は、遺言執行者の有無にかかわらず、相続財産に対して権利を行使できることも定められました。

以前に説明したとおり、相続による権利移動はすべて登記等の対抗要件が必要とされました。遺言執行者がいる場合もそれは変わらないということですね。

 

遺言、相続、遺留分減殺、相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

 

http://www.nakata-law.com/

 

http://www.nakata-law.com/smart/


相続法制の改正ポイント3 [相続問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

2019年71日から順次施行される改正相続法(民法)のお話をさせていただいております。

 

遺留分に関する改正法のお話の続きです。

 

【金銭請求に一本化されました】

改正民法1046条1項のお話です。

改正民法1046条1項は、遺留分が侵害された場合、遺留分侵害額に相当する金銭支払のみの請求ができることとしました。
これは大きな改正ですね。

 

改正により、遺留分減殺請求権はなくなり、遺留分侵害額の(金銭)請求権に代わると説明もされています。
慣れ親しんだ言葉がなくなるのは寂しいです。

 

現行法の解釈では、遺留分減殺請求(遺留分減殺通知書を出します)により、当然に物権的効果が生じます(物権的効果とは例えば不動産の所有権から遺留分侵害分の持ち分が移転するというイメージです)。
例えば、相続不動産等については、受遺者・受贈者と遺留分権利行使者の共有状態が生じます。そこで、遺留分減殺請求訴訟では、まず原告が相続不動産の遺留分侵害分の持ち分移転請求をしなければならず(具体的には持分移転登記手続訴訟)、被告が不動産の持ち分を渡す代わりに金銭賠償を選択して(価額賠償権の行使をして)初めて、原告が金銭請求できる建前となっていました。
勿論、実際の解決は金銭解決による和解で終了することが多かったのですが。

折り合いが付かなければ、不動産等共有状態が作出する可能性があります。
改めて共有物分割請求による換価処分を求めなければ金銭解決あるいは終局的な解決が図れない事態も想定できました。

 

改正民法では、遺留分減殺権者が請求できるのは金銭請求のみとなっております。

現物で渡すのではなく、金銭で渡すということになります。現実に即した改正でしょう。
徒に共有関係を作出することは問題を大きくしかねません。

したがって、「遺留分減殺」を登記原因とする登記もなくなるとの説明もありました。

 

同族中小企業のオーナーの相続にも影響がありますね。

事業承継対策として遺言により後継者に株式を全部相続させても、やり方が悪ければ他の相続人遺留分を侵害します(遺留分侵害がないように遺産の構成及び遺言内容を整理するのが無難です)。他の相続人から遺留分減殺請求があると、理屈上、自社株式について望ましくない共有状態を作出することになってしまいます。

これに対して、改正民法では、遺留分減殺請求権者が請求できるのは金銭請求のみですから、不必要な共有状態を作出することがなくなります。

事業用資産についても同様のことが言えますね。

相続法改正には事業承継対策の効果もあるということでしょう。

 

遺留分侵害額の請求権は形成権であることは現行法の遺留分減殺請求権と変わりません。
請求権を行使して初めて金銭請求権が発生します。
期間制限があるため、内容証明郵便にて通知を行うことが通常です。

 

なお、金銭請求を受けても直ちに現金化できる相続財産がないと困りますね。

そこで、改正民法では、裁判所は、請求があれば金銭請求の全部または一部の支払について相当の期限を許与することができると手当をしています。

 

【遺留侵害額の算定方法】

改正民法1046条2項のお話です。

遺留分侵害額は次のように計算されます。

遺留分

- 遺留分権利者が受けた遺贈または特別受益

- 遺留分権利者が取得すべき遺産の価額

+ 遺留分権利者が承継する相続債務の額

です。


計算の枠組みは現行民法の解釈と変わりません。

 

遺留分額は、改正民法1042条の規定により、遺留分額を算定するための財産の価額×遺留分割合×遺留分権利者の法定相続分ですね。

 

寄与分は、遺留分制度においては考慮されません。現行法の解釈どおりです。そのような制度設計なので仕方がありません。

 

遺留分権利者が承継する相続債務の額は、法定相続分のことですね。
遺言に債務の承継方法の指定があっても、第三者である債権者には対抗できませんからそうなります。

ただし、改正民法1047条3項にて、遺留分侵害額の金銭請求を受けた者が相続債務の弁済等債務消滅行為をした場合には、消滅した債務の限度において、負担債務の消滅を請求できると手当がなされています。

それをすれば、被請求者の遺留分侵害額の請求権者に対する求償権(負担部分を超える債務を弁済すれば他の相続人に求償することができます。法的性質は不当利得返還請求権でしょうか。)は消滅します。遺留分侵害の金銭請求と被請求者の請求権者に対する求償権の相殺的処理を定めたものですね。

 

遺留分侵害の金銭請求に対する負担の順序】

改正民法1047条関係です。

遺贈と贈与があるときは受遺者が先に負担します。

遺贈あるいは贈与が複数ある場合には、同時になされたケースでは目的物の価額の割合に応じて負担します(遺言者が遺言に指定している場合はそれに従います)。
受贈者が複数あり同時になされていないケースでは、後の贈与を受けた者から順次負担します。

 

なお、死因贈与の扱いについては、明文化されず、解釈に委ねられます。
最高裁判例がなく争いがあるから明文化されなかったという説明を目にしました。

 

遺留分制度の改正に関するお話はひとまず終わりです。

ややこしい制度だったのですが、改正によりやや単純化されました。

 

遺言、相続、遺留分減殺、相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

 

http://www.nakata-law.com/

 

http://www.nakata-law.com/smart/


相続法制の改正ポイント2 [相続問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。

 

2019年71日から順次施行される改正相続法(民法)のお話をさせていただいております。

 

遺留分制度の話です。2回に分けてお話します。

 

簡単に申し上げますと、遺留分とは、各相続人に最低限の遺産を承継する権利を認めたものです。生前の財産の処分は勿論、被相続人が遺言で自由に財産を処分することは自由です。しかし、相続人には一定の相続分を保障し(これが遺留分です)、意思表示をすれば遺留分を侵害する遺言や贈与について侵害する部分の効力を失わせて財産を取得させるというわけです。

 

単純なようで、実務上、計算や解決には苦労をする問題ではあります。

 

改正民法1042条から1049条のお話です。

 

【改正民法1042条】

遺留分割合は現在の解釈と変わりません。解釈の明確化のための条文です。

遺留分は、「遺留分を算定するための財産の価額」×遺留分割合です。

 

遺留分割合】

遺留分割合は、直系尊属(父母あるいは祖父母等)のみが相続人である場合は3分の1、それ以外の場合は2分の1です。これが全体の遺留分になります。

相続人が数人いる場合には、各相続人遺留分は上記割合に自己の法定相続分の割合を乗じたものになります。健在である父母のみが相続人である場合、父母は各3分の1(全体の遺留分)×2分の1(各父母の相続分)の6分の1(各遺留分)ですね。配偶者と子2人が相続人である場合、配偶者は2分の1×2分の1の4分の1、子は各2分の1×4分の1の各8分の1ですね。

 

なお、兄弟姉妹は遺留分を有さないことは変更がありません。

そのため、お子さんがいないご夫婦が一方配偶者に自宅不動産等の財産を相続させる旨の遺言を書いておけば、一方配偶者が被相続人配偶者の兄弟姉妹との相続争いに巻き込まれることはありません。

 

遺留分算定のための財産の価格】

遺留分を算定するための財産の価額」は次のとおりの計算式で算出します。

 

「被相続人が相続開始の時において有していた財産の価額」 

+ 「贈与した財産の価額」

- 「(被相続人の)債務の全額」

ここも現行法とは変わりません(改正民法1043条1項)

 

【贈与した財産の価額】

遺留分を算定するための財産の価額」に算入される「贈与した財産の価額」について定めるのが、改正民法1044条です。

 

相続人以外の者に対する贈与については、相続開始前の1年間にしたものに限り、その価額が算入されます。ここは現行法から変更がありません。

相続人に対する贈与については、原則として、相続開始前10年間にしたものに限り、その価額(婚姻もしくは養子縁組または生計の資本として受けた贈与の額に限り-要するに「特別受益」ですね。)が算入されます。ここが変わりました。

 

いずれも、遺留分権者に損害を加えることを知って行われた贈与については贈与の時期の制限はありません。ただ、そのような事情が認められるケースは稀です。

 

相続人に対する贈与については、相続開始前10年以内にした贈与であっても特別受益に該当しない限り算入されません。扶養的な贈与などですね。

 

現行法の解釈として、相続人に対する特別受益は、判例で、特段の事情がない限り、期間の制限なく遺留分減殺の対象となっていました。それが相続開始前10年間のものに限定されました。取引の安全を考慮したということのようです。

 

なお、少し難しい話ですが、持ち戻し免除の意思表示は遺留分の規定に違反できず遺留分の計算においては効力を有しません。この点は現行法と変わりません。

 

さらに、「遺留分を算定するための財産の価額」の参入は相続開始前10年間の特別受益に限定されていますが、「遺留分侵害額」の算出においては特別受益の時期は限定されていないと説明されています。ややこしいですね、実際の計算方法はよくよく確認しないといけません。

 

改正民法1045条は、負担付き贈与の場合、贈与目的の価額から負担の価額を控除した残額を「遺留分を算定するための財産の価額」に参入することとしています。

また、不相当な対価をもってした有償行為(典型的な事例は、不動産を非常に安く売買した場合です。)については、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付き贈与とみなすと規定しました。

1000万円の不動産を100万円で売買した場合、遺留分侵害について双方悪意である場合ですが、負担付き贈与として扱い、贈与の目的1000万円から負担の価額100万円を控除した900万円を「遺留分を算定するための財産の価額」に算入するということです。

いずれも、解釈に争いがあった点を明文化した規定です。

 

遺留分に関してほかにも改正があります。次回に続きます。

 

遺言、相続、遺留分減殺、相続放棄等、相続問題のご相談はなかた法律事務所へ。

 

広島の弁護士 仲田 誠一

なかた法律事務所

広島市中区上八丁堀5-27-602

 

http://www.nakata-law.com/

 

http://www.nakata-law.com/smart/


このページのトップへ