• 刑事事件
  • 所属弁護士
  • 用語集
  • よくある質問
  • コラム
  • リンク集

HOME > コラム > 借金問題 > 個人再生における住宅資金特別条項 [借金問題]

コラム

< 臨時休業のお知らせ【令和元年9月1日】  |  一覧へ戻る  |  臨時休業のお知らせ(令和元年9月16日祝) >

個人再生における住宅資金特別条項 [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
債務整理のうち法的整理をしないといけない、しかし住宅ローンは支払い続けて自宅を維持したいという方は、基本的に個人再生を選択して住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用することになります。
 
住宅ローンを支払いながら他の債務を圧縮して原則3年、最長5年間で弁済していくものです。
個人再生手続自体は、小規模個人再生でも給与所得者等再生でもかまいません。
 
住宅資金特別条項は使える要件等いろいろややこしい話があります。
そこで、今回は、住宅資金特別条項についてお話いたします。
 
【相談時】
住宅資金特別条項の利用には要件があります。
ご相談される際には、不動産登記簿謄本と金銭消費貸借契約証書等借入時書類をお持ちください。借入形態と担保の状況を確認しないといけないからです。
金銭消費貸借契約証書は提出書類にもなっています。なくされた場合には、申立て前に債権者に写しの送付をお願いしています。
 
【住宅であること】
担保がついているのが「住宅」でなければなりません。
「住宅」と認められるには、再生債務者が所有し、自己の居住の用に供する建物であって、建物の床面積の2分の1以上に相当する部分が、専ら居住用に供されていることが必要です。
 
「所有」していればいいので、共有物件でもかまいません。
ただし、共有物件の場合、例えば夫婦のペアローンである場合、夫婦双方が連帯債務者の場合、夫婦の一方が連帯保証人の場合、ケースバイケースに要件に該当するか吟味しないといけません。夫婦の同時申立てが必要となる場合も多いです。
なお、共有ではないが夫婦の一方が連帯保証人あるいは連帯債務者のケースもありますね。
ここら辺の問題自体が非常にややこしいので立ち入りませんが、過去のコラムで説明をさせていただいておりますのでご参照ください。
 
単身赴任中など現在居住の用に供していない場合でも、一時的であり将来的に居住の用に供する場合は、「住宅」と認めてくれます。
客観的に説明をしなければなりません。
 
二世帯住宅の場合は、再生債務者の居住部分が床面積の2分の1以上でなければなりません。
 
【住宅資金貸付債権であること】
担保が付いている債権が、住宅資金貸付債権でなければなりません。
住宅資金貸付債権とは、住宅の建設もしくは購入に必要な資金、住宅の改良に必要な資金で分割払いの定めのある債権を意味します。
 
リフォームローンも含まれるのですね。
借り換えローンでもかまいません。
 
諸費用ローンの担保が付いている場合には原則住宅資金特別条項が利用できません。
しかし、その使途が住宅の建設もしくは購入に密接に関わるものである、かつ総額が住宅資金貸付に比して僅少であるという場合には、運用上利用が認められています。
通常諸費用ローンは当てはまりますね。使途などを契約書類や領収書等で説明することになります。また、通常諸費用ローンは住宅ローンの1割程度ですからね。
 
借入が住宅資金貸付債権だけの場合でも利用が可能です。
夫婦が同時申立てしないといけないときなどに必要になるケースがあります。
 
住宅資金貸付債権(住宅ローン)の残債務が物件の価値を上回っていること(いわゆるオーバーローンの状態であること)は要件ではありません。
ただし、物件の価値に余剰がある場合には、清算価値に計上されて、最低弁済額を画することになります。
余剰価値が大きい場合には事実上弁済可能な再生計画案が作成できません。
それとの関係で、通常(固定資産評価額から明らかにオーバーローンと認められる場合のほかは)、査定書の提出を求められます。
 
【他の担保が付いていないこと】
住宅資金貸付債権を担保する抵当権以外に担保権が設定されている場合には原則として住宅資金特別条項が利用できません。
その担保権が実行されると意味がなくなるからです。
一部例外を認める余地もあるのですが。
 
同じ理由で、滞納処分による差押えがされている場合も原則利用できません。
完済する、課税庁と協議が成立している場合には例外が認められ得ます。
 
さらに、マンションの管理費、修繕積立金の滞納のある場合も同じです。
滞納を解消しておく必要があります。
 
【類型】
① 期限の利益回復型・正常返済型
② リスケジュール型
③ 元本猶予期間併用型
④ 合意型
の4類型があります。
圧倒的に正常返済型が多いですね。住宅を維持しようとする方なので、弁済に遅れがないことが通常です。
その他にもいろいろなケースで利用できる可能性があるということです。弁護士とよくご相談ください。
 
代位弁済がなされた後でも理屈上利用できます(「巻戻し」)。
ただし、競売されている場合には競落前でなければなりません。
 
勿論、債権者との事前協議はかかせません。
 
個人再生委員】
住宅資金特別条項を利用するケースでは広島でも個人再生委員が選任される可能性が相対的に大きいでしょうか。
要件該当性を吟味しないといけないですからね。
特に、例外的な扱いをする場合や物件の価値の評価額が問題となる場合は、個人再生委員が選任されているでしょうか。
個人再生委員が選任された場合には、予納金(20万円程度から)を追加する必要があります。
 
債務整理(任意整理個人再生自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
http://www.nakata-law.com/
 
http://www.nakata-law.com/smart/

カテゴリ:

< 臨時休業のお知らせ【令和元年9月1日】  |  一覧へ戻る  |  臨時休業のお知らせ(令和元年9月16日祝) >

同じカテゴリの記事

交通事故被害者の自己破産 [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
債務整理のうち自己破産において交通事故の被害者の損害賠償請求権がどのような扱いになるのかをお話したいと思います。
 
自己破産申立てを考えている方が交通事故に遭ってまだ治療中(示談ができていない状態)である、あるいは自己破産準備中に交通事故に遭ってしまうという例もあります。
 
その場合には、交通事故の示談と自己破産手続のタイミングを考えないといけなくなります。
 
理屈上、交通事故の損害賠償請求権が自己破産においてどのように扱われるのかを説明します。
破産財団に属するか(その場合には自由財産拡張の対象と認めてもらえない限りは手元に残りません)、破産財団には属さないか(その場合は破産手続の影響を受けずに受け取ることができます。)の問題です。
 
交通事故の損害賠償請求権は、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料という一身専属性の認められる慰謝料とそれ以外の財産的損害を填補する損害賠償請求権とに分けられます。
 
財産的損害に関する損害賠償請求権は、通常の金銭債権として破産財団に属するとされています。
休業補償や金額が大きくなる逸失利益についても、金銭債権として破産財団に属するとされています(ただし、自由財産の拡張を柔軟に考えるべきともいわれます)。
なお、治療費、介護費用、入院雑費については、通常、自由財産あるいは自由財産拡張対象財産になるとされています。
 
慰謝料については、金額が確定していなければ、行使上の一身専属性(請求権を行使するかしないかは本人の自由という意味です。)が認められ、破産財団に属しません。
しかし、合意または判決により慰謝料金額が確定した場合には(なお、相続が発生した場合も同じ)、既に行使上の一身専属性を失い、金銭請求権として破産財団に属すると考えられています(ただし、自由財産の拡張や破産財団からの放棄などを柔軟に考えるべきだともされています)。
 
なお、破産開始決定前に既に入金された損害賠償金は、破産開始決定時に存在する評価額及び存在する形(現金、預金などの形)で財産として扱われます。
 
以上が、自己破産手続における交通事故による損害賠償請求権のi扱いについての理屈のお話です。
交通事故の損害賠償請求権も、無条件に、あるいは一定の条件の下で、財産として扱われるのですね。
 
このような理屈を踏まえてどう動くべきか考えないといけません。
 
入通院が長引いて示談の見込みが破産申立てよりも大分後になる見込みであるケースでは、早々に自己破産を申し立てるでしょう。
自己破産開始決定時には損害賠償請求権が確定していませんからあまり問題にはならないと思います。治療費、交通費等、厳密に考えれば財産的請求権が既に発生・確定しているような気もしますが、そこまで突っ込まれることはないでしょう。
 
もうそろそろ示談をする、あるいは既に示談をしていて入金待ちというタイミングであれば、自己破産申立ては通常のタイミングで行えばいいですね。
後は、入金になった損害賠償金の使い途を考えることになります。
入金された損害賠償金については、有用の資(どうしても必要な生活費、弁護士費用、申立て費用等)に費消してよいということになります。
残金の金額により、管財事件となる可能性があり、また管財事件になった場合には自由財産拡張対象範囲を超えるものは財産に組み入れる必要があります。
 
これらと異なり、示談すべきタイミングと自己破産申立てのタイミングの先後が微妙な場合には、段取りが悩ましいです。
 
示談を遅らせるということも考えられます。
示談を遅らせてその間に自己破産手続を進めてしまおうということですね。
しかし、財産上の損害賠償請求権の問題(一身専属性がそもそも認められていない)が問題となります。
治療が終わっている段階であると慰謝料も突っ込まれる可能性もあるかもしれません。
 
自己破産申立てを遅らせることも考えられます。
申立て前に示談を終わらして入金を待ち、入金後に賠償金を有用の資に費消した上で申立てをすることになります。
しかし、自己破産申立てを過度に先送りしてしまうと、債権者からの訴訟提起、判決後の給与等の強制執行などのリスクもあります。
 
結局は、交通事故での争点の有無と程度、損害賠償金の見込額や内訳、あるいは賠償金を有用の資として費消する必要性など、諸般の事情に応じてケースバイケースに考えていかないといけないことになります。
 
高額の損害賠償金が見込まれる場合には、そもそも自己破産ができなくなる可能性もあります。
その場合には、とりあえず任意整理の方針とすることが多いと思います。示談等までの時間稼ぎですね。
 
債務整理(任意整理個人再生自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
http://www.nakata-law.com/
 
http://www.nakata-law.com/smart/


給与所得者等再生のお話 [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
債務整理のうち、個人再生、それも給与所得者等再生のお話をします。
 
債務整理の手続選択として、自己破産ではなく個人再生を選択したとして、個人再生のうち給与所得者等再生を利用するケースはどのような場合でしょうか。
 
どちらでも利用できるケースであれば(給与所得者等再生の要件を充たすのであれば)、小規模個人再生給与所得者等再生はどちらを選択してもいいです。
 
選択にあたって、特に考慮する両者の大きな違いが3つあります。
 
1つ目の大きな違いは、再生計画認可に債権者の消極的同意が必要かどうかです。
 
小規模個人再生では債権者(再生債権者といいます。)による再生計画案の決議が必要です。
再生債権者の頭数の半数以上の不同意、債権額(正確には議決権の額)の過半数となる債権者の不同意があると、再生計画案が否決されたものとして扱われます。
再生債権者が2社以内、再生債権者のうち過半数の債権を占める再生債権者が存在するような場合には、否決のリスクが高まります。
中には、過半数の債権を保有していたら再生計画案に同意をしないと、何を目的としているのかよくわからないような方針をとっていると説明をしてきた金融機関もいます。
仮に再生計画案が否決されると再生計画案が認可されないため、自己破産あるいは給与所得者等再生を申し立てることになります。
認可されなかったために自己破産を申立てし直したという例は経験しています。
 
これに対し、給与所得者等再生では、再生債権者による決議は必要ありません。
裁判所がOKすればいいだけです。
 
そうなると、再生債権者が2社以内、あるいは再生債権者のうち過半数の債権を占める再生債権者が存在するような場合には、給与所得者等再生の選択が視野に入りますね。
再生計画に不同意をされて申立てをし直さないといけないリスクを考えて、最初から給与所得者等再生を申立てるということですね。
 
2つ目の大きな違いは、給与所得者等再生の方が小規模個人再生よりも要件が厳しいということです。
給与所得者朗再生では、小規模個人再生よりも要件が加重されていることは勿論、裁判所の見方自体も厳しくなります。
給与所得者等再生は、小規模個人再生と違って、債権者の消極的同意を必要としないため、要件が厳しくなり、裁判所も厳しく見るのです。
 
これと付随する問題として、給与所得者等再生は、その要件該当性の判断のため、個人再生委員が選任される可能性が相対的に高くなるということがあります。
当職も、給与所得者等再生の要件該当性の判断のため、個人再生委員を拝命したことがあります。
 
給与所得者等再生に加重される要件として、例えば、給与所得者等再生計画認可確定、破産免責許可確定から7年を超えていることという要件があります。
破産後間もない場合は給与所得者等再生が利用できないわけです。
 
また、給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがあり、収入額の変動の幅が小さいと見込まれることという要件があります。
過去2年間で給与収入の額に5分の1以上の変動があれば、収入額の変動の幅が大きいとみられてしまい、簡単には手続が進みません。
 
これは小規模個人再生と同様の要件ですが、厳しく見られるものとして、債務者が将来において継続的・反復的に収入を得る見込みがあることという要件もあります。
小規模個人再生であれば、契約社員でもアルバイトでも裁判所からあまりとやかく言われません。
これに対し、給与所得者等再生では、職業の安定性がよく吟味されます。
 
3つ目の大きな違いは、最低弁済額の違いです。
 
小規模個人再生では、
・清算価値(財産として把握される価値です。自己破産自由財産拡張対象相当額は控除できます。)
・再生債権額の5分の1
・100万円
のいずれか大きい金額が最低弁済額となります。
 
これに対し、給与所得者等再生では、可処分所得の2年分の額以上に返済額を設定する必要性が加わります。
可処分所得の計算は、手取収入額-費用額で算出します。
手取収入額の算出の際に収入から控除できるのは、所得税額、住民税額、社会保険料額に限られます。
かつ、費用額は、実費ではなく、再生債務者の収入と年齢、あるいは被扶養者の数と年齢から、政令等により機械的に定まっており、通常は実費よりも低くなります。
その結果、収入が一定額以上ある、あるいは被扶養者が少ない場合には、可処分所得が大きくなり、小規模個人再生よりも弁済額が大きくなってしまうことが多いです。
 
そのため、実務感覚では、小規模個人再生を優先して考えることが多く、給与所得者等再生の申立件数は圧倒的に少ないと思います。
勿論、収入が低い、あるいは被扶養者が多いなどのケースでは、給与所得者等再生を利用しても弁済額は変わりません。
 
小規模個人再生給与所得者等再生の大きな3つの違いをお話ししました。
結局は、ケースバイケースでどちらかを選ぶということになります。

なお、小規模個人再生における再生債権者の不同意が増えてきたようにも思えます(増えたといってもあまり反対をされることはないのは確かですが)。
今後、債権者の消極的同意が必要のない給与所得者等再生の活用の場面も増えてくるかもしれません。
                   
債務整理(任意整理個人再生自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
http://www.nakata-law.com/
 
http://www.nakata-law.com/smart/


遺産分割と否認 [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
法的債務整理(自己破産個人再生)の際、遺産分割未了の財産がある場合には、基本的に法定相続分に応じた財産額が破産者の財産として把握されます。
通常は共同相続人に相続分の買取りが打診されるでしょう。
 
個人再生の場合は、清算価値の問題となります。清算価値が大きくなり、それが最低弁済額を押し上げ、個人再生ができない、あるいはやっても意味がないということにもなりかねません。
 
なお、未分割遺産が本当に田舎の物件で換価が困難で価値が見いだせないような場合には、未分割遺産を無視してくれます。
自己破産手続との関係では、同時廃止も可能です。
 
今回は、自己破産前に遺産分割協議を行った場合のことをお話します。
 
勿論、ずいぶん前に、破産者が経済的危機状態に陥る前の遺産分割協議は問題視されません。
もっとも、その場合も相続の状況は裁判所から報告を求められます。
 
遺産分割協議が破産者の経済的危機状態以後になされた場合が問題視されるのですね。
破産管財人による否認の問題です。
破産者に不利な遺産分割協議は詐害行為と見られかねないということです。
なお、個人再生においても否認相当行為については清算価値に計上することになっております。
 
趨勢は、自己破産手続における遺産分割協議に対する介入は謙抑的に考えられていると思います。
明確にそのことを示した東京高裁平成27年11月9日判決があります。
同判決の判断をかいつまんで要約すると、
・ 民法906条によれば遺産の分割は一切の事情を考慮してなされる。
・ 『遺産分割自由の原則』があり、遺産分割協議による分割は、基本的にはこれを尊重すべきある。
・ 相続人である破産者が遺産分割によって法定相続分ないし具体的相続分を下回る遺産しか取得しなかったとしても、民法906条に則り一切の事情を考慮した結果であることもあり得るから、その詐害性を直ちに認めることはできない。
・ 遺産分割協議は、元々破産者の財産でなかったものが、遺産分割の結果によって相続時にさかのぼってその効力を生じ、破産者の財産とならなかったことに帰着するものであるから(民法909条)、破産法160条3項所定の無償行為として、類型的に対価関係なしに財産を減少させる行為と解するのは相当ではない。
・ 債務者たる相続人が将来遺産を相続するか否かは、相続開始時の遺産の有無や相続の放棄によって左右される極めて不確実な事柄であり、相続人の債権者は、直ちにこれを共同担保として期待すべきではない。
・ 遺産分割協議は、原則として破産法160条3項の無償行為には当たらない。ただし、当該遺産分割に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情があるときは、破産法160条3項の無償行為否認の対象に当たり得る。
というような判断です。
 
遺産分割協議が無償行為等詐害行為として否認の対象となるのは例外的なものと位置付けですね。
勿論、全ての裁判所が上記のような判断をしてくれるかどうかはわかりません。
 
また、上記裁判例も、具体的な事情を詳細に検討して、否認対象となる特段の事情が存在しないという判断をしています。
結局は、事案によってケースバイケースの判断になるということです。

自己破産申立ての際には、特段の事情がないこと、すなわち遺産分割合意に至る合理的な事情の説明が必要になるでしょう。
理屈だけで戦っても仕方ありません。
否認対象となるのは例外的であるという理屈を前面に出しながらも、合理的な理由を具体的に説明していくということでしょうか。
 
なお、遺産分割協議が否認対象とならなくとも、相続登記が破産法164条により独立に否認の対象となり得ます。
支払停止後等の対抗要件具備行為が否認対象となっているのです。
遺産分割の合意はずいぶん前にあったが、相続登記をしていなかった事例(好ましくない事態ですが珍しくはないですね)で問題になり得るでしょう。
実際にこのような案件を扱っています。
 
当職の私見ですが、遺産分割合意自体が否認の対象とならないのに、相続登記が遅れただけで登記が否認対象となることは疑問があります。
 
相続登記は、債権者を害するものではなく、有害性がないのではないでしょうか。
 
また、従前の遺産分割合意を正しく登記に表す行為には、所謂執行逃れのような不当な目的は存在せず、不当性がないものと考えられるのではないでしょうか。
 
さらに、相続登記を否認しても遺産共有状態となるだけです。
破産管財人が遺産分割審判をとろうとしても、従前の遺産分割合意を無視した審判が出るのか疑問が生じます。
 
本来、否認の対象とならない遺産分割合意について、それを反映する相続登記だけを取り上げて否認することには、違和感を禁じ得ません。
 
この点は、なかなか難しい問題で、的確な裁判例等も見当たりませんでした。
 
相続登記は面倒くさがらずに、忘れないうちに、しておいた方が無難ですね。
                   
債務整理(任意整理個人再生自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
http://www.nakata-law.com/
 
http://www.nakata-law.com/smart/


訴訟を提起された場合と自己破産 [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
債権者に訴訟を提起されたこと(支払督促が申し立てられたこと)をきっかけに債務整理のご相談に来られる方がいらっしゃいます。

また、自己破産を選択して受任通知を出した後に、債権者から訴訟を提起されるケースもあります。

今回は、そういった自己破産と訴訟との関係をお話しようと思います。
 
まず、債権者に訴訟を提起されたこと(支払督促が申し立てられたこと)をきっかけに債務整理、特に自己破産を決意される場合です。
 
基本は、急いで受任通知を送ります。
また、訴訟の場合には裁判所には委任状と答弁書、支払督促の場合は異議申立書と委任状を送ります。
いずれも期限があるので気を付けてください。支払督促の場合は特に短いです。

そうすれば、債権者が訴訟(支払督促の場合は異議申し立てによって訴訟手続に移行します)を取り下げてくることが多いです。

取り下げない場合には、急いで自己破産申立を行います。
通常は債権調査を行うのですが、それを省いてでも早く申立てることが多いです。
また、家計収支表は、広島本庁では2ケ月分必要ですが、申立てを急ぐ場合には1か月分でいいこととされています。
 
どうして急ぐかというと、強制執行が怖いからですね。
特に給与等差押えです。
理屈上、破産開始決定を得ると債権者は判決を取っても強制執行ができません。
債権者が破産申立の事実を知ると、通常は訴訟を取り下げます。
訴訟をできるだけ時間稼ぎしておいて、その間に自己破産申立てを急ぎ、早期に破産開始決定を取ることを考えるのです。
 
勤務先を債権者が知らない場合には、通常調べることはできないですし、調べる手間もかけません。
その場合には、預貯金の差押えが怖いぐらいでしょうか。動産執行などは原則してきません。不動産がある場合には差し押さえられても直ちに換価されるわけではないので、自己破産を考えている限りでは、あまり怖くありません。

預貯金で困るのは、給与口座、年金口座、生活保護受給口座の差押えですね。
年金、生活保護を受ける権利自体は差押え禁止財産ですが、入ってくる口座自体は差押えが可能です。それが有効かどうかはまた別の議論があり争うことができますが、お金が一時的にでも引き出せなくなることには変わりがありません。
債権者が債務者の預金口座の所在を調べられるわけではありません。債権者に振り込んだ銀行・支店名、融資金を振り込んだ口座ぐらいしかわかりません。
ただ、ゆうちょ銀行口座と自宅近辺の代表的な金融機関の支店へ差押えをかけてくることがあります。
遠方の銀行あるいは支店であれば債権者の差押えがヒットしないでしょう。
年金受取口座等を念のため変更してもらうことがあります。

やはり、訴訟提起、支払督促申立てがなされている場合には、申立てを急いだ方が無難でしょう。
 
これに対し、弁護士が受任通知を出した後に、訴訟提起をしてくる債権者もいます。
 
典型的なケースは、自己破産申立て準備が遅れ、債権者が待ちきれずに訴訟提起をしてくる場合です。

受任通知から数か月経つと、債権者から進捗確認の連絡が弁護士宛に来ます。
それでも申立てがなされずに半年を優に超えるような状態になると、債権者から法的手続を進めるとの連絡が来ます。
当然、弁護士も依頼者様に準備を促すのですが、中にはなかなか連絡が取れなくなる方もいらっしゃいます。

急かされて準備を頑張ってくれる方は急いで申立てをするのですが、準備を進めてくれないあるいは連絡が取れなくなる方については、弁護士も辞任をすることになります。

弁護士が辞任をすると、期限の利益が喪失された(一括請求されて遅延損害金も発生している)状態で、代理人がいないことになります。督促もされますし、訴訟提起もされます。
自己破産の申立て準備を遅らせることは百害あって一利なしなので、お気を付けください。

勿論、敢えて申立てを遅らせる必要があるケースでは、きちんと債権者に弁護士が説明をします。たいていの債権者は待ってくれます。
 
ところが、中には、受任通知後間もないのに訴訟提起をしてくる債権者もいます。
2,3社の名前が挙がりますが、具体名はここで挙げません。

債権者がそのような対応を取った場合には、できるだけ訴訟の進行を遅らせ、その間に自己破産申立て、破産開始決定を取るほかありません。
受任通知後1~2か月で訴訟提起をされたことが2回あります。
債権者にとっても自己破産されてしまうと訴訟費用と手間が無駄になるだけだと思うのですが、特定の債権者はそのような対応をすることがあります。
 
債権者から訴訟が提起された、あるいは支払督促の申立てがなされたときは、他の督促状や訴訟予告と異なり、裁判所から書類が来ます。
裁判所から書類が届いたら、すぐに、弁護士に相談する、あるいは依頼している弁護士に渡す必要がありますね。
 
債務整理(任意整理個人再生自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
http://www.nakata-law.com/
 
http://www.nakata-law.com/smart/


自己破産か、個人再生か、任意整理か [借金問題]

広島市の弁護士仲田誠一です。
 
弁護士会で若手会員相手に個人再生委員研修の講師をすることとなりました。
個人再生委員の話だけではなく個人再生を申し立てたことがない会員向けに個人再生手続のポイントも講義する予定です。
そういうわけで、改めて債務整理の手続選択について考えてみました。
個人でいうと、自己破産か、個人再生か、任意整理かの選択ですね。
以前のコラムでも何度か書いた気もしますが、あらためて整理いたします。
 
債務整理の手続選択は、借金の額、借金の内容、収入(弁済原資)、保有財産、職業等をいろいろ考えて行います。
オーダーメイドで考えないといけません。
 
まずは、借金の額と収入の関係ですね。
借金総額(住宅ローンは除きます)を36回(3年)で支払うと仮定して、収入からその金額を毎月支払うことができるかどうかを考えます。
それが支払えない状態でしたら、借入元本をカットできる個人再生自己破産という法的整理手続を考えます。
逆に支払えるのであれば任意整理で十分ということです。資金繰りの問題だけ解決すればいいケースです。
 
勿論、支払えない状態であっても、法的整理をすることに躊躇するケースもありますね。
親戚が保証人になっていて迷惑がどうしてもかけられない、ローン付の車を維持しないと生活できない、勤務先から借入れがある等々色々な事情があります。
 
任意整理でも、債権者にきちんと説明して納得してもらえたら5年間あるいはそれ以上の弁済期間での和解も不可能ではありません。
5年ぐらいであると割合簡単にOKがもらえるでしょうか。
そこで、法的整理を避けたいケースでは、和解できそうな弁済期間での弁済が可能な限りで、任意整理を選択することはあります。
 
ただ、長期間にわたってギリギリの弁済を続けていくことは危険ですし非常に苦しいですね。
また、弁済途中で頓挫してしまえばその際には自己破産等を選択せざるを得ず、それまでの苦労が無駄になることもあります。
初めに自己破産していれば弁済分は貯蓄で残ったかもしれません。
さらに、長年にわたって借金返済のために働くよりも今後の生活のために少しでも貯蓄をしてくことが望ましいのは言うまでもありません。
ギリギリの弁済計画だと、支払い完了時には財産がゼロということになります。
無理をして任意整理を選択しようとされる方には、ここら辺をお話して、その上で決断してもらいます。
 
勿論、条件が揃えばですが、法的整理を選び難い原因をクリアしつつ自己破産個人再生を選択することがあります。
敢えて偏頗弁済をする、車を親族が買い取るなどですね。
自己破産手続、個人再生手続においてそれらの行為が問題になるとしても、結果的にはベストな選択になることも正直あります。
弁護士の腕の見せ所でしょうか。
当然のことですが、弁護士の助言の下で進めてください。
 
法的整理を選択する場合、個人再生自己破産かの選択が残りますね。
 
財産もない、他の問題もないということであれば、自己破産を勧めます。
 
個人再生ができる借金額の場合はたいてい自己破産もできると思います。
破産は支払不能、個人再生は支払不能のおそれが要件ですが、弁護士は受任通知を出すと期限の利益は喪失されるので、たいてい支払不能と説明がつきます。
債務整理を決断されたのであれば、できればすべてリセットして、経済的に立ち直ってもらいたいです。
 
一方、自己破産ではなく個人再生を選択しないといけないケースもありますね。
 
自宅不動産を維持しないといけない場合には、個人再生しかありません。
住宅資金特別条項を利用した個人再生ですね。ただし、利用できる要件があって、借入の仕方、担保の付き方によっては利用できない場合もありますのでご注意を。
住宅ローンを控除しても不動産価値が数百万円残るような場合には手続を進めることは難しいです。その場合には別の方策を考えるしかありません。
なお、自己破産申立て前に親族に不動産を売却して自宅を維持して自己破産をしたというケースもあります。売却にあたっては弁護士がきちんと関与しました。
 
職業の関係で個人再生を選択するケースもありますね。
自己破産では一部の職業について制限があります。よく見ることがあるのは、保険外交員、警備員でしょうか。
個人再生では職業制限がないので、そのような職業の方は個人再生を利用するということです。
 
数は多くないですが、自己破産を申し立てた場合の免責不許可事由の程度がかなり重くて(これは破産管財人をやっている弁護士に判断してもらってください。)、とても免責許可が得られそうにない場合も、個人再生を選択しますね。
免責不許可事由の程度がある程度という場合であれば自己破産でもかまわないです。
よほどでないと免責不許可にはなりません。
ただ、ある程度の免責不許可事由が存在する場合、管財事件になる可能性を見越して、無難に個人再生を選択することも珍しくはありません。
 
後は、大きな保険など、特に維持したい財産がある場合も個人再生を選択するでしょうか。
自己破産では、自由財産あるいは自由財産拡張対象の範囲を超える財産は処分をされてしまいかねません(超える分のお金を別途用意する方法もありますが)。
個人再生であれば、清算価値が上がって最低弁済額が大きくなるだけで済みます。
 
特殊な例であると、自己破産の免責決定確定後7年以内の場合には、自己破産を申し立てても原則免責を受けることができません。個人再生を選択しないといけませんね。
その場合、個人再生でも給与所得者等再生は利用できません。小規模個人再生のみになります。
なお、過去の個人再生においてハードシップ免責確定後7年以内、給与所得者等再生の再生計画認可確定後7年以内の場合も小規模個人再生しか選択できません。
 
一方、個人再生での計画弁済額も支払い続けることはできないケースでは、自己破産を選択しますね。
 
上述のいずれにも該当しない場合には、基本的には自己破産でも個人再生でもいいということになります。
 
経済的更生の観点からは自己破産ができるのであれば自己破産の方をお勧めしたいところですが、依頼者の中には、自己破産は潔しとせず、個人再生を望まれる方もいらっしゃいます。少しでも返済をしたいという思いから個人再生を利用するケースがあります。
 
以上、五月雨式ですが、自己破産個人再生任意整理の選択についての考え方をお話ししました。

これまでお話したほかにも、債務整理の手続選択には様々なことを考慮する必要があるのは当然です。ケースバイケースの判断になりますからね。

皆さんご事情は異なります。生活状況等も含めて、じっくりお話をしないと決断できないケースも珍しくありません。

債務整理をして経済的更生を図ると決断していただいた以上、できるだけ良い方向で進めたいです。手続選択を誤ると非常にもったいないですね。
 
債務整理の際には、是非、信頼できる弁護士と話し合って、納得できる手続選択をしてください。
 
債務整理(任意整理個人再生自己破産等)のサポートはなかた法律事務所にご用命を。
 
広島の弁護士 仲田 誠一
なかた法律事務所
広島市中区上八丁堀5-27-602
http://www.nakata-law.com/
 
http://www.nakata-law.com/smart/
 


このページのトップへ